説明

荷役設備の落鉱回収装置

【課題】落鉱を回収するシュートの配置を、船体との接触を回避しつつ、潮位や喫水位置の変動に正確に追従させる。
【解決手段】荷揚時の落鉱を回収する二段式のシュート11を設置し、その上段シュート11bの長さは、起立した状態から船体9側に前傾したときに、船体9と岸壁1との間を覆うことのできる長さとする。そして、荷揚を開始する際には、距離センサ21で検出する船体9までの距離L1に応じて、船体9の上下位置を推定し、これに応じて電動ウィンチ12を巻き出して上段シュート11bを前傾させる。その後、荷揚作業の進行に伴って船体9が徐々に浮上すると、距離センサ21で検出する距離L1が徐々に小さくなるので、これに応じて上段シュート11bの目標傾動角度を小さくし、電動ウィンチ12を巻き上げて、上段シュート11bを徐々に起立させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役設備の落鉱回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラブバケット式のアンローダでは、貨物船と岸壁の間で、グラブバケットからの落鉱が少なからず生じるので、その下方で落鉱を回収する板状のシュートを、岸壁側のホッパフレームに設置し、このシュートと船体との接触を回避するために、潮位や喫水位置の変動に応じてシュートの上下位置を調整するものがあった(特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平2−46493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された従来技術にあっては、アンローダのオペレータが目視しながらシュートの上下位置を調整することになるが、一般にアンローダの運転室は、接岸する船体の上方に配置されているので、オペレータは、シュートと船体との上下方向の離隔距離を、横方向からではなく、上方から見下ろすことになり、その離隔距離を確認しづらい。したがって、オペレータが目測を誤ると、シュートと船体とが接触してしまう可能性があり、特に荷揚に伴って船体が徐々に浮上するような場合には、正確でスムーズな追従動作が困難であった。
【0004】
本発明の課題は、落鉱を回収するシュートの配置を、船体との接触を回避しつつ、潮位や喫水位置の変動に正確に追従させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る荷役設備の落鉱回収装置は、接岸した船体に対して荷役を行う荷役設備の落鉱回収装置において、岸壁側に設置され起立した状態から前記船体側に前傾し当該船体と前記岸壁との間を覆うことにより荷役時の落鉱を回収するシュートと、前記船体の上下位置を検出する位置検出手段と、該位置検出手段で検出した上下位置に応じて、前記シュートの前傾位置を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る荷役設備の落鉱回収装置は、前記シュートを前傾させたときの当該シュートの先端部と前記船体との離隔距離を検出する距離検出手段を備え、前記制御手段は、前記距離検出手段で検出した離隔距離が所定値を下回ったときに、前記シュートを起立させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る荷役設備の落鉱回収装置によれば、オペレータが目視しながらシュートの前傾位置を決めるのではなく、船体の上下位置を検出し、検出した上下位置に応じてシュートの前傾位置を制御する、つまり自動化することで、シュートの前傾位置を、船体との接触を回避しつつ、潮位や喫水位置の変動に正確に追従させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、荷揚を行うグラブバケット式アンローダの概略構成である。アンローダ1は、岸壁2に敷設したレール3に沿って走行可能な走行フレーム4と、走行フレーム4から海上へと突出したブーム5と、このブーム5に沿って横行すると共に昇降可能に垂下され、開閉動作によって荷役を行うグラブバケット6とを備えている。走行フレーム4の機内には、図2に示すように、荷揚したばら物を受容するホッパ7と、ホッパ7の下部に配置されたコンベヤ8とが配設されている。すなわち、接岸した船体9の真横に走行フレーム4を移動させ、グラブバケット6の横行・昇降・開閉によって、船倉からホッパ7へとばら物を運搬し、コンベヤ8を介して地上側へ搬送する。アンローダ1の運転室10は、船体9の上方で、グラブバケット6の軌道からオフセットされたブーム5に設置されている。
【0009】
走行フレーム4には、荷揚時におけるグラブバケット6からの落鉱を回収する二段式のシュート11が設置されている。このシュート11は、コンベヤ8の末端の上側で、走行フレーム4に固定された下段シュート11aと、この下段シュート11aの上部に傾動可能に連結された上段シュート11bとで構成されている。上段シュート11bの長さは、起立した状態から船体9側に前傾したときに、船体9と岸壁1との間を覆うことのできる長さとし、その幅は、想定し得るグラブバケット6からの落鉱領域を覆うことのできる長さとする。
【0010】
上段シュート11bは、電動ウィンチ12を介して駆動される。すなわち、電動ウィンチ12に巻回されたワイヤ13の先端が、滑車14を介して上段シュート11bの先端側に固定してあり、ワイヤ13を巻き出すことで上段シュート11bが前傾し、ワイヤ13を巻き取ることで上段シュート11bが起立する。
走行フレーム4及び上段シュート11bには、超音波を利用した距離センサ21、22を設け、夫々、船体9までの距離を検出している。また、下段シュート11a及び上段シュート11bの連結位置には、角度センサ23を設け、上段シュート11bの傾動角度を検出している。各検出信号は、制御装置24に入力され、これに応じて制御装置24は、電動ウィンチ12を駆動制御する。
【0011】
次に、制御装置24で実行する制御処理を、図3のフローチャートに従って説明する。
先ずステップS1では、距離センサ21で検出した走行フレーム4から船体9までの距離L1に応じて、船体9の上下位置を推定し、この上下位置に応じて、上段シュート11bの目標傾動角度を算出する。すなわち、上段シュート11bと船体9とが接触しない範囲で、船体9の上下位置が低いほど、上段シュート11bを前傾させる、つまり目標傾動角度を大きくする。
【0012】
続くステップS2では、角度センサ23で検出する上段シュート11bの傾動角度が、目標傾動角度と一致するように電動ウィンチ12を駆動制御する。
続くステップS3では、距離センサ24で検出した上段シュート11bから船体9までの距離L2が所定値Ls以下であるか否かを判定する。ここで、判定結果がL2>Lsであれば、上段シュート11bと船体9との間に必要最低限の離隔距離があると判断して、そのまま所定のメインプログラムに復帰する。一方、判定結果がL2≦Lsであれば、上段シュート11bに対して船体9又は障害物が異常に接近していると判断してステップS4に移行する。
【0013】
ステップS4では、上段シュート11bが略垂直に起立するように電動ウィンチ12を駆動制御し、上段シュート11bを船体9又は障害物から退避させ、所定のメインプログラムに復帰する。
以上より、アンローダ1が「荷役設備」に対応し、上段シュート11bが「シュート」に対応し、距離センサ21が「位置検出手段」に対応し、電動ウィンチ12及び制御装置24が「制御手段」に対応し、距離センサ22が「距離検出手段」に対応している。
【0014】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
荷揚を行わないときには、電動ウィンチ12を巻き上げて、上段シュート11bを略垂直に起立させて待機させる。そして、接岸した船体9から荷揚を開始する際には、距離センサ21で検出する船体9までの距離L1に応じて、船体9の上下位置を推定し、これに応じて電動ウィンチ12を巻き出して上段シュート11bを前傾させる(ステップS1、S2)。これにより、荷揚作業に伴うグラブバケット6からの落鉱を、上段シュート11bで受け、海洋への落鉱を防止すると共に、下段シュート11aを介して落鉱をコンベヤ7へと回収することができる。
【0015】
その後、荷揚作業の進行に伴って船体9が徐々に浮上すると、距離センサ21で検出する距離L1が徐々に小さくなるので、これに応じて上段シュート11bの目標傾動角度を小さくし、電動ウィンチ12を巻き上げて、上段シュート11bを徐々に起立させる。これにより、上段シュート11bと船体9との離隔距離を一定に維持することができる。
一方、船体9に障害物などが存在し、それが上段シュート11bに異常接近したときには(ステップS3が“Yes”)、上段シュート11bが略垂直に起立するまで電動ウィンチ12を巻き上げ、上段シュート11bを船体9から退避させる(ステップS4)。これにより、上段シュート11bの船体9への接触を確実に防止することができる。
【0016】
上記のように、上段シュート11bの傾動を自動化することで、アンローダ1のオペレータの操作負担を軽減することができる。特に、運転室10が接岸する船体9の上方に配置されており、オペレータが上段シュート11bと船体9との上下方向の離隔距離L2を確認しづらかったため、船体9に接触してしまう可能性があったが、こうした事態を確実に回避することができる。
【0017】
なお、上記の一実施形態では、超音波を利用した距離センサ21、22によって船体9までの距離を検出しているが、これに限定されるものではなく、レーザレーダによって距離を検出してもよい。特に、距離センサ21は、距離センサ22に比べて測定距離が長いので、高精度な検出方法を採用する。
また、上記の一実施形態では、橋型のアンローダ1について説明したが、これに限定されるものではなく、ダブルリンク型のアンローダでもよいし、他の如何なるクレーン設備でも本発明を適用できる。また、荷揚時のみならず船積時であってもよく、要は、岸壁2と船体9との間でばら物を運搬する荷役設備であれば、如何なる設備であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】アンローダの概略構成である。
【図2】落鉱を回収するシュートである。
【図3】制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0019】
1 アンローダ
2 岸壁
4 走行フレーム
6 グラブバケット
9 船体
10 運転室
11b 上段シュート
12 電動ウィンチ
21、22 距離センサ
23 角度センサ
24 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接岸した船体に対して荷役を行う荷役設備の落鉱回収装置において、
岸壁側に設置され起立した状態から前記船体側に前傾し当該船体と前記岸壁との間を覆うことにより荷役時の落鉱を回収するシュートと、前記船体の上下位置を検出する位置検出手段と、該位置検出手段で検出した上下位置に応じて、前記シュートの前傾位置を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする荷役設備の落鉱回収装置。
【請求項2】
前記シュートを前傾させたときの当該シュートと前記船体との離隔距離を検出する距離検出手段を備え、
前記制御手段は、前記距離検出手段で検出した離隔距離が所定値を下回ったときに、前記シュートを起立させることを特徴とする請求項1に記載の荷役設備の落鉱回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−190802(P2009−190802A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30129(P2008−30129)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】