説明

荷台落下防止柵兼用車輪止め

【課題】車輪止めがあるので、これを用いて確実に車輪を固定することができ、しかも、荷台落下防止柵の設置も簡単かつ迅速・確実に行うことができる構造安価なものである。
【解決手段】車輪止め12を脚部とした支柱13間に、落下防止用のネット14を張設した。車輪止め12はコ字形枠によるもので、支柱13は水平なコ字形枠の開口部と対向する辺の中央部に立設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物用車両の荷台からの人員の転落を防止するための荷台落下防止柵兼用車輪止めに関する。
【背景技術】
【0002】
建築土木施工現場では、施工に使用する資材は、大型トラック(4トン車、10トン車、トレーラ車など)により、現場内に搬入され、時には搬出も行われる。
【0003】
近年、現場作業所での安全レベルの向上に伴い、資材の搬出入時におけるトラックの荷台からの作業員の転落事故の防止の必要性に目が向けられるようになってきた。
【0004】
労働安全衛生規則第518条〜第521条によれば、高さ2メートル以上の箇所で作業を行う場合においては、労働者に安全帯を使用させる等の墜落防止設備を講じなければならないとされている。
【0005】
トラックの荷台は、地面から2メートル以内の高さにあるが、作業者は、トラックの荷台よりも高い積載物の上に立って作業を行うことが少なくない。この場合に作業者は、荷台或いは積載物を基準とすると2メートル以内の高さにあったとしても、地面を基準とすると2メートルを超える高さで作業を行うこととなる。
【0006】
このような事情に際して下記特許文献は、軽量で取り扱い易く、且つ荷台上での作業性及び安全性を高めることのできる転落防止装置を実現するものとして提案されたものである。
【特許文献1】特許第3756924号
【0007】
特許文献1は図5に示すように、貨物用車両の荷台からの人員の転落を防止するための転落防止装置であって、トラックとしての貨物用車両6の荷台1の煽2に、支柱10A,10Bが立設されている。
【0008】
支柱10A,10Bの各々は、クランプ構造により煽2の端縁を跨いで締め付けることにより煽2に固定される台座部5と、この台座部5に着脱可能に支持された柱状部4とを有している。支柱10A,10Bにはロープ3A,3Bが掛け渡されている。2本のロープ3A、3Bの間には、各々の支柱に10A,10Bに沿った、異なる高さの間に網7が展開されている。
【0009】
前記特許文献1によれば、荷台の上、或いは荷台の積載物の上で作業等をする人員が、不測の事態により足場を失った場合においても、荷台から転落することを、展開された網によって防止することができる。
【0010】
一方、乗用車やトラック等の車両、あるいは建築土木現場において使用されるクレーン車等の建築土木用車両には、車輪止めが使用される。使用される車輪止めとしては、図6に示すものがある。
【0011】
これは、車輪10と地面11との間に三角柱型のブロック体による楔状の止め部材9を噛ますことによって、車輪10が不意に動くことを防止するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
まず、従来の車輪止めにあっては、三角柱型のブロック体による楔状の止め部材は、これをセットし忘れたり、また、紛失したりするおそれがある。
【0013】
さらに、止め部材9の噛まし方が不十分な場合であったり、地面11が滑り易い場合には、車両の重量によって止め部材9が移動してしまうおそれもある。しかも、車両で連輪すなわち、多輪車の場合、一番外側の輪止めしかできない。
【0014】
一方、前記特許文献1の転落防止装置は、支柱を煽に固定するものなので、煽を立てた状態でないと使用できない。煽が上方に閉じられた状態にあるときに、この煽の端縁を跨ぐように取り付けられるからである。そして、支柱を煽に取り付ける機構として、クランプ構造を有する台座部を必要とし、締め付け作業などを行わなければならす、設置の安全性についても強度等十分な配慮を必要とする。
【0015】
本発明の目的は前記不都合を解消し、車輪止めがあるので、これを用いて確実に車輪を固定することができ、しかも、荷台落下防止柵の設置も簡単かつ迅速・確実に行うことができる構造安価な荷台落下防止柵兼用車輪止めを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、車輪止めを脚部とした支柱間に、落下防止用のネットを張設したことを要旨とするものである。
【0017】
請求項1記載の本発明によれば、支柱は脚部を車輪止めとして構成したので、これを用いて車輪止めを行うことができ、また、車輪止めとしての脚部はタイヤで地面に抑え付けることができるので、支柱の立設固定はこれだけで済む。
【0018】
このようにして荷台の外周部に沿って隣接して立設される支柱の組の間に、ネットが張設されており、それにより、荷台の外周部の上方にネットが展開され、荷台の上、或いは荷台の積載物の上で作業等をする人員が、不測の事態により足場を失った場合においても、荷台から転落することを、展開されたネットによって防止することができる。
【0019】
また、剛性有る柵を使用した場合とは異なり、ネットのもつ柔軟性から、身体が受け止められる際の衝撃が少ない。さらに人員が積載物に押される場合があっても、ネットが身体を柔軟に受け止めるので、圧迫を受ける危険性が低減される。すなわち、安全性が高められる。
【0020】
さらに、複数の支柱は荷台や煽に取り付けるものでないので、荷台への影響はなく、積載物を積載可能な荷台の床面積を広く確保することができる。
【0021】
請求項2記載の本発明は、車輪止めはコ字形枠によるもので、支柱は水平なコ字形枠の開口部と対向する辺に立設することを要旨とするものである。
【0022】
請求項2記載の本発明によれば、車輪止めはコ字形枠によるもので、停車した車の車輪に横から差し入れて簡単に設置でき、タイヤの前後を押さえることができ、安全性が高い。また、支柱は水平なコ字形枠の開口部と対向する辺に立設するものであり、この水平なコ字形枠がタイヤで地面に押し付けられることで、支柱を安全に支えることができる。
【0023】
請求項3記載の本発明は、脚部および支柱には、合成樹脂製パイプを用いることを要旨とするものである。
【0024】
請求項3記載の本発明によれば、脚部および支柱には、合成樹脂製パイプを用いることで軽量化が実現できるもので、これに加えて、人員の身体を受け止める部材としてネットという軽量な部材を用いるので、装置全体としても軽量である。
【0025】
また、支柱や脚部は、適宜、管継手で節継することで、着脱可能となり、貨物用車両の走行中には、装置は分解して取り外しておくことができる。軽量性のために、装置は不使用時には分解した状態で貨物用車両に積載しておくことも可能である。
【発明の効果】
【0026】
以上述べたように本発明の荷台落下防止柵兼用車輪止めは、車輪止めがあるので、これを用いて確実に車輪を固定することができ、しかも、荷台落下防止柵の設置も簡単かつ迅速・確実に行うことができる構造安価なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の荷台落下防止柵兼用車輪止めの設置状態を示す正面図、図2は本発明の荷台落下防止柵兼用車輪止めの1実施形態を示す正面図、図3は同上側面図、図4は同上底面図である。
【0028】
本発明の荷台落下防止柵兼用車輪止めは、車輪止め12を脚部すなわち土台とした支柱13と、この支柱13間に張設する落下防止用のネット14とからなる。
【0029】
車輪止め12は、タイヤの両側に差し込めるようにコ字形枠によるもので、水平にして設地する。
【0030】
また、車輪止め12は硬質塩ビ管(VP)による合成樹脂製パイプを用いるもので、一例としてサイズは100Aである。
【0031】
支柱13は前記車輪止め12の水平なコ字形枠の開口部12aと対向する辺12bの中央部にした端を接合して立設するもので、車輪止め12と同じく硬質塩ビ管(VP)による合成樹脂製パイプを用い、一例としてサイズは65Aである。辺12bの両端から平行して突出する辺12cがタイヤ当り部材となる。
【0032】
これら車輪止め12と支柱13とは分解可能なように適宜管継手12d等で節継する。
【0033】
また、支柱13には適宜高さの位置に結束紐15の挿通用の穴8(直径16mmを)を横向きに貫通させて設ける。
【0034】
ネット14は、張設のためのロープ14aを有し、また、端部に結束紐15を取り付けている。
【0035】
次に、使用法について説明する。図1中、16はトラックとしての貨物用車両、17はその荷台である。
【0036】
停車した貨物用車両16に対して、その前後のタイヤ18に車輪止め12を横から差し入れることで車輪止めを行い、同時に支柱13を立設することができる。この場合、荷台17の煽19は立てた状態でも、倒した状態でもよい。
【0037】
前後のタイヤ18で脚部を固定された支柱13間にネット14を張設すれば、それが荷台17の外周部に展開される。
【0038】
また、支柱13間でネット14の上位置に安全帯用の親綱20を張設することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の荷台落下防止柵兼用車輪止めの設置状態を示す正面図である。
【図2】本発明の荷台落下防止柵兼用車輪止めの1実施形態を示す正面図である。
【図3】本発明の荷台落下防止柵兼用車輪止めの1実施形態を示す側面図である。
【図4】本発明の荷台落下防止柵兼用車輪止めの1実施形態を示す底面図である。
【図5】従来の転落防止装置を示す正面図である。
【図6】従来の車輪止めを示す側面図である。
【符号の説明】
【0040】
1…荷台 2…煽
3A、3B…ロープ 4…柱状部
5…台座部 6…貨物用車両
7…網 8…穴
9…止め部材 10…車輪
10A,10B…支柱 11…地面
12…車輪止め 12a…開口部
12b,12c…辺 12d…管継手
13…支柱 14…ネット
14a…ロープ 15…結束紐
16…貨物用車両 17…荷台
18…タイヤ 19…煽
20…親綱(安全帯用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪止めを脚部とした支柱間に、落下防止用のネットを張設したことを特徴とする荷台落下防止柵兼用車輪止め。
【請求項2】
車輪止めはコ字形枠によるもので、支柱は水平なコ字形枠の開口部と対向する辺に立設する請求項1記載の荷台落下防止柵兼用車輪止め。
【請求項3】
脚部および支柱には、合成樹脂製パイプを用いる請求項1または請求項2記載の荷台落下防止柵兼用車輪止め。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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