荷電粒子を検出する検出装置、荷電粒子を検出する方法および質量分析計
本発明は、荷電粒子を検出するための検出装置を提供し、この装置は、入射荷電粒子を受け取ったことに応答して二次荷電粒子を発生させる二次粒子発生器と、二次粒子発生器により発生された二次荷電粒子を受け取り、検出する荷電粒子検出器と、二次粒子発生器により発生された二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生させる光子発生器と、光子発生器により発生された光子を検出する光子検出器と、を含む。また、検出装置を含む質量分析計、TOF型質量分析計における検出装置の使用、およびTOF型質量分析計の検出ダイナミックレンジを改善する方法も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子を検出する検出装置、荷電粒子を検出する方法と、これらにおける、およびこれらに関する改良に関する。この装置と方法は、質量分析計またはその他にとって有益であり、それゆえ、本発明はさらに、質量分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子検出器は、たとえば、イオンまたは電子の検出を必要とする多くの用途で使用されている。このような用途の1つが質量分析計である。質量分析計は、荷電粒子を、その質量電荷比(m/z)に基づいて分離し、分析するために広く使用されており、何種類もの質量分析計が知られている。本発明は飛行時間(TOF)型質量分析計を念頭において設計されているが、本発明は、その他のタイプの質量分析計のほか、荷電粒子の検出を必要とする質量分析計以外の用途、たとえば電子顕微鏡にも応用できる。
【0003】
飛行時間(TOF)型質量分析計は、荷電粒子の質量電荷比(m/z)を、決まった経路に沿ったその飛行時間に基づいて測定する。荷電粒子、通常、イオンは、パルス式の発生源から、短いイオンパケットまたはバンチの形で放出され、所定の飛行経路に沿って、真空領域を通ってイオン検出器へと向けられる。発生源から一定の運動エネルギーで放出されたイオンは、ある時間後に検出器に到達するが、この時間はイオンの質量に依存し、質量が大きいイオンほど遅い。TOF型質量分析計には、他の特性の中でも、速い応答速度と高ダイナミックレンジを有する、すなわち、小型と大型の両方のイオン電流を検出できる能力を備え、その両者を素早く切り替える機能も含み、また、好ましくは、検出器の出力飽和等の問題を起こさないようなイオン検出器が必要となる。このような検出器は、コストを下げ、操作上の問題を減らすために、不当に複雑であるべきではない。
【0004】
TOF型質量分析計のための従来のイオン検出器は、二次電子増倍管、たとえば、ディスクリートまたは連続ダイノード電子増倍管(たとえば、マイクロチャネルプレート(MCP))を含む。たとえば高分子化合物の検出を必要とする、多くのTOF方式の用途において、検出されるイオンの運動エネルギーを高くして、イオンを効率的に二次イオンと電子に交換できるようにする必要があり、これらの二次イオンと電子はさらに増倍し、検出することができる。TOF型質量分析計で検出するための高い運動エネルギーを持つイオンを生成するには、主として2つの方法がある。(i)検出器において、イオンを加速させ、高い運動エネルギーを持たせる(たとえば、検出器に10〜20keV等の高い電圧を印加することによる)、および(ii)検出前にイオンに後段加速を加える。これによって、たとえば、検出器を何keVもの電位にフローティングさせる必要がある場合等、電子機器は複雑とならざるを得ないため、より複雑化する可能性があり、また、高い電圧は検出器の出力に影響を与える。これまでに提案された1つの解決策は、検出器の出力を検出器、ひいては高電位から分離することであり、これは、電子増倍管検出器によって生成された電子を、シンチレータを使って光子に交換し、この光子を、光電子増倍管を使って検出することによって行われる。このような検出器の例は、米国特許第3,898,456号明細書、欧州特許出願公開第278,034 A号明細書、米国特許第5,990,483号明細書および米国特許第6,828,729号明細書に記載されている。しかしながら、このような検出器には、ダイナミックレンジが比較的狭いという問題がある。
【0005】
最適化されたイオン光子交換検出器は、F.Duboisらにより開示されており(Optimization of an Ion−to−Photon Detector for Large Molecules in Mass Spectrometry;Rapid Comm.Mass Spectrom.13: 1958−1967(1999))、その中では、シンチレータノ直前で二次電子の後段加速が使用されている。この検出器は、二次電子生成前にファラデーコレクタを用いて入射イオンビームの一部を遮断することにより、ダイナミックレンジを改善するのではなく、蛍光面の応答を調整している。したがって、この装置には依然として、ダイナミックレンジの改善の余地があり、また、シンチレーションの前にビームの一部を遮断する方法では、最終的な感度が下がる傾向がある。
【0006】
TOF型質量分析計の検出器のダイナミックレンジの問題に対して提案されている解決策には、異なる表面積の2つの集電極を使用して電子増倍管から放出される二次電子を回収すること(米国特許第4,691,160号明細書、米国特許第6,229,142号明細書、米国特許第6,756,587号明細書、米国特許第6,646,252号明細書)、および、陽極付近の電位または磁界を利用して、いわゆる陽極フラクションを変化させること(米国特許第6,646,252号明細書および米国特許出願公開第2004/0227070 A号明細書)が含められている。他の解決策では、2つ以上の別々の、完全に独立した検出システムが、入射粒子から生成された二次電子の検出に使用される(米国特許第7,265,346号明細書)。また別の解決策としては、TOF分離領域に設置された中間検出器を使用するものがあり、この検出器は最終的な電子検出器のゲインを制御するためのフィードバックを提供する(米国特許第6,674,068号明細書)。後者の検出に伴う問題は、検出器のゲインを高速で変更する必要がある点と、線形性を維持するためにゲインを追跡し続けることもまた困難である点である。米国特許出願公開第2004/0149900 A号明細書において提案されているさらに別の検出器では、ビームスプリッタを用いてイオンビームを2つの等しくない部分に分けて、これを別々の検出器で検出する。ビームスプリッタとシンチレータを使用するまた別の装置は、国際公開第2009/027252 A2号パンフレットにおいて開示されている。2つの検出器の出力を合成する方法は、国際公開第2009/027252 A2号パンフレット、米国特許出願公開第2002/0175292号明細書および米国特許第6,646,252号明細書において提案されている。全体として、これらの検出法は複雑で、実現はコスト高となる可能性があり、および/またはその感度および/またはそのダイナミックレンジは所望のレベルに至らない可能性がある。
【0007】
TOF型質量分析計における位置検出のための装置は、米国特許第5,969,361号明細書に記載されており、この装置は、燐光性発光層の中に埋め込まれた複数の電極を含み、これらの電極を使用して、検出器の上のどこに当初のイオンが衝突したかを測定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、依然として荷電粒子の検出を改良する必要がある。上記の背景を鑑み、本発明がなされた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様によれば、荷電粒子を検出する検出装置が提供され、この装置は、
入射荷電粒子を受け取ったことに応答して二次荷電粒子を発生させる二次粒子発生器と、
二次粒子発生器によって発生された二次荷電粒子を受け取り、検出する荷電粒子検出器と、
二次粒子発生器によって発生された二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生させる光子発生器と、
光子発生器によって発生された光子を検出する光子検出器と、
を含む。
【0010】
本発明の他の態様によれば、荷電粒子を検出する検出装置が提供され、この装置は、
入射荷電粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかを受け取り、検出する荷電粒子検出器と、
荷電粒子検出器によって受け取られ、検出されたものと同じ入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子の少なくとも一部を受け取ったことに応答して光子を生成する光子発生器と、
光子発生器によって発生された光子を検出する光子検出器と、
を含む。
【0011】
本発明のその他の態様によれば、荷電粒子を検出する検出装置が提供され、この装置は、
入射荷電粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかを受け取り、検出する荷電粒子検出器であって、荷電粒子に対して透明で、使用時に、前記入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子がその中を通過する電極を含む荷電粒子検出器と、
透明電極を通過した入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生させる光子発生器と、
光子発生器によって発生された光子を検出する光子検出器と、
を含む。
【0012】
本発明の別の態様によれば、荷電粒子を検出する方法が提供され、この方法は、
入射荷電粒子を受け取るステップと、
入射荷電粒子を受け取ったことに応答して二次荷電粒子を発生させるステップと、
発生された二次荷電粒子を受け取り、検出するステップと、
発生された二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生させるステップと、
発生された光子を検出するステップと、
を含む。
【0013】
本発明のさらに別の態様によれば、荷電粒子を検出する方法が提案され、この方法は、
入射荷電粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかを受け取り、検出するステップと、
受け取られ、検出されたものと同じ入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子の少なくとも一部を受け取ったことに応答して光子を発生させるステップと、
発生された光子を検出するステップと、
を含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、荷電粒子を検出する方法が提供され、この方法は、
入射荷電粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかを、荷電粒子に対して透明な電極の中を粒子に通過させることによって受け取り、検出するステップと、
透明電極を通過した入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生させるステップと、
発生された光子を検出するステップと、
を含む。
【0015】
本発明のその他の態様によれば、本発明による検出装置を含む質量分析計が提供される。
【0016】
本発明のさらに他の態様によれば、質量分析計の中でイオンを検出するための本発明による検出装置の使用が提供される。
【0017】
本発明のさらにまた他の態様によれば、TOF型質量分析計の検出ダイナミックレンジを改善する方法が提提され、この方法は、
検出装置において入射荷電粒子を受け取るステップであって、検出装置は異なるゲインの少なくとも2つの検出器を含み、その検出器の少なくとも1つは光子検出器であり、その検出器の少なくとも1つは荷電粒子検出器であるステップと、
少なくとも2つの検出器を介して入射荷電粒子を検出するステップと、
を含む。
【0018】
検出装置は好ましくは、本発明の他の態様による検出装置である。
【0019】
光子検出器は好ましくは、入射荷電粒子から、または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子から生成された光子を検出するためものである。他の検出器は好ましくは、前述のような別の光子検出器、より好ましくは、本明細書に記載の荷電粒子検出器を含む。
【0020】
本発明は、高ダイナミックレンジで、構成部品から単純で低コストに構成したものにより提供される、荷電粒子を検出する装置と方法を提供する。高ゲインおよび低ゲインの検出チャネルが、単純な構成を使って、堅牢な構成部品を使って、また高額な構成部品はあまり使用せずに、検出装置内に提供される。この装置と方法は、単一粒子計数までという、入射荷電粒子の小さな割合に反応し、すなわち、感度が高く、これはたとえば、大地電位での光子検出による高ゲイン、低ノイズという利点を有する光子検出を利用することによって実現される。この装置はさらに、出力飽和が発生するまでは、入射粒子の大きな割合を検出でき、これはたとえば、一般に光子検出器よりノイズは大きいがゲインの低い荷電粒子検出器を使用することによる。したがって、高ダイナミックレンジを実現できる。104〜105のダイナミックレンジを得ることができる。好ましくは、荷電粒子検出器と光子検出器からの出力は、合成によって高いダイナミックレンジのマススペクトルを形成するようになされている。したがって、本発明によれば、非常に小さいピークと非常に大きいピークの両方を検出するために異なるゲインでの複数のスペクトルを取得する必要がなくなるかもしれない。荷電粒子検出器は、後述のように負の入射イオンを検出する場合、高電圧から容量的に分離してもよいが、荷電粒子検出器によって検出される信号は一般に、依然としてノイズより高い良好な検出レベルを実現できる、最も強力な信号である。本発明はしたがって、2つの検出チャネルでの少なくとも2種類の検出、すなわち光子検出と荷電粒子検出を利用するものであり、各々の種類の検出器は好ましくは、異なる飽和レベルおよびその他の異なる特性を有する。本明細書において、検出器の飽和レベルとは、検出器からの出力が飽和するときの入射荷電粒子の到着速度を意味する。別の利点は、1つの検出器が実験中に動作しなくなった場合に、少なくとも一部のデータは依然として、機能している残りの検出器から取得できる可能性がある点である。本発明の装置はまた、先行技術の装置より効率的に入射荷電粒子を検出に使用でき、また、高ゲインおよび低ゲインのチャネルの両方における検出のために、同じ粒子の少なくとも一部、好ましくは実質的に全部を使用できる可能性がある。
【0021】
ここで、本発明の利点と動作を、さらに詳しく説明する。
【0022】
荷電粒子検出器は第一の検出場所に設置され、光子検出器は第二の検出場所に設置され、第二の検出場所は第一の検出場所の下流にある。順番に、二次粒子発生器の次に荷電粒子検出器があり、荷電粒子検出器の次に光子検出器がある。順番に、好ましい実施形態において、二次粒子発生器の次に荷電粒子検出器があり、荷電粒子検出器の次に光子発生器があり、光子発生器の次に光子検出器がある。
【0023】
好ましい実施形態において、荷電粒子検出器は第一の検出場所に設置され、これは実質的に光子発生器に隣接する。より好ましくは、荷電粒子検出器の電力は、実質的に光子発生器に隣接して設置される。最も好ましくは、電極は光子発生器と接触して設置される。
【0024】
荷電粒子検出器、たとえばその電極は、好ましくは、光子検出器とインラインで設置される。それゆえ、インライン配置の中で、前記構成部品は相互の上流または下流のいずれかにあるか、一体に構成される。これは、異なる検出器が横並びに設置されて、入射粒子ビームの異なる部分を検出する先行技術の横並び配置とは異なる。上記のようなインライン配置とその例を以下により詳しく説明する。
【0025】
好ましい実施形態において、光子発生器は、使用時に、荷電粒子検出器によって受け取られ、検出されたものと同じ入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子の少なくとも一部、好ましくは実質的これらの粒子を受け取ったことに応答して光子を発生させる。より好ましいほうに向かって順番に、光子発生器は、使用時に、荷電粒子検出器によって受けられ、検出された入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のうちの25%超、30%超、50%超、75%超、および90%超を受け取ったことに応答して、光子を発生させる。このようにして、光子検出器と荷電粒子検出器は、同じ入射荷電粒子、たとえばイオンの少なくとも一部を記録するように構成される。たとえば、入射荷電粒子が荷電粒子検出器によって受け取られ、検出されてもよく、これらの同じ入射荷電粒子の少なくとも一部、好ましくは、実質的にこれらの同じ入射荷電粒子が光子検出器によって受け取られて、光子が発生されてもよい。この好ましい構成は、二次荷電粒子が発生される場合にも同様に適用してもよい。たとえば、二次荷電粒子(入射荷電粒子から生成される)が荷電粒子検出器によって受け取られ、検出されてもよく、これらの同じ二次荷電粒子の少なくとも一部、好ましくはこれらの同じ二次荷電粒子の実質的に全部が光子発生器によって受け取られ、光子が発生されてもよい。このようにして、電荷粒子検出器において、光子検出器における入射荷電粒子の全体量の少なくとも一部、好ましくは、それと同じ全体量が信号の生成に使用される。これに対して、2つ以上の検出器が使用される先行技術の検出装置では、各検出器が入射イオンビームまたは二次電子の別の部分を利用して信号を発生させる傾向がある。
【0026】
好ましい実施形態において、入射粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかの大部分(より好ましくは実質的に全部)が荷電粒子検出器によって受け取られ、検出される。より好ましいほうに向かって順番に、入射粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかのうちの25%超、50%超、75%超、90%超が荷電粒子検出器によって受け取られ、検出される。さらに好ましくは、入射粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかの大部分(より好ましくは、実質的に全部)が光子発生器によって受け取られ、光子が発生される。より好ましいほうに向かって順番に、入射粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかのうちの25%超、50%超、75%超、90%超が光子発生器によって受け取られ、光子が発生される。荷電粒子検出器の電極は、好ましくはこの目的のために透明電極であり、すなわち、透明とは、十分なエネルギーを有する荷電粒子がそれを透過(すなわち、通過)できることを意味する。荷電粒子検出器の電極は、好ましくは、電子に対して透明である。しかしながら、電極は好ましくは、光子に対して透明でなく、むしろ光子に対して反射性を有する。しかしながら、いくつかの実施形態において、たとえば荷電粒子検出器の電極が光子発生器と光子検出器の間に設置される場合、電極は光子に対して透明であってもよい。それゆえ、電極は光子に対して透明であっても透明でなくてもよいが、好ましくは、光子に対して透明ではない。したがって、本明細書において、荷電粒子検出器の電極に関して使用される透明という用語は、特にことわりがないかぎり、荷電粒子に対して透明であることを意味する。透明電極は、そこを通過する荷電粒子をピックアップして、たとえば荷電粒子がデジタルオシロスコープまたはデジタイザ(すなわち、ADC)等の電荷計または電流計を使って検出されるようにする。したがって、荷電粒子検出器は、好ましくは、入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかが通過する透明電極と、使用時に、透明電極を通過した入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子から光子を発生させる光子発生器を含む。さらにより好ましくは、発生された光子の大部分(より好ましくは、実質的に全部)が光子検出器によって検出される。特に好ましい実施形態において、荷電粒子検出器の1つの電極が、入射粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかの大部分(より好ましくは実質的に全部)を受け取り、および/または1つの光子検出器(より好ましくは、1つのPMTまたはAPD)が、発生された光子の大部分(より好ましくは実質的に全部)を検出する。有利な態様として、このような実施形態によって、2種類の検出、すなわち荷電粒子検出と光子検出を使用でき、これはダイナミックレンジの点で有利であり、その中では、各種類の検出で利用可能な粒子の大部分が利用されるため、検出感度が高くなる。4から5桁のダイナミックレンジが実証されている。これらの利点のすべてが、個別の検出器を少ない数しか使用しない(たとえば、1つの荷電粒子検出器と1つの項検出器)、単純で低コストの装置において提供される。
【0027】
本発明の装置は、荷電粒子検出するためのものである。検出対象の荷電粒子は、検出用の装置で受け取られ、したがって、本明細書においては、入射荷電粒子と呼ぶ。荷電粒子は、正荷電または負荷電のいずれであってもよく、すなわち、検出装置と方法は両極性である。入射荷電粒子は好ましくはイオンであり、より好ましくは、質量分析計によって処理されたイオン(すなわち、その質量荷電比、m/zによって分離されたイオン)である。イオンは、無機イオンでも有機イオンでもよい。しかしながら、入射荷電粒子は、他の種類の荷電粒子であってもよく、たとえば、電子顕微鏡における後方散乱電子等の電子であってもよい。
【0028】
本発明による検出装置と検出方法は、質量分析計での使用、すなわち、イオンの検出に特に適しており、したがって、それに関連して説明するが、これらは他の用途、すなわち、たとえば、粒子加速器、電子顕微鏡および電子分光法等、その他の荷電粒子測定においても有利である。
【0029】
検出対象の入射荷電粒子は、それ自体が光子発生器に直接衝突し、光子が発生され、この光子がその後、光子検出器によって検出される。あるいは、好ましい実施形態において、入射荷電粒子はまず、二次荷電粒子、より好ましくは電子を発生させるために使用される。このようなステップは、好ましくは、入射粒子の数を増倍して、より多くの二次荷電粒子を発生させる。二次荷電粒子を発生させるステップは1つまたは複数あってもよく、たとえば、二次荷電粒子は、今度は、次の二次荷電粒子を生成するために使用されてもよく、これが繰り返される。光子発生器に衝突するように入射荷電粒子から生成されたすべての荷電粒子を、本明細書においては、二次荷電粒子と呼ぶ。
【0030】
前述のように、光子発生器は、入射荷電粒子を直接受け取って、その直接衝突から光子を発生させてもよい。あるいは、好ましい実施形態において、光子発生器は、入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子を受け取るように構成される。使用時に光子発生器によって受け取られる粒子は、好ましくは電子である。したがって、好ましくは、入射荷電粒子または二次荷電粒子のいずれかは電子である。入射荷電粒子が電子でない場合、たとえば、入射荷電粒子がイオンである好ましい実施形態の場合は、すると、入射荷電粒子からは、好ましくは、二次電子の形態の二次荷電粒子が生成される。したがって、二次荷電粒子は好ましくは、二次電子である。
【0031】
二次荷電粒子は好ましくは、入射荷電粒子から、二次粒子発生器によって生成される。本明細書において、二次粒子発生器という用語は、発生器に衝突した入射荷電粒子に応答して二次荷電粒子を発生させる、あらゆる機器を意味する。好ましい二次粒子発生器は二次電子発生器であり、これは、入射荷電粒子による衝突に応答して二次電子を発生させる。本明細書において、二次電子発生器という用語は、発生器に衝突した入射荷電粒子に応答して二次電子を発生させる、あらゆる機器を意味する。好ましくは、二次電子発生器は、変換ダイノードまたは二次電子増倍管(SEM)からなる群から選択される機器を含む。SEMは、ディスクリートダイノードSMEでも連続ダイノードSEMでもよい。連続ダイノードSEMは、チャネル電子増倍管(CEM)または、より好ましくは、マイクロチャネルプレート(MCP)を含んでいてもよい。MCPは、周知のように、2つ以上のMCPを重ねたものを含んでいてもよい。二次電子発生器は、最も好ましくは、ディスクリートダイノードSEMまたはMCPのいずれかを含む。質量分析計用の市販の二次電子発生器の数多くの例が当業界において知られている。たとえば、適当な電子増倍管は、浜松ホトニクス株式会社から入手可能であり、たとえばR5150−10、R2362、R595、R596、R515およびR474等のEMモデルおよび、F9890−13、F9890−14、F9892−13およびF9892−14等のMCPモデルのほか、Burle、Photonisその他から入手可能なものがある。当然のことながら、市販のSEM、たとえば上記のモデルは一般に、たとえば陽極がある場合はこれを除去すること等の改変を加えて、SEMから発生された電子を光子発生器で受け取ることができるようにする必要がある。改変後、たとえばダイノードまたはMCPプレートを使用できる。一部の機器は改変せずに使用でき、たとえば陽極がない状態で供給されるもの、たとえばPhotonisのチャネルトロンCEM4504SL等がある。本発明により2種類の検出器を使用することと、その結果として実現可能な感度とダイナミックレンジによって、SEM等の二次粒子発生器は、有利な点として、たとえばTOF型質量分析の用途で使用される従来の増倍管と比較して、比較的低いゲインで動作させてもよい。より低いゲインでの使用の結果、より飽和限度が低くなり、すなわち、大きなピークの後に小さなピークが隠れてしまうことが少なくなる。
【0032】
入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子を受け取り、検出するための1つまたは複数の荷電粒子検出器が、本発明により使用される。好ましくは、特に質量分析の用途のために、荷電粒子検出器は、入射荷電粒子(最も好ましくはイオン)から生成された二次荷電粒子(最も好ましくは電子)を検出する。単純さとコストの点で好ましい実施形態においては、1つの荷電粒子検出器が使用される。光子検出器に関連して、1つの荷電粒子検出器で十分に広い検出ダイナミックレンジの高速応答検出装置を提供できることがわかった。
【0033】
入射荷電粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかを受け取り、検出するステップは、好ましくは、電極を使って荷電粒子の通過をピックアップするステップを含む。荷電粒子の通過は、電極から直接ピックアップしても(すなわち、入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子が衝突する電極である)、または電極によって誘起される、たとえば別の電極(たとえば、検出またはコンデンサ極板)上のイメージチャージを介して、または誘導結合を介してピックアップしてもよい。正電荷を持つ入射イオンの場合、以下により詳細に説明するように、電荷は電極から直接、容量的に、または誘導的にピックアップしてもよい。イメージチャージ検出を利用する装置は、正および負電荷を持つ入射イオンの両方の通過を検出するために使用してもよいが、一般には、負電荷を持つ入射イオンの検出に使用され、これについては後で詳しく説明する。電荷はまた、電極から誘導的に検出してもよく、たとえば、コイルまたはコイルペアで検出電極をデジタイザに結合する。それゆえ、電極は、容量的または誘導的にデジタイザに結合してもよい。荷電粒子の通過のピックアップが、必要に応じて、電極から電荷の直接ピックアップ(たとえば、正電荷を持つ入射イオンのため)と、容量的または誘導的結合を通じた電荷のピックアップ(たとえば、負電荷を持つ入射イオンのため)を切り替えられるような装置を使用してもよい。これは、その装置を入射イオンのための両極性検出器として使用できる1つの方法である。好ましくは、両極性検出器として使用した場合、電荷は、容量的または誘導的結合を使用すれば最も容易にピックアップされる。荷電粒子検出器はそれゆえ、好ましくは、入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子を受け取るための電極、すなわち検出電極を含む。電極が入射荷電粒子を受け取るためのものであり、入射荷電粒子がイオンである場合、電極は、それぞれ負電荷を持つイオンまたは正電荷を持つイオンを受け取るための陽極または陰極のいずれかであってよい。電極は好ましくは、入射電極粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかとして電子を受け取るためのものであり、したがって、電極は好ましくは、電子を受け取るための陽極である。
【0034】
荷電粒子検出器の電極は、好ましくは透明電極であり、すなわち、透明とは、十分なエネルギーの荷電粒子がそれを透過(すなわち、通過)できることを意味する。荷電粒子検出器の電極は、好ましくは電子に対して透明である。しかしながら、電極は好ましくは、光子に対しては透明でなく、むしろ光子に対して反射性を有する。したがって、本明細書において荷電粒子検出器に関連して使用される透明という用語は、荷電粒子に対して透明であることを意味する。電極は、光子に対しては透明でも透明でなくてもよいが、好ましくは、光子に対して透明ではない。
【0035】
好ましいタイプの実施形態において、電極は、光子発生器に関連付けられた(すなわち、それに密接に近接した、好ましくは実質的にそれに隣接した)、より好ましくは、それと接触した導電性材料を含み、あるいは、光子検出器そのものが導電性材料を含み、この場合、光子発生器は電極を含んでいてもよい。たとえば、光子検出器は、導電性ポリマシンチレータ(すなわち、1つまたは複数の蛍光体(fluor)がその中に分散されている)を含んでいてもよく、電荷は、シンチレータの体積から検出してもよい。好ましい例において、電極は、光子検出器に隣接する導電層または被膜の形態の導電性材料を含み、本明細書においては、これを導電層と呼ぶ。好ましくは、導電層は光子発生器の上、すなわち、光子検出器の、入射電荷粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子が最初に衝突する面(本明細書において、衝突面という)に設けられる。しかしながら、いくつかの実施形態において、導電層を、光子発生器の非衝突面に設けることも可能であるかもしれない(このような実施形態の導電層は、好ましくは、発生された光子に対して透明である)。導電層は、好ましくは、金属、たとえばアルミニウム、ニッケルまたは金の層である。適当な導電性シリコン層もまた使用してよい。光子に対して透明な導電層が必要な場合、光学的に透明な導電材料、たとえば酸化インジウムスズ(ITO)を使用してもよい。導電層、特に金属層は、好ましくは薄く、たとえば50nmである。好ましくは、導電層、特に金属層は、厚さ5nmから500nmの範囲である。実際に、導電層、特に金属層は、好ましくは少なくとも10nmの厚さである。非常に厚さが薄いと、この層は、衝突する粒子によって損傷を受け始めるかもしれない。より好ましくは、導電層、特に金属層は、厚さ10nmから200nmの範囲であり、さらにより好ましくは、厚さ30nmから100nmであり、最も好ましくは、厚さ約50nmである。層が厚いほど、それを透過するのに必要なエネルギーは大きくなる。厚さが50nm以上である場合、その金属層を効率的に透過するためには一般に、約2keV以上の運動エネルギーを有する電子が必要となる。導電層の材料と厚さは、好ましくは、(導電層が光子検出器の衝突面にあるような好ましい場合に)荷電粒子が光子発生器を透過できるように選択され、すなわち、導電層は好ましくは、受け取り、検出すべき荷電粒子(一般に、二次電子)に対して透明である。導電層を光子発生器にコーティングする方法は、当業界で知られている。たとえば、シンチレータを金属の薄い層で被覆する方法は、当業界で知られている。導電層は、好ましくは、光子発生器の、入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子が入射する面、すなわち衝突面に設置される。このようにして、有利な点として、導電層、特に金属層は、発生された光子を光子検出器へと向けることができ、光子検出器は一般に、光子発生器の、入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子が入射する面とは反対の面にある。発生された光子を方向付けるために、金属層は好ましくは、光子発生器によって発生される光子の波長に対する反射面を有する。さらに、金属被膜の使用は、光子発生器を保護し、電荷の生成を低減させるのに役立つ。あるいは、電極は、光子発生器のマトリクス材料として導電性材料(たとえば、導電性ポリマ)を含んでいてもよい。導電層または導電性材料を電極として、好ましくは光子発生器に関連付けて、またはそれと接触して使用することにより、有利な点として、好ましくは、荷電粒子検出器によって受け取られ、検出されたものと実質的に同じ入射電荷粒子または入射電化粒子から生成された二次電荷粒子もまた、光子発生器から光子を発生させるために使用することも可能となる。電極と光子発生器の、入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成される二次荷電粒子に提供されるそれぞれの表面積は、好ましくは、実質的に相互に相応である。電極の表面積は、より好ましくは、光子発生器の表面積と少なくとも同じ大きさであり、また、いくつかの場合では、それより大きくてもよい。電極の表面積は、好ましくは、入射粒子か入射荷電粒子から生成される二次荷電粒子のいずれかの大部分(より好ましくは、実質的に全部)を受け取るのに十分な大きさである。同様に、光子発生器の表面積は、好ましくは、光子を発生させるために入射粒子か入射荷電粒子から生成される二次荷電粒子のいずれかの大部分(より好ましくは実質的に全部)を受け取るのに十分な大きさである。
【0036】
電荷検出器の電極は、単独の一体的な電極でも、たとえば相互に絶縁された複数の個別の電極でもよい。複数の個別の電極が使用される場合、それぞれの電極からの信号は、合成しても、または別々に処理してもよい。
【0037】
荷電粒子検出器の電極は、好ましくは、電荷計または電流器に接続されている。高速電荷計は周知であり、本発明にとって好ましく、例えば、増幅器を備えるオシロスコープまたはデジタイザ(すなわち、アナログデジタル変換器(ADC))がある。好ましい実施形態において、電荷計は、本明細書に記載されているように、光子発生器の上の導電層での電荷の変化を検出するためのものである。電荷または電流のいずれも、荷電粒子検出器の電極で直接検出できる。その代わりに、またはそれに加えて、容量的結合またはイメージチャージ検出を利用してもよく、その場合は、荷電粒子検出器がイメージチャージ電極(たとえば、検出プレート)をさらに含み、これは荷電粒子検出器の電極の付近に設置されるか、これと容量的に結合され、電極によってイメージチャージ電極内に誘起されたイメージチャージが検出される。電荷はまた、電極から誘導的に検出されてもよく、たとえばコイルまたはコイルペアによって検出電極がデジタイザに結合される。それゆえ、電極は、容量的または誘導的にデジタイザに結合してもよい。
【0038】
光子発生器上の導電層の形態の電極の代わりに、またはこれに加えて、電極は、二次電子発生器が使用される場合、二次電子発生器(たとえばSEM)の陽極またはダイノードを含んでいてもよい。このような実施形態において、電極は、二次電子発生器の中で発生された二次電子を検出する。このような場合、電極は、ダイノードまたは透明陽極であってもよい。このような実施形態において、二次電子発生器は、好ましくは、変換ダイノード、ディスクリートダイノードSEMおよび連続ダイノードSEM(好ましくは、マイクロチャネルプレート(MCP))からなる二次電子発生器の群の中から選択される。このような実施形態において、二次電子は、たとえば、電流または電圧を二次電子発生器(たとえばSEM、MCP等)、たとえばダイノードの1つに供給する電源からの電流によって検出してもよい。
【0039】
荷電粒子検出器の電極は、好ましくは、たとえば質量分析計、特に一般に10-4から10-12mbarとされてもよいTOF型質量分析計の内部に見られるような真空環境に設置される。
【0040】
本発明により、異なる種類の検出器を使用することによって、好ましくは、好ましくはシンチレータ上の金属層上の電荷の検出により、シンチレータと関連付けられた電極上での電荷または電流を検出すること(またはイメージチャージ電極上のイメージチャージを検出すること)を利用することによって、高ダイナミックレンジが実現される。
【0041】
光子発生器は、荷電粒子の衝突から光子を発生させることができる、どのような材料であってもよい。1つまたは複数の光子発生器を使用してもよい。光子発生器は、好ましくは、シンチレータであってもよい。基板上のシンチレータの被膜(たとえば、スクリーン)が好ましい構成である。適当なシンチレータは当業界で知られている。2つ以上のシンチレータを使用してもよく、これは、同じであっても異なっていてもよい。シンチレータは、結晶シンチレータでも非結晶シンチレータでもよい。シンチレータは、結晶の形態または液体または溶液の形態の有機シンチレータを含んでいてもよい。シンチレータは、無機シンチレータ、たとえば無機結晶シンチレータを含んでいてもよい。シンチレータは、プラスチックシンチレータ(すなわち、ポリマ内に溶解された有機または無機シンチレータ(蛍光体))であってもよく、これは、シンチレータの成形の点から好ましいかもしれない。適当な市販のシンチレータが利用できる。たとえば、蛍光減衰時間が約0.6ns未満のシンチレータとしては、Yb:YAPとYb:LuAGがあり、蛍光減衰時間が約0.5ns未満のシンチレータとしては、Yb:Lu3Al6O12、CsF、BaLu2F8、BaF2、ZnOおよび(n−C6H13NH3)2PbI4がある。複合酸化物結晶シンチレータには、セリウム添加珪酸ガドリニウム(Gd2SiO5(Ce)またはGSO)、ゲルマニウム酸ビスマス(Bi4Ge3O12またはBGO)、タングステン酸カドミウム(CdWO4またはCWO)、タングステン酸鉛(PbWO4またはPWO)、およびタングステン酸ビスマスナトリウム(NaBi(WO4)2またはNBWO)がある。アルカリハライドシンチレータ結晶には、タリウム添加ヨウ化ナトリウムNaI(Tl)、タリウム添加ヨウ化セシウム結晶CsI(Tl)およびナトリウム添加ヨウ化セシウムCsI(Na)がある。その他のシンチレータとしては、セレン化亜鉛ZnSe(Te)がある。プラスチックシンチレータは一般に、ポリマから(たとえば、スチレン、アクリル系および/またはビニルトエンモノマを使用して)製作され、その中にシンチレート用蛍光体が溶解されており、そのうちの最も一般的なものがp−テルフェニル、PPO、a−NPOおよびPBDである。適当な市販の高速プラスチックシンチレータ製品は、BC−422Q(Saint Gobainより入手可能)である。いくつかの実施形態において、導電性ポリマを使用してもよく、これは装置の電荷検出器の電極として機能してもよい。シンチレータは、好ましくは、基板上の蛍光物質、たとえば蛍光スクリーン等の蛍光物質被膜を含む。蛍光物質の好ましい種類は、イットリウムアルミニウムガーネットまたはセリウム活性化ペロブスカイト、より好ましくはYAP:CeまたはYAG:Ce(Y3Al5O12:Ce)またはその他である。好ましい市販の例としては、El−Mul E36がある。その他の蛍光物質には、Lu2SiO5:Ce、YAl3:CeおよびZnO:Gaがある。基板上のこのような蛍光物質の被膜が好ましい。好ましいシンチレータは、応答時間が速く、エネルギー変換が効率的であるように選択される。
【0042】
有利な構成は、シンチレータ被膜、好ましくは蛍光スクリーンを基板上に有するものである。基板はガラス塊、たとえば石英ガラス塊またはポリマ塊であってもよい。塊は、板状またはスラブであってもよい。基板は、たとえば発生された光子を集束させるためのレンズ、好ましくはフレスネルレンズを含んでいてもよい。レンズは、好ましくは、光子を小さな直径のPMT、またはより好ましくは、APD等のフォトダイオードに集束させることができる。APDが小さいほど、応答時間が速く、したがって、レンズを使用して光子をより小さな検出器に集束させることが好ましい。シンチレータは、有利な点として、いくつかの場合、すなわち基板が光子ガイドである場合、光子ガイドの上に直接コーティングしてもよい。
【0043】
有利な点として、実施形態において、シンチレータ被膜の基板は、好ましくは荷電粒子検出器が設置される好ましい真空環境と、好ましくは光子検出器が設置される好ましい大気圧環境の間のバリアまたは分離手段として機能してもよい。真空分離は、あるいは、他の構成部品、たとえばシンチレータそのものまたは光子ガイドによって提供してもよい。
【0044】
光子発生器は、好ましくは、その上に導電性材料(好ましくは層)を有し、これは入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成される二次荷電粒子に面する。導電性材料は、好ましくは、電荷粒子検出器の電極として機能してもよい前述のような導電層である。導電層はさらに、光子発生器、たとえば蛍光スクリーンを保護し、また、発生された光子を光子検出器に向かう下流への一方向に反射させるのに役立ててもよい。
【0045】
入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子は、好ましくは、これらが光子発生器または光子発生器上の導電層に衝突するときに、約2keVより大きいかそれと同等のエネルギー、より好ましくは、約5keVより大きいかそれと同等のエネルギー、最も好ましくは、約10keVより大きいかそれと同等のエネルギーを持つ。入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成される二次荷電粒子は、好ましくは、光子発生器に衝突する前に加速させ(いわゆる後段加速させ)て、光子発生の効率を改善する。光子発生器に衝突する荷電粒子の運動エネルギーが大きいほど、生成される光子の数が多くなる。たとえば、シンチレータの上に50nmの厚さの金属層が設けられたいくつかの実施形態において、衝突する電子の運動エネルギーを2keVから10keVより大きくなるまで増大させることによって、発生される光子の数を10倍以上にすることが可能となりうる。二次電子発生器の中で入射荷電粒子から二次電子が発生される好ましい実施形態において、二次電子は後段加速によって、シンチレータに衝突するために(より好ましいほうに向かって順番に)2,5または10keV以上にしてもよい。荷電粒子のこのような後段加速は、好ましくは、荷電粒子が荷電粒子検出器の電極上に衝突する前に行われる。一般に、少なくとも2段階の加速が行われる。1段階目の加速で、入射荷電粒子は、二次荷電粒子発生器(これが使用されている場合)に衝突する前(たとえば、変換ダイノード、SEM、MCP、チャネルトロン等に衝突する前)に加速される。この加速段階における重要な要素は、入射荷電粒子の全体の運動エネルギーである。この運動エネルギーは、入射荷電粒子の発生源(たとえば、イオン源)における加速から、または二次荷電粒子発生器に衝突する前の後段加速ステップから得ることができる。他の加速段階は、入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成される二次粒子が光子発生器(好ましくは、いずれかの二次粒子発生器と光子発生器の間)に衝突する前にある。入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成される二次粒子のエネルギーがより高いと、より多くの光子が生成される。さらに、小さなエネルギーで光子発生器上のいずれかの導電性金属層を透過できる。
【0046】
光子発生器の後には、好ましくは、発生された光子を光子検出器に向けて案内する光子ガイドがある。光子ガイドは、たとえば1つまたは複数の光ファイバ、1つまたは複数の導波管、1つまたは複数の反射面(たとえば、アルミニウム被覆面)を含んでいてもよく、その間に凝縮系材料(たとえば、ガラス)があってもなくてもよい。凝縮系材料が反射面の間にない場合、反射面の間には、真空または大気圧または圧縮領域があってもよい。光子ガイドは、たとえばある角度で光子を反射することによって、光子の方向を変更できてもよい。したがって、光子ガイドは、たとえば、光子をある角度で反射するためのミラーまたはプリズムの内面を含んでいてもよい。この角度は180度未満のどの角度でもよいが、一般には、90度以下の角度である。光子をある角度で方向付けることが必要なのは、たとえば、計器内の空間的制約から、構成部品の線形またはインライン式のレイアウトを収容することが難しいからである。光子ガイドの使用により、光子検出器への効率的な光子の伝達に加えて、高電圧で動作可能な二次粒子発生器を利用する、本発明の好ましい実施形態において、電圧分離が可能となりうる。2つ以上の光子ガイドを使用してもよく、これは光子を1つの光子検出器または別の光子検出器に伝達してもよく、すなわち、光子ガイドは光子を2つ以上の部分に分割し(たとえば、分割導波管)、各部分が別の光子検出器によって検出されるようにしてもよい。いくつかの実施形態において、光子発生器そのものを、光子を光子検出器に向ける案内手段となるように形成してもよい。
【0047】
光子検出器は、光子発生器によって発生された光子を検出するために使用される。1つまたは複数の光子検出器を使用してもよい。適当な光子検出器は、以下の種類の少なくとも1つであってもよい。(i)検出器が光子を受け取ったことに応答して発生される電子からの出力信号を生成する光子検出器であり、選択的に、電子に電子増倍を行っておくことができるもの。(ii)画素からなる光学イメージングデバイスを含む光子検出器。(ii)の種類の検出器はさらに、空間情報を提供してもよく、これはたとえば、組織イメージング、表面のSecondary Ion Mass Spectrometry(SIMS)分析、MULTUM等の用途において有益かもしれない。(i)の種類の光子検出器の適当なタイプには、次のものがある。例えば、フォトダイオードまたはフォトダイオードアレイ(好ましくは、アバランシェフォトダイオード(APD)またはアバランシェフォトダイオードアレイ)、光電子増倍管(PMT)、電荷結合素子またはフォトトランジスタである。ソリッドステート光子検出器が好ましく、より好ましい光子検出器はフォトダイオード(好ましくは、アバランシェフォトダイオード(APD))、フォトダイオードアレイ(好ましくはAPDアレイ)またはPMTである。より好ましくは、光子検出器は、APDまたは光電子増倍管(PMT)を含む。1つまたは複数の光子検出器を使用してもよい。単純さとコストの点で好ましい実施形態において、1つのソリッドステート光子検出器(たとえば、APDまたはPMT)が使用される。荷電粒子検出器に関連して、1つのソリッドステート光子検出器で十分に広い検出ダイナミックレンジの高速応答検出装置を提供できることがわかっている。希望に応じて、2つ以上の光子検出器を使用してもよく、好ましくは、各々が十分な飽和レベルを有するように構成される。いくつかの好ましい実施形態において、高ダイナミックレンジの検出を行うために、異なる飽和レベルを有する光子検出器のアレイを使用する。アレイは、2つ以上の光子検出器を含んでいてもよく、たとえば、フォトダイオードのアレイまたはPMTのアレイ、またはフォトダイオードとPMTの組み合わせを含むアレイであってもよい。
【0048】
異なる種類の光子検出器を組み合わせて使用してもよく、たとえばフォトダイオードをPMTともに使用してもよい。異なる飽和レベルは、たとえば、検出器の種類の違い、それぞれの検出器のゲインの違い、検出前の光子の減衰および/またはフィルタ処理の違い等を利用することによって実現してもよい。したがって、光子フィルタまたは光子減衰器を使用してもよい。
【0049】
大きな信号と飽和の後の高速回復特性を有する光子検出器、たとえばPMTを使用することが好ましい。したがって、光子検出器の出力の電圧調整のための手段を含めることが好ましい。電圧調整および/または検出器の回復時間のほか、線形性とダイナミックレンジを改善するための適当な方法は当業界で知られており、本発明において有益であり、これはたとえば、ツェナーダイオード、コンデンサおよび/またはトランジスタを有する回路(たとえば、PMT用)を使用することによる(たとえば、米国特許第3,997,779号明細書、米国特許第5,440,115号明細書、米国特許第5,367,222号明細書および米国特許出願公開第2004/0232835 A号明細書に開示されているほか、浜松ホトニクスとETPにより供給されるPMTアセンブリに含まれる)。当然のことながら、荷電粒子検出器からの信号を、光子検出器の飽和、回復またはノイズのあらゆる期間中に使用でき、それによって、入射荷電粒子の検出が中断されないようにすることができる。
【0050】
PMTとフォトダイオードは当業界で知られており、適当なPMTとフォトダイオードは、発生される光子の特性にマッチするように選択できる。これらに使用するのに適した光電陰極材料には、周知の光電陰極材料、たとえばCs−Te、Cs−I、Sb−Cs、バイアルカリ、低暗電流バイアルカリ、Ag−O−Cs、マルチアルカリ、GaAs、InGaAsがある。市販のモデルとしては、浜松ホトニクスのPMTがあり、たとえばUBAおよびSBAタイプのPMT、たとえば、浜松ホトニクスのモデルR9880U−110、BurleのPMT、および浜松ホトニクスのS8550 Siアバランシェフォトダイオード(APD)およびその他のAPDがある。光子検出器は、真空、大気圧、または高圧環境中に設置してもよい。有利な点として、光子検出器は好ましくは、大気圧環境中に設置され、これは有効な動作のために真空が必要でないからである。光子検出器、たとえばPMTが大気圧中に設置される場合、損傷を受けた時の交換がより容易である。本発明の別の利点は、検出システムのダイナミックレンジを、電荷検出器とすることができる真空内の部品(たとえば、質量分析計の真空内)と、光子検出器とすることができる真空外の部品とで分離できることであり、本発明の装置は、真空領域と大気領域の間の信頼性の高い接合手段となるからである。このような構成によって、より敏感な部品(すなわち、予想寿命が最短の部品であり、これは一般に光子検出器である)を容易に交換できる。
【0051】
荷電粒子検出器と光子検出器は最も好ましくは、異なる飽和レベルを有する。検出器が、たとえば種類の違いによって、本来的に実質的に異なる飽和レベルを有する場合、またはより大きな飽和レベルの差が求められる場合、これらを様々な手段によって異なる飽和レベルになるように構成することができる。たとえば、検出器の各々が異なるゲインを持つようにし、またそれらに異なる減衰および/またはフィルタ等を適用してもよい。
【0052】
本発明は、荷電粒子検出の高いダイナミックレンジが必要な時に、また、たとえばTOF型質量分析計のようにこのような検出が高速で必要な場合に有益である。本発明はさらに、単一荷電粒子計数が必要な場合にも有益である。本発明は、質量分析計、たとえばTOF、四重極、またはイオントラップ型質量分析計におけるイオン検出に、たとえば有機化合物の測定、医薬品有効成分の測定、タンパク質および/またはペプチドの同定、種の遺伝子型または表現型の同定等に特に適している。本発明は、TOF型質量分析計、好ましくは多重反射TOF型質量分析計、より好ましくは、長い飛行距離を有する多重反射TOF型質量分析計におけるイオン検出に特に適している。本発明は、検出対象のピーク幅(半値全幅、すなわちFWHM)が約50nsの幅までのTOF型質量分析計で使用してもよいが、いくつかの例において、ピーク幅はもっと広くてもよい。たとえば、ピークのピーク幅は、最大約40ns、最大約30ns、および最大約20ns、一般に0.5から15nsの範囲であってもよい。好ましくは、検出対象のピークのピーク幅は、0.5ns以上、たとえば1ns以上、たとえば2ns以上、たとえば3ns以上、たとえば4ns以上、たとえば5ns以上である。好ましくは、検出対象のピークのピーク幅は一般に、12ns以下、たとえば11ns以下、たとえば10ns以下である。ピーク幅は、次の範囲、たとえば1から12ns、たとえば1から10ns、たとえば2から10ns、たとえば3から10ns、たとえば4から10ns、たとえば5から10nsである。本発明は、本願と同時係属中の英国特許出願第0909232.1号明細書および第0909233.9号明細書に記載されている質量分析計で使用してもよく、同出願の内容を引用によって本願に援用する。当然のことながら、本発明は、タンデム質量分析計(MS/MS)を含む質量分析計および多段階質量処理を行う質量分析計(MSn)の周知の構成に応用できる。このような質量分析計は、多くの異なる周知のタイプのイオン源の1つ、たとえば大気圧イオン化(API)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、MALDI等を含むレーザ脱離イオン化を利用してもよい。質量分析計は、他の分離および/または測定装置、たとえばクロマトグラフィ装置(GC、LC等)とともに使用してもよい。
【0053】
荷電粒子検出器と光子検出器は、好ましくは、各々、出力(すなわち、少なくとも1つの出力)を含む。荷電粒子検出器と光子検出器の出力は各々、電気信号の形態の出力信号を供給してもよく、その大きさは入射荷電粒子の強度を示す。
【0054】
荷電粒子検出と光子検出は、同時に、または一度に1つずつ行ってもよい。すなわち、両方の検出器が同時に収集用の信号を発生してもよく、また一度に1つの検出器だけが収集用の信号を発生してもよい。好ましくは、荷電粒子検出と光子検出は同時に行われる。
【0055】
荷電粒子検出器と光子検出器の出力は、好ましくは、各々、デジタイザ、たとえばアナログデジタル(A/D)変換器(ADC)またはデジタルストレージオシロスコープに、より好ましくは同じデジタイザの別の入力に接続される。荷電粒子検出器と光子検出器の各々からの出力信号は、それゆえ、好ましくは、デジタイザに送信され、デジタルデータが発生される。荷電粒子検出器と光子検出器からの出力信号は各々、それぞれのデジタイザに送信されてもよいが、好ましくは、これらの信号は、2つ以上の入力チャネルを有する1つのデジタイザに送信される。デジタイザは、好ましくは、たとえばTOF型質量分析計の業界で知られているような高速デジタイザである。しかしながら、より低速の用途には、より低速のデジタイザまたは電子計でも十分でありうる(たとえば、四重極またはセクタ型質量分析計等の場合)。デジタイザは、1つまたは複数のデータ出力信号、一般に、各検出器の入力信号に対して1つのデータ出力信号を供給する。
【0056】
好ましくはデジタイザからの出力としての荷電粒子検出器と光子検出器の出力は、好ましくは、たとえばデータ収集および/または処理機器、好ましくはコンピュータでデータとして収集され、保存される。好ましくは、これは、デジタイザの出力をコンピュータに接続することによって実現される。荷電粒子検出器と光子検出器から発生されたデータは、別々に収集および/または保存しても(すなわち、荷電粒子検出器からのデータが光子検出器からのデータから分離される場合)、または両方のデータセットを合成してもよい。荷電粒子検出器と光子検出器からの出力またはデータは、好ましくは、コンピュータによって合成され、入力電荷粒子の検出を示す1つの出力またはデータセットが提供される。好ましくは、荷電粒子検出器と光子検出器からのデータは、別のデータセットとして、たとえばコンピュータ内に保存され、これらは別のデータセットとして出力されても、されなくてもよいが、合成またはその他の方法で処理されて、保存および/または出力のための少なくとも1つの別のデータセット(本明細書においては、処理済みのデータセットいう)が提供される。好ましい実施形態において、コンピュータによるデータ処理には、荷電粒子検出器と光子検出器のデータを結合して、結合データセット(たえば、高ダイナミックレンジのマススペクトル)を生成することが含まれる。データ結合の好ましい方法をさらに詳細に以下に説明する。
【0057】
本明細書における出力とは、紙上のハードコピー出力または、コンピュータに接続されたビデオディスプレイユニット(VDU)上のソフトコピー出力等、あらゆる従来の出力を含んでいてもよい。
【0058】
データ収集機器は、動作時に、好ましくは、荷電粒子検出器と光子検出器の出力からのデータを収集し、保存する。収集されたデータは、たとえばデータ収集機器によって処理されてもよい。たとえば、データは、検出装置が質量分析計の一部である場合に、マススペクトル用のイオン存在量データを提供するように処理してもよい。このようなデータ処理は当業界で知られている。データは、好ましくは前記処理の後に、出力させることを選択できる。
【0059】
当然のことながら、検出器の出力からのデータを収集し、処理するコンピュータは、好ましくは、入射荷電粒子の発生源(たとえば、質量分析計)にも動作的に接続して、検出器の出力を入射荷電粒子の1つまたは複数のパラメータ、たとえば入射荷電粒子の質量と相関させることができるようにする。このようにして、たとえば、マススペクトルをコンピュータによって生成することができる。
【0060】
本発明の装置を質量分析計からの入射イオンの検出に応用して、マススペクトルを収集する中で、各種のデータ処理方法を利用してもよい。好ましい方法には以下のものがある。検出器から(たとえば、デジタイザを介して)収集されたデータは、好ましくは、コンピュータに転送される。
1.単独のデジタル化地点のすべてが転送されるフルプロファイルスペクトルとして。または、
2.所定のレベルを超える数値のピークに属する地点だけがデジタイザからコンピュータに転送される、限定的プロファイルスペクトル。このようにすると、データの転送と保存に必要な帯域幅を縮小できる。所定のレベルは、取得の長さ全体について設定し、または異なる取得セグメントについて規定し、または信号/ノイズレベルに応じて、または他のアルゴリズムを使用してオンザフライで決定することができる。または、
3.ピーク重心だけが強度情報とともにコンピュータに転送される。この場合、ピーク重心およびその他の演算は、デジタイザに搭載された計算手段で実行される。たとえば、オンボードコンピュータ、マイクロコンピュータ、FPGA等を使用できる。
【0061】
1回の実験で荷電粒子検出器と光子検出器の1つまたは複数から取得した出力またはデータは、1つまたは複数の動作パラメータの制御に使用してもよい。このような1つの実施形態において、1回の実験で荷電粒子検出器と光子検出器の1つまたは複数から取得した出力またはデータは、次の実験のための荷電粒子検出器と光子検出器の1つまたは複数のゲインの制御に使用してもよい。本明細書において、実験には、たとえばマススペクトル用として、入射イオンの存在量を記録することが含まれていてもよい。たとえば、検出器の1つまたは複数の出力が1回の実験において、データ収集および処理手段の測定により、1つまたは複数のピークにおいて飽和した場合、前記手段は、次の実験において、たとえば前記1つまたは複数のピークで、検出器の当該の1つまたは複数のゲインを下げるかもしれない(たとえば、以前のマススペクトルを使用して、強いピークがいつ到来するかを判断する)。ゲインは、数多くの方法で調整してもよく、たとえば、検出器への1つまたは複数の印加電圧を調整する、入射荷電粒子または二次荷電粒子の流れを調整する、光子検出器に当たる前の荷電粒子の集束を調整する、または検出器の温度またはその他のパラメータを調整することによって行う。
【0062】
入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成される二次荷電粒子の集束を使用して、電荷検出器の上(たとえば、金属層等、その電極の上)および/または光子検出器に衝突する前記粒子の流れを変化させることが可能である。これによって最終的に、光子の発生、したがって光子検出器の照明が変化する。集束は、適当なイオン光学系、たとえば1つまたは複数のイオンレンズ、好ましくは1つまたは複数のリング電極(より好ましくは、2つ以上のリング電極)によって実現してもよい。有利な点として、二次荷電粒子発生器(たとえばMCP)の取付手段および/または光子検出器の取付手段は、1つまたは複数のイオンレンズ、または1つまたは複数のリング電極として機能してもよく、適当な電圧を取付手段に印加することによって、適当な集束を行うために使用してもよい。
【0063】
それゆえ、特にマススペクトルのためのイオン検出という意味において、最大ゲインの検出器のゲインを以下のようにして調整することができる。
以前のスペクトルを使用して、たとえば所定の閾値の上(または下)等、強い(または弱い)ピークがいつ到達するかを判断することによる。次に、以下の方法の1つまたは複数を使用できる。
a)強い(または弱い)ピークが存在している(すなわち、検出されている)間に、最大ゲインのチャネルのゲインを調整する。強いピークの時のゲインを低下させることにより、光子検出器の寿命も延長される可能性がある。ゲインを下げた高ゲインのチャネルからのデータをこの期間中に使用でき、または、選択的に、電荷検出器からのデータをこの期間中に使用でき、それによって、ゲインがどれだけ低下されたかを知る必要がない。
b)入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子の、光子発生器に当たった数を、好ましくは以下の方法の1つまたは複数を使用して調製する(数を減らすことにより、光子発生器と光子検出器の寿命が延長される可能性がある)。
i)強い(または弱い)ピークが存在している(すなわち、検出されている)間に、光子発生器に当たる前の荷電粒子(たとえば二次電子)の集束を調整する。
ii)強い(または弱い)ピークが存在している(すなわち、検出されている)間に、入射荷電粒子源(たとえば、イオン源)からの入射荷電粒子(たとえばイオン)の数を調整する。
iii)強い(または弱い)ピークが存在している(すなわち、検出されている)間に、二次荷電粒子発生器上のゲインを調整する。
【0064】
荷電粒子検出器と光子検出器の1つまたは複数から取得した出力またはデータは、その他の動作パラメータの制御、たとえば、PMTとAPD光子検出器の温度制御のために使用してもよい。APDは特に温度に敏感であり、すなわち、ゲインが温度と共に変動する。
【0065】
本発明の異なる態様によれば、荷電粒子検出器が選択的である(すなわち、いくつかの実施形態ではなくてもよい)、上記の態様による装置と方法が提供される。それゆえ、本発明のこれらの異なる態様のいくつかの実施形態においては、荷電粒子検出器がなく、たとえば、二次電子を検出するための荷電粒子検出器がない。本発明のこれらの異なる態様において、装置または方法は、本明細書に記載される好ましさにしたがって、2つ以上の光子検出器、たとえば光子検出器を含む。2つ以上の光子検出器は、好ましくは、本明細書に記載されるように、異なる飽和レベルを有する。2つ以上の光子検出器は、同じでも違ってもよい。
【0066】
本発明をより十分に理解するために、ここで、本発明の各種の非限定的な例を、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明による荷電粒子を検出する装置の実施形態を概略的に示す。
【図2A−2D】荷電粒子を電荷検出器と光子発生器に集束させることができる、本発明による装置の一部の実施形態を概略的に示す。
【図3】本発明による別の実施形態を概略的に示す。
【図4】本発明による他の実施形態を概略的に示す。
【図5A−5J】図3の装置を使用して記録される、各種のイオン存在量のマススペクトルを示す。
【図5K】図3の装置の高ゲインチャネルの出力のグラフを示す。
【図5L】図3の装置の低ゲインチャネルの出力のグラフを示す。
【図5M】本発明による装置の2つの異なる検出チャネルからのデータを結合したものを示す。
【図6】質量分析計の一部としての、図1、図3または図4の実施形態を概略的に示す。
【図7A】本発明による装置の2つの他の実施形態を概略的に示す。
【図7B】本発明による装置の2つの他の実施形態を概略的に示す。
【図8】本発明によるシンチレータと導電被膜の構成を概略的に示す。
【図9】本発明によるシンチレータと導電被膜および、結合された高速電荷計の構成を概略的に示す。
【図10】MCPを含む、本発明の別の実施形態を概略的に示す。
【図11】光子レンズを含む、本発明のさらに別の実施形態を概略的に示す。
【図12】分割導波管を含む、本発明のさらにまた別の実施形態を概略的に示す。
【図13】分割導波管を含む、本発明のさらにまた別の実施形態を概略的に示す。
【図14】本発明による装置の各種の段階を通じた電界を概略的に示す。
【図15A】本発明において使用するための、シンチレータと導電層の別の構成を概略的に示す。
【図15B】本発明において使用するための、シンチレータと導電層の別の構成を概略的に示す。
【図16】二次電子を検出するための荷電粒子検出器がない、本発明の異なる態様による装置を概略的に示す。
【図17】電荷収集手段とデジタイザとを容量的に結合させた、本発明による荷電粒子を検出する装置の他の実施形態を概略的に示す。
【図18】電荷収集手段とデジタイザとを誘導的に結合させた、本発明による荷電粒子を検出する装置の他の実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1を参照すると、本発明による装置の第一の実施形態が概略的に示されている。装置1は、マイクロチャネルプレート(MCP)2を含み、これは二次電子発生器として機能し、MCP 2に入射する入射イオン(+イオン)から二次電子(e-)を発生させる。MCPは、浜松ホトニクスのF2222−21からその標準装備の蛍光スクリーンを外したものである。MCP 2は、真空環境、たとえば、質量分析計の真空環境内に設置される。MCP 2の、動作時に二次電子を放出する後部は、蛍光スクリーン4(モデルEi−Mui E36)の形態のシンチレータと対面しており、蛍光スクリーン4は電子の衝突に応答して、公称波長380nmの光子を発生させる。本明細書において、ある構成部品の前部または前面という用語は、入射イオンに最も近い面(すなわち、上流面)を意味し、構成部品の後部または後面は、入射イオンから最も遠い面(すなわち、下流面)を意味する。蛍光スクリーン4は、その後面が厚さ1から2mmのB270ガラスまたは石英ブロックの形態基板6によって支持され、それによって蛍光スクリーンはMCP 2と対面する。石英基板6は、380nmの光子に対して透明である。蛍光スクリーン4は、今度は、MCP 2と対面するその前面に、導電性材料、この場合、金属の薄い層8を有する。蛍光スクリーン4と金属層8の合計厚さは、約10μmである。層8は、好ましくは幾分かの導電性を有するべきであるため、金属層が理想的であり、これは、好ましくは、電子の少なくとも一部を蛍光スクリーンに伝達できるべきであり、また、理想的には、蛍光スクリーン内で発生された光子を反射するべきである。層8の他の特性としては、蛍光スクリーン上にコーティング可能であるべきであり、真空内で蒸発しない(すなわち、真空対応である)。この実施形態において、金属層8は、厚さ50nmのアルミニウム層であり、これは、二次電子が蛍光スクリーン4まで通過できるような透明性を持つのに十分な薄さである。金属層8は、蛍光スクリーンを保護し、その上に生成される電荷を拡散させるほか、光子があればそれを光子検出器へと戻すように方向付けるのに役立つ。層8はまた、本発明において、これに接続されたデジタイザ14の形態の高速電荷計のための電荷ピックアップとして機能する。デジタイザ14は、動作速度1GS/sの、2つの入力チャネル、チャネル1(Ch1)とチャネル2(Ch2)で動作するGage Cobra 2GS/sデジタイザである。入力チャネルの各々は、たとえば後述のように、Ch1を金属層8からの電荷ピックアップ用、Ch2をPMT光子検出器12用として、別の検出器をサンプリングする。したがって、Ch1は低ゲイン検出チャネルとなり、Ch2は高ゲイン検出チャネルとなる。プリアンプを、検出器8と12の各々の付近の、デジタイザ14の前の検出器8と12の各々の付近で使用してもよく、それによって、デジタイザのフルレンジを利用できるようにゲインを調整できる。MCP 2の後面と金属層8の前面の間の距離は、この実施形態においては13.5mmである。基板6は、有利な点として、MCP 2、金属層8および蛍光スクリーン4等の真空中で動作可能な構成部品が設置される真空環境7と、光子検出器とデータ処理機器が設置される大気環境9の間の分離手段として使用され、これについて以下に説明する。たとえば、基板6は真空室(図示せず)の壁10に取り付けてもよく、この真空室内には真空中で動作可能な構成部品が設置される、後述の図3から明らかとなるように、真空は、質量分析計またはその他の分析機器の真空であってもよい。蛍光スクリーン4とその基板5の下流に、光子増倍管(PMT)12の形態の光子検出器があり、これはこの実施形態において、浜松ホトニクスのモデル番号R9880U−110である。基板6の後面は、PMT 12の前面から5mmの距離だけ離れている。PMT 12の出力信号は、デジタイザ14の第2のチャネル(Ch2)の入力に供給され、それによって、このチャネルは装置の高ゲイン検出チャネルとなる。デジタイザのチャネルCh2とCh2の出力(それぞれ、検出チャネルCh1とCh2の入力から生成されるデジタル信号からなる)は、ユニット15(Dell Precision T7400)のコンピュータに供給されて、ここでデータ保存および/または処理が行われる。ユニット15はまた、MCP 2とPMT 12のための電圧源を含む。ユニット15のコンピュータはVDUスクリーン17に接続され、ここで、取得され、および/または処理されたデータがグラフィック表示される。いくつかの実施形態において、ユニット15のコンピュータはまた、適当なコントローラを介して接続されてもよく、これによってユニット内のMCP 2とPMT 12のための電圧源を制御して、たとえばこれらのゲインを個別に制御する。回路内の補助的および中間的デバイスは、電源、アンプ等を含め、当業者にとって明らかであるため、簡略化のために図1には示されていない。ユニット15のコンピュータはまた、選択肢として、入射イオン源、たとえば質量分析計のコントローラに接続してもよく(接続は図示せず)、それによって、入射イオンの電流のほか、イオンのエネルギーを制御することができる。当然のことながら、ユニット15のコンピュータは、システム内の他のいずれの構成部品にも動作的に接続してよく、それによって、そのような構成部品、たとえば電圧制御を必要とする構成部品を制御する。
【0069】
動作時に、入射イオン、この例では正電荷を持つイオン(すなわち、装置は正イオン検出モードである)がMCP 2に入射する。しかしながら、当然のことながら、各種の構成部品に異なる電圧を使用することにより、装置は、負電荷を持つ入射イオンを検出するようにセットアップしてもよい。一般的な用途、たとえばTOF型質量分析において、入射イオンは、時間に応じたイオンビームの形態で到達し、すなわち、イオン電流は時間とともに変化する。MCP 2の前(または入射)面を−5kVの負電圧でバイアスして、正電荷を有する入射イオンを加速させる。MCP 2の後面は、−3.7kVの、より小さな負電圧でバイアスし、それによって、MCPの前後の電位差(PD)を1.3kVとしている。MCP 2によって生成された二次電子(e-)は、MCPの後面から放出される。MCP 2の電子イオン交換率は約1000であり、すなわち、各入射イオンは平均で約1000個の二次電子を生成する。この例におけるような正イオン検出の場合、金属層8は大地電位に保持され、それによって、MCP 2と層8の間のPDは3.7kVとなる。二次電子がそこに衝突してその中を移動する際に誘導される金属層における電荷の変化は、入力Ch1を介してデジタイザ14によってピックアップされ、デジタイザ14は、今度は、それぞれのデジタル出力電気信号を生成する。デジタイザの出力信号は、ユニット15のコンピュータに供給され、そこでデータとして保存される。本発明の装置によって、MCP 2に入る入射イオンビームの実質的に全部を二次電子の生成に利用でき、MCP 2からの二次電子の実質的に全部の通過を、金属層8、ひいては関連するデジタイザ14によってピックアップできる。二次電子は、金属層8を通過して蛍光スクリーンに衝突するのに十分なエネルギーを有し、光子を生成し、光子は、今度は、金属層8からの反射の援助を受けて下流に移動して、PMT 12によって検出される。本発明の装置によって、MCP 2からの二次電子の実質的に全部を、蛍光スクリーン4からの光子の生成に使用することができる。その後、光子の実施的に全部がPMT 12によって検出されてもよい。PMT 12からの出力信号は、デジタイザ14の入力Ch2に供給され、デジタイザ14は、今度は、それぞれのデジタル出力電気信号を生成する。Ch1とCh2からのデジタイザ出力信号は、ユニット15のコンピュータに供給され、コンピュータはこれらをデータとして保存し、データ処理および/またはデータ出力を実行する。本発明はそれゆえ、有利な点として、イオンまたは電子ビームを2つ以上の小さなフラクションに分割すること、およびフラクションを検出することに依存するのではなく、電荷として装置によって検出された同じ荷電粒子(この場合、二次電子)の少なくとも一部がまた光子も生成し、その後、この光子も検出される。その結果、より効率的に荷電粒子を使用し、感度の高い検出を行うことができる。
【0070】
1つの特定のデータ処理モードにおいて、ユニット15のコンピュータは、デジタイザの低ゲインのCh1と高ゲインのCh2のチャネルからのデジタル出力信号の各々を合成して、両方のチャネルの全体の信号を表す1つの信号を供給する。好ましいデータ処理モードにおいて、ユニット15のコンピュータは、デジタイザの低ゲインのCh1と高ゲインのCh2のチャネルからのデジタル出力信号の各々を結合し、最終出力のために使用される信号が、高ゲインのチャネルからの信号が飽和したデータポイントを除き、高ゲインのチャネルからのものとなるようにし、その地点では、飽和していない、低いほうのゲインのチャネルからの信号を使うが、これを高いほうのゲインのチャネルのスケールに適合するようにスケーリングする(たとえば、低ゲインの信号は、高ゲインのチャネルが、ある数の入射イオンについて低ゲインのチャネルよりx倍大きい信号を供給する場合、すなわち、xが低ゲインのチャネルに対する高ゲインのチャネルの倍率である時に、係数xでスケーリングする、すなわち係数xを掛ける)。他のデータ処理モードも、2つの入力チャネルからのデータ処理に関して知られており、当業者にとっては明らかであろう。
【0071】
本発明のまた他の態様によれば、有利な点として、入射荷電粒子の高ダイナミックレンジのマススペクトルを記録する方法が提供され、この方法は、
比較的低いゲインの検出器において直接または間接に入射荷電粒子を検出し、前記比較的低いゲインの検出器からの低ゲイン出力を発生させるステップと、
比較的高いゲインの検出器において直接または間接に入射荷電粒子を検出し、前記比較的高いゲインの検出器からの高ゲイン出力を発生さるステップと、
低ゲイン出力と光ゲイン出力を合成して、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するステップと、
を含む。
【0072】
この方法は、好ましくは、比較的低いゲインの検出器において直接または間接に検出されたものと同じ入射荷電粒子の少なくとも一部を、比較的高いゲインの検出器において直接または間接に検出するステップを含む。より好ましくは、比較的低いゲインの検出器において直接または間接に検出されたものと同じ入射荷電粒子の少なくとも30%、少なくとも50%、または少なくとも75%が、比較的高いゲインの検出器において直接または間接に検出される。
【0073】
その他のデータ処理ステップ、たとえば、データフィルタ処理ステップを、必要に応じて、当業界において知られているように実行してから、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成してもよい。比較的低いゲインの検出器は、好ましくは、本明細書に記載されるように、荷電粒子検出器である。比較的高いゲインの検出器は、好ましくは、本明細書に記載されているように、光子検出器である。荷電粒子検出器と光子検出器は、より好ましくは、本発明の他の態様による検出装置の一部である。低ゲイン出力と高ゲイン出力を合成して、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するステップは、好ましくは、高ゲイン出力を使用して、マススペクトルの中の高ゲイン出力が飽和していないデータポイントについての高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成し、低ゲイン出力を使用して、マススペクトルの中の、高ゲイン出力が飽和するデータポイントについての高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するステップを含む。マススペクトルのうち、低ゲイン出力を使用して、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するデータポイントについて、低ゲイン出力は好ましくは、比較的高いゲインの検出器と比較的低いゲインの検出器の倍率によってスケーリングし、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成する。
【0074】
本明細書において、マススペクトルという用語は、その範囲の中に、m/z以外であるが、m/zに関するドメイン、たとえば、TOF型質量分析計等の場合の時間ドメイン、周波数ドメイン等を有する他のすべてのスペクトルを含む。
【0075】
図1に示される装置の好ましい実施形態において、集束を用いて、荷電粒子(入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれか)を電荷検出器および/または光子発生器に集束させてもよい。図1を参照すると、このような集束は、好ましくは、MCP 2の後面と蛍光スクリーン4の上の金属層8の間で実行される。このような集束は、イオン光学系により実現され、このイオン光学系は、有利な点として、MCP 2の取付手段または外枠によって提供されてもよい。このような実施形態は、図2Aに概略的に示されており、この図は、MCP 2の後面と、MCP 2に対面する金属層8をその上に有する蛍光スクリーン4を示している。MCP 2と金属層8の間に、イオン光学リング電極3aと3bがあり、これらは実際には、MCP 2の外枠の別々の部品とすることができる。あるいは、リング電極3aと3bは、独立した構成要素とすることができる(すなわち、MCPの外枠またはその外枠や取付手段の一部ではない)。リング電極3aと3bに電圧が印加され、粒子が集束される。リング電極3aと3bには、集束させる必要性に応じて、独立して電圧が印加されてもよく(すなわち、相互から独立して、またMCP 2から独立して)、または、有利な点として、同じ電圧を印加してもよい。リング電極3aと3bに印加される電圧は、MCP 2からの二次電子を、これらがリング電極3aと3bを通って金属層8へと移動する際に、適当に集束させるように選択してもよい。リング電極3aと3bへの電圧を調整することによって、金属層8の異なる領域が二次電子によって照明されるように、および/または金属層8において異なる二次電子流が受け取られるように集束を変化させることができる。いくつかの実施形態において、リング電極3aと3bへの電圧は、マススペクトルの記録中に、検出装置に入る入射イオンの質量の違いによって集束が異なるように変化させることができ、たとえば、イオン存在量の高いイオンの質量の場合(大きな検出ピーク)は集束させず、イオン存在量に関する情報は、同じスペクトルまたは以前のスペクトルのいずれから得たものでもよい。このような実施形態において、たとえば、大きいピークが出現しようとする時に、高速パルサを用いてリング3aと3bに電圧をパルス状に印加してもよい。このような動作モードは、検出器の飽和の問題を低減させるのに役立つ。さらに、光子検出器および/またはシンチレータの動作寿命は、このようにして保存されるかもしれない。図2Bから図2Dには、図2Aのセットアップの概略的な側方断面図が示され、図2Aに示される集束構造を使用して実現できる、異なる電子集束の例が描かれている。二次電子の異なる軌道が、線11によって示される。図2Bから図2Dに示されるすべての場合において、MCP 2の後面に印加される電圧は−3700Vであり、金属層8と蛍光面4は大地電位にある。リング電極3aと3bは一緒に同じ電圧に接続されており、この電圧は各図において以下の数値を有する。
図2B 電圧(3a,3b)=−3700V
図2C 電圧(3a,3b)=−2900V
図2D 電圧(3a,3b)=−2000V
【0076】
図2Bでは、二次電子11は、金属層8と蛍光スクリーン4の全体の領域よりずっと小さな領域に集束されている。図2Cでは、二次電子11は、金属層8と蛍光スクリーン4の領域の大部分を利用するように集束されている。図2Dでは、二次電子11は集束されず、それによって電子の一部は金属層8と蛍光スクリーン4の領域の外を通過し、たとえば、これは電子流が高いときに使用されてもよい。このようにして二次電子を集束させることはまた、電子の時間集束に影響を与えうる。時間集束は、図2Cに示される集束においてよく保存され、図2Dの場合もまた良好である。しかしながら、図2Bの場合、時間集束はあまりよくない。
【0077】
本発明による装置の別の例が図3に概略的に示されており、図中、図1と図2Aから図2Dに示されるものと同様の構成部品には同様の番号が付与されている。この装置のうち、デジタイザ14とユニット15のような特定の構成部品は、図3には示されていないが、これらは図1に示されているものと同じである。図3の装置は概ね図1に示されているものと同じであるが、相違点として、リング電極3aと3bが含められており、使用時にはそこに−2900Vの電圧が印加され、電極3aと3bは、この例においては、有利な点として、MCP 2の外枠のリングによって構成される。電極3aと3bに印加される電圧は、システムの他の電圧と同様に、ユニット15のコンピュータ(図3では示さず)によって制御される。この装置はまた、使用時に大地電位に保持されて、TOF型質量分析計のTOF領域を画定するグリッド32と、−5200Vに保持されるグリッド31も使用しており、このグリッド31は、MCP 2からの二次電子がTOF領域に入り、またグリッド32に衝突して二次イオンを発生させ、これがMCP 2に向かって移動して、ゴーストピークを生じさせるのを制限する。
【0078】
図3に示される装置の変形が図4に示され、これと図3に示される装置との相違点は、光子がミラー51によって約90度反射されて、PMT 12に到達することである。光子ビームのこのような偏向、または何らかのその他の偏向は、限られた空間、たとえば質量分析計の中に装置の構成部品のすべてを収容するために使用してもよい。
【0079】
それらの異なる検出特性によって、デジタイザの入力Ch1に接続された金属層8は、デジタイザの入力Ch2に接続されたPMT 12への、有効に異なるゲインを有する検出チャネルを構成する。金属層8は、比較的低いゲインの検出チャンネルを提供し、PMT 12は、比較的高いゲインの検出チャネルを提供する。シンチレータの上流に透明金属層を利用することによって、二次電子の実質的に全部を電荷検出と光子生成の両方に使用することが可能となり、それにより、今度は、単純で低コストの構成部品の装置において高い感度と高ダイナミックレンジが提供される。
【0080】
図3に関して上述した装置と電圧を使用して実現可能なダイナミックレンジの例を、図5Aから図5Jに関して説明する。図5Aから図5Jは、図3に示される装置を使用して記録された、ウィンドウ幅10Da(+/−5Da)の、単位電荷だけ正帯電したカフェインイオンのTOFマススペクトル(信号強度対時間(μs))を示す。図5Aと図5Bは、低いゲインの電荷検出チャネル(Ch2)(図5A)と高いゲインのPMTチャネル(Ch1)(図5B)の各々の、単一の入射イオンについて記録されたスペクトルを示し、図5Cと図5Dは、低ゲインの電荷検出チャネル(図5C)と高ゲインのPMTチャネル(図5D)の各々の、2,800個の入射イオンについて記録されたスペクトルを示し、図5Eと図Fは、低ゲインの電荷検出チャネル(図5E)と高ゲインのPMTチャネル(図5F)の各々の、10,000個の入射イオンについて記録されたスペクトルを示し、図5Gと図5Hは、低ゲインの電荷検出チャネル(図5G)と高ゲインのPMTチャネル(図5H)の各々の、50,000個の入射イオンについて記録されたスペクトルを示し、図5Iと図5Jは、低ゲインの電荷検出チャネル(図5I)と高ゲインのPMTチャネル(図5J)の各々の、100,000個の入射イオンについて記録されたスペクトルを示す。検出器は、実際には、図1、図3、図4に示される装置の場合、一般に、最適なダイナミックレンジと単一イオンの検出のために+/−200mVの入力範囲を有するデジタイザを用いて動作される。デジタイザの入力範囲が大きくなると、ベースラインのノイズが増大し、単一イオンの検出が困難となる。図5Aから図5Dのスペクトルでは、入力範囲が+/−200mVのデジタイザを使用した。しかしながら、図5Eから図5Jに示されるスペクトルでは、単にピークの大きさを示すことができるようにするために、より高い入力範囲、+/−500mVを使用した。200mV(すなわち0.2V)に示される破線の下の信号に関する灰色の領域は、+/−200mVの入力範囲を使用した場合にPMT検出器がデジタイザによってクランプされたであろう部分を示しており、200mVまでの信号に関する白い領域は、光検出器の応答が実質的に線形である領域を示している。PMTチャネルのゲインが(電荷検出チャネルと比較して)はるかに大きいことで、単一イオンに対する感度が高くなることがわかり、その一方で、イオン存在量が大きいと、PMTチャネル出力が飽和し、すなわち、デジタイザによってクランプされ、その場合は低ゲインの電荷検出チャネルから飽和していない出力が供給される。実際には、2つのチャネルの出力は一般に、合成されて、最終的なスペクトルが生成される。
【0081】
本発明で実現可能なダイナミックレンジをさらに、図5Kと図5Lに関して説明する。図5Kは、図3の装置の高ゲインのチャネル(Ch2)、すなわちPMT検出器からの出力のグラフを示す。同様に、図5Lは、低ゲインのチャネル(Ch1)、すなわち電荷検出器からの出力のグラフを示す。図5Kと図5Lのグラフは、それぞれの出力の電圧(max V)対入射イオンの数を示している。2つのグラフは、Ch1とCh2から同時に記録された実験データを示す。プロットされた入射イオンの数は、検出器に衝突した実際のイオンの数ではなく、入射イオン源としての質量分析計に供給が命じられた公称の入射イオン数である。その結果、各イオン数について、特にイオン数が少ない場合に、出力電圧の広がりが見られ、これは、MCP、蛍光スクリーンおよびPMTにおける二次粒子生成の統計的性質から、1回の実験と次の実験の間で、入射イオンの数を正確に制御できないからである。単一イオンを記録するという観点から望ましい、+/−200mV(すなわち0.2V)のデジタイザの入力範囲については、図5Kに示される高ゲインのPMTチャネルは、実際には、1個のイオンから約1000個のイオンの検出をカバーでき、その一方で、図5Lに示される低ゲインの電荷検出は、1000個のイオンから10,000〜100,000個のイオンの検出をカバーできることがわかる。したがって、2つの検出チャネルを同時に動作させた場合、104〜105のダイナミックレンジが実現可能であり、すなわちTOFマススペクトルの記録は5桁まで可能となる。この検出システムで実現可能な高い感度(単一イオンまで)により、スペクトルを累積せずに、フラグメンテーションスペクトルが得られる可能性がある。本発明の検出装置から得られたデータは、本明細書に記載するような様々な方法で処理してもよい。1つのデータ処理の方法として、異なる検出チャネルからのデータを単純に合成(結合)してもよい。2つの検出チャネルからのデータを結合する好ましい方法が図5Mに示されており、ここでは図3に示される装置で得られたデータが使用されている。図5Mは、カフェインのTOFマススペクトルの小さな選択部分を示している(強度対時間(μs))。図5Mで水平軸の下には、高いゲインのPMTチャネル(Ch2)らのデータで、モノアイソトピック質量のピーク(a1)、第一のアイソトポマ(a2)および第2のアイソトポマ(a3)のピークを示すデータと、低ゲインの電荷ピックアップチャネル(Ch1)からのデータで、同様に、モノアイソトピック質量のピーク(b1)、第一のアイソトポマ(b2)および第2のアイソトポマ(b3)のピークを示すが、b2とb3は識別が難しいデータの両方が示されている。低ゲインのチャネルの出力信号は一般に、高ゲインのチャネルに合致させるために、時間軸上でシフトされる。2つのチャネルからのデータは、ユニット15のコンピュータによって結合され、コンピュータは装置のデジタイザから取得したデータを保存し、処理する。結合された結果のデータは水平軸より上に示され、モノアイソトピック質量のピーク(c1)、第一のアイソトポマ(c2)および第2のアイソトポマ(c3)のピークが示されている。結合データは、高ゲインのPMTチャネル(Ch2)からのデータであるが、その飽和時、たとえばピークa1では、低ゲインの電荷ピックアップチャネル(Ch1)からのデータと差し替えられている。低ゲインのデータを使用する場合、これは、高ゲインのチャネルのレベルに適合するようにスケーリングされる。それゆえ、高ゲインのチャネルの出力が飽和した時(a1)、結合データには飽和が見られない(c1)。
【0082】
図6は、たとえば、図1、図3または図4に示されるような装置が、TOF型質量分析計の一部を構成する方法を概略的に示している。イオン源20、たとえばMALDIまたはESI源はイオンを生成し、このイオンはイオン光学系22を通り、イオン光学系22はイオンを集束させ、および/または加速させ、それによって、均一な運動エネルギーを有する短い持続時間のイオンパケットを生成する。このイオンパケットは次に、飛行領域24の中を移動し、この飛行領域24は1つまたは複数のイオンミラーを設けて飛行経路の長さを延ばし、イオンパケットがイオンのm/zに応じた時間で分離されるようになっていてもよい。時間分離されたイオンが飛行領域24から放出されて、図1、図3または図4に示されるような検出装置によって検出される。しかしながら、当然のことながら、原則的に、本発明に使用可能な質量分析計とイオン源のタイプは、限定されない。
【0083】
当然のことながら、図1、図3および図4に示される実施形態には、多くの変形を考案することができる。いくつかの変形例としては、次のものがある。たとえば、使用される構成部品の種類とモデルおよび動作条件等に応じて、構成部品に異なる電圧をかけてもよい。2つ以上のMCPを使用してもよく、あるいはMCPの代わりに、またはMCPに加えて、ディスクリートダイノード型のSEMを使用してもよい。異なる種類の金属層のほか、異なるシンチレータ、たとえば有機シンチレータを使用してもよい。他の装置では、高速デジタイザ14を、代わりに、金属層8に容量的または誘導的に結合して、過渡電荷だけが検出されるようにしてもよい。これは、金属層8および/または蛍光スクリーン4が大地電位にない場合に好ましい。そうしないと、検出電極8の後の回路を、その電極と同じ電圧にする必要が生じる。これは、たとば、金属層8が一般に大地電位にない、負イオン検出モードの場合にあてはまるかもしれない。多くの場合に有利となる変更は、シンチレータ基板と光子検出器の間に光子ガイドを使用して、なるべく多くの光子を検出器に効率的に導く、というものである。検出される光子の数をなるべく多くするために、複数の光子検出器、たとえば、2つ以上のPMTを使用してもよい。他の種類の光子検出器もまた使用でき、たとえば、1つまたは複数のフォトダイオードまたはフォトダイオードアレイがある。ここで、別の変形のいくつかの例を説明する。
【0084】
図7Aと図7Bを参照すると、本発明による2つの他の実施形態が概略的に示されている。これらの実施形態において、入射イオンは、TOF領域を画定する大地電位のグリッド32を通過し、その後、ディスクリートダイオード型の二次電子増倍管34に入射する。イオンはまず、高い電圧(たとえば、10kV以上)に保たれる変換ダイノード36に衝突する。変換ダイノード36は二次電子を発生させ、二次電子は次に複数のダイノード38を介した電子増倍管の中を進み、これらのダイノード38は各々漸進的に1つ前のものより大きな正電圧に保持されており、二次電子カスケードを生成する。放出された電子は、40の位置において電子増倍管34の領域から出ると、シンチレータ材料46の上にコーティングされた導電層(たとえば、薄い金属層)48に衝突する。導電層48は金属シールド42によって包囲されて、ファラデーカップのような形状とされ、これはまた、電界を、荷電粒子が望ましくない周辺領域に遊離することを防止するような形にするのに役立つ。しかしながら、シールドを設けるか否かは選択できる。シールド42を使用する代わりに、後述のような他の手段によって電界を電子増倍管34と導電層48の間の領域に限定して、粒子の遊離を防止してもよい。シールド42は金属層48と同じ電位、すなわち、正電荷を持つ入射イオンの場合は大地電位に保たれる。導電層48は十分に薄くし、電子増倍管34からのエネルギーを有する二次電子がシンチレータ46まで透過できるようにし、シンチレータ46は中実の不活性基質内に分散されたシンチレーション材料からなる。薄い導電層48は、入射二次電子によって層48で誘導された電荷の変化をピックアップするための充電電極として機能し、接続手段44によって高速デジタイザ(図示せず)の入力に接続される。シンチレータは、入射二次電子に応答して光子を生成し、光子はその後、光子ガイド50を通って移動して、光子検出器に到達し、光子検出器はまた高速デジタイザ(図示せず)の入力に接続されている。この場合の光子ガイドはガラス練板であり、その内部対面側面49はアルミニウム被覆され、光子を検出器に向かって反射する(そのうちの2つが示されている)。図7Aに示される実施形態において、光子検出器はフォトダイオード54の形態である。図7Bに示される実施形態では、2つの光子検出器が使用され、それぞれ同一のフォトダイオード54aと54bの形態である。フォトダイオード54aと54bの各々は、その前方に異なるそれぞれの光子減衰器52aと52bを有し、それによってフォトダイオードが過剰な光子衝突から保護され、および/またはフォトダイオード54aと54bが確実に異なる飽和レベルを有する。当然のことながら、減衰器を設けるか否かは選択でき、たとえば、1つのフォトダイオードだけの前方に減衰器を設けてもよい。デジタイザの出力は、接続されたコンピュータ(図示せず)によって、前述のように扱われる。
【0085】
図8を参照すると、シンチレータとこれに関連する導電層被膜のより好ましい構成が示されており、これは、本明細書に記載されているどの実施形態においても利用できる。この構成は、蛍光スクリーン64を有し、その上に厚さ50nmの薄い導電被膜62があり、蛍光スクリーン64は、石英またはガラス基板66の上にコーティングされている。導電被膜62は、高速デジタイザ(68)との直接接続部63を有する。
【0086】
図9を参照すると、図8に示されているものと同様であるが、代わりに、高速デジタイザ68が、コンデンサ極板69を介して導電被膜62に容量的に結合されている。
【0087】
図17を参照すると、実質的に図1に示されているような装置が示されているが、この図では、電荷検出電極とデジタイザが容量的に結合されており、コンデンサCが金属層8である電荷収集手段とデジタイザ14の間に接続されている。抵抗Rもまた、金属層8からの電流経路上に配置されている。
【0088】
図18を参照すると、実質的に図1に示されているような装置が示されているが、この図では、電荷検出電極とデジタイザが誘導的に結合されており、コイルペアLが金属層8である電荷収集手段とデジタイザ14の間に接続されている。抵抗Rもまた、金属層8からの電流経路上に配置されている。ペアLの二次コイルの一端はデジタイザ14に接続され、もう一端は接地されている。他の実施形態において、二次コイルのもう一端は、接地する代わりに、デジタイザに接続して、差動入力を提供するようにしてもよい。ペアLの一次コイルは、電圧源に接続して金属層8の表面を特定の電圧に設定することができる。アンプ(図示せず)をコンデンサCまたは誘導子Lとデジタイザ14の間に使用してもよい。本明細書で説明する本発明の実施形態のいずれにおいても、アンプを荷電粒子検出器の電荷収集電極とデジタイザの間に使用できることは明らかである。
【0089】
図7Aと図7Bに示される実施形態において使用されるディスクリートダイノード二次電子増倍管の代替として、連続ダイノード増倍管を使用してもよい。たとえば、図10は、図7Aと図7Bに示されるものと同様の実施形態を示しており、図中、同様の参照番号が同様の高背部品に使用されているが、MCP 41が、導電被膜電極48とシンチレータ46の上流で入射イオンから二次電子を発生するために使用されている。
【0090】
図7Bに示されるような光子検出器の前で使用される減衰器の代わりに、またはこれに加えて、光子を光子検出器の検出素子に集束させるための1つまたは複数のレンズを使用してもよい。1つまたは複数のレンズは、球面または円柱レンズであってもよい。1つまたは複数のレンズは、好ましくはフレスネルレンズである。いくつかの実施形態において、レンズは、シンチレータの基板またはその基板の一部とすることができる。1つまたは複数の円柱レンズは、選択的に1つまたは複数のフレスネルレンズとして、複数の光子検出器が使用されている場合に、光子ビームをよりよく利用し、これを光子検出器へと方向付けるために使用できる。図11は、そのような実施形態として、図7Bに示されるものと略同じものを示しているが、この図では、集束レンズ82aと82bがそれぞれ光子検出器84aと84bの前に設置されており、これらは、この実施形態においては、アバランシェフォトダイオード型のフォトダイオードである。レンズ82aと82bは、各検出器84aと84bに到達する光子の量を制御するための手段として使用してもよい。たとえば、この実施形態のレンズ82aと82bは、検出器84aと84bを異なるゲインとするための手段として異なる集束力を有するが、他の実施形態では、レンズは、必要に応じて他の手段によって同じゲインとしても、異なるゲインとしてもよい。
【0091】
図12を参照すると、図7Aと図7Bと同様であるが、光子ガイドとして複数の分割導波管70を有する他の実施形態が示されており、各導波管は、光子を光電子増倍管(PMT)74の形態のそれぞれの検出器に伝達する。分割導波管70は各々、たとえば、光ファイバケーブルまたは、光ファイバケーブルの束を含んでいてもよい。図12に示されるPMT 74の代わりに、図13に示されるようにフォトダイオード94を使用してもよく、それ以外の点では図13は図12に示されるものと同じ実施形態を示している。
【0092】
構成部品の好ましい組み合わせの例としては、下表に示されるものがある。
【0093】
【表1】
【0094】
図14を参照すると、本発明による装置の各種の段階を通じた電界が概略的に示されている。図13に示される実施形態を基準として使い、図14の上に示しており、横軸(すなわち、装置の前方から後方、すなわち図の左から右に向かって延びる)に沿ったいくつかの地点a、b、c、d、eおよびfを示す。図14には電界のトレースが2つ示されており、上のトレースは正電荷を持つ入射イオンを検出するために使用される電界、下のトレースは負電荷を持つ入射イオンを検出するために使用される電界である。留意すべき点として、図14においては絶対的なスケールが示されず、各トレースでは相対的な電圧だけが示されている。さらに、上下のトレースは相互に異なるスケールである。位置aは、本発明の検出装置に入る前の質量分析計の真空中にある入射イオンを表す。位置bは、たとえばSEMの変換ダイノードまたはMCPの前端を表し、ここでは高電圧が印加されて入射イオンが加速され、これは、正電荷を持つ入射イオンの場合は大きな負の電圧であり、負電荷を持つ入射イオンの場合は大きな正電圧である。位置cは、たとえばSEMの最後の段階またはMCPの後面を表す。位置bとcの間に正に向かう電場勾配があり、二次電子を、SEMまたはMCPを通って伝達する。位置dは、導電層の電荷ピックアップの周囲のシールドの電位を表し、位置eは導電層の電位を表す。留意する点として、前述のように、シールドを設けるか否かは選択でき、このようなシールドのない他の実施形態では、位置dとeは1つの位置(すなわち、導電層の電位)を表すことができる。dとeの位置はどちらも、有利な点として、入射イオンが正電荷を持つ時には(図14の上のトレース)大地電位に保持され、それによって二次電子がSEMまたはMCPから導電層とその背後のシンチレータに向かって加速される。しかしながら、入射イオンが負電荷を有する時には(図14の下のトレース)、位置dとeにおけるシードと導電層は必然的に高い正電圧である。シンチレータから発生される光子は電界の影響を受けず、電界のない領域を移動して、大地電位の位置fで検出される。それゆえ、光子の生成と検出によって、電子増倍管/検出器からの高電圧の分離が可能となる。
【0095】
図15Aと図15Bを参照すると、本発明で使用するためのシンチレータと導電層の他の構成が概略的に示されている。図15Aにおいて、本発明の実施形態において利用可能なシンチレータと、関連する導電層の構成が示されている。この構成は、使用時に入射イオンまたはイオンから生成された二次電子(e-)が衝突する衝突面103を有するシンチレータ104を含む。光子がシンチレータ104の中で発生され、光子に対して透明な導電層108を通る前方(破線矢印で示される)を含むすべての方向に移動して、光子検出器112に入る。シンチレータは、少なくとも部分的に、電子等の荷電粒子に対して透明であり、それによって、少なくとも一部のイオンまたは電子がシンチレータ104を通過する(すなわち、これらはシンチレータ104内の光子生成イベントで消費されていない)。導電層108はデジタイザ110に接続され、イオンまたは電子がシンチレータ104を通って導電層108に到達することによって誘起された電荷が、本明細書に記載されるように検出される。図15Bにおいて、図15Aに示される実施形態の変形が示されており、図中、導電層が2つのシンチレータの間に挟まれた状態で示されている。図15Aに示される構成部品に加えて、図15Bには、導電層108に代わる導電層118も示されており、導電層118は電子と光子の両方に対して透過である。したがって、電子は導電層118を通過して第二のシンチレータ114に到達し、電荷の通過は前述のようにデジタイザ110によりピックアップされる。次に、光子はまた第二のシンチレータ114の中でも生成される。2つのシンチレータからの光子は検出器114で検出される。
【0096】
本発明は、異なる態様において、荷電粒子検出器を用いない装置と方法が提供され、その代わりにこの装置と方法は2つ以上の光子検出器を含む。図16は、装置の中に電荷計がない、たとえば、シンチレータ上の導電被膜にデジタイザが結合されていない、そのような装置が概略的に示されている。その代わりに、この例では2つのフォトダイオード94aと94bが使用されており、これらは、それぞれフォトダイオード94aと94bの前方に配置された異なる強度の光子減衰器92aと92bによって、光子検出のゲインを変えるように構成されている。減衰器の使用以外にも、異なるゲインを持たせるためのさまざまな方法を、本明細書で説明するように使用してもよい。2つ以上の光子検出器は、同じでも異なっていてもよい。図16に示される例の代替として、当然のことながら、2つのフォトダイオードの代わりに、2つ以上のPMTを使用してもよく、または、フォトダイオードとPMTを使用してもよく、それによって、2種類の光子検出器を使用して異なるゲインとすることができる。光子検出器の多くのその他の異なる構成および/または組み合わせを、本発明のこの異なる態様で使用するために想定できる。
【0097】
たとえば、異なるゲインの2つの(またはそれ以上の)光子検出器の使用は、計器を正と負の両方の入射イオンで動作させる必要があるときに有益となりえ、それは、光子によって導電層と蛍光スクリーンと、光子検出器との間の高電圧を分離できるからである。このような装置を用いて、異なる検出構成を想定できる。たとえば、電荷検出のための容量的または誘導的に結合されたデジタイザを使用してもよく、これは多くの場合、負イオン検出モードにとって好ましいかもしれないが、それ以外の負イオン検出時は、電荷検出のための容量的または誘導的に結合されるデジタイザは不要として、その代わりに、負イオン検出モード時に、異なるゲインの2つの(またはそれ以上の)光子検出器を使用してもよい。いくつかの実施形態において、電荷検出のための直接結合されたデジタイザを正イオン検出モード時に使用し、負イオン検出モード時には、異なるゲインの2つの(またはそれ以上の)光子検出器を使用するように切り替えてもよい。
【0098】
特許請求の範囲を含む本明細書において、文脈が他の意味を示していないかぎり、本明細書における単数形の用語は複数形も含も、その逆でもあると解釈する。たとえば、文脈が他の意味を示していないかぎり、特許請求の範囲を含む本明細書の中の単数の表現、たとえば不定冠詞(“a”または“an”)(たとえば、“an electron multiplier”(電子増倍管)、“a photon detector”(光子検出器)等)は、「1つまたは複数の(“one or more”)」(たとえば、“one or more electron multiplier”(1つまたは複数の電子増倍管)、“one or more photon detectors”(1つまたは複数の光子検出器)等)を意味する。
【0099】
本明細書の説明と特許請求の範囲全体を通じて、「〜からなる」、「〜を含む」、「〜を有する」および「〜を包含する」(“comprise”、“including”、“having”および“contain”)という単語ならびにこれらの単語の変化形、たとえば現在分子(“comprising”)や三人称現在形(“comprises”)等は、「〜を含むが、これに限定されない(“including but not limited to”)」ことを意味し、他の構成要素を排除しようとするものではない(排除しない)。
【0100】
当然のことながら、本発明の上記の実施形態の変形を考案することができ、これらもまた本発明の範囲に含まれる。本明細書で開示される各特徴は、特にことわりがないかぎり、同じ、同等の、または同様の目的を果たす代替の機能によって置き換えられてもよい。それゆえ、特にことわりがないかぎり、開示された各機能は、包括的な一連の同等または同様の機能の一例にすぎない。
【0101】
本明細書に記載されているあらゆる例、または例を挙げるための文言(「たとえば」、「等」(“for instance”、“such as”、“for example”)および同様の文言)の使用は、単に本発明をよりよく説明するためのものであり、他の請求がないかぎり、本発明の範囲に対する限定を示さない。本明細書のいかなる文言も、請求されていない要素を本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈されるべきではない。
【0102】
本明細書に記載されたステップは、特にことわりがないかぎり、または文脈が他の意味を示していないかぎり、どのような順序でも、または同時に、実行することができる。
【0103】
本明細書において開示される特徴の全部は、このような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、どのように組み合わせてもよい。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明のすべての態様に適用可能であり、どのような組み合わせで使用してもよい。同様に、不可欠でない組み合わせで記載された特徴は、別々に(組み合わせずに)使用してもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子を検出する検出装置、荷電粒子を検出する方法と、これらにおける、およびこれらに関する改良に関する。この装置と方法は、質量分析計またはその他にとって有益であり、それゆえ、本発明はさらに、質量分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子検出器は、たとえば、イオンまたは電子の検出を必要とする多くの用途で使用されている。このような用途の1つが質量分析計である。質量分析計は、荷電粒子を、その質量電荷比(m/z)に基づいて分離し、分析するために広く使用されており、何種類もの質量分析計が知られている。本発明は飛行時間(TOF)型質量分析計を念頭において設計されているが、本発明は、その他のタイプの質量分析計のほか、荷電粒子の検出を必要とする質量分析計以外の用途、たとえば電子顕微鏡にも応用できる。
【0003】
飛行時間(TOF)型質量分析計は、荷電粒子の質量電荷比(m/z)を、決まった経路に沿ったその飛行時間に基づいて測定する。荷電粒子、通常、イオンは、パルス式の発生源から、短いイオンパケットまたはバンチの形で放出され、所定の飛行経路に沿って、真空領域を通ってイオン検出器へと向けられる。発生源から一定の運動エネルギーで放出されたイオンは、ある時間後に検出器に到達するが、この時間はイオンの質量に依存し、質量が大きいイオンほど遅い。TOF型質量分析計には、他の特性の中でも、速い応答速度と高ダイナミックレンジを有する、すなわち、小型と大型の両方のイオン電流を検出できる能力を備え、その両者を素早く切り替える機能も含み、また、好ましくは、検出器の出力飽和等の問題を起こさないようなイオン検出器が必要となる。このような検出器は、コストを下げ、操作上の問題を減らすために、不当に複雑であるべきではない。
【0004】
TOF型質量分析計のための従来のイオン検出器は、二次電子増倍管、たとえば、ディスクリートまたは連続ダイノード電子増倍管(たとえば、マイクロチャネルプレート(MCP))を含む。たとえば高分子化合物の検出を必要とする、多くのTOF方式の用途において、検出されるイオンの運動エネルギーを高くして、イオンを効率的に二次イオンと電子に交換できるようにする必要があり、これらの二次イオンと電子はさらに増倍し、検出することができる。TOF型質量分析計で検出するための高い運動エネルギーを持つイオンを生成するには、主として2つの方法がある。(i)検出器において、イオンを加速させ、高い運動エネルギーを持たせる(たとえば、検出器に10〜20keV等の高い電圧を印加することによる)、および(ii)検出前にイオンに後段加速を加える。これによって、たとえば、検出器を何keVもの電位にフローティングさせる必要がある場合等、電子機器は複雑とならざるを得ないため、より複雑化する可能性があり、また、高い電圧は検出器の出力に影響を与える。これまでに提案された1つの解決策は、検出器の出力を検出器、ひいては高電位から分離することであり、これは、電子増倍管検出器によって生成された電子を、シンチレータを使って光子に交換し、この光子を、光電子増倍管を使って検出することによって行われる。このような検出器の例は、米国特許第3,898,456号明細書、欧州特許出願公開第278,034 A号明細書、米国特許第5,990,483号明細書および米国特許第6,828,729号明細書に記載されている。しかしながら、このような検出器には、ダイナミックレンジが比較的狭いという問題がある。
【0005】
最適化されたイオン光子交換検出器は、F.Duboisらにより開示されており(Optimization of an Ion−to−Photon Detector for Large Molecules in Mass Spectrometry;Rapid Comm.Mass Spectrom.13: 1958−1967(1999))、その中では、シンチレータノ直前で二次電子の後段加速が使用されている。この検出器は、二次電子生成前にファラデーコレクタを用いて入射イオンビームの一部を遮断することにより、ダイナミックレンジを改善するのではなく、蛍光面の応答を調整している。したがって、この装置には依然として、ダイナミックレンジの改善の余地があり、また、シンチレーションの前にビームの一部を遮断する方法では、最終的な感度が下がる傾向がある。
【0006】
TOF型質量分析計の検出器のダイナミックレンジの問題に対して提案されている解決策には、異なる表面積の2つの集電極を使用して電子増倍管から放出される二次電子を回収すること(米国特許第4,691,160号明細書、米国特許第6,229,142号明細書、米国特許第6,756,587号明細書、米国特許第6,646,252号明細書)、および、陽極付近の電位または磁界を利用して、いわゆる陽極フラクションを変化させること(米国特許第6,646,252号明細書および米国特許出願公開第2004/0227070 A号明細書)が含められている。他の解決策では、2つ以上の別々の、完全に独立した検出システムが、入射粒子から生成された二次電子の検出に使用される(米国特許第7,265,346号明細書)。また別の解決策としては、TOF分離領域に設置された中間検出器を使用するものがあり、この検出器は最終的な電子検出器のゲインを制御するためのフィードバックを提供する(米国特許第6,674,068号明細書)。後者の検出に伴う問題は、検出器のゲインを高速で変更する必要がある点と、線形性を維持するためにゲインを追跡し続けることもまた困難である点である。米国特許出願公開第2004/0149900 A号明細書において提案されているさらに別の検出器では、ビームスプリッタを用いてイオンビームを2つの等しくない部分に分けて、これを別々の検出器で検出する。ビームスプリッタとシンチレータを使用するまた別の装置は、国際公開第2009/027252 A2号パンフレットにおいて開示されている。2つの検出器の出力を合成する方法は、国際公開第2009/027252 A2号パンフレット、米国特許出願公開第2002/0175292号明細書および米国特許第6,646,252号明細書において提案されている。全体として、これらの検出法は複雑で、実現はコスト高となる可能性があり、および/またはその感度および/またはそのダイナミックレンジは所望のレベルに至らない可能性がある。
【0007】
TOF型質量分析計における位置検出のための装置は、米国特許第5,969,361号明細書に記載されており、この装置は、燐光性発光層の中に埋め込まれた複数の電極を含み、これらの電極を使用して、検出器の上のどこに当初のイオンが衝突したかを測定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、依然として荷電粒子の検出を改良する必要がある。上記の背景を鑑み、本発明がなされた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様によれば、荷電粒子を検出する検出装置が提供され、この装置は、
入射荷電粒子を受け取ったことに応答して二次荷電粒子を発生させる二次粒子発生器と、
二次粒子発生器によって発生された二次荷電粒子を受け取り、検出する荷電粒子検出器と、
二次粒子発生器によって発生された二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生させる光子発生器と、
光子発生器によって発生された光子を検出する光子検出器と、
を含む。
【0010】
本発明の他の態様によれば、荷電粒子を検出する検出装置が提供され、この装置は、
入射荷電粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかを受け取り、検出する荷電粒子検出器と、
荷電粒子検出器によって受け取られ、検出されたものと同じ入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子の少なくとも一部を受け取ったことに応答して光子を生成する光子発生器と、
光子発生器によって発生された光子を検出する光子検出器と、
を含む。
【0011】
本発明のその他の態様によれば、荷電粒子を検出する検出装置が提供され、この装置は、
入射荷電粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかを受け取り、検出する荷電粒子検出器であって、荷電粒子に対して透明で、使用時に、前記入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子がその中を通過する電極を含む荷電粒子検出器と、
透明電極を通過した入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生させる光子発生器と、
光子発生器によって発生された光子を検出する光子検出器と、
を含む。
【0012】
本発明の別の態様によれば、荷電粒子を検出する方法が提供され、この方法は、
入射荷電粒子を受け取るステップと、
入射荷電粒子を受け取ったことに応答して二次荷電粒子を発生させるステップと、
発生された二次荷電粒子を受け取り、検出するステップと、
発生された二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生させるステップと、
発生された光子を検出するステップと、
を含む。
【0013】
本発明のさらに別の態様によれば、荷電粒子を検出する方法が提案され、この方法は、
入射荷電粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかを受け取り、検出するステップと、
受け取られ、検出されたものと同じ入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子の少なくとも一部を受け取ったことに応答して光子を発生させるステップと、
発生された光子を検出するステップと、
を含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、荷電粒子を検出する方法が提供され、この方法は、
入射荷電粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかを、荷電粒子に対して透明な電極の中を粒子に通過させることによって受け取り、検出するステップと、
透明電極を通過した入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生させるステップと、
発生された光子を検出するステップと、
を含む。
【0015】
本発明のその他の態様によれば、本発明による検出装置を含む質量分析計が提供される。
【0016】
本発明のさらに他の態様によれば、質量分析計の中でイオンを検出するための本発明による検出装置の使用が提供される。
【0017】
本発明のさらにまた他の態様によれば、TOF型質量分析計の検出ダイナミックレンジを改善する方法が提提され、この方法は、
検出装置において入射荷電粒子を受け取るステップであって、検出装置は異なるゲインの少なくとも2つの検出器を含み、その検出器の少なくとも1つは光子検出器であり、その検出器の少なくとも1つは荷電粒子検出器であるステップと、
少なくとも2つの検出器を介して入射荷電粒子を検出するステップと、
を含む。
【0018】
検出装置は好ましくは、本発明の他の態様による検出装置である。
【0019】
光子検出器は好ましくは、入射荷電粒子から、または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子から生成された光子を検出するためものである。他の検出器は好ましくは、前述のような別の光子検出器、より好ましくは、本明細書に記載の荷電粒子検出器を含む。
【0020】
本発明は、高ダイナミックレンジで、構成部品から単純で低コストに構成したものにより提供される、荷電粒子を検出する装置と方法を提供する。高ゲインおよび低ゲインの検出チャネルが、単純な構成を使って、堅牢な構成部品を使って、また高額な構成部品はあまり使用せずに、検出装置内に提供される。この装置と方法は、単一粒子計数までという、入射荷電粒子の小さな割合に反応し、すなわち、感度が高く、これはたとえば、大地電位での光子検出による高ゲイン、低ノイズという利点を有する光子検出を利用することによって実現される。この装置はさらに、出力飽和が発生するまでは、入射粒子の大きな割合を検出でき、これはたとえば、一般に光子検出器よりノイズは大きいがゲインの低い荷電粒子検出器を使用することによる。したがって、高ダイナミックレンジを実現できる。104〜105のダイナミックレンジを得ることができる。好ましくは、荷電粒子検出器と光子検出器からの出力は、合成によって高いダイナミックレンジのマススペクトルを形成するようになされている。したがって、本発明によれば、非常に小さいピークと非常に大きいピークの両方を検出するために異なるゲインでの複数のスペクトルを取得する必要がなくなるかもしれない。荷電粒子検出器は、後述のように負の入射イオンを検出する場合、高電圧から容量的に分離してもよいが、荷電粒子検出器によって検出される信号は一般に、依然としてノイズより高い良好な検出レベルを実現できる、最も強力な信号である。本発明はしたがって、2つの検出チャネルでの少なくとも2種類の検出、すなわち光子検出と荷電粒子検出を利用するものであり、各々の種類の検出器は好ましくは、異なる飽和レベルおよびその他の異なる特性を有する。本明細書において、検出器の飽和レベルとは、検出器からの出力が飽和するときの入射荷電粒子の到着速度を意味する。別の利点は、1つの検出器が実験中に動作しなくなった場合に、少なくとも一部のデータは依然として、機能している残りの検出器から取得できる可能性がある点である。本発明の装置はまた、先行技術の装置より効率的に入射荷電粒子を検出に使用でき、また、高ゲインおよび低ゲインのチャネルの両方における検出のために、同じ粒子の少なくとも一部、好ましくは実質的に全部を使用できる可能性がある。
【0021】
ここで、本発明の利点と動作を、さらに詳しく説明する。
【0022】
荷電粒子検出器は第一の検出場所に設置され、光子検出器は第二の検出場所に設置され、第二の検出場所は第一の検出場所の下流にある。順番に、二次粒子発生器の次に荷電粒子検出器があり、荷電粒子検出器の次に光子検出器がある。順番に、好ましい実施形態において、二次粒子発生器の次に荷電粒子検出器があり、荷電粒子検出器の次に光子発生器があり、光子発生器の次に光子検出器がある。
【0023】
好ましい実施形態において、荷電粒子検出器は第一の検出場所に設置され、これは実質的に光子発生器に隣接する。より好ましくは、荷電粒子検出器の電力は、実質的に光子発生器に隣接して設置される。最も好ましくは、電極は光子発生器と接触して設置される。
【0024】
荷電粒子検出器、たとえばその電極は、好ましくは、光子検出器とインラインで設置される。それゆえ、インライン配置の中で、前記構成部品は相互の上流または下流のいずれかにあるか、一体に構成される。これは、異なる検出器が横並びに設置されて、入射粒子ビームの異なる部分を検出する先行技術の横並び配置とは異なる。上記のようなインライン配置とその例を以下により詳しく説明する。
【0025】
好ましい実施形態において、光子発生器は、使用時に、荷電粒子検出器によって受け取られ、検出されたものと同じ入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子の少なくとも一部、好ましくは実質的これらの粒子を受け取ったことに応答して光子を発生させる。より好ましいほうに向かって順番に、光子発生器は、使用時に、荷電粒子検出器によって受けられ、検出された入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のうちの25%超、30%超、50%超、75%超、および90%超を受け取ったことに応答して、光子を発生させる。このようにして、光子検出器と荷電粒子検出器は、同じ入射荷電粒子、たとえばイオンの少なくとも一部を記録するように構成される。たとえば、入射荷電粒子が荷電粒子検出器によって受け取られ、検出されてもよく、これらの同じ入射荷電粒子の少なくとも一部、好ましくは、実質的にこれらの同じ入射荷電粒子が光子検出器によって受け取られて、光子が発生されてもよい。この好ましい構成は、二次荷電粒子が発生される場合にも同様に適用してもよい。たとえば、二次荷電粒子(入射荷電粒子から生成される)が荷電粒子検出器によって受け取られ、検出されてもよく、これらの同じ二次荷電粒子の少なくとも一部、好ましくはこれらの同じ二次荷電粒子の実質的に全部が光子発生器によって受け取られ、光子が発生されてもよい。このようにして、電荷粒子検出器において、光子検出器における入射荷電粒子の全体量の少なくとも一部、好ましくは、それと同じ全体量が信号の生成に使用される。これに対して、2つ以上の検出器が使用される先行技術の検出装置では、各検出器が入射イオンビームまたは二次電子の別の部分を利用して信号を発生させる傾向がある。
【0026】
好ましい実施形態において、入射粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかの大部分(より好ましくは実質的に全部)が荷電粒子検出器によって受け取られ、検出される。より好ましいほうに向かって順番に、入射粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかのうちの25%超、50%超、75%超、90%超が荷電粒子検出器によって受け取られ、検出される。さらに好ましくは、入射粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかの大部分(より好ましくは、実質的に全部)が光子発生器によって受け取られ、光子が発生される。より好ましいほうに向かって順番に、入射粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかのうちの25%超、50%超、75%超、90%超が光子発生器によって受け取られ、光子が発生される。荷電粒子検出器の電極は、好ましくはこの目的のために透明電極であり、すなわち、透明とは、十分なエネルギーを有する荷電粒子がそれを透過(すなわち、通過)できることを意味する。荷電粒子検出器の電極は、好ましくは、電子に対して透明である。しかしながら、電極は好ましくは、光子に対して透明でなく、むしろ光子に対して反射性を有する。しかしながら、いくつかの実施形態において、たとえば荷電粒子検出器の電極が光子発生器と光子検出器の間に設置される場合、電極は光子に対して透明であってもよい。それゆえ、電極は光子に対して透明であっても透明でなくてもよいが、好ましくは、光子に対して透明ではない。したがって、本明細書において、荷電粒子検出器の電極に関して使用される透明という用語は、特にことわりがないかぎり、荷電粒子に対して透明であることを意味する。透明電極は、そこを通過する荷電粒子をピックアップして、たとえば荷電粒子がデジタルオシロスコープまたはデジタイザ(すなわち、ADC)等の電荷計または電流計を使って検出されるようにする。したがって、荷電粒子検出器は、好ましくは、入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかが通過する透明電極と、使用時に、透明電極を通過した入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子から光子を発生させる光子発生器を含む。さらにより好ましくは、発生された光子の大部分(より好ましくは、実質的に全部)が光子検出器によって検出される。特に好ましい実施形態において、荷電粒子検出器の1つの電極が、入射粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかの大部分(より好ましくは実質的に全部)を受け取り、および/または1つの光子検出器(より好ましくは、1つのPMTまたはAPD)が、発生された光子の大部分(より好ましくは実質的に全部)を検出する。有利な態様として、このような実施形態によって、2種類の検出、すなわち荷電粒子検出と光子検出を使用でき、これはダイナミックレンジの点で有利であり、その中では、各種類の検出で利用可能な粒子の大部分が利用されるため、検出感度が高くなる。4から5桁のダイナミックレンジが実証されている。これらの利点のすべてが、個別の検出器を少ない数しか使用しない(たとえば、1つの荷電粒子検出器と1つの項検出器)、単純で低コストの装置において提供される。
【0027】
本発明の装置は、荷電粒子検出するためのものである。検出対象の荷電粒子は、検出用の装置で受け取られ、したがって、本明細書においては、入射荷電粒子と呼ぶ。荷電粒子は、正荷電または負荷電のいずれであってもよく、すなわち、検出装置と方法は両極性である。入射荷電粒子は好ましくはイオンであり、より好ましくは、質量分析計によって処理されたイオン(すなわち、その質量荷電比、m/zによって分離されたイオン)である。イオンは、無機イオンでも有機イオンでもよい。しかしながら、入射荷電粒子は、他の種類の荷電粒子であってもよく、たとえば、電子顕微鏡における後方散乱電子等の電子であってもよい。
【0028】
本発明による検出装置と検出方法は、質量分析計での使用、すなわち、イオンの検出に特に適しており、したがって、それに関連して説明するが、これらは他の用途、すなわち、たとえば、粒子加速器、電子顕微鏡および電子分光法等、その他の荷電粒子測定においても有利である。
【0029】
検出対象の入射荷電粒子は、それ自体が光子発生器に直接衝突し、光子が発生され、この光子がその後、光子検出器によって検出される。あるいは、好ましい実施形態において、入射荷電粒子はまず、二次荷電粒子、より好ましくは電子を発生させるために使用される。このようなステップは、好ましくは、入射粒子の数を増倍して、より多くの二次荷電粒子を発生させる。二次荷電粒子を発生させるステップは1つまたは複数あってもよく、たとえば、二次荷電粒子は、今度は、次の二次荷電粒子を生成するために使用されてもよく、これが繰り返される。光子発生器に衝突するように入射荷電粒子から生成されたすべての荷電粒子を、本明細書においては、二次荷電粒子と呼ぶ。
【0030】
前述のように、光子発生器は、入射荷電粒子を直接受け取って、その直接衝突から光子を発生させてもよい。あるいは、好ましい実施形態において、光子発生器は、入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子を受け取るように構成される。使用時に光子発生器によって受け取られる粒子は、好ましくは電子である。したがって、好ましくは、入射荷電粒子または二次荷電粒子のいずれかは電子である。入射荷電粒子が電子でない場合、たとえば、入射荷電粒子がイオンである好ましい実施形態の場合は、すると、入射荷電粒子からは、好ましくは、二次電子の形態の二次荷電粒子が生成される。したがって、二次荷電粒子は好ましくは、二次電子である。
【0031】
二次荷電粒子は好ましくは、入射荷電粒子から、二次粒子発生器によって生成される。本明細書において、二次粒子発生器という用語は、発生器に衝突した入射荷電粒子に応答して二次荷電粒子を発生させる、あらゆる機器を意味する。好ましい二次粒子発生器は二次電子発生器であり、これは、入射荷電粒子による衝突に応答して二次電子を発生させる。本明細書において、二次電子発生器という用語は、発生器に衝突した入射荷電粒子に応答して二次電子を発生させる、あらゆる機器を意味する。好ましくは、二次電子発生器は、変換ダイノードまたは二次電子増倍管(SEM)からなる群から選択される機器を含む。SEMは、ディスクリートダイノードSMEでも連続ダイノードSEMでもよい。連続ダイノードSEMは、チャネル電子増倍管(CEM)または、より好ましくは、マイクロチャネルプレート(MCP)を含んでいてもよい。MCPは、周知のように、2つ以上のMCPを重ねたものを含んでいてもよい。二次電子発生器は、最も好ましくは、ディスクリートダイノードSEMまたはMCPのいずれかを含む。質量分析計用の市販の二次電子発生器の数多くの例が当業界において知られている。たとえば、適当な電子増倍管は、浜松ホトニクス株式会社から入手可能であり、たとえばR5150−10、R2362、R595、R596、R515およびR474等のEMモデルおよび、F9890−13、F9890−14、F9892−13およびF9892−14等のMCPモデルのほか、Burle、Photonisその他から入手可能なものがある。当然のことながら、市販のSEM、たとえば上記のモデルは一般に、たとえば陽極がある場合はこれを除去すること等の改変を加えて、SEMから発生された電子を光子発生器で受け取ることができるようにする必要がある。改変後、たとえばダイノードまたはMCPプレートを使用できる。一部の機器は改変せずに使用でき、たとえば陽極がない状態で供給されるもの、たとえばPhotonisのチャネルトロンCEM4504SL等がある。本発明により2種類の検出器を使用することと、その結果として実現可能な感度とダイナミックレンジによって、SEM等の二次粒子発生器は、有利な点として、たとえばTOF型質量分析の用途で使用される従来の増倍管と比較して、比較的低いゲインで動作させてもよい。より低いゲインでの使用の結果、より飽和限度が低くなり、すなわち、大きなピークの後に小さなピークが隠れてしまうことが少なくなる。
【0032】
入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子を受け取り、検出するための1つまたは複数の荷電粒子検出器が、本発明により使用される。好ましくは、特に質量分析の用途のために、荷電粒子検出器は、入射荷電粒子(最も好ましくはイオン)から生成された二次荷電粒子(最も好ましくは電子)を検出する。単純さとコストの点で好ましい実施形態においては、1つの荷電粒子検出器が使用される。光子検出器に関連して、1つの荷電粒子検出器で十分に広い検出ダイナミックレンジの高速応答検出装置を提供できることがわかった。
【0033】
入射荷電粒子か入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかを受け取り、検出するステップは、好ましくは、電極を使って荷電粒子の通過をピックアップするステップを含む。荷電粒子の通過は、電極から直接ピックアップしても(すなわち、入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子が衝突する電極である)、または電極によって誘起される、たとえば別の電極(たとえば、検出またはコンデンサ極板)上のイメージチャージを介して、または誘導結合を介してピックアップしてもよい。正電荷を持つ入射イオンの場合、以下により詳細に説明するように、電荷は電極から直接、容量的に、または誘導的にピックアップしてもよい。イメージチャージ検出を利用する装置は、正および負電荷を持つ入射イオンの両方の通過を検出するために使用してもよいが、一般には、負電荷を持つ入射イオンの検出に使用され、これについては後で詳しく説明する。電荷はまた、電極から誘導的に検出してもよく、たとえば、コイルまたはコイルペアで検出電極をデジタイザに結合する。それゆえ、電極は、容量的または誘導的にデジタイザに結合してもよい。荷電粒子の通過のピックアップが、必要に応じて、電極から電荷の直接ピックアップ(たとえば、正電荷を持つ入射イオンのため)と、容量的または誘導的結合を通じた電荷のピックアップ(たとえば、負電荷を持つ入射イオンのため)を切り替えられるような装置を使用してもよい。これは、その装置を入射イオンのための両極性検出器として使用できる1つの方法である。好ましくは、両極性検出器として使用した場合、電荷は、容量的または誘導的結合を使用すれば最も容易にピックアップされる。荷電粒子検出器はそれゆえ、好ましくは、入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子を受け取るための電極、すなわち検出電極を含む。電極が入射荷電粒子を受け取るためのものであり、入射荷電粒子がイオンである場合、電極は、それぞれ負電荷を持つイオンまたは正電荷を持つイオンを受け取るための陽極または陰極のいずれかであってよい。電極は好ましくは、入射電極粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれかとして電子を受け取るためのものであり、したがって、電極は好ましくは、電子を受け取るための陽極である。
【0034】
荷電粒子検出器の電極は、好ましくは透明電極であり、すなわち、透明とは、十分なエネルギーの荷電粒子がそれを透過(すなわち、通過)できることを意味する。荷電粒子検出器の電極は、好ましくは電子に対して透明である。しかしながら、電極は好ましくは、光子に対しては透明でなく、むしろ光子に対して反射性を有する。したがって、本明細書において荷電粒子検出器に関連して使用される透明という用語は、荷電粒子に対して透明であることを意味する。電極は、光子に対しては透明でも透明でなくてもよいが、好ましくは、光子に対して透明ではない。
【0035】
好ましいタイプの実施形態において、電極は、光子発生器に関連付けられた(すなわち、それに密接に近接した、好ましくは実質的にそれに隣接した)、より好ましくは、それと接触した導電性材料を含み、あるいは、光子検出器そのものが導電性材料を含み、この場合、光子発生器は電極を含んでいてもよい。たとえば、光子検出器は、導電性ポリマシンチレータ(すなわち、1つまたは複数の蛍光体(fluor)がその中に分散されている)を含んでいてもよく、電荷は、シンチレータの体積から検出してもよい。好ましい例において、電極は、光子検出器に隣接する導電層または被膜の形態の導電性材料を含み、本明細書においては、これを導電層と呼ぶ。好ましくは、導電層は光子発生器の上、すなわち、光子検出器の、入射電荷粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子が最初に衝突する面(本明細書において、衝突面という)に設けられる。しかしながら、いくつかの実施形態において、導電層を、光子発生器の非衝突面に設けることも可能であるかもしれない(このような実施形態の導電層は、好ましくは、発生された光子に対して透明である)。導電層は、好ましくは、金属、たとえばアルミニウム、ニッケルまたは金の層である。適当な導電性シリコン層もまた使用してよい。光子に対して透明な導電層が必要な場合、光学的に透明な導電材料、たとえば酸化インジウムスズ(ITO)を使用してもよい。導電層、特に金属層は、好ましくは薄く、たとえば50nmである。好ましくは、導電層、特に金属層は、厚さ5nmから500nmの範囲である。実際に、導電層、特に金属層は、好ましくは少なくとも10nmの厚さである。非常に厚さが薄いと、この層は、衝突する粒子によって損傷を受け始めるかもしれない。より好ましくは、導電層、特に金属層は、厚さ10nmから200nmの範囲であり、さらにより好ましくは、厚さ30nmから100nmであり、最も好ましくは、厚さ約50nmである。層が厚いほど、それを透過するのに必要なエネルギーは大きくなる。厚さが50nm以上である場合、その金属層を効率的に透過するためには一般に、約2keV以上の運動エネルギーを有する電子が必要となる。導電層の材料と厚さは、好ましくは、(導電層が光子検出器の衝突面にあるような好ましい場合に)荷電粒子が光子発生器を透過できるように選択され、すなわち、導電層は好ましくは、受け取り、検出すべき荷電粒子(一般に、二次電子)に対して透明である。導電層を光子発生器にコーティングする方法は、当業界で知られている。たとえば、シンチレータを金属の薄い層で被覆する方法は、当業界で知られている。導電層は、好ましくは、光子発生器の、入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子が入射する面、すなわち衝突面に設置される。このようにして、有利な点として、導電層、特に金属層は、発生された光子を光子検出器へと向けることができ、光子検出器は一般に、光子発生器の、入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子が入射する面とは反対の面にある。発生された光子を方向付けるために、金属層は好ましくは、光子発生器によって発生される光子の波長に対する反射面を有する。さらに、金属被膜の使用は、光子発生器を保護し、電荷の生成を低減させるのに役立つ。あるいは、電極は、光子発生器のマトリクス材料として導電性材料(たとえば、導電性ポリマ)を含んでいてもよい。導電層または導電性材料を電極として、好ましくは光子発生器に関連付けて、またはそれと接触して使用することにより、有利な点として、好ましくは、荷電粒子検出器によって受け取られ、検出されたものと実質的に同じ入射電荷粒子または入射電化粒子から生成された二次電荷粒子もまた、光子発生器から光子を発生させるために使用することも可能となる。電極と光子発生器の、入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成される二次荷電粒子に提供されるそれぞれの表面積は、好ましくは、実質的に相互に相応である。電極の表面積は、より好ましくは、光子発生器の表面積と少なくとも同じ大きさであり、また、いくつかの場合では、それより大きくてもよい。電極の表面積は、好ましくは、入射粒子か入射荷電粒子から生成される二次荷電粒子のいずれかの大部分(より好ましくは、実質的に全部)を受け取るのに十分な大きさである。同様に、光子発生器の表面積は、好ましくは、光子を発生させるために入射粒子か入射荷電粒子から生成される二次荷電粒子のいずれかの大部分(より好ましくは実質的に全部)を受け取るのに十分な大きさである。
【0036】
電荷検出器の電極は、単独の一体的な電極でも、たとえば相互に絶縁された複数の個別の電極でもよい。複数の個別の電極が使用される場合、それぞれの電極からの信号は、合成しても、または別々に処理してもよい。
【0037】
荷電粒子検出器の電極は、好ましくは、電荷計または電流器に接続されている。高速電荷計は周知であり、本発明にとって好ましく、例えば、増幅器を備えるオシロスコープまたはデジタイザ(すなわち、アナログデジタル変換器(ADC))がある。好ましい実施形態において、電荷計は、本明細書に記載されているように、光子発生器の上の導電層での電荷の変化を検出するためのものである。電荷または電流のいずれも、荷電粒子検出器の電極で直接検出できる。その代わりに、またはそれに加えて、容量的結合またはイメージチャージ検出を利用してもよく、その場合は、荷電粒子検出器がイメージチャージ電極(たとえば、検出プレート)をさらに含み、これは荷電粒子検出器の電極の付近に設置されるか、これと容量的に結合され、電極によってイメージチャージ電極内に誘起されたイメージチャージが検出される。電荷はまた、電極から誘導的に検出されてもよく、たとえばコイルまたはコイルペアによって検出電極がデジタイザに結合される。それゆえ、電極は、容量的または誘導的にデジタイザに結合してもよい。
【0038】
光子発生器上の導電層の形態の電極の代わりに、またはこれに加えて、電極は、二次電子発生器が使用される場合、二次電子発生器(たとえばSEM)の陽極またはダイノードを含んでいてもよい。このような実施形態において、電極は、二次電子発生器の中で発生された二次電子を検出する。このような場合、電極は、ダイノードまたは透明陽極であってもよい。このような実施形態において、二次電子発生器は、好ましくは、変換ダイノード、ディスクリートダイノードSEMおよび連続ダイノードSEM(好ましくは、マイクロチャネルプレート(MCP))からなる二次電子発生器の群の中から選択される。このような実施形態において、二次電子は、たとえば、電流または電圧を二次電子発生器(たとえばSEM、MCP等)、たとえばダイノードの1つに供給する電源からの電流によって検出してもよい。
【0039】
荷電粒子検出器の電極は、好ましくは、たとえば質量分析計、特に一般に10-4から10-12mbarとされてもよいTOF型質量分析計の内部に見られるような真空環境に設置される。
【0040】
本発明により、異なる種類の検出器を使用することによって、好ましくは、好ましくはシンチレータ上の金属層上の電荷の検出により、シンチレータと関連付けられた電極上での電荷または電流を検出すること(またはイメージチャージ電極上のイメージチャージを検出すること)を利用することによって、高ダイナミックレンジが実現される。
【0041】
光子発生器は、荷電粒子の衝突から光子を発生させることができる、どのような材料であってもよい。1つまたは複数の光子発生器を使用してもよい。光子発生器は、好ましくは、シンチレータであってもよい。基板上のシンチレータの被膜(たとえば、スクリーン)が好ましい構成である。適当なシンチレータは当業界で知られている。2つ以上のシンチレータを使用してもよく、これは、同じであっても異なっていてもよい。シンチレータは、結晶シンチレータでも非結晶シンチレータでもよい。シンチレータは、結晶の形態または液体または溶液の形態の有機シンチレータを含んでいてもよい。シンチレータは、無機シンチレータ、たとえば無機結晶シンチレータを含んでいてもよい。シンチレータは、プラスチックシンチレータ(すなわち、ポリマ内に溶解された有機または無機シンチレータ(蛍光体))であってもよく、これは、シンチレータの成形の点から好ましいかもしれない。適当な市販のシンチレータが利用できる。たとえば、蛍光減衰時間が約0.6ns未満のシンチレータとしては、Yb:YAPとYb:LuAGがあり、蛍光減衰時間が約0.5ns未満のシンチレータとしては、Yb:Lu3Al6O12、CsF、BaLu2F8、BaF2、ZnOおよび(n−C6H13NH3)2PbI4がある。複合酸化物結晶シンチレータには、セリウム添加珪酸ガドリニウム(Gd2SiO5(Ce)またはGSO)、ゲルマニウム酸ビスマス(Bi4Ge3O12またはBGO)、タングステン酸カドミウム(CdWO4またはCWO)、タングステン酸鉛(PbWO4またはPWO)、およびタングステン酸ビスマスナトリウム(NaBi(WO4)2またはNBWO)がある。アルカリハライドシンチレータ結晶には、タリウム添加ヨウ化ナトリウムNaI(Tl)、タリウム添加ヨウ化セシウム結晶CsI(Tl)およびナトリウム添加ヨウ化セシウムCsI(Na)がある。その他のシンチレータとしては、セレン化亜鉛ZnSe(Te)がある。プラスチックシンチレータは一般に、ポリマから(たとえば、スチレン、アクリル系および/またはビニルトエンモノマを使用して)製作され、その中にシンチレート用蛍光体が溶解されており、そのうちの最も一般的なものがp−テルフェニル、PPO、a−NPOおよびPBDである。適当な市販の高速プラスチックシンチレータ製品は、BC−422Q(Saint Gobainより入手可能)である。いくつかの実施形態において、導電性ポリマを使用してもよく、これは装置の電荷検出器の電極として機能してもよい。シンチレータは、好ましくは、基板上の蛍光物質、たとえば蛍光スクリーン等の蛍光物質被膜を含む。蛍光物質の好ましい種類は、イットリウムアルミニウムガーネットまたはセリウム活性化ペロブスカイト、より好ましくはYAP:CeまたはYAG:Ce(Y3Al5O12:Ce)またはその他である。好ましい市販の例としては、El−Mul E36がある。その他の蛍光物質には、Lu2SiO5:Ce、YAl3:CeおよびZnO:Gaがある。基板上のこのような蛍光物質の被膜が好ましい。好ましいシンチレータは、応答時間が速く、エネルギー変換が効率的であるように選択される。
【0042】
有利な構成は、シンチレータ被膜、好ましくは蛍光スクリーンを基板上に有するものである。基板はガラス塊、たとえば石英ガラス塊またはポリマ塊であってもよい。塊は、板状またはスラブであってもよい。基板は、たとえば発生された光子を集束させるためのレンズ、好ましくはフレスネルレンズを含んでいてもよい。レンズは、好ましくは、光子を小さな直径のPMT、またはより好ましくは、APD等のフォトダイオードに集束させることができる。APDが小さいほど、応答時間が速く、したがって、レンズを使用して光子をより小さな検出器に集束させることが好ましい。シンチレータは、有利な点として、いくつかの場合、すなわち基板が光子ガイドである場合、光子ガイドの上に直接コーティングしてもよい。
【0043】
有利な点として、実施形態において、シンチレータ被膜の基板は、好ましくは荷電粒子検出器が設置される好ましい真空環境と、好ましくは光子検出器が設置される好ましい大気圧環境の間のバリアまたは分離手段として機能してもよい。真空分離は、あるいは、他の構成部品、たとえばシンチレータそのものまたは光子ガイドによって提供してもよい。
【0044】
光子発生器は、好ましくは、その上に導電性材料(好ましくは層)を有し、これは入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成される二次荷電粒子に面する。導電性材料は、好ましくは、電荷粒子検出器の電極として機能してもよい前述のような導電層である。導電層はさらに、光子発生器、たとえば蛍光スクリーンを保護し、また、発生された光子を光子検出器に向かう下流への一方向に反射させるのに役立ててもよい。
【0045】
入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子は、好ましくは、これらが光子発生器または光子発生器上の導電層に衝突するときに、約2keVより大きいかそれと同等のエネルギー、より好ましくは、約5keVより大きいかそれと同等のエネルギー、最も好ましくは、約10keVより大きいかそれと同等のエネルギーを持つ。入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成される二次荷電粒子は、好ましくは、光子発生器に衝突する前に加速させ(いわゆる後段加速させ)て、光子発生の効率を改善する。光子発生器に衝突する荷電粒子の運動エネルギーが大きいほど、生成される光子の数が多くなる。たとえば、シンチレータの上に50nmの厚さの金属層が設けられたいくつかの実施形態において、衝突する電子の運動エネルギーを2keVから10keVより大きくなるまで増大させることによって、発生される光子の数を10倍以上にすることが可能となりうる。二次電子発生器の中で入射荷電粒子から二次電子が発生される好ましい実施形態において、二次電子は後段加速によって、シンチレータに衝突するために(より好ましいほうに向かって順番に)2,5または10keV以上にしてもよい。荷電粒子のこのような後段加速は、好ましくは、荷電粒子が荷電粒子検出器の電極上に衝突する前に行われる。一般に、少なくとも2段階の加速が行われる。1段階目の加速で、入射荷電粒子は、二次荷電粒子発生器(これが使用されている場合)に衝突する前(たとえば、変換ダイノード、SEM、MCP、チャネルトロン等に衝突する前)に加速される。この加速段階における重要な要素は、入射荷電粒子の全体の運動エネルギーである。この運動エネルギーは、入射荷電粒子の発生源(たとえば、イオン源)における加速から、または二次荷電粒子発生器に衝突する前の後段加速ステップから得ることができる。他の加速段階は、入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成される二次粒子が光子発生器(好ましくは、いずれかの二次粒子発生器と光子発生器の間)に衝突する前にある。入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成される二次粒子のエネルギーがより高いと、より多くの光子が生成される。さらに、小さなエネルギーで光子発生器上のいずれかの導電性金属層を透過できる。
【0046】
光子発生器の後には、好ましくは、発生された光子を光子検出器に向けて案内する光子ガイドがある。光子ガイドは、たとえば1つまたは複数の光ファイバ、1つまたは複数の導波管、1つまたは複数の反射面(たとえば、アルミニウム被覆面)を含んでいてもよく、その間に凝縮系材料(たとえば、ガラス)があってもなくてもよい。凝縮系材料が反射面の間にない場合、反射面の間には、真空または大気圧または圧縮領域があってもよい。光子ガイドは、たとえばある角度で光子を反射することによって、光子の方向を変更できてもよい。したがって、光子ガイドは、たとえば、光子をある角度で反射するためのミラーまたはプリズムの内面を含んでいてもよい。この角度は180度未満のどの角度でもよいが、一般には、90度以下の角度である。光子をある角度で方向付けることが必要なのは、たとえば、計器内の空間的制約から、構成部品の線形またはインライン式のレイアウトを収容することが難しいからである。光子ガイドの使用により、光子検出器への効率的な光子の伝達に加えて、高電圧で動作可能な二次粒子発生器を利用する、本発明の好ましい実施形態において、電圧分離が可能となりうる。2つ以上の光子ガイドを使用してもよく、これは光子を1つの光子検出器または別の光子検出器に伝達してもよく、すなわち、光子ガイドは光子を2つ以上の部分に分割し(たとえば、分割導波管)、各部分が別の光子検出器によって検出されるようにしてもよい。いくつかの実施形態において、光子発生器そのものを、光子を光子検出器に向ける案内手段となるように形成してもよい。
【0047】
光子検出器は、光子発生器によって発生された光子を検出するために使用される。1つまたは複数の光子検出器を使用してもよい。適当な光子検出器は、以下の種類の少なくとも1つであってもよい。(i)検出器が光子を受け取ったことに応答して発生される電子からの出力信号を生成する光子検出器であり、選択的に、電子に電子増倍を行っておくことができるもの。(ii)画素からなる光学イメージングデバイスを含む光子検出器。(ii)の種類の検出器はさらに、空間情報を提供してもよく、これはたとえば、組織イメージング、表面のSecondary Ion Mass Spectrometry(SIMS)分析、MULTUM等の用途において有益かもしれない。(i)の種類の光子検出器の適当なタイプには、次のものがある。例えば、フォトダイオードまたはフォトダイオードアレイ(好ましくは、アバランシェフォトダイオード(APD)またはアバランシェフォトダイオードアレイ)、光電子増倍管(PMT)、電荷結合素子またはフォトトランジスタである。ソリッドステート光子検出器が好ましく、より好ましい光子検出器はフォトダイオード(好ましくは、アバランシェフォトダイオード(APD))、フォトダイオードアレイ(好ましくはAPDアレイ)またはPMTである。より好ましくは、光子検出器は、APDまたは光電子増倍管(PMT)を含む。1つまたは複数の光子検出器を使用してもよい。単純さとコストの点で好ましい実施形態において、1つのソリッドステート光子検出器(たとえば、APDまたはPMT)が使用される。荷電粒子検出器に関連して、1つのソリッドステート光子検出器で十分に広い検出ダイナミックレンジの高速応答検出装置を提供できることがわかっている。希望に応じて、2つ以上の光子検出器を使用してもよく、好ましくは、各々が十分な飽和レベルを有するように構成される。いくつかの好ましい実施形態において、高ダイナミックレンジの検出を行うために、異なる飽和レベルを有する光子検出器のアレイを使用する。アレイは、2つ以上の光子検出器を含んでいてもよく、たとえば、フォトダイオードのアレイまたはPMTのアレイ、またはフォトダイオードとPMTの組み合わせを含むアレイであってもよい。
【0048】
異なる種類の光子検出器を組み合わせて使用してもよく、たとえばフォトダイオードをPMTともに使用してもよい。異なる飽和レベルは、たとえば、検出器の種類の違い、それぞれの検出器のゲインの違い、検出前の光子の減衰および/またはフィルタ処理の違い等を利用することによって実現してもよい。したがって、光子フィルタまたは光子減衰器を使用してもよい。
【0049】
大きな信号と飽和の後の高速回復特性を有する光子検出器、たとえばPMTを使用することが好ましい。したがって、光子検出器の出力の電圧調整のための手段を含めることが好ましい。電圧調整および/または検出器の回復時間のほか、線形性とダイナミックレンジを改善するための適当な方法は当業界で知られており、本発明において有益であり、これはたとえば、ツェナーダイオード、コンデンサおよび/またはトランジスタを有する回路(たとえば、PMT用)を使用することによる(たとえば、米国特許第3,997,779号明細書、米国特許第5,440,115号明細書、米国特許第5,367,222号明細書および米国特許出願公開第2004/0232835 A号明細書に開示されているほか、浜松ホトニクスとETPにより供給されるPMTアセンブリに含まれる)。当然のことながら、荷電粒子検出器からの信号を、光子検出器の飽和、回復またはノイズのあらゆる期間中に使用でき、それによって、入射荷電粒子の検出が中断されないようにすることができる。
【0050】
PMTとフォトダイオードは当業界で知られており、適当なPMTとフォトダイオードは、発生される光子の特性にマッチするように選択できる。これらに使用するのに適した光電陰極材料には、周知の光電陰極材料、たとえばCs−Te、Cs−I、Sb−Cs、バイアルカリ、低暗電流バイアルカリ、Ag−O−Cs、マルチアルカリ、GaAs、InGaAsがある。市販のモデルとしては、浜松ホトニクスのPMTがあり、たとえばUBAおよびSBAタイプのPMT、たとえば、浜松ホトニクスのモデルR9880U−110、BurleのPMT、および浜松ホトニクスのS8550 Siアバランシェフォトダイオード(APD)およびその他のAPDがある。光子検出器は、真空、大気圧、または高圧環境中に設置してもよい。有利な点として、光子検出器は好ましくは、大気圧環境中に設置され、これは有効な動作のために真空が必要でないからである。光子検出器、たとえばPMTが大気圧中に設置される場合、損傷を受けた時の交換がより容易である。本発明の別の利点は、検出システムのダイナミックレンジを、電荷検出器とすることができる真空内の部品(たとえば、質量分析計の真空内)と、光子検出器とすることができる真空外の部品とで分離できることであり、本発明の装置は、真空領域と大気領域の間の信頼性の高い接合手段となるからである。このような構成によって、より敏感な部品(すなわち、予想寿命が最短の部品であり、これは一般に光子検出器である)を容易に交換できる。
【0051】
荷電粒子検出器と光子検出器は最も好ましくは、異なる飽和レベルを有する。検出器が、たとえば種類の違いによって、本来的に実質的に異なる飽和レベルを有する場合、またはより大きな飽和レベルの差が求められる場合、これらを様々な手段によって異なる飽和レベルになるように構成することができる。たとえば、検出器の各々が異なるゲインを持つようにし、またそれらに異なる減衰および/またはフィルタ等を適用してもよい。
【0052】
本発明は、荷電粒子検出の高いダイナミックレンジが必要な時に、また、たとえばTOF型質量分析計のようにこのような検出が高速で必要な場合に有益である。本発明はさらに、単一荷電粒子計数が必要な場合にも有益である。本発明は、質量分析計、たとえばTOF、四重極、またはイオントラップ型質量分析計におけるイオン検出に、たとえば有機化合物の測定、医薬品有効成分の測定、タンパク質および/またはペプチドの同定、種の遺伝子型または表現型の同定等に特に適している。本発明は、TOF型質量分析計、好ましくは多重反射TOF型質量分析計、より好ましくは、長い飛行距離を有する多重反射TOF型質量分析計におけるイオン検出に特に適している。本発明は、検出対象のピーク幅(半値全幅、すなわちFWHM)が約50nsの幅までのTOF型質量分析計で使用してもよいが、いくつかの例において、ピーク幅はもっと広くてもよい。たとえば、ピークのピーク幅は、最大約40ns、最大約30ns、および最大約20ns、一般に0.5から15nsの範囲であってもよい。好ましくは、検出対象のピークのピーク幅は、0.5ns以上、たとえば1ns以上、たとえば2ns以上、たとえば3ns以上、たとえば4ns以上、たとえば5ns以上である。好ましくは、検出対象のピークのピーク幅は一般に、12ns以下、たとえば11ns以下、たとえば10ns以下である。ピーク幅は、次の範囲、たとえば1から12ns、たとえば1から10ns、たとえば2から10ns、たとえば3から10ns、たとえば4から10ns、たとえば5から10nsである。本発明は、本願と同時係属中の英国特許出願第0909232.1号明細書および第0909233.9号明細書に記載されている質量分析計で使用してもよく、同出願の内容を引用によって本願に援用する。当然のことながら、本発明は、タンデム質量分析計(MS/MS)を含む質量分析計および多段階質量処理を行う質量分析計(MSn)の周知の構成に応用できる。このような質量分析計は、多くの異なる周知のタイプのイオン源の1つ、たとえば大気圧イオン化(API)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、MALDI等を含むレーザ脱離イオン化を利用してもよい。質量分析計は、他の分離および/または測定装置、たとえばクロマトグラフィ装置(GC、LC等)とともに使用してもよい。
【0053】
荷電粒子検出器と光子検出器は、好ましくは、各々、出力(すなわち、少なくとも1つの出力)を含む。荷電粒子検出器と光子検出器の出力は各々、電気信号の形態の出力信号を供給してもよく、その大きさは入射荷電粒子の強度を示す。
【0054】
荷電粒子検出と光子検出は、同時に、または一度に1つずつ行ってもよい。すなわち、両方の検出器が同時に収集用の信号を発生してもよく、また一度に1つの検出器だけが収集用の信号を発生してもよい。好ましくは、荷電粒子検出と光子検出は同時に行われる。
【0055】
荷電粒子検出器と光子検出器の出力は、好ましくは、各々、デジタイザ、たとえばアナログデジタル(A/D)変換器(ADC)またはデジタルストレージオシロスコープに、より好ましくは同じデジタイザの別の入力に接続される。荷電粒子検出器と光子検出器の各々からの出力信号は、それゆえ、好ましくは、デジタイザに送信され、デジタルデータが発生される。荷電粒子検出器と光子検出器からの出力信号は各々、それぞれのデジタイザに送信されてもよいが、好ましくは、これらの信号は、2つ以上の入力チャネルを有する1つのデジタイザに送信される。デジタイザは、好ましくは、たとえばTOF型質量分析計の業界で知られているような高速デジタイザである。しかしながら、より低速の用途には、より低速のデジタイザまたは電子計でも十分でありうる(たとえば、四重極またはセクタ型質量分析計等の場合)。デジタイザは、1つまたは複数のデータ出力信号、一般に、各検出器の入力信号に対して1つのデータ出力信号を供給する。
【0056】
好ましくはデジタイザからの出力としての荷電粒子検出器と光子検出器の出力は、好ましくは、たとえばデータ収集および/または処理機器、好ましくはコンピュータでデータとして収集され、保存される。好ましくは、これは、デジタイザの出力をコンピュータに接続することによって実現される。荷電粒子検出器と光子検出器から発生されたデータは、別々に収集および/または保存しても(すなわち、荷電粒子検出器からのデータが光子検出器からのデータから分離される場合)、または両方のデータセットを合成してもよい。荷電粒子検出器と光子検出器からの出力またはデータは、好ましくは、コンピュータによって合成され、入力電荷粒子の検出を示す1つの出力またはデータセットが提供される。好ましくは、荷電粒子検出器と光子検出器からのデータは、別のデータセットとして、たとえばコンピュータ内に保存され、これらは別のデータセットとして出力されても、されなくてもよいが、合成またはその他の方法で処理されて、保存および/または出力のための少なくとも1つの別のデータセット(本明細書においては、処理済みのデータセットいう)が提供される。好ましい実施形態において、コンピュータによるデータ処理には、荷電粒子検出器と光子検出器のデータを結合して、結合データセット(たえば、高ダイナミックレンジのマススペクトル)を生成することが含まれる。データ結合の好ましい方法をさらに詳細に以下に説明する。
【0057】
本明細書における出力とは、紙上のハードコピー出力または、コンピュータに接続されたビデオディスプレイユニット(VDU)上のソフトコピー出力等、あらゆる従来の出力を含んでいてもよい。
【0058】
データ収集機器は、動作時に、好ましくは、荷電粒子検出器と光子検出器の出力からのデータを収集し、保存する。収集されたデータは、たとえばデータ収集機器によって処理されてもよい。たとえば、データは、検出装置が質量分析計の一部である場合に、マススペクトル用のイオン存在量データを提供するように処理してもよい。このようなデータ処理は当業界で知られている。データは、好ましくは前記処理の後に、出力させることを選択できる。
【0059】
当然のことながら、検出器の出力からのデータを収集し、処理するコンピュータは、好ましくは、入射荷電粒子の発生源(たとえば、質量分析計)にも動作的に接続して、検出器の出力を入射荷電粒子の1つまたは複数のパラメータ、たとえば入射荷電粒子の質量と相関させることができるようにする。このようにして、たとえば、マススペクトルをコンピュータによって生成することができる。
【0060】
本発明の装置を質量分析計からの入射イオンの検出に応用して、マススペクトルを収集する中で、各種のデータ処理方法を利用してもよい。好ましい方法には以下のものがある。検出器から(たとえば、デジタイザを介して)収集されたデータは、好ましくは、コンピュータに転送される。
1.単独のデジタル化地点のすべてが転送されるフルプロファイルスペクトルとして。または、
2.所定のレベルを超える数値のピークに属する地点だけがデジタイザからコンピュータに転送される、限定的プロファイルスペクトル。このようにすると、データの転送と保存に必要な帯域幅を縮小できる。所定のレベルは、取得の長さ全体について設定し、または異なる取得セグメントについて規定し、または信号/ノイズレベルに応じて、または他のアルゴリズムを使用してオンザフライで決定することができる。または、
3.ピーク重心だけが強度情報とともにコンピュータに転送される。この場合、ピーク重心およびその他の演算は、デジタイザに搭載された計算手段で実行される。たとえば、オンボードコンピュータ、マイクロコンピュータ、FPGA等を使用できる。
【0061】
1回の実験で荷電粒子検出器と光子検出器の1つまたは複数から取得した出力またはデータは、1つまたは複数の動作パラメータの制御に使用してもよい。このような1つの実施形態において、1回の実験で荷電粒子検出器と光子検出器の1つまたは複数から取得した出力またはデータは、次の実験のための荷電粒子検出器と光子検出器の1つまたは複数のゲインの制御に使用してもよい。本明細書において、実験には、たとえばマススペクトル用として、入射イオンの存在量を記録することが含まれていてもよい。たとえば、検出器の1つまたは複数の出力が1回の実験において、データ収集および処理手段の測定により、1つまたは複数のピークにおいて飽和した場合、前記手段は、次の実験において、たとえば前記1つまたは複数のピークで、検出器の当該の1つまたは複数のゲインを下げるかもしれない(たとえば、以前のマススペクトルを使用して、強いピークがいつ到来するかを判断する)。ゲインは、数多くの方法で調整してもよく、たとえば、検出器への1つまたは複数の印加電圧を調整する、入射荷電粒子または二次荷電粒子の流れを調整する、光子検出器に当たる前の荷電粒子の集束を調整する、または検出器の温度またはその他のパラメータを調整することによって行う。
【0062】
入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成される二次荷電粒子の集束を使用して、電荷検出器の上(たとえば、金属層等、その電極の上)および/または光子検出器に衝突する前記粒子の流れを変化させることが可能である。これによって最終的に、光子の発生、したがって光子検出器の照明が変化する。集束は、適当なイオン光学系、たとえば1つまたは複数のイオンレンズ、好ましくは1つまたは複数のリング電極(より好ましくは、2つ以上のリング電極)によって実現してもよい。有利な点として、二次荷電粒子発生器(たとえばMCP)の取付手段および/または光子検出器の取付手段は、1つまたは複数のイオンレンズ、または1つまたは複数のリング電極として機能してもよく、適当な電圧を取付手段に印加することによって、適当な集束を行うために使用してもよい。
【0063】
それゆえ、特にマススペクトルのためのイオン検出という意味において、最大ゲインの検出器のゲインを以下のようにして調整することができる。
以前のスペクトルを使用して、たとえば所定の閾値の上(または下)等、強い(または弱い)ピークがいつ到達するかを判断することによる。次に、以下の方法の1つまたは複数を使用できる。
a)強い(または弱い)ピークが存在している(すなわち、検出されている)間に、最大ゲインのチャネルのゲインを調整する。強いピークの時のゲインを低下させることにより、光子検出器の寿命も延長される可能性がある。ゲインを下げた高ゲインのチャネルからのデータをこの期間中に使用でき、または、選択的に、電荷検出器からのデータをこの期間中に使用でき、それによって、ゲインがどれだけ低下されたかを知る必要がない。
b)入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子の、光子発生器に当たった数を、好ましくは以下の方法の1つまたは複数を使用して調製する(数を減らすことにより、光子発生器と光子検出器の寿命が延長される可能性がある)。
i)強い(または弱い)ピークが存在している(すなわち、検出されている)間に、光子発生器に当たる前の荷電粒子(たとえば二次電子)の集束を調整する。
ii)強い(または弱い)ピークが存在している(すなわち、検出されている)間に、入射荷電粒子源(たとえば、イオン源)からの入射荷電粒子(たとえばイオン)の数を調整する。
iii)強い(または弱い)ピークが存在している(すなわち、検出されている)間に、二次荷電粒子発生器上のゲインを調整する。
【0064】
荷電粒子検出器と光子検出器の1つまたは複数から取得した出力またはデータは、その他の動作パラメータの制御、たとえば、PMTとAPD光子検出器の温度制御のために使用してもよい。APDは特に温度に敏感であり、すなわち、ゲインが温度と共に変動する。
【0065】
本発明の異なる態様によれば、荷電粒子検出器が選択的である(すなわち、いくつかの実施形態ではなくてもよい)、上記の態様による装置と方法が提供される。それゆえ、本発明のこれらの異なる態様のいくつかの実施形態においては、荷電粒子検出器がなく、たとえば、二次電子を検出するための荷電粒子検出器がない。本発明のこれらの異なる態様において、装置または方法は、本明細書に記載される好ましさにしたがって、2つ以上の光子検出器、たとえば光子検出器を含む。2つ以上の光子検出器は、好ましくは、本明細書に記載されるように、異なる飽和レベルを有する。2つ以上の光子検出器は、同じでも違ってもよい。
【0066】
本発明をより十分に理解するために、ここで、本発明の各種の非限定的な例を、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明による荷電粒子を検出する装置の実施形態を概略的に示す。
【図2A−2D】荷電粒子を電荷検出器と光子発生器に集束させることができる、本発明による装置の一部の実施形態を概略的に示す。
【図3】本発明による別の実施形態を概略的に示す。
【図4】本発明による他の実施形態を概略的に示す。
【図5A−5J】図3の装置を使用して記録される、各種のイオン存在量のマススペクトルを示す。
【図5K】図3の装置の高ゲインチャネルの出力のグラフを示す。
【図5L】図3の装置の低ゲインチャネルの出力のグラフを示す。
【図5M】本発明による装置の2つの異なる検出チャネルからのデータを結合したものを示す。
【図6】質量分析計の一部としての、図1、図3または図4の実施形態を概略的に示す。
【図7A】本発明による装置の2つの他の実施形態を概略的に示す。
【図7B】本発明による装置の2つの他の実施形態を概略的に示す。
【図8】本発明によるシンチレータと導電被膜の構成を概略的に示す。
【図9】本発明によるシンチレータと導電被膜および、結合された高速電荷計の構成を概略的に示す。
【図10】MCPを含む、本発明の別の実施形態を概略的に示す。
【図11】光子レンズを含む、本発明のさらに別の実施形態を概略的に示す。
【図12】分割導波管を含む、本発明のさらにまた別の実施形態を概略的に示す。
【図13】分割導波管を含む、本発明のさらにまた別の実施形態を概略的に示す。
【図14】本発明による装置の各種の段階を通じた電界を概略的に示す。
【図15A】本発明において使用するための、シンチレータと導電層の別の構成を概略的に示す。
【図15B】本発明において使用するための、シンチレータと導電層の別の構成を概略的に示す。
【図16】二次電子を検出するための荷電粒子検出器がない、本発明の異なる態様による装置を概略的に示す。
【図17】電荷収集手段とデジタイザとを容量的に結合させた、本発明による荷電粒子を検出する装置の他の実施形態を概略的に示す。
【図18】電荷収集手段とデジタイザとを誘導的に結合させた、本発明による荷電粒子を検出する装置の他の実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1を参照すると、本発明による装置の第一の実施形態が概略的に示されている。装置1は、マイクロチャネルプレート(MCP)2を含み、これは二次電子発生器として機能し、MCP 2に入射する入射イオン(+イオン)から二次電子(e-)を発生させる。MCPは、浜松ホトニクスのF2222−21からその標準装備の蛍光スクリーンを外したものである。MCP 2は、真空環境、たとえば、質量分析計の真空環境内に設置される。MCP 2の、動作時に二次電子を放出する後部は、蛍光スクリーン4(モデルEi−Mui E36)の形態のシンチレータと対面しており、蛍光スクリーン4は電子の衝突に応答して、公称波長380nmの光子を発生させる。本明細書において、ある構成部品の前部または前面という用語は、入射イオンに最も近い面(すなわち、上流面)を意味し、構成部品の後部または後面は、入射イオンから最も遠い面(すなわち、下流面)を意味する。蛍光スクリーン4は、その後面が厚さ1から2mmのB270ガラスまたは石英ブロックの形態基板6によって支持され、それによって蛍光スクリーンはMCP 2と対面する。石英基板6は、380nmの光子に対して透明である。蛍光スクリーン4は、今度は、MCP 2と対面するその前面に、導電性材料、この場合、金属の薄い層8を有する。蛍光スクリーン4と金属層8の合計厚さは、約10μmである。層8は、好ましくは幾分かの導電性を有するべきであるため、金属層が理想的であり、これは、好ましくは、電子の少なくとも一部を蛍光スクリーンに伝達できるべきであり、また、理想的には、蛍光スクリーン内で発生された光子を反射するべきである。層8の他の特性としては、蛍光スクリーン上にコーティング可能であるべきであり、真空内で蒸発しない(すなわち、真空対応である)。この実施形態において、金属層8は、厚さ50nmのアルミニウム層であり、これは、二次電子が蛍光スクリーン4まで通過できるような透明性を持つのに十分な薄さである。金属層8は、蛍光スクリーンを保護し、その上に生成される電荷を拡散させるほか、光子があればそれを光子検出器へと戻すように方向付けるのに役立つ。層8はまた、本発明において、これに接続されたデジタイザ14の形態の高速電荷計のための電荷ピックアップとして機能する。デジタイザ14は、動作速度1GS/sの、2つの入力チャネル、チャネル1(Ch1)とチャネル2(Ch2)で動作するGage Cobra 2GS/sデジタイザである。入力チャネルの各々は、たとえば後述のように、Ch1を金属層8からの電荷ピックアップ用、Ch2をPMT光子検出器12用として、別の検出器をサンプリングする。したがって、Ch1は低ゲイン検出チャネルとなり、Ch2は高ゲイン検出チャネルとなる。プリアンプを、検出器8と12の各々の付近の、デジタイザ14の前の検出器8と12の各々の付近で使用してもよく、それによって、デジタイザのフルレンジを利用できるようにゲインを調整できる。MCP 2の後面と金属層8の前面の間の距離は、この実施形態においては13.5mmである。基板6は、有利な点として、MCP 2、金属層8および蛍光スクリーン4等の真空中で動作可能な構成部品が設置される真空環境7と、光子検出器とデータ処理機器が設置される大気環境9の間の分離手段として使用され、これについて以下に説明する。たとえば、基板6は真空室(図示せず)の壁10に取り付けてもよく、この真空室内には真空中で動作可能な構成部品が設置される、後述の図3から明らかとなるように、真空は、質量分析計またはその他の分析機器の真空であってもよい。蛍光スクリーン4とその基板5の下流に、光子増倍管(PMT)12の形態の光子検出器があり、これはこの実施形態において、浜松ホトニクスのモデル番号R9880U−110である。基板6の後面は、PMT 12の前面から5mmの距離だけ離れている。PMT 12の出力信号は、デジタイザ14の第2のチャネル(Ch2)の入力に供給され、それによって、このチャネルは装置の高ゲイン検出チャネルとなる。デジタイザのチャネルCh2とCh2の出力(それぞれ、検出チャネルCh1とCh2の入力から生成されるデジタル信号からなる)は、ユニット15(Dell Precision T7400)のコンピュータに供給されて、ここでデータ保存および/または処理が行われる。ユニット15はまた、MCP 2とPMT 12のための電圧源を含む。ユニット15のコンピュータはVDUスクリーン17に接続され、ここで、取得され、および/または処理されたデータがグラフィック表示される。いくつかの実施形態において、ユニット15のコンピュータはまた、適当なコントローラを介して接続されてもよく、これによってユニット内のMCP 2とPMT 12のための電圧源を制御して、たとえばこれらのゲインを個別に制御する。回路内の補助的および中間的デバイスは、電源、アンプ等を含め、当業者にとって明らかであるため、簡略化のために図1には示されていない。ユニット15のコンピュータはまた、選択肢として、入射イオン源、たとえば質量分析計のコントローラに接続してもよく(接続は図示せず)、それによって、入射イオンの電流のほか、イオンのエネルギーを制御することができる。当然のことながら、ユニット15のコンピュータは、システム内の他のいずれの構成部品にも動作的に接続してよく、それによって、そのような構成部品、たとえば電圧制御を必要とする構成部品を制御する。
【0069】
動作時に、入射イオン、この例では正電荷を持つイオン(すなわち、装置は正イオン検出モードである)がMCP 2に入射する。しかしながら、当然のことながら、各種の構成部品に異なる電圧を使用することにより、装置は、負電荷を持つ入射イオンを検出するようにセットアップしてもよい。一般的な用途、たとえばTOF型質量分析において、入射イオンは、時間に応じたイオンビームの形態で到達し、すなわち、イオン電流は時間とともに変化する。MCP 2の前(または入射)面を−5kVの負電圧でバイアスして、正電荷を有する入射イオンを加速させる。MCP 2の後面は、−3.7kVの、より小さな負電圧でバイアスし、それによって、MCPの前後の電位差(PD)を1.3kVとしている。MCP 2によって生成された二次電子(e-)は、MCPの後面から放出される。MCP 2の電子イオン交換率は約1000であり、すなわち、各入射イオンは平均で約1000個の二次電子を生成する。この例におけるような正イオン検出の場合、金属層8は大地電位に保持され、それによって、MCP 2と層8の間のPDは3.7kVとなる。二次電子がそこに衝突してその中を移動する際に誘導される金属層における電荷の変化は、入力Ch1を介してデジタイザ14によってピックアップされ、デジタイザ14は、今度は、それぞれのデジタル出力電気信号を生成する。デジタイザの出力信号は、ユニット15のコンピュータに供給され、そこでデータとして保存される。本発明の装置によって、MCP 2に入る入射イオンビームの実質的に全部を二次電子の生成に利用でき、MCP 2からの二次電子の実質的に全部の通過を、金属層8、ひいては関連するデジタイザ14によってピックアップできる。二次電子は、金属層8を通過して蛍光スクリーンに衝突するのに十分なエネルギーを有し、光子を生成し、光子は、今度は、金属層8からの反射の援助を受けて下流に移動して、PMT 12によって検出される。本発明の装置によって、MCP 2からの二次電子の実質的に全部を、蛍光スクリーン4からの光子の生成に使用することができる。その後、光子の実施的に全部がPMT 12によって検出されてもよい。PMT 12からの出力信号は、デジタイザ14の入力Ch2に供給され、デジタイザ14は、今度は、それぞれのデジタル出力電気信号を生成する。Ch1とCh2からのデジタイザ出力信号は、ユニット15のコンピュータに供給され、コンピュータはこれらをデータとして保存し、データ処理および/またはデータ出力を実行する。本発明はそれゆえ、有利な点として、イオンまたは電子ビームを2つ以上の小さなフラクションに分割すること、およびフラクションを検出することに依存するのではなく、電荷として装置によって検出された同じ荷電粒子(この場合、二次電子)の少なくとも一部がまた光子も生成し、その後、この光子も検出される。その結果、より効率的に荷電粒子を使用し、感度の高い検出を行うことができる。
【0070】
1つの特定のデータ処理モードにおいて、ユニット15のコンピュータは、デジタイザの低ゲインのCh1と高ゲインのCh2のチャネルからのデジタル出力信号の各々を合成して、両方のチャネルの全体の信号を表す1つの信号を供給する。好ましいデータ処理モードにおいて、ユニット15のコンピュータは、デジタイザの低ゲインのCh1と高ゲインのCh2のチャネルからのデジタル出力信号の各々を結合し、最終出力のために使用される信号が、高ゲインのチャネルからの信号が飽和したデータポイントを除き、高ゲインのチャネルからのものとなるようにし、その地点では、飽和していない、低いほうのゲインのチャネルからの信号を使うが、これを高いほうのゲインのチャネルのスケールに適合するようにスケーリングする(たとえば、低ゲインの信号は、高ゲインのチャネルが、ある数の入射イオンについて低ゲインのチャネルよりx倍大きい信号を供給する場合、すなわち、xが低ゲインのチャネルに対する高ゲインのチャネルの倍率である時に、係数xでスケーリングする、すなわち係数xを掛ける)。他のデータ処理モードも、2つの入力チャネルからのデータ処理に関して知られており、当業者にとっては明らかであろう。
【0071】
本発明のまた他の態様によれば、有利な点として、入射荷電粒子の高ダイナミックレンジのマススペクトルを記録する方法が提供され、この方法は、
比較的低いゲインの検出器において直接または間接に入射荷電粒子を検出し、前記比較的低いゲインの検出器からの低ゲイン出力を発生させるステップと、
比較的高いゲインの検出器において直接または間接に入射荷電粒子を検出し、前記比較的高いゲインの検出器からの高ゲイン出力を発生さるステップと、
低ゲイン出力と光ゲイン出力を合成して、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するステップと、
を含む。
【0072】
この方法は、好ましくは、比較的低いゲインの検出器において直接または間接に検出されたものと同じ入射荷電粒子の少なくとも一部を、比較的高いゲインの検出器において直接または間接に検出するステップを含む。より好ましくは、比較的低いゲインの検出器において直接または間接に検出されたものと同じ入射荷電粒子の少なくとも30%、少なくとも50%、または少なくとも75%が、比較的高いゲインの検出器において直接または間接に検出される。
【0073】
その他のデータ処理ステップ、たとえば、データフィルタ処理ステップを、必要に応じて、当業界において知られているように実行してから、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成してもよい。比較的低いゲインの検出器は、好ましくは、本明細書に記載されるように、荷電粒子検出器である。比較的高いゲインの検出器は、好ましくは、本明細書に記載されているように、光子検出器である。荷電粒子検出器と光子検出器は、より好ましくは、本発明の他の態様による検出装置の一部である。低ゲイン出力と高ゲイン出力を合成して、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するステップは、好ましくは、高ゲイン出力を使用して、マススペクトルの中の高ゲイン出力が飽和していないデータポイントについての高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成し、低ゲイン出力を使用して、マススペクトルの中の、高ゲイン出力が飽和するデータポイントについての高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するステップを含む。マススペクトルのうち、低ゲイン出力を使用して、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するデータポイントについて、低ゲイン出力は好ましくは、比較的高いゲインの検出器と比較的低いゲインの検出器の倍率によってスケーリングし、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成する。
【0074】
本明細書において、マススペクトルという用語は、その範囲の中に、m/z以外であるが、m/zに関するドメイン、たとえば、TOF型質量分析計等の場合の時間ドメイン、周波数ドメイン等を有する他のすべてのスペクトルを含む。
【0075】
図1に示される装置の好ましい実施形態において、集束を用いて、荷電粒子(入射荷電粒子または入射荷電粒子から生成された二次荷電粒子のいずれか)を電荷検出器および/または光子発生器に集束させてもよい。図1を参照すると、このような集束は、好ましくは、MCP 2の後面と蛍光スクリーン4の上の金属層8の間で実行される。このような集束は、イオン光学系により実現され、このイオン光学系は、有利な点として、MCP 2の取付手段または外枠によって提供されてもよい。このような実施形態は、図2Aに概略的に示されており、この図は、MCP 2の後面と、MCP 2に対面する金属層8をその上に有する蛍光スクリーン4を示している。MCP 2と金属層8の間に、イオン光学リング電極3aと3bがあり、これらは実際には、MCP 2の外枠の別々の部品とすることができる。あるいは、リング電極3aと3bは、独立した構成要素とすることができる(すなわち、MCPの外枠またはその外枠や取付手段の一部ではない)。リング電極3aと3bに電圧が印加され、粒子が集束される。リング電極3aと3bには、集束させる必要性に応じて、独立して電圧が印加されてもよく(すなわち、相互から独立して、またMCP 2から独立して)、または、有利な点として、同じ電圧を印加してもよい。リング電極3aと3bに印加される電圧は、MCP 2からの二次電子を、これらがリング電極3aと3bを通って金属層8へと移動する際に、適当に集束させるように選択してもよい。リング電極3aと3bへの電圧を調整することによって、金属層8の異なる領域が二次電子によって照明されるように、および/または金属層8において異なる二次電子流が受け取られるように集束を変化させることができる。いくつかの実施形態において、リング電極3aと3bへの電圧は、マススペクトルの記録中に、検出装置に入る入射イオンの質量の違いによって集束が異なるように変化させることができ、たとえば、イオン存在量の高いイオンの質量の場合(大きな検出ピーク)は集束させず、イオン存在量に関する情報は、同じスペクトルまたは以前のスペクトルのいずれから得たものでもよい。このような実施形態において、たとえば、大きいピークが出現しようとする時に、高速パルサを用いてリング3aと3bに電圧をパルス状に印加してもよい。このような動作モードは、検出器の飽和の問題を低減させるのに役立つ。さらに、光子検出器および/またはシンチレータの動作寿命は、このようにして保存されるかもしれない。図2Bから図2Dには、図2Aのセットアップの概略的な側方断面図が示され、図2Aに示される集束構造を使用して実現できる、異なる電子集束の例が描かれている。二次電子の異なる軌道が、線11によって示される。図2Bから図2Dに示されるすべての場合において、MCP 2の後面に印加される電圧は−3700Vであり、金属層8と蛍光面4は大地電位にある。リング電極3aと3bは一緒に同じ電圧に接続されており、この電圧は各図において以下の数値を有する。
図2B 電圧(3a,3b)=−3700V
図2C 電圧(3a,3b)=−2900V
図2D 電圧(3a,3b)=−2000V
【0076】
図2Bでは、二次電子11は、金属層8と蛍光スクリーン4の全体の領域よりずっと小さな領域に集束されている。図2Cでは、二次電子11は、金属層8と蛍光スクリーン4の領域の大部分を利用するように集束されている。図2Dでは、二次電子11は集束されず、それによって電子の一部は金属層8と蛍光スクリーン4の領域の外を通過し、たとえば、これは電子流が高いときに使用されてもよい。このようにして二次電子を集束させることはまた、電子の時間集束に影響を与えうる。時間集束は、図2Cに示される集束においてよく保存され、図2Dの場合もまた良好である。しかしながら、図2Bの場合、時間集束はあまりよくない。
【0077】
本発明による装置の別の例が図3に概略的に示されており、図中、図1と図2Aから図2Dに示されるものと同様の構成部品には同様の番号が付与されている。この装置のうち、デジタイザ14とユニット15のような特定の構成部品は、図3には示されていないが、これらは図1に示されているものと同じである。図3の装置は概ね図1に示されているものと同じであるが、相違点として、リング電極3aと3bが含められており、使用時にはそこに−2900Vの電圧が印加され、電極3aと3bは、この例においては、有利な点として、MCP 2の外枠のリングによって構成される。電極3aと3bに印加される電圧は、システムの他の電圧と同様に、ユニット15のコンピュータ(図3では示さず)によって制御される。この装置はまた、使用時に大地電位に保持されて、TOF型質量分析計のTOF領域を画定するグリッド32と、−5200Vに保持されるグリッド31も使用しており、このグリッド31は、MCP 2からの二次電子がTOF領域に入り、またグリッド32に衝突して二次イオンを発生させ、これがMCP 2に向かって移動して、ゴーストピークを生じさせるのを制限する。
【0078】
図3に示される装置の変形が図4に示され、これと図3に示される装置との相違点は、光子がミラー51によって約90度反射されて、PMT 12に到達することである。光子ビームのこのような偏向、または何らかのその他の偏向は、限られた空間、たとえば質量分析計の中に装置の構成部品のすべてを収容するために使用してもよい。
【0079】
それらの異なる検出特性によって、デジタイザの入力Ch1に接続された金属層8は、デジタイザの入力Ch2に接続されたPMT 12への、有効に異なるゲインを有する検出チャネルを構成する。金属層8は、比較的低いゲインの検出チャンネルを提供し、PMT 12は、比較的高いゲインの検出チャネルを提供する。シンチレータの上流に透明金属層を利用することによって、二次電子の実質的に全部を電荷検出と光子生成の両方に使用することが可能となり、それにより、今度は、単純で低コストの構成部品の装置において高い感度と高ダイナミックレンジが提供される。
【0080】
図3に関して上述した装置と電圧を使用して実現可能なダイナミックレンジの例を、図5Aから図5Jに関して説明する。図5Aから図5Jは、図3に示される装置を使用して記録された、ウィンドウ幅10Da(+/−5Da)の、単位電荷だけ正帯電したカフェインイオンのTOFマススペクトル(信号強度対時間(μs))を示す。図5Aと図5Bは、低いゲインの電荷検出チャネル(Ch2)(図5A)と高いゲインのPMTチャネル(Ch1)(図5B)の各々の、単一の入射イオンについて記録されたスペクトルを示し、図5Cと図5Dは、低ゲインの電荷検出チャネル(図5C)と高ゲインのPMTチャネル(図5D)の各々の、2,800個の入射イオンについて記録されたスペクトルを示し、図5Eと図Fは、低ゲインの電荷検出チャネル(図5E)と高ゲインのPMTチャネル(図5F)の各々の、10,000個の入射イオンについて記録されたスペクトルを示し、図5Gと図5Hは、低ゲインの電荷検出チャネル(図5G)と高ゲインのPMTチャネル(図5H)の各々の、50,000個の入射イオンについて記録されたスペクトルを示し、図5Iと図5Jは、低ゲインの電荷検出チャネル(図5I)と高ゲインのPMTチャネル(図5J)の各々の、100,000個の入射イオンについて記録されたスペクトルを示す。検出器は、実際には、図1、図3、図4に示される装置の場合、一般に、最適なダイナミックレンジと単一イオンの検出のために+/−200mVの入力範囲を有するデジタイザを用いて動作される。デジタイザの入力範囲が大きくなると、ベースラインのノイズが増大し、単一イオンの検出が困難となる。図5Aから図5Dのスペクトルでは、入力範囲が+/−200mVのデジタイザを使用した。しかしながら、図5Eから図5Jに示されるスペクトルでは、単にピークの大きさを示すことができるようにするために、より高い入力範囲、+/−500mVを使用した。200mV(すなわち0.2V)に示される破線の下の信号に関する灰色の領域は、+/−200mVの入力範囲を使用した場合にPMT検出器がデジタイザによってクランプされたであろう部分を示しており、200mVまでの信号に関する白い領域は、光検出器の応答が実質的に線形である領域を示している。PMTチャネルのゲインが(電荷検出チャネルと比較して)はるかに大きいことで、単一イオンに対する感度が高くなることがわかり、その一方で、イオン存在量が大きいと、PMTチャネル出力が飽和し、すなわち、デジタイザによってクランプされ、その場合は低ゲインの電荷検出チャネルから飽和していない出力が供給される。実際には、2つのチャネルの出力は一般に、合成されて、最終的なスペクトルが生成される。
【0081】
本発明で実現可能なダイナミックレンジをさらに、図5Kと図5Lに関して説明する。図5Kは、図3の装置の高ゲインのチャネル(Ch2)、すなわちPMT検出器からの出力のグラフを示す。同様に、図5Lは、低ゲインのチャネル(Ch1)、すなわち電荷検出器からの出力のグラフを示す。図5Kと図5Lのグラフは、それぞれの出力の電圧(max V)対入射イオンの数を示している。2つのグラフは、Ch1とCh2から同時に記録された実験データを示す。プロットされた入射イオンの数は、検出器に衝突した実際のイオンの数ではなく、入射イオン源としての質量分析計に供給が命じられた公称の入射イオン数である。その結果、各イオン数について、特にイオン数が少ない場合に、出力電圧の広がりが見られ、これは、MCP、蛍光スクリーンおよびPMTにおける二次粒子生成の統計的性質から、1回の実験と次の実験の間で、入射イオンの数を正確に制御できないからである。単一イオンを記録するという観点から望ましい、+/−200mV(すなわち0.2V)のデジタイザの入力範囲については、図5Kに示される高ゲインのPMTチャネルは、実際には、1個のイオンから約1000個のイオンの検出をカバーでき、その一方で、図5Lに示される低ゲインの電荷検出は、1000個のイオンから10,000〜100,000個のイオンの検出をカバーできることがわかる。したがって、2つの検出チャネルを同時に動作させた場合、104〜105のダイナミックレンジが実現可能であり、すなわちTOFマススペクトルの記録は5桁まで可能となる。この検出システムで実現可能な高い感度(単一イオンまで)により、スペクトルを累積せずに、フラグメンテーションスペクトルが得られる可能性がある。本発明の検出装置から得られたデータは、本明細書に記載するような様々な方法で処理してもよい。1つのデータ処理の方法として、異なる検出チャネルからのデータを単純に合成(結合)してもよい。2つの検出チャネルからのデータを結合する好ましい方法が図5Mに示されており、ここでは図3に示される装置で得られたデータが使用されている。図5Mは、カフェインのTOFマススペクトルの小さな選択部分を示している(強度対時間(μs))。図5Mで水平軸の下には、高いゲインのPMTチャネル(Ch2)らのデータで、モノアイソトピック質量のピーク(a1)、第一のアイソトポマ(a2)および第2のアイソトポマ(a3)のピークを示すデータと、低ゲインの電荷ピックアップチャネル(Ch1)からのデータで、同様に、モノアイソトピック質量のピーク(b1)、第一のアイソトポマ(b2)および第2のアイソトポマ(b3)のピークを示すが、b2とb3は識別が難しいデータの両方が示されている。低ゲインのチャネルの出力信号は一般に、高ゲインのチャネルに合致させるために、時間軸上でシフトされる。2つのチャネルからのデータは、ユニット15のコンピュータによって結合され、コンピュータは装置のデジタイザから取得したデータを保存し、処理する。結合された結果のデータは水平軸より上に示され、モノアイソトピック質量のピーク(c1)、第一のアイソトポマ(c2)および第2のアイソトポマ(c3)のピークが示されている。結合データは、高ゲインのPMTチャネル(Ch2)からのデータであるが、その飽和時、たとえばピークa1では、低ゲインの電荷ピックアップチャネル(Ch1)からのデータと差し替えられている。低ゲインのデータを使用する場合、これは、高ゲインのチャネルのレベルに適合するようにスケーリングされる。それゆえ、高ゲインのチャネルの出力が飽和した時(a1)、結合データには飽和が見られない(c1)。
【0082】
図6は、たとえば、図1、図3または図4に示されるような装置が、TOF型質量分析計の一部を構成する方法を概略的に示している。イオン源20、たとえばMALDIまたはESI源はイオンを生成し、このイオンはイオン光学系22を通り、イオン光学系22はイオンを集束させ、および/または加速させ、それによって、均一な運動エネルギーを有する短い持続時間のイオンパケットを生成する。このイオンパケットは次に、飛行領域24の中を移動し、この飛行領域24は1つまたは複数のイオンミラーを設けて飛行経路の長さを延ばし、イオンパケットがイオンのm/zに応じた時間で分離されるようになっていてもよい。時間分離されたイオンが飛行領域24から放出されて、図1、図3または図4に示されるような検出装置によって検出される。しかしながら、当然のことながら、原則的に、本発明に使用可能な質量分析計とイオン源のタイプは、限定されない。
【0083】
当然のことながら、図1、図3および図4に示される実施形態には、多くの変形を考案することができる。いくつかの変形例としては、次のものがある。たとえば、使用される構成部品の種類とモデルおよび動作条件等に応じて、構成部品に異なる電圧をかけてもよい。2つ以上のMCPを使用してもよく、あるいはMCPの代わりに、またはMCPに加えて、ディスクリートダイノード型のSEMを使用してもよい。異なる種類の金属層のほか、異なるシンチレータ、たとえば有機シンチレータを使用してもよい。他の装置では、高速デジタイザ14を、代わりに、金属層8に容量的または誘導的に結合して、過渡電荷だけが検出されるようにしてもよい。これは、金属層8および/または蛍光スクリーン4が大地電位にない場合に好ましい。そうしないと、検出電極8の後の回路を、その電極と同じ電圧にする必要が生じる。これは、たとば、金属層8が一般に大地電位にない、負イオン検出モードの場合にあてはまるかもしれない。多くの場合に有利となる変更は、シンチレータ基板と光子検出器の間に光子ガイドを使用して、なるべく多くの光子を検出器に効率的に導く、というものである。検出される光子の数をなるべく多くするために、複数の光子検出器、たとえば、2つ以上のPMTを使用してもよい。他の種類の光子検出器もまた使用でき、たとえば、1つまたは複数のフォトダイオードまたはフォトダイオードアレイがある。ここで、別の変形のいくつかの例を説明する。
【0084】
図7Aと図7Bを参照すると、本発明による2つの他の実施形態が概略的に示されている。これらの実施形態において、入射イオンは、TOF領域を画定する大地電位のグリッド32を通過し、その後、ディスクリートダイオード型の二次電子増倍管34に入射する。イオンはまず、高い電圧(たとえば、10kV以上)に保たれる変換ダイノード36に衝突する。変換ダイノード36は二次電子を発生させ、二次電子は次に複数のダイノード38を介した電子増倍管の中を進み、これらのダイノード38は各々漸進的に1つ前のものより大きな正電圧に保持されており、二次電子カスケードを生成する。放出された電子は、40の位置において電子増倍管34の領域から出ると、シンチレータ材料46の上にコーティングされた導電層(たとえば、薄い金属層)48に衝突する。導電層48は金属シールド42によって包囲されて、ファラデーカップのような形状とされ、これはまた、電界を、荷電粒子が望ましくない周辺領域に遊離することを防止するような形にするのに役立つ。しかしながら、シールドを設けるか否かは選択できる。シールド42を使用する代わりに、後述のような他の手段によって電界を電子増倍管34と導電層48の間の領域に限定して、粒子の遊離を防止してもよい。シールド42は金属層48と同じ電位、すなわち、正電荷を持つ入射イオンの場合は大地電位に保たれる。導電層48は十分に薄くし、電子増倍管34からのエネルギーを有する二次電子がシンチレータ46まで透過できるようにし、シンチレータ46は中実の不活性基質内に分散されたシンチレーション材料からなる。薄い導電層48は、入射二次電子によって層48で誘導された電荷の変化をピックアップするための充電電極として機能し、接続手段44によって高速デジタイザ(図示せず)の入力に接続される。シンチレータは、入射二次電子に応答して光子を生成し、光子はその後、光子ガイド50を通って移動して、光子検出器に到達し、光子検出器はまた高速デジタイザ(図示せず)の入力に接続されている。この場合の光子ガイドはガラス練板であり、その内部対面側面49はアルミニウム被覆され、光子を検出器に向かって反射する(そのうちの2つが示されている)。図7Aに示される実施形態において、光子検出器はフォトダイオード54の形態である。図7Bに示される実施形態では、2つの光子検出器が使用され、それぞれ同一のフォトダイオード54aと54bの形態である。フォトダイオード54aと54bの各々は、その前方に異なるそれぞれの光子減衰器52aと52bを有し、それによってフォトダイオードが過剰な光子衝突から保護され、および/またはフォトダイオード54aと54bが確実に異なる飽和レベルを有する。当然のことながら、減衰器を設けるか否かは選択でき、たとえば、1つのフォトダイオードだけの前方に減衰器を設けてもよい。デジタイザの出力は、接続されたコンピュータ(図示せず)によって、前述のように扱われる。
【0085】
図8を参照すると、シンチレータとこれに関連する導電層被膜のより好ましい構成が示されており、これは、本明細書に記載されているどの実施形態においても利用できる。この構成は、蛍光スクリーン64を有し、その上に厚さ50nmの薄い導電被膜62があり、蛍光スクリーン64は、石英またはガラス基板66の上にコーティングされている。導電被膜62は、高速デジタイザ(68)との直接接続部63を有する。
【0086】
図9を参照すると、図8に示されているものと同様であるが、代わりに、高速デジタイザ68が、コンデンサ極板69を介して導電被膜62に容量的に結合されている。
【0087】
図17を参照すると、実質的に図1に示されているような装置が示されているが、この図では、電荷検出電極とデジタイザが容量的に結合されており、コンデンサCが金属層8である電荷収集手段とデジタイザ14の間に接続されている。抵抗Rもまた、金属層8からの電流経路上に配置されている。
【0088】
図18を参照すると、実質的に図1に示されているような装置が示されているが、この図では、電荷検出電極とデジタイザが誘導的に結合されており、コイルペアLが金属層8である電荷収集手段とデジタイザ14の間に接続されている。抵抗Rもまた、金属層8からの電流経路上に配置されている。ペアLの二次コイルの一端はデジタイザ14に接続され、もう一端は接地されている。他の実施形態において、二次コイルのもう一端は、接地する代わりに、デジタイザに接続して、差動入力を提供するようにしてもよい。ペアLの一次コイルは、電圧源に接続して金属層8の表面を特定の電圧に設定することができる。アンプ(図示せず)をコンデンサCまたは誘導子Lとデジタイザ14の間に使用してもよい。本明細書で説明する本発明の実施形態のいずれにおいても、アンプを荷電粒子検出器の電荷収集電極とデジタイザの間に使用できることは明らかである。
【0089】
図7Aと図7Bに示される実施形態において使用されるディスクリートダイノード二次電子増倍管の代替として、連続ダイノード増倍管を使用してもよい。たとえば、図10は、図7Aと図7Bに示されるものと同様の実施形態を示しており、図中、同様の参照番号が同様の高背部品に使用されているが、MCP 41が、導電被膜電極48とシンチレータ46の上流で入射イオンから二次電子を発生するために使用されている。
【0090】
図7Bに示されるような光子検出器の前で使用される減衰器の代わりに、またはこれに加えて、光子を光子検出器の検出素子に集束させるための1つまたは複数のレンズを使用してもよい。1つまたは複数のレンズは、球面または円柱レンズであってもよい。1つまたは複数のレンズは、好ましくはフレスネルレンズである。いくつかの実施形態において、レンズは、シンチレータの基板またはその基板の一部とすることができる。1つまたは複数の円柱レンズは、選択的に1つまたは複数のフレスネルレンズとして、複数の光子検出器が使用されている場合に、光子ビームをよりよく利用し、これを光子検出器へと方向付けるために使用できる。図11は、そのような実施形態として、図7Bに示されるものと略同じものを示しているが、この図では、集束レンズ82aと82bがそれぞれ光子検出器84aと84bの前に設置されており、これらは、この実施形態においては、アバランシェフォトダイオード型のフォトダイオードである。レンズ82aと82bは、各検出器84aと84bに到達する光子の量を制御するための手段として使用してもよい。たとえば、この実施形態のレンズ82aと82bは、検出器84aと84bを異なるゲインとするための手段として異なる集束力を有するが、他の実施形態では、レンズは、必要に応じて他の手段によって同じゲインとしても、異なるゲインとしてもよい。
【0091】
図12を参照すると、図7Aと図7Bと同様であるが、光子ガイドとして複数の分割導波管70を有する他の実施形態が示されており、各導波管は、光子を光電子増倍管(PMT)74の形態のそれぞれの検出器に伝達する。分割導波管70は各々、たとえば、光ファイバケーブルまたは、光ファイバケーブルの束を含んでいてもよい。図12に示されるPMT 74の代わりに、図13に示されるようにフォトダイオード94を使用してもよく、それ以外の点では図13は図12に示されるものと同じ実施形態を示している。
【0092】
構成部品の好ましい組み合わせの例としては、下表に示されるものがある。
【0093】
【表1】
【0094】
図14を参照すると、本発明による装置の各種の段階を通じた電界が概略的に示されている。図13に示される実施形態を基準として使い、図14の上に示しており、横軸(すなわち、装置の前方から後方、すなわち図の左から右に向かって延びる)に沿ったいくつかの地点a、b、c、d、eおよびfを示す。図14には電界のトレースが2つ示されており、上のトレースは正電荷を持つ入射イオンを検出するために使用される電界、下のトレースは負電荷を持つ入射イオンを検出するために使用される電界である。留意すべき点として、図14においては絶対的なスケールが示されず、各トレースでは相対的な電圧だけが示されている。さらに、上下のトレースは相互に異なるスケールである。位置aは、本発明の検出装置に入る前の質量分析計の真空中にある入射イオンを表す。位置bは、たとえばSEMの変換ダイノードまたはMCPの前端を表し、ここでは高電圧が印加されて入射イオンが加速され、これは、正電荷を持つ入射イオンの場合は大きな負の電圧であり、負電荷を持つ入射イオンの場合は大きな正電圧である。位置cは、たとえばSEMの最後の段階またはMCPの後面を表す。位置bとcの間に正に向かう電場勾配があり、二次電子を、SEMまたはMCPを通って伝達する。位置dは、導電層の電荷ピックアップの周囲のシールドの電位を表し、位置eは導電層の電位を表す。留意する点として、前述のように、シールドを設けるか否かは選択でき、このようなシールドのない他の実施形態では、位置dとeは1つの位置(すなわち、導電層の電位)を表すことができる。dとeの位置はどちらも、有利な点として、入射イオンが正電荷を持つ時には(図14の上のトレース)大地電位に保持され、それによって二次電子がSEMまたはMCPから導電層とその背後のシンチレータに向かって加速される。しかしながら、入射イオンが負電荷を有する時には(図14の下のトレース)、位置dとeにおけるシードと導電層は必然的に高い正電圧である。シンチレータから発生される光子は電界の影響を受けず、電界のない領域を移動して、大地電位の位置fで検出される。それゆえ、光子の生成と検出によって、電子増倍管/検出器からの高電圧の分離が可能となる。
【0095】
図15Aと図15Bを参照すると、本発明で使用するためのシンチレータと導電層の他の構成が概略的に示されている。図15Aにおいて、本発明の実施形態において利用可能なシンチレータと、関連する導電層の構成が示されている。この構成は、使用時に入射イオンまたはイオンから生成された二次電子(e-)が衝突する衝突面103を有するシンチレータ104を含む。光子がシンチレータ104の中で発生され、光子に対して透明な導電層108を通る前方(破線矢印で示される)を含むすべての方向に移動して、光子検出器112に入る。シンチレータは、少なくとも部分的に、電子等の荷電粒子に対して透明であり、それによって、少なくとも一部のイオンまたは電子がシンチレータ104を通過する(すなわち、これらはシンチレータ104内の光子生成イベントで消費されていない)。導電層108はデジタイザ110に接続され、イオンまたは電子がシンチレータ104を通って導電層108に到達することによって誘起された電荷が、本明細書に記載されるように検出される。図15Bにおいて、図15Aに示される実施形態の変形が示されており、図中、導電層が2つのシンチレータの間に挟まれた状態で示されている。図15Aに示される構成部品に加えて、図15Bには、導電層108に代わる導電層118も示されており、導電層118は電子と光子の両方に対して透過である。したがって、電子は導電層118を通過して第二のシンチレータ114に到達し、電荷の通過は前述のようにデジタイザ110によりピックアップされる。次に、光子はまた第二のシンチレータ114の中でも生成される。2つのシンチレータからの光子は検出器114で検出される。
【0096】
本発明は、異なる態様において、荷電粒子検出器を用いない装置と方法が提供され、その代わりにこの装置と方法は2つ以上の光子検出器を含む。図16は、装置の中に電荷計がない、たとえば、シンチレータ上の導電被膜にデジタイザが結合されていない、そのような装置が概略的に示されている。その代わりに、この例では2つのフォトダイオード94aと94bが使用されており、これらは、それぞれフォトダイオード94aと94bの前方に配置された異なる強度の光子減衰器92aと92bによって、光子検出のゲインを変えるように構成されている。減衰器の使用以外にも、異なるゲインを持たせるためのさまざまな方法を、本明細書で説明するように使用してもよい。2つ以上の光子検出器は、同じでも異なっていてもよい。図16に示される例の代替として、当然のことながら、2つのフォトダイオードの代わりに、2つ以上のPMTを使用してもよく、または、フォトダイオードとPMTを使用してもよく、それによって、2種類の光子検出器を使用して異なるゲインとすることができる。光子検出器の多くのその他の異なる構成および/または組み合わせを、本発明のこの異なる態様で使用するために想定できる。
【0097】
たとえば、異なるゲインの2つの(またはそれ以上の)光子検出器の使用は、計器を正と負の両方の入射イオンで動作させる必要があるときに有益となりえ、それは、光子によって導電層と蛍光スクリーンと、光子検出器との間の高電圧を分離できるからである。このような装置を用いて、異なる検出構成を想定できる。たとえば、電荷検出のための容量的または誘導的に結合されたデジタイザを使用してもよく、これは多くの場合、負イオン検出モードにとって好ましいかもしれないが、それ以外の負イオン検出時は、電荷検出のための容量的または誘導的に結合されるデジタイザは不要として、その代わりに、負イオン検出モード時に、異なるゲインの2つの(またはそれ以上の)光子検出器を使用してもよい。いくつかの実施形態において、電荷検出のための直接結合されたデジタイザを正イオン検出モード時に使用し、負イオン検出モード時には、異なるゲインの2つの(またはそれ以上の)光子検出器を使用するように切り替えてもよい。
【0098】
特許請求の範囲を含む本明細書において、文脈が他の意味を示していないかぎり、本明細書における単数形の用語は複数形も含も、その逆でもあると解釈する。たとえば、文脈が他の意味を示していないかぎり、特許請求の範囲を含む本明細書の中の単数の表現、たとえば不定冠詞(“a”または“an”)(たとえば、“an electron multiplier”(電子増倍管)、“a photon detector”(光子検出器)等)は、「1つまたは複数の(“one or more”)」(たとえば、“one or more electron multiplier”(1つまたは複数の電子増倍管)、“one or more photon detectors”(1つまたは複数の光子検出器)等)を意味する。
【0099】
本明細書の説明と特許請求の範囲全体を通じて、「〜からなる」、「〜を含む」、「〜を有する」および「〜を包含する」(“comprise”、“including”、“having”および“contain”)という単語ならびにこれらの単語の変化形、たとえば現在分子(“comprising”)や三人称現在形(“comprises”)等は、「〜を含むが、これに限定されない(“including but not limited to”)」ことを意味し、他の構成要素を排除しようとするものではない(排除しない)。
【0100】
当然のことながら、本発明の上記の実施形態の変形を考案することができ、これらもまた本発明の範囲に含まれる。本明細書で開示される各特徴は、特にことわりがないかぎり、同じ、同等の、または同様の目的を果たす代替の機能によって置き換えられてもよい。それゆえ、特にことわりがないかぎり、開示された各機能は、包括的な一連の同等または同様の機能の一例にすぎない。
【0101】
本明細書に記載されているあらゆる例、または例を挙げるための文言(「たとえば」、「等」(“for instance”、“such as”、“for example”)および同様の文言)の使用は、単に本発明をよりよく説明するためのものであり、他の請求がないかぎり、本発明の範囲に対する限定を示さない。本明細書のいかなる文言も、請求されていない要素を本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈されるべきではない。
【0102】
本明細書に記載されたステップは、特にことわりがないかぎり、または文脈が他の意味を示していないかぎり、どのような順序でも、または同時に、実行することができる。
【0103】
本明細書において開示される特徴の全部は、このような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、どのように組み合わせてもよい。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明のすべての態様に適用可能であり、どのような組み合わせで使用してもよい。同様に、不可欠でない組み合わせで記載された特徴は、別々に(組み合わせずに)使用してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を検出する検出装置であって、
入射荷電粒子を受け取ったことに応答して二次荷電粒子を発生させる二次粒子発生器と、
前記二次粒子発生器によって発生された二次荷電粒子を受け取り、検出して、出力を発生する荷電粒子検出器と、
前記二次粒子発生器によって発生された二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生する光子発生器と、
前記光子発生器によって発生された前記光子を検出して、出力を発生する光子検出器と、を含み、
前記荷電粒子検出器は前記二次荷電粒子を受け取る電極を含み、前記電極は前記光子発生器に関連付けられた導電性材料を含み、
前記荷電粒子検出器と前記光子検出器からの前記出力は、合成されて、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するようになされている検出装置。
【請求項2】
前記導電性材料は、前記光子発生器と接触する導電層を含む、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記導電層は金属層を含む、請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記電極はデジタイザまたはデジタルオシロスコープに結合されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記電極は、容量的または誘導的に前記デジタイザまたはデジタルオシロスコープに結合されている、請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記電極は荷電粒子に対して透明である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記光子検出器は、前記透明電極を通過した二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生させるためのものである、請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記光子発生器は、前記荷電粒子検出器によって受け取られ検出された前記二次荷電粒子の少なくとも一部を受け取ったことに応答して光子を発生させるためのものである、請求項6または請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
使用時に、前記荷電粒子検出器によって受け取られ検出された前記二次荷電粒子の50%超が、前記光子発生器から光子を発生させるためにも使用される、請求項8に記載の検出装置。
【請求項10】
前記荷電粒子検出器は二次荷電粒子を受け取る電極を含み、この電極は二次電子発生器の陽極またはダイノードを含む、請求項1に記載の検出装置。
【請求項11】
使用時に、前記入射荷電粒子から生成された前記二次荷電粒子の50%超が、前記荷電粒子検出器によって受け取られ検出される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項12】
使用時に、前記入射荷電粒子から生成された前記二次荷電粒子の50%超が、前記光子検出器によって受け取られ、光子が発生される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項13】
前記二次荷電粒子を集束させて、前記荷電粒子検出器および/または前記光子発生器に衝突する二次荷電粒子の流れを変化させるためのイオン光学系をさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項14】
前記荷電粒子検出器と前記光子検出器は各々、デジタイザに接続された出力を含み、各検出器からデジタルデータを発生させ、前記デジタイザは、前記荷電粒子検出器から発生された前記データと前記光子検出器から発生させた前記データを結合して結合データセットを生成することによって前記データを処理するコンピュータに接続されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項15】
変換ダイノード、ディスクリートダイノードSEMおよび/または連続ダイノードSEMを含む二次電子発生器を含み、前記光子発生器はシンチレータを含み、前記光子検出器はソリッドステート光子検出器を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項16】
2つ以上の二次粒子発生器および/または2つ以上の荷電粒子検出器および/または2つ以上の光子発生器および/または2つ以上の光子検出器を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項17】
TOF型質量分析計においてイオンを検出する検出装置である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の前記検出装置を含む質量分析計。
【請求項19】
TOF型質量分析計において、請求項1〜17のいずれか一項に記載の検出装置を使用してイオンを検出する方法。
【請求項20】
荷電粒子を検出する方法であって、
入射荷電粒子を受け取るステップと、
入射荷電粒子を受け取ったことに応答して二次荷電粒子を発生させるステップと、
電極を使用して、発生した二次荷電粒子を受け取り、検出して、出力を発生するステップと、
光子発生器を使用して、発生した二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生するステップと、
発生した光子を検出して、出力を発生するステップと、
前記それぞれの出力を合成して、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するステップと、を含み、
前記二次荷電粒子を受け取り検出するための前記電極は、前記光子発生器に関連付けられた導電性材料を含む方法。
【請求項21】
TOF型質量分析計の検出ダイナミックレンジを改善する方法であって、
検出装置において入射荷電粒子を受け取るステップであって、前記検出装置はゲインの異なる少なくとも2つの検出器を含み、前記検出器の少なくとも1つは光子検出器であり、前記検出器の少なくとも1つは荷電粒子検出器であるステップと、
前記少なくとも2つの検出器を介して前記入射荷電粒子を検出するステップと、
を含み、
前記荷電粒子検出器は、二次荷電粒子を受け取る電極を含み、前記電極は、光子発生器に関連付けられた導電性材料を含む方法。
【請求項22】
前記検出装置は、請求項1〜17のいずれか一項に記載の装置である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
入射荷電粒子の高ダイナミックレンジのマススペクトルを記録する方法であって、
比較的低いゲインの検出器において直接または間接に前記入射荷電粒子を検出し、前記比較的低いゲインの検出器から低ゲインの出力を発生させるステップと、
比較的高いゲインの検出器において直接または間接に同じ入射荷電粒子の少なくとも一部を検出し、前記比較的高いゲインの検出器から高ゲインの出力を発生させるステップと、
前記低ゲインの出力と前記高ゲインの出力を合成して、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項24】
前記低ゲインの出力と前記高ゲインの出力を合成する前記ステップは、
前記高ゲインの出力を使用して、前記マススペクトルの中の、前記高ゲインの出力が飽和していないデータポイントの前記高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するステップと、
前記低ゲインの出力を使用して、前記マススペクトルの中の、前記高ゲインの出力が飽和したデータポイントの前記高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記低ゲインの出力は、前記比較的低いゲインの検出器に対する前記比較的高いゲインの検出器の倍率によってスケーリングされる、請求項24に記載の方法。
【請求項1】
荷電粒子を検出する検出装置であって、
入射荷電粒子を受け取ったことに応答して二次荷電粒子を発生させる二次粒子発生器と、
前記二次粒子発生器によって発生された二次荷電粒子を受け取り、検出して、出力を発生する荷電粒子検出器と、
前記二次粒子発生器によって発生された二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生する光子発生器と、
前記光子発生器によって発生された前記光子を検出して、出力を発生する光子検出器と、を含み、
前記荷電粒子検出器は前記二次荷電粒子を受け取る電極を含み、前記電極は前記光子発生器に関連付けられた導電性材料を含み、
前記荷電粒子検出器と前記光子検出器からの前記出力は、合成されて、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するようになされている検出装置。
【請求項2】
前記導電性材料は、前記光子発生器と接触する導電層を含む、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記導電層は金属層を含む、請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記電極はデジタイザまたはデジタルオシロスコープに結合されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記電極は、容量的または誘導的に前記デジタイザまたはデジタルオシロスコープに結合されている、請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記電極は荷電粒子に対して透明である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記光子検出器は、前記透明電極を通過した二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生させるためのものである、請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記光子発生器は、前記荷電粒子検出器によって受け取られ検出された前記二次荷電粒子の少なくとも一部を受け取ったことに応答して光子を発生させるためのものである、請求項6または請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
使用時に、前記荷電粒子検出器によって受け取られ検出された前記二次荷電粒子の50%超が、前記光子発生器から光子を発生させるためにも使用される、請求項8に記載の検出装置。
【請求項10】
前記荷電粒子検出器は二次荷電粒子を受け取る電極を含み、この電極は二次電子発生器の陽極またはダイノードを含む、請求項1に記載の検出装置。
【請求項11】
使用時に、前記入射荷電粒子から生成された前記二次荷電粒子の50%超が、前記荷電粒子検出器によって受け取られ検出される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項12】
使用時に、前記入射荷電粒子から生成された前記二次荷電粒子の50%超が、前記光子検出器によって受け取られ、光子が発生される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項13】
前記二次荷電粒子を集束させて、前記荷電粒子検出器および/または前記光子発生器に衝突する二次荷電粒子の流れを変化させるためのイオン光学系をさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項14】
前記荷電粒子検出器と前記光子検出器は各々、デジタイザに接続された出力を含み、各検出器からデジタルデータを発生させ、前記デジタイザは、前記荷電粒子検出器から発生された前記データと前記光子検出器から発生させた前記データを結合して結合データセットを生成することによって前記データを処理するコンピュータに接続されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項15】
変換ダイノード、ディスクリートダイノードSEMおよび/または連続ダイノードSEMを含む二次電子発生器を含み、前記光子発生器はシンチレータを含み、前記光子検出器はソリッドステート光子検出器を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項16】
2つ以上の二次粒子発生器および/または2つ以上の荷電粒子検出器および/または2つ以上の光子発生器および/または2つ以上の光子検出器を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項17】
TOF型質量分析計においてイオンを検出する検出装置である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の前記検出装置を含む質量分析計。
【請求項19】
TOF型質量分析計において、請求項1〜17のいずれか一項に記載の検出装置を使用してイオンを検出する方法。
【請求項20】
荷電粒子を検出する方法であって、
入射荷電粒子を受け取るステップと、
入射荷電粒子を受け取ったことに応答して二次荷電粒子を発生させるステップと、
電極を使用して、発生した二次荷電粒子を受け取り、検出して、出力を発生するステップと、
光子発生器を使用して、発生した二次荷電粒子を受け取ったことに応答して光子を発生するステップと、
発生した光子を検出して、出力を発生するステップと、
前記それぞれの出力を合成して、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するステップと、を含み、
前記二次荷電粒子を受け取り検出するための前記電極は、前記光子発生器に関連付けられた導電性材料を含む方法。
【請求項21】
TOF型質量分析計の検出ダイナミックレンジを改善する方法であって、
検出装置において入射荷電粒子を受け取るステップであって、前記検出装置はゲインの異なる少なくとも2つの検出器を含み、前記検出器の少なくとも1つは光子検出器であり、前記検出器の少なくとも1つは荷電粒子検出器であるステップと、
前記少なくとも2つの検出器を介して前記入射荷電粒子を検出するステップと、
を含み、
前記荷電粒子検出器は、二次荷電粒子を受け取る電極を含み、前記電極は、光子発生器に関連付けられた導電性材料を含む方法。
【請求項22】
前記検出装置は、請求項1〜17のいずれか一項に記載の装置である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
入射荷電粒子の高ダイナミックレンジのマススペクトルを記録する方法であって、
比較的低いゲインの検出器において直接または間接に前記入射荷電粒子を検出し、前記比較的低いゲインの検出器から低ゲインの出力を発生させるステップと、
比較的高いゲインの検出器において直接または間接に同じ入射荷電粒子の少なくとも一部を検出し、前記比較的高いゲインの検出器から高ゲインの出力を発生させるステップと、
前記低ゲインの出力と前記高ゲインの出力を合成して、高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項24】
前記低ゲインの出力と前記高ゲインの出力を合成する前記ステップは、
前記高ゲインの出力を使用して、前記マススペクトルの中の、前記高ゲインの出力が飽和していないデータポイントの前記高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するステップと、
前記低ゲインの出力を使用して、前記マススペクトルの中の、前記高ゲインの出力が飽和したデータポイントの前記高ダイナミックレンジのマススペクトルを形成するステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記低ゲインの出力は、前記比較的低いゲインの検出器に対する前記比較的高いゲインの検出器の倍率によってスケーリングされる、請求項24に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図5K】
【図5L】
【図5M】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図5K】
【図5L】
【図5M】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2013−508904(P2013−508904A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534654(P2012−534654)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065658
【国際公開番号】WO2011/048060
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508306565)サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー (20)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065658
【国際公開番号】WO2011/048060
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508306565)サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー (20)
【Fターム(参考)】
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