説明

荒茶製造機、荒茶の製造方法、その荒茶と荒茶の微生物数低減化方法

【課題】この発明の課題は、茶葉の加熱処理手段を備えていない揉捻手段と搬送手段において、荒茶の微生物を低減化する荒茶製造機、荒茶の製造方法、その荒茶と荒茶の微生物数低減化方法を提供することである。
【解決手段】本発明の第1手段では、少なくとも蒸熱手段、粗揉手段、揉捻手段、中揉手段及び搬送手段を備えた荒茶製造機において、前記揉捻手段は、揉盤と、この揉盤上を旋回移動し、裾に掃き込みブラシを支持した揉捻鉢と、前記揉捻鉢内に配設され、揉盤上の茶葉を加圧する略円錐形の揉圧盤とを備えており、前記揉盤は外周寄りの所定範囲を低付着性の表面部材にした荒茶製造機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荒茶の微生物の数を低減化する荒茶製造機、荒茶の製造方法、その荒茶と荒茶の微生物数低減化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、お茶はペットボトル飲料やお菓子、パンなど、これまでになかった食品の用途に使われるようになった。お茶をペットボトル飲料の原料や食品素材として使用する場合には、食品原料として扱われ、受入業者が定めた微生物基準等を準拠する必要が生じ、微生物の数が多いと製造された商品が腐敗するなどのトラブルの原因となることがあるため、菌数の多い荒茶は業者から敬遠される。従って、食品や飲料の原料となる荒茶においては、一般生菌や大腸菌群等の微生物の数を低減化すること、好ましくは陰性化することが望まれている。蒸熱手段、粗揉手段、揉捻手段、中揉手段、精揉手段、乾燥手段等を備えた荒茶製造機において荒茶の微生物の数を低減化する取り組みが行われており、蒸熱手段の蒸機での茶葉の蒸し時間を長くする方法(非特許文献1、非特許文献2)及び、乾燥手段の乾燥機内で処理される茶葉の積算温度(温度×時間)を高くする方法(特許文献1)が知られている。また、特許文献2では、製茶前において、冷却機、葉打ち機、粗揉機に殺菌処理を実施することで大腸菌群数が低減することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−128618号公報
【特許文献2】特開2009−278946号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】沢村信一、加藤一郎、大屋隆弘、伊藤(中野)恵理(2003):煎茶の微生物環境2−荒茶微生物数の低減化−、茶研報、96、57−62
【非特許文献2】沢村信一、加藤一郎、大屋隆弘、伊藤(中野)恵理(2002):飲料原料としての緑茶の微生物管理、日本清涼飲料研究会「第12研究発表会」講演集、19−24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、非特許文献1、非特許文献2には、直接茶葉を加熱処理することによる荒茶の一般生菌数の低減化が開示されている。しかしながら、茶葉の加熱処理は、水色、香り、味等茶の品質に影響を与えるため、製造する荒茶によっては十分に加熱処理できないという欠点がある。また、非特許文献2では荒茶製造工程中の製茶機械に残存する微生物の製茶中における茶葉への2次的汚染を示唆しており、荒茶の微生物数の低減化を茶葉の加熱処理だけで対処するのは困難としている。製茶機械を充分掃除すれば、製茶機械からの2次的汚染は軽減できるが、多数の製茶機械が配置されている大規模な製茶工場等では、すべての機械を毎日作業者だけで充分掃除することは重労働となり、現実的に非常に困難である。
【0006】
特許文献2では、冷却機、葉打ち機、粗揉機を製茶前に加熱処理することで大腸菌群の数が低減することが開示されている。簡単な掃除及び加熱処理をすることで作業者の労力は軽減されるが、これらの処置をした場合にも少なからず微生物が残留しており、更なる微生物数の低減化が望まれた。
【0007】
本発明の課題は、茶葉に加熱処理する手段を備えていない揉捻手段と搬送手段において、荒茶の微生物数を低減化する荒茶製造機、荒茶の製造方法、その荒茶と荒茶の微生物数低減化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、第1手段では、少なくとも蒸熱手段と、粗揉手段と、揉捻手段と、中揉手段と、搬送手段とを備えた荒茶製造機において、前記揉捻手段は、揉盤と、この揉盤上を旋回移動し裾に掃き込みブラシを支持した揉捻鉢と、前記揉捻鉢内に配設され揉盤上の茶葉を加圧する略円錐形の揉圧盤とを備えており、前記揉盤は外周寄りの所定範囲を低付着性の表面部材にした荒茶製造機である。
【0009】
第2手段では、少なくとも蒸熱手段と、粗揉手段と、揉捻手段と、中揉手段と、搬送手段とを備えた荒茶製造機において、前記搬送手段の搬送面の両側部は10mm以上のコーナーRを有し、更に前記搬送面の表面の一部又は全部にフッ素樹脂処理したトラフ型振動コンベアを、少なくとも蒸熱手段後且つ中揉手段前に一以上備えた荒茶製造機である。
【0010】
第3手段では、少なくとも蒸熱手段と、粗揉手段と、揉捻手段と、中揉手段と、搬送手段とを備えた荒茶製造機において、前記揉捻手段は、揉盤と、この揉盤上を旋回移動し裾に掃き込みブラシを支持した揉捻鉢と、前記揉捻鉢内に配設され揉盤上の茶葉を加圧する略円錐形の揉圧盤とを備えており、前記揉盤は外周寄りの所定範囲を低付着性の表面部材にし、且つ、前記搬送手段の搬送面の両側部は10mm以上のコーナーRを有し、更に前記搬送面の表面の一部又は全部にフッ素樹脂処理したトラフ型振動コンベアを、少なくとも蒸熱手段後且つ中揉手段前に一以上備えた荒茶製造機である。
【0011】
第4手段では、前記略円錐形の揉圧盤の中心軸の揉盤上の可動領域よりも外周寄りを低付着性の表面部材にした第1手段又は第3手段の荒茶製造機である。
【0012】
第5手段では、前記低付着性の表面部材をフッ素樹脂とした第1手段、第3手段又は第4手段の荒茶製造機である。
【0013】
第6手段では、前記掃き込みブラシのブラシ材の線径を0.6mm未満とした第1手段、第3手段、第4手段又は第5手段の荒茶製造機である。
【0014】
第7手段は、第1手段乃至第6手段のいずれかの荒茶製造機を用いることによって製造された荒茶である。
【0015】
第8手段は、第1手段乃至第6手段のいずれかの荒茶製造機を用いた荒茶の製造方法である。
【0016】
第9手段は、第1手段乃至第6手段のいずれかの荒茶製造機を用いた荒茶の微生物数低減化方法である。
【0017】
第10手段は、蒸葉処理手段を備えた、第1手段乃至第6手段のいずれかの荒茶製造機において、製造前に少なくとも蒸葉処理手段及び粗揉手段をそれぞれ殺菌処理した荒茶の製造方法である。
【0018】
第11手段は、第10手段の製造方法を用いることによって製造された荒茶である。
【0019】
第12手段は、第10手段の製造方法を用いた荒茶の微生物数低減化方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の荒茶製造機、荒茶製造方法、荒茶の微生物数低減化方法を用いれば、作業者の労力を軽減して、微生物の数が低減化された高品質な荒茶を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】荒茶製造機の一例の図
【図2】本発明の荒茶製造機の揉捻機正面図
【図3】本発明の荒茶製造機の揉捻機側面図
【図4】本発明の荒茶製造機の揉捻機の揉盤の図
【図5】本発明の荒茶製造機の揉捻機の掃き込みブラシの図
【図6】トラフ型振動コンベアの側面図
【図7】本発明のトラフ型振動コンベアのトラフの形状の一例の図
【図8】本発明の実施例の荒茶製造機のレイアウトの図
【図9】荒茶製造機おける、生葉、蒸熱手段、蒸葉処理手段、粗揉手段、揉捻手段、中揉手段、精揉手段の各手段終了後の茶葉の水分活性グラフの図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。荒茶製造機は、茶園で摘採した生葉を最初に加工する製造機であり、主に生葉に含まれる酸化酵素を不活性化する工程と、酸化酵素を不活性化した茶葉に含まれる水分を段階的に除き、乾かしながら加工する工程とからなる。荒茶製造機の一様態として、図1のように蒸熱手段2と、蒸葉処理手段3と、粗揉手段4と、揉捻手段5と、中揉手段6と、精揉手段7と、乾燥手段8と、それぞれの手段を接続する搬送手段1とから構成され、生葉から荒茶が製造される。蒸製玉緑茶の荒茶の製造では精揉手段7を除くこともあり、目的とする荒茶により荒茶製造機は異なる。本発明では少なくとも蒸熱手段2と、粗揉手段4と、揉捻手段5と、中揉手段6と、搬送手段1とを備える荒茶製造機とする。
【0023】
蒸熱手段2は、生葉に蒸気を適度な時間(例えば90秒)あてて、生葉に含まれる酸化酵素を蒸気の熱により不活性化する工程が行われ、蒸機がある。蒸機は送帯式や回転撹拌式があるが、これらには限らない。蒸熱は緑茶の色と品質に大きな影響を与える。
【0024】
粗揉手段4は、熱風を送り込みながら茶葉を均一に乾燥する工程が行われ、粗揉機41や、構造は粗揉機41と類似した葉打ち機42がある。例えば、葉打ち機42と粗揉機41や、葉打ち機42と第一粗揉機と第二粗揉機のように複数の粗揉手段4の機械を連結してもよい。火炉からの熱風が送風される粗揉機41の固定胴内で、茶葉を、さらい手がかきあげ、揉底に落下した後に揉み手が加圧する。粗揉手段4には、洗浄処理手段が備えていることが好ましく、洗浄処理手段は高圧洗浄装置であることが好ましい。さらに粗揉手段4に殺菌処理手段を備えていることが好ましく、粗揉手段4の火炉を殺菌処理手段とすることもできる。
【0025】
本発明の中核の手段の揉捻手段5について説明する。揉捻手段5は茶葉中の水分を揉み出し、茶葉の水分を均一にする工程が行われ、揉捻機51がある。揉捻機51は、適宜のフレーム52のほぼ上面に台板状に設けられた揉盤53と、この揉盤53上を円旋回しながら移動する揉捻鉢54と、この揉捻鉢54に支持されながら揉盤53上に供給される茶葉を揉圧する揉圧盤装置55とを主要な部材として構成している。揉捻鉢54は円筒状であり、その周囲を3箇所のクランク式のアーム56により支持されており、前記アーム56の回転をうけて揉捻鉢54は揉盤53上を偏心的に旋回運動する。アーム56は回転して危険なためアームカバー57を備えており、揉捻鉢54の裾周囲には囲むように掃き込みブラシ72が設けられている。
【0026】
揉圧盤装置55は、主に揉盤53上の茶葉に揉圧作用を与える略円錐形の揉圧盤58、該揉圧盤58を吊持状態に支持し揉捻鉢54の上方を横切るように配置された分銅レール59及び分銅レール59上を摺動しながら揉圧状態を加減する作用を担う分銅60から構成される。分銅レール59は、アーム56の1本から垂直に立ち上がり、揉捻鉢54の側面とも接しているレール支持板61に対して揺動自在に配置される。揉捻鉢54内で茶葉が一塊にならず分散するように、揉圧盤58の底面は、揉圧盤58と分銅レール59との支持部62の垂直方向にのびる中心軸63上の揉圧盤底面中心部64が下方に突出した形状となっている。分銅レール59上に配置された分銅60は、手動もしくは分銅モーター65の動力によって分銅レール59上を適宜な位置に移動できるようになっている。分銅60が分銅レール59の自由端に行くに従い、揉圧盤58の揉圧作用が強まる。
【0027】
金属製(ステンレス等)もしくは木製の揉盤53は、揉捻工程が終了した際に茶葉を取り出すため、下方に開放する取出盤66とその外周部67と接する固定揉盤68とからなる。また揉盤53には凸状の揉捻ヒル69が中心から円弧上に複数本配設されている。本発明では、前記固定揉盤68の外周寄りにはフッ素樹脂が塗布されたフッ素樹脂鋼板70(例えば厚さ0.45mm)が環状に貼設されている。貼設範囲は固定揉盤68の外周寄りの任意とするが、茶葉中の水分を効果的に揉み出し、更に揉まれた茶葉が揉盤53の外周寄りに残留しないよう揉圧盤58の中心軸63の揉盤53上の可動領域71となる図4の斜線部分より外側であることが好ましい。また前記固定揉盤68の外周寄りに貼設する低付着性の表面部材は、本実施例ではフッ素樹脂を用いたが、揉盤53で使用されている金属製(ステンレス等)もしくは木製と比較して摩擦係数が低く茶葉が付着しにくい材質であればよい。フッ素樹脂鋼板70の貼設の他にも、フッ素樹脂の揉盤53表面への貼設、フッ素樹脂塗料の揉盤53表面への吹付け、被覆等のフッ素樹脂処理加工又はポリエチレン樹脂の貼設等がある。
【0028】
掃き込みブラシ72は図5のように、複数のブラシ材73を2つ折りにして、その2つ折り部分73aに芯線74を挟み、ブラシ材73の芯線74を挟んだ部分を断面コ字状のチャンネル75が挟持しブラシ体76を形成している。ブラシ体76は取り付け輪77と取り付け金具78で挟まれるようにねじ79で固定される。取り付け輪77は、ブラシ材73の端部73bが揉盤53と略接するように揉捻鉢54の裾で支持される。また図5のブラシ体76の2つ折りされたブラシ材73の左右の長さは均等であるが、左右の長さが異なるブラシ体76でもよい。ブラシ材73の線径は0.6mm未満が好ましく、揉盤53上の可動領域71に掃き込むために適度な強度もある0.2〜0.4mmが特に好ましい。
【0029】
搬送手段1は、荒茶製造機内でのそれぞれの手段での工程を終了後、次の手段に茶葉を搬送する工程が行われ、トラフ型振動コンベア11、バケットコンベア12、ベルトコンベア13等がある。トラフ型振動コンベア11は、トラフ14が、板ばね15を介して架台16に支持され、振動駆動部17のクランク18によりトラフ14は水平方向に振動する。図7のようにトラフ14の茶葉を搬送する搬送面19は、搬送面底面20の側部20a、20bから円弧状に曲面を有するよう立ち上がり搬送面側面21を形成する。円弧の半径となるコーナーR22は10mm以上とする。円弧の半径は20mm以上が好ましく、更には50mm以上が好ましい。また、トラフ14全体、もしくは、少なくとも搬送面19の全部又は一部にフッ素樹脂製テープの貼着や、フッ素樹脂鋼板の貼設、フッ素塗料の吹付け、被服加工等フッ素樹脂処理加工することが好ましい。
【0030】
中揉手段6は、主に揉捻手段5の後に設けられ、茶葉の塊をほぐしながら、均一に乾燥させる工程が行われ、中揉機がある。中揉機は、回転胴型中揉機や粗揉機と構造が略同一の固定胴型中揉機があり、固定胴型中揉機と回転胴型中揉機を組み合わせて中揉手段6としてもよい。
【0031】
本発明の荒茶製造機は少なくとも蒸熱手段2と、粗揉手段4と、揉捻手段5と、中揉手段6と、搬送手段1とを備えた荒茶製造機であるが、所望の荒茶、品質のよい荒茶の製造のために、蒸葉処理手段3、精揉手段7、乾燥手段8等、別の手段を加えてもよい。また手段の順序も限定しない。例えば、蒸葉処理手段3は、蒸熱手段2後の茶葉を粗揉手段4の前に処理する工程が行われ、茶葉を冷却する冷却機や、丸胴内の茶葉を回転により打圧を与えて軟化させる機械等がある。冷却機は温風や冷風等の風が流れる機械内に蒸熱手段2後の茶葉を通過させることにより、茶葉に付着した水分を取り除き、高温になった茶葉を冷ます(例えば室温位まで冷ます)ものであり、急激に品温を下げることで、茶葉の色がよくなり品質の高い茶葉とすることができる。また、蒸葉処理手段3に殺菌処理手段を備えていることが好ましい。
【0032】
殺菌処理手段は、微生物数の低減化又は陰性化処理を意味し、例えば加熱(例えば熱風)による殺菌処理や薬剤による殺菌処理手段がある。殺菌処理手段は茶葉が各手段に投入される前までに実施されればよい。
【0033】
加熱による蒸葉処理手段3の殺菌処理手段は、蒸葉処理手段3(例えば温風冷却装置)に存在する微生物数が低減化又は陰性化する程度に加熱すればよく、例えば2700℃・分以上、好ましくは3000〜6000℃・分、さらに好ましくは4500〜6000℃・分の積算温度(温度×時間(分))で加熱することができ、熱風は少なくとも80℃以上、好ましくは100〜120℃であり、処理時間は30分以上、好ましくは45〜90分、さらに好ましくは60〜90分程度である。また殺菌処理をする前に洗浄処理をすることが好ましい。洗浄処理とは蒸葉処理手段3を洗うことであるが、洗浄時間及び洗浄方法等は制限されない。蒸葉処理手段3の洗浄処理、殺菌処理により、微生物数の低減化が促進又は陰性化される。
【0034】
粗揉手段4の加熱殺菌処理は、特に熱風処理であることが好ましく、熱風は80〜120℃、好ましくは90〜120℃、さらに好ましくは100〜120℃であり、その処理時間は10分以上、好ましくは30〜90分、さらに好ましくは45〜90分であり、粗揉手段4の葉打ち機42、粗揉機41の固定胴内の温度が60℃を超えた後の処理時間が30分以上、好ましくは45〜90分、さらに好ましくは60〜90分である。加熱殺菌処理は、少なくとも1000℃・分以上、好ましくは2000〜6000℃・分、さらに好ましくは3000〜6000℃・分の積算温度で実施することにより、揉捻手段5の前の茶葉に含まれる微生物の増殖を抑制し低減化を実現することができる。
【0035】
本発明の荒茶の微生物数低減化方法とは、少なくとも蒸熱手段2と、粗揉手段4と、揉捻手段5と、中揉手段6と、搬送手段1とを備えた荒茶製造機において、本発明の揉捻手段5と本発明の搬送手段1の両方もしくはいずれかの手段を備えて荒茶を製造する荒茶の微生物数低減化方法である。更に、本発明の揉捻手段5、搬送手段1を備えることに加え、荒茶製造前に蒸葉処理手段3、粗揉手段4を殺菌処理する荒茶の微生物数低減化方法である。
【0036】
本発明の荒茶と荒茶の製造方法とは、少なくとも蒸熱手段2、粗揉手段4、揉捻手段5、中揉手段6及び搬送手段1を備えた荒茶製造機において、本発明の揉捻手段5と本発明の搬送手段1の両方もしくはいずれかの手段を備えた荒茶製造機を用いて製造する荒茶と荒茶の製造方法である。更に、本発明の揉捻手段5と本発明の搬送手段1の両方もしくはいずれかの手段を備えることに加え、荒茶製造前に蒸葉処理手段3及び粗揉手段4を殺菌処理した荒茶製造機を用いて製造する荒茶と荒茶の製造方法である。
【0037】
次に実施例について説明する。蒸熱手段2、蒸葉処理手段3、粗揉手段4、揉捻手段5、中揉手段6、精揉手段7、乾燥手段8、合組手段9、搬送手段1を備えた図8に示すレイアウトで、表1に示すような処理を実施した荒茶製造機100、150、200、250、300、350、400で荒茶を製造する。生葉コンテナ81に保管された茶園で摘採した茶葉は、蒸熱手段2へ投入され、蒸葉処理手段3、粗揉手段4、揉捻手段5、中揉手段6、精揉手段7、乾燥手段8、合組手段9へと搬送手段111、112、113、114、115、116、117、118を介して順次搬送され、荒茶が製造される。
【表1】

【実施例1】
【0038】
前記荒茶製造機200において、生葉と、蒸熱手段2、蒸葉処理手段3、粗揉手段4、揉捻手段5、中揉手段6、精揉手段7の各手段終了後の茶葉の水分活性を測定した。
【0039】
図9で示すように、生葉(水分活性0.99)から蒸熱手段2(水分活性0.99)、蒸葉処理手段3(水分活性0.99)、粗揉手段4(水分活性0.98)、揉捻手段5(水分活性0.98)までの水分活性は0.98以上であるのに対し、中揉手段6(水分活性0.91)と精揉手段7(水分活性0.68)で大きく低下する結果となった。一般に水分活性が0.91以下では食品衛生の指標となる多くの微生物の発育が抑制されるといわれている。荒茶製造機において、中揉手段6より前の手段(蒸葉処理手段3、粗揉手段4、揉捻手段5等)で微生物が増殖する可能性が高く、荒茶の微生物の2次汚染を防御するには中揉手段6より前、特に蒸気で生葉の加熱処理される蒸葉処理手段3後から中揉手段6の前で防御することが好ましいことが示された。
【実施例2】
【0040】
前記揉捻手段5を、木製の揉盤53の外周寄りにフッ素樹脂鋼板70を貼設した揉捻機51とした本発明の荒茶製造機300で荒茶を製造した。又、揉盤53の外周寄りのフッ素樹脂鋼板70が未貼設の揉捻機51を備え、それ以外は本発明と略同一の荒茶製造機200を対照とした。
【0041】
粗揉手段4の粗揉機41の工程を終えた茶葉は、トラフ型振動コンベア115aとバケットコンベア115b等の搬送手段1を介して揉捻手段5の揉捻機51に移送され、シュート80から揉捻手段5の揉捻機51の揉捻鉢54の中へ投入される。茶葉が投入された揉捻鉢54は、クランク式のアーム56の水平運動により旋回しながら揉盤53上を移動する。揉捻鉢54内での茶葉は、揉捻鉢54の上方を横切るように配置された分銅レール59に軸支された揉圧盤58と揉盤53とに挟まれながら揉盤53上を移動すると同時に、揉捻鉢54内で回動する揉捻盤58の自重により揉捻が行われる。揉捻手段5の工程中は、茶葉内部の水分が表面へにじみ出て、茶葉全体の水分が均一になるよう、茶葉の様子を見ながら、手動もしくは電動により分銅60を移動して揉圧力を制御する。茶葉の水分が均一になり揉捻機51での揉捻が完了すると、茶葉に揉圧がかからないように分銅60が移動し、取出盤66が下方に開放されて、茶葉はトラフ型振動コンベア115a上に落下し、バケットコンベア115b等を介して次の中揉手段6に搬送される。
【0042】
揉捻鉢54内の茶葉は、塊にならず分散するように揉捻され、一部の茶葉は揉盤53と揉捻鉢54の隙間より揉盤53の外周寄りに排出される。排出された茶葉は旋回する揉捻鉢54の裾にとりつけられた掃き込みブラシ72により、フッ素樹脂鋼板70が貼設されていない取出盤66と固定揉盤68からなる揉盤53中央部に戻される。
【0043】
製茶終了から約6時間以上経過した揉盤53上の微生物の数(一般生菌数)を、一般生菌のふき取り検査で確認した(表2)。一般生菌数とは、標準寒天を用いて30〜37℃・48時間・有酸素環境(好気性)にて培養して得られる微生物の数である。確認は一番茶、二番茶で行なった。
【表2】

【0044】
表2に示すように、一般生菌数は、本発明の荒茶製造機300で低減し、揉盤53の外周寄りにフッ素樹脂鋼板70を貼設することによる菌の低減化効果が確認された。本発明の揉捻機51の揉盤53の外周寄りのフッ素樹脂鋼板70上に排出された茶葉は、フッ素樹脂鋼板70上に残留することなく掃き込みブラシ72が滑らかに回動して揉盤53中央部に掃き込まれる一方、揉圧盤58から所望の揉圧がかかる金属製もしくは木製の揉盤53中央部で揉み込みが充分行われ、茎や茶葉内部に残留する水分が揉み出される。また、本発明品は揉盤53の外周寄りの茶葉を効率よく取出盤66と固定揉盤68からなる揉盤53中央部側に掃き込むことで、ブラシの変形が抑制され、しいては掃き込み機能の低下の抑制効果が確認された。また、荒茶においても荒茶製造機200と比べて荒茶製造機300で製造した方が一般生菌数が少なかった(表5)。
【実施例3】
【0045】
前記揉捻手段5を掃き込みブラシ72のブラシ材73の線径を0.3mmとした揉捻機51を備えた本発明の荒茶製造機250で荒茶を製造した。荒茶製造終了から6時間以上経過したブラシ材73の一般生菌数検査の結果を表3に示す。ブラシ材73の線径を0.6mmとした揉捻機51を備えた荒茶製造機200を対照とした。
【表3】

【0046】
表3に示すように、本発明の荒茶製造機250の揉捻機51のブラシ材73の線径(0.3mm)では一般生菌数が低減した。また、荒茶においても荒茶製造機200と比べて荒茶製造機250で製造した方が一般生菌数が少なかった(表5)。
【実施例4】
【0047】
前記粗揉手段4の粗揉機41の下部に設けられたトラフ型振動コンベア114a、揉捻機51の下部に設けられたトラフ型振動コンベア115aの搬送面19の全部にフッ素樹脂製テープを貼設し、トラフ14のコーナーR22が10mmの搬送手段114、115を備えた荒茶製造機350で荒茶を製造した。粗揉機41、揉捻機51の工程が終了すると茶葉は、トラフ型振動コンベア114a、115aの搬送面19上に排出され、トラフ14の振動により、バケットコンベア114b、115bに向かって移送され、次の工程の揉捻手段5、中揉手段6に搬送される。製茶終了から約12時間経過後の搬送面19のふき取り検査の一般生菌の数を表4に示す。一番茶時期及び二番茶時期に確認した。対照として、茶葉を移送する搬送手段1に搬送面側面の立ち上がりを略直角の角を有したステンレス製トラフ(フッ素樹脂製テープ未貼設)のトラフ型振動コンベアを粗揉機41及び揉捻機51の下部に備えた荒茶製造機200を用いた。
【表4】

【0048】
表4に示すように、一般生菌数は本発明の荒茶製造機350のトラフ型振動コンベア114a、115aともに対照と比べ、低減した。また、搬送面19の掃除が容易になった。また、荒茶においても荒茶製造機200と比べて荒茶製造機350で製造した方が一般生菌数が少なかった(表5)。
【実施例5】
【0049】
図8のようなレイアウトの荒茶製造機100、150、200、250、300、350、400で荒茶の製造を行なった。食品衛生検査指針に準拠して、製造した荒茶の一般生菌数を確認した。結果は表5に示す。
【表5】

【0050】
表5に示すように、本発明の荒茶製造機250、300、350で製造した荒茶は、いずれも従来の荒茶製造機となる対照の荒茶製造機200と比べ、荒茶の一般生菌数は低減した。さらに、木製の揉盤53の外周寄りにフッ素樹脂鋼板70を貼設し、ブラシ材73の線径(0.3mm)の揉捻機51を配し、粗揉手段4の粗揉機41の下部に設けられたトラフ型振動コンベア114a、揉捻機51の下部に設けられたトラフ型振動コンベア115aの搬送面19の全部にフッ素樹脂製テープを貼設し、トラフ14のコーナーR22が10mmの搬送手段114、115を備えた荒茶製造機400で製造した荒茶は、荒茶製造機200、250、300、350と比べ、一般生菌数は低減した。
【0051】
従来の荒茶製造機200に対し、蒸葉処理手段3及び粗揉手段4を洗浄・殺菌した荒茶製造機150では一般生菌数は低減した。さらに、荒茶製造機400の蒸葉処理手段3及び粗揉手段4を洗浄・殺菌した荒茶製造機100では、他のいずれと比べても著しい一般生菌数の低減が確認された。
【符号の説明】
【0052】
1 搬送手段
2 蒸熱手段
3 蒸葉処理手段
4 粗揉手段
5 揉捻手段
6 中揉手段
7 精揉手段
8 乾燥手段
9 合組手段
11 トラフ型振動コンベア
12 バケットコンベア
13 ベルトコンベア
14 トラフ
15 板ばね
16 架台
17 振動駆動部
18 クランク
19 搬送面
20 搬送面底面
20a 側部
20b 側部
21 搬送面側面
22 コーナーR
41 粗揉機
42 葉打ち機
51 揉捻機
52 フレーム
53 揉盤
54 揉捻鉢
55 揉圧盤装置
56 アーム
57 アームカバー
58 揉圧盤
59 分銅レール
60 分銅
61 レール支持板
62 支持部
63 中心軸
64 揉圧盤底面中心部
65 分銅モーター
66 取出盤
67 外周部
68 固定揉盤
69 揉捻ヒル
70 フッ素樹脂鋼板
71 可動領域
72 掃き込みブラシ
73 ブラシ材
73a (ブラシ材の)二つ折部分
73b (ブラシ材の)端部
74 芯線
75 チャンネル
76 ブラシ体
77 取り付け輪
78 取り付け金具
79 ねじ
80 シュート
81 生葉コンテナ
111 (生葉コンテナから揉捻手段までの)搬送手段
112 (蒸葉処理手段から粗揉手段までの)搬送手段
113 (葉打ち機から粗揉機までの)搬送手段
114 (粗揉機から揉捻機までの)搬送手段
114a トラフ型振動コンベア
114b バケットコンベア
115 (揉捻手段から中揉手段までの)搬送手段
115a トラフ型振動コンベア
115b バケットコンベア
116 (中揉手段から精揉手段までの)搬送手段
117 (精揉手段から乾燥手段までの)搬送手段
118 (乾燥手段から合組手段までの)搬送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも蒸熱手段と、粗揉手段と、揉捻手段と、中揉手段と、搬送手段とを備えた荒茶製造機において、前記揉捻手段は、揉盤と、この揉盤上を旋回移動し裾に掃き込みブラシを支持した揉捻鉢と、該揉捻鉢内に配設され揉盤上の茶葉を加圧する略円錐形の揉圧盤とを備えており、前記揉盤は外周寄りの所定範囲を低付着性の表面部材にしたことを特徴とする荒茶製造機。
【請求項2】
少なくとも蒸熱手段と、粗揉手段と、揉捻手段と、中揉手段と、搬送手段とを備えた荒茶製造機において、前記搬送手段の搬送面の両側部は10mm以上のコーナーRを有し、更に前記搬送面の一部又は全部にフッ素樹脂処理したトラフ型振動コンベアを、蒸熱手段後且つ中揉手段前に一以上備えたことを特徴とする荒茶製造機。
【請求項3】
少なくとも蒸熱手段と、粗揉手段と、揉捻手段と、中揉手段と、搬送手段とを備えた荒茶製造機において、前記揉捻手段は、揉盤と、この揉盤上を旋回移動し裾に掃き込みブラシを支持した揉捻鉢と、前記揉捻鉢内に配設され揉盤上の茶葉を加圧する略円錐形の揉圧盤とを備えており、前記揉盤は外周寄りの所定範囲を低付着性の表面部材にし、且つ、前記搬送手段の搬送面の両側部は10mm以上のコーナーRを有し、更に前記搬送面の一部又は全部にフッ素樹脂処理したトラフ型振動コンベアを、蒸熱手段後且つ中揉手段前に一以上備えたことを特徴とする荒茶製造機。
【請求項4】
前記揉圧盤の中心軸の揉盤上の可動領域よりも外周寄りを低付着性の表面部材にしたことを特徴とする請求項1又は3記載の荒茶製造機。
【請求項5】
前記低付着性の表面部材をフッ素樹脂とすることを特徴とする請求項1、3又は4記載の荒茶製造機。
【請求項6】
前記掃き込みブラシのブラシ材の線径を0.6mm未満とすることを特徴とする請求項1、3、4又は5記載の荒茶製造機。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の荒茶製造機を用いることによって製造されたことを特徴とする荒茶。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の荒茶製造機を用いて荒茶を製造することを特徴とする荒茶の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載の荒茶製造機を用いて荒茶を製造することを特徴とする荒茶の微生物数低減化方法。
【請求項10】
蒸葉処理手段を備えた請求項1乃至6のいずれかに記載の荒茶製造機において、荒茶を製造する前に少なくとも蒸葉処理手段及び粗揉手段をそれぞれ殺菌処理することを特徴とする荒茶の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の荒茶の製造方法を用いることによって製造されたことを特徴とする荒茶。
【請求項12】
請求項10記載の荒茶の製造方法を用いることを特徴とする荒茶の微生物数低減化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−165707(P2012−165707A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30326(P2011−30326)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000145116)株式会社寺田製作所 (90)
【出願人】(303044712)三井農林株式会社 (72)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【Fターム(参考)】