説明

荷電粒子発生装置、帯電装置及び画像形成装置

【課題】放電の発生に伴う周囲の電圧降下を抑制することができる荷電粒子発生装置、帯電装置、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】抵抗層74は、抵抗体102及び絶縁体104から構成されている。抵抗体102及び絶縁体104は、導電性基材72から放電領域84側まで積層方向に伸びるように配置されている。抵抗体102は、放電領域84に対応して設けられており、絶縁体104は、抵抗体102を放電領域84ごとに区分するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子発生装置、帯電装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の像保持体の帯電方式の1つとして、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電方式を用いるものがある。この方式は、被帯電体に対して非接触で帯電を行うものである。その他の帯電方式としては、半導電性の帯電ロールを像担持体に接触回転させるときに両者間に生じる微小空隙で放電を発生させ帯電処理を行う帯電ロール方式を用いるものがある。
【0003】
特許文献1は、平面視で矩形形状をなす絶縁基板と、この絶縁基板上の一側縁部に長辺方向に並置された複数の放電電極と、絶縁基板上の他側縁部に放電電極と一定の間隔を隔てて設けられた帯状の共通電極と、絶縁基板上に放電電極と共通電極との間に両者を電気的に接続するように一体的に設けられた抵抗体とを備え、この抵抗体には複数のスリットが長辺方向に所定の間隔で形成されているイオン発生器を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−49857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、放電の発生に伴う周囲の電圧降下を抑制することができる荷電粒子発生装置、帯電装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた絶縁体と、を有し、前記第2の電極は、前記第1の電極、前記絶縁体、及び当該第2の電極が並ぶ第1の方向に対して開口する開口部を有し、前記絶縁体は、前記開口部と連続し当該開口部と連続する方向には開放され、第1の方向と垂直な第2の方向には制限された空間である領域制限部を有し、前記第1の電極は、第1の方向の抵抗成分が第2の方向の抵抗成分より小さい異方性抵抗部を有する荷電粒子発生装置である。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記異方性抵抗部は、絶縁性粒子が分散されている請求項1記載の荷電粒子発生装置である。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記領域制限部は、円筒形状に形成され、前記絶縁性粒子の粒径は、前記領域制限部の内径よりも小さい請求項2記載の荷電粒子発生装置である。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記異方性抵抗部は、導電性粒子が分散されている請求項1記載の荷電粒子発生装置である。
【0010】
請求項5に係る発明は、第1の電極と、被帯電部材に対向して配置される第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた絶縁体と、を有し、前記第2の電極は、前記第1の電極、前記絶縁体、及び当該第2の電極が並ぶ第1の方向で前記被帯電部材に向けて開口する開口部を有し、前記絶縁体は、前記開口部と連続し当該開口部と連続する方向には開放され、第1の方向と垂直な第2の方向には制限された空間である領域制限部を有し、前記第1の電極は、第1の方向の抵抗成分が第2の方向の抵抗成分より小さい異方性抵抗部を有する帯電装置である。
【0011】
請求項6に係る発明は、像保持体と、前記像保持体に対し非接触で配置され、当該像保持体を帯電する帯電装置と、前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に露光により形成された潜像を、現像剤により現像する現像装置と、前記現像装置により現像された像を記録媒体に転写する転写手段と、前記転写手段により前記記録媒体上に転写された像を当該記録媒体に定着させる定着手段と、を有し、前記帯電装置は、第1の電極と、被帯電部材に対向して配置される第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた絶縁体と、を有し、前記第2の電極は、前記第1の電極、前記絶縁体、及び当該第2の電極が並ぶ第1の方向で前記被帯電部材に向けて開口する開口部を有し、前記絶縁体は、前記開口部と連続し当該開口部と連続する方向には開放され、第1の方向と垂直な第2の方向には制限された空間である領域制限部を有し、前記第1の電極は、第1の方向の抵抗成分が第2の方向の抵抗成分より小さい異方性抵抗部を有する帯電装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、放電の発生に伴う周囲の電圧降下を抑制することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る本発明の効果に加えて、製造工程を簡略化することができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、請求項2に係る本発明の効果に加えて、本構成を有しない場合と比較して、より安定に均等な放電を発生させることができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、請求項1に係る本発明の効果に加えて、製造工程を簡略化することができる。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、放電の発生に伴う周囲の電圧降下を抑制することができる。
【0017】
請求項6に係る発明によれば、放電の発生に伴う周囲の電圧降下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態が適用される画像形成装置を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態が適用される帯電装置及びその周辺構造の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態が適用される帯電装置の下面を示す図である。
【図4】放電領域及びその周辺構造の断面図である。
【図5】第2実施形態にかかる放電領域及びその周辺構造の断面図である。
【図6】第2実施形態にかかる放電領域の拡大図である。
【図7】第3実施形態にかかる放電領域及びその周辺構造の断面図である。
【図8】第4実施形態にかかる放電領域及びその周辺構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態としての画像形成装置10の全体構成を示す。
画像形成装置10は筺体12を有する。筺体12内部には像形成手段14が搭載され、この筺体12の上部には排出部16が設けられている。筺体12の下部には、例えば二段の給紙装置20、20が配置されている。筺体12の下方には、さらに複数の給紙装置を追加して配置できるようになっている。
【0020】
それぞれの給紙装置20は、給紙装置本体22と、記録媒体が収納される給紙カセット24とを有する。給紙カセット24の奥端近傍上部にはピックアップロール26が設けられ、このピックアップロール26の後方にリタードロール28が配置され、このリタードロール28に対向する位置にフィードロール30が配置されている。
【0021】
搬送路32は、フィードロール30から排出口34までの記録媒体通路であり、この搬送路32は、筺体12の裏側(図1の左側面)近傍にあって、最下端の給紙装置20から定着器36まで略鉛直に形成されている部分を有する。
【0022】
定着器36には、加熱ロール38と加圧ロール40が設けられている。搬送路32の定着器36の上流側に、転写ロール42と感光体としての像保持体44が配置され、転写ロール42と像保持体44の上流側に、レジストロール46が配置されている。搬送路32の排出口34の近傍に、排出ロール48が配置されている。
【0023】
したがって、給紙装置20の給紙カセット24からピックアップロール26により送り出された記録媒体は、リタードロール28及びフィードロール30の協働により捌かれる。このようにして、給紙カセット24の最上位にある記録媒体が搬送路32に搬送され、レジストロール46により一時停止されタイミングを合わせ、転写ロール42と像保持体44との間を通って、現像剤像が記録媒体に転写される。
この転写された現像剤像が定着器36により記録媒体に定着され、排出ロール48によって排出口34から排出部16へ排出される。
【0024】
像形成手段14は、例えば電子写真方式のものである。像形成手段14は、像保持体44と、この像保持体44を一様に帯電する帯電装置52と、この帯電装置52により帯電された像保持体44に光により潜像を書き込む光書込み装置54と、この光書込み装置54により形成された像保持体44の潜像を現像剤により可視化する現像装置56と、この現像装置56による現像剤像を記録媒体に転写する転写ロール42と、像保持体44に残存する現像剤をクリーニングする例えばブレードからなるクリーニング装置58と、転写ロール42により転写された記録媒体上の現像剤像を記録媒体に定着させる定着器36とから構成されている。
【0025】
プロセスカートリッジ60は、像保持体44、帯電装置52、現像装置56及びクリーニング装置58を一体化したものであり、これらを一体として交換できるようになっている。このプロセスカートリッジ60は、排出部16を開くことにより、筺体12から取り出すことができる。
【0026】
次に、帯電装置52の詳細について、説明する。
図2は、帯電装置52及びその周辺構造の断面図を示す。図3は、帯電装置52の下面(像保持体44側の面)を示す。
【0027】
帯電装置52は、対向する像保持体44に遠い側から導電性基材72、抵抗層74、絶縁層76、及び導電層78が順に配置された構成となっている。
導電性基材72及び抵抗層74により第1電極が構成され、導電層78により第2電極が構成される。
【0028】
導電層78には開口部80が設けられており、絶縁層76にはこの開口部80と連続する空間である領域制限部82が設けられている。領域制限部82は、像保持体44と対向する方向が開放した例えば円筒形状に構成されている。このように、領域制限部82は、開口部80と連続する方向が開放され、これと垂直な方向が制限された空間となっている。
開口部80及び領域制限部82により放電領域84が構成される。
【0029】
導電性基材72、抵抗層74、絶縁層76、及び導電層78が並ぶ方向を、以下「積層方向」と称する場合がある。また、積層方向に対して垂直な方向を、以下「水平方向」と称する場合がある。
【0030】
導電性基材72及び導電層78には、それぞれに電圧を印加する電圧印加部90が接続されている。
導電性基材72及び導電層78に一定以上の電圧を印加すると、抵抗層74、絶縁層76、及び導電層78に囲まれ空間的に制限された放電領域84において放電が発生する。
放電領域84は、像保持体44と平行する方向(水平方向)に対し空間的に制限されているため、放電を二次元的に制限する。
【0031】
放電領域84は、像保持体44と対向する方向に開放されているので、放電により生成された荷電粒子(イオン)の一部は、導電層78と像保持体44との間の電位差により、導電層78の開口部80を通過して像保持体44側に移動する。つまり、放電領域84で発生したイオンが抵抗層74から像保持体44に電界ドリフトすることで、この像保持体44を帯電させる構成となっている。ここで、ドリフトとは、電界によるイオンの移動を意味する。
導電層78は、印加される電圧によってイオンが像保持体44へ移動するための電界強度を調整し、像保持体44の帯電電位を調整する機能を同時に担う。
【0032】
次に、帯電装置52の各構成部について説明する。
【0033】
導電性基材72を形成する材料としては、例えば、ステンレス、アルミニウム、銅合金やこれらの合金やクロムやニッケル等の表面処理を施した鉄等の金属が用いられる。
【0034】
抵抗層74は、膜厚10 μm以上の範囲で形成される。
抵抗により放電電流を制限する機能(以下、「放電電流の制限効果」と称する場合がある)を得るという観点からは、抵抗層74の膜厚を薄くして抵抗率が高い材料を選定することで「体積抵抗率×抵抗層厚/単位面積」により算出される抵抗層74の抵抗値を調整してもよいが、この膜厚が10 μmより小さいと、印加電圧に対する耐圧性(絶縁耐圧)が低くなり、放電時に抵抗層74が短絡する頻度が多くなる。
抵抗層74の膜厚が100 μm以上の範囲で形成される場合、膜厚が100 μm未満である場合と比較して、絶縁耐圧が十分に得られ、高電圧印加に対する経時安定性が確保される。
【0035】
絶縁層76を形成する材料としては有機材料・無機材料に限らず、体積抵抗率が1×1012 Ωcm以上の固体材料である場合、体積抵抗率が1×1012 Ωcmより小さい場合と比較して、高電圧印加時の両電極(抵抗層74及び導電層78)間の絶縁性に優れ、放電領域84の形状を経時により変形させることなく安定して保持する。
【0036】
絶縁層76は、膜厚4 μm以上200 μm以下の範囲内で形成される。
本実施形態においては、領域制限部82が絶縁層76を貫通するように設けられているので、絶縁層76の膜厚は、両電極(抵抗層74及び導電層78)間の距離、つまり放電距離を制限する。すなわち、絶縁層76の膜厚が、領域制限部82の積層方向の長さとなる。
【0037】
絶縁層76の膜厚を200 μm以下として放電距離を短くすると、放電の局所的な集中と急激な放電電流の増加が抑制され、放電を持続しやすくなる。
絶縁層76の膜厚を4 μm以上として、空気中の電子の平均自由工程(0.1 μm程度)よりも十分大きな放電距離にすると、領域制限部82内での電離回数が確保され放電が持続しやすくなる。
【0038】
また、空気中・大気圧下における平行平板間の放電開始電圧を定義するパッシェンの法則によれば、空隙が4 μm程度のときに放電開始電圧が最小値となり、空隙がそれより狭くなると放電開始電圧が上昇する。このことから、絶縁層76の膜厚が4 μmより小さくなると放電が発生しにくくなることが示唆される。
【0039】
絶縁層76の膜厚が50 μm以上150 μm以下の範囲にある場合、膜厚が50 μm以上150 μm以下の範囲外にある場合と比較して、高電圧印加に対する電極間の絶縁性や均一な放電がより安定に維持される。
【0040】
導電層78を形成する材料としては、体積抵抗率が0.1 Ωcm以下のものが用いられる。
【0041】
導電層78は、膜厚1 μm以上50 μm以下の範囲内で形成される。
導電層78の膜厚が50 μmより大きいと、開口部80から像保持体44への荷電粒子の取り出し効率が十分に上がらない。
導電層78の膜厚が1 μmより小さいと、電極が放電時の通電により破断しやすい。
【0042】
導電層78の材料としては、放電ガスにより汚染されにくい金属が用いられる。例えば、タングステン、モリブデン、カ−ボン、白金、銅、アルミニウム等の金属材料や、これらの金属に金メッキ等の表面処理を施した材料が用いられる。
【0043】
放電空間を制限する放電領域84の構造は、絶縁層76及び導電層78をそれぞれ貫く領域制限部82及び開口部80の内径と、絶縁層76及び導電層78の膜厚により決定される。
領域制限部82及び開口部80は、内径4 μm以上200 μm以下の範囲内で形成される。ここで内径は、領域制限部82及び開口部80内の水平方向の長さ(直径)である。
【0044】
内径が200 μmより大きいと、開口部80の縁(へり)やその周辺部の電界強度が、放電領域84内の空間の中心部の電界強度よりも数倍以上大きくなることが一般的な静電場解析計算により求められる。領域制限部82内の電界分布が不均一になり開口部80の周辺部に放電が集中すると、その結果、放電が不安定になりオゾン発生量が増加したり、抵抗層74が短絡したりする場合がある。
内径が200 μm以下であると、等電位面がほぼ絶縁体に平行と近似できる程度で形成され、放電領域84内の電界分布が均一になり、放電領域84全域にわたって安定して放電が発生しやすくなる。
【0045】
内径が4 μmより小さいと、1つの放電領域84あたりの放電発生量が小さくなる。このため、より効率的に像保持体44を目標の電位に帯電するには、内径を4 μm以上とするのがよい。
【0046】
放電領域84の内径が50 μm以上150 μm以下の範囲にある場合は、内径が50 μm以上150 μm以下の範囲外である場合と比較して、放電領域84全域にわたって効率よく均一な放電が発生する。
【0047】
帯電装置52は、電界による荷電粒子の移動(ドリフト)により像保持体44を帯電させる、このため、帯電装置52は、像保持体44に近い側に配置されている導電層78と像保持体44との間で放電が発生しない距離が維持される位置に配置される。
具体的には、帯電装置52は、導電層78が像保持体44と最も近接する距離(最近接距離)で300 μm以上2 mm以下となるように配置されている。
【0048】
導電層78と像保持体44間の最近接距離が2 mmより大きいと、帯電効率が悪くなる。
導電層78と像保持体44間の最近接距離が300 μmより小さいと、導電層78と像保持体44間で放電が発生しやすくなり、像保持体44に負荷が生じる。例えば、目標とする像保持体44の帯電電位「-700 V」に対して、抵抗層74に「-2 kV」、導電層78に「-750 V」を印加した場合、最近接距離が300 μmより小さいと、パッシェンの法則による放電開始電圧の推計によれば、抵抗層74から導電層78を通り越して像保持体44への放電が発生する可能性がある。
【0049】
隣り合う放電領域84間の像保持体44軸方向の距離A(図3参照)は、放電領域84から像保持体44上へ電界により移動したイオンで電位に筋状のむらが発生せず均一となるように、少なくとも導電層78と像保持体44間の距離と同程度か、それ以下とする。
像保持体44の周方向に対する放電領域84の列数は、プロセス速度に応じて必要とされる帯電能力が確保できる数に調整する。
【0050】
例えば、放電領域84は、像保持体44の回転軸方向に対して平行に300 μm間隔で列状に、帯電に必要な幅だけ形成する。帯電能力を向上させるため、像保持体44の周方向に同様の列を5列、750 μm間隔で配置する。
【0051】
次に、抵抗層74の詳細について説明する。
図4は、放電領域84及びその周辺構造の断面図を示す。
【0052】
抵抗層74について、この抵抗層74の体積抵抗率が比較的大きい場合、放電領域84と接する面(界面)における表面抵抗率も大きくなる。このため、それぞれの放電領域84で発生する放電は個々に分離され、これらそれぞれの放電領域84内全域で均一な放電が発生し易い。
しかし、抵抗層74の抵抗による放電電流の制限効果を調整するために、この抵抗層74の積層方向の長さ(膜厚)を比較的小さく(例えば10 μm未満)すると、抵抗層74の耐圧性が小さくなり、短絡する頻度が多くなる。
【0053】
体積抵抗率とは、測定対象内の直流電界の強さを定常状態の電流密度で除した値(Ωcm)を示し、表面抵抗率とは、測定対象の表面層における直流電界の強さを、電極の単位長さ当たりの電流で除した値(Ω)を示す。測定法については、例えばJIS規格C2134等に定められている。
【0054】
これに対し、短絡する頻度を減少させるために、抵抗層74の膜厚を厚くする方法が考えられる。同様の放電電流の制限効果を維持したまま(積層方向の抵抗値を一定に維持したまま)膜厚を厚くするには、この抵抗層74の体積抵抗率を下げる必要がある。すなわち、抵抗層74を、膜厚はN倍とし、体積低効率はN分の1倍として構成する。
しかし、抵抗層74の体積抵抗率が比較的小さい場合、放電領域84と接する面における表面抵抗率も小さくなる。このため、それぞれの放電領域84で発生する放電は個々に分離されにくく、放電の発生が特定の箇所に集中し易くなる。また、それぞれの放電領域84に対して抵抗成分が並列になり難く、周囲の放電領域84における放電開始電圧のばらつきの影響を受けやすくなる。
したがって、放電が始まった放電領域84に向かって放電電流が流れ、その周囲の放電領域84においては電圧降下が発生し、放電が発生しづらくなる。
【0055】
図4に示すように、本実施形態において抵抗層74は、抵抗体102及び絶縁体104から構成されている。抵抗体102及び絶縁体104はそれぞれ、導電性基材72側から放電領域84側まで積層方向に伸びるように配置されている。
これら抵抗体102及び絶縁体104によって、異方性導電部が形成される。
【0056】
抵抗体102は、放電領域84に対応して設けられている。例えば、抵抗体102の水平方向の長さは、放電領域84の水平方向の長さよりも大きくなっている
絶縁体104は、抵抗体102を放電領域84ごとに区分するように設けられている。例えば、絶縁体104の水平方向の長さは、絶縁層76及び導電層78の水平方向の長さよりも小さくなっている。
このように、それぞれの放電領域84に対応させて、抵抗体102が絶縁体104で隔てられた構成となっている。
【0057】
抵抗率は、抵抗体102の方が絶縁体104よりも小さくなるように構成されている。このため、抵抗層74は、放電領域84に対応する位置において、抵抗成分が水平方向よりも積層方向に小さくなるように異方性を有している。
抵抗体102を流れる電流は、これに対応する放電領域84(積層方向)に流れ易く、対応しない周囲の放電領域84(水平方向)には流れにくい構成となっている。
【0058】
抵抗体102の体積抵抗率は、1×106 Ωcm以上1×1010 Ωcm以下の範囲で構成される。
抵抗体102の体積抵抗率が1×1010 Ωcmより大きいと、電極間での放電が不十分になりやすく、放電空間である領域制限部82で散発的な放電が発生し安定した放電に至らない場合がある。
抵抗体102の体積抵抗率が1×106 Ωcmより小さいと放電電流の制限効果が十分に得られずに、領域制限部82に対応する抵抗層74(抵抗体102)面内で局所的に放電が集中し、放電電流が不安定になったり過大になったりして材料の急速な劣化や抵抗層74の短絡等を引き起こす場合がある。
【0059】
抵抗体102の体積抵抗率が1×106 Ωcm以上1×109 Ωcm以下の範囲にある場合は、体積抵抗率が1×106 Ωcm以上1×109 Ωcm以下の範囲外にある場合と比較して、放電領域84でより安定した放電が持続する。
【0060】
抵抗体102としては、樹脂材料やゴム材料に、導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散したものが用いられる。
例えば、樹脂材料としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、エチレン樹脂、あるいはこれらの合成樹脂等が使われる。
ゴム材料としては、エチレン−プロピレンゴム、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、クロロプレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロールヒドリンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム、あるいはこれらを発砲させた発泡材や、これらを混合させた混合基材が用いられる。
【0061】
導電性粒子あるいは半導電性粒子としては、カーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO-Al2O3、SnO2-Sb2O3、In2O3-SnO2、ZnO-TiO2、MgO-Al2O3、FeO-TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物や、第4級アンモニウム塩等のイオン性化合物等、あるいはこれらの材料を単独又は2種以上混合したものが用いられる。
【0062】
その他、抵抗体102としては、樹脂やゴム等の有機材料に限らず、ガラス中に導電性粒子を分散させた半導電性ガラスや、アルミ多孔質陽極酸化膜等で構成してもよい。
【0063】
絶縁体104の体積抵抗率は、1×1012 Ωcm以上の範囲で構成される。
絶縁体104の体積抵抗率が1×1012 Ωcm以上の固体材料である場合、体積抵抗率が1×1012 Ωcmより小さい場合と比較して、水平方向に対する絶縁性に優れ、対応する放電領域84以外の周囲の放電領域84へ放電電流が流れることが抑制される。
【0064】
抵抗層74は、抵抗体102を体積抵抗率の最適範囲1×107 Ωcm以上1×109 Ωcm以下とし、絶縁体104を体積抵抗率の最適範囲1×1012 Ωcm以上とし、膜厚を最適範囲100 μm以上としつつ、この抵抗体102の積層方向の抵抗値(体積抵抗率×抵抗層厚/面積により求められる値であり、面積は直径100 μmの円の面積とする)が1×108 Ω以上1×1011 Ω以下の範囲になるように調整すると、抵抗成分による放電電流の制限効果と膜厚が確保による経時安定性が両立される。
【0065】
本実施形態にかかる構成は、例えば以下のような製法により形成される。
まず、アルミナ(酸化アルミニウム)(絶縁体104)に、パンチ加工等により直径300 μmの穴部を400 μmピッチで形成する。続いて、この穴部を埋めるようにポリイミドにカーボンを適量分散させた抵抗剤(抵抗体102)を塗布して乾燥・焼成し、抵抗層74を形成する。
抵抗層74の一方の面に、導電性ペースト(導電性基材72)を塗布する。導電性ペーストとしては、例えば銀ペースト等が用いられる。
抵抗層74の他方の面に、プリント基板技術等を用いて放電領域84を形成した絶縁層76及び導電層78を密着させて固定する。なお、スクリーン印刷技術等を用いて、抵抗層74に直接、放電領域84が設けられた絶縁層76及び導電層78を形成するようにしてもよい。
【0066】
抵抗層74が抵抗成分について異方性を有する場合、見かけ上の抵抗率が積層方向よりも水平方向の方が高くなるため、抵抗層74がこの異方性を有さない場合と比較して、抵抗層74の表面抵抗率が高くなる。
【0067】
抵抗層74が抵抗成分について異方性を有する場合、抵抗層74がこの異方性を有さない場合と比較して、それぞれの放電領域84について周囲の放電領域84に対応する範囲から流れ込む電流を無視することができ、それぞれの放電領域84の放電開始電圧のばらつきによる影響が抑制される。
【0068】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図5は、第2実施形態にかかる放電領域84及びその周辺構造の断面図を示す。図6は、放電領域84の拡大図であり、図6(a)は、導電性粒子112の粒径が放電領域84の内径よりも十分に小さい場合を示し、図6(b)は、導電性粒子112の粒径が放電領域84の内径よりも十分に小さいものでない場合を示す。
【0069】
図5に示すように、第2実施形態において、抵抗層74は、導電性粒子112が絶縁体114中全体に分散した構造となっている。導電性粒子112は、導電性基材72側から放電領域84側まで積層方向に偏在して伸びるように分散している。
本実施形態においては、導電性粒子112及び絶縁体114によって異方性導電部が形成される。
【0070】
抵抗率は、導電性粒子112の方が絶縁体114よりも小さくなるように構成されている。このため、抵抗層74は、抵抗成分が水平方向よりも積層方向に小さくなるように異方性を有している。
【0071】
本実施形態において、抵抗層74の体積抵抗率が1×106 Ωcm以上1×109 Ωcm以下の範囲にある場合、体積抵抗率が1×106 Ωcm以上1×109 Ωcm以下の範囲外にある場合と比較して、放電領域84でより安定した放電が持続する。
【0072】
抵抗層74の、水平方向の抵抗成分が積層方向の抵抗成分の5倍以上である場合、この抵抗成分が5倍未満である場合と比較して、それぞれの放電領域84について周囲の放電領域84に対応する範囲から流れ込む電流を無視することができ、それぞれの放電領域84の放電開始電圧のばらつきによる影響が抑制される。
【0073】
導電性粒子112の粒径が放電領域84の内径の10分の1以下である場合、粒径が内径の10分の1より大きい場合と比較して、放電領域84全体でより安定に均等な放電が発生し易い。
粒径とは、粒子を球体とした場合のその直径を意味する。
【0074】
導電性粒子112の粒径が放電領域84の内径よりも十分に小さい場合(図6(a))、粒径が内径よりも十分に小さくない場合(図6(b))と比較して、放電領域84と接する抵抗層74の表面において、この放電領域84に対して放電電流の生じる箇所が均等に分布した状態となる。
【0075】
このため、導電性粒子112の粒径が放電領域84の内径よりも十分に小さい場合、放電領域84内の特定の箇所に集中した放電の発生が抑制される。
したがって、放電領域84内でより安定に均等な放電が発生し易くなる。放電が放電領域84内で均等に発生する場合、均等に発生しない場合と比較して、この放電により発生したイオンを被帯電体側に取出し易くなる。
【0076】
絶縁体114の体積抵抗率は、1×1012 Ωcm以上の範囲で構成される。
絶縁体114の体積抵抗率が1×1012 Ωcm以上の固体材料である場合、体積抵抗率が1×1012 Ωcmより小さい場合と比較して、水平方向に対する絶縁性に優れ、対応する放電領域84以外の周囲の放電領域84へ放電電流が流れることが抑制される。
【0077】
本実施形態にかかる構成は、例えば、以下のような製法により形成される。
熱硬化剤を含む液状シリコーンゴム(絶縁体114)に、ニッケル等の磁性導電性微粒子(導電性粒子112)を分散させ、磁場を印加しつつ熱硬化させる。
あるいは、絶縁体114を形成する熱硬化樹脂中に、導電性粒子112として銀等を均一に分散させ、続いて、積層方向に圧力をかけつつ熱硬化させる。
これらの製法により、導電性粒子112が絶縁体114中で積層方向に偏在して(柱状に)分散した、積層方向に異方性を有する抵抗層74が形成される。
【0078】
このように形成された抵抗層74の一方の面に、導電性ペースト(導電性基材72)塗布し、他方の面に、放電領域84が設けられた絶縁層76及び導電層78を形成する。
なお、抵抗層74を形成する際の熱硬化させる工程と同時に、一方の面に導電性基材72を、他方の面に絶縁層76及び導電層78を密着させて固定するようにしてもよい。
【0079】
本実施形態のように、導電性粒子112を絶縁体114中に分散させて1つの固体として熱硬化させて抵抗層74を形成する場合、抵抗部と絶縁部を区分して形成する場合と比較して、製造工程が簡略化し、また、製造コストが低減する。
【0080】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
図7は、第3実施形態にかかる放電領域84及びその周辺構造の断面図を示す。
【0081】
第3実施形態において、抵抗層74は、抵抗体122中全体に絶縁性粒子124が分散した構造となっている。絶縁性粒子124は、導電性基材72側から放電領域84側まで積層方向に偏在して伸びるように分散している。
本実施形態においては、抵抗体122及び絶縁性粒子124によって異方性導電部が形成される。
【0082】
抵抗率は、抵抗体122の方が絶縁性粒子124よりも小さくなるように構成されている。このため、抵抗層74は、抵抗成分が水平方向よりも積層方向に小さくなるように異方性を有している。
【0083】
本実施形態において、抵抗層74の体積抵抗率が1×106 Ωcm以上1×109 Ωcm以下の範囲にある場合、体積抵抗率が1×106 Ωcm以上1×109 Ωcm以下の範囲外にある場合と比較して、放電領域84でより安定した放電が持続する。
【0084】
抵抗層74の、水平方向の抵抗成分が積層方向の抵抗成分の5倍以上である場合、この抵抗成分が5倍未満である場合と比較して、それぞれの放電領域84について周囲の放電領域84に対応する範囲から流れ込む電流を無視することができ、それぞれの放電領域84の放電開始電圧のばらつきによる影響が抑制される。
【0085】
絶縁性粒子124の粒径が放電領域84の内径の10分の1以下である場合、粒径が内径の10分の1より大きい場合と比較して、放電領域84全体でより安定に均等な放電が発生し易い。
【0086】
絶縁性粒子124の体積抵抗率は、1×1012 Ωcm以上の範囲で構成される。
絶縁性粒子124の体積抵抗率が1×1012 Ωcm以上の固体材料である場合、体積抵抗率が1×1012 Ωcmより小さい場合と比較して、水平方向に対する絶縁性に優れ、対応する放電領域84以外の周囲の放電領域84へ放電電流が流れることが抑制される。
【0087】
本実施形態のように、抵抗体122中に絶縁性粒子124を分散させて1つの固体として熱硬化させて抵抗層74を形成する場合、抵抗部と絶縁部を区分して形成する場合と比較して、製造工程が簡略化し、また、製造コストが低減する。
【0088】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。
図8は、第4実施形態にかかる放電領域84及びその周辺構造の断面図を示す。
【0089】
第4実施形態において、抵抗層74は、抵抗体122中の放電領域84側近傍に絶縁性粒子124が分散した構造となっている。
絶縁性粒子124が、第3実施形態においては、抵抗体122中の導電性基材72側から放電領域84側まで全体に偏在して分散されていたのに対し、第4実施形態においては、導電性基材72側には分散していない点で異なる。
すなわち、本実施形態においては、放電領域84側近傍に異方性導電部が形成された構成となっている。
【0090】
絶縁性粒子124は、例えば、抵抗層74の膜厚に対して略2分の1程度以下の範囲で放電領域84側に分散している。
絶縁性粒子124を放電領域84側近傍に分散させる構成とした場合、本構成を有さない場合と比較して、製造コストが低減される。
【0091】
上記実施形態においては、本発明を画像形成装置の帯電装置に適用した例について説明したが、これに限られるものではなく、荷電粒子発生装置として以下に例示する用途にも適用可能である。
・ 電子デバイスの製造工程等で、デバイスの帯電による静電気破壊が起きないように帯電した電荷と逆極性電荷を与えて中和するための、除電処理
・ 固体材料の表面改質処理(例えば親水化処理や疎水化処理等)
・ 食品加工や医療分野での殺菌・滅菌処理
・ 空気清浄
【符号の説明】
【0092】
10 画像形成装置
12 筺体
14 像形成手段
16 排出部
32 搬送路
34 排出口
36 定着器
42 転写ロール
44 像保持体
52 帯電装置
56 現像装置
72 導電性基材
74 抵抗層
76 絶縁層
78 導電層
80 開口部
82 領域制限部
84 放電領域
90 電圧印加部
102 抵抗体
104 絶縁体
112 導電性粒子
114 絶縁体
122 抵抗体
124 絶縁性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた絶縁体と、
を有し、
前記第2の電極は、前記第1の電極、前記絶縁体、及び当該第2の電極が並ぶ第1の方向に対して開口する開口部を有し、
前記絶縁体は、前記開口部と連続し当該開口部と連続する方向には開放され、第1の方向と垂直な第2の方向には制限された空間である領域制限部を有し、
前記第1の電極は、第1の方向の抵抗成分が第2の方向の抵抗成分より小さい異方性抵抗部を有する荷電粒子発生装置。
【請求項2】
前記異方性抵抗部は、絶縁性粒子が分散されている請求項1記載の荷電粒子発生装置。
【請求項3】
前記領域制限部は、円筒形状に形成され、
前記絶縁性粒子の粒径は、前記領域制限部の内径よりも小さい請求項2記載の荷電粒子発生装置。
【請求項4】
前記異方性抵抗部は、導電性粒子が分散されている請求項1記載の荷電粒子発生装置。
【請求項5】
第1の電極と、
被帯電部材に対向して配置される第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた絶縁体と、
を有し、
前記第2の電極は、前記第1の電極、前記絶縁体、及び当該第2の電極が並ぶ第1の方向で前記被帯電部材に向けて開口する開口部を有し、
前記絶縁体は、前記開口部と連続し当該開口部と連続する方向には開放され、第1の方向と垂直な第2の方向には制限された空間である領域制限部を有し、
前記第1の電極は、第1の方向の抵抗成分が第2の方向の抵抗成分より小さい異方性抵抗部を有する帯電装置。
【請求項6】
像保持体と、
前記像保持体に対し非接触で配置され、当該像保持体を帯電する帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に露光により形成された潜像を、現像剤により現像する現像装置と、
前記現像装置により現像された像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記転写手段により前記記録媒体上に転写された像を当該記録媒体に定着させる定着手段と、
を有し、
前記帯電装置は、
第1の電極と、
被帯電部材に対向して配置される第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた絶縁体と、
を有し、
前記第2の電極は、前記第1の電極、前記絶縁体、及び当該第2の電極が並ぶ第1の方向で前記被帯電部材に向けて開口する開口部を有し、
前記絶縁体は、前記開口部と連続し当該開口部と連続する方向には開放され、第1の方向と垂直な第2の方向には制限された空間である領域制限部を有し、
前記第1の電極は、第1の方向の抵抗成分が第2の方向の抵抗成分より小さい異方性抵抗部を有する帯電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−53248(P2012−53248A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195319(P2010−195319)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】