荒茶の製造方法および製造機
【課題】 大腸菌群を低減化した荒茶の製造方法の提供。
【解決手段】本製造方法は、少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ加熱殺菌処理する工程を含む。
【解決手段】本製造方法は、少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ加熱殺菌処理する工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸菌群が低減化された荒茶の製造方法および製造機に関する。
【背景技術】
【0002】
病原大腸菌などによる食中毒事故、BSE問題、さらには食品偽装表示などの食を取り巻く問題が後を絶たず、消費者の食に対して安全・安心を追求する意識が非常に高まってきている。その様な背景の中、お茶は、これまで嗜好品として取り扱われてきたが、ペットボトルや缶などで飲用、菓子に添加、あるいはタブレットなどで直接食されるなど、食品としての位置づけに変わりつつある。それに伴い、お茶にも一般的な食品と同様の食品衛生上の管理が求められつつある。管理すべき項目の一つには微生物が挙げられ、煎じて飲用するお茶には現時点で具体的な基準はないものの、食品として位置づけられるお茶では、一般生菌数と共に重要な指標である大腸菌群は、製品中で陰性であることが求められる(食品衛生法)。しかしながら、売買されるお茶(殺菌処理されたお茶は除く)には大腸菌群が陽性となるものが少なくないのが現状である。
【0003】
一般的に、お茶は摘採された生葉から荒茶が作られ(図11)、仕上げ工程(図11)を経て製品となるが、主たる微生物汚染は荒茶の製造工程で起こるとされている(非特許文献1〜3)。これまでにその汚染を低減させるための取り組みが幾つかなされているが(非特許文献1など)、これらの文献は、荒茶製造工程における一般生菌の低減化技術や仕上げ工程における大腸菌群の低減化技術について開示するものの、荒茶製造工程における大腸菌群の低減化技術について何ら開示・示唆しない。
1)非特許文献1
非特許文献1は、仕上げ工程において加熱を強くすると大腸菌群が陰性化されること、荒茶製造工程における一般生菌の低減化技術を開示する。しかし、荒茶製造工程における大腸菌群の低減化技術の開示・示唆は全くない。
2)非特許文献2〜3
非特許文献2および3は、仕上げ工程における大腸菌群の陰性化技術を開示する。しかし、荒茶製造工程における大腸菌群の低減化技術の開示・示唆は全くない。
3)非特許文献4、6〜7
非特許文献4、6および7は、荒茶製造工程における一般生菌数動態を報告する。しかし、荒茶製造工程における大腸菌群の低減化技術の開示・示唆は全くない。
4)非特許文献5、特許文献1
非特許文献5および特許文献1は、荒茶製造工程における一般生菌数低減化技術を開示する。しかし、荒茶製造工程における大腸菌群の低減化技術の開示・示唆は全くない。
【0004】
一般生菌数とは、標準寒天を用い30〜37℃・48時間・有酸素環境 (好気性) にて培養して得られる微生物の総集落数であることから、一般生菌にはカビや酵母などの真菌も含まれることになる。真菌と細菌、さらには属や種によって生育環境(温度、湿度、栄養素など)は異なることから、一般生菌数の低減化技術の開示が大腸菌群の低減化技術を示唆するものではないことは明白である。また、仕上げ工程は茶の滋味・香気をかなり変化させる(非特許文献1)ものであるため、仕上げ段階で火入れ(加熱)を強化することによる大腸菌群の低減化が茶の種類によっては好ましくない場合もある。ゆえに、荒茶で大腸菌群数が多すぎると仕上げで殺滅することが困難となり、市場に大腸菌群陽性のお茶が供給される可能性も否定できない。このような背景から、仕上げ前の荒茶製造段階において大腸菌群を低減すること、好ましくは陰性化することが望まれていた。
【特許文献1】特開2001-128618
【非特許文献1】沢村信一、加藤一郎、大屋隆弘、伊藤(中野)恵利(2002):飲料原料としての緑茶の微生物管理、日本清涼飲料研究会「第12研究発表会」講演集、19-24
【非特許文献2】大屋隆弘・加藤一郎・伊藤(中野)恵利・沢村信一(2002):煎茶仕上げ工程での微生物環境、茶研報別冊、94、134-135
【非特許文献3】沢村信一・大屋隆弘・加藤一郎・伊藤(中野)恵利(2004):煎茶の微生物環境3−火入れ工程での微生物動態−、茶研報、97、9-16
【非特許文献4】沢村信一・伊藤(中野)恵利、加藤一郎(2002):煎茶の微生物環境1、茶研報、93、19-25
【非特許文献5】沢村信一・加藤一郎・伊藤(中野)恵利(2003):煎茶の微生物環境2−荒茶微生物数の低減化−、茶研報、96、57-62
【非特許文献6】沢村信一・中野恵利・加藤一郎(2000):荒茶の製造における微生物の低減化-3、茶研報別冊、90、114-115
【非特許文献7】稲垣卓次・池田敏久(1996):製茶工程における一般細菌数の変化、茶研報別冊、84、58-59
【非特許文献8】稲垣卓次・池田敏久(1997):製茶工程における生菌数の変化(第2報)、茶研報別冊、85、58-59
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、大腸菌群が低減化された荒茶の製造方法および製造機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、少なくとも蒸熱手段、
蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造において、冷却前に蒸葉冷却手段を殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理することによって、大腸菌群が低減化、あるいは陰性化された荒茶を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) 少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程を含む、荒茶製造方法でありえる。
上記(1)の荒茶製造方法は、蒸熱、乾燥または仕上げの強化ではない大腸菌群の低減化手段を用いる荒茶製造方法であることから、茶葉の種類に応じた風味・香味を保持させたままで大腸菌群を低減化、あるいは陰性化できる点に特徴の一つがある。また、大腸菌群の低減化手段は一般的な荒茶の製造全工程に含まれるわずか3工程(冷却、葉打ち、粗揉)に対応する手段への簡便な衛生処理であることから、簡便かつ廉価コストで大腸菌群の低減化が図られる点も特徴点であるといえる。
【0008】
また、本発明は、
(2) 少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程を含む、荒茶製造方法、
(3) 葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程が、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理(加熱であれば少なくとも積算温度が1000℃・分以上)する工程である、上記(2)の荒茶製造方法、
(4) 冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理する工程が、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理(薬剤殺菌または加熱殺菌(積算温度が2700℃・分以上))する工程であり、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程が、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理(加熱であれば少なくとも積算温度が1000℃・分以上)する工程である、上記(2)の荒茶製造方法であり得る。
上記(2)〜(4)の荒茶製造方法は、上記(1)の荒茶製造方法と比較して、さらに充分に大腸菌群を低減化させた荒茶製造方法である。
【0009】
(5) さらに乾燥手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、乾燥処理(少なくとも80℃以上の温度で少なくとも積算温度が2400℃・分以上)工程を含む、上記(2)〜(4)の荒茶製造方法であり得る。
上記(5)の荒茶製造方法は、大腸菌群を陰性化する効果を有する。
【0010】
また、本発明は、
(6) 少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の低減化方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理することを手段とする大腸菌群の低減化方法、
(7) 少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、粗揉手段および乾燥手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の陰性化方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理および/または殺菌処理(薬剤殺菌または加熱殺菌(積算温度が2700℃・分以上))する工程、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理(加熱であれば少なくとも積算温度が1000℃・分以上)する工程および乾燥処理(少なくとも80℃以上の温度で少なくとも積算温度が2400℃・分以上)工程を含む、大腸菌群の陰性化方法であり得る。
【0011】
さらに、本発明は、
(8) 少なくとも(A)および(B)を備えた荒茶製造用の蒸熱後冷却機;
(A)高圧水噴射手段、
(B)少なくとも積算温度が2700℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段。
(9)少なくとも積算温度が1000℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた荒茶製造用の葉打ち機または荒茶製造用の粗揉機。
(10)少なくとも(A)〜(C)を備えた荒茶製造機;
(A)高圧水噴射手段と少なくとも積算温度が2700℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段とを備えた蒸熱後冷却装置、
(B)積算温度が1000℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた荒茶製造用の葉打ち機、
(C)積算温度が1000℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた荒茶製造用の粗揉機。
上記(8)冷却機、上記(9)葉打ち機または粗揉機、および上記(10)荒茶製造機は、それぞれ、上記(1)〜(5)荒茶製造方法、上記(6)大腸菌群の低減化方法、または上記(7)大腸菌群の陰性化方法に用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の荒茶製造方法を用いれば、十分に大腸菌群が低減化あるいは陰性化された高品質の荒茶を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(荒茶の製造方法)
本発明の一態様として、少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程を含む、荒茶製造方法を挙げることができる。
なお、本発明における蒸熱手段、茶葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段には、当該一の荒茶製造手段から他の荒茶製造手段まで茶葉を移送する搬送手段も含まれる。
【0014】
(A)蒸熱手段
ここで「蒸熱手段」とは、荒茶製造における蒸熱を実施する手段であり、例えば茶葉を蒸す蒸機をさす。一般的に、荒茶製造における蒸熱は、(i)蒸機による茶葉を蒸す工程と(ii)蒸した茶葉を冷却機で冷却する2つの工程に分けられるが、本明細書における「蒸熱手段」は後者の冷却用手段を必ずしも含まなくてよい。すなわち本明細書における「蒸熱」には後者の冷却が含まれなくてもよい。一方、蒸熱手段は蒸熱以外の機能を有していてもよく、例えば蒸葉冷却手段と一体化されていてもよい。「蒸熱手段」によって、生葉にある酸化酵素を不活性化しながら生葉の青臭さを除くことなどができる。例えば、「蒸熱手段」として、網胴回転攪拌式蒸機や送帯式蒸機(特許文献1)を例示できるがこれらに限られない。「蒸熱手段」は複数存在してもよく、例えばタンデム状にそれらが連結され得る。蒸熱は緑茶の色と品質に大きな影響を与える。本願製造方法は、蒸熱の強化によらずに大腸菌群を低減化・陰性化することにより、緑茶の色と品質の(蒸熱の強化による)劣化を防止することができる。
【0015】
(B)蒸葉冷却手段
ここで「蒸葉冷却手段」とは、蒸熱後にその蒸葉を冷却する手段である。冷却によって茶葉の青々とした色と味の成分を固定することができる。「蒸葉冷却手段」は少なくとも室温程度まで茶温(茶葉の温度)を冷却する手段であればよく、例えば、温風冷却機(1次冷却用)と強制冷却機を組み合わせてもよい。蒸葉冷却手段に洗浄処理手段および/または殺菌処理手段が備わっていることが好ましい。蒸葉冷却手段として好ましく図9記載の洗浄・熱風発生機付き冷却機を例示できる。蒸葉冷却手段は冷却以外の機能を有していてもよく、例えば蒸葉手段と一体化されていてもよい。
【0016】
(C)冷却前に蒸葉冷却手段を殺菌処理する工程
本製造方法は、「冷却前に蒸葉冷却手段を殺菌処理する工程」を含む。ここで「冷却前に」とは、「蒸葉冷却手段」による蒸葉の冷却に先立っての意味であり、蒸葉の冷却の直前でもよく、荒茶製造前であってもよい。「殺菌処理」とは少なくとも大腸菌群を含む微生物の低減または陰性化処理を意味し、例えば、薬剤による蒸葉冷却手段の殺菌処理、加熱(例えば熱風)による蒸葉冷却手段の殺菌処理などが例示される。薬剤は、特に制限されず、各種抗生物質(βラクタム系、テトラサイクリン系、キノロン系など)、次亜塩素酸ナトリウム、エタノールなどが例示される。これらの薬剤は例えばその水溶液として利用可能である。薬剤として好ましくは抗菌剤・制菌剤、より好ましくはエタノールが例示される。加熱による蒸葉冷却手段の殺菌処理の場合には、蒸葉冷却手段に存在する大腸菌群が低減または陰性化する程度に加熱すればよく、例えば、2700℃・分以上、好ましくは3000〜6000℃・分、さらに好ましくは4500〜6000℃・分の積算温度(温度×時間(分))で加熱処理することができ、少なくとも80℃以上、好ましくは90℃〜120℃、さらに好ましくは100〜120℃の熱風で30分以上、好ましくは45〜90分、さらに好ましくは60〜90分程度の加熱処理をすることができる。また、「殺菌処理」する前に「洗浄処理」しておくことが好ましい。「洗浄処理」とは蒸葉冷却手段を洗浄液等で洗うことであるが、洗浄液の種類、洗浄時間および洗浄方法などは特に制限されない。洗浄と殺菌の2段階にわたる処理によって大腸菌群の低減化が促進またはその他条件によって陰性化され得る。
【0017】
(D)葉打ち手段、粗揉手段
ここで「葉打ち手段」とは、乾燥した熱風を送り込みながら打圧を加えて茶葉を揉む手段である。葉打ちによって、色沢・香味の向上と次の粗揉工程の時間を短縮することができる。葉打ち手段は葉打ち機であることができ、葉打ち機として、例えば、機械の中に複数の鍬の刃のような手(もみ手と呼ばれることもある)とフォーク状の手(さらい手と呼ばれることもある)が存在し、それらの回転と機械内の熱風で葉打ちを行う葉打ち機を例示することができる。一般的には、熱風は70℃〜90℃程度が好ましく、葉打ち時間は5〜30分程度が好ましい。熱風は葉打ち手段全体に行き渡れば一方向固定式でなくともよい。葉打ち手段に洗浄処理手段が実装されていることが好ましく、洗浄処理手段は高圧洗浄装置であることが好ましい。高圧洗浄装置は、その洗浄効果が認められる限りにおいて、一方向固定式でも拡散式でも回転式でもよい。葉打ち手段に殺菌処理手段が実装されていることがさらに好ましく、葉打ち手段に通常備わっている熱風源とその循環装置を加熱処理手段とすることもできる。
【0018】
ここで「粗揉手段」とは、葉打ち手段と同様に、乾燥した熱風を送り込みながら打圧を加えて茶葉を揉む手段である。粗揉手段は粗揉機であることができ、例えば、第一粗揉機および第二粗揉機のように複数の粗揉機が連結されているものであってもよい。粗揉は、葉打ち後に煎茶特有の色調や風味を出すために行われ得る。粗揉後の茶葉の水分含量はおよそ30〜60%程度である。一般的には、90〜100℃の熱風が好ましく、粗揉時間は30〜50分程度が好ましい。熱風は粗揉手段全体に行き渡れば一方向固定式でなくともよい。粗揉手段に洗浄処理手段が実装されていることが好ましく、洗浄処理手段は高圧洗浄装置であることが好ましい。高圧洗浄装置は、その洗浄効果が認められる限りにおいて、一方向固定式でも拡散式でも回転式でもよい。粗揉手段に殺菌処理手段が実装されていることがさらに好ましく、粗揉手段に通常備わっている熱風源とその循環装置を加熱殺菌処理手段とすることもできる。
【0019】
「粗揉手段」と「葉打ち手段」は1つの機械であることができ、例えば、図7に記載の葉打ち兼粗揉機であることができる。
【0020】
(E)「葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程」
本製造方法は、「葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程」を含む。葉打ち手段または粗揉手段に備わる殺菌処理手段により実施されることができ、好ましくは加熱殺菌処理、特に熱風処理が好ましい。ここで熱風は80〜120℃、好ましくは90〜120℃、さらに好ましくは100〜120℃であることができ、その処理時間は10分以上、好ましくは30〜90分、さらに好ましくは45〜90分、葉打ち手段または粗揉手段内の気温が60℃を超えた後の処理時間が30分以上、好ましくは45〜90分、さらに好ましくは60〜90分であることが好ましい。「葉打ち前」とは葉打ちに先立っての意味であり葉打ち直前でもよく荒茶製造前でもよい。「粗揉前」とは粗揉に先立っての意味であり粗揉直前でもよく荒茶製造前でもよい。例えば、葉打ち手段と粗揉手段が1つの機械である場合など、葉打ち手段および粗揉手段それぞれの加熱処理を一緒に行うことができる。加熱処理は、少なくとも1000℃・分以上、好ましくは2000〜6000、さらに好ましくは3000〜6000℃・分の積算温度で実施することにより、蒸葉冷却後の茶葉に含まれる大腸菌群の増殖を抑制等することで十分な低減化を実現することができる。
【0021】
本荒茶製造方法は、さらに乾燥手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であることが好ましい。
(F)「乾燥手段」
ここで「乾燥手段」とは、荒茶の実質的な最終製造工程である乾燥工程を行う手段であって、乾燥機であることができる。乾燥手段によって、茶葉に含まれる水分含量を5%程度まで減少させることができる。粗揉後は、揉捻、中揉、精揉が順番に実施されることが一般的であることから、「乾燥手段」は精揉された茶葉を乾燥(好ましくは水分含量を5%程度まで乾燥)する手段であることが好ましい。熱風処理は少なくとも80℃以上の温度、好ましくは80〜95℃の温度の熱風処理であり、また、少なくとも2400℃・分以上の積算温度で実施することが好ましく、茶葉に含まれる大腸菌群を陰性化することができる。
【0022】
(G)その他
本願製造方法は、揉捻手段、中揉手段、精揉手段をそれぞれ備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であってもよく、蒸熱手段による蒸熱工程、蒸葉冷却手段による冷却工程、葉打ち手段による葉打ち工程、粗揉手段による粗揉工程、揉捻手段による揉捻工程、中揉手段による中揉工程、および精揉手段による精揉工程を含むことができる。その他、選別工程、合組工程を含んでいてもよい。ここで、合組とは、異なる種類の茶を組み合わせることをいい、合組は、茶葉の合組機を用いて行う。各手段を物理的に連結する搬送装置を当該荒茶製造機が備えていてもよく、当該荒茶製造機による荒茶製造方法において、さらに当該搬送装置を洗浄処理および/または加熱殺菌処理することにより、大腸菌群が充分に低減化された荒茶を製造することも可能である。
【0023】
本願製造方法で製造される荒茶の原料となる生葉については、その産地や採取時期(一番茶、二番茶、三番茶、秋冬番茶など)、さらには品種や植物種などに制限されない。
【0024】
(荒茶製造における大腸菌群の低減化方法)
本発明の一態様として、少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の低減化方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理および/または殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理することを手段とする大腸菌群の低減化方法を挙げることができる。
ここで「大腸菌群」とはグラム陰性無芽胞性の桿菌であり乳糖を分解して酸とガスを発生する好気性または通性嫌気性の細菌群である。食品において大腸菌群陰性が求められている。本低減化方法は、従前の仕上げ強化(非特許文献1〜3)ではない大腸菌群の低減化手段を用いることから、茶の種類に応じて製茶の滋味・香気を仕上げ段階で自由に調節できる効果を有する。また、蒸熱強化でない大腸菌群の低減化手段を用いることから、荒茶の種類に応じて、荒茶の風味・香味を保持させることができる効果を有する。
【0025】
蒸葉冷却手段の殺菌処理として、加熱(例えば、熱風)による蒸葉冷却手段の殺菌処理が好ましい。蒸葉冷却手段を加熱殺菌処理する前に蒸葉冷却手段を洗浄しておくことが好ましく、蒸葉冷却手段の洗浄処理・加熱殺菌処理により、大腸菌群の低減化が促進される。殺菌処理は薬剤殺菌、好ましくは殺菌剤、特に好ましくはエタノールによる殺菌または2700℃・分以上、好ましくは3000〜6000℃・分、さらに好ましくは4500〜6000℃・分の積算温度の加熱殺菌処理であることが好ましい。
【0026】
葉打ち手段および粗揉手段の加熱殺菌処理は、熱風処理であることが好ましく、熱風は80〜120℃、好ましくは90〜120℃、さらに好ましくは100〜120℃であることができ、その処理時間は10分以上、好ましくは30〜90分、さらに好ましくは45〜90分、葉打ち手段または粗揉手段内の気温が60℃を超えた後の処理時間が30分以上、好ましくは45〜90分、さらに好ましくは60〜90分であることが好ましい。加熱殺菌処理は、少なくとも1000℃・分以上、好ましくは2000〜6000、さらに好ましくは3000〜6000℃・分の積算温度で実施することにより、蒸葉冷却後の茶葉に含まれる大腸菌群の増殖を抑制することなどで十分な低減化を実現することができる。
【0027】
また、さらに乾燥手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の低減化方法であって、製造時の乾燥を少なくとも2400℃・分以上の積算温度で実施することを特徴とする大腸菌群の低減化方法を好ましく例示できる。本低減化方法の実施によって、大腸菌群は陰性化される。
【0028】
本願陰性化方法は、揉捻手段、中揉手段、精揉手段をそれぞれ備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の低減化方法であってもよい。その他、選別手段、または合組手段をそれぞれ備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の低減化方法であってもよい。
【0029】
(荒茶製造用の蒸熱後冷却機)
本発明の一態様として、荒茶製造用の蒸熱後冷却機を挙げることができる。本蒸熱後冷却機は、(A)高圧水噴射手段および(B)少なくとも積算温度が2700℃・分以上、好ましくは3000〜6000℃・分、さらに好ましくは4500〜6000℃・分の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備える。(A)の手段により本蒸熱後冷却機を洗浄でき、(B)の手段により本蒸熱後冷却機を殺菌(大腸菌群の低減化)することができる。従って、本蒸熱後冷却機を本願製造方法や本願低減化方法に利用可能である。熱風は茶葉や水滴が付着する可能性のある部位にあたるような設計が好ましい。熱風発生部位は複数でもよいし一箇所でもよい、熱風の搬送のためにダクト等を使用してもよい。高圧水噴出口は茶葉の残渣を洗い落とすように配置できればよい(洗浄が達成できれば複数でも一箇所でもよい)。高圧水の圧力は50kg/cm2〜2500kg/cm2程度が好ましい。本蒸熱後冷却機として図9に記載の冷却機を例示できる。
【0030】
(荒茶製造用の葉打ち機または荒茶製造用の粗揉機)
本発明の一態様として、荒茶製造用の葉打ち機または荒茶製造用の粗揉機を挙げることができる。本葉打ち機または粗揉機は、少なくとも積算温度が1000℃・分以上、好ましくは2000〜6000、さらに好ましくは3000〜6000℃・分の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備える。本手段により本葉打ち機または粗揉機を殺菌(大腸菌群の低減化)することができる。従って、本葉打ち機または粗揉機を本願製造方法や本願低減化方法に利用可能である。葉打ち機または粗揉機は兼用であってもよく、高圧洗浄装置内蔵型が好ましい。高圧洗浄装置から噴射される高圧洗浄液の噴射圧力は50kg/cm2〜2500kg/ cm2程度が好ましい。本葉打ち機(兼粗揉機)として図7に記載の葉打ち機・粗揉機を例示できる。
【0031】
(荒茶製造機)
本発明の一態様として、荒茶製造機を挙げることができる。本荒茶製造機は、(A)高圧水噴射手段と少なくとも積算温度が2700℃・分以上、好ましくは3000〜6000℃・分、さらに好ましくは4500〜6000℃・分の加熱処理を可能とする熱風発生手段とを備えた蒸熱後冷却装置、(B)積算温度が1000℃・分以上、好ましくは2000〜6000、さらに好ましくは3000〜6000℃・分の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた荒茶製造用の葉打ち機、(C)積算温度が1000℃・分以上、好ましくは2000〜6000、さらに好ましくは3000〜6000℃・分の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた乾燥機、をそれぞれ備える。本荒茶製造機は本願製造方法や本願低減化方法に利用可能である。本荒茶製造機として、例えば、図10記載の荒茶製造機を例示することができる。
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし本発明は実施例に限定されるものでない。
【実施例1】
【0033】
(荒茶製造工程における大腸菌群数の推移に関する調査)
複数の県に存在する24の荒茶工場(3茶期)について大腸菌群による汚染の実態調査を食品衛生検査指針に準拠して実施した。その一部の結果を図1に示す。工場間による差は見られたが、総合的な傾向としては、生葉における大腸菌群数に比べ、蒸し工程で激減するものの、冷却や葉打ち、粗揉などの工程で飛躍的に菌数が上昇し、その後、緩やかに減少、あるいはそのまま推移し、乾燥の工程で減少することが分かった。しかしながら、乾燥後に大腸菌群として10,000個/gを超えるといった、仕上げ工程で大腸菌群の陰性化が困難なレベルの残留もあった。
【0034】
(冷却機における大腸菌群の低減化)
前述の実態調査の結果に基づき、冷却機が大腸菌群の汚染源であると仮定し、その汚染
の制御法を模索した。荒茶製造終了後、冷却機の洗浄を実施し、製造再開時に冷却機の出口で茶葉を採取して食品衛生検査指針に準拠して大腸菌群数を調べたところ、菌数は洗浄をしない場合と同等、あるいは増加しており(データは割愛)、洗いムラはあると思われるが、概して洗浄だけでは大腸菌群を低減できないことが分かった。次に、洗浄後にエタノールあるいは加熱殺菌(温度設定90〜100℃・30分および60分処理)を施し、大腸菌群数の低減効果を拭き取り検査により確認した。その結果、いずれの殺菌処理でも冷却機における明らかな大腸菌群数の低減が確認された(図2)。
【0035】
(葉打ち機および粗揉機における大腸菌群低減化)
次に、葉打ち機および粗揉機における大腸菌群低減化を目指すため、加熱による殺菌効果を温度と時間を変動させた条件で、機内の大腸菌群数を拭き取り検査で確認した(庫内温度設定80〜120℃、時間10〜60分)。その結果、積算温度が約1000℃・分程度以上で10%未満の生存率に機内の大腸菌群を低減できることが明らかとなった(図3)。この結果を踏まえて、冷却機を洗浄・殺菌し、葉打ち機と粗揉機の加熱(庫内温度設定90〜100℃:60℃を超えた時点より30分および60分、積算温度:1000〜3000℃・分)で処理した条件で荒茶の製造を行い、荒茶における大腸菌群数のモニタリングを食品衛生検査指針に準拠して行った。その結果を図4に示す。処理を施した冷却機、葉打ち機および粗揉機の出口における茶葉の大腸菌群数は、無処理(図1)に比べて著しい低減が確認され、乾燥後の大腸菌群数も100個/g未満に低減することができた。また、殺菌前に葉打ち機と粗揉機の洗浄を追加した場合でも同様の効果が確認された(データは割愛)。
一方、冷却機を処理せず、葉打ち機と粗揉機を処理した場合、顕著な効果は確認できなかった(図5)。しかしながら、冷却機を洗浄しないで殺菌のみ実施して、葉打ち機と粗揉機を処理した場合、無処理の条件(図1)と比べて明らかな大腸菌群の低減効果が確認できた(図6)。
以上のことから、冷却機、葉打ち機および粗揉機の殺菌を実施して製造することにより、大腸菌群が顕著に低減された荒茶が製造できることが示された。加えて、冷却機、葉打ち機および粗揉機は洗浄を行うことにより、より効率的に低減できることも示された。
【0036】
(まとめ)
今回は一般的な荒茶製造工程を用いて試験を実施したが、工場によっては葉打ち機がない、冷却機が蒸し機と一体化している、あるいは計量器が設置されているなどのラインもあるが、それらについても冷却から粗揉までの工程を今回の方法で処理することにより大腸菌群が低減化できると考えられる。また、冷却機から粗揉機までの間にある搬送装置についても同様の処理を行えば、さらなる低減効果が期待できよう。殺菌の手法についても、今回は加熱とエタノールによって試験を行ったが、一般的な殺菌剤や蒸気などでも、大腸菌群に殺菌効果を示すものであれば同等の効果が得られるものと考えられた。
今回の発明を実施するに当たり、既存の設備でも機種によっては実施可能であるが、より効果的、かつ労力をかけないで実施するに当たり、図7〜10に示すような設備などが設計できる。
【実施例2】
【0037】
(乾燥機における大腸菌群低減化)
無処理で荒茶製造を行う際、乾燥機の温度を、通常乾燥に用いられている温度である80、85、90および95℃に設定し、荒茶の乾燥を25分間行った(積算温度:2000、2125、2250、2375分・℃)。乾燥前と乾燥後に茶葉を採取し、食品衛生検査指針に基づき、菌数調査、ならびにフローラ調査を実施した。その結果を図12に示す。いずれの条件でも著しい菌数の低減が見られたが、温度が高い方がその効果は高まった。荒茶の一般生菌には耐熱性のない大腸菌群などに加え、Bacillus属細菌(B. subtilis、B. megaterium、B. circulans等)といった耐熱性が非常に強い菌種もみられ、乾燥工程後にはこのような耐熱性の高い微生物が優先的に生残した(図13)。これらの結果を基に大腸菌群の減少率を算出したところ、98.7〜99.2%の低減率であった(図14)。
【実施例3】
【0038】
(冷却機、葉打ち機、粗揉機および乾燥機における大腸菌群の陰性化)
冷却機、葉打ち機および粗揉機を殺菌し、荒茶の製造を行った際の乾燥機の温度を、通常乾燥に用いられている温度である80、85、90および95℃に設定し、荒茶の乾燥を30分間行った。乾燥前と乾燥後に茶葉を採取し、食品衛生検査指針に基づき、菌数の調査を実施した。その結果、いずれの条件でも大腸菌群は陰性となった(図15)。洗浄や殺菌を行わない場合は、低減はするものの、非常に高いレベルの大腸菌群が生残した(図16)。以上のことから、粗揉までの段階で本願方法によって大腸菌群が低減されていれば、所定の乾燥によって大腸菌群の陰性化が可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、大腸菌群が低減化または陰性化された荒茶の製造方法および本製造方法に用いる荒茶製造機を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一般的な荒茶製造工程における大腸菌群数の推移を示す図である。
【図2】冷却機の洗浄・殺菌による効果の一例(エタノールによる殺菌剤)を示す図である。
【図3】粗揉機の加熱(熱風乾燥)による大腸菌群の低減効果を示す図である。
【図4】冷却機を洗浄・殺菌し、葉打ち機および粗揉機を加熱処理した荒茶製造工程における大腸菌群数の推移を示す図である。
【図5】冷却機を洗浄・殺菌せず(無処理)、葉打ち機および粗揉機を加熱処理した荒茶製造工程における大腸菌群数の推移を示す図である。
【図6】冷却機を殺菌し、葉打ち機および粗揉機を加熱処理した条件の大腸菌群数の推移を示す図である。
【図7】高圧洗浄装置内蔵型葉打ち機・粗揉機(断面図)を示す図である。
【図8】揉み手・葉ざらい用ブラシジャケットを示す図である。
【図9】洗浄・熱風発生機付き冷却機(断面図)を示す図である。
【図10】大腸菌群低減化の工夫を施した装置を導入した荒茶の製造工程を示す図である。
【図11】荒茶の製造工程および仕上げ茶の製造工程を示す図である。
【図12】乾燥温度を変化させた際の一般生菌の減少を示す図である。
【図13】精揉後と乾燥後の一般生菌数フローラの違いを示す図である。
【図14】無処理で荒茶を製造した際の乾燥工程における大腸菌群の低減率を示す図である。
【図15】処理を行って荒茶を製造した際の乾燥工程における大腸菌群の低減率を示す図である。
【図16】無処理で荒茶を製造した際の乾燥工程における大腸菌群の低減率を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸菌群が低減化された荒茶の製造方法および製造機に関する。
【背景技術】
【0002】
病原大腸菌などによる食中毒事故、BSE問題、さらには食品偽装表示などの食を取り巻く問題が後を絶たず、消費者の食に対して安全・安心を追求する意識が非常に高まってきている。その様な背景の中、お茶は、これまで嗜好品として取り扱われてきたが、ペットボトルや缶などで飲用、菓子に添加、あるいはタブレットなどで直接食されるなど、食品としての位置づけに変わりつつある。それに伴い、お茶にも一般的な食品と同様の食品衛生上の管理が求められつつある。管理すべき項目の一つには微生物が挙げられ、煎じて飲用するお茶には現時点で具体的な基準はないものの、食品として位置づけられるお茶では、一般生菌数と共に重要な指標である大腸菌群は、製品中で陰性であることが求められる(食品衛生法)。しかしながら、売買されるお茶(殺菌処理されたお茶は除く)には大腸菌群が陽性となるものが少なくないのが現状である。
【0003】
一般的に、お茶は摘採された生葉から荒茶が作られ(図11)、仕上げ工程(図11)を経て製品となるが、主たる微生物汚染は荒茶の製造工程で起こるとされている(非特許文献1〜3)。これまでにその汚染を低減させるための取り組みが幾つかなされているが(非特許文献1など)、これらの文献は、荒茶製造工程における一般生菌の低減化技術や仕上げ工程における大腸菌群の低減化技術について開示するものの、荒茶製造工程における大腸菌群の低減化技術について何ら開示・示唆しない。
1)非特許文献1
非特許文献1は、仕上げ工程において加熱を強くすると大腸菌群が陰性化されること、荒茶製造工程における一般生菌の低減化技術を開示する。しかし、荒茶製造工程における大腸菌群の低減化技術の開示・示唆は全くない。
2)非特許文献2〜3
非特許文献2および3は、仕上げ工程における大腸菌群の陰性化技術を開示する。しかし、荒茶製造工程における大腸菌群の低減化技術の開示・示唆は全くない。
3)非特許文献4、6〜7
非特許文献4、6および7は、荒茶製造工程における一般生菌数動態を報告する。しかし、荒茶製造工程における大腸菌群の低減化技術の開示・示唆は全くない。
4)非特許文献5、特許文献1
非特許文献5および特許文献1は、荒茶製造工程における一般生菌数低減化技術を開示する。しかし、荒茶製造工程における大腸菌群の低減化技術の開示・示唆は全くない。
【0004】
一般生菌数とは、標準寒天を用い30〜37℃・48時間・有酸素環境 (好気性) にて培養して得られる微生物の総集落数であることから、一般生菌にはカビや酵母などの真菌も含まれることになる。真菌と細菌、さらには属や種によって生育環境(温度、湿度、栄養素など)は異なることから、一般生菌数の低減化技術の開示が大腸菌群の低減化技術を示唆するものではないことは明白である。また、仕上げ工程は茶の滋味・香気をかなり変化させる(非特許文献1)ものであるため、仕上げ段階で火入れ(加熱)を強化することによる大腸菌群の低減化が茶の種類によっては好ましくない場合もある。ゆえに、荒茶で大腸菌群数が多すぎると仕上げで殺滅することが困難となり、市場に大腸菌群陽性のお茶が供給される可能性も否定できない。このような背景から、仕上げ前の荒茶製造段階において大腸菌群を低減すること、好ましくは陰性化することが望まれていた。
【特許文献1】特開2001-128618
【非特許文献1】沢村信一、加藤一郎、大屋隆弘、伊藤(中野)恵利(2002):飲料原料としての緑茶の微生物管理、日本清涼飲料研究会「第12研究発表会」講演集、19-24
【非特許文献2】大屋隆弘・加藤一郎・伊藤(中野)恵利・沢村信一(2002):煎茶仕上げ工程での微生物環境、茶研報別冊、94、134-135
【非特許文献3】沢村信一・大屋隆弘・加藤一郎・伊藤(中野)恵利(2004):煎茶の微生物環境3−火入れ工程での微生物動態−、茶研報、97、9-16
【非特許文献4】沢村信一・伊藤(中野)恵利、加藤一郎(2002):煎茶の微生物環境1、茶研報、93、19-25
【非特許文献5】沢村信一・加藤一郎・伊藤(中野)恵利(2003):煎茶の微生物環境2−荒茶微生物数の低減化−、茶研報、96、57-62
【非特許文献6】沢村信一・中野恵利・加藤一郎(2000):荒茶の製造における微生物の低減化-3、茶研報別冊、90、114-115
【非特許文献7】稲垣卓次・池田敏久(1996):製茶工程における一般細菌数の変化、茶研報別冊、84、58-59
【非特許文献8】稲垣卓次・池田敏久(1997):製茶工程における生菌数の変化(第2報)、茶研報別冊、85、58-59
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、大腸菌群が低減化された荒茶の製造方法および製造機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、少なくとも蒸熱手段、
蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造において、冷却前に蒸葉冷却手段を殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理することによって、大腸菌群が低減化、あるいは陰性化された荒茶を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) 少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程を含む、荒茶製造方法でありえる。
上記(1)の荒茶製造方法は、蒸熱、乾燥または仕上げの強化ではない大腸菌群の低減化手段を用いる荒茶製造方法であることから、茶葉の種類に応じた風味・香味を保持させたままで大腸菌群を低減化、あるいは陰性化できる点に特徴の一つがある。また、大腸菌群の低減化手段は一般的な荒茶の製造全工程に含まれるわずか3工程(冷却、葉打ち、粗揉)に対応する手段への簡便な衛生処理であることから、簡便かつ廉価コストで大腸菌群の低減化が図られる点も特徴点であるといえる。
【0008】
また、本発明は、
(2) 少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程を含む、荒茶製造方法、
(3) 葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程が、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理(加熱であれば少なくとも積算温度が1000℃・分以上)する工程である、上記(2)の荒茶製造方法、
(4) 冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理する工程が、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理(薬剤殺菌または加熱殺菌(積算温度が2700℃・分以上))する工程であり、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程が、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理(加熱であれば少なくとも積算温度が1000℃・分以上)する工程である、上記(2)の荒茶製造方法であり得る。
上記(2)〜(4)の荒茶製造方法は、上記(1)の荒茶製造方法と比較して、さらに充分に大腸菌群を低減化させた荒茶製造方法である。
【0009】
(5) さらに乾燥手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、乾燥処理(少なくとも80℃以上の温度で少なくとも積算温度が2400℃・分以上)工程を含む、上記(2)〜(4)の荒茶製造方法であり得る。
上記(5)の荒茶製造方法は、大腸菌群を陰性化する効果を有する。
【0010】
また、本発明は、
(6) 少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の低減化方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理することを手段とする大腸菌群の低減化方法、
(7) 少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、粗揉手段および乾燥手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の陰性化方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理および/または殺菌処理(薬剤殺菌または加熱殺菌(積算温度が2700℃・分以上))する工程、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理(加熱であれば少なくとも積算温度が1000℃・分以上)する工程および乾燥処理(少なくとも80℃以上の温度で少なくとも積算温度が2400℃・分以上)工程を含む、大腸菌群の陰性化方法であり得る。
【0011】
さらに、本発明は、
(8) 少なくとも(A)および(B)を備えた荒茶製造用の蒸熱後冷却機;
(A)高圧水噴射手段、
(B)少なくとも積算温度が2700℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段。
(9)少なくとも積算温度が1000℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた荒茶製造用の葉打ち機または荒茶製造用の粗揉機。
(10)少なくとも(A)〜(C)を備えた荒茶製造機;
(A)高圧水噴射手段と少なくとも積算温度が2700℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段とを備えた蒸熱後冷却装置、
(B)積算温度が1000℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた荒茶製造用の葉打ち機、
(C)積算温度が1000℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた荒茶製造用の粗揉機。
上記(8)冷却機、上記(9)葉打ち機または粗揉機、および上記(10)荒茶製造機は、それぞれ、上記(1)〜(5)荒茶製造方法、上記(6)大腸菌群の低減化方法、または上記(7)大腸菌群の陰性化方法に用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の荒茶製造方法を用いれば、十分に大腸菌群が低減化あるいは陰性化された高品質の荒茶を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(荒茶の製造方法)
本発明の一態様として、少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程を含む、荒茶製造方法を挙げることができる。
なお、本発明における蒸熱手段、茶葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段には、当該一の荒茶製造手段から他の荒茶製造手段まで茶葉を移送する搬送手段も含まれる。
【0014】
(A)蒸熱手段
ここで「蒸熱手段」とは、荒茶製造における蒸熱を実施する手段であり、例えば茶葉を蒸す蒸機をさす。一般的に、荒茶製造における蒸熱は、(i)蒸機による茶葉を蒸す工程と(ii)蒸した茶葉を冷却機で冷却する2つの工程に分けられるが、本明細書における「蒸熱手段」は後者の冷却用手段を必ずしも含まなくてよい。すなわち本明細書における「蒸熱」には後者の冷却が含まれなくてもよい。一方、蒸熱手段は蒸熱以外の機能を有していてもよく、例えば蒸葉冷却手段と一体化されていてもよい。「蒸熱手段」によって、生葉にある酸化酵素を不活性化しながら生葉の青臭さを除くことなどができる。例えば、「蒸熱手段」として、網胴回転攪拌式蒸機や送帯式蒸機(特許文献1)を例示できるがこれらに限られない。「蒸熱手段」は複数存在してもよく、例えばタンデム状にそれらが連結され得る。蒸熱は緑茶の色と品質に大きな影響を与える。本願製造方法は、蒸熱の強化によらずに大腸菌群を低減化・陰性化することにより、緑茶の色と品質の(蒸熱の強化による)劣化を防止することができる。
【0015】
(B)蒸葉冷却手段
ここで「蒸葉冷却手段」とは、蒸熱後にその蒸葉を冷却する手段である。冷却によって茶葉の青々とした色と味の成分を固定することができる。「蒸葉冷却手段」は少なくとも室温程度まで茶温(茶葉の温度)を冷却する手段であればよく、例えば、温風冷却機(1次冷却用)と強制冷却機を組み合わせてもよい。蒸葉冷却手段に洗浄処理手段および/または殺菌処理手段が備わっていることが好ましい。蒸葉冷却手段として好ましく図9記載の洗浄・熱風発生機付き冷却機を例示できる。蒸葉冷却手段は冷却以外の機能を有していてもよく、例えば蒸葉手段と一体化されていてもよい。
【0016】
(C)冷却前に蒸葉冷却手段を殺菌処理する工程
本製造方法は、「冷却前に蒸葉冷却手段を殺菌処理する工程」を含む。ここで「冷却前に」とは、「蒸葉冷却手段」による蒸葉の冷却に先立っての意味であり、蒸葉の冷却の直前でもよく、荒茶製造前であってもよい。「殺菌処理」とは少なくとも大腸菌群を含む微生物の低減または陰性化処理を意味し、例えば、薬剤による蒸葉冷却手段の殺菌処理、加熱(例えば熱風)による蒸葉冷却手段の殺菌処理などが例示される。薬剤は、特に制限されず、各種抗生物質(βラクタム系、テトラサイクリン系、キノロン系など)、次亜塩素酸ナトリウム、エタノールなどが例示される。これらの薬剤は例えばその水溶液として利用可能である。薬剤として好ましくは抗菌剤・制菌剤、より好ましくはエタノールが例示される。加熱による蒸葉冷却手段の殺菌処理の場合には、蒸葉冷却手段に存在する大腸菌群が低減または陰性化する程度に加熱すればよく、例えば、2700℃・分以上、好ましくは3000〜6000℃・分、さらに好ましくは4500〜6000℃・分の積算温度(温度×時間(分))で加熱処理することができ、少なくとも80℃以上、好ましくは90℃〜120℃、さらに好ましくは100〜120℃の熱風で30分以上、好ましくは45〜90分、さらに好ましくは60〜90分程度の加熱処理をすることができる。また、「殺菌処理」する前に「洗浄処理」しておくことが好ましい。「洗浄処理」とは蒸葉冷却手段を洗浄液等で洗うことであるが、洗浄液の種類、洗浄時間および洗浄方法などは特に制限されない。洗浄と殺菌の2段階にわたる処理によって大腸菌群の低減化が促進またはその他条件によって陰性化され得る。
【0017】
(D)葉打ち手段、粗揉手段
ここで「葉打ち手段」とは、乾燥した熱風を送り込みながら打圧を加えて茶葉を揉む手段である。葉打ちによって、色沢・香味の向上と次の粗揉工程の時間を短縮することができる。葉打ち手段は葉打ち機であることができ、葉打ち機として、例えば、機械の中に複数の鍬の刃のような手(もみ手と呼ばれることもある)とフォーク状の手(さらい手と呼ばれることもある)が存在し、それらの回転と機械内の熱風で葉打ちを行う葉打ち機を例示することができる。一般的には、熱風は70℃〜90℃程度が好ましく、葉打ち時間は5〜30分程度が好ましい。熱風は葉打ち手段全体に行き渡れば一方向固定式でなくともよい。葉打ち手段に洗浄処理手段が実装されていることが好ましく、洗浄処理手段は高圧洗浄装置であることが好ましい。高圧洗浄装置は、その洗浄効果が認められる限りにおいて、一方向固定式でも拡散式でも回転式でもよい。葉打ち手段に殺菌処理手段が実装されていることがさらに好ましく、葉打ち手段に通常備わっている熱風源とその循環装置を加熱処理手段とすることもできる。
【0018】
ここで「粗揉手段」とは、葉打ち手段と同様に、乾燥した熱風を送り込みながら打圧を加えて茶葉を揉む手段である。粗揉手段は粗揉機であることができ、例えば、第一粗揉機および第二粗揉機のように複数の粗揉機が連結されているものであってもよい。粗揉は、葉打ち後に煎茶特有の色調や風味を出すために行われ得る。粗揉後の茶葉の水分含量はおよそ30〜60%程度である。一般的には、90〜100℃の熱風が好ましく、粗揉時間は30〜50分程度が好ましい。熱風は粗揉手段全体に行き渡れば一方向固定式でなくともよい。粗揉手段に洗浄処理手段が実装されていることが好ましく、洗浄処理手段は高圧洗浄装置であることが好ましい。高圧洗浄装置は、その洗浄効果が認められる限りにおいて、一方向固定式でも拡散式でも回転式でもよい。粗揉手段に殺菌処理手段が実装されていることがさらに好ましく、粗揉手段に通常備わっている熱風源とその循環装置を加熱殺菌処理手段とすることもできる。
【0019】
「粗揉手段」と「葉打ち手段」は1つの機械であることができ、例えば、図7に記載の葉打ち兼粗揉機であることができる。
【0020】
(E)「葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程」
本製造方法は、「葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程」を含む。葉打ち手段または粗揉手段に備わる殺菌処理手段により実施されることができ、好ましくは加熱殺菌処理、特に熱風処理が好ましい。ここで熱風は80〜120℃、好ましくは90〜120℃、さらに好ましくは100〜120℃であることができ、その処理時間は10分以上、好ましくは30〜90分、さらに好ましくは45〜90分、葉打ち手段または粗揉手段内の気温が60℃を超えた後の処理時間が30分以上、好ましくは45〜90分、さらに好ましくは60〜90分であることが好ましい。「葉打ち前」とは葉打ちに先立っての意味であり葉打ち直前でもよく荒茶製造前でもよい。「粗揉前」とは粗揉に先立っての意味であり粗揉直前でもよく荒茶製造前でもよい。例えば、葉打ち手段と粗揉手段が1つの機械である場合など、葉打ち手段および粗揉手段それぞれの加熱処理を一緒に行うことができる。加熱処理は、少なくとも1000℃・分以上、好ましくは2000〜6000、さらに好ましくは3000〜6000℃・分の積算温度で実施することにより、蒸葉冷却後の茶葉に含まれる大腸菌群の増殖を抑制等することで十分な低減化を実現することができる。
【0021】
本荒茶製造方法は、さらに乾燥手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であることが好ましい。
(F)「乾燥手段」
ここで「乾燥手段」とは、荒茶の実質的な最終製造工程である乾燥工程を行う手段であって、乾燥機であることができる。乾燥手段によって、茶葉に含まれる水分含量を5%程度まで減少させることができる。粗揉後は、揉捻、中揉、精揉が順番に実施されることが一般的であることから、「乾燥手段」は精揉された茶葉を乾燥(好ましくは水分含量を5%程度まで乾燥)する手段であることが好ましい。熱風処理は少なくとも80℃以上の温度、好ましくは80〜95℃の温度の熱風処理であり、また、少なくとも2400℃・分以上の積算温度で実施することが好ましく、茶葉に含まれる大腸菌群を陰性化することができる。
【0022】
(G)その他
本願製造方法は、揉捻手段、中揉手段、精揉手段をそれぞれ備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であってもよく、蒸熱手段による蒸熱工程、蒸葉冷却手段による冷却工程、葉打ち手段による葉打ち工程、粗揉手段による粗揉工程、揉捻手段による揉捻工程、中揉手段による中揉工程、および精揉手段による精揉工程を含むことができる。その他、選別工程、合組工程を含んでいてもよい。ここで、合組とは、異なる種類の茶を組み合わせることをいい、合組は、茶葉の合組機を用いて行う。各手段を物理的に連結する搬送装置を当該荒茶製造機が備えていてもよく、当該荒茶製造機による荒茶製造方法において、さらに当該搬送装置を洗浄処理および/または加熱殺菌処理することにより、大腸菌群が充分に低減化された荒茶を製造することも可能である。
【0023】
本願製造方法で製造される荒茶の原料となる生葉については、その産地や採取時期(一番茶、二番茶、三番茶、秋冬番茶など)、さらには品種や植物種などに制限されない。
【0024】
(荒茶製造における大腸菌群の低減化方法)
本発明の一態様として、少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の低減化方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理および/または殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理することを手段とする大腸菌群の低減化方法を挙げることができる。
ここで「大腸菌群」とはグラム陰性無芽胞性の桿菌であり乳糖を分解して酸とガスを発生する好気性または通性嫌気性の細菌群である。食品において大腸菌群陰性が求められている。本低減化方法は、従前の仕上げ強化(非特許文献1〜3)ではない大腸菌群の低減化手段を用いることから、茶の種類に応じて製茶の滋味・香気を仕上げ段階で自由に調節できる効果を有する。また、蒸熱強化でない大腸菌群の低減化手段を用いることから、荒茶の種類に応じて、荒茶の風味・香味を保持させることができる効果を有する。
【0025】
蒸葉冷却手段の殺菌処理として、加熱(例えば、熱風)による蒸葉冷却手段の殺菌処理が好ましい。蒸葉冷却手段を加熱殺菌処理する前に蒸葉冷却手段を洗浄しておくことが好ましく、蒸葉冷却手段の洗浄処理・加熱殺菌処理により、大腸菌群の低減化が促進される。殺菌処理は薬剤殺菌、好ましくは殺菌剤、特に好ましくはエタノールによる殺菌または2700℃・分以上、好ましくは3000〜6000℃・分、さらに好ましくは4500〜6000℃・分の積算温度の加熱殺菌処理であることが好ましい。
【0026】
葉打ち手段および粗揉手段の加熱殺菌処理は、熱風処理であることが好ましく、熱風は80〜120℃、好ましくは90〜120℃、さらに好ましくは100〜120℃であることができ、その処理時間は10分以上、好ましくは30〜90分、さらに好ましくは45〜90分、葉打ち手段または粗揉手段内の気温が60℃を超えた後の処理時間が30分以上、好ましくは45〜90分、さらに好ましくは60〜90分であることが好ましい。加熱殺菌処理は、少なくとも1000℃・分以上、好ましくは2000〜6000、さらに好ましくは3000〜6000℃・分の積算温度で実施することにより、蒸葉冷却後の茶葉に含まれる大腸菌群の増殖を抑制することなどで十分な低減化を実現することができる。
【0027】
また、さらに乾燥手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の低減化方法であって、製造時の乾燥を少なくとも2400℃・分以上の積算温度で実施することを特徴とする大腸菌群の低減化方法を好ましく例示できる。本低減化方法の実施によって、大腸菌群は陰性化される。
【0028】
本願陰性化方法は、揉捻手段、中揉手段、精揉手段をそれぞれ備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の低減化方法であってもよい。その他、選別手段、または合組手段をそれぞれ備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の低減化方法であってもよい。
【0029】
(荒茶製造用の蒸熱後冷却機)
本発明の一態様として、荒茶製造用の蒸熱後冷却機を挙げることができる。本蒸熱後冷却機は、(A)高圧水噴射手段および(B)少なくとも積算温度が2700℃・分以上、好ましくは3000〜6000℃・分、さらに好ましくは4500〜6000℃・分の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備える。(A)の手段により本蒸熱後冷却機を洗浄でき、(B)の手段により本蒸熱後冷却機を殺菌(大腸菌群の低減化)することができる。従って、本蒸熱後冷却機を本願製造方法や本願低減化方法に利用可能である。熱風は茶葉や水滴が付着する可能性のある部位にあたるような設計が好ましい。熱風発生部位は複数でもよいし一箇所でもよい、熱風の搬送のためにダクト等を使用してもよい。高圧水噴出口は茶葉の残渣を洗い落とすように配置できればよい(洗浄が達成できれば複数でも一箇所でもよい)。高圧水の圧力は50kg/cm2〜2500kg/cm2程度が好ましい。本蒸熱後冷却機として図9に記載の冷却機を例示できる。
【0030】
(荒茶製造用の葉打ち機または荒茶製造用の粗揉機)
本発明の一態様として、荒茶製造用の葉打ち機または荒茶製造用の粗揉機を挙げることができる。本葉打ち機または粗揉機は、少なくとも積算温度が1000℃・分以上、好ましくは2000〜6000、さらに好ましくは3000〜6000℃・分の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備える。本手段により本葉打ち機または粗揉機を殺菌(大腸菌群の低減化)することができる。従って、本葉打ち機または粗揉機を本願製造方法や本願低減化方法に利用可能である。葉打ち機または粗揉機は兼用であってもよく、高圧洗浄装置内蔵型が好ましい。高圧洗浄装置から噴射される高圧洗浄液の噴射圧力は50kg/cm2〜2500kg/ cm2程度が好ましい。本葉打ち機(兼粗揉機)として図7に記載の葉打ち機・粗揉機を例示できる。
【0031】
(荒茶製造機)
本発明の一態様として、荒茶製造機を挙げることができる。本荒茶製造機は、(A)高圧水噴射手段と少なくとも積算温度が2700℃・分以上、好ましくは3000〜6000℃・分、さらに好ましくは4500〜6000℃・分の加熱処理を可能とする熱風発生手段とを備えた蒸熱後冷却装置、(B)積算温度が1000℃・分以上、好ましくは2000〜6000、さらに好ましくは3000〜6000℃・分の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた荒茶製造用の葉打ち機、(C)積算温度が1000℃・分以上、好ましくは2000〜6000、さらに好ましくは3000〜6000℃・分の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた乾燥機、をそれぞれ備える。本荒茶製造機は本願製造方法や本願低減化方法に利用可能である。本荒茶製造機として、例えば、図10記載の荒茶製造機を例示することができる。
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし本発明は実施例に限定されるものでない。
【実施例1】
【0033】
(荒茶製造工程における大腸菌群数の推移に関する調査)
複数の県に存在する24の荒茶工場(3茶期)について大腸菌群による汚染の実態調査を食品衛生検査指針に準拠して実施した。その一部の結果を図1に示す。工場間による差は見られたが、総合的な傾向としては、生葉における大腸菌群数に比べ、蒸し工程で激減するものの、冷却や葉打ち、粗揉などの工程で飛躍的に菌数が上昇し、その後、緩やかに減少、あるいはそのまま推移し、乾燥の工程で減少することが分かった。しかしながら、乾燥後に大腸菌群として10,000個/gを超えるといった、仕上げ工程で大腸菌群の陰性化が困難なレベルの残留もあった。
【0034】
(冷却機における大腸菌群の低減化)
前述の実態調査の結果に基づき、冷却機が大腸菌群の汚染源であると仮定し、その汚染
の制御法を模索した。荒茶製造終了後、冷却機の洗浄を実施し、製造再開時に冷却機の出口で茶葉を採取して食品衛生検査指針に準拠して大腸菌群数を調べたところ、菌数は洗浄をしない場合と同等、あるいは増加しており(データは割愛)、洗いムラはあると思われるが、概して洗浄だけでは大腸菌群を低減できないことが分かった。次に、洗浄後にエタノールあるいは加熱殺菌(温度設定90〜100℃・30分および60分処理)を施し、大腸菌群数の低減効果を拭き取り検査により確認した。その結果、いずれの殺菌処理でも冷却機における明らかな大腸菌群数の低減が確認された(図2)。
【0035】
(葉打ち機および粗揉機における大腸菌群低減化)
次に、葉打ち機および粗揉機における大腸菌群低減化を目指すため、加熱による殺菌効果を温度と時間を変動させた条件で、機内の大腸菌群数を拭き取り検査で確認した(庫内温度設定80〜120℃、時間10〜60分)。その結果、積算温度が約1000℃・分程度以上で10%未満の生存率に機内の大腸菌群を低減できることが明らかとなった(図3)。この結果を踏まえて、冷却機を洗浄・殺菌し、葉打ち機と粗揉機の加熱(庫内温度設定90〜100℃:60℃を超えた時点より30分および60分、積算温度:1000〜3000℃・分)で処理した条件で荒茶の製造を行い、荒茶における大腸菌群数のモニタリングを食品衛生検査指針に準拠して行った。その結果を図4に示す。処理を施した冷却機、葉打ち機および粗揉機の出口における茶葉の大腸菌群数は、無処理(図1)に比べて著しい低減が確認され、乾燥後の大腸菌群数も100個/g未満に低減することができた。また、殺菌前に葉打ち機と粗揉機の洗浄を追加した場合でも同様の効果が確認された(データは割愛)。
一方、冷却機を処理せず、葉打ち機と粗揉機を処理した場合、顕著な効果は確認できなかった(図5)。しかしながら、冷却機を洗浄しないで殺菌のみ実施して、葉打ち機と粗揉機を処理した場合、無処理の条件(図1)と比べて明らかな大腸菌群の低減効果が確認できた(図6)。
以上のことから、冷却機、葉打ち機および粗揉機の殺菌を実施して製造することにより、大腸菌群が顕著に低減された荒茶が製造できることが示された。加えて、冷却機、葉打ち機および粗揉機は洗浄を行うことにより、より効率的に低減できることも示された。
【0036】
(まとめ)
今回は一般的な荒茶製造工程を用いて試験を実施したが、工場によっては葉打ち機がない、冷却機が蒸し機と一体化している、あるいは計量器が設置されているなどのラインもあるが、それらについても冷却から粗揉までの工程を今回の方法で処理することにより大腸菌群が低減化できると考えられる。また、冷却機から粗揉機までの間にある搬送装置についても同様の処理を行えば、さらなる低減効果が期待できよう。殺菌の手法についても、今回は加熱とエタノールによって試験を行ったが、一般的な殺菌剤や蒸気などでも、大腸菌群に殺菌効果を示すものであれば同等の効果が得られるものと考えられた。
今回の発明を実施するに当たり、既存の設備でも機種によっては実施可能であるが、より効果的、かつ労力をかけないで実施するに当たり、図7〜10に示すような設備などが設計できる。
【実施例2】
【0037】
(乾燥機における大腸菌群低減化)
無処理で荒茶製造を行う際、乾燥機の温度を、通常乾燥に用いられている温度である80、85、90および95℃に設定し、荒茶の乾燥を25分間行った(積算温度:2000、2125、2250、2375分・℃)。乾燥前と乾燥後に茶葉を採取し、食品衛生検査指針に基づき、菌数調査、ならびにフローラ調査を実施した。その結果を図12に示す。いずれの条件でも著しい菌数の低減が見られたが、温度が高い方がその効果は高まった。荒茶の一般生菌には耐熱性のない大腸菌群などに加え、Bacillus属細菌(B. subtilis、B. megaterium、B. circulans等)といった耐熱性が非常に強い菌種もみられ、乾燥工程後にはこのような耐熱性の高い微生物が優先的に生残した(図13)。これらの結果を基に大腸菌群の減少率を算出したところ、98.7〜99.2%の低減率であった(図14)。
【実施例3】
【0038】
(冷却機、葉打ち機、粗揉機および乾燥機における大腸菌群の陰性化)
冷却機、葉打ち機および粗揉機を殺菌し、荒茶の製造を行った際の乾燥機の温度を、通常乾燥に用いられている温度である80、85、90および95℃に設定し、荒茶の乾燥を30分間行った。乾燥前と乾燥後に茶葉を採取し、食品衛生検査指針に基づき、菌数の調査を実施した。その結果、いずれの条件でも大腸菌群は陰性となった(図15)。洗浄や殺菌を行わない場合は、低減はするものの、非常に高いレベルの大腸菌群が生残した(図16)。以上のことから、粗揉までの段階で本願方法によって大腸菌群が低減されていれば、所定の乾燥によって大腸菌群の陰性化が可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、大腸菌群が低減化または陰性化された荒茶の製造方法および本製造方法に用いる荒茶製造機を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一般的な荒茶製造工程における大腸菌群数の推移を示す図である。
【図2】冷却機の洗浄・殺菌による効果の一例(エタノールによる殺菌剤)を示す図である。
【図3】粗揉機の加熱(熱風乾燥)による大腸菌群の低減効果を示す図である。
【図4】冷却機を洗浄・殺菌し、葉打ち機および粗揉機を加熱処理した荒茶製造工程における大腸菌群数の推移を示す図である。
【図5】冷却機を洗浄・殺菌せず(無処理)、葉打ち機および粗揉機を加熱処理した荒茶製造工程における大腸菌群数の推移を示す図である。
【図6】冷却機を殺菌し、葉打ち機および粗揉機を加熱処理した条件の大腸菌群数の推移を示す図である。
【図7】高圧洗浄装置内蔵型葉打ち機・粗揉機(断面図)を示す図である。
【図8】揉み手・葉ざらい用ブラシジャケットを示す図である。
【図9】洗浄・熱風発生機付き冷却機(断面図)を示す図である。
【図10】大腸菌群低減化の工夫を施した装置を導入した荒茶の製造工程を示す図である。
【図11】荒茶の製造工程および仕上げ茶の製造工程を示す図である。
【図12】乾燥温度を変化させた際の一般生菌の減少を示す図である。
【図13】精揉後と乾燥後の一般生菌数フローラの違いを示す図である。
【図14】無処理で荒茶を製造した際の乾燥工程における大腸菌群の低減率を示す図である。
【図15】処理を行って荒茶を製造した際の乾燥工程における大腸菌群の低減率を示す図である。
【図16】無処理で荒茶を製造した際の乾燥工程における大腸菌群の低減率を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程を含む、荒茶製造方法。
【請求項2】
少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程を含む、荒茶製造方法。
【請求項3】
葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程が、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理(加熱であれば少なくとも積算温度が1000℃・分以上)する工程である、請求項2に記載の荒茶製造方法。
【請求項4】
冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理する工程が、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理(薬剤殺菌または加熱殺菌(積算温度が2700℃・分以上))する工程であり、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程が、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理(加熱であれば少なくとも積算温度が1000℃・分以上)する工程である、請求項2に記載の荒茶製造方法。
【請求項5】
さらに乾燥手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、乾燥処理(少なくとも80℃以上の温度で少なくとも積算温度が2400℃・分以上)工程を含む、請求項2〜4のうちいずれか1項に記載の荒茶製造方法。
【請求項6】
少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の低減化方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理することを手段とする大腸菌群の低減化方法。
【請求項7】
少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、粗揉手段および乾燥手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の陰性化方法であって、(A)〜(C)の工程を含む、大腸菌群の陰性化方法;
(A)冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理および/または殺菌処理(薬剤殺菌または加熱殺菌(積算温度が2700℃・分以上))する工程、
(B)葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理(加熱であれば少なくとも積算温度が1000℃・分以上)する工程、および
(C)乾燥手段による乾燥処理(少なくとも80℃以上の温度で少なくとも積算温度が2400℃・分以上)工程。
【請求項8】
少なくとも(A)および(B)を備えた荒茶製造用の蒸熱後冷却機;
(A)高圧水噴射手段、
(B)少なくとも積算温度が2700℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段。
【請求項9】
少なくとも積算温度が1000℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた荒茶製造用の葉打ち機または荒茶製造用の粗揉機。
【請求項10】
少なくとも(A)〜(C)を備えた荒茶製造機;
(A)高圧水噴射手段と少なくとも積算温度が2700℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段とを備えた蒸熱後冷却装置、
(B)積算温度が1000℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた荒茶製造用の葉打ち機、および
(C)積算温度が1000℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた荒茶製造用の粗揉機。
【請求項1】
少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程を含む、荒茶製造方法。
【請求項2】
少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程を含む、荒茶製造方法。
【請求項3】
葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程が、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理(加熱であれば少なくとも積算温度が1000℃・分以上)する工程である、請求項2に記載の荒茶製造方法。
【請求項4】
冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理する工程が、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理(薬剤殺菌または加熱殺菌(積算温度が2700℃・分以上))する工程であり、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理する工程が、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理(加熱であれば少なくとも積算温度が1000℃・分以上)する工程である、請求項2に記載の荒茶製造方法。
【請求項5】
さらに乾燥手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造方法であって、乾燥処理(少なくとも80℃以上の温度で少なくとも積算温度が2400℃・分以上)工程を含む、請求項2〜4のうちいずれか1項に記載の荒茶製造方法。
【請求項6】
少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、および粗揉手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の低減化方法であって、冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理かつ殺菌処理し、葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理することを手段とする大腸菌群の低減化方法。
【請求項7】
少なくとも蒸熱手段、蒸葉冷却手段、葉打ち手段、粗揉手段および乾燥手段を備えた荒茶製造機による荒茶製造における大腸菌群の陰性化方法であって、(A)〜(C)の工程を含む、大腸菌群の陰性化方法;
(A)冷却前に蒸葉冷却手段を洗浄処理および/または殺菌処理(薬剤殺菌または加熱殺菌(積算温度が2700℃・分以上))する工程、
(B)葉打ち前に葉打ち手段および粗揉前に粗揉手段をそれぞれ殺菌処理(加熱であれば少なくとも積算温度が1000℃・分以上)する工程、および
(C)乾燥手段による乾燥処理(少なくとも80℃以上の温度で少なくとも積算温度が2400℃・分以上)工程。
【請求項8】
少なくとも(A)および(B)を備えた荒茶製造用の蒸熱後冷却機;
(A)高圧水噴射手段、
(B)少なくとも積算温度が2700℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段。
【請求項9】
少なくとも積算温度が1000℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた荒茶製造用の葉打ち機または荒茶製造用の粗揉機。
【請求項10】
少なくとも(A)〜(C)を備えた荒茶製造機;
(A)高圧水噴射手段と少なくとも積算温度が2700℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段とを備えた蒸熱後冷却装置、
(B)積算温度が1000℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた荒茶製造用の葉打ち機、および
(C)積算温度が1000℃・分以上の加熱処理を可能とする熱風発生手段を備えた荒茶製造用の粗揉機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−278946(P2009−278946A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136153(P2008−136153)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(303044712)三井農林株式会社 (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(303044712)三井農林株式会社 (72)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]