説明

草木内実繊維を含有する腸内老廃物除去機能を有する経口投与剤及び食品

【課題】本発明は、食物繊維及びそれを用いた機能性食品を製造するに当たり、美味で製造工程が簡便であり、コスト的にも低廉な手法の開発を課題とする。
【解決手段】砂糖キビ等の草木内実繊維のみを熱処理して利用することによって上記課題を解決できることを見出した。そして、本発明により、便秘症が改善されるのみならず、食品に添加することにより保水性を初め繋ぎ効果を奏することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草木内実繊維を含有する腸内老廃物除去機能を有する経口投与剤及び食品に関するもので、美味で製造工程が簡便であり、コスト的にも低廉な手法の開発に関する。
【背景技術】
【0002】
食物繊維の概念は、近年大幅に変化しているが、一義的には小腸における非消化性が生理的特徴として挙げられる。そのため非でんぷん性多糖類に加え、難消化性でんぷんや非消化性オリゴ糖などのその他の非消化性炭水化物も含まれている。この数十年間の研究活動によって、大腸機能の改善、血中コレステロール値の低下および食後血糖値やインスリンの抑制という重要な生理的機能が明らかにされてきた(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0003】
食物繊維は、整腸効果があるとして認知されており、多く食することが奨められているが、無味な上パサパサしていることが原因して、1日5〜10gを食することは極めて困難である。その結果食物繊維不足で便秘症の人(特に女性)が多く、薬品あるいは浣腸に頼っているが、腹痛、習慣性等の問題があった。
【0004】
食物繊維の供給源としては、穀類、豆類、果物、種子などの植物性食品であるが、具体的には小麦、米、とうもろこし等で、大麦、ライ麦、キビ、モロコシ等も含まれる。
【0005】
一般的に食物繊維として、広く市場に使われているものは、結晶セルロース〔アビセル(旭化成ケミカル)、ビタセル(ドイツ、ニュートリノバ社)が代表的〕で木材及び非木材パルプを原料としており、パルプを溶剤で溶かし、再結晶化させて製造するものが主体である。最近ではふすま、おからなどを粉砕し、配合した食品も多くみられるがパサパサしており美味ではない。又、さとうきびの搾りかすであるバガスを食物繊維にする試みは多くある。しかし、シリカ、リグニンが多いため、爆砕後キシラーゼ活性の高い麹菌により発酵処理した上で製品化しているが、コストが高く、味も苦いという欠点があった。
【0006】
【特許文献1】特開2007−48号公報
【特許文献2】特開2004−65018号公報
【特許文献3】特開2007−174974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、食物繊維及びそれを用いた機能性食品を製造するに当たり、美味で製造工程が簡便であり、コスト的にも低廉な手法の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の課題を解決する為に鋭意努力した結果、砂糖キビ等の草木内実繊維のみを熱処理して利用することによって上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は
(1)熱処理した草木内実由来の食物繊維を含有することを特徴とする腸内老廃物除去機能を有する経口投与剤、
(2)熱処理した草木内実由来の食物繊維を含有することを特徴とする腸内老廃物除去機能を有する機能性食品、
(3)草木が砂糖キビであることを特徴とする(1)記載の経口投与剤又は(2)記載の機能性食品、
(4)草木の内実を分離し、熱処理したものを添加することを特徴とする腸内老廃物除去機能を有する経口投与剤又は食品の製造方法、
である。
【0010】
本発明における草木としては、代表的には砂糖キビであるが、コウリャン、アスパラガス、ヒマワリ又は葦であっても、その内実繊維を取り出し本発明に利用することができる。
砂糖キビは茎が竹のように木化し節を有しており、節の間の茎の中心は空洞ではなく髄になっており、糖分を含んでいる。茎の髄を生食したり、搾った汁を製糖その他の食品化学工業や工業用エチルアルコール製造の原料とするなど、多用な利用方法がある。
【0011】
砂糖キビは、ラインドと称する外皮とピスと称する内実繊維から成っている。ラインドはシリカとリグニンが多く、一方ピスはヘミセルロースが多く、スポンジ構造となっている(図1)。砂糖きびの構成は、砂糖16%、外皮7%、内実繊維7%、表皮脂質(WAX)0.016%と水分70%から成っている。
【0012】
砂糖キビから内実繊維を取り出すには、ケインセパレーションシステム(米国AmClyde社製、米国特許第3690358号、図2)等の分離装置により表皮のラインド部分と内部組織のピス(Pith)とを分離し、圧搾装置によりピスの部分に圧力をかけ含水率を低下せしめ、100〜200℃の熱水蒸気により水熱処理を施す。この処理により強固な繊維組織が柔軟化するだけでなく、食感が改善されるとともに、乾燥時間の短縮、粉砕効率の向上が図られる。その後、熱風、赤外線、マイクロ波による加熱等で乾燥し、乾燥後ペレタイザー等を用いて成形する。ペレット化することにより次の粉砕工程への供給が安定化し、粉砕装置の効率をアップさせることができ、成形時に温度が上がることにより乾燥も進行することとなる。そして衝撃式粉砕機等の粉砕装置により粉砕する。
【0013】
砂糖キビから取り出された内実繊維は糖分も多く、半日程度で腐りはじめることから、飼料用に用いられるに過ぎなかった。本発明者等は、この点を改善するための手法として内実繊維を熱処理することが有効であることを見出した。熱処理温度としては、140℃から160℃が好ましいことも実験により確認した。
【0014】
このようにして得られた食物繊維を、経口投与剤として便秘症の人に服用させれば、便通効果を発揮するし、食品として用いれば、便通効果の他、保水性、繋ぎ効果、日持ち効果等多種の効果が得られる。例えば、パンに入れると香ばしさ、クッキーではしっとり感、うどんでは日持ちが良くなるという結果が得られている。その他、ボーロ、アイスクリーム等にも添加することができる。
【0015】
本発明の草木内実由来の食物繊維は不水溶性であることを特徴とするが、そのことによって腸内菌による発酵の影響が遅く、直腸下部にまで届き、整腸機能を発揮することができる。一方、ペクチン、β−グルカンのような水溶性の食物繊維は、発酵の影響が速いため直腸にまでは届き難く、整腸機能を奏することが困難である。
【0016】
特に砂糖キビの内実繊維は、結晶構造が多種多様(図3)で繊維長にも違いがあり、繊維長の長いものは直腸にまで到達し、一方繊維長の短いものは中腹部に留まる結果、腸全体で腸内老廃物の除去を果たすことができるという、結晶セルロース等の食物繊維にはない効果を発揮する。
【0017】
本発明によると、砂糖キビの内実繊維から得られた食物繊維は、食品に対して60%ぐらい迄含有させることができる。従来の食物繊維は食味の点から高々3%程度が限界であり、それに比して本発明は顕著に大量の食物繊維を含有させることができるので、便秘症等の改善に飛躍的な効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、便秘症が改善されるのみならず、食品に添加することにより保水性を初め繋ぎ効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を具体的に説明するために、以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
(食物繊維の製造方法)
1.脱葉し、長さ10cmから30cmに切断したサトウキビの茎をケインセパレーター(三菱製紙(株)製、図4)に供給した。脱葉と茎の切断は製糖産業で利用されているものを用いた。
【0021】
2.分離装置に供給されたサトウキビの茎は、半分に割られた後、内部組織を回転刃により削ぎ落された。
【0022】
3.削ぎ落とされた内部組織は、スクリューコンベアでスクリュープレスに送られ、砂糖ジュースが絞られた。
【0023】
4.絞られた砂糖ジュースは、通常の方法により砂糖にすることができる。砂糖ジュースを絞られた内部組織は、含水率が30%〜50%となっている。
【0024】
5.含水率30%〜50%の内部組織を蒸煮機に供給し密閉後系内の空気を排除した。0.7MPaから1.0MPaの蒸気を導入するとともに、凝縮した蒸気による熱水処理を行った。処理時間は色相・味を勘案して30〜120分に調整した。
【0025】
6.脱圧、冷却後、水熱処理された内部組織を取り出し、天日乾燥および乾燥機による加熱乾燥で、含水率を20%前後まで減少させた。
【0026】
7.乾燥した内部組織をペレターザーによりペレット化し、貯蔵・粉砕しやすい形状とした。
【0027】
8.ペレットを粉砕機に供給・粉砕し、平均粒度30〜100μmの食物繊維粉を得た。
【0028】
9.ペレット化した内部組織を、さらに天日乾燥および乾燥機による加熱乾燥で、10%以下の含水量になるように乾燥した。
【0029】
10.乾燥ペレットは、生菌数の経時変化を追跡して、貯蔵安定性を確認したところ、6%含水率品で1年間以上安定であることが判明した。
【実施例2】
【0030】
(砂糖キビ内実繊維含有ボーロの製造)
下記、表1の配合割合により、従来製品と本発明製品の比較実験を行った。
【0031】
【表1】

【0032】
上記表1の配合割合に基づいてボーロを試作したところ、図5のような結果となった。
すなわち、結晶セルロースを2.6%配合した従来例のボーロは、繋ぎ効果が悪く機械を通ることのできるような棒状とはならず、卵等を繋ぎ材として追加添加した。しかしそれでも機械にかけられるような継子状態にならず、ボサボサであったので、手作業でボーロを作成した。従って丸くならず均一な形ではなく商品になりにくい形状となった。
【0033】
一方、本発明の砂糖キビ内実繊維を混錬機の中へ少しずつ添加していったが、繋ぎ効果が高く10%入れても棒状となることができ、機械に通すことができた。従って、図6の写真のように球形で均一な形状を保つことができた。
【実施例3】
【0034】
(経口投与剤の製造及び使用結果)
実施例2において砂糖キビ内実繊維を10%まで配合できたことから、便秘症改善を効果的に行う為、どの程度まで配合できるかをテストしたところ、最大限60%まで可能であることが分かった。
【0035】
すなわち、
砂糖キビ内実繊維 60.0%
糖度80%シロップ 30.5
コーンスターチ 7.0
砂糖キビワックス 2.5
の配合で経口投与剤を作成したところ、図6のように均一な丸剤を得ることができた。
【0036】
作製した丸剤を粉砕し50%の割合でボーロに添加したものを被験者に服用させて、便通の改善効果を検証した。40人のモニターのうち、35人が整腸便通効果ありというアンケート結果が得られた。その内の効能例(感想)は以下の通りである。
【0037】
効能例1 62歳男性
多種類の薬を飲んで便がコチコチで困っていたが、本発明品の丸剤を2錠服用したところ、つながった便が出るようになった。
【0038】
効能例2 60歳男性、40代女性、60代女性
服用翌日下痢便が繋がって出るようになった。
【0039】
効能例3 30代女性、40代女性
1週間の重症便秘が2粒では効果がなかったが5粒服用で翌日快便となった。
【0040】
効能例4 80代男性
海外旅先でいつも便秘になるのが、4粒服用し快便となった。
【0041】
効能例5 50代女性
重症の便秘症であったが、他の便秘改善剤を止めて本発明の経口投与剤を服用したところ、天然ファイバーでもあり腹痛もなく、快便となった。
【実施例4】
【0042】
(ボーロによる比較実験)
服用人数 女子大生 14名(ボランティア)
方法 A群:対象群 プレーンボーロ 7名
B群:試験群 ピス(砂糖キビ内実繊維)10%添加ボーロ 7名
期間 1週間、100g/日 服用
1日空けてA群とB群交代し、1週間、50g/日 服用
結果 試験群は対照群に比して便通の回数(1.1回→1.9回)、排便量(2.5個→3.5個)が増える傾向があり、1週目と2週目の毎日の排便量の差をとると、試験群のボーロを食べた時の方が有意に排便量が多く、砂糖キビのピスは排便量の増加に有効であることが分かった。
【0043】
なお、食事調査の結果、ボーロ以外の食品からの1日当たりの食物繊維摂取量は、平均で12.3gであった。
*ピス成分・・・食物繊維79.6%(主成分:セルロース37%、ヘミセルロース32%、リグニン10.6%)
【実施例5】
【0044】
(クッキーの製造)
砂糖キビ内実繊維を含有するクッキーを、その含有量を変えて2種類のクッキーを製造し、比較を行った。
例1 例2
砂糖キビ内実繊維 8% 砂糖キビ内実繊維 15.8%
小麦粉 49.5% 小麦粉 49.5%
パーム油 25% パーム油 25%
還元麦芽糖水飴 16% 還元麦芽糖水飴 8.2%
その他 1.5% その他 1.5%
【0045】
上記の配合について比較検討したところ、砂糖キビ内実繊維を15.8%配合したクッキーはパサパサしており、味の点で商品化できるようなものではなかった。しかし、砂糖キビ内実繊維を8%入れたものは、美味しいクッキーを製造することができた。結果を図7に示す。
【0046】
一方、結晶セルロースについても実験したが、1%以上の配合は不可能であった。
また、ふすま、おから等では技術的には5〜8%程度含むことはできるが、味がなくクッキーとしては商品化できないものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】砂糖キビの断面を示す図。
【図2】ケーンセパレーションシステム(米国製)を示す図。
【図3】砂糖キビの結晶構造を示す図。
【図4】ケーンセパレータ装置(三菱製紙製)を示す図。
【図5】本発明品を含有するボーロ(右)と結晶セルロースを含有するボーロ(左)との比較を示す図。
【図6】砂糖キビ内実繊維を50%含有する経口投与剤を示す図。
【図7】砂糖キビ内実繊維入り(左8%、右15.8%)クッキーを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理した草木内実由来の食物繊維を含有することを特徴とする腸内老廃物除去機能を有する経口投与剤。
【請求項2】
熱処理した草木内実由来の食物繊維を含有することを特徴とする腸内老廃物除去機能を有する機能性食品。
【請求項3】
草木が砂糖キビであることを特徴とする請求項1記載の経口投与剤又は請求項2記載の機能性食品。
【請求項4】
草木の内実を分離し、熱処理したものを添加することを特徴とする腸内老廃物除去機能を有する経口投与剤又は食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−116344(P2010−116344A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290488(P2008−290488)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名:日本食生活学会 第36回大会 刊行物名:日本食生活学会 第36回大会 講演要旨集 主催者名:日本食生活学会 開催日:平成20年5月17日 演題:さとうきび芯部の食物繊維が便通に与える影響(一般講演発表 16:04〜16:16) 刊行物発行日:平成20年5月17日
【出願人】(507118312)株式会社沖縄さとうきび機能研究所 (2)
【出願人】(390001339)光洋産業株式会社 (46)
【出願人】(591018534)奥本製粉株式会社 (20)
【出願人】(398069207)銀嶺食品工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】