説明

草刈装置

【課題】小型の田植機の走行部にも装着可能で、草刈作業がクラッチ操作により中断されることなく安定して刈取作業が行える草刈装置を提供することを課題とする。
【解決手段】田植機の走行部1の後部に取り付けられる機台21と、該機台21上に搭載されるエンジン22と、該エンジン22により駆動され前記機台21上に搭載される油圧ポンプ23と、該油圧ポンプ23に作動油を供給し前記機台21上に搭載される作動油タンク24と、前記走行部1の後部に昇降リンク機構5を介して連結され、前記油圧ポンプ23からの圧油により駆動される刈取機構25とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機の走行部に装着する草刈装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植機の走行部の後部に昇降リンク機構を配置し、該昇降リンク機構の後部にヒッチを介して草刈装置を装着し、道路上から、或いは、水田側から畦や農道に生える草を刈り取る草刈装置は公知となっている(特許文献1参照)。
特許文献1における草刈装置は、田植機の昇降リンク機構の後部に設けたヒッチに連結フレームを装着し、該連結フレームの左右一端からブームやアームやブームシリンダやアームシリンダ等を備える昇降アーム機構を延設し、該昇降アーム機構の先端に刈取機構が配置され、前記連結フレームの左右他端側には作動タンクとバランスウエイトが配置されていた。そして、刈取機構の刈刃を駆動する油圧モータは油圧ポンプからの圧油により作動され、該油圧ポンプは連結フレームに取り付けられ、該油圧ポンプは伝動軸(PTO軸)からの動力により駆動される構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−60256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような草刈装置は、昇降リンク機構の後部に、昇降アーム機構や刈取機構や作動油タンクやバランスウエイト等を配置する構成となっていたので、機体の後部側が重くなり、前後バランスが悪くなっていた。そして、刈取機構を走行機体の車幅内に納めるように、昇降アーム機構を後方へ回動すると後端に刈取機構が位置するために更に前後重量バランスが悪化し、路上走行では走行安定性が低下していた。よって、大型の田植機にしか草刈装置を装着して使用することができず、小型の田植機には草刈装置を装着することができなかった。
また、油圧ポンプはPTO軸により駆動される構成であったために、走行速度を変速したり進行方向を変更したりするために、走行クラッチ(主クラッチ)を「切」とした場合には、油圧ポンプが停止し、草刈装置も停止することとなり、走行クラッチを「切」とした場所では刈り残しが発生していた。つまり、田植機は走行クラッチを「切」として停止すると、植付装置も停止させる構成としていたので、PTO軸の回動も停止され、PTO軸に油圧ポンプを連結して駆動する構成とすると、走行クラッチを「切」とすると油圧ポンプも停止することになり作業ができない構成となっていた。
また、田植機のPTO軸は走行速度に同期(車速連動)する構成となっていたために、低速走行では刈取機構の刈刃の回転数も低下し、刈取作業を行うために必要な回転数が得られず、きれいに刈り取ることができない場合があった。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、小型の田植機の走行部にも装着可能で、草刈作業がクラッチ操作により中断されることなく安定して刈取作業が行える草刈装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、田植機の走行部の後部に取り付けられる機台と、該機台上に搭載されるエンジンと、該エンジンにより駆動され前記機台上に搭載される油圧ポンプと、該油圧ポンプに作動油を供給し前記機台上に搭載される作動油タンクと、前記走行部の後部に昇降リンク機構を介して連結され、前記油圧ポンプからの圧油により駆動される刈取機構とを備えるものである。
【0008】
請求項2においては、前記機台は走行部の機体フレームとリヤアクスルケースに着脱可能に取り付けられるものである。
【0009】
請求項3においては、前記機台の左右一側前部に操作具取付ブラケットを配置し、走行部の座席近傍に前記油圧ポンプからの圧油の送油方向を切り換え操作する操作具を配置するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、刈取機構を駆動する油圧モータに圧油を送油する油圧ポンプは、機台上に設けたエンジンにより、走行部のクラッチ操作や走行速度に関係なく常時駆動できるため、既存の田植機の走行部を利用して安定して草刈作業を行うことができる。
また、刈取機構と走行部の駆動源が異なるため、つまり、別々のエンジンで駆動するため、走行部が水田を走行して負荷がかかった場合でも安定して草刈作業を行うことができる。
また、リンク機構の後部に作動油タンクや油圧ポンプ等の重量物を搭載する構造でないため、小型の田植機であっても、草刈装置を装着することが可能となり、田植機の汎用性も向上することができる。
また、刈取機構の昇降は、田植機の走行部が備える昇降リンク機構により昇降するため、別途、昇降用の油圧シリンダや操作部材や油圧切換手段等が不要となり、構造が簡単となり、コスト低減化も図れる。
【0012】
請求項2においては、機台の着脱が簡単に行え、剛性も十分に確保することが可能となる。
【0013】
請求項3においては、エンジンや油圧ポンプや作動油タンクと操作具を一つのユニットとして着脱可能となり、付け替えが容易にでき、組立も容易にできる。また、着脱時において、油圧ポンプと作動油タンクと操作具を接続する油圧配管を外す必要がなく、配管も短く構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る草刈装置の全体的な構成を示した側面図。
【図2】本発明の実施形態に係る草刈装置の全体的な構成を示した平面図。
【図3】連結ブラケット部分の斜視図。
【図4】刈取取付ブラケット部分の斜視図。
【図5】乗用管理機に刈取機構を装着した側面図。
【図6】刈取機構を駆動するポンプを走行部のより駆動する実施形態の側面図。
【図7】刈取機構を伝動モータで駆動する実施形態の平面図。
【図8】簡易着脱式のヒッチに連結ブラケットを装着可能に構成した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を、図1、図2により全体構成から説明する。なお、以下において、図1における矢印U方向を上方向として上下方向を規定して、矢印F方向を前方向として前後方向を規定する。
草刈装置20は、田植機の走行部1の後部に取り付けられた機台21と、該機台21上に搭載される作業用のエンジン22と、該エンジン22により駆動され前記機台21上に搭載される油圧ポンプ23と、該油圧ポンプ23に作動油を供給し前記機台21上に搭載される作動油タンク24と、前記走行部1の後部に昇降リンク機構5と前後回動平行リンク機構60を介して連結され、前記油圧ポンプ23からの圧油により駆動される刈取機構25等を備える。
【0016】
前記走行部1は、田植機の植付装置を外したものであり、走行部1は機体フレーム2と、機体フレーム2の前部上に搭載される走行用のエンジン3と、該エンジン3の動力を変速して後述する前輪6および後輪7に動力を伝達するミッションケース4と、前記機体フレーム2の後部に連結される昇降リンク機構5と、前記機体フレーム2よりフロントアクスルケース12を介して支承される前輪6・6と、前記ミッションケース4後部よりリヤアクスルケース8を介して支承される後輪7・7と、前記機体フレーム2の前後中途部上に配置される操縦部9等を備える。
【0017】
前記機体フレーム2は、前後方向に略水平方向に延設される左右一対の前後フレームと、該左右の前後フレームに対して直交方向(左右方向)に配置して、左右の前後フレームを適宜前後間隔を開けて連結される複数の連結フレームと、前後フレームの後端から後上方へ延設される後フレーム2aにより構成される。該後フレーム部2aは昇降リンク機構5の前部を支持し、上部は後述する座席10および機台21を支持する構成としている。
前記エンジン3は前記機体フレーム2の前部上に搭載され、変速した後に前輪6および後輪7に伝える。但し、走行用のエンジン3は機体の前後中途部に配置する構成であってもよい。
ミッションケース4は変速装置を収納し、エンジン3からの動力を変速し、ミッションケース4の前部から伝動機構を介してフロントアクスルケース12に変速後の動力を伝達して前輪6・6を駆動し、ミッションケース4の後部から左右のリヤアクスルケース8・8に変速後の動力を伝達して後輪7・7を駆動する。
【0018】
昇降リンク機構5は、左右の上リンク51・51と左右の下リンク52・52と、回動アーム53と、昇降駆動するアクチュエータとしての油圧シリンダ54等を備える。前記上リンク51・51の前端と前記下リンク52・52の前端は機体フレーム2の後フレーム部2aに上下回転自在に支持され、前記上リンク51・51の後端と前記下リンク52・52の後端は、連結ブラケット55に上連結ピン56と下連結ピン57によりそれぞれ上下回転自在に支持され、平行リンク機構を構成している。
前記回動アーム53の下部は前記下リンク52に固設され、回動アーム53の上部は油圧シリンダ54の一端に連結される。該油圧シリンダ54の他端は機体フレーム2に連結される。回動アーム53の上部と下連結ピン57との間には補強フレーム58が介装されて補強されている。
【0019】
このように構成することにより、操縦部9に設けて昇降操作可能とする作業レバー13を操作して、油圧シリンダ54を縮小させると、上リンク51・51と下リンク52・52の後部が上昇回動され、油圧シリンダ54を伸長させると、上リンク51・51と下リンク52・52の後部が下降回動され、連結ブラケット55を略平行に昇降することを可能に構成している。但し、昇降リンク機構5は前記構成に限定されるものではなく、上リンク51を一本で構成したり、上リンク51の前部を油圧シリンダ54の一端に連結したりすることも、2点リンク式や3点リンク式に構成することも可能である。また、上リンク51・51と下リンク52・52の後部の連結構造も限定するものではなく、図8に示すように、簡易着脱式のヒッチ97(所謂、クイックヒッチまたはオートヒッチ)により連結ブラケット55を着脱可能に構成することもできる。つまり、上リンク51・51と下リンク52・52の後部に簡易着脱式のヒッチ97を取り付けて、該簡易着脱式のヒッチ97の上係合部97aに上連結ピン56を係合し、簡易着脱式のヒッチ97の下係合部97bに下連結ピン57を係合し、該下連結ピン57をロック部材97cにより固定するように構成するのである。なお、図8は大型の田植機に装着される3点リンク式のヒッチとしている。
【0020】
操縦部9は、機体フレーム2の前後中途部上に配置され、作業者が着座する座席10や、該座席10の前方に配置して操向操作するステアリングハンドル11や、走行速度を変速する変速レバーや、作業機(本実施形態では刈取機構25)を昇降したり、PTOを入切操作する作業レバー等からなる。
【0021】
走行部1の後部に取り付けられた機台21は、エンジン22と油圧ポンプ23と作動油タンク24を載置するためのものである。機台21は、平面視矩形状に形成され、長手方向を左右方向として配置し、機台21の両側前部より取付ステー21a・21aが前方に延設され、該取付ステー21a・21aの前端が機体フレーム2の後部フレーム2a上部にボルト等により着脱可能に固定される。また、機台2の左右一側前部、つまり、進行方向右側の取付ステー21aの前部に操作具取付ブラケット26がボルト等により固定され、該操作具取付ブラケット26に油圧ポンプ23から圧送される圧油の送油方向を切り換える操作具となる刈取レバー27が取り付けられる。
【0022】
また、機台21の左右両側後部とリヤアクスルケース8・8との間に支持フレーム29・29が介装される。つまり、機台21の左右両側後部に支持フレーム29・29の上部がボルト等により着脱可能に固定され、該支持フレーム29・29の下部がリヤアクスルケース8・8にボルト等により着脱可能に固定される。
【0023】
従って、後部フレーム2aに対して取付ステー21a・21aを固定するボルトと、リヤアクスルケース8・8に対して支持フレーム29・29を固定するボルトとを外すことにより、容易に機台21を走行部1から外すことができる。逆に、ボルトにより容易に機台21を機体フレーム2およびリヤアクスルケース8・8に固定することができる。こうして、機台21を走行部1に対して容易に着脱することが可能となり、4点で支持することができる。なお、取付ステー21a・21aと支持フレーム29・29の長さや曲げを変更することにより、小型の田植機から大型の田植機の走行部1に機台21が取付可能となる。
【0024】
前記機台21には、エンジン22と油圧ポンプ23と作動油タンク24と切換バルブ31と刈取レバー27が取り付けられ、これらを一つのユニットとして着脱可能としている。詳細には、エンジン22は機台21の右側上に載置され、油圧ポンプ23は機台21の左側上に載置され、作動油タンク24は油圧ポンプ23の上方に取付枠30を介して載置される。
【0025】
エンジン22はクランク軸が左右方向となるように配置され、出力軸が左方に突出され、該出力軸は油圧ポンプ23の駆動軸と連結される。エンジン22の操作部となるエンジン停止スイッチや燃料コックやアクセルレバーやリコイルスタータ等は右側となるように配設され、前記刈取レバー27の配設方向や刈取機構25の作業側と同方向となるようにして、操作がし易い構成としている。
【0026】
油圧ポンプ23は、エンジン22により駆動される。油圧ポンプ23の吸入ポートは配管(以下配管は図示せず)を介して作動油タンク24と連通され、吐出ポートは配管を介して切換バルブ31と連通される。切換バルブ31は操作具となる刈取レバー27を有し、該刈取レバー27を操作することにより油圧ポンプ23からの圧油の送油方向が切り換えられる。つまり、切換バルブ31には油圧ポンプ23と接続されるポンプポートと、作動油タンク24へ戻すタンクポートと、刈取機構25の油圧モータ32へ吐出する吐出ポートを有し、各ポートは刈取レバー27に連結された切換バルブ31のスプールを摺動させることにより吐出方向が切り換えられる。刈取レバー27を刈取「入」側に回動すると、油圧ポンプ23からの圧油は油圧モータ32に送油され、刈取レバー27を「切」側に回動すると、油圧ポンプ23からの圧油は作動油タンク24へ送油されるようにしている。
但し、油圧ポンプ23は図6に示すように、走行部1のエンジン3の出力軸から直接駆動するように取り付けた油圧ポンプ23aとしたり、ミッションケース4に油圧ポンプ23bを取り付けて、ミッションケース4への入力軸から駆動される構成としたりすることもできる。この場合、油圧ポンプ23a・23bは、走行部1の油圧シリンダ54等を駆動する油圧ポンプ(チャージポンプ)と共用することができ、または、チャージポンプと別体として二連の油圧ポンプとすることもできる。このように構成することにより、機台21上には作動油タンク24のみ取り付けるだけでよく、更に構成を簡単にでき、コスト低減化も図れる。
また、油圧ポンプ23は、図7に示すように、エンジン22の代わりに電動のモータ95により駆動する構成とすることができる。この場合、走行部1に装着するバッテリから電力を得てもよいが、電力が不足する場合には機台21上にモータ95と該モータ95に電力を供給するバッテリ96を搭載する構成とすることもできる。この場合、エンジン22を搭載するよりも、取り扱いが簡単で、騒音や振動等を低減することが可能となる。
【0027】
作動油タンク24は取付枠30上に載置固定され、該取付枠30は板体が後面視逆U状に折り曲げ形成されて、機台21にボルト等により固定され、上面に作動油タンク24を載置固定し、取付枠30の内部に油圧ポンプ23を収納する構成としている。
【0028】
刈取機構25は、昇降リンク機構5の後部に連結される前後回動平行リンク機構60、および、前後回動平行リンク機構60の先端に連結される上下揺動リンク機構40を介して連結される。
【0029】
前後回動平行リンク機構60は、平行リンクより構成され、刈取機構25を前方に向けたまま前後に回動可能に連結するものである。つまり、昇降リンク機構5の後端には前記連結ブラケット55が連結され、連結ブラケット55に前横方向リンク61と後横方向リンク62の一端が枢結され、前横方向リンク61と後横方向リンク62の他端に刈取取付ブラケット63が連結される。
【0030】
前記連結ブラケット55は、図3に示すように、前縦フレーム55aと上プレート55bと中間プレート55cとにより側面視逆F字状に構成される。前縦フレーム55aは略四角形の枠状に構成され、左右両側の支柱下部にそれぞれ上連結ピン56と下連結ピン57により上リンク51と下リンク52の後部が上下回動自在に枢支される。前縦フレーム55aの上部後面より上プレート55bと中間プレート55cが略水平で後方へ平行に延設される。
【0031】
上プレート55bと中間プレート55cは平面視で後側が短い上辺、前側が長い下辺の略台形状に構成される。上プレート55bと中間プレート55cの下辺右側の頂部に軸孔を開口して、上プレート55bと中間プレート55cの間に前横方向リンク61の一端を挿入して、前横方向リンク61の一端に開口した軸孔および上プレート55bと中間プレート55cの軸孔に枢支軸64を貫通させて、前横方向リンク61を前後回転自在に軸支している。また、上プレート55bと中間プレート55cの上辺右側の頂部に軸孔を開口して、上プレート55bと中間プレート55cの間に後横方向リンク62の一端を挿入して、後横方向リンク62の一端に開口した軸孔および上プレート55bと中間プレート55cの軸孔に枢支軸65を貫通させて、後横方向リンク62を前後回転自在に軸支している。なお、上プレート55bと中間プレート55cの左側や中間プレート55cと前縦フレーム55aの間は補強板にて適宜連結固定されて補強されている。
【0032】
そして、連結ブラケット55と前記前横方向リンク61または後横方向リンク62の間に回動位置固定手段59が設けられている。具体的には、回動位置固定手段59は、前横方向リンク61または後横方向リンク62の一側に固定される回動固定板66と、該回動固定板66を連結ブラケット55に固定する固定ピン67からなり、本実施形態では、後横方向リンク62の一側に回動固定板66が固定される。
そして、上プレート55bと中間プレート55cの上辺の略中途部には固定孔が開口され、上プレート55bと中間プレート55cの間に後横方向リンク62の一端上面に固設した回動固定板66が嵌入され、後横方向リンク62の一端上面に固設した回動固定板66の調節孔66aと前記固定孔に固定ピン67を挿入して、前横方向リンク61と後横方向リンク62の角度を固定できるようにしている。前記回動固定板66は、平面視半円状に構成され、円の中心に軸孔が開口され、軸孔を中心に円弧に沿って一定間隔をおいて調節孔66a・66a・・・が複数開口されている。なお、前記円の中心の軸孔は前記枢支軸65の軸孔と一致させている。
【0033】
こうして、固定ピン67を抜いて、前横方向リンク61と後横方向リンク62を前後回動させて所望の角度で、つまり、走行部1から刈取機構25までの左右方向の距離が所望の距離となる位置で、上プレート55bと中間プレート55cの固定孔と調節孔66aを一致させて固定ピン67を挿入することで、前横方向リンク61と後横方向リンク62を固定することが可能となる。但し、回動位置固定手段59の回動固定板66は前横方向リンク61の一側に設ける構成とすることもでき、また、連結ブラケット55に回動固定板66を一体的に構成し、回動固定板66の調節孔66aと前横方向リンク61または後横方向リンク62に設けた一つの固定孔に固定ピン67を挿入して固定する構成とすることも可能である。
【0034】
前記前横方向リンク61と後横方向リンク62の他端には刈取取付ブラケット63が連結される。刈取取付ブラケット63は、図4に示すように、左右一側(左側)に前後回動平行リンク機構60の他端の枢支部が形成され、刈取取付ブラケット63の左右他側(右側)には、上下揺動リンク機構40の上部の枢支部が形成されている。具体的には、刈取取付ブラケット63は、上板部63aと下板部63bと縦板部63cと側板部63dを備える。
上板部63aは、平面視で前側が短い上辺、後側が長い下辺の略台形状に形成されている。下板部63bは平面視略三角形状に構成され、上板部63aの左側と略同形状に構成して、上板部63aと平行に配設される。縦板部63cは矩形状の板体で上板部63aの左右中途部下面と下板部63bの右辺とに前後垂直方向に固設される。側板部63dは上板部63aの右側辺から下方に曲げられて、縦板部63cと平行に配設される。
【0035】
上板部63aの上辺左側の頂部と下板部63bの前頂部に平面視で位置を合わせて軸孔が開口され、上板部63aと下板部63bの軸孔間に前横方向リンク61の他端に開口した軸孔を一致した状態で枢支軸68が上下方向に貫通されて、刈取取付ブラケット63に前横方向リンク61の他端が前後回動自在に枢支される。
【0036】
上板部63aの下辺左側の頂部と下板部63bの左頂部に平面視で位置を合わせて軸孔が開口され、この上板部63aと下板部63bの軸孔間に後横方向リンク62の他端に開口した軸孔を一致した状態で枢支軸69が上下方向に貫通されて、刈取取付ブラケット63に後横方向リンク62の他端が前後回動自在に枢支される。
こうして、連結ブラケット55と前横方向リンク61と後横方向リンク62と刈取取付ブラケット63により平行リンクを構成し、前横方向リンク61と後横方向リンク62の回動角度を変更しても、刈取機構25は常に前方を向く構成としている。
【0037】
上下揺動リンク機構40は、刈取取付ブラケット63と前縦リンク41と後縦リンク42と下ブラケット45とを備え、刈取機構25を上下平行に揺動可能に吊設する構成としている。
上下揺動リンク機構40の上部の枢支部の構成を説明する。前記縦板部63cと側板部63dの前後にそれぞれ左右方向に軸孔が開口され、上下揺動リンク機構40の前縦リンク41の上部と後縦リンク42の上部を枢支軸43・44により枢支する構成としている。
【0038】
下ブラケット45は後面視略U字状に板体が折り曲げて形成され、下ブラケット45の前部と後部に軸孔がそれぞれ左右方向に開口され、下ブラケット45の前部に前記前縦リンク41の下部が嵌合されて、下ブラケット45の前側の軸孔と前縦リンク41の下部に開口した軸孔とを一致させて枢支軸46により前後回動自在に枢支される。また、下ブラケット45の後部に前記後縦リンク42の下部が嵌合されて、下ブラケット45後部の軸孔と後縦リンク42下部に開口した軸孔とを一致させて枢支軸47により前後回動自在に枢支される。
こうして、刈取取付ブラケット63と前縦リンク41と後縦リンク42と下ブラケット45により平行リンク機構が構成され、下ブラケット45に取り付けられる刈取機構25を上下略水平の状態で揺動させることが可能となる。
【0039】
また、前記下ブラケット45の下面には、ステー48・49が前後平行に下方に突設され、該ステー48・49に前後方向に軸孔が開口され、刈取機構25の刈取カバー72R上面より立設した支持体70の上端を枢支軸71により左右揺動自在に支持している。こうして、刈取機構25は上下揺動リンク機構40の下部で左右揺動自在となり、刈取面(畦面)の傾斜に合わせることが可能となる。
刈取機構25は左右の刈取カバー72L・72Rと、該刈取カバー72L・72R内にそれぞれ収納される左右の刈刃と、該刈刃を回転駆動する油圧モータ32と、前後のゲージ輪73・74等を備える。但し、刈取機構25の構成は限定するものではなく、刈刃は1枚でも3枚以上でもよく、また、刈刃はブレード式に限定するものではなく、バリカン式やリール式等であってもよい。
【0040】
以上のような構成において、刈取作業を行わず移動走行する場合等では、油圧シリンダ54を縮小させて刈取機構25を上昇させ、固定ピン67を抜いて、前横方向リンク61と後横方向リンク62が前後方向を向く状態に回動して、連結ブラケット55の上プレート55bと中間プレート55cの固定孔と回動固定板66の調節孔66aを一致させて固定ピン67を挿入することで、前横方向リンク61と後横方向リンク62を前後方向に向けて固定することができる。この状態では、刈取機構25は走行部の後方に位置するため安定した走行が可能となる。
【0041】
また、草刈作業を行う場合には、例えば、田植後に条間を走行して隣接する畦の草刈を行う場合には、刈取開始位置まで移動し、刈取機構25を上昇させた状態で、固定ピン67を抜いて、前横方向リンク61と後横方向リンク62を側方へ回動して、刈取機構25が畦上方に位置するまで回動し、連結ブラケット55の上プレート55bと中間プレート55cの固定孔と回動固定板66の調節孔66aを一致させて固定ピン67を挿入して固定する。この前横方向リンク61と後横方向リンク62を側方へ回動するときには、前後回動平行リンク機構60は平行リンクで構成されているために、刈取機構25は常に前後方向を向いた状態となっている。従って、側方へ張り出したときに刈取機構25の向きを調整する必要がないのである。
【0042】
この側方へ張り出した状態で油圧シリンダ54を伸長させて刈取機構25を下降させ、草刈装置20側のエンジン22を始動して定格回転数で油圧ポンプ23を駆動し、刈取レバー27を「入」に回動して、走行部1を前進させることで草刈作業を行うことができる。この刈取機構25を側方へ張り出した状態では、走行部1に対して偏心した状態となっているので、重量バランスが崩れた状態となっているが、刈取機構25は接地させた状態で前方へ引っ張りながら刈取作業を行うので、昇降リンク機構5には大きな荷重はかからず走行安定性は大きく崩れることはない。
【0043】
以上のように、田植機の走行部1の後部に取り付けられる機台21と、該機台21上に搭載されるエンジン22と、該エンジン22により駆動され前記機台21上に搭載される油圧ポンプ23と、該油圧ポンプ23に作動油を供給し前記機台21上に搭載される作動油タンク24と、前記走行部1の後部に昇降リンク機構5を介して連結され、前記油圧ポンプ23からの圧油により駆動される刈取機構25とを備えるので、刈取機構25を駆動する油圧モータ32に圧油を送油する油圧ポンプ23は、機台21上に設けたエンジン22により、走行部1のクラッチ操作や走行速度に関係なく常時駆動できるため、既存の田植機の走行部1を利用して安定して草刈作業を行うことができる。また、刈取機構25と走行部1の駆動源が異なるため、つまり、別々のエンジンで駆動するため、走行部1が水田を走行して負荷がかかった場合でも安定して草刈作業を行うことができる。また、昇降リンク機構5の後部に作動油タンクや油圧ポンプ等の重量物を搭載する構造でないため、小型の田植機であっても、草刈装置20を装着することが可能となり、田植機の汎用性も向上することができる。また、刈取機構25の昇降は、田植機の走行部1が備える昇降リンク機構5により昇降するため、別途、昇降用の油圧シリンダや操作部材や油圧切換手段等が不要となり、構造が簡単となり、コスト低減化も図れる。また、走行部1は田植機の植付装置を外したものであるため、車高が高くなっており、水田内だけでなく、野菜等を栽培した圃場内や瓦礫や石ころが敷かれた道等を走行して、圃場内から周囲の畦や法面、または、道路側から畦や法面の草刈作業が可能となる。
【0044】
また、前記機台21は走行部1の機体フレーム2とリヤアクスルケース8に着脱可能に取り付けられるので、機台21の着脱が簡単に行え、剛性も十分に確保することが可能となる。
【0045】
また、前記機台21の左右一側前部に操作具取付ブラケット26を配置し、走行部1の座席10近傍に前記油圧ポンプ23からの圧油の送油方向を切り換え操作する操作具となる刈取レバー27を配置するので、エンジン22や油圧ポンプ23や作動油タンク24と操作具を一つのユニットとして着脱可能となり、付け替えが容易にでき、組立も容易にできる。また、着脱時において、油圧ポンプ23と作動油タンク24と操作具を接続する油圧配管を外す必要がなく、配管も短く構成できる。
【0046】
次に、田植機の走行部1の代わりに乗用管理機80に草刈装置20を装着した実施形態を図5より説明する。なお、前記実施形態と同様の点に関しては同一符号を付してその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
乗用管理機80は周知の4輪型の走行部83を備えており、機体フレーム84の前部上に走行用および作業用のエンジン85を載置し、機体フレーム84前下部に前輪86を支承し、後下部に後輪87を支承している。機体フレーム84前後中途部上にステアリングハンドルや座席等からなる操縦部88が配置される。
【0047】
そして、機体フレーム84の後部上にギヤボックス89が固設され、該ギヤボックス89よりPTO軸90が突出され、前記エンジン85からの動力をギヤボックス89に伝達して、PTO軸90より機体フレーム84上に固設した油圧ポンプ23に動力を伝達可能としている。但し、PTO軸90の配置位置は限定するものではない。該油圧ポンプ23からの圧油により刈取機構25の油圧モータ32を駆動する。こうして、作業用のエンジンを省いて乗用管理機80の走行用のエンジン85により草刈装置20の油圧ポンプ23を駆動して、コスト低減化を図ることを可能としている。
また、機体フレーム84の後部上に作動油タンク24が載置される。但し、油圧ポンプ23および作動油タンク24は機台21上に載置固定して、機台21を機体フレーム84上の任意位置に固定できるようにして、ユニットとして着脱可能に構成することもできる。
【0048】
また、機体フレーム84の後部に後昇降リンク機構81が配置され、油圧シリンダ91により昇降可能に構成している。また、機体フレーム84の前部に前昇降リンク機構82が配置され、油圧シリンダ92により昇降可能に構成されている。なお、後昇降リンク機構81および前昇降リンク機構82は本実施形態では平行リンク機構により構成しているが、3点リンク式や2点リンク式等で構成することも可能である。
前記後昇降リンク機構81の後部に、または、前昇降リンク機構82の前部に連結ブラケット55が着脱可能に構成される。但し、前述の簡易着脱式の簡易ヒッチ97により連結ブラケット55を取り付ける構成としてもよい。
【0049】
そして、前記連結ブラケット55に前記同様に前後回動平行リンク機構60および上下揺動リンク機構40を介して刈取機構25を取り付ける構成としている。
このように構成することにより、乗用管理機80が備えるエンジン85により刈取機構25を作動させることが可能となり、構造の簡素化およびコスト低減化が図れ、油圧ポンプ23や作動油タンク24も支持フレーム29や取付ステー21a等を必要とせず、容易に機体フレーム84上に取り付けることができる。そして、前後回動平行リンク機構60や上下揺動リンク機構40や刈取機構25は、乗用管理機80が備える後昇降リンク機構81または前昇降リンク機構82により昇降可能となり、昇降機構の構成を簡単にでき、昇降およびPTOの操作手段も共用できて、コスト低減化も図れるのである。特に、前昇降リンク機構82に刈取機構25を取り付ける構成の場合には、作業者は前方を向きながら刈取作業を行うことができるため、作業性を向上することができ、前後重量バランスも向上できる。
【0050】
以上のように、走行部1(83)の後部にリンク機構を介して刈取機構25を取り付ける草刈装置であって、走行部1(83)に備える油圧シリンダ54(91・92)により昇降駆動される昇降リンク機構5(81・82)と、該昇降リンク機構5(81・82)の後部に取り付けられる連結ブラケット55と、該連結ブラケット55に前後平行に配置して一端が上下方向の軸部材により枢支される前横方向リンク61と後横方向リンク62とによりなる前後回動平行リンク機構60と、該前横方向リンク61と後横方向リンク62の他端を枢支して刈取機構25を吊設する刈取取付ブラケット63と、前記連結ブラケット55に対して前記前横方向リンク61または後横方向リンク62の回動位置を固定する回動位置固定手段59とを備えるので、作業車両に備える油圧シリンダ54(91・92)により昇降リンク機構5(81・82)を昇降回動することで刈取機構25も昇降できるため、別途刈取機構25を昇降するための油圧シリンダや油圧ポンプや配管や切換バルブ等が不要となり、軽量化が図れてコスト低減化も図れる。従って、小型の田植機や乗用管理機であっても装着して作業することが可能となる。
また、前後回動平行リンク機構60を回動することにより、刈取機構25の左右位置を変更できるようになる。このとき、平行リンクにより構成しているため刈取機構25の前後方向の向きは変わることがないため、刈取取付ブラケット63に刈取機構25の左右方向の向きを調節する部材を設ける必要がなく、安価で構造を簡単にできる。
【0051】
また、前記昇降リンク機構5は、上リンク51と下リンク52により平行リンク機構により構成されるので、昇降リンク機構5が平行リンク機構により構成されるため、刈取機構25を昇降したときに、刈取機構25の上下方向の向きを調節する部材、つまり、刈取機構を水平に調節するための部材を設ける必要がなく、安価で構造を簡単にできる。
【0052】
また、前記刈取取付ブラケット63は、上下揺動リンク機構40を介して刈取機構25を吊設するとともに、刈取取付ブラケット63の左右一側には、前後回動平行リンク機構60の他端の枢支部が形成され、刈取取付ブラケット63の左右他側には、上下揺動リンク機構40の上部の枢支部が形成されるので、刈取取付ブラケット63に前後回動平行リンク機構60と上下揺動リンク機構40の枢支部が一体的に構成されるため、簡単な構成で軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 走行部
2 機体フレーム
5 昇降リンク機構
8 リヤアクスルケース
10 座席
21 機台
22 エンジン
23 油圧ポンプ
24 作動油タンク
25 刈取機構
26 操作具取付ブラケット
27 刈取レバー
32 油圧モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
田植機の走行部の後部に取り付けられる機台と、
該機台上に搭載されるエンジンと、
該エンジンにより駆動され前記機台上に搭載される油圧ポンプと、
該油圧ポンプに作動油を供給し前記機台上に搭載される作動油タンクと、
前記走行部の後部に昇降リンク機構を介して連結され、前記油圧ポンプからの圧油により駆動される刈取機構とを備えることを特徴とする草刈装置。
【請求項2】
前記機台は走行部の機体フレームとリヤアクスルケースに着脱可能に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の草刈装置。
【請求項3】
前記機台の左右一側前部に操作具取付ブラケットを配置し、走行部の座席近傍に前記油圧ポンプからの圧油の送油方向を切り換え操作する操作具を配置することを特徴とする請求項1または2に記載の草刈装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−18(P2012−18A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135590(P2010−135590)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(000177184)三陽機器株式会社 (26)
【Fターム(参考)】