説明

茶製品を製造する方法およびそれにより得られる製品

茎に富む新鮮な茶物質を得るステップと、新鮮な茶物質から抽出液を圧搾し、それにより茎残渣および茶化合物の混合物を含む茶抽出液を製造するステップとを含む方法が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶から製品を製造する方法に関する。特に、本発明は、抽出液を茶茎から圧搾する方法に関する。本発明は、茎から圧搾される抽出液にも関する。
【背景技術】
【0002】
茶は、伝統的に植物Camellia sinensisの乾燥した葉を熱湯に浸出することにより製造される飲料である。茶は(水を除き)恐らく世界で最も人気のある飲料であり、世界の一部の地域では、健康促進の可能性を有すると伝統的に考えられてきた。最近、広範な実験室での研究および疫学研究から、茶葉中に存在する多くの化合物が、生物活性を示し、例えば様々な疾患を治療し、かつ/または身体能力もしくは精神能力を向上させるのに有用であり得ることが示された。
【0003】
カテキンおよびテアフラビンなどのポリフェノール化合物は、特に重要であることが示された。茶ポリフェノールの利点のいくつかは、その抗酸化特性と直接関係があり得る。称するところの利点としては、血中脂質濃度(例えばコレステロール)の低下、抗炎症効果および抗腫瘍効果が挙げられる。
【0004】
生物活性を有することが示された別の茶化合物としては、アミノ酸のテアニンがある。例えば、テアニンは、哺乳動物の脳内のα波を刺激し、リラックスしているが、油断のない精神状態を個人に与えることが報告されている。
【0005】
生物活性化合物以外に、茶葉は、その官能的品質について評価されている化合物も含有している。特に、茶葉は、独特の芳香を有し、芳香化合物に富む。
【0006】
茶化合物の利点のいくつかは、1日当たり数杯と低い消費率で明らかであろうが、多くの個人は、長期にわたってこのささやかな消費率でさえも達成していない。さらに、茶葉飲料は、茶葉の浸出速度が比較的遅いことおよび茶粉末の溶解速度が遅いことにより、茶葉以外を基にした飲料前駆物質、例えばインスタントコーヒーから調製した飲料よりも調製が不便である。また、新しい知覚経験を送達する製品であるが、天然源に由来する製品が消費者の間で益々所望されている。
【0007】
したがって、茶葉由来の化合物の濃度が高められた製品を提供するために、既に数多くの努力がなされてきた。多くの場合、先の努力は、茶化合物を、水などの溶媒を用いて茶葉から抽出する方法を使用した。例えば、国際公開第2006/037511号(Unilever)は、短時間の冷水抽出を伴う、茶樹物質からテアニンを優先的に抽出する方法について開示している。公知の方法での1つの欠点は、完全な抽出に必要とされる多量の溶媒を除去するために時間とエネルギーが費やされることである。
【0008】
茶茎は、茶活性成分の豊富な供給源である。国際公開第2006/021317号(Unilever)は、(i)茎物質および葉物質を含む茶樹物質の供給源を採取するステップと、(ii)前記茎物質を前記葉物質から物理的に分離し、茎に富む茶樹源を得るステップと、(iii)前記茎源を、萎凋、浸軟、粉砕、蒸熱処理、発酵、焙煎および浸出から選択される少なくとも1つの従来の茶加工の単位操作で処理するステップとを含む方法を開示している。
【0009】
したがって、茶化合物に富む新しい物質を提供することが必要とされていることを認識した。多量の溶媒の使用を必要としない、茶茎から茶化合物を得る方法が必要とされていることも認識した。このような要求は、抽出液を茶茎から圧搾する方法を使用することにより満たすことができることを見出した。
【0010】
定義

本発明の目的のために「茶」とは、Camellia sinensis var. sinensisおよび/またはCamellia sinensis var. assamica由来の物質を意味する。
【0011】
「茎」とは、葉本体の一部ではない細長い茶樹物質を意味する。
【0012】
本発明の目的のために「リーフティー」とは、浸出していない形態の茶葉および/または茶茎を含有し、含水量30重量%未満まで乾燥させ、通常は1〜10重量%の範囲の含水量を有する茶製品(すなわち、「加工茶」)を意味する。
【0013】
「緑茶」とは、実質的に発酵していない茶を指す。「紅茶(black tea)」とは、実質的に発酵した茶を指す。「ウーロン茶」とは、部分的に発酵した茶を指す。
【0014】
「発酵」とは、例えば、茶物質を浸軟することにより細胞を機械的に破壊することで、ある種の内因性の酵素および基質を一緒にするときに、茶が受ける酸化プロセスおよび加水分解プロセスを指す。このプロセス中、物質中の無色のカテキンは、黄色およびオレンジ色から暗褐色のフェノール物質の複合混合物に変換される。
【0015】
「新鮮な茶物質」とは、含水量30重量%未満まで乾燥したことがなく、60〜90%の範囲の含水量を通常有する、茶茎および/または茶葉と茶茎の混合物を指す。
【0016】
「茶化合物」とは、水を除く、茶物質に由来するいずれかの化合物を指す。したがって、茶化合物としては、全ての茶固形物および茶揮発性物質が挙げられる。
【0017】
抽出液の圧搾
本明細書で使用する場合、「抽出液の圧搾」という用語は、溶媒を用いて茶固形物を抽出するのとは対照的に、物理的力を用いて抽出液を新鮮な茶物質から搾り出すことを指す。したがって、「圧搾する」という用語は、搾る(squeezing)、圧縮する(pressing)、搾り出す(wringing)、脱水するおよび押し出すなどの意味を包含する。少量の溶媒(例えば水)を圧搾ステップ中に新鮮な茶物質に加えることができる。しかし、溶媒により茶固形物が有意に抽出されるのを防ぐために、圧搾中の葉の含水量は、本明細書の上に定義したように新鮮な茶物質と同じにする。言い換えれば、圧搾ステップ中、茶物質の含水量は、30〜90重量%の間、より好ましくは60〜90重量%の間である。また、新鮮な茶物質は、非水性溶媒(例えばアルコール)に伴う環境問題および経済問題により、圧搾前または圧搾中にこのような溶媒と接触しないことが好ましい。
【0018】
ポリフェノール
本明細書で使用する場合、「ポリフェノール」という用語は、1つまたは複数の芳香族基に結合した複数のヒドロキシル基を含むクラス化合物の1種または複数を指す。典型的な茶ポリフェノールとしては、カテキン、テアフラビンおよびテアルビジンが挙げられる。
【0019】
本明細書で使用する場合、「カテキン」という用語は、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートおよびそれらの混合物の総称として使用される。
【0020】
本明細書で使用する場合、「テアフラビン」という用語は、テアフラビン、イソテアフラビン、ネオテアフラビン、テアフラビン-3-ガレート、テアフラビン-3'-ガレート、テアフラビン-3-3'-ジガレート、エピテアフラビン酸、エピテアフラビン酸-3'-ガレート、テアフラビン酸、テアフラビン酸-3'-ガレートおよびそれらの混合物の総称として使用される。これらの化合物の構造式は周知である(例えば「Tea-Cultivation to consumption」の17章の構造式xi〜xx、K. C. WillsonおよびM. N. Clifford(編)、1992年、Chapman & Hall、London、555〜601頁を参照)。テアフラビンという用語は、これらの化合物の塩形態を含む。好ましいテアフラビンは、テアフラビン、テアフラビン-3-ガレート、テアフラビン-3'-ガレート、テアフラビン-3-3'-ジガレートおよびそれらの混合物であるが、これらのテアフラビンが、茶葉に最も豊富に含まれるためである。
【0021】
飲料
本明細書で使用する場合、「飲料」という用語は、ヒトの食用に適した実質的に水性の飲料組成物を指す。「茶系飲料」という用語は、飲料の重量に対して、茶固形物を少なくとも0.01重量%含む飲料を指す。茶系飲料は、茶固形物を0.04〜3%、より好ましくは0.06〜2%、最も好ましくは0.1〜1%含むことが好ましい。
【0022】
富化および精製
所与の組成物が、茶化合物に「富む」と言われる場合、組成物中の茶化合物の混合物において茶化合物の重量分率が、圧搾直後の茶抽出液中の茶化合物の混合物における茶化合物の重量分率の少なくとも1.5倍であることを意味する。これは、方程式(1)に示されているように表すことができる:
R=(cTC/cTOTAL)/(mTC/mTOTAL)≧1.5(1)
(式中、Rは、所与の組成物中の特定の茶化合物の富化係数であり、cTCは、所与の組成物中の特定の茶化合物の質量であり、cTOTALは、所与の組成物中の茶化合物の全質量であり、mTCは、茶抽出液中の特定の茶化合物の質量であり、mTOTALは、茶抽出液中の茶化合物の全質量である)。
【0023】
同様に、「精製」とは、組成物中の茶化合物の重量分率の増加を指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開第2006/037511号
【特許文献2】国際公開第2006/021317号
【特許文献3】英国特許第893551号
【特許文献4】中国特許出願公開第1718030A号
【特許文献5】国際公開第2008/040627号
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】「Tea-Cultivation to consumption」の17章の構造式xi〜xx、K. C. WillsonおよびM. N. Clifford(編)、1992年、Chapman & Hall、London、555〜601頁
【非特許文献2】「Tea:Cultivation to Consumption」、K.C.WillsonおよびM.N.Clifford(編)、第1版、1992年、Chapman & Hall(London)、13章および14章
【非特許文献3】「Tea:Cultivation to Consumption」、K.C.WillsonおよびM.N.Clifford(編)、第1版、1992年、Chapman & Hall(London)、16章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
抽出液は、茶茎から容易に圧搾でき、茶化合物に富むが、含水量が比較的低いことを見出した。したがって、抽出液は、茶化合物の優れた供給源を提供し、従来の茶抽出物よりも乾燥するためのエネルギーが少なくて済む。
【課題を解決するための手段】
【0027】
したがって、第1の態様において、本発明は、
a)茎に富む新鮮な茶物質を得るステップと、
b)新鮮な茶物質から抽出液を圧搾し、それにより茎残渣および茶化合物の混合物を含む茶抽出液を製造するステップと
を含む方法を提供する。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、本発明の方法により得られたおよび/または得られる茶抽出液を提供する。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、茶抽出液を希釈することにより得られたおよび/または得られる飲料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
新鮮な茶物質
方法のステップ(a)は、茎に富む新鮮な茶物質を得るステップを含む。
【0031】
新鮮な茶物質は、茶茎を茶葉から物理的に分離するステップを含む方法により提供されることが好ましい。
【0032】
葉および茎の物理的分離は、第1のステップとして行われることが好ましいが、葉および茎の物理的分離は、萎凋後、または新鮮な茶物質の発酵および/もしくは蒸熱処理および/もしくは焙炒後に行うことが可能である。
【0033】
分離は、いくつかの方法、例えば手によって実現できる。しかし、分離は、英国特許第893551号(COLOMBO COMMERCIAL CO. LTD)に記載されているように、機械で行われることが好ましい。このような機械は、摘んだ新鮮な茶樹物質を脱穀し、次いで脱穀した物質の落下流で吹き込み空気を使用して、1つは茎に富む流れ、もう1つは葉に富む流れの2つの流れを得ることにより動作し得る。
【0034】
物理的分離ステップにより、茎に富む、すなわち、単に新鮮な茶葉を摘むことにより得られるよりも多くの茎を含有する新鮮な茶物質が提供される。新鮮な茶物質は、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは90〜100重量%の茎を含む。
【0035】
抽出液の圧搾
本発明の方法のステップ(b)は、新鮮な茶物質から抽出液を圧搾し、それにより茎残渣および茶化合物の混合物を含む茶抽出液を製造するステップを含む。
【0036】
圧搾した抽出液の量が少なすぎると、茎残渣から抽出液を分離することが難しくなり、かつ/またはプロセスが非効率的になる。したがって、圧搾した抽出液の量は、新鮮な茶物質1kg当たり少なくとも10ml、より好ましくは少なくとも25ml、より好ましくはさらに少なくとも50ml、最も好ましくは75〜600mlであることが好ましい。茶物質の単位質量当たり圧搾される抽出液の量を示すとき、茶物質の質量は、乾燥重量ベースではなく、「現状」ベースで示されることに注意されたい。したがって、質量は、物質中の任意の水分を含む。
【0037】
圧搾ステップは、茎残渣からの茶抽出液の分離を可能にし、必要量の抽出液が得られる限り、任意の都合のよい方法で実現できる。抽出液を圧搾するのに使用する機械としては、例えば液圧プレス、空気圧プレス、スクリュープレス、ベルトプレス、押出機またはそれらの組合せを挙げることができる。
【0038】
抽出液は、物質の1回の圧縮または複数回の圧縮で新鮮な茶物質から得ることができる。簡単かつ迅速な方法を可能にするため、抽出液は、1回の圧縮から得られることが好ましい。
【0039】
貴重な茶化合物の劣化を最小限に抑えるため、圧搾ステップは、大気温度で行われることが好ましい。例えば、茶物質の温度は、5〜40℃、より好ましくは10〜30℃であってよい。
【0040】
圧搾ステップで使用する時間および圧力は、必要量の抽出液を生成するために変動させてもよい。しかし、通常、抽出液を圧搾するために加えられる圧力は、0.5MPa(73psi)〜10MPa(1450psi)の範囲であろう。圧力が加えられる時間は、通常1秒〜1時間、より好ましくは10秒〜20分、最も好ましくは30秒〜5分の範囲であろう。
【0041】
圧搾前に、新鮮な茶物質は、例えば、発酵酵素を不活性化するための熱処理、浸軟、萎凋、発酵、凍結融解またはそれらの組合せから選択される単位工程を含む前処理を経てもよい。
【0042】
茶抽出液および/または茎残渣を使用して、緑茶化合物(例えば、カテキン)を得ようとする場合、新鮮な物質を、圧搾前に熱処理して、発酵酵素を不活性化することが好ましい。適切な熱処理としては、蒸熱処理および/または釜炒りが挙げられる。
【0043】
茶抽出液および/または茎残渣を使用して、紅茶化合物またはウーロン茶化合物(例えば、テアフラビンおよび/またはテアルビジン)を得ようとする場合、新鮮な物質には、圧搾前に発酵酵素を不活性化するための熱処理がなされないことが好ましい。新鮮な物質は、圧搾前に発酵させても、または発酵させなくてもよい。新鮮な物質を圧搾前に発酵させる場合、葉を発酵前に浸軟することが特に好ましい。
【0044】
新鮮な物質を発酵させるにせよ、発酵させないにせよ、圧搾前の浸軟は、所望の量の抽出液を圧搾するのに必要とされる時間および/または圧力を低減する一助となり得る。
【0045】
抽出液の加工
茎残渣から分離した茶抽出液は、茶製品を製造するための貴重な原料であり、茶化合物の豊富な源である。
【0046】
抽出液を使用して、緑茶製品、ウーロン茶製品または紅茶製品を製造できる。ウーロン茶製品または紅茶製品の場合、抽出液を、ステップ(b)で少なくとも部分的に発酵させた茶物質から好ましくは圧搾するか、かつ/または抽出液を、圧搾後に発酵ステップにかける。緑茶製品の場合、新鮮な物質は圧搾前に発酵させず、抽出液は圧搾後に発酵させない。抽出液は(例えば、圧搾直後に処理して酵素を不活性化することにより)発酵させないが、茎残渣は発酵させて、紅茶またはウーロン茶を製造することが可能である。代替的には、抽出液を圧搾後に発酵させてもよいが、茎残渣を、熱処理して発酵酵素を不活性化し、緑茶に加工する。
【0047】
飲料を製造するための希釈
一実施形態において、茶抽出液は、飲料を製造するために希釈される。適切な方法は、例えば中国特許出願公開第1718030A号(LANCANGJIANG BEER ENTPR GROUP)に記載されている。
【0048】
抽出液は、水性媒体、最も好ましくは水で希釈されることが好ましい。飲料は、少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最適には95〜99.9重量%の間の飲料を通常含む。
【0049】
抽出液は、茶固形物を比較的多く含むため、得られた飲料に茶質を依然として付与しながら、何倍にも希釈できる。したがって、抽出液は、飲料を製造するために、少なくとも2倍に希釈されることが好ましい(すなわち、抽出液1部を重量で希釈液1部と合わせる)。より好ましくは抽出液は、少なくとも5倍、(すなわち、抽出液1部を重量で希釈液4部と合わせる)、最も好ましくは少なくとも7倍に希釈されることがより好ましい。
【0050】
抽出液は、高濃度の茶固形物を有する濃縮飲料を製造するために使用できる。例えば、抽出液は、50倍未満、より好ましくは25倍未満、最も好ましくは15倍未満に希釈してもよい。
【0051】
飲料の1杯の質量は、例えば600g未満、より好ましくは350g未満、より好ましくはさらに250g未満、最も好ましくは20〜150gであってよい。
【0052】
飲料のpHは、例えば2.5〜8、より好ましくは3〜6、最も好ましくは3.5〜6であってよい。飲料は、食品等級の酸および/またはその塩、例えばクエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸もしくはそれらの混合物を含むことができる。
【0053】
飲料は、炭水化物、タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の栄養素を含むことが好ましい。飲料は低カロリー(例えば、飲料100g当たり100kCal未満のエネルギー含量を有する)であってもよく、または高カロリー含量(例えば、飲料100g当たり100kCal超、好ましくは150〜1000kCalの間のエネルギー含量を有する)を有していてもよい。飲料は、1杯分が5kCal未満、より好ましくはさらに1kCal未満の総エネルギー含量を有するように、非常に低カロリーであることが最も好ましい。
【0054】
飲料は、塩、甘味料、調味料、着色料、保存料、抗酸化剤またはそれらの混合物のいずれかを含むこともできる。
【0055】
飲料は包装されていることが好ましい。包装材料は、通常ボトル、缶、カートンまたはパウチであろう。
【0056】
飲料を、例えば、低温殺菌または滅菌により衛生的にすることが好ましい。
【0057】
抽出液の乾燥
一実施形態において、茶抽出液を乾燥して、液状の濃縮物などの濃縮物または粉末を製造する。抽出液を80重量%未満、より好ましくは50重量%未満、より好ましくはさらに30重量%未満、最も好ましくは1〜10重量%の含水量まで乾燥することが好ましい。噴霧乾燥、凍結乾燥、オーブン乾燥、トレー乾燥、真空乾燥またはそれらの組合せを含む、任意の適当な乾燥方法が使用できる。
【0058】
濃縮物または粉末を、例えば、希釈または溶解して飲料を製造し、食品添加物として使用するか、かつ/または他の茶葉由来物質を製造するための出発物質として使用することができる。
【0059】
抽出液とリーフティーとの組合せ
一実施形態において、茶抽出液をリーフティーと合わせる。例えば、抽出液は、リーフティー上にスプレーできる。抽出液は、リーフティーと合わせる前に希釈してもよく、または濃縮物の形態でリーフティーと混合してもよい。
【0060】
抽出液の分画
特に好ましい実施形態において、該方法は、(c)茶化合物の混合物を分画するステップと、(d)少なくとも1種の茶化合物に富む少なくとも1つの画分を回収するステップとを含む。
【0061】
該方法は、任意の茶化合物を精製するために使用できる。しかし、好ましい茶化合物は、生物活性を示すか、かつ/または芳香に寄与するものである。したがって、少なくとも1種の茶化合物は、ポリフェノール、アミノ酸または芳香化合物であることが好ましい。
【0062】
少なくとも1種の茶化合物がポリフェノールである場合、例えばカテキン、テアフラビン、テアルビジンまたはそれらの混合物であってよい。
【0063】
少なくとも1種の茶化合物がアミノ酸である場合、テアニンであることが好ましい。
【0064】
少なくとも1種の茶化合物が芳香化合物である場合、通常、揮発性物質であろう。揮発性物質とは、25℃で少なくとも1Paの蒸気圧を有することを意味する。芳香化合物は、メタノール、アセトアルデヒド、ジメチルスルフィド、2-メチルプロパナール、2-メチルブタナール、3-メチルブタナール、1-ペンテン-3-オン、ヘキサナール、1-ペンテン-3-オール、E-2-ヘキセナール、Z-3-ヘキセニルアセテート、Z-2-ペンテン-1-オール、ヘキサン-1-オール、Z-3-ヘキセノール、E-2-ヘキセノール、cis-リナロールオキシド、1-オクテン-3-オール、trans-リナロールオキシド、リナロール、α-テルピノール、フェニルアセトアルデヒド、メチルサリチレート、ゲラニオール、ベンジルアルコール、2-フェニルエタノールまたはそれらの混合物であることが好ましい。
【0065】
ステップ(c)の分画は、茶化合物を分離できる任意の適切な方法を用いて実現できる。このような方法の例としては、膜濾過、分取クロマトグラフィー、溶媒抽出、沈殿、蒸留およびそれらの組合せの単位工程が挙げられる。
【0066】
膜濾過としては、精密濾過、限外濾過、ナノ濾過、逆浸透またはそれらの組合せを挙げることができる。好ましい濾過操作は、限外濾過、ナノ濾過またはそれらの組合せを含むが、これらが、ポリフェノールおよび/またはアミノ酸などの生物活性化合物を精製するのに特に有効であるからである。通常、濾過は、茶化合物の混合物を少なくとも1つの透過画分および少なくとも1つの保持画分に分画することを伴うであろう。
【0067】
本明細書で使用する場合、「分取クロマトグラフィー」という用語は、茶化合物の混合物とクロマトグラフ媒体とを接触させるステップを含む調製方法を指す。クロマトグラフ媒体は、混合物中の茶化合物の少なくとも2種に対して異なる親和性を有する物質であり、例としては、吸着物質が挙げられる。通常、混合物は、分取クロマトグラフィーにより、それらがクロマトグラフ媒体と相互作用する程度の異なる少なくとも2つの画分に分画されるであろう。好ましい実施形態において、分取クロマトグラフィーは、カラムクロマトグラフィーである。クロマトグラフィーがカラムクロマトグラフィーである場合、混合物は、通常、様々な溶出時間で収集されたカラムおよび画分から溶出されるであろう。
【0068】
溶媒抽出は、茶化合物の混合物と溶媒とを接触させ、それにより少なくとも1つの可溶性画分および少なくとも1つの不溶性画分を生成するステップを含むことが好ましい。
【0069】
沈殿は、可溶性物質が、溶液および/または懸濁物質の沈殿物もしくはクリームから沈殿するように、混合物を物理変化および/または化学変化に曝すステップを通常含む。化学変化の例としては、pH、溶媒組成、濃度またはそれらの組合せにおける変化が挙げられる。物理変化の例としては、加熱もしくは冷却、遠心分離またはそれらの組合せが挙げられる。
【0070】
蒸留は、混合物を加熱して、少なくとも一部の揮発性の茶化合物を蒸発させるステップを通常含む。少なくとも1種の茶化合物が芳香化合物であるとき、ステップ(c)は蒸留ステップを含むことが特に好ましい。
【0071】
ステップ(d)で回収した少なくとも1種の茶化合物に富む少なくとも1つの画分は、富化係数Rが、少なくとも1.7、より好ましくは少なくとも2、最も好ましくは3〜1000であるように、茶化合物に富むことが好ましい。
【0072】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの画分を、濃縮および/または乾燥する。これは、画分の安定した長期貯蔵を可能にする。通常、画分は、重量で20%未満、より好ましくは10%未満、最適には1〜7%の水分まで乾燥されるであろう。
【0073】
茎残渣の加工
該方法の効率を最大化するために、茎残渣を廃棄するのではなく、さらに加工して、商業的に実現可能な製品を製造することが好ましい。特に好ましい実施形態において、該方法は、茎残渣を加工して、加工茶を製造するか、かつ/または溶媒で抽出して、茶抽出物を製造する追加のステップ(e)を含む。
【0074】
茎残渣を加工して、緑茶、紅茶またはウーロン茶を製造できる。ウーロン茶および紅茶の場合、ステップ(e)は、茎残渣を発酵させるステップを含む。
【0075】
加工茶の製造
グリーンリーフティー、ブラックリーフティーまたはウーロンリーフティーの製造方法は周知であり、適切な方法が、例えば「Tea:Cultivation to Consumption」、K.C.WillsonおよびM.N.Clifford(編)、第1版、1992年、Chapman & Hall(London)、13章および14章に記載されている。
【0076】
全ての加工茶の製造に共通するステップは、乾燥ステップである。ウーロン茶および紅茶の場合、乾燥ステップは、発酵酵素を不活性化するためにも通常利用する。効率的な乾燥は高温を必要とし、したがって該方法のステップ(e)は、茎残渣を少なくとも75℃、より好ましくは少なくとも90℃の温度で乾燥するステップを含むことが好ましい。
【0077】
茶抽出物の製造
茎残渣を、茎残渣の乾燥前に溶媒で抽出してもよいが、特に好ましい実施形態において、抽出物は加工茶から製造される。したがって、ステップ(e)は、茎残渣を加工して、加工茶を製造し、次いで加工茶を溶媒で抽出して、茶抽出物を製造するステップを含むことが好ましい。
【0078】
ステップ(e)での使用に最も好ましい溶媒は、水性溶媒である。水性溶媒は、該溶媒の重量に対して、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは99〜100%の水を含むことが好ましい。
【0079】
溶媒は冷たく、例えば1〜50℃の範囲の温度を有していてもよい。しかし、熱溶媒は、茶固形物を抽出するのにより効率的である傾向があるため、溶媒は熱いことが最も好ましい。したがって、ステップ(e)において、溶媒温度は、50℃超、より好ましくは少なくとも70℃、最も好ましくは80〜100℃であることが好ましい。
【0080】
ステップ(e)において、溶媒を茎残渣と少なくとも1分間接触させることが好ましい。しかし、茎残渣は、通常、浸出速度が良好であるため、ステップ(e)において、溶媒を該残渣と1時間未満、より好ましくは30分未満、最も好ましくは15分未満接触させることが好ましい。
【0081】
ステップ(e)において、茎残渣と溶媒とを1:1〜1:1000、より好ましくは1:4〜1:100、最も好ましくは1:6〜1:20の範囲の重量比で接触させることが好ましい。
【0082】
茎残渣と溶媒とを接触させた後、茎残渣を、液体抽出物から通常分離する。したがって、好ましい実施形態において、ステップ(e)は、抽出物を葉から分離するステップを含む。この葉から分離するステップは、例えば抽出物を濾過および/または遠心分離することにより容易に実現できる。
【0083】
最も好ましい実施形態において、ステップ(e)は、少なくとも一部の溶媒を抽出物から除去し、濃縮茶抽出物を製造するステップを含む。溶媒が水性である場合、これは、抽出物を乾燥するステップを伴う。濃縮茶抽出物は、液体濃縮物または固体濃縮物、例えば粉末であってよい。ステップ(e)において、茶抽出物を乾燥して、粉末にすることが最も好ましい。濃縮抽出物が液体である場合、40〜95重量%の範囲の含水量を通常有するであろう。濃縮抽出物が固体濃縮物である場合、30重量%未満、より好ましくは1〜10重量%の含水量を通常有するであろう。
【0084】
最も好ましい実施形態において、茶抽出物を加工して、インスタント茶粉末を製造する。適切な方法としては、例えば「Tea: Cultivation to consumption」の16章、K. C. WillsonおよびM. N. Clifford(編)、1992年、第1版、Chapman & Hall(London)に記載のものが挙げられる。
【0085】
該方法により得られる茶抽出液
茎残渣から分離した茶抽出液は、茶製品を製造するための貴重な原料物質であり、茶化合物の豊富な供給源である。
【0086】
茶抽出液は、1〜10重量%、より好ましくは2〜6重量%、最も好ましくは3〜5重量%の総溶解性固形分を通常有する。
【0087】
茶抽出液は、テアニンなどのアミノ酸に特に富む。抽出液は、例えば抽出液1ml当たりテアニンを少なくとも4.0mg、より好ましくは少なくとも5.0mg、最も好ましくは6〜10mg含むことができる。代替的にまたは追加的に、抽出液は、乾燥重量でテアニンを少なくとも7%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは12〜20%含むことができる。
【0088】
しかし、抽出液中のポリフェノール濃度は比較的低い。例えば、抽出液は、総ポリフェノールを15mg/ml未満、または総ポリフェノールを1〜10mg/ml含むことができる。代替的にまたは追加的に、抽出液は、乾燥重量で総ポリフェノールを30%未満、より好ましくは10〜25%含むことができる。
【0089】
追加的にまたは代替的に、茶抽出液は、テアニンと総ポリフェノールとの比で特徴付けることができる。したがって、茶抽出液(またはそこから得た飲料)は、テアニンと総ポリフェノールとの重量比を、少なくとも1:4、より好ましくは少なくとも1:3、より好ましくはさらに少なくとも1:2、最も好ましくは1:1.5〜2:1の範囲で通常有するであろう。
【0090】
さらなる態様において、本発明は、テアニンおよびポリフェノールを含む飲料を提供し、そこでテアニンと総ポリフェノールとの重量比は、少なくとも1:4、より好ましくは少なくとも1:3、より好ましくはさらに少なくとも1:2、最も好ましくは1:1.5〜2:1の範囲である。飲料は、茶系飲料であることが好ましい。
【0091】
(実施例)
本発明を、以下の実施例を参照しながらさらに説明する。
【0092】
(実施例1)
本実施例には、茎抽出液を製造するための新鮮な茶茎の加工が示されている。
【0093】
茶物質(一芯二葉)を採取して、次いで葉および芽を茎から除去した。得られた茎物質は、葉柄および節間からなり、液圧プレスを用いて(蒸熱処理なしで)圧縮し(直系160mmのシリンダー内部で物質500g質量に5トンをかけることにより、354psi(2.44MPa)の下向き圧力が得られた)、茎抽出液を圧搾した。茎抽出液の収率は茎20ml/100gであった。Table 1(表1)は、茎抽出液と、葉および芽を茎から分離しなかったことを除いては上に記載のように圧搾した抽出液との比較を示している。
【0094】
抽出液のテアニン含有量は、(国際公開第2008/040627号に記載のように)o-フタルアルデヒドでのポストカラム誘導体化後の蛍光検出を用いて逆相HPLCクロマトグラフィーにより決定した。
【0095】
抽出液の総ポリフェノール含量は、ISO14502-1:2005(E)として国際標準化機構により公表されている国際標準に詳述されているようなFolin-Ciocalteu法を用いて決定した。
【0096】
【表1】

【0097】
茎に富む物質から圧搾した抽出液は、茶製品を製造するために従来使用される物質(例えば一芯二葉)から圧搾した抽出液よりもテアニンの濃度が有意に高いことがTable 1(表1)のデータから明らかである。さらに、茶抽出液は、従来の水性茶抽出物と比較して、全固形分の濃度が高い。
【0098】
(実施例2)
本実施例には、茎から圧搾した抽出液と茎の水性抽出物との間のテアニン純度の差異が示されている。
【0099】
茶物質(一芯二葉)を採取して、茎を、葉および芽から手で分離した。次いで、茎を野菜カッターで粗く刻んだ後、2時間発酵させた。
【0100】
次いで、発酵させた茎を、2部分に分け、部分Aを流動層乾燥機ですぐに乾燥し、水性抽出物用に使用し、部分Bを圧縮して、茎抽出液を圧搾した。
【0101】
部分Aの乾燥した茶茎を、20℃の脱イオン水中で12分間連続撹拌しながら抽出した(茶1部:水10重量部)。使用済みの茎を、モスリン布を用いて冷抽出物から分離し、次いで90℃の脱イオン水10重量部中で12分間連続撹拌しながら、再抽出した。茎を、モスリン布を用いて熱抽出物から分離し、廃棄した。熱抽出物および冷抽出物を合わせて、20℃まで冷却し、Beckman Avanti J-25遠心分離機(JLA10.500ローター、10分、20℃)を用いて清澄化した。清澄化した抽出物は、2.3%の全固形分を有していた。
【0102】
部分B500gを、5トンの圧力下で1分間圧縮した。圧搾した抽出液をBeckman Avanti J-25遠心分離機(JLA10.500ローター、10分、20℃)を用いて清澄化した。3.6重量%の全固形分を有する清澄化した抽出液96gが得られた。
【0103】
HPLCで決定した抽出液および抽出物のテアニン含有量をTable 2(表2)に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
茎から圧搾した抽出液は、茎抽出物よりも高い純度でテアニンを有することがTable 2(表2)のデータから明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)茎に富む新鮮な茶物質を得るステップと、
b)新鮮な茶物質から抽出液を圧搾し、それにより茎残渣および茶化合物の混合物を含む茶抽出液を製造するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記新鮮な茶物質が、茎を少なくとも50重量%含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記茶抽出液を乾燥して濃縮物にする追加のステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記茶抽出液をリーフティーと合わせる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
追加のステップ:
c)茶化合物の前記混合物を分画するステップと、
d)少なくとも1種の茶化合物に富む少なくとも1つの画分を回収するステップと
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)が、膜濾過、分取クロマトグラフィー、溶媒抽出、沈殿、蒸留およびそれらの組合せから選択される単位工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の茶化合物が、アミノ酸である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の茶化合物が、テアニンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
追加のステップ:
e)前記茎残渣を加工し、加工茶を製造するステップ、および/または前記茎残渣を溶媒で抽出して、茶抽出物を製造するステップ
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)で抽出液を圧搾する元となる新鮮な茶物質の含水量が、前記新鮮な茶物質の30〜90重量%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1または2に記載の方法により得られる茶抽出液。
【請求項12】
抽出液1ml当たりテアニンを少なくとも4.0mg含む、請求項11に記載の茶抽出液。
【請求項13】
乾燥重量でテアニンを少なくとも7%含む、請求項11または12に記載の茶抽出液。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか一項に記載の抽出液を希釈することにより得られる飲料。
【請求項15】
テアニンと総ポリフェノールとの重量比が少なくとも1:4である、テアニンおよびポリフェノールを含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の茶抽出液または飲料。
【請求項16】
テアニンと総ポリフェノールとの重量比が少なくとも1:4である、テアニンおよびポリフェノールを含む飲料、好ましくは茶系飲料。

【公表番号】特表2011−502496(P2011−502496A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532549(P2010−532549)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064714
【国際公開番号】WO2009/059925
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】