説明

草刈作業機

【課題】小石などの飛散を良好に防止でき、かつ刈り残しを確実に低減できる草刈作業機を提供すること。
【解決手段】草刈作業機の草刈機4は、前後に所定間隔を空けて配置された一対のカッタ14,15を備えており、各カッタ14,15は、シャフト18,19およびその外周のハンマーナイフ21,22で構成されている。また、これらのカッタ14,15が収容されたカッタケース12の前側には、小石等の飛散を防止する飛散防止手段17が設けられている。ここで、前側に配置されたカッタ14は、ダウンカット方向に回転することで、前方側に倒れ込んだ草を起こす草起こし手段として機能する。このカッタ14で起こされた草は、アップカット方向に回転する後段側のカッタ15で確実に刈り取られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈作業機に係り、特に、ハンマーナイフ式のカッタを備えた草刈作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンマーナイフ式のカッタを車体前方側に備えた草刈作業機が知られている。このような草刈作業機においては、進行方向に対して草をアップカットする方向でカッタを回転させる。こうすることで、草を引き抜こうとする力に対して草根によって抗することになるため、草を良好に刈ることができる。
【0003】
一方で、カッタをアップカット方向に回転させると、カッタの回転によって小石などを弾き飛ばし易くなる。このため、カッタが収容されているカッタケースの前面には、小石などの飛散を防止するためのフロントカバーや、ゴム垂れ、あるいは簾状のチェーン等の飛散防止手段が設けられている(例えば、特許文献1,2)。この際、ゴム垂れやチェーンなどは、刈ろうとする草がカッタケース内に取り込まれるのに応じて変形し、また、フロントカバーは、取り込みに応じて上方へと逃げる構造とされ、取り込みが支障なく行われるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特許第3333870号公報
【特許文献2】特開平11−225530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した飛散防止手段が設けられていると、草をカッタケース内に取り込む際に飛散防止手段が草上にのしかかるようになるため、草が進行方向前方側に大きく倒れ込んでしまうという現象が生じる。このような場合には、カッタが理想的な角度で草に接触できなくなって表面を擦るだけとなり、刈り残しが増えるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、小石などの飛散を良好に防止でき、かつ刈り残しを確実に低減できる草刈作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る草刈作業機は、回転するシャフトの外周に複数のハンマーナイフが設けられたカッタと、このカッタの前方側に設けられた草起こし手段と、これらカッタおよび草起こし手段を収容するカッタケースと、カッタケースの前方側に設けられた飛散防止手段とを備え、前記草起こし手段は、前記カッタとは反対方向に回転するシャフトと、このシャフトの外周から突設された複数の爪状部材とを備えていることを特徴とする。
ここで、「前方側」とは、草刈作業機の進行方向の前方側のことであり、刈ろうとする草の取り込み側のことをいう。
【0008】
請求項2に係る草刈作業機は、請求項1に記載の草刈作業機において、前記草起こし手段は、前記爪状部材がハンマーナイフとされたカッタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上において、請求項1の発明によれば、草刈作業機に設けられた飛散防止手段により、小石がカッタケースの外部に飛散するのを防止できる。また、草起こし手段が設けられているので、飛散防止手段によって倒れ込んだ草を起こして後段側のカッタで確実に刈り取ることができ、刈り残しを確実に低減できる。従って、本発明の前述した目的を達成できる。
なお、飛散防止手段としては、フロントカバー、ゴム垂れ、チェーン、あるいはこれらの組み合わせ等を適用できる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、草起こし手段もカッタで構成されているので、一対のカッタで草を刈ることができ、一工程で二重刈りを実現でき、刈り残しをより一層低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る草刈作業機1の全体を示す側面図である。図1において、草刈作業機1は、クローラ式の走行装置2が設けられた車体3の前方側に草刈機4を備えた構成であり、走行装置2が車体3内に搭載された図示略のエンジンおよび油圧駆動装置等によって駆動される。車体3の後方側には、オペレータが起立する操縦台5や操縦装置6が設けられている。
【0012】
これらのうち、草刈機4はハンマーナイフ式であるとともに、車体3に取り付けられるリフトシリンダ3A(図3、図4参照)によって上下にリフト可能に設けられており、前記エンジンによって駆動される。図2はそのような草刈機4の斜視図、図3は草刈機4の側断面図、図4は草刈機4の一部を示す平断面図である。なお、図3、図4においては、断面部分のハッチングを省略してある。以下には、草刈機4について詳説する。
【0013】
図2〜図4において、草刈機4は、左右に一対のソリ11が設けられた無底箱状のカッタケース12を備えている。カッタケース12の内部には、両側の側面板13に回転自在に支持された一対のカッタ14,15が前後に所定間隔で収容されている。カッタケース12の一方の側面側には、各カッタ14,15を駆動するための動力伝達装置16が設けられており、エンジンの出力がこの動力伝達装置16を介してカッタ14,15に伝達される。また、カッタケース12の前方側には、小石の飛散を防止するための飛散防止手段17が取り付けられている。
【0014】
カッタ14,15はそれぞれ、回転自在なシャフト18,19の外周から複数のハンマーナイフ21,22が径方向の外側に突設された構成である。本実施形態では、前側のカッタ14のシャフト径がカッタ15のシャフト径よりも僅かに小さく、カッタ14のハンマーナイフ21の数も、カッタ15のハンマーナイフ22の数よりも少ない。そして、ハンマーナイフ21が本発明の爪状部材である。
【0015】
動力伝達装置16は、車体3のエンジン側から順に説明すると、同軸上に設けられた一対の第1、第2プーリ23,24、同じく同軸上に設けられた一対の第3、第4プーリ25,26、カッタ15の一端側に設けられた第5プーリ27、歯車28Aを同軸上に有した第6プーリ28、カッタ14の一端側に設けられて歯車28Aと噛み合う歯車29を備え、第1〜第6プーリ23〜28に巻回されたベルトによりエンジンからの出力が伝達される。
【0016】
ここで、第6プーリ28の歯車28Aには、カッタ14の歯車29が噛合しているため、カッタ14,15の回転方向はそれぞれ反対向きとなる。本実施形態では、図3に矢印で示すように、カッタ14が前方への進行に対してダウンカットとなるように回転し、カッタ15がアップカットとなるように回転する。カッタ14,15の回転速度は、本実施形態では略同じに設定されている。
【0017】
また、第1、第2プーリ23,24を連結しているシャフト31は、カッタケース12から後方側に延出した支持アーム32に支持され、第3、第4プーリ25,26を転結しているより長尺なシャフト33は、支持アーム34にて支持されている。そして、このようなシャフト31,33および第1〜第4プーリ23〜26を用いることで、エンジンからの動力伝達経路を、中央側からカッタケース12の一側面側へ向かうようにしている。
【0018】
飛散防止手段17は、各側面板13に回動自在に設けられた回動アーム41と、回動アーム41間に設けられたフロントカバー42とを備え、フロントカバー42の前縁には、簾状に形成されたチェーン43が垂設されている。また、フロントカバー42の上端には、コイルばね44の一端が係止され、このコイルばね44の他端が側面板13の所定位置に係止されている。このようなコイルばね44は、飛散防止手段17の上方への回動をアシストする。
【0019】
草刈作業機1の単なる走行時には、飛散防止手段17が最も低い状態に位置しており、カッタ14(場合によってはカッタ15)により弾き飛ばされた小石は、フロントカバー42またはチェーン43に当たり、外部へ飛散するのを防止できる。また、草刈作業時において、フロントカバー42およびチェーン43は、カッタケース12内へ取り込まれる草により上方に持ち上げられ、飛散防止の役目を果たさなくなるが、取り込まれる草によって小石もまた、外部への飛散が防止される。
【0020】
以上に説明した構成の草刈機4では、従来に比してカッタ14を備えていることが最も大きな特徴である。草刈作業時において、カッタケース12内へ取り込まれる草は、前述のように飛散防止手段17を押し上げる反面、飛散防止手段17の自重によって前方側へ倒れ込み、従来では、このように倒れ込んだ草を確実に刈り取ることができなかった。
【0021】
しかし、本実施形態の草刈機4によれば、ダウンカット方向に回転しているカッタ14のハンマーナイフ21が、前方に倒れ込んだ草に接触して起こすとともに、回転するカッタ14の外周に沿って草を後方側になびかせる。その後、後方側のカッタ15のアップカットにより、後方側になびいた草を確実に刈り取るのであり、刈り残しを確実に低減できるのである。つまり、カッタ14が本発明に係る草起こし手段となっている。
【0022】
また、草を起こす際には、カッタ14のハンマーナイフ21の接触によっても草が刈られることがあるため、後続のカッタ15での作用を加えると、2重刈りを一工程で完了させることができ、刈り残しをより一層低減できる。
【0023】
なお、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、数量などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、数量などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0024】
例えば、前記実施形態では、倒れ込んだ草を起こす草起こし手段としてカッタ14が用いられ、このカッタ14にはハンマーナイフ21が取り付けられていたが、本発明の草起こし手段としては、カッタ15と逆方向に回転するシャフトに、その外周から径方向に突出した爪状部材が設けられていればよく、この爪状部材としてハンマーナイフを用いるかどうかは任意である。すなわち、ハンマーナイフ21の先端などは、図4に示すように、カッタ刃となって草を刈ることが可能であるが、先端がカッタ刃ではなく、草を起こすのに都合のよい適宜な形状であってよい。
【0025】
前記実施形態では、カッタ14,15の回転速度が略同じになるように設定されていたが、第5、第6プーリ27,28の径を変えたり、歯車28A,29の径を変えたりすることで、それぞれの回転速度を変えてもよく、カッタ14,15のいずれの回転速度を速くし、いずれを遅くするかは、その実施にあたって適宜に決められてよい。
【0026】
前記実施形態の草刈作業機1には、オペレータが起立姿勢で乗り込む操縦台5が設けられていたが、本発明の草刈作業機は、オペレータが歩きながら操縦する構成であってもよく、また、操縦台上に着座シートが設けられた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、草刈機に小石等の飛散防止手段が設けられた草刈作業機に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る草刈作業機の全体を示す側面図。
【図2】草刈作業機を構成する草刈機の斜視図。
【図3】草刈機の側断面図。
【図4】草刈機の一部を示す平断面図。
【符号の説明】
【0029】
1…草刈作業機、4…草刈機、12…カッタケース、14…草起こし手段であるカッタ、15…カッタ、17…飛散防止手段、18…草起こし手段のシャフト、19…シャフト、21…爪状部材であるハンマーナイフ、22…ハンマーナイフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するシャフトの外周に複数のハンマーナイフが設けられたカッタと、
このカッタの前方側に設けられた草起こし手段と、
これらカッタおよび草起こし手段を収容するカッタケースと、
カッタケースの前方側に設けられた飛散防止手段とを備え、
前記草起こし手段は、前記カッタとは反対方向に回転するシャフトと、
このシャフトの外周から突設された複数の爪状部材とを備えている
ことを特徴とする草刈作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の草刈作業機において、
前記草起こし手段は、前記爪状部材がハンマーナイフとされたカッタである
ことを特徴とする草刈作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−35840(P2008−35840A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218479(P2006−218479)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(307009883)ハスクバーナ・ゼノア株式会社 (66)
【Fターム(参考)】