説明

荷役機械、荷役機械の制御装置、及び荷役機械の制御方法

【課題】エンジンの燃費改善、操作性の改善、過負荷による電圧降下の発生の防止、及び過放電による電池性能の劣化防止を実現可能な荷役機械、並びに荷役機械を制御する制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】荷役機械(100)は、荷役作業用のモータ(4)と、二次電池(5)と、エンジン(11)からの動力により発電する発電機(12)と、直流母線に電池が接続され、発電機及び電池から供給される電力をモータを駆動するための電力に変換を行うインバータ(3)と、ツイストロック指令を出力する運転指令装置(8)と、前記運転指令装置(8)からコンテナ(101)の把持を指示する指令を受信し、前記指令の受信後、所定時間(α)経過後に、エンジン(11)の回転数をアイドル状態の回転数から定格回転数に切り替える制御装置(7)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役機械、並びに荷役機械を制御する制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナ等の荷物の積み下ろしなどの荷役作業を行う荷役機械は、エンジン発電機と荷役作業用のモータを備えており、エンジン発電機から出力される電力でモータを駆動し、荷物の積み降ろし動作(荷役動作)や走行動作を行う。荷役機械において、エンジン発電機からの電力は、さらに、照明装置や運転室の空調設備などの補機にも供給される。そのため、荷役機械では、荷役動作時以外でもエンジン発電機を動作させて、補機に電力を供給している。
【0003】
近年、エンジン発電機と二次電池の両方を備えた荷役機械が開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された荷役機械は、無負荷状態が一定時間継続したときに、エンジン発電機を定格運転状態からアイドル状態に切り替えて、補機への電力供給を二次電池から行い、電池電圧が所定値以下に低下すると、エンジン発電機をアイドル状態から定格運転状態に切り替えて、エンジン発電機から補機に電力を供給している。このような構成によれば、エンジンの定格運転時間を短くして、エンジンの燃料消費量を減少、つまり燃費を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−360610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように無負荷状態が一定時間以上継続するのを待ってエンジン発電機をアイドル状態にすると、この間にエネルギーの無駄が生じる。更に、電池電圧の低下を待ってエンジン発電機を定格運転にすると、制御の遅れが生じる。
【0006】
一方、荷役作業中にのみエンジンを定格運転状態とすることが考えられる。具体的には、巻き上げが必要となったときに、エンジンをアイドル状態から定格運転状態に切り替え、その後、巻き上げが不要となったときに、エンジンを定格運転状態からアイドル状態に切り替えるのである。しかし、このように構成した場合、以下のような問題が生じる。
【0007】
すなわち、エンジンにおいては、一般に、エンジン回転数がアイドル状態の回転数から定格回転数に切り替わるまでにエンジンの仕様や運転状況に応じた時間を要するので、巻き上げ指令が出力されてから実際に巻き上げが開始されるまでにタイムラグが生じ、その結果、十分な操作性が得られないのである。また、巻き上げ時には、モータの起動トルクが急速に立ち上がるが、このとき、エンジン発電機の回転数が十分に立ち上がっていないと、二次電池の放電電流が急増することとなり、その結果、二次電池が大きな電圧降下を生じる虞がある。また、二次電池が過放電状態となって、電池性能の劣化を生じる虞もある。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するものであって、その目的とするところは、エンジンの燃費改善、操作性の改善、過負荷による電圧降下の発生の防止、及び過放電による電池性能の劣化防止を実現可能な荷役機械、並びに荷役機械を制御する制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、荷役機械であって、荷役作業用のモータと、二次電池と、エンジンからの動力により発電する発電機と、直流母線に前記二次電池が接続され、前記発電機及び前記二次電池から供給される電力を前記モータを駆動する電力に変換を行うインバータと、荷役機械に対して運転指令を出力する運転指令装置と、前記運転指令装置から荷物の把持を指示する指令を受信し、前記指令の受信後、所定時間経過後に、前記エンジンの回転数をアイドル状態の回転数から定格回転数に切り替える制御装置と、を備えていることを特徴とする。なお、前記所定時間は0を含む(下記制御装置及び制御方法の発明において同じ)。
【0010】
前記荷役機械において、前記制御装置は、前記エンジンの回転数を定格回転数に切り替えた後、前記運転指令装置から巻き上げ解除指令を受信したときは、受信してから第2の所定時間経過後に、前記エンジンの回転数を定格回転数からアイドル状態の回転数に切り替えるようにしてもよい。なお、前記第2所定時間は0を含む(下記制御装置及び制御方法の発明において同じ)。
【0011】
前記二次電池は、いわゆる蓄電機能を有した蓄電設備であってもよい。好ましくは、前記二次電池は、積層型ニッケル水素電池である。
【0012】
前記荷役機械は、トランスファクレーン、ガントリークレーン、またはジブクレーンであり、ゴムタイヤ式であってもよい。
【0013】
本発明は、荷役機械の制御装置であって、前記荷役機械は、荷役作業用のモータと、二次電池と、エンジンの動力により発電する発電機と、直流母線に前記二次電池が接続され、前記発電機及び前記二次電池から供給される電力を前記モータを駆動する電力に変換を行うインバータと、荷役機械に対して運転指令を出力する運転指令装置と、を備えており、前記制御装置は、前記運転指令装置からの荷物の把持を指示する指令を受信し、前記指令の受信後、所定時間経過後に、前記エンジンの回転数をアイドル状態の回転数から定格回転数に切り替える、ことを特徴とする。
【0014】
前記荷役機械の制御装置において、制御装置は、前記エンジンの回転数を定格回転数に切り替えた後、前記運転指令装置から巻き上げ解除指令を受信したときは、受信してから第2の所定時間経過後に、前記エンジンの回転数を定格回転数からアイドル状態の回転数に切り替えるようにしてもよい。
【0015】
本発明は、荷役機械の制御方法であって、前記荷役機械は、荷役作業用のモータと、二次電池と、エンジンの動力により発電する発電機と、直流母線に前記二次電池が接続され、前記発電機及び前記二次電池から供給される電力を前記モータを駆動する電力に変換を行うインバータと、荷役機械に対して運転指令を出力する運転指令装置と、を備えており、前記制御方法は、前記運転指令装置から荷物の把持を指示する指令を受信し、前記指令の受信後、所定時間経過後に、前記エンジンの回転数をアイドル状態の回転数から定格回転数に切り替えるステップを含むことを特徴とする。
【0016】
前記荷役機械の制御方法において、制御方法は、前記エンジンの回転数を定格回転数に切り替えた後、前記運転指令装置から巻き上げ解除指令を受信したときは、受信してから第2の所定時間経過後に、前記エンジンの回転数を定格回転数からアイドル状態の回転数に切り替えるステップを含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、荷役機械に対する運転指令を出力する運転指令装置から荷物の把持を指示する指令を受信し、この把持を指示する指令の受信後、所定時間経過後に、エンジンの回転数をアイドル状態の回転数から定格回転数に切り替えるようにしている。つまり、巻き上げに先立つ荷物の把持を指示する指令が出る前は、エンジンをアイドル状態として、二次電池から補機に電力を供給するようにしている。これにより、エンジンの燃料消費量を低減することができ、燃費を改善することができる。
【0018】
ここで、前述の荷物の把持は、巻き上げが行われる前に先行して実行される。したがって、巻き上げ指令が発生したときには既に、発電機回転数が定格回転数あるいはその近傍にまで上昇している。したがって、操作員による巻き上げ操作の後、速やかに巻き上げが開始され、操作性が改善される。また、巻き上げに伴ってモータの起動トルクが急速に立ち上がるときには既に、前述のようにエンジン発電機の回転数は定格回転数またはその近傍まで上昇しているので、モータへの電力供給は主としてエンジン発電機から行われることとなる。したがって、二次電池の放電電流が急増するのが防止されると共に、放電電流の急増に伴う二次電池の大きな電圧降下や、二次電池の過放電による電池性能の劣化が防止されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の制御装置を含む荷役機械の外観図
【図2】図1の荷役機械の構成を示すブロック図
【図3】所定時間αが設けられる場合の例を示すタイミングチャート
【図4】巻き上げ開始時のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
以下に示す本発明の実施形態は、エンジン発電機と、インバータの直流母線に接続された二次電池と、を備えたハイブリッド方式の荷役機械の制御において、荷役動作を行っている間は、エンジンを定格回転させて、主としてエンジン発電機からの電力でモータを駆動し、荷役動作を行っていない間は、エンジンをアイドルにして、二次電池のみから補機に電力を供給する。これにより、エンジンの燃費が良くなるという効果が得られる。
【0022】
1. 荷役機械の構成
図1に、本発明の実施形態の制御装置を含む荷役機械の外観を概略的に示す。本実施形態の荷役機械100は、港湾等の荷役作業に使用されるクレーン装置の一つであるゴムタイヤ式ガントリークレーン(RTG:Rubber Tired Gantry crane)であり、トランスファクレーンと称されることもある。荷役機械100は、コンテナ101を吊り上げるスプレッダ103と、巻き上げ及び巻き下げによりスプレッダ103を上昇及び下降させるワイヤーロープ109と、スプレッダ103を横行させるためのトラバーサ105と、前後の方向に走行が可能なタイヤ107と、を有する。荷役機械100は、コンテナ101をスプレッダ103で吊り上げ、スプレッダ103に取り付けられたワイヤーロープ109を巻き上げてスプレッダ103を上昇させ、トラバーサ105を所望の位置まで横行させた後、ワイヤーロープ109を巻き下げてスプレッダ103を下降させることにより、コンテナ101の積み下ろしを行う。また、荷役機械100は、タイヤ107による走行によって、任意の位置に移動することができる。
【0023】
スプレッダ103は、ワイヤーロープ109に吊り下げられた本体と、この本体に取り付けられ、コンテナ101を把持可能なツイストロック装置とを備えている。このツイストロック装置は、コンテナ101の上部に設けられた係合凹部に係合可能な係合部材と、この係合部材をコンテナ101の係合凹部に係合させる係合手段(シリンダ等)とを備え、この係合手段を作動させて前記係合部材をコンテナ101の係合凹部に係合させることにより、コンテナ101を把持可能なようになっている。ここで、このようにコンテナ101を把持することを一般にツイストロックといい、本明細書においても、以後、本用語を用いる。このツイストロックは、コンテナ101を吊り上げることを目的として巻き上げを行う前には、先行して必ず実行される。
【0024】
図2に、本発明にかかる荷役機械100のシステム構成をブロック図で示す。荷役機械100は、交流電力を出力するエンジン発電機1と、エンジン発電機1を制御するエンジン発電機制御装置2と、エンジン発電機1に接続されたインバータ3と、インバータ3から出力される電力により駆動するモータ4と、インバータ3に運転指令を出力する運転指令装置8とを有する。エンジン発電機1は、エンジン11とエンジン11に接続された発電機12とにより構成される。本実施形態において、エンジン11は、軽油を燃料とするディーゼルエンジンであるが、灯油や重油であってもよい。エンジン11が定格回転しているとき発電機12は所定の電圧を発生し、エンジン11がアイドルのとき発電機12は出力を停止する。エンジン発電機制御装置2は、エンジン回転数指令に基づいて、エンジン11を回転制御する。インバータ3は、交流電力を直流電力に変換するコンバータ部31と、直流電力を交流電力に変換するインバータ部32とを有する。インバータ3は、運転指令装置8から出力される運転指令に従って、コンバータ部31及びインバータ部32を制御し、モータ4に電力を供給する。モータ4は、図1に示すワイヤーロープ109の巻き上げを行うための巻き上げ用モータである。運転指令装置8は、荷役機械100の運転室などに設けられる。運転指令装置8は、操作員から指示された運転指令を出力する。運転指令は、ツイストロック指令、巻き上げ指令、及び巻き下げ指令を含む。ツイストロック指令は、前述のツイストロックを実行させるための指令であり、操作部に配置された例えばツイストロックレバーを操作員が操作することによりONとなり、ツイストロックレバーを解除することによりOFFとなる。巻き上げ指令は、巻き上げを実行させるための指令であり、操作部に配置された例えば巻き上げ操作レバーを操作員が操作することにより出力ONとなり、巻き上げ操作レバーを解除すればOFFとなる。巻き下げ指令は、巻き下げを実行させるための指令であり、操作部に配置された例えば巻き下げ操作レバーを操作員が操作することによりONとなり、巻き下げ操作レバーを解除すればOFFとなる。
【0025】
荷役機械100は、さらに、インバータ3のコンバータ部31とインバータ部32との間の直流母線に直結された二次電池5と、二次電池5の充電状態(SOC:State Of Charge)を算出する電池モニタ6と、後述する運転指令に基づいて、エンジン発電機制御装置2を制御するパワーフロー制御装置7と、を有する。本実施形態において、二次電池5はニッケル水素単電池を直列に接続した積層型ニッケル水素電池である。具体的には、ニッケル水素電池は、対向して設けられた一対の板状の集電体の間に、セパレータによって仕切られた正極セルと負極セルとを有する複数の単位電池が、互いに隣り合う一方の前記単位電池の正極セルと他方の前記単位電池の負極セルとが対向するように積層されてなる電池モジュールである。ニッケル水素電池は、SOC(state of charge)の変動による電圧変動が小さいという特性を有しているため、直流母線に直結することができる。二次電池5の出力電圧は、単位電池の積層数によって調整することができる。ニッケル水素電池の場合は、1.2V単位の小さな単位で電池の出力電圧を調整することができる。パワーフロー制御装置7は、運転指令装置8からインバータ3に出力されるツイストロック指令及び巻き上げ指令に基づいて、エンジン11にエンジン回転数指令を出力する。エンジン回転数指令は、定格回転数を指示する定格回転指令と、定格回転数より低い回転数であるアイドル状態を指示するアイドル指令を含む。パワーフロー制御装置7は、オンディレイタイマを有し、前記運転指令としてツイストロック指令が入力されてから、所定時間α後に定格回転指令を出力する。
【0026】
本実施の形態においては、この所定時間αは、定格回転指令を出力してから発電機12の回転数がアイドル回転数から定格回転数に到達するまでの時間や、平均的操作員の操作パターン等を考慮して設定している。具体的には、所定時間αは、平均的操作員がツイストロック操作を実行後、巻上げ操作を実行する時点において、発電機回転数が定格回転数近傍の回転数(例えば図4に示すように定格回転数の80%程度の回転数)まで最低限上昇していることが担保される時間に設定されている(例えば5秒)。なお、所定時間αは、これよりも長い時間、あるいは短い時間に設定することも可能であるが、以下の点を考慮しておく必要がある。すなわち、エンジン11の燃費の観点からは、所定時間αは、定格回転数での運転時間が短くなるようにできるだけ長い方がよいが、長くしすぎると、エンジン回転数が定格回転数近傍まで立ち上がる時期が遅くなって、巻き上げ操作性が悪化するので、この点を考慮する必要がある。一方、二次電池5の観点、例えば放電電流の急増に伴う二次電池5の大きな電圧降下の防止や二次電池5の過放電による電池性能の劣化防止という観点からは、所定時間αは、巻き上げ開始時に既に発電機回転数が定格回転数まで立ち上がっているようにできるだけ短い方がよいが、短くしすぎると、エンジン11の定格回転運転時間が長くなって、燃費の改善効果が減少するので、この点を考慮する必要がある。
【0027】
また、荷役機械100は、インバータ3のコンバータ部31とインバータ部32との間の直流母線に接続されたDC/ACコンバータ9と、DC/ACコンバータ9に接続された補機10とを備える。補機10は、荷役動作時だけでなく、荷役動作時以外においても電力を必要とするものであって、例えば、荷役機械100に設けられた照明装置や運転室の空調設備、油圧ユニット(油圧ポンプ等)などである。
【0028】
2. 荷役機械の動作
図3に、荷役機械100のタイミングチャートを示す。図3において、(a)は運転指令装置8が出力するツイストロック指令のON/OFFを示し、(b)はパワーフロー制御装置7が出力する発電機回転数を示し、(c)は発電機回転数を示し、(d)は運転指令装置8が出力する巻き上げ指令のON/OFFを示している。
【0029】
この図3に示すように、ツイストロック指令が入力されるまで(時刻t0〜時刻t1)、パワーフロー制御装置7は、エンジン回転数指令として、アイドル指令をエンジン発電機制御装置2に出力している。エンジン発電機制御装置2は、アイドル指令に従って、エンジン11をアイドル回転数にし、発電機12による発電を停止している。この間、補機10への電力供給は、二次電池5のみによって行われる。
【0030】
時刻t1で操作員によりツイストロック操作が実行されると、スプレッダ103においてツイストロック部によりコンテナ101に対するツイストロックが実行される。また、これと同時に運転指令装置8からパワーフロー制御装置7にツイストロック指令が出力される(ONとなる)。そして、ツイストロック指令が入力されると、パワーフロー制御装置7は、所定時間α経過後の時刻t2に、発電機回転数指令をアイドル指令から定格回転指令に切り替える。定格回転指令に従って、エンジン発電機制御装置2はエンジン11を定格回転させる。なお、発電機回転数は、一瞬で定格回転数まで上昇するのではなく、時刻t2から、発電機の仕様や使用状況に応じて定まる一定の時間βをかけて時刻t4まで上昇する。
【0031】
時刻t2から時間γ経過後の時刻t3に操作員の巻き上げ操作に伴って運転指令装置8から巻き上げ指令が入力されると(ONとなると)、インバータ3は、すぐに、モータ4への電力供給を開始する。これにより、モータ4が作動し、巻き上げが行われる(時刻t3〜時刻t5)。このときモータ4へはエンジン発電機1と二次電池5との両方から電力が供給されるが、発電機回転数が既に定格回転数近傍(例えば図4の場合80%程度)まで上昇しているので、モータ4への電力供給は主としてエンジン発電機1から行われることとなる。なお、このγは、操作員により変動するが、短くなった場合でも巻き上げ指令時(ON時)には発電機回転数が定格回転数近傍まで上昇しているように、その立ち上り時間βを考慮して所定時間αを設定することにより、前記作用を良好に得ることができる。
【0032】
時刻t5で巻き上げ指令が解除されると(OFFとなると)、パワーフロー制御装置7は、すぐに、定格回転指令からアイドル指令に切り替える。アイドル指令に従って、エンジン発電機制御装置2はエンジン11をアイドルにする。これにより、発電機12は発電を停止する。補機10への電力供給は、二次電池5のみによって行われる。(時刻t5以後)。
【0033】
その後、巻き下げ指令が入力されると(図示せず)、荷役機械100は巻き下げを開始する。巻き下げは、コンテナ101の重量により行われる。コンテナ101の降下に伴いモータ4が回転し、回生電力が発生する。この回生電力により、二次電池5が充電される。回生電力によって二次電池5に蓄えられた電力は、補機10への給電と次の巻き上げ作業に利用される。
【0034】
図4に、以上の動作を実現するためのパワーフロー制御装置7の制御を示す。なお、本制御の開始時には、パワーフロー制御装置7はエンジン回転数指令としてアイドル指令を出力し、エンジン発電機制御装置2は、アイドル指令に従って、エンジン11をアイドル状態としているものとする。このとき、発電機12の発電電力はゼロである。補機10への電力供給は二次電池5からの電力のみで行われる。
【0035】
まず、パワーフロー制御装置7は、運転指令装置8からツイストロック指令が入力(ON)されたかどうかを判断する(S501)。運転指令装置8からのツイストロック指令は、例えば操作員が操作パネルに配置されたツイストロック操作レバーを操作することにより出力される。
【0036】
運転指令装置8からツイストロック指令が入力されると、パワーフロー制御装置7は、設定した所定時間αが経過したかどうかを判断する(S502)。
【0037】
所定時間αが経過すると、パワーフロー制御装置7は、エンジン回転数指令をアイドル指令から定格回転指令に切り替えて、定格回転指令を出力する(S503)。エンジン発電機制御装置2は、定格回転指令が入力されると、エンジン11を定格回転させる。このとき、エンジン11に接続された発電機12は発電を開始する。
【0038】
次に、パワーフロー制御装置7は、運転指令装置8からの巻き上げ指令が解除(OFF)されたかどうかを判断する(S504)。
【0039】
運転指令装置8からの巻き上げ指令が解除されると、パワーフロー制御装置7は、エンジン回転数指令を定格回転指令からアイドル指令に切り替えて、アイドル指令を出力する(S505)。エンジン発電機制御装置2は、アイドル指令に従って、エンジン11をアイドル状態に切り替える。これにより、発電機12の出力はゼロになる。以後、補機10への電力供給は二次電池5からの電力のみで行われる。つまり、本制御の開始時の状態に戻る。
【0040】
3. まとめ
以上説明したように、本実施の形態においては、巻き上げ動作に先行して出力されるツイストロック指令後、0以上の所定時間α経過後に、エンジン11の回転数をアイドル状態の回転数から定格回転数に切り替えるようにしている。つまり、ツイストロック指令が出る前は、エンジン11をアイドル状態として、二次電池5から補機10に電力を供給するようにしている。これにより、エンジン11の燃料消費量を低減することができ、燃費を改善することができる。
【0041】
ここで、前述の荷物の把持は、巻き上げが行われる前に先行して実行される。したがって、巻き上げ指令が発生したときには既に、発電機回転数は定格回転数あるいはその近傍にまで上昇している。したがって、操作員による巻き上げ操作後、速やかに巻き上げが開始され、操作性が改善される。また、巻き上げに伴ってモータ4の起動トルクが急速に立ち上がったときには既に、前述のようにエンジン発電機1の回転数は定格回転数またはその近傍まで上昇しているので、モータへの電力供給は主としてエンジン発電機1から行われることとなる。したがって、二次電池5の放電電流が急増するのが防止されると共に、放電電流の急増に伴う二次電池5の大きな電圧降下や、二次電池5の過放電による電池性能の劣化を防止することができる。
【0042】
また、前記エンジン11の回転数を定格回転数に切り替えた後において、巻き上げ指令が解除された(OFF)ときは、解除後すぐに、エンジン11の回転数が定格回転数からアイドル状態の回転数に自動的に切り替えられるので、巻き上げが不要となった後もエンジン11が継続して定格運転状態となるのが防止される。したがって、無駄に燃料が消費されるのが防止され、燃費を一層改善することができる。
【0043】
また、ニッケル水素電池は、内部抵抗が小さく、かつSOC(state of charge)の変動による電圧変動が小さく電池容量を有効利用できるため、他の二次電池に比べて小容量の電池を用いることができ、大きな設置場所を必要としない。また、二次電池5として、SOCによる電池起電力の変化が小さいニッケル水素電池を使用することにより、二次電池5をインバータの直流母線に直接接続することが可能となるため、二次電池5と直流母線との間に従来技術で必要であった、二次電池5の充放電を制御する充放電制御装置が不要となる。本実施形態によれば、充放電制御装置を用いないため、充放電制御装置の設置スペースが不要となる。また、高価な充放電制御装置を用いないため、装置全体として安価になる。
【0044】
4. 変形例
なお、二次電池5は、ニッケル水素電池以外の蓄電設備であってもよい。例えば、二次電池5は、鉛蓄電池、リチュームイオン電池、電気二重層キャパシタであってもよい。この場合、電池もしくはキャパシタなどの蓄電設備の間には、充放電制御装置を配して、電池等の電圧を適宜、昇降圧して、直流母線に接続してもよい。この場合であっても、本願発明の所定の効果を得ることができる。
【0045】
また、本実施の形態においては、ツイストロック指令後(ON後)、所定時間α(特許請求の範囲の請求項1の所定時間)経過後に、エンジンの回転数をアイドル状態の回転数から定格回転数に切り替えるようにしているが、前記αは0(ゼロ)としてもよい。なお、このαの設定に際しては、前述したように燃費や電池への影響を考慮することが望ましい。また、巻き上げ指令の解除後(OFF後)、すぐに(特許請求の範囲の請求項2の第2の所定時間が0のとき)、エンジンの回転数を定格回転数からアイドル状態の回転数に切り替えるようにしているが、0より大きい所定時間経過後に(特許請求の範囲の第2の所定時間が0でないとき)、エンジンの回転数を定格回転数からアイドル状態の回転数に切り替えるようにしてもよい。
【0046】
また、本実施の形態においては、特許請求の範囲における前記運転指令装置から荷物の把持を指示する指令として、ツイストロック指令を利用したが、ツイストロック指令に代えて、巻き上げ指令に先行して出力される他の指令を利用してもよい。
【0047】
また、荷役機械100は、RTGの他、ガントリークレーン、ジブクレーン等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の制御装置及び制御方法によれば、エンジンの燃費改善、操作性の改善、過負荷による電圧降下の発生の防止、及び過放電による電池性能の劣化防止を実現することが可能となり、RTGなどの荷役機械に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 エンジン発電機
2 エンジン発電機制御装置
3 インバータ
4 モータ
5 二次電池
6 電池モニタ
7 パワーフロー制御装置
8 運転指令装置
9 DC/ACコンバータ
10 補機
11 エンジン
12 発電機
31 コンバータ部
32 インバータ部
100 荷役機械
101 コンテナ
103 スプレッダ
105 トラバーサ
107 タイヤ
109 ワイヤーロープ
α 所定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物に対する荷役作業を行う荷役機械であって、
荷役作業用のモータと、
二次電池と、
エンジンの動力により発電する発電機と、
直流母線に前記二次電池が接続され、前記発電機及び前記二次電池から供給される電力を前記モータを駆動する電力に変換を行うインバータと、
荷役機械に対して運転指令を出力する運転指令装置と、
前記運転司令装置からの荷物の把持を指示する指令を受信し、前記指令の受信後、所定時間経過後に、前記エンジンの回転数をアイドル状態の回転数から定格回転数に切り替える制御装置と、
を備えていることを特徴とする荷役機械。
【請求項2】
前記制御装置は、前記エンジンの回転数を定格回転数に切り替えた後、前記運転指令装置から巻き上げ解除指令を受信したときは、受信してから第2の所定時間経過後に、前記エンジンの回転数を定格回転数からアイドル状態の回転数に切り替える、請求項1に記載の荷役機械。
【請求項3】
前記二次電池は、積層型ニッケル水素電池である、請求項1または請求項2に記載の荷役機械。
【請求項4】
前記荷役機械は、ゴムタイヤ式トランスファクレーン、ガントリークレーン、またはジブクレーンである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の荷役機械。
【請求項5】
荷物に対する荷役作業を行う荷役機械の制御装置であって、
前記荷役機械は、
荷役作業用のモータと、
二次電池と、
エンジンの動力により発電する発電機と、
直流母線に前記二次電池が接続され、前記発電機及び前記二次電池から供給される電力を前記モータを駆動する電力に変換を行うインバータと、
荷役機械に対して運転指令を出力する運転指令装置と、
を備えており、
前記制御装置は、前記運転司令装置から荷物の把持を指示する指令を受信し、前記指令の受信後、所定時間経過後に、前記エンジンの回転数をアイドル状態の回転数から定格回転数に切り替える、
ことを特徴とする荷役機械の制御装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記エンジンの回転数を定格回転数に切り替えた後、前記運転指令装置から巻き上げ解除指令を受信したときは、受信してから第2の所定時間経過後に、前記エンジンの回転数を定格回転数からアイドル状態の回転数に切り替える、請求項5に記載の荷役機械の制御装置。
【請求項7】
荷物に対する荷役作業を行う荷役機械の制御方法であって、
前記荷役機械は、
荷役作業用のモータと、
二次電池と、
エンジンの動力により発電する発電機と、
直流母線に前記二次電池が接続され、前記発電機及び前記二次電池から供給される電力を前記モータを駆動する電力に変換を行うインバータと、
荷役機械に対して運転指令を出力する運転指令装置と、
を備えており、
前記制御方法は、前記運転司令装置からの荷物の把持を指示する指令を受信し、前記指令の受信後、所定時間経過後に、前記エンジンの回転数をアイドル状態の回転数から定格回転数に切り替えるステップを含むことを特徴とする荷役機械の制御方法。
【請求項8】
前記制御方法は、前記エンジンの回転数を定格回転数に切り替えた後、前記運転指令装置から巻き上げ解除指令を受信したときは、受信してから第2の所定時間経過後に、前記エンジンの回転数を定格回転数からアイドル状態の回転数に切り替えるステップを含む、請求項7に記載の荷役機械の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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