説明

荷電制御剤及びトナー

【課題】アミド基と、スルホン酸基もしくはその誘導体とを導入した化合物を荷電制御剤として提供する。
【解決手段】アミド基と、スルホン酸基、スルホン酸エステル、スルホン酸塩、スルホン酸ハロゲン化物のいずれか少なくとも1つを導入した、化学式(2)に示す化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする荷電制御剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電制御剤、及びトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
スルホン酸基は薬剤として、また、スルホン酸誘導体基は界面活性剤やレジスト材料として一般的に用いられている。
【0003】
スルホン酸基またはスルホン酸誘導体を有する化合物は、様々な用途への応用が期待される。
【0004】
また、荷電制御剤として用途も検討されており、例えば、負帯電性トナーの荷電制御剤として金属含有化合物を用いたものが、特許文献1に記載されている。同文献では、アゾ系含有金属錯体を含む荷電制御剤の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2005−121776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
様々な用途への応用が期待されるスルホン酸基またはスルホン酸誘導体を有する化合物については、既知の材料で十分とは言えず、更なる改善や新規構造体の提供が求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、スルホン酸基またはその誘導体を有する化合物を利用した新規な荷電制御剤及び上記の荷電制御剤を含有してなることを特徴とする静電荷像現像トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記背景技術に鑑み、荷電制御剤として金属を含有しない様々な有用な化合物の創出を目指して鋭意研究を重ねてきた結果、以下に示すような発明に至った。
【0008】
本発明にかかる荷電制御剤は、化学式(2)に示す化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、R12、R22は以下の1)から4)の条件を満たす。
1)R12、R22は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、および置換もしくは未置換の複素環構造、のいずれかである。
2)R12とR22のどちらか少なくとも一方に、置換基として少なくとも一つのSO2R32基を有する。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、および置換もしくは未置換の複素環構造、のいずれかである。
【0011】
また、本発明にかかる静電荷像現像トナーは、少なくとも、バインダー樹脂と、着色剤と、前記本発明にかかる荷電制御剤を含有してなることを特徴とする。
【0012】
また、別の本発明は、静電荷像現像トナーに関し、バインダー樹脂と、着色剤と、化学式(2)に示す化合物を含有していることを特徴とする。
【0013】
【化2】

【0014】
式中、R12、R22は以下の1)から4)の条件を満たす。
1)R12、R22は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、および置換もしくは未置換の複素環構造、のいずれかである。
2)R12とR22のどちらか少なくとも一方に、置換基として少なくとも一つのSO2R32基を有する。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、および置換もしくは未置換の複素環構造、のいずれかである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により荷電制御剤並びに上記の荷電制御剤を含有してなることを特徴とする静電荷像現像トナーが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、詳細に説明する。
【0017】
本発明に係る荷電制御剤は、アミド基と、スルホン酸基若しくはその誘導体(スルホン酸エステル、スルホン酸塩、スルホン酸ハロゲン化物)のいずれか少なくとも1つを導入した化合物を含有するものである。好ましい実施態様として、以下の〔1〕から〔8〕が挙げられる。
【0018】
〔1〕第1の本発明に係る荷電制御剤は、化学式(2)に示す化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする。
【0019】
【化3】

【0020】
式中、R12、R22は以下の1)から4)の条件を満たす。
1)R12、R22は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、および置換もしくは未置換の複素環構造、のいずれかである。
2)R12とR22のどちらか少なくとも一方に、置換基として少なくとも一つのSO2R32基を有する。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、および置換もしくは未置換の複素環構造、のいずれかである。
【0021】
〔2〕第2の本発明に係る荷電制御剤は、前記化学式(2)に示す化合物として、以下の1)から4)の条件を満たす化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする。
1)R12、R22は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、および置換もしくは未置換の複素環構造、のいずれかである。
2)R12とR22のどちらか少なくとも一方に、置換基として少なくとも一つのSO2R32基を有する。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1-18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【0022】
〔3〕第3の本発明に係る荷電制御剤は、前記化学式(2)に示す化合物として、以下の<1>および<2>の条件の少なくとも1つを満たす化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする。
【0023】
<1>
前記化学式(2)が化学式(21)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【0024】
【化4】

【0025】
1)R12は、置換もしくは未置換の炭素数1-18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
2)R221は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、および置換もしくは未置換の芳香族環構造、のいずれかである。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1-18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【0026】
<2>
前記化学式(2)が化学式(22)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【0027】
【化5】

【0028】
1)R121は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、および置換もしくは未置換の芳香族環構造、のいずれかである。
2)R22は、置換もしくは未置換の炭素数1-18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1-18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【0029】
〔4〕第4の本発明に係る荷電制御剤は、前記化学式(2)に示す化合物として、以下の<3>および<4>の条件の少なくとも1つを満たす化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする。
【0030】
<3>
前記化学式(2)が化学式(23)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【0031】
【化6】

【0032】
1)R12は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、および置換もしくは未置換の芳香族環構造、のいずれかである。
2)R221は、置換もしくは未置換の炭素数1-18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1-18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【0033】
<4>
前記化学式(2)が化学式(24)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【0034】
【化7】

【0035】
1)R121は、置換もしくは未置換の炭素数1-18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
2)R22は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、および置換もしくは未置換の芳香族環構造、のいずれかである。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1-18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【0036】
〔5〕第5の本発明に係る荷電制御剤は、前記化学式(2)に示す化合物として、以下の1)から4)の条件を満たす化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする。
1)R12、R22は、置換もしくは未置換の炭素数1-18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
2)R12とR22のどちらかに少なくとも一方に、置換基として少なくとも一つのSO2R32基を有する。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1-18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【0037】
〔6〕第6の本発明に係る荷電制御剤は、前記化学式(2)に示す化合物として、以下の<5>および<6>の条件の少なくとも1つを満たす化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする。
【0038】
<5>
前記化学式(2)が化学式(25)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【0039】
【化8】

【0040】
1)R12は、置換もしくは未置換の、炭素数1から18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、のいずれかである。置換基としては、1個以上の、ハロゲン原子、炭素数1から20のアルキル基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボン酸またはカルボン酸塩、アセトアミド基、NHPh基、CF3基、C2F5基、およびC3F7基のいずれかを有する。アルコキシ基は、ORで表される基であり、Rは炭素数1から20のアルキル基、フェニル基またはナフチル基である。カルボン酸塩は、Na塩またはK塩である。
2)R221は、置換もしくは未置換の炭素数1から18の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【0041】
<6>
前記化学式(2)が化学式(26)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【0042】
【化9】

【0043】
1)R121は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
2)R22は、置換もしくは未置換の、炭素数1から18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、のいずれかである。置換基としては、1個以上の、ハロゲン原子、炭素数1から20のアルキル基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボン酸またはカルボン酸塩、アセトアミド基、NHPh基、CF3基、C2F5基、およびC3F7基のいずれかを有する。アルコキシ基は、ORで表される基であり、Rは炭素数1から20のアルキル基、フェニル基またはナフチル基である。カルボン酸塩は、Na塩またはK塩である。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【0044】
〔7〕第7の本発明に係る荷電制御剤は、前記化学式(2)に示す化合物として、以下の<7>および<8>の条件の少なくとも1つを満たす化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする。
【0045】
<7>
前記化学式(2)が化学式(27)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【0046】
【化10】

【0047】
1)R12は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
2)R221は、置換もしくは未置換の、炭素数1から18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、のいずれかである。置換基としては、1個以上の、ハロゲン原子、炭素数1から20のアルキル基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボン酸またはカルボン酸塩、アセトアミド基、NHPh基、CF3基、C2F5基、およびC3F7基のいずれかを有する。アルコキシ基は、ORで表される基であり、Rは炭素数1から20のアルキル基、フェニル基またはナフチル基である。カルボン酸塩は、Na塩またはK塩である。
3)R32はOH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【0048】
<8>
前記化学式(2)が化学式(28)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【0049】
【化11】

【0050】
1)R121は、置換もしくは未置換の、炭素数1から18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、のいずれかである。置換基としては、1個以上の、ハロゲン原子、炭素数1から20のアルキル基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボン酸またはカルボン酸塩、アセトアミド基、NHPh基、CF3基、C2F5基、およびC3F7基のいずれかを有する。アルコキシ基は、ORで表される基であり、Rは炭素数1から20のアルキル基、フェニル基またはナフチル基である。カルボン酸塩は、Na塩またはK塩である。
2)R22は置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【0051】
〔8〕第8の本発明に係る荷電制御剤は、前記化学式(2)に示す化合物として、以下の1)から4)の条件を満たす化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする。
1)R12、R22は、置換もしくは未置換の、炭素数1から18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、のいずれかである。置換基としては、1個以上の、ハロゲン原子、炭素数1から20のアルキル基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボン酸またはカルボン酸塩、アセトアミド基、NHPh基、CF3基、C2F5基、およびC3F7基のいずれかを有する。アルコキシ基は、ORで表される基であり、Rは炭素数1から20のアルキル基、フェニル基またはナフチル基である。カルボン酸塩は、Na塩またはK塩である。
2)R12とR22のどちらかに少なくとも一方に、置換基として少なくとも一つのSO2R32基を有する。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【0052】
〔9〕第9の本発明に係る静電荷像現像トナーは、少なくとも、バインダー樹脂と、着色剤と、〔1〕から〔8〕のいずれかに記載の荷電制御剤を含有してなることを特徴とする静電荷像現像トナーであることを特徴とする。
【0053】
〔10〕第10の本発明に係る静電荷現像トナーは、バインダー樹脂と、着色剤と、下記化学式(2)で示される化合物を有することを特徴とする。
【0054】
【化12】

【0055】
式中、R12、R22は以下の1)から4)の条件を満たす。
1)R12、R22は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、および置換もしくは未置換の複素環構造、のいずれかである。
2)R12とR22のどちらか少なくとも一方に、置換基として少なくとも一つのSO2R32基を有する。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、および置換もしくは未置換の複素環構造、のいずれかである。
【0056】
(本発明に係る化合物のより具体的な製法)
以下に、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。上記した各構成を有する本発明にかかる化合物は、荷電制御剤としてきわめて優れた特性を有する。さらには、この荷電制御剤を含有する静電荷像現像用トナーは、電子写真法による現像システムを有する画像形成装置に使用した場合に著しい効果を有するものである。この化合物の製造方法としては以下の方法を例示できる。
【0057】
本発明における、アミド基と、スルホン酸基、またはスルホン酸エステル、スルホン酸塩、スルホン酸ハロゲン化物を有する化合物は、様々な合成方法により製造することができる。
【0058】
例えばアミド化は、アミノ化合物とカルボン酸またはカルボン酸誘導体化合物の縮合反応により行うことが出来る。
【0059】
以下、特に好ましい製造方法として、アミド化に際して用いるカルボン酸化合物、アミノ化合物、アミド化の方法、スルホン酸エステルの合成方法について記載する。
【0060】
(カルボン酸化合物)
カルボン酸化合物は、以下化学式(29)で示される構造を有する。
【0061】
【化13】

【0062】
化学式(29)中、Rは、置換または未置換の脂肪族炭化水素構造、置換または未置換の芳香族炭化水素構造、置換または未置換のN、S、Oのいずれか1つ以上を含む複素環構造である。脂肪族炭化水素骨格を有するカルボン酸化合物の具体例としては、後述の実施例において示す。芳香族環骨格を有するカルボン酸化合物の具体例としては、後述の実施例において示す。
【0063】
(アミノ化合物)
アミノ化合物は、以下化学式(30)または化学式(31)で示される構造を有する。
【0064】
【化14】

【0065】
化学式(30)および(31)中、Rは、置換または未置換の脂肪族炭化水素構造、置換または未置換の芳香族炭化水素構造、置換または未置換のN、S、Oのいずれか1つ以上を含む複素環構造、のいずれかである。化学式(31)における2つのRは、同じでも良く異なっていても良い。
【0066】
例えば脂肪族炭化水素骨格を有するアミノ化合物の具体例は、後述の実施例において示す。例えば芳香族環骨格を有するアミノ化合物の具体例としては、後述の実施例において示す。
【0067】
(アミド化反応)
カルボキシル基とアミノ基の縮合反応としては、縮合剤を用いる方法、塩を形成し脱水反応により縮合を行う方法、脱水剤を用いる方法など、いずれも利用が可能である。カルボキシル基を酸クロライドに変換しアミノ基と反応させる方法も用いることが出来る。
【0068】
(縮合剤を用いたアミド化反応)
本発明の製造方法として、縮合剤を用いる方法について詳しく述べる。
【0069】
縮合剤としては、リン酸系縮合剤、カルボジイミド系縮合剤などが利用可能である。本発明の反応では、亜リン酸エステル系の縮合剤を用いることが好ましい。
【0070】
本発明の反応では、必要に応じ、溶媒を使用することができる。使用する溶媒は、ヘキサン、シクロへキサン、ヘプタン等の炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。また、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類を用いることができる。更に、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒類;ピリジン誘導体が挙げられる。特に好ましくは、ピリジンが用いられる。溶媒の使用量は、出発原料、塩基の種類、反応条件等に応じて適宜定め得る。
【0071】
この方法において、反応温度は、特に限定されないが、通常は0℃から溶媒の沸点の温度である。ただし、用いる縮合剤に合わせた最適な温度で反応を行うことが望ましい。本発明の方法において、反応時間は、例えば、1から48時間の範囲である。
【0072】
生成物の精製について記す。生成物を含む反応液は、常法である蒸留を用いて取り除くことができる。共雑物をシリカゲルまたはアルミナを用いたカラムクロマトグラフィーで除去した上で、生成物が難溶である溶媒中にての再結晶や再沈殿、分液による抽出操作等にて精製することが出来る。
【0073】
(酸クロライドを用いたアミド化反応)
本発明の製造方法として、カルボキシル基を酸クロライドに変換しアミノ基を反応させる方法について詳しく述べる。
【0074】
酸クロライドへの変換は、常法である塩化チオニルを使用することにより可能である。塩化チオニルの使用量は、カルボン酸化合物に対して、0.1から50.0倍モル、好ましくは、1.0から20.0倍モルの範囲である。また、塩化チオニルそのものを反応溶媒として用いることも可能である。
【0075】
酸クロライドに対して、アミノ化合物の仕込み量は0.1から50.0倍モル、好ましくは、1.0から20.0倍モルの範囲である。本発明の反応では、必要に応じ、溶媒を使用することができる。
【0076】
使用する溶媒は、ヘキサン、シクロへキサン、ヘプタン等の炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;が挙げられる。また、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類を用いることができる。更に、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒類;ピリジン誘導体;水が挙げられる。溶媒は、出発原料であるカルボン酸化合物の酸クロライド、アミノ化合物、生成物が溶解するものが好ましい。溶媒の使用量は、出発原料、反応条件等に応じて適宜定め得る。
【0077】
この方法において、反応温度は特に限定されないが、通常は−30℃から溶媒の沸点温度である。ただし、出発原料であるカルボン酸化合物の酸クロライド、アミノ化合物、反応溶媒に合わせた最適な温度で反応を行うことが望ましい。本発明の方法において、反応時間は、1から48時間の範囲である。
【0078】
生成物の精製について記す。生成物をを含む反応液は、常法である蒸留を用いて取り除くことができる。共雑物をシリカゲルまたはアルミナを用いたカラムクロマトグラフィーで除去した上で、生成物が難溶である溶媒中にての再結晶や再沈殿、分液による抽出操作等にて精製することが出来る。
【0079】
(スルホン酸エステルの合成反応)
スルホン酸エステルを有する化合物の合成は、出発原料としてスルホン酸、スルホン酸塩、スルホン酸ハロゲン化物を用いる。エステル化剤として、トリメチルシリルジアゾメタン、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル等を用いることにより実現する。
【0080】
この反応では、必要に応じ、溶媒を使用することができる。使用する溶媒は、ヘキサン、シクロへキサン、ヘプタン等の炭化水素類;メタノール及びエタノールなどのアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;が挙げられる。また、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類を用いることができる。更に、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒類;ピリジン誘導体が挙げられる。特に好ましくは、クロロホルム、メタノールが用いられる。溶媒の使用量は、出発原料、反応条件等に応じて適宜定め得る。
【0081】
エステル化剤の使用量は、スルホン酸、スルホン酸塩、スルホン酸ハロゲン化物に対して、0.1から50倍モル、好ましくは、1から20倍モルの範囲である。
【0082】
この方法において、反応温度は、特に限定されないが、通常は−20℃から30℃の範囲の温度である。反応時間は、通常、1から48時間の範囲である。
【0083】
生成物の精製について記す。生成物をを含む反応液は、常法である蒸留を用いて取り除くことができる。共雑物をシリカゲルまたはアルミナを用いたカラムクロマトグラフィーで除去した上で、生成物が難溶である溶媒中にての再結晶や再沈殿、分液による抽出操作等にて精製することが出来る。
【0084】
(トナーへの応用)
本発明に係る荷電制御剤の用途として、静電荷像現像用トナーおよびそれを用いた画像形成プロセスへの応用が挙げられる。具体的には、トナーに内添または外添される荷電制御剤として利用可能である。すなわち、本発明は上記の化合物を含有してなる荷電制御剤であり、さらには該荷電制御剤を含有してなる静電荷像現像用トナーである。
【0085】
上記の静電荷像現像用トナーは、以下で示される画像形成方法あるいは、画像形成装置に用いられる。
【0086】
ここで、トナーに関する技術について説明する。
【0087】
トナーを用いる電子写真法としては、多数の方法が知られている。電子写真法は、一般的には、光導電性物質を利用し、種々の手段によって像担持体(感光体)上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーで現像して可視像とする工程を有する。この可視像を、必要に応じて紙等の被転写材にトナー像を転写した後、熱及び/または圧力等により被転写材上にトナー画像を定着して複写物を得るものである。
【0088】
電気的潜像を可視化する方法としては、カスケード現像法、磁気ブラシ現像法、加圧現像方法等が知られている。更には、磁性トナーと中心に磁極を配した回転現像スリーブを用いて、現像スリーブ上から感光体上へと磁性トナーを磁界にて飛翔させる方法も用いられている。静電潜像を現像する際に用いられる現像方式には、トナーとキャリアとからなる二成分系現像剤を使用する二成分現像方式と、キャリアを使用しないトナーのみからなる一成分系現像剤を用いる一成分現像方式とがある。ここで、一般にトナーと称される着色微粒子は、バインダー樹脂と着色材とを必須成分とし、その他必要に応じ荷電制御剤、磁性粉等から構成されている。本発明に係る化合物は、このようなトナーへ用いることができる。
【0089】
なお、静電荷像現像用トナー組成中へ用いる荷電制御剤として、例えば化学式(2)に示す化合物を用いることにより、帯電特性に優れ、かつトナー樹脂中への該化合物の分散性及びスペント性が良好なものを提供することができる。また、本発明に係る荷電制御剤を用いれば、画像形成装置による出力時においても、画像カブリの発生が低減され、かつ、転写性に優れた静電荷像現像用トナーを提供することが可能となる。更にまた、本発明に係る化合物を用いた荷電制御剤は、無色とする、あるいはその着色度を弱くすることができる為、荷電制御剤に影響されずカラートナーに要求される色相に合わせて任意の着色剤を選定することが可能である。無色あるいは着色性の弱い荷電制御剤は、染料あるいは顔料が有する本来の色相を阻害し難く、好ましいものである。
【0090】
本発明の荷電制御剤を含有するトナーは、比帯電量が高く、その経時安定性も良好であることから、トナーを長時間保存しても静電記録の画像形成において安定して鮮明な画像を与える。また、無色あるいは着色はきわめて薄く、良好な負帯電性能を有するため、黒色の負帯電トナーおよびカラートナー何れについても製出することが出来る。
【0091】
ここで、荷電制御剤について説明する。トナーに電荷を付与する方法としては、荷電制御剤を用いることなくバインダー樹脂そのものの帯電特性を利用することもできるが、その場合、帯電の経時安定性、耐湿性が劣り良好な画質を得ることが出来ないことがある。
【0092】
従って通常は、トナーの電荷保持、荷電制御を目的として、荷電制御剤が加えられる。今日、当該技術分野で知られている公知の荷電制御剤としては、例えば、負摩擦帯電性としては、アゾ染料金属錯体、芳香族ジカルボン酸の金属錯体、サリチル酸誘導体の金属錯体等がある。また、正荷電制御剤としてはニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、各種4級アンモニウム塩ジブチル錫オキサイド等の有機スズ化合物等が知られている。
【0093】
本発明に係る化合物を荷電制御剤に用いる場合、上記公知の荷電制御剤と共に用いることもできる。
【0094】
(本発明に係る化合物のトナーへの添加)
本発明において、上記した化合物からなる荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナーに内添する方法とトナーに外添する方法がある。内添する場合の添加量は、トナーバインダーと荷電制御剤の合計質量に対して、荷電制御剤が通常0.1から50質量%、好ましくは0.2から20質量%の範囲で使用するのがより好ましい。0.1質量%よりも少ないと、トナーの帯電性における改良の度合いが顕著にみられない場合がある。一方、50質量%を超えると、経済的な観点から好ましくない場合がある。また、外添する場合には、トナーバインダーと荷電制御剤の質量割合は、トナーバインダーと荷電制御剤の合計質量に対して、荷電制御剤が0.01から5質量%とすることが好ましく、特に、メカノケミカル的にトナー表面に固着させるのが好ましい。
【0095】
本発明の静電荷像現像トナーの組成は、トナー質量に基づき、通常、荷電制御剤が0.1から50質量%、トナーバインダーが20から95質量%、着色剤が0から15質量%である。
【0096】
必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属の粉末もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどの化合物)を着色剤としての機能を兼ねて60質量%以下含有していてもよい。さらに種々の添加剤(滑剤(ポリテトラフルオロエチレン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸、もしくはその金属塩またはアミドなど)および他の荷電制御剤(含金属アゾ染料、サリチル酸金属塩など)など)を含有させることができる。また、トナーの流動性改良のために疎水性コロイダルシリカ微粉末等を用いることもできる。これら添加剤の量はトナー質量に基づき通常10質量%以下である。
【0097】
本発明のトナーにおいては、1つのトナー粒子中において、トナーバインダーの少なくとも一部が荷電制御剤を含まない連続相を形成しており、荷電制御剤の少なくとも一部がトナーバインダーを含まない不連続なドメインを形成していることが好ましい。不連続なドメインを形成せずにトナーバインダー中に荷電制御剤が完全相溶する場合と比較して、添加した荷電制御剤がトナー表面に露出しやすくなり、少量の添加で効果を発現する。また、該ドメインの分散粒径は、好ましくは0.01から4μmであり、さらに好ましくは0.05から2μmである。4μmを超えると分散性が不充分であり、帯電量分布が広くなるとともに、トナーの透明性が悪くなる場合がある。また、分散粒径が0.01μm未満では、不連続なドメインを形成せずにトナーバインダー中に完全相溶する場合と同様であり、多量の荷電制御剤の添加が必要となるトナーバインダーを含まない。前記荷電制御剤の少なくとも一部が不連続なドメインを形成していること、およびその分散粒径は、透過型電子顕微鏡などでトナーの切片を観察することで確認できる。界面を明瞭に観察するために、四酸化ルテニウム、四酸化オスニウムなどでトナー切片を染色した後に電子顕微鏡観察をすることも有効である。
【0098】
<他の構成材料>
以下、本発明の静電荷像現像用トナーを構成するその他の構成材料について説明する。本発明に係る静電荷像現像用トナーは、上記荷電制御剤の他に、バインダー樹脂、着色剤、および必要に応じて添加されるその他の添加物を含み構成されていてもよい。
【0099】
(バインダー樹脂)
先ず、バインダー樹脂としては、トナー用として一般的な熱可塑性樹脂をバインダー樹脂として用いることができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。バインダー樹脂は、通常、トナーを製造する際に用いられているものであればいずれも使用することができ、特に限定されない。
【0100】
また、本発明の荷電制御剤を、トナーを製造する前にバインダー樹脂とあらかじめ混合し、荷電制御能を含むトナー形成用の組成物として用いることができる。例えば、バインダー樹脂としては、スチレン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマーおよびポリウレタン系ポリマーなどが挙げられ、単独または混合して使用することができる。
【0101】
スチレン系ポリマーとしては、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体およびこれらと共重合可能な他の単量体の共重合体、スチレンとジエン系単量体(ブタジエン、イソプレンなど)との共重合体である。また、これらと共重合可能な他の単量体の共重合体などが挙げられる。ポリエステル系ポリマーとしては芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物との重縮合物などが挙げられる。エポキシ系ポリマーとしては芳香族ジオールとエピクロルヒドリンとの反応物およびこれの変性物などが挙げられる。ポリオレフィン系ポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらと他の共重合可能な単量体との共重合体鎖などが挙げられる。ポリウレタン系ポリマーとしては芳香族ジイソシアネートと芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物との重付加物などが挙げられる。
【0102】
本発明の荷電制御剤と組み合わせて用いられるバインダー樹脂の具体例としては、以下に挙げる重合性単量体の重合体、または、これらの混合物、或いは、共重合生成物が挙げられる。このようなものとしては、具体的には、例えば、スチレン-アクリル酸共重合体、或いはスチレン-メタクリル酸系共重合体などのスチレン系ポリマーが挙げられる。更にはポリエステル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマーおよびポリウレタン系ポリマー等が挙げられ、好ましく使用できる。
【0103】
(架橋剤)
本発明の荷電制御剤と組み合わせて使用するバインダー樹脂を形成する場合、架橋剤を用いることもできる。例えば、2官能の架橋剤として、ジビニルベンゼンが挙げられる。
【0104】
(重合開始剤)
また、本発明の荷電制御剤と組み合わせて使用するバインダー樹脂を形成する場合には、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)などの重合開始剤を必要に応じて用いることができる。使用量はモノマー100質量部に対し、0.05質量部以上(好ましくは0.1から15質量部)の濃度で用いられる。
【0105】
<荷電制御剤:本発明の化合物以外>
本発明の荷電制御剤以外にも、従来使用されている荷電制御剤を本発明の荷電制御剤とともに利用することも可能である。具体例としては、ニグロシン系染料、四級アンモニウム塩、モノアゾ系の金属錯体塩染料等を挙げることができる。
【0106】
荷電制御剤の添加量はバインダー樹脂の帯電性、着色剤の添加量・分散方法を含めた製造方法、その他の添加剤の帯電性等の条件を考慮した上で決めることができる。例えば、バインダー樹脂100質量部に対して0.1から20質量部、好ましくは0.5から10質量部の割合で用いることができる。この他、金属酸化物等の無機粒子や前記有機物質で表面処理した無機物質を用いても良い。これら荷電制御剤は、バインダー樹脂中に混合添加して用いても、トナー粒子表面に付着させた形で用いても良い。
【0107】
<着色剤>
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する着色剤としては、通常、トナーを製造する際に用いられているものであればいずれも使用でき、特に限定されるものではない。例えば、カーボンブラック、チタンホワイト、モノアゾ系赤色顔料、ジスアゾ系黄色顔料、キナクリドン系マゼンタ顔料、アントラキノン染料等、その他あらゆる顔料及び/または染料を用いることができる。
【0108】
また、本発明の静電荷像現像用トナーを二成分フルカラー用トナーとして使用する場合には、着色剤として次の様なものを使用することができる。例えば、カーボンブラック、C.I.ピグメントブルー 15、ハンザイエローG、C.I.ピグメントレッド 114等を使用できる。
【0109】
本発明においては、上記に挙げた顔料を単独で使用しても構わないが、染料と顔料とを併用して、その鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。染料及び顔料は、単独で使用してもよく、さもなければ、所望とするトナーの色調を得るために任意に混合して使用してもよい。
【0110】
上記したような着色剤のトナー中の含有量は、所望とする着色効果などに応じて広く変更することが可能である。
【0111】
通常、最も良好なトナー特性を得るため、即ち、印字の着色力、トナー形状安定性、トナーの飛散などを考慮した場合、これらの着色剤は、通常、以下の割合で使用する。すなわち、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1から60質量部好ましくは0.5から20質量部程度の割合で使用する。
【0112】
<トナーの他の成分>
本発明の静電荷像現像用トナー中には、上記したバインダー樹脂及び着色剤成分の他に、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で以下の化合物を含有させてもよい。例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド等のワックス類である。
【0113】
これらの中でも好ましく用いられるワックス類としては、具体的には、低分子量ポリプロピレン及びこの副生成物、低分子量ポリエステル及びエステル系ワックス、脂肪族の誘導体が挙げられる。これらのワックスから、種々の方法によりワックスを分子量により分別したワックスも本発明に好ましく用いられる。また、分別後に酸化やブロック共重合、グラフト変性を行ってもよい。
【0114】
本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、上記ワックス成分を含み、且つ透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナーの断層観察を行った場合に、当該ワックス成分が、バインダー樹脂中に実質的に球状及び/または紡錘形の島状に分散させることが好ましい。
【0115】
<トナーの作製方法>
上記のような構成を有する本発明の静電荷像現像用トナーを作製する具体的な方法としては、従来公知の方法をいずれも用いることができる。本発明の静電荷像現像用トナーは、例えば、下記の工程によってトナーを得る、所謂粉砕法によって作製できる。即ち、具体的には、バインダー樹脂等の樹脂類及び本発明にかかる荷電制御剤、必要に応じて添加されるその他の荷電制御剤、ワックスを、ヘンシェルミキサー、ボールミル等を混合器により充分混合する。
【0116】
得られた混合物を加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類をお互いに相溶せしめた中に、着色剤としての顔料、染料、または磁性体、必要に応じて添加される金属化合物等の添加剤を分散または溶解せしめる。
【0117】
冷却固化後、ジェットミル、ボールミル等の粉砕機により固化物を粉砕した後、分級を行なって所望の粒径を有する本発明の静電荷像現像用トナーを得る。尚、上記分級工程においては、生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
【0118】
また、バインダー樹脂と荷電制御剤等を溶剤を用い、溶液混合し、攪拌処理後、水中に投じて再沈澱せしめ、濾過、乾燥後、ジェットミル、ボールミル等の粉砕機により固化物を粉砕する。その後、分級を行なって所望の粒径を有する本発明の静電荷像現像用トナーを得ることもできる。尚、上記分級工程においては、生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。なお、ここでいう溶剤とは、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、クロロホルム、エチレンジクロライドなどのハロゲン化物、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンおよびジメチルホルムアミドなどのアミドなどである。
【0119】
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、下記のような所謂重合法によって作製することもできる。即ち、この場合には、バインダー樹脂の重合性単量体、荷電制御剤と、着色剤としての顔料、染料、または磁性体、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤、ワックス、その他のバインダー樹脂、その他の添加剤等の材料を混合分散させる。得られた混合物を用い界面活性剤等の存在下、水系分散媒体中で懸濁重合を行うことにより重合性着色樹脂粒子を合成する。得られた粒子を固液分離した後、乾燥し、必要に応じて分級を行なって本発明の静電荷像現像用トナーを得ることができる。さらには、荷電制御剤を含まない着色微粒子を上記方法により調製し、次いで荷電制御剤を単独もしくはコロイダルシリカ等の外添剤と供に、メカノケミカル的な方法等により粒子表面に固着添加することも出来る。
【0120】
(シリカ外添剤)
本発明においては、上記のような方法によって作製されたトナーに、帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上のため、シリカ微粉末を外添することが好ましい。この際に用いられるシリカ微粉末としては、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が20m2/g以上(特に30から400m2/g)の範囲内のものが良好な結果を与える。この場合のシリカ微粉末の量としては、トナー粒子100質量部に対して、シリカ微粉体を0.01から8質量部、好ましくは0.1から5質量部程度使用することが好ましい。
【0121】
シリカ微粉末としては、必要に応じて、以下の処理剤で処理されたものを用いることができる。処理剤とは、疎水化及び帯電性コントロールの目的で、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物の如き材料である。これらの処理剤は混合して使用してもよい。
【0122】
(無機粉体)
また、トナーの現像性及び耐久性を向上させるために、次に挙げるような無機粉体を添加することも好ましい。
【0123】
例えば、
マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、クロム、マンガン、ストロンチウム、錫、アンチモンの如き金属の酸化物;
チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウムの如き複合金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウムの如き金属塩;
カオリンの如き粘土鉱物;
アパタイトの如きリン酸化合物;
炭化ケイ素、窒化ケイ素の如きケイ素化合物;
カーボンブラックやグラファイトの如き炭素粉末が挙げられる。これらの中でも、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化コバルト、二酸化マンガン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウムの微粉体を使用することが好ましい。
【0124】
(滑剤)
更に、下記に挙げるような滑剤粉末をトナーに添加してもよい。例えば、テフロン、ポリフッ化ビニリデンの如きフッ素樹脂;フッ化カーボンの如きフッ素化合物;ステアリン酸亜鉛の如き脂肪酸金属塩;脂肪酸、脂肪酸エステルの如き脂肪酸誘導体;硫化モリブデン等が挙げられる。
【0125】
<キャリアについて>
本発明の静電荷像現像用トナーは従来公知の種々のトナーに適用することができる。例えば、静電荷像現像用トナーは単独で非磁性一成分現像剤として用いることができる。本発明の静電荷像現像用トナーは、磁性キャリアとともに磁性二成分現像剤を構成したりする非磁性トナーや、単独で磁性一成分トナーとして使用される磁性トナー等として用いることができる。ここで二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものをいずれも使用することができる。具体的には、表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属及びそれらの合金または酸化物で形成される平均粒径20から300μmの粒子を、キヤリア粒子として使用できる。また、本発明において用いるキャリアは、上記したキャリア粒子の表面が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂の如き物質によって付着または被覆されているものであることが好ましい。
【0126】
<磁性トナー>
本発明の静電荷像現像用トナーは、磁性材料をトナー粒子中に含有させ磁性トナーとしてもよい。この場合には、磁性材料に、着色剤の役割を兼ねさせることもできる。
【0127】
この際に使用される磁性材料としては、
マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;あるいは
鉄、コバルト、ニッケルのような金属;あるいは
これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が挙げられる。本発明において用いることのできるこれらの磁性材料としては、平均粒子径が2μm以下、好ましくは0.1から0.5μm程度のものが好ましい。トナー中に含有させる量としては、バインダー樹脂100質量部に対し20から200質量部、特に好ましくは、バインダー樹脂100質量部に対して40から150質量部とすることが好ましい。
【0128】
更に、高画質化を達成するためには、より微小な潜像ドットを忠実に現像することを可能にする必要があり、そのためには、例えば、本発明の静電荷像現像用トナー粒子の重量平均径が4μmから9μmの範囲内となるように調整することが好ましい。即ち、重量平均径が4μm未満のトナー粒子では、転写効率の低下が生じ、感光体上に転写残トナーが多く残り易く、カブリ・転写不良に基づく画像の不均一ムラの原因となり易く、好ましくない。また、トナー粒子の重量平均径が9μmを超える場合には、文字やライン画像の飛び散りが生じ易い。
【0129】
本発明において、トナーの平均粒径及び粒度分布は、コールターカウンターTA-II型或いはコールターマルチサイザー(商品名、ベックマンコールター社製)等の装置を用いる。
【0130】
そして、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機バイオス製)及びパーソナルコンピューターを前記装置に接続して測定した。その際に使用する電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。電解液としては、例えば、市販のISOTON R-II(商品名、コールターサイエンティフィックジャパン社製)を使用することもできる。具体的な測定法としては、上記電解水溶液100から150ml中に、分散剤として界面活性剤(好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸塩を使用する)を0.1から5ml加え、更に、測定試料を2から20mg加えて測定用試料とする。測定の際には、この測定試料が懸濁された電解液を超音波分散器で約1から3分間分散処理を行う。
【0131】
その後、前記コールターカウンターTA-II型によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積、個数を測定する。そして、体積分布と個数分布とを算出した。それから、本発明に係わる体積分布から求めた体積基準の重量平均粒径(D4)、個数分布から求めた個数基準の長さ平均粒径(D1)を求めた。
【0132】
<帯電量>
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、単位質量あたりの帯電量(二成分法)が−10から−80μC/g、より好ましくは−15から−70μC/gであることが、電圧を印加した転写部材を用いる転写方法において転写効率を向上させる上で好ましい。
【0133】
本発明において使用した二成分法による帯電量の測定法を以下に示す。測定には、図5に示した帯電量測定装置を使用した。先ず、キャリアとしてのEFV 200 / 300(パウダーテック社製)9.5gに対して、測定対象のトナー0.5gを加えた混合物を調製する。この混合物を、50から100ml容量のポリエチレン製の瓶に入れ、振幅を一定にした振とう機に設置して、振とう条件を、振幅100mm、振とう速度1分間100回往復に設定し、一定時間振とうする。次いで、図5に示した帯電量測定装置41の、底に500メッシュのスクリーン43のある金属製の測定容器42に、前記混合物1.0から1.2gを入れて、金属製のフタ44をする。この時の測定容器42全体の質量を秤かりW1(g)とする。次に、不図示の吸引機(測定容器42と接する部分は少なくとも絶縁体)で吸引口47から吸引し、風量調節弁46を調節して真空計45の圧力が2450Pa(250mmAq)になるようにする。この状態で一分間吸引を行なって、トナーを吸引除去する。この時の電位計49の電位をV(ボルト)とする。ここで48はコンデンサーであり容量をC(μF)とする。また、吸引後の測定機全体の質量を秤かりW2(g)とする。トナーの摩擦帯電量(μC/g)は、これらの測定値から、下式によって計算される。
【0134】
計算式:摩擦帯電量(μC/g)=C×V/(W1-W2)
これらの操作は一定の環境下(例えば、一定の温度及び湿度条件下で行われる。
【0135】
<バインダー樹脂の分子量測定方法と分子量分布>
また、本発明の静電荷像現像用トナーの構成材料に用いられるバインダー樹脂としては、特に、粉砕法で作製した場合に、GPCによる分子量分布において、低分子量領域におけるピークが3,000から15,000の範囲にあるようにすることが好ましい。即ち、低分子量領域におけるGPCピークが15,000を超えると、転写効率の向上が充分なものが得られ難くなる場合がある。また、低分子量領域におけるGPCピークが3000未満のバインダー樹脂を用いると、表面処理時に融着を生じ易くなるので、好ましくない。
【0136】
本発明において、バインダー樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。具体的なGPCの測定方法としては、予めトナーをTHF(テトラヒドロフラン)溶剤でソックスレー抽出器を用いて 20時間抽出を行なったサンプルを測定用に用いる。そして、カラム構成は、昭和電工製A-801、802、803、804、805、806、807(商品名)を連結し標準ポリスチレン樹脂の検量線を用い分子量分布を測定した。また、本発明においては、上記のようにして測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)が、2から100の範囲内にあるバインダー樹脂を使用することが好ましい。
【0137】
<トナーのガラス転移点>
更に、本発明のトナーは、適宜な材料を用いることによって、定着性、保存性の観点から、そのガラス転移点Tgが、40℃から75℃、更に好ましくは、52℃から70℃となるように調製されることが好ましい。この場合におけるガラス転移点Tgの測定には、例えば、パーキンエルマー社製のDSC-7(商品名)のような高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計を用いて測定を行なえばよい。測定方法としては、ASTM D 3418-82に準じて行なう。本発明においては、ガラス転移点Tgを測定する場合に、測定試料を1回昇温して全履歴をとった後、急冷し、再度、温度速度10℃/min、温度0から200℃の範囲で昇温させたときに測定されるDSC曲線を用いるとよい。
【0138】
本発明者らは、上記説明した荷電制御剤が、きわめて優れた特性を有することを見出している。これを後述する実施例において示す。
【実施例】
【0139】
まず、実施例A-1からO-1、A-2からL-2、B-3、B-4、H-3により、本発明により得られる化合物とその製造方法、について説明する。その後、実施例1から40により、比較例を用いながら本発明に係る荷電制御剤の有用性を示す。
【0140】
なお、本発明に係る荷電制御剤及びそれを用いた静電荷像現像トナーは、以下に示す実施例のみに限定されるものではない。
【0141】
以下の実験において、得られた化合物の構造決定は、核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル、フーリエ変換−赤外吸収(FT-IR)スペクトルにより分析を行った。使用した機器は以下の通りである。1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400(商品名);共鳴周波数:400MHz;測定核種:1H;使用溶媒: 重DMSOもしくは重クロロホルム;測定温度:室温)
FT−IR(Nicolet AVATAR360FT−IR(商品名))
(実施例A-1)
窒素雰囲気下、安息香酸1.0g(8.2mmol)、2-アミノベンゼンスルホン酸2.1g(12.3mmol)を100ml三口フラスコに入れ、ピリジン30mlを加えて攪拌した。その後、亜リン酸トリフェニル3.2ml(12.3mmol)を加え、115℃で6時間加熱した。反応終了後、溶媒を留去、クロロホルム30mlを添加し生成物を溶解させた。4N塩酸30mlを用いて5回分液洗浄を行い、その後クロロホルムを留去した。得られた生成物はクロロホルム5mlに溶かしシリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。回収した生成物を減圧乾燥することで生成物1.0g(3.6mmol、収率44%)を得た。1H-NMRの結果より、アミド基由来のシグナルが新たに見られ、また安息香酸のベンゼン環プロトンに由来するシグナルがシフトしていることから、得られた生成物は下記式(A-1)に示す化合物であることが確認された。
【0142】
また、この系をスケールアップすることにより下記式(A-1)に示す化合物50gを得た。この化合物を実施例1から40における例示化合物A-1とした。
【0143】
【化15】

【0144】
(実施例B-1からO-1)
カルボン酸化合物、アミノ化合物、亜リン酸トリフェニルと、ピリジン30mlを用いて実施例A-1と同様に実験を行った。試薬の仕込み比(単位:gまたはml、mmol)得られる化合物の構造は、表A-1からA-3にまとめて記す。
【0145】
N-1の合成に用いるアミノ化合物は、Journal of Organic Chemistry, 1985, 50, 3336-3341に記された方法を用いて合成し、実験に供した。O-1の合成に用いるアミノ化合物は、Journal of the American Chemical Society, 1962, 84, 3289-3295に記された方法で、2-ペンタノールに変えてエタノールを用いて、実験に供した。
【0146】
生成物の確認は、1H-NMR測定にて、アミド基由来のシグナルを確認することにより行った。図1にB-1、図2にE-1の1H-NMR測定結果を示す。
【0147】
また、この系をスケールアップすることにより各々の目的とする化合物50gを得た。これらの化合物を実施例1から40における例示化合物B-1からO-1とした。なお、以下、表を利用して化合物1を説明するが、表中の化学構造式の右下に記載されているA−1、B−1・・・O−1という表示は、それぞれ、実施例A−1、B−1・・・O−1により得られた化合物であることを示している。
【0148】
【表1】

【0149】
【表2】

【0150】
【表3】

【0151】
(実施例A-2)
実施例A-1で得られた生成物(例示化合物A-1)0.30g(1.1mmol)を50mlナスフラスコ中に加え、クロロホルム15ml、メタノール5mlを加えて溶解し、0℃まで冷却した。これに2mol/Lのトリメチルシリルジアゾメタン-ヘキサン溶液(Aldrich社製)5.4ml(10.8mmol)を添加し、3時間攪拌した。反応終了後、エバポレーターにより溶媒を留去した後、生成物を回収した。更に、クロロホルム15ml、メタノール5mlを加えて、生成物を再溶解させて、エバポレーターにより溶媒を留去した。この操作を3回繰り返した。ここで回収した生成物を、減圧乾燥することで生成物0.30g(1.0mmol、収率95%)を得た。1H-NMR測定より、スルホン酸メチルに由来するピークが3-4ppmに見られることから、得られた生成物は、下記式(A-2)に示す化合物であることを確認した。
【0152】
また、この系をスケールアップすることにより下記式(A-2)に示す化合物50gを得た。この化合物を実施例1から40における例示化合物A-2とした。
【0153】
【化16】

【0154】
(実施例B-2からL-2)
例示化合物A-1の代わりに実施例B-1からL-1で得られた生成物(例示化合物B-1からL-1)とトリメチルシリルジアゾメタン-ヘキサン溶液(表B-1、B-2において、TMSジアゾメタンと略す。)を用いて、実施例A-2と同様に実験を行った。試薬の仕込み比(単位:gまたはml、mmol)、得られる化合物の構造は、表B-1、B-2にまとめて記した。生成物の確認は、1H-NMR測定より、スルホン酸メチルに由来するピークを確認することにより行うことが出来る。一例として、図3にB-2、図4にE-2の1H-NMR測定結果を示す。
【0155】
また、この系をスケールアップすることにより各々の目的とする化合物50gを得た。これらの化合物を実施例1から40における例示化合物B-2からL-2とした。
【0156】
【表4】

【0157】
【表5】

【0158】
(実施例B-3)
水酸化ナトリウム50mg(1.25mmol)を水10mlに溶解させた水溶液を作製し、実施例B-1で得られた生成物(例示化合物B-1)0.4g(1.25mmol)を、室温で30分撹拌した。反応後、水をエバポレーターで留去後、減圧乾燥することにより、生成物0.35g(1.03mmol、収率82%)を得た。FT-IRよりスルホン酸O-H結合由来の3200cm-1付近のピークが消失したことから、得られた生成物は、下記式(B-3)に示す化合物であることを確認した。
【0159】
また、この系をスケールアップすることにより下記式(B-3)に示す化合物50gを得た。この化合物を実施例1から40における例示化合物B-3とした。
【0160】
【化17】

【0161】
(実施例B-4)
水酸化カリウム70mg(1.25mmol)を水10mlに溶解させた水溶液を作製し、実施例B-1で得られた生成物(例示化合物B-1)0.4g(1.25mmol)を、室温で30分撹拌した。反応後、水をエバポレーターで留去後、減圧乾燥することにより、生成物0.40g(1.12mmol、収率89%)を得た。FT-IRスペクトルよりスルホン酸O-H結合由来の3200cm-1付近のピークが消失したことから、得られた生成物は、下記式(B-4)に示す化合物であることを確認した。
【0162】
また、この系をスケールアップすることにより下記式(B-4)に示す化合物50gを得た。この化合物を実施例1から40における例示化合物B-4とした。
【0163】
【化18】

【0164】
(実施例H-3)
水酸化ナトリウム52mg(1.31mmol)を水10mlに溶解させた水溶液を作製し、実施例H-1で得られた生成物(例示化合物H-1)0.3g(1.31mmol)を、室温で30分撹拌した。反応後、水をエバポレーターで留去後、減圧乾燥することにより、生成物0.30g(1.31mmol、収率91%)を得た。FT-IRよりスルホン酸O-H結合由来の3200cm-1付近のピークが消失したことから、得られた生成物は、下記式(H-3)に示す化合物であることを確認した。
【0165】
また、この系をスケールアップすることにより下記式(H-3)に示す化合物50gを得た。この化合物を実施例1から40における例示化合物H-3とした。
【0166】
【化19】

【0167】
次に、前記の例示化合物からなる本発明の荷電制御剤を用いて各種トナーを製造し、評価を行った。
【0168】
(実施例1)
まず、高速撹拌装置TK-ホモミキサーを備えた2リットル用の四つ口フラスコ中に、Na3PO4水溶液を添加、回転数10,000rpm、温度60℃にした。ここにCaCl2水溶液を徐々に添加していき、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。一方、下記組成をボールミルにて3時間分散させた後、離型剤(カルナバワックス)10質量部と、重合開始剤である2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)10質量部を添加して重合性単量体組成物を調製した。
・スチレン単量体:82質量部
・エチルヘキシルアクリレート単量体:18質量部
・ジビニルベンゼン単量体:0.1質量部
・シアン着色剤(C.I.ピグメントブルー 15):6質量部
・酸化ポリエチレン樹脂(分子量3200、酸価8):5質量部
・例示化合物A-1:2質量部
次に、上記で得られた重合性単量体組成物を、先に調製した水系分散媒体中に投入し、回転数10,000rpmを維持しつつ造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、65℃で3時間反応させた後、80℃で6時間重合させて重合反応を終了した。反応終了後、懸濁液を冷却し、酸を加えて難水溶性分散剤Ca3(PO4)2を溶解した後、濾過、水洗、乾燥して青色重合粒子(1)を得た。得られた青色重合粒子(1)のコールターカウンターマルチサイザー(コールター社製)を用いて測定した粒度は、重量平均粒径7.5μmで、微粉量(個数分布における3.17μm以下の粒子の存在割合)は5.5個数%であった。
【0169】
上記で調製した青色重合粒子(1)100質量部に対して、流動向上剤としてヘキサメチルジシラザンで処理した疎水性シリカ微粉体(BET:270m2/g)1.3質量部をヘンシェルミキサーで乾式混合して外添し、本実施例の青色トナー(1)とした。更に、この青色トナー(1)7質量部と樹脂コート磁性フェライトキャリア(平均粒子径:45μm)93質量部とを混合して、磁気ブラシ現像用の2成分系青色現像剤(1)を調製した。
【0170】
(実施例2から5)
例示化合物A-1をそれぞれ例示化合物D-2、N-1、F-1、H-3とした以外は実施例1と同様の方法により、実施例2から5の青色トナー(2)から(5)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。また、これを用いて実施例1と同様にして、実施例2から5の2成分系青色現像剤(2)から(5)を得た。
【0171】
(比較例1)
例示化合物A-1を使用しない点以外は実施例1と同様の方法により、比較例1の青色トナー(6)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。また、これを用いて実施例1と同様にして、比較例1の2成分系青色現像剤(6)を得た。
【0172】
(実施例6から10)
例示化合物A-1の代わりに例示化合物M-1、D-1、I-1、B-2、H-2をそれぞれ2.0質量部を用い、シアン着色剤の代わりにイエロー着色剤(ハンザイエローG)を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行った。そして、実施例6から10のイエロー(黄色)トナー(1)から(5)を得た。これらのトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。また、これを用いて実施例1と同様にして、2成分系イエロー(黄色)現像剤(1)から(5)を得た。
【0173】
(比較例2)
例示化合物A-1を使用しない点およびシアン着色剤の代わりにイエロー着色剤(ハンザイエローG)を使用する点以外は実施例1と同様の方法により、比較例2のイエロー(黄色)トナー(6)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。また、これを用いて実施例1と同様にして、比較例2の2成分系イエロー(黄色)現像剤(6)を得た。
【0174】
(実施例11から15)
例示化合物A-1の代わりに例示化合物H-1、K-2、B-1、O-1、G-2をそれぞれ2.0質量部使用し、シアン着色剤の代わりにカーボンブラック(DBP吸油量110mL/100g)を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行った。そして、実施例11から15の黒色トナー(1)から(5)を得た。これらのトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。また、これを用いて実施例1と同様にして、2成分系黒色現像剤(1)から(5)を得た。
【0175】
(比較例3)
例示化合物A-1を使用しない点およびシアン着色剤の代わりにカーボンブラック(DBP吸油量110mL/100g)を使用する点以外は実施例1と同様の方法により、比較例3の黒色トナー(6)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。また、これを用いて実施例1と同様にして、比較例3の2成分系黒色現像剤(6)を得た。
【0176】
(実施例16)
・スチレン-ブチルアクリレート共重合樹脂(ガラス転移温度70℃):100質量部
・ワックス(低分子ポリエチレン、融点94℃):7質量部
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド 114):5質量部
・例示化合物J-2:2質量部
上記組成を混合し、二軸エクストルーダー(L/D=30)で溶融混練した。この混練物を冷却後、ハンマーミルで粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕した後に分級して、粉砕法によってマゼンタ着色粒子(1)を得た。このマゼンタ着色粒子(1)の粒度は、重量平均粒径7.3μm、微粉量は5.0個数%であった。
【0177】
このマゼンタ着色粒子(1)100質量部に対して、流動向上剤として、ヘキサメチルジシラザンで処理した疎水性シリカ微粉体(BET:250m2/g)1.5質量部をヘンシェルミキサーで乾式混合して、本実施例のマゼンタ(赤色)トナー(1)を得た。更に、得られたマゼンタ(赤色)トナー(1)7質量部と樹脂コート磁性フェライトキャリア(平均粒子径:45μm)93質量部とを混合して、磁気ブラシ現像用の2成分系マゼンタ(赤色)現像剤(1)を調製した。
【0178】
(実施例17-20)
例示化合物J-2をそれぞれ例示化合物E-1、A-2、L-1、B-3とした以外は実施例16と同様の方法により、実施例17から20のマゼンタ(赤色)トナー(2)から(5)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。また、これを用いて実施例16と同様にして、実施例17から20の2成分系マゼンタ(赤色)現像剤(2)から(5)を得た。
【0179】
(比較例4)
例示化合物J-2を使用しない点以外は実施例16と同様の方法により、比較例4のマゼンタ(赤色)トナー(6)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。また、これを用いて実施例16と同様にして、比較例4の2成分系マゼンタ(赤色)現像剤(6)を得た。
【0180】
(実施例21-25)
例示化合物J-2の代わりに例示化合物C-1、I-2、J-1、L-2、E-2をそれぞれ2.0質量部使用し、マゼンタ顔料の代わりにカーボンブラック(DBP吸油量110mL/100g)を使用する以外は、実施例16と同様の操作を行った。そして、実施例21から25の黒色トナー(7)から(11)を得た。これらのトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。また、これを用いて実施例16と同様にして、2成分系黒色現像剤(7)から(11)を得た。
【0181】
(比較例5)
例示化合物J-2を使用しない点およびマゼンタ顔料の代わりにカーボンブラック(DBP吸油量110mL/100g)を使用する点以外は実施例16と同様の方法により、比較例5の黒色トナー(12)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。また、これを用いて実施例16と同様にして、比較例5の2成分系黒色現像剤(12)を得た。
【0182】
(実施例26)
・ポリエステル樹脂:100質量部
・カーボンブラック(DBP吸油量110mL/100g):5質量部
・例示化合物G-1:2質量部
ポリエステル樹脂は次のようにして合成した。ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物751部、テレフタル酸104部および無水トリメリット酸167部をジブチルチンオキサイド2部を触媒として重縮合し、軟化点125℃のポリエステル樹脂を得た。
【0183】
上記組成を混合し、二軸エクストルーダー(L/D=30)で溶融混練した。この混練物を冷却後、ハンマーミルで粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕した後に分級して、粉砕法によって黒色着色粒子(13)を得た。この黒色着色粒子(13)の粒度は、重量平均粒径7.7μm、微粉量は5.2個数%であった。
【0184】
この黒色着色粒子(13)100質量部に対して、流動向上剤として、ヘキサメチルジシラザンで処理した疎水性シリカ微粉体(BET:250m2/g)1.5質量部をヘンシェルミキサーで乾式混合して、本実施例の黒色トナー(13)を得た。更に、得られた黒色トナー(13)7質量部と樹脂コート磁性フェライトキャリア(平均粒子径:45μm)93質量部とを混合して、磁気ブラシ現像用の2成分系黒色現像剤(13)を調製した。
【0185】
(実施例27から30)
例示化合物G-1をそれぞれ例示化合物C-2、K-1、F-2、B-4とした以外は実施例26と同様の方法により、実施例27から30の黒色トナー(14)から(17)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。また、これを用いて実施例26と同様にして、実施例27から30の2成分系黒色現像剤(14)から(17)を得た。
【0186】
(比較例6)
例示化合物G-1を使用しない点以外は実施例26と同様の方法により、比較例6の黒色トナー(18)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。また、これを用いて実施例26と同様にして、比較例6の2成分系黒色現像剤(18)を得た。
【0187】
<評価>
上記実施例1から30で得られた2成分系現像剤と、比較例1から6で得られた2成分系現像剤について、評価を行った。具体的には評価には、図5に示した帯電量測定装置を使用した。
【0188】
先ず、一定環境下、キャリアとしてEFV 200 / 300(パウダーテック社製)を用い、該キャリア9.5gに対して、測定対象のトナー0.5gを加えた混合物を、50から100ml容量のポリエチレン製の瓶に入れる。それを、振幅を一定にした振とう機に設置して、振とう条件を、振幅100mm、振とう速度1分間100回往復に設定し、一定時間振とうする。次いで、図5に示した帯電量測定装置41の、底に500メッシュのスクリーン43のある金属製の測定容器42に、前記混合物1.0から1.2gを入れて、金属製のフタ44をする。この時の測定容器42全体の質量を秤かりW1(g)とする。次に、不図示の吸引機(測定容器42と接する部分は少なくとも絶縁体)で吸引口47から吸引し、風量調節弁46を調節して真空計45の圧力が2450Pa(250mmAq)になるようにする。この状態で一分間吸引を行なって、トナーを吸引除去する。この時の電位計49の電位をV(ボルト)とする。ここで48はコンデンサーであり容量をC(μF)とする。また、吸引後の測定機全体の質量を秤かりW2(g)とする。トナーの摩擦帯電量(μC/g)は、これらの測定値から、下式によって計算される。
【0189】
計算式:摩擦帯電量(μC/g)=C×V/(W1-W2)
常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び300秒攪拌後のトナーの帯電量を測定した。そして、2成分ブローオフ帯電量の測定値から少数以下第2位を四捨五入し、下記の基準で評価した。その結果を表1にまとめて示した。
【0190】
[帯電性]
◎:非常に良好(-20μC/g以下)
○:良好(-19.9から-10.0μC/g)
△:実用可(-9.9から-5.0μC/g)
×:実用不可(-4.9μC/g以上)
【0191】
【表6】

【0192】
実施例31から実施例36および比較例7から比較例12
実施例31から実施例36および比較例7から比較例12では、LBP5500(キヤノン社製)を改造して評価に使用した。
【0193】
その際、現像剤として、実施例1、6、11、16、21、26および比較例1から6で得た、シアントナー、イエロートナー、マゼンタトナー又はブラックトナーでトナー画像を形成した。
【0194】
<評価>
以上の条件で、常温常湿(25℃、60%RH)及び、高温高湿(30℃、80%RH)環境下、8枚(A4サイズ)/分のプリントアウト速度になるようにLBP5500を改造し、プリントを行った。
【0195】
実施例1、6、11、16、21、26のトナーと、比較例1から6のトナーをそれぞれ使用し、逐次補給しながら、単色での間欠モードでプリントアウト試験を行った。得られたプリントアウト画像を下記の項目について評価した。
【0196】
なお、間欠モードとは、一枚プリントアウトする毎に10秒間現像器を休止させ、再起動時の予備動作でトナーの劣化を促進させるモードのことである。
【0197】
評価結果を表2にまとめて示した。
【0198】
[プリントアウト画像評価]
1.画像濃度
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、所定枚数のプリントアウトをして、初期の画像に対するプリント終了時における画像の画像濃度維持の程度により評価した。尚、画像濃度はマクベス反射濃度計(マクベス社製)を用い、原稿濃度が 0.00 の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、評価に用いた。
【0199】
◎:優(終了時の画像濃度が1.40以上)
○:良(終了時の画像濃度が1.35以上1.40未満)
△:可(終了時の画像濃度が1.00以上1.35未満)
×:不可(終了時の画像濃度が1.00未満)
2.画像カブリ
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に所定枚数のプリントアウトをし、プリント終了時のベタ白画像により評価した。具体的には、下記のような方法で評価した。反射式濃度計(TOKYO DENSHOKU CO.,LTD 社製、商品名:REFLECTOMETER MODEL TC-6DS)を用いて測定した。すなわち、プリント後の白地部反射濃度の最低値をDs、プリント前の用紙の反射濃度平均値をDrとし、これらの値から(Ds-Dr)を求め、これをカブリ量とし、下記の基準で評価した。
【0200】
◎:非常に良好(カブリ量が0%以上1.5%未満)
○:良好(カブリ量が1.5%以上3.0%未満)
△:実用可(カブリ量が3.0%以上5.0%未満)
×:実用不可(カブリ量が5.0%以上)
3.転写性
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、黒ベタ画像を所定枚数プリントアウトをし、プリント終了時の画像の画像抜け量を目視により観察し、下記の基準で評価した。
【0201】
◎:非常に良好(殆ど発生せず)
○:良好(軽微)
△:実用可
×:実用不可
また、実施例31から実施例36および比較例7から比較例12で、5000枚画像出力を行なったときの感光ドラム及び中間転写体表面の傷や残留トナーの固着の発生状況とプリントアウト画像への影響(LBP5500とのマッチング)を目視で評価した。
【0202】
すると、実施例31から実施例36のトナーを使用した系では、感光ドラム及び中間転写体表面の傷や、残留トナーの固着が全く確認できず、LBP5500とのマッチングが非常に良好であった。一方、比較例7から12のトナーを使用した系では、いずれも感光ドラム表面にトナーの固着が認められた。更に、比較例7から12のトナーを使用した系では、中間転写体表面上にトナーの固着と表面傷が確認でき、画像上にも縦スジ状の画像欠陥を生じていた。
【0203】
【表7】

【0204】
実施例37から実施例39、比較例13から比較例15
実施例37から実施例39、比較例13から比較例15の実施にあたっては、現像剤として、実施例1、6、11および比較例1から3で得たトナーをそれぞれ用いた。また、画像を形成する手段としてLBP5500にリユース機構(回収トナーを利用するシステム)を取り付けて改造し、再設定した画像形成装置を用いた。
【0205】
以上のようにして、常温常湿(25℃、60%RH)環境下、8枚(A4サイズ)/分のプリントアウト速度で、トナーを逐次補給しながら連続モードで、3万枚までプリントアウトを行なう。得られたプリントアウト画像について画像濃度を測定し、その耐久について下記に示した基準で評価した。又、10,000枚目の画像を観察し、画像カブリについて下記の基準で評価した。又、同時に、耐久試験後におけるLBP5500を構成している各装置の様子を観察し、各装置と上記の各トナーとのマッチングについても評価した。以上の結果を表3にまとめて示した。なお、連続モードとは、現像器を休止させることなくトナーの消費を促進させるモードのことである。
【0206】
[耐久時の画像濃度推移]
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、所定枚数のプリントアウトをして、初期の画像に対するプリント終了時における画像の画像濃度維持の程度により評価した。尚、画像濃度はマクベス反射濃度計(マクベス社製)を用い、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、評価に用いた。
【0207】
◎:優(終了時の画像濃度が1.40以上)
○:良(終了時の画像濃度が1.35以上1.40未満)
△:可(終了時の画像濃度が1.00以上1.35未満)
×:不可(終了時の画像濃度が1.00未満)
[画像カブリ]
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に所定枚数のプリントアウトをし、プリント終了時のベタ白画像により評価した。評価は先に記載した反射式濃度計(TOKYO DENSHOKU CO.,LTD 社製、商品名:REFLECTOMETER MODEL TC-6DS)を用いた方法により行った。
【0208】
[画像形成装置マッチング評価]
1.現像スリーブとのマッチング
プリントアウト試験終了後、現像スリーブ表面への残留トナーの固着の様子とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
【0209】
◎:非常に良好(未発生)
○:良好(殆ど発生せず)
△:実用可(固着があるが、画像への影響が少ない)
×:実用不可(固着が多く、画像ムラを生じる)
2.感光ドラムとのマッチング
感光体ドラム表面の傷や残留トナーの固着の発生状況とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
【0210】
◎:非常に良好(未発生)
○:良好(僅かに傷の発生が見られるが、画像への影響はない)
△:実用可(固着や傷があるが、画像への影響が少ない)
×:実用不可(固着が多く、縦スジ状の画像欠陥を生じる)
3.定着装置とのマッチング
定着フィルム表面の様子を観察し、表面性及び残留トナーの固着状況の結果を総合平均化して、その耐久性を評価した。
【0211】
(1)表面性
プリントアウト試験終了後の定着フィルム表面の傷や削れの発生の様子を目視で観察し、評価した。
【0212】
◎:非常に良好(未発生)
○:良好(殆ど発生せず)
△:実用可
×:実用不可
(2)残留トナーの固着状況
プリントアウト試験終了後の定着フィルム表面の残留トナーの固着状況を目視で観察し、評価した。
【0213】
◎:非常に良好(未発生)
○:良好(殆ど発生せず)
△:実用可
×:実用不可
【0214】
【表8】

【0215】
実施例40
実施例37から実施例39、比較例13から比較例15で用いたLBP5500のトナーリユース機構を取り外し、プリントアウト速度を16枚(A4サイズ)/分とした以外は実施例37と同様にした。
【0216】
そして、実施例1の青色トナー(1)を逐次補給しながら連続モード(即ち、現像器を休止させることなく、トナーの消費を促進させるモード)でプリントアウト試験を行なった。得られたプリントアウト画像評価ならびに用いたLBP5500とのマッチングを実施例37から実施例39、比較例13から比較例15と同様の項目について評価した。その結果、いずれの項目についても良好な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】例示化合物B-1の1H-NMR測定結果である。
【図2】例示化合物E-1の1H-NMR測定結果である。
【図3】例示化合物B-2の1H-NMR測定結果である。
【図4】例示化合物E-2の1H-NMR測定結果である。
【図5】トナーの帯電量を測定するためのブローオフ帯電量測定装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0218】
41 帯電量測定装置
42 測定容器
43 スクリーン
44 フタ
45 真空計
46 風量調節弁
47 吸引口
48 コンデンサー
49 電位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(2)に示す化合物の少なくとも1種を含有していることを特徴とする荷電制御剤。
【化1】

式中、R12、R22は以下の1)から4)の条件を満たす。
1)R12、R22は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、および置換もしくは未置換の複素環構造、のいずれかである。
2)R12とR22のどちらか少なくとも一方に、置換基として少なくとも一つのSO2R32基を有する。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、および置換もしくは未置換の複素環構造、のいずれかである。
【請求項2】
前記R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである請求項1に記載の荷電制御剤。
【請求項3】
前記化学式(2)に示す化合物として、以下の<1>および<2>の条件の少なくとも1つを満たす化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする、請求項1に記載の荷電制御剤。
<1>
前記化学式(2)が化学式(21)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【化2】

1)R12は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
2)R221は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、および置換もしくは未置換の芳香族環構造、のいずれかである。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
<2>
前記化学式(2)が化学式(22)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【化3】

1)R121は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、および置換もしくは未置換の芳香族環構造、のいずれかである。
2)R22は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【請求項4】
前記化学式(2)に示す化合物として、以下の<3>および<4>の条件の少なくとも1つを満たす化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする、請求項1に記載の荷電制御剤。
<3>
前記化学式(2)が化学式(23)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【化4】

1)R12は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、および置換もしくは未置換の芳香族環構造、のいずれかである。
2)R221は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
<4>
前記化学式(2)が化学式(24)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【化5】

1)R121は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
2)R22は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、および置換もしくは未置換の芳香族環構造、のいずれかである。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【請求項5】
前記化学式(2)に示す化合物として、以下の1)から4)の条件を満たす化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする、請求項1に記載の荷電制御剤。
1)R12、R22は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
2)R12とR22のどちらかに少なくとも一方に、置換基として少なくとも一つのSO2R32基を有する。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【請求項6】
前記化学式(2)に示す化合物として、以下の<5>および<6>の条件の少なくとも1つを満たす化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする、請求項1に記載の荷電制御剤。
<5>
前記化学式(2)が化学式(25)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【化6】

1)R12は、未置換の、炭素数1-18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、ならびに、置換基として1個以上のハロゲン原子、炭素数1から20のアルキル基、アルコキシ基(OR、Rは炭素数1から20のアルキル基、フェニル基またはナフチル基)、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボン酸またはカルボン酸塩(塩はNaまたはK)、アセトアミド基、NHPh基、CF3基、C2F5基、およびC3F7基のいずれかを有する、炭素数1から18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、のいずれかである。
2)R221は、置換もしくは未置換の炭素数1から18の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
<6>
前記化学式(2)が化学式(26)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【化7】

1)R121は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
2)R22は、未置換の、炭素数1から18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、ならびに、置換基として1個以上のハロゲン原子、炭素数1から20のアルキル基、アルコキシ基(OR、Rは炭素数1から20のアルキル基、フェニル基またはナフチル基)、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボン酸またはカルボン酸塩(塩はNaまたはK)、アセトアミド基、NHPh基、CF3基、C2F5基、およびC3F7基のいずれかを有する、炭素数1から18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、のいずれかである。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【請求項7】
前記化学式(2)に示す化合物として、以下の<7>および<8>の条件の少なくとも1つを満たす化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする、請求項1に記載の荷電制御剤。
<7>
前記化学式(2)が化学式(27)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【化8】

1)R12は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
2)R221は、未置換の、炭素数1から18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、ならびに、置換基として1個以上のハロゲン原子、炭素数1から20のアルキル基、アルコキシ基(OR、Rは炭素数1から20のアルキル基、フェニル基またはナフチル基)、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボン酸またはカルボン酸塩(塩はNaまたはK)、アセトアミド基、NHPh基、CF3基、C2F5基、およびC3F7基のいずれかを有する、炭素数1から18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、のいずれかである。
3)R32はOH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
<8>
前記化学式(2)が化学式(28)で示される構造の場合において、以下の1)から4)の条件を満たす。
【化9】

1)R121は、未置換の、炭素数1から18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、ならびに、置換基として1個以上のハロゲン原子、炭素数1から20のアルキル基、アルコキシ基(OR、Rは炭素数1から20のアルキル基またはフェニル基またはナフチル基)、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボン酸またはカルボン酸塩(塩はNaまたはK)、アセトアミド基、NHPh基、CF3基、C2F5基、およびC3F7基のいずれかを有する、炭素数1から18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、のいずれかである。
2)R22は置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【請求項8】
前記化学式(2)に示す化合物として、以下の1)から4)の条件を満たす化合物の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする、請求項1に記載の荷電制御剤。
1)R12、R22は、未置換の、炭素数1から18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、ならびに、置換基として1個以上のハロゲン原子、炭素数1から20のアルキル基、アルコキシ基(OR、Rは炭素数1から20のアルキル基、フェニル基またはナフチル基)、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボン酸またはカルボン酸塩(塩はNaまたはK)、アセトアミド基、NHPh基、CF3基、C2F5基、およびC3F7基のいずれかを有する、炭素数1から18のアルキル基、フェニル基、およびナフチル基、のいずれかである。
2)R12とR22のどちらかに少なくとも一方に、置換基として少なくとも一つのSO2R32基を有する。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の炭素数1から18のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、および置換もしくは未置換のナフチル基、のいずれかである。
【請求項9】
静電荷像現像トナーにおいて、少なくとも、バインダー樹脂と、着色剤と、請求項1から8のいずれかに記載の荷電制御剤を含有してなることを特徴とする静電荷像現像トナー。
【請求項10】
静電荷像現像トナーであって、
バインダー樹脂と、
着色剤と、
化学式(2)に示す化合物を含有していることを特徴とする静電荷像現像トナー。
【化10】

式中、R12、R22は以下の1)から4)の条件を満たす。
1)R12、R22は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、および置換もしくは未置換の複素環構造、のいずれかである。
2)R12とR22のどちらか少なくとも一方に、置換基として少なくとも一つのSO2R32基を有する。
3)R32は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR42である。
4)R42は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、および置換もしくは未置換の複素環構造、のいずれかである。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−156456(P2007−156456A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305810(P2006−305810)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】