説明

荷崩れ防止シート

【課題】重量の大きい段積みされた荷物の荷崩れを防止する荷崩れ防止シートを提供すること。
【解決手段】荷崩れ防止シート1は、段積みされた荷物10に巻きつけて荷物の荷崩れを防止する帯状のシート部材2と、シート部材2の長手方向の一端側21及び他端側22に設けられ、シート部材2の短手方向に延びる一対の棒状部材4と、棒状部材4のそれぞれの近傍に配置される係止部材30a、30bからなり、一端側21と他端側22とに配置された係止部材30a、30bを互いに係止してシート部材2を固定する留め具3と、シート部材2と係止部材30a、30bとが固定される固定部5を補強する補強板6と、を備え、留め具3は、短手方向に互いに間隔を空けて複数設けられ、補強板6は、シート部材2を介して棒状部材4及び係止部材30a、30bに接合されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷崩れ防止シート及びこれを用いた包装体に関する。具体的には、段積みされた荷物に巻きつけて使用する荷崩れ防止シートに関する。
【背景技術】
【0002】
集積された荷物を運送する際、各荷物はパレットと呼ばれる荷台の上に水平方向及び水平方向に垂直な方向に段積みされる。パレットに段積みされた荷物は、トラック等の運送手段の近くに運ぶため、フォークリフト等でパレットごと移動される。パレットの上で段積みされた荷物は、フォークリフトの急な動きや、運送手段の運送中の不測の動きにより、ずれたり、崩れたりすることがある。
【0003】
このような荷崩れを防止するため、荷物にラッピングフィルムを巻きつける場合があった。しかしながら、ラッピングフィルムでは、荷崩れを防止する効果を奏する締め付け強度が十分に得られない。このため、荷物が段積みした18リットル缶(一斗缶)である等、荷物の重量が大きい場合には、荷崩れを十分に防止することができないという問題があった。そこで、荷崩れを確実に防ぐことのできる締め付け強度を有する荷崩れ防止シートが必要とされている。
【0004】
例えば、帯状のシート部材の長手方向の一端と他端に、短手方向に延びる棒状の部材を配置し、この棒状部材に係止部材を設けて、一端側と他端側から係止部材を係止させることにより荷崩れを防止するシートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−196404号公報
【0006】
特許文献1に記載の荷崩れ防止シートでは、シート部材を引張る力を棒状部材によってシート部材の短手方向に均等に伝えるため、シートが緩むことを防止することができる。しかしながら、特許文献1に記載の荷崩れ防止シートでは、18リットル缶のような重量のある荷物に巻きつけた場合、荷物がずれるとシート部材が破損する場合がある。特に、荷崩れ防止シートをきつく締めれば締めるほど、棒状部材とシートとの繋ぎ目が、破損する可能性が高まるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような問題に鑑み、本発明は、重量の大きい段積みされた荷物の荷崩れを防止する荷崩れ防止シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の荷崩れ防止シートは、段積みされた荷物に巻きつけて荷物の荷崩れを防止する帯状のシート部材と、前記シート部材の長手方向の一端側及び他端側に設けられ、前記シート部材の短手方向に延びる一対の棒状部材と、前記棒状部材のそれぞれの近傍に配置される係止部材からなり、前記一端側と前記他端側とに配置された前記係止部材を互いに係止して前記シート部材を固定する留め具と、前記シート部材と前記係止部材とが固定される固定部を補強する補強板と、を備え、前記留め具は、前記短手方向に互いに間隔を空けて複数設けられ、前記補強板は、前記シート部材を介して前記棒状部材及び前記係止部材に接合されていることを特徴とする。
【0009】
(2) 前記補強板が、前記シート部材と、縫合されていることが好ましい。
【0010】
(3) 前記シート部材の前記一端側及び前記他端側は、それぞれ三折りに折り返され、前記長手方向の中央部から連続し、該中央部に向かって折り返される第1の折返し部と、該第1の折返し部から連続して前記長手方向の外側に向かって折り返される第2の折返し部とを備え、前記補強板は、前記第1の折返し部内に設けられ、前記棒状部材は、前記第2の折返し部内において、断面視で前記補強板に重なる位置に設けられ、前記第1の折返し部と、前記補強板と、前記第2の折返し部と、前記棒状部材とは、前記棒状部材の短手方向の両端においてともに固定されることが好ましい。
【0011】
(4) 前記シート部材の前記一端側に配置される前記係止部材は、バックル部と前記バックル部に挿通するベルト部とを有し、さらに、前記ベルト部に脱着可能な緩み止めを備えることが好ましい。
【0012】
(5) 前記ベルト部は、前記シート部材の前記一端側に取り付けられる基端部及び該基端部の反対側の末端部を有し、前記末端部側には、前記ベルト部を引き締める際に把持可能な把持部が設けられることが好ましい。
【0013】
(6) 前記把持部は、略環状であることが好ましい。
【0014】
(7) 前記把持部の少なくとも一部は、把持された状態で弾性変形可能な部材により構成されることが好ましい。
【0015】
(8) 本発明の積荷の荷崩れ防止方法は、水平方向及び該水平方向に垂直な垂直方向に段積みされた荷物と、前記段積みされた荷物に巻きつけて荷物の荷崩れを防止する荷崩れ防止シートと、を備える積荷の荷崩れ防止方法であって、前記荷崩れ防止シートは、前記段積みされた荷物に巻きつける帯状のシート部材と、前記シート部材の長手方向の一端側及び他端側に配置される係止部材からなり、前記一端側と前記他端側とに配置された前記係止部材を互いに係止して前記シート部材を固定する留め具と、前記シート部材と前記係止部材とが固定される固定部を補強する補強板と、を備え、前記留め具は、前記シート部材の短手方向に互いに間隔を空けて複数設けられ、前記複数の補強板のうち少なくとも一つの補強板と、前記短手方向において前記一つの補強板に隣接する他の補強板とが、段積みされた前記荷物の高さ方向において隣接しあう荷物同士の隙間に配置されるように前記シート部材を巻きつけることを特徴とする。
【0016】
(9) 前記荷崩れ防止シートは、前記シート部材の前記一端側に配置される前記係止部材を構成するバックル部と前記バックル部に挿通するベルト部と、前記ベルト部に脱着可能な緩み止めと、を備え、前記係止部材を係止した後に、前記ベルト部を引き締め、前記ベルト部の長手方向に沿う側縁同士を合わせるように折り曲げて前記緩み止めを装着することが好ましい。
【0017】
(10) 前記荷物は、18リットル缶又は8キロ缶であることが好ましい。
【0018】
(11) 前記シート部材の短手方向の長さは、前記段積みされた荷物の高さ方向の長さよりも短いことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、重量の大きい段積みされた荷物の荷崩れを防止する荷崩れ防止シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る荷崩れ防止シートを荷物に巻きつけた状態の斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る荷崩れ防止シートの平面図である。
【図3】第1実施形態に係る荷崩れ防止シートの断面の説明図である。
【図4】図1に示す留め具の拡大図である。
【図5】第1実施形態に係る荷崩れ防止シートの使用の状態の説明図である。
【図6】第2実施形態に係る荷崩れ防止シートの部分拡大斜視図である。
【図7】第2実施形態に係る荷崩れ防止シートの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る荷崩れ防止シート1が荷物10に巻きつけられた状態の斜視図である。第1実施形態において、荷物10は、18リットル缶(いわゆる一斗缶)である。荷物10は、パレットと呼ばれる荷台11の上に互いに隙間なく並べて積み上げられ、水平方向において幅方向に4個、奥行き方向に4個、水平方向に垂直な高さ方向に3個、合計48個が載っている。
【0022】
荷崩れ防止シート1は、段積みされた荷物10に巻きつけて荷物10の荷崩れを防止する帯状のシート部材2を有する。シート部材2の長手方向の一端側21と他端側22(図2参照)には、係止部材30a、30bがそれぞれ取り付けられる。一端側21の係止部材30aはバックル部31と、バックル部31に挿通するベルト部32と、を有し、他端側22の係止部材30bは、フック部34と、フック固定部33とを有する。一端側21の係止部材30aと他端側22の係止部材30bとは、留め具3を構成する。留め具3はシート部材2の短手方向に互いに間隔を空けて4つ設けられている。
【0023】
シート部材2の長手方向の一端側21及び他端側22には、シート部材2の短手方向に延びる一対の棒状部材4が設けられる。後に詳述するが、シート部材2の一端側21と他端側22は三つ折りされており、棒状部材4は、三折りされたシート部材2の内部に縫合されて取り付けられている。
【0024】
シート部材2は、係止部材30a、30bとシート部材2とが固定されている固定部5を補強する補強板6を備える。後述するように、補強板6は、端部を三つ折りにしたシート部材2の内部に設けられ、シート部材2を介して棒状部材4及び係止部材30a、30bに接合されている。
【0025】
シート部材2の裏側には、荷物10に挟み込んでシート部材2の巻きつけの端緒となす引っ掛け部材7が設けられている。引っ掛け部材7は、ひも状の部材の先に、平たい四角形の板を取り付けたものである。ひも状の部材はシート部材2の他端側22において、シート部材2の短手方向の一方の端部側に取り付けられている。引っ掛け部材7がある方の端部(上端部23)が、使用時に上に配置される。
【0026】
荷崩れ防止シート1は、シート部材2に取り付けた引っ掛け部材7を荷物10の間に挟んで、段積みされた荷物10の外周に反時計周りに巻きつけられ、引き締められる。荷崩れ防止シート1は、係止部材30a、30bを互いに係止することにより固定される。
【0027】
図2は、荷崩れ防止シート1の平面図である。図2においてシート部材2は、長手方向の中央部が省略されているが、略長方形の形状を有する。長手方向の長さは、段積みされた荷物10に巻きつけて固定するのに十分な長さであり、例えば、4400ミリから4800ミリの間が好ましく、特に4500ミリから4700ミリの間、さらには4600ミリが好ましい。短手方向の長さは、例えば800ミリから1000ミリの間、特に850ミリから950ミリ、さらには900ミリが好ましい。シート部材2の短手方向の長さは、段積みされた荷物10の高さ方向の長さよりも短いことが好ましい。シート部材2の素材は、例えば、厚地のポリエステル又はナイロンである。
【0028】
一対の棒状部材4は、それぞれがシート部材2の一端側21と他端側22に、シート部材2の短手方向に延びるように設けられている。シート部材2の一端側21から一方の棒状部材4までの長さと、シート部材2の他端側22から他方の棒状部材4までの長さとは異なる。シート部材2の他端側22から他方の棒状部材4までの長さは、シート部材2の一端側21から一方の棒状部材4までの長さよりも長い。棒状部材4から他端側22までのシート部材2の一部は、シート部材2を一端と他端が重なるように巻きつける際の、重なり代27となる。棒状部材4は、例えば、強化プラスチック製であり、寸法は、長さが880ミリ、幅が7ミリ、高さが3ミリである。
【0029】
シート部材2の表側には、留め具3がシート部材2の短手方向に互いに間隔を空けて設けられている。なお、便宜上、留め具3が設けられている面を表側といい、反対側を裏側という。留め具3は、棒状部材4のそれぞれの近傍に配置される係止部材30a、30bからなり、シート部材2の一端側21と他端側22とに配置された係止部材30a、30bを互いに係止してシート部材2を固定する。(図4参照)。シート部材2の一端側21の棒状部材4の近傍に設けられる係止部材30aは、バックル部31と、ベルト部32とを有する。バックル部31は、例えば、樹脂製もしくは金属製を用いることができるが、強度の点からスチール製が好ましく、さらに防錆の点からステンレス製もしくは、ビニール等で防錆コーティングされたスチール製が好ましい。ベルト部32は、バックル部31をシート部材2に接続する。このため、ベルト部32の一端はシート部材2に固定され、他端は、バックル部31を挿通して折り返される。シート部材2の他端側22の棒状部材4の近傍に設けられる係止部材30bは、フック部34と、フック固定部33とを備える。フック固定部33は、ベルト部32と同じ素材の帯状の部材である。フック固定部33は、フック部34に挿通してU字状に折り返され、U字状の両端部がシート部材2に固定される。
【0030】
シート部材2と、係止部材30aのベルト部32の一端及び係止部材30bのフック固定部33とが固定される部分とが、固定部5である。ベルト部32の一端及びフック固定部33は、シート部材2に縫合されて固定される。
【0031】
留め具3は、シート部材2の短手方向の両端に一つずつ設けられ、この両端の間に二つの留め具3が間隔を空けて、合計4つ配置されている。留め具3同士の間隔は、均等でない。一例を挙げると、シート部材2の短手方向の端部のうち、使用時に荷物10の高さ方向の上側に配置される上端部23から数えた場合、上端部23に配置される留め具3と、この留め具3の下側に配置される二段目の留め具3との、留め具3の向かい合う端部同士の間の長さは290ミリである。二段目の留め具3と、さらに下側の三段目の留め具3との、向かい合う端部同士の長さは、310ミリである。三段目の留め具3と最も下側の下端部24に配置される留め具3との、留め具3の向かい合う端部の間の長さは140ミリである。
【0032】
4つの留め具3のうち少なくとも一つの留め具3と、該一つの留め具3に隣接する他の留め具3との間隔は、段積みされた荷物10の一個の高さ方向の長さに対応している。すなわち、本実施形態では、荷物10は18リットル缶であり、18リットル缶の高さ方向の寸法は、349プラスマイナス2ミリと日本工業規格により規定されている。留め具3のベルト部32及びフック固定部33の幅は40ミリである。このため、上述の配置によれば、上から二段目の留め具3と三段目の留め具3との間の寸法310ミリに、留め具3の幅40ミリを足すと、18リットル缶の高さ方向の寸法にほぼ対応する。
【0033】
次に、補強板6について説明する。補強板6は、略長方形の平板の形状を有する。補強板6自体の短手方向の長さは、係止部材30a、30bのベルト部32及びフック固定部33の帯状の素材における短手方向の長さよりも長い。また、補強板6自体の長手方向の長さは、少なくとも、互いに間をあけて配置されている棒状部材4と固定部5とをともに覆うことが可能な長さを有する。補強板6は、シート部材2と係止部材30a、30bとが固定される固定部5を補強する。なお、補強板6の形状や構成はこれに限定されない。補強板6は、係止部材30a、30b毎に設置されている必要はなく、例えば、補強板6の1枚に対して複数の係止部材30a、30bが配置されていてもよい。
【0034】
図3は、荷崩れ防止シート1の断面において部材の配置を説明する説明図である。図3に示すように、シート部材2の一端側21及び他端側22はそれぞれ三つ折りに折り返されている。荷崩れ防止シート1は、シート部材2の長手方向の中央部から連続し、一端側21及び他端側22からこの中央部に向かって折り返される第1の折返し部25を有する。第1の折返し部25は、折り返したシート部材2の内側で互いに向き合う面と面の間の部分である。また、荷崩れ防止シート1は、第1の折返し部25から連続してシート部材2の長手方向の外側に向かって折り返される第2の折返し部26を備える。第2の折返し部26は、第1の折返し部25から折り返されたシート部材2の内側で互いに向き合う面と面の間の部分である。
【0035】
第1の折返し部25には、補強板6が設けられ、第2の折返し部26には、棒状部材4が設けられる。図3に示すように、棒状部材4は、断面視において補強板6にシート部材2を介して重なるように設けられている。
【0036】
補強板6と、シート部材2とは、縫合される。したがって、補強板6は、縫合が可能な程度の硬度と、シート部材2を引張る力に対向できる程度の引張強度を備える。補強板6は、発泡ポリエチレン等で構成されることが好ましい。図3における点線は縫合部分を示す。補強板6と、シート部材2とは、棒状部材4の短手方向の両端の近傍で縫合される。したがって、第1の折返し部25と、補強板6と、第2の折返し部26とは、棒状部材4の短手方向の両端においてともに固定される。これにより棒状部材4は、第2の折り返し部26の内部に設けられる。
【0037】
図4は、図1に示す留め具3の拡大図である。図3及び図4に示すように、補強板6は、係止部材30a、30bと、シート部材2とに縫合により固定されている。具体的には、係止部材30aのベルト部32及び係止部材30bのフック固定部33とが、シート部材2を介して補強板6に接続されている。補強板6は、棒状部材4の短手方向の一端から他端と、固定部5の全体とを裏打ちするように配置され、それぞれの縫合部分を補強する。
【0038】
ベルト部32をバックル部31に挿通して折り返したバックル部31付近の根元部分32aには、ベルト部32に脱着可能な緩み止め8が設けられている。緩み止め8は、例えば一面が雌部材でその反対面が雄部材の両面の面ファスナを2枚用いて作成される。2枚の両面の面ファスナは、表裏が互い違いになるように隣り合わされ、隣接する端部を縫合される。具体的には、1枚の面ファスナの雌部材側を表とした場合に、隣接する2枚目の面ファスナは、雄部材側が表側となるように繋ぎ合わされる。
【0039】
繋ぎ合わされて一本の帯状となった緩み止め8は、最初に雌部材側をベルト部32に当接するように巻きつけられる。雌部材側は、ベルト部32に係着しないため、緩み止め8は自由にベルト部32を滑って移動することができる。さらに巻き続けると、雌部材側に雄部材側を巻きつけるようになる。雄部材は雌部材に係着するため、緩み止め8をバックル部31付近の根元部分32a側に移動させた後、緩み止め8をきつく巻いて雄部材側の面を雌部材側に合わせることにより、緩み止め8がベルト部32に固定される。
【0040】
ベルト部32のバックル部31付近の根元部分32aは、ベルト部32の長手方向に沿う側縁同士を合わせるように二つに折られる。緩み止め8は、ベルト部32の折られた部分に巻きつけて装着される。巻きつけられる部分が細く二つに折られ、そうでない部分が広がることで、緩み止め8が下方に下がらなくなるため、バックル部31の緩みが防止できる。
【0041】
図5は、荷崩れ防止シート1を段積みされた荷物10に巻きつけて固定する工程を説明するための説明図である。図5を参照して、荷崩れ防止シート1の使用方法を説明するとともに、荷崩れ防止シート1を巻きつけて積荷の荷崩れを防止する荷崩れ防止方法を説明する。積荷100は、段積みされた荷物10と、段積みされた荷物10に巻きつけた荷崩れ防止シート1と、により構成される。
【0042】
まず、荷台11の上に段積みされた荷物10の一端に、引っ掛け部材7を挟み込み、これを端緒として荷崩れ防止シート1を反時計回りに巻きつける。このとき、三つ折りにされたシート部材2の内部に配置されている補強板6のうち、少なくとも一つの補強板6と、シート部材2の短手方向においてこの補強板6に隣接する他の補強板6とが、段積みされた荷物10の高さ方向において、隣接する荷物10同士の隙間に配置されるようにシート部材2を巻きつける。また、このとき、段積みされた荷物10の最も下方の荷物10の一部が見えるように、段積みされた荷物10にシート部材2を巻きつける。
【0043】
図5に示されるように、シート部材2の他端側22から係止部材30bまでは一定の幅があり、重なり代27となっている。シート部材2を反時計回りに巻くと、この重なり代27の上にシート部材2の一端側21が重なり、係止部材30aが係止部材30bに近づく。そして、シート部材2の一端側21を強く引っ張り、係止部材30aのバックル部31と係止部材30bのフック部34とを係止する。係止した後、ベルト部32をフック部34の反対側に向かって引き締める。きつく引き締めたところで、ベルト部32をバックル部31に挿通して折り返したバックル部31付近の根元部分32aにおいて、ベルト部32の長手方向に沿う側縁同士を合わせるように二つに折り曲げ、緩み止め8を根元部分32aへ移動させる。4つの係止部材30a、30bをすべて同様に引き締めて係止することにより、荷崩れ防止シート1が荷物10に装着される。
【0044】
本実施形態によれば、棒状部材4がシート部材2の短手方向に延びるように配置されているので、係止部材30a、30bが互いに近づくように、シート部材2が引張られた場合、引張る力が棒状部材4を通してシート部材2に均等に伝わる。このため、シート部材2をより強く引き締めることが可能になる。
【0045】
留め具3は、シート部材2の短手方向に間隔を空けて4つ設けられている。このため、段積みされた荷物10の高さ方向に対して4箇所引き締める力を強くかけることができる。したがって、18リットル缶のような一つの重量が重い荷物10であっても、荷崩れを効果的に防止することができる。
【0046】
補強板6は、複数の留め具3の位置に対応して、シート部材2を介して棒状部材4及び係止部材30a、30bに接合されている。このため、係止部材30a、30bを互いに近づく方向に強く引き締めたときに、係止部材30a、30bを引き締める力は、固定部5から補強板6を通して棒状部材4に伝えられる。また、補強板6が設けられているために、シート部材2と棒状部材4の繋ぎ目の破損を防ぎ、また、シート部材2に固定されていた係止部材30a、30bの固定部5が、繰り返しの使用により傷んだり、係止部材30a、30bとシート部材2とのつなぎ目で裂けることが防止され、耐久性が向上する。
【0047】
補強板6は、シート部材2と縫合可能な程度の硬さの部材で構成されており、シート部材2と縫合されている。縫合することにより糸が補強板6とシート部材とを貫通して接続するため、強い力で引張り、繰り返し使用しても、破損しにくくなる。
【0048】
シート部材2の一端側21及び他端側22は、それぞれ三つ折りに折り返され、第1の折返し部25及び第2の折返し部26を備えている。シート部材2は、シート部材2の一端側21及び他端側22を近づけるように引張られるため、一端側21及び他端側22に引張る力が最も大きくかかる。この一端側21及び他端側22が三つ折りにされているため、耐久性が向上するとともに、この一端側21及び他端側22をより強い力で引張ることができるため、荷崩れを効果的に防止することができる。なお、補強のため、三つ折り以上折り返してもよい。
【0049】
また、第1の折返し部25には補強板6が配置され、第2の折返し部26には、棒状部材4が、断面視で補強板6に重なる位置に配置されている。そして、第1の折返し部25と、補強板6と、第2の折返し部26とが、棒状部材4の短手方向の両端においてともに固定され、棒状部材4が第2の折り返し部26の内部に設けられている。係止部材30a、30bを強く引張ると、係止部材30a、30bと縫合されている部分とそうでない部分とにかかる力の強さが異なるため、係止部材30a、30bと縫合されている部分が弱くなり、裂けやすくなる。しかしながら、係止部材30a、30bは第1の折返し部25内の補強板6によって固定されているため、シート部材2と係止部材30a、30bと縫合されている部分の耐久性が向上する。
さらに、第1の折返し部25及び第2の折返し部26にそれぞれ補強板6及び棒状部材4が断面視で重なるように配置されて固定されているため、シート部材2を強く引張った際に、引き締める力をシート部材2と補強板6と棒状部材4とに一体的に伝えることができる。
【0050】
本実施形態によれば、補強板6自体の短手方向の長さは、係止部材30a、30bのベルト部32やフック固定部33の短手方向の長さよりも長い。このため、複数の補強板6のうち、例えば上から二段目の補強板6と、この補強板6の下側に隣接する補強板6とを、段積みされた荷物10の上から一段目と二段目の境目と、二段目と三段目との境目に当たるようにシート部材2を巻きつけることができる。段積みされた荷物10は、高さ方向に積み上げられた境目でずれることが最も多い。このため、荷物10と荷物10との境目に、所定の幅を有する補強板6が当接されることにより、効果的に荷崩れが防止される。
【0051】
また、本実施形態によれば、シート部材2の短手方向の長さは、段積みされた荷物10の高さ方向の長さよりも短い。例えば、シート部材2の短手方向の長さは900ミリであり、18リットル缶を3段積んだ高さ方向の長さは1041ミリ〜1053ミリである。このような寸法によれば、3段積みの18リットル缶に荷崩れ防止シート1を巻きつけた場合、シート部材2の短手方向の寸法が、18リットル缶の3段分の高さ方向の寸法に満たないため、18リットル缶の一部が見えることになる。このため、18リットル缶に付された表示12等から荷物の内容を知ることができる。
また、3段積みの荷物10の荷崩れを防止するために、荷物10の高さ方向のすべてを被覆しなくとも、上記の寸法で十分に荷崩れが防止できるため、製造コストを低減することができる。
【0052】
以上のように荷崩れ防止シート1を段積みされた荷物10に巻きつけることにより、積荷100の荷崩れが防止できる。
【0053】
本発明の実施形態は、上記の実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲は、これに限定されるものではない。
【0054】
例えば、補強板6の形状は、長方形に限定されない。補強板6の、シート部材2の短手方向に沿う側の寸法は、ベルト部32及びフック固定部33の帯状の素材における短手方向の長さよりも長ければよく、補強板6の、シート部材2の長手方向に沿う側の寸法は、互いに間をあけて配置されている棒状部材4と固定部5とをともに覆うことが可能な長さであればよい。したがって、これらの寸法を有する限り、補強板6の形状は、楕円や多角形等でもよい。また、補強板6の形状が長方形の場合、補強板6の長手方向がシート部材2の短手方向に沿って配置され、補強板6の短手方向がシート部材2の長手方向に沿って配置されていてもよい。
【0055】
このような構成によっても、荷崩れ防止シート1を段積みされた荷物10に巻きつける際に、補強板6を段積みされた荷物10の高さ方向の境目に当接させることができ、効果的に荷崩れが防止される。
【0056】
さらに、補強板6は、係止部材30a、30bの一つ一つに対応して設けられていなくともよい。一枚の補強板6に複数の係止部材30a又は30bが、シート部材2を介して接合されている形態も、本発明の範囲内である。さらに、シート部材2の一端側21又は他端側22において、一枚の補強板と、一方の側に配置されるすべての係止部材30a又は30bとが、シート部材2を介して接合されていてもよい。
【0057】
また、例えば、荷物10は18リットル缶ではなく、ほぼ同形状のバッグインボックスでもよい。また、いわゆる8キロ缶でもよい。8キロ缶は、厚さ方向が183.5ミリ、幅方向が183.5ミリ、高さ方向が301.5ミリの缶である。この8キロ缶が、荷台11に水平方向において幅方向に5個、奥行き方向に5個、水平方向に垂直な高さ方向に3個、合計75個が載せられている。この場合でも、上述した通り、段積みされた荷物10の高さ方向における荷物10と荷物10との間に補強板6が当接されるように引き締めると、荷崩れが効果的に防止される。
【0058】
なお、シート部材2の短手方向の長さが上記と同様に900ミリの荷崩れ防止シート1を用いた場合、3段に積まれた8キロ缶は、高さ方向のすべてがシート部材2によって覆われる。しかしながら、荷崩れ防止シート1は荷物10とともに物流の流通経路で循環するので、18リットル缶にも8キロ缶にも用いることができ、荷崩れ防止シート1の汎用性が高まる。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明において特に説明をしない点については、第1実施形態の説明が適宜援用される。図6は第2実施形態の荷崩れ防止シート1の部分拡大斜視図である。図7は第2実施形態に係る荷崩れ防止シート1の部分拡大断面図である。バックル部31と緩み止め8は省略してある。第2実施形態では、ベルト部32に把持部9が設けられている点が、第1実施形態と異なる。
【0060】
ベルト部32は、シート部材2の一端側21に取り付けられる基端部321と、基端部321の反対側の末端部322とを有する。末端部322側には、ベルト部32を引き締める際に把持可能な把持部9が設けられる。
【0061】
図6に示すように、把持部9は略環状である。略環状とは、把持部9の終端が閉じた輪状に形成されている形状をいい、円形に限られない。把持部9は、ベルト部32の末端部322側を折り曲げて末端部322をベルト部32の一部に重ね合わせ、末端部322をベルト部32の一部と接合することにより略環状に形成される。
【0062】
図7に示すように、把持部9の少なくとも一部は、把持された状態で弾性変形可能な部材により構成される。把持部9のうち、ベルト部32の遠端側には、弾性部材90が設けられる。具体的には、把持部9のうち、ベルト部32の遠端側に、ベルト部32と同一の帯状の部材91が重ね合わされる。帯状の部材91とベルト部32の長手方向に沿う両側縁とは、接合される。これにより、把持部9のうちベルト部32の遠端側の一部と帯状の部材91とが合わされた内側は、中空に形成される。この中空の部分に、繊維や樹脂等の弾性部材90が詰められ、帯状の部材91の短手方向の端部は、ベルト部32と接合される。
【0063】
なお、本実施形態では、末端部322をベルト部32に接合した接合箇所の把持部9側から、把持部9の遠端側における帯状の部材91の長手方向の端部までの長さLがそれぞれ100ミリ、把持部9の遠端側に設けられる帯状の部材91の長手方向の長さが200ミリを例示できる。また、シート部材2の一端側21から末端部322をベルト部32に接合した接合箇所の略中心までの長さは400ミリを例示できる。また、シート部材2はナイロン製を用いることができ、バックル部31は、樹脂製もしくは金属製を用いることができるが、強度の点からスチール製が好ましく、さらに防錆の点からステンレス製もしくは、ビニール等で防錆コーティングされたスチール製が好ましい。
【0064】
第2実施形態によれば、ベルト部32の末端部322側に把持部9を設けた。このため、作業者がシート部材2を荷物10に巻きつけて引き締める際に、ベルト部32を手に巻きつけることなく把持部9を把持して引き締めることができる。よって、荷物10を締め付ける強度が増加し、段積みされた荷物10の荷崩れを効果的に防止することができる。
【0065】
また、把持部9を略環状に構成した。このため把持部9を容易に握ることができ、作業者は、把持部9に力をかけやすくなる。さらに、把持部9の少なくとも一部は、把持された状態で弾性変形可能な部材により構成した。このため、作業者が把持部9を握る際、把持部9が手に食い込むことが防止される。また、把持部9に弾性変形可能な部材が設けられることにより、ベルト部32のみを略環状に構成する場合と比べて、把持部9がより厚く形成される。作業者は、この厚い部分を握ることができる。把持部9が握りやすいため、作業者は把持部9に力をかけやすい。よって、荷物10を締め付ける強度が増加し、段積みされた荷物10の荷崩れを効果的に防止することができる。
【0066】
なお、本発明の実施形態は、上記の実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲は、これに限定されるものではない。例えば、把持部9はベルト部32の末端部322を折り返して形成されているが、ベルト部32とは別体の部材を末端部322に接合して形成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 荷崩れ防止シート
2 シート部材
3 留め具
4 棒状部材
5 固定部
6 補強板
8 緩み止め
9 把持部
10 荷物
21 一端側
22 他端側
30a 係止部材
30b 係止部材
31 バックル部
32 ベルト部
91 弾性部材(弾性変形可能な部材)
321 基端部
322 末端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段積みされた荷物に巻きつけて荷物の荷崩れを防止する帯状のシート部材と、
前記シート部材の長手方向の一端側及び他端側に設けられ、前記シート部材の短手方向に延びる一対の棒状部材と、
前記棒状部材のそれぞれの近傍に配置される係止部材からなり、前記一端側と前記他端側とに配置された前記係止部材を互いに係止して前記シート部材を固定する留め具と、
前記シート部材と前記係止部材とが固定される固定部を補強する補強板と、を備え、
前記留め具は、前記短手方向に互いに間隔を空けて複数設けられ、
前記補強板は、前記シート部材を介して前記棒状部材及び前記係止部材に接合されていることを特徴とする荷崩れ防止シート。
【請求項2】
前記補強板が、前記シート部材と、縫合されている請求項1に記載の荷崩れ防止シート。
【請求項3】
前記シート部材の前記一端側及び前記他端側は、それぞれ三折りに折り返され、前記長手方向の中央部から連続し、該中央部に向かって折り返される第1の折返し部と、該第1の折返し部から連続して前記長手方向の外側に向かって折り返される第2の折返し部とを備え、
前記補強板は、前記第1の折返し部内に設けられ、
前記棒状部材は、前記第2の折返し部内において、断面視で前記補強板に重なる位置に設けられ、
前記第1の折返し部と、前記補強板と、前記第2の折返し部と、前記棒状部材とは、前記棒状部材の短手方向の両端においてともに固定される請求項1又は2に記載の荷崩れ防止シート。
【請求項4】
前記シート部材の前記一端側に配置される前記係止部材は、バックル部と前記バックル部に挿通するベルト部とを有し、
さらに、前記ベルト部に脱着可能な緩み止めを備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の荷崩れ防止シート。
【請求項5】
前記ベルト部は、前記シート部材の前記一端側に取り付けられる基端部及び該基端部の反対側の末端部を有し、
前記末端部側には、前記ベルト部を引き締める際に把持可能な把持部が設けられる請求項4に記載の荷崩れ防止シート。
【請求項6】
前記把持部は、略環状である請求項5に記載の荷崩れ防止シート。
【請求項7】
前記把持部の少なくとも一部は、把持された状態で弾性変形可能な部材により構成される請求項6に記載の荷崩れ防止シート。
【請求項8】
水平方向及び該水平方向に垂直な垂直方向に段積みされた荷物と、
前記段積みされた荷物に巻きつけて荷物の荷崩れを防止する荷崩れ防止シートと、を備える積荷の荷崩れ防止方法であって、
前記荷崩れ防止シートは、
前記段積みされた荷物に巻きつける帯状のシート部材と、
前記シート部材の長手方向の一端側及び他端側に配置される係止部材からなり、前記一端側と前記他端側とに配置された前記係止部材を互いに係止して前記シート部材を固定する留め具と、
前記シート部材と前記係止部材とが固定される固定部を補強する補強板と、を備え、
前記留め具は、前記シート部材の短手方向に互いに間隔を空けて複数設けられ、
前記複数の補強板のうち少なくとも一つの補強板と、前記短手方向において前記一つの補強板に隣接する他の補強板とが、段積みされた前記荷物の高さ方向において隣接しあう荷物同士の隙間に配置されるように前記シート部材を巻きつけることを特徴とする積荷の荷崩れ防止方法。
【請求項9】
前記荷崩れ防止シートは、
前記シート部材の前記一端側に配置される前記係止部材を構成するバックル部と前記バックル部に挿通するベルト部と、
前記ベルト部に脱着可能な緩み止めと、を備え、
前記係止部材を係止した後に、前記ベルト部を引き締め、前記ベルト部の長手方向に沿う側縁同士を合わせるように折り曲げて前記緩み止めを装着する請求項8記載の積荷の荷崩れ防止方法。
【請求項10】
前記荷物は、18リットル缶又は8キロ缶である請求項8又は9に記載の積荷の荷崩れ防止方法。
【請求項11】
前記シート部材の短手方向の長さは、前記段積みされた荷物の高さ方向の長さよりも短い請求項8又は9に記載の積荷の荷崩れ防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−83584(P2010−83584A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198251(P2009−198251)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(593172544)株式会社ティーディーエスコーポレーション (13)
【出願人】(593175501)日清物流株式会社 (1)
【Fターム(参考)】