説明

荷電粒子線装置

【課題】本発明は、高電圧ケーブルが不要で耐振動性能でも有利な荷電粒子線装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、荷電粒子ビームを発生する荷電粒子ビーム発生源と、荷電粒子ビームが照射される試料を載置する加工用の試料台と、荷電粒子ビーム発生源に加速電圧を印加する荷電粒子ビーム発生源用高電圧電源と、試料に照射する荷電粒子ビームの照射速度を減速する減速電圧を加工用の試料台に印加する減速手段とを備え、減速手段は、昇圧電源部と、低圧供給用外部電源部とを有し、昇圧電源部を加工用の試料台に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線を用いての試料を加工または観察する機能を有する荷電粒子線装置および試料を搭載する試料台に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子線装置は、走査電子顕微鏡(SEM)、集束イオンビーム(FIB)を用いて試料に加工を施したり、加工した加工面を観察したりする装置がある。SEMは、電子源より加速電圧V0(負電圧)にて放出される電子ビームを電磁あるいは静電レンズを用いて集束して試料表面を走査し、試料から発生する二次電子を検出してSEM像取得し、試料表面の構造を観察する装置である。
【0003】
また、FIB装置は、例えばガリウム(Ga)イオン源より加速電圧V0(正電圧)にて放出されるイオンビームを集束して試料表面を走査して照射することで、イオンによるスパッタ現象にて試料を加工する装置である。FIB装置は、透過電子顕微鏡(TEM)や走査透過電子顕微鏡(STEM)用の薄膜試料を作成する用途などに用いられている。
【0004】
FIBを用いる事によりデバイスの所望位置からの薄膜試料を短時間かつ確実に作る事ができる。このFIBによるTEM試料作製方法に関しては、非特許文献1〔“Transmission Electron Microscope Sample Preparation Using a Focused Ion Beam”(J. Electron Microsc. 43 , pp.322−326 , 1994)〕に記載されている。また、FIB装置は、特許文献1(特開平6−168688号公報)にも記載されている。
【0005】
【非特許文献1】“Transmission Electron Microscope Sample Preparation Using a Focused Ion Beam”(J. Electron Microsc. 43 , pp.322−326 , 1994)
【特許文献1】特開平6−168688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
FIB装置において、加速電圧を高くした方が加工速度を速く、かつビーム径を細くすることができる。しかし、加速電圧が高い方がFIBによるイオン打ち込まれる部分の深さや横方向の広がりが大きくなり、それにより試料のFIB照射部付近に形成されるダメージ層の厚さが大きくなる。
【0007】
図3(a)に試料のFIB照射部付近の概略を示すように、集束イオンビームによる加工を行うと、試料18表面にはイオンが打ち込まれ、ダメージ層51が形成される。このダメージ層51の幅は、加速電圧V0が大きいほど大きくなり、例えば、シリコン基板上にGaイオンビームを照射した場合、V0=30kVの場合には加工側壁でのダメージ層の幅は約15nmとなる。
【0008】
ダメージ層は、例えば、図3(b)のように厚さ60nmの薄膜試料を作成し、図に示した方向から電子線を照射してSTEM観察を行おうとする場合には薄膜試料の厚さの半分がダメージ層になり、試料内部の結晶構造などの観察に支障が出る。
【0009】
また、加速電圧を低くするとダメージ層の厚さは小さくなるが、加速電圧を低くするとビームの集束性能が劣化し、ビームが絞れない、電流が小さく加工に時間がかかる、といった不具合が発生する。このため、試料に減速電圧Vrを印加し、試料への照射エネルギー(V0−Vr)を下げることで対応することが考えられる。
【0010】
試料に電圧を印加するという技術は、例えば、特許文献1に示すように、低い照射エネルギーで高いビーム集束性能を得るために種々の荷電粒子線装置で試みられている。
【0011】
しかし、例えば数kVの電圧を印加するためには、試料ステージの耐電圧の問題のほかに、大気側から試料室(真空内)に電圧を導入するための端子の耐圧や、電圧の電源部から端子までの線材の選定や耐圧といった問題があり、これらの問題をクリアするために耐電圧テストを繰り返し行う必要があった。更に印加する電圧が高くなればなるほど、耐電圧の問題から電圧導入端子が大きくなり、装置の小型化をはかる場合、端子の大きさが制限になったり、端子が大きくなることで、その部位からの振動も試料観察や加工する上で無視できない。また、一般的に高耐圧の絶縁被覆を施した太目の高電圧ケーブルは硬いため、耐振動性能を確保する観点からも不利であった。これらを考慮した結果、試料ステージは大型かつ高価なものとなっていた。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑み、高電圧ケーブルが不要で耐振動性能でも有利な荷電粒子線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、荷電粒子ビームを発生する荷電粒子ビーム発生源と、荷電粒子ビームが照射される試料を載置する加工用の試料台と、荷電粒子ビーム発生源に加速電圧を印加する荷電粒子ビーム発生源用高電圧電源と、試料に照射する荷電粒子ビームの照射速度を減速する減速電圧を加工用の試料台に印加する減速手段とを備え、減速手段は、昇圧電源部と、低圧供給用外部電源部とを有し、昇圧電源部を加工用の試料台に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低圧供給用外部電源部より供給する低圧の試料台に設けた昇圧電源部で高圧の減速電圧を生成するので、高耐圧の絶縁被覆を施した太目の高電圧ケーブル太い高電圧ケーブルが不要で耐振動性能でも有利な荷電粒子線装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態に係わる実施例について図面を用いて説明する。
【0016】
図1に荷電粒子線装置に含まれるイオンビーム装置(FIB装置)の概略構成図を示す。
【0017】
荷電粒子ビーム発生源である液体金属イオン源1から引き出し電極2により引き出されたGaイオンビームは、加速電圧Voで加速され、集束レンズ3、ビーム制限絞り4、偏向電極5、対物レンズ6などからなるイオン光学系で集束、偏向されて、試料18上を走査する。
【0018】
この時、ビームの照射により試料表面から発生した二次荷電粒子である二次信号は、二次信号検出器9によって検出され、アンプ10により増幅され、偏向制御と同期させる事によりデータ処理部11の画像表示装置12上にSIM像として表示される。半導体ウェハ等の試料18を上に装着した試料台29は、移動ステージ21の上に設置された載置基台24に搭載される。
【0019】
少なくともX,Y,Z方向に移動可能な移動ステージ21を移動させることにより試料18上の任意の位置を観察・加工することができる。
【0020】
加速電圧Vo、集束レンズ3、対物レンズ6を含む各レンズ、二次信号検出器9に印加する電圧、偏向電圧発生器の電圧、ビーム制限絞り4などの条件は、データ処理部11に記憶される。そして、それぞれの条件に応じて、加速電圧Voを発生させる荷電粒子ビーム発生源用高電圧電源13、引き出し電圧Vextを発生させる引き出し電圧用高電圧電源14、集束レンズ3に印加する集束レンズ用高電圧電源15、対物レンズ6に印加する対物レンズ用高電圧電源17、二次信号検出器9に印加する二次信号検出器用高電圧電源19等を制御する制御部10で、加工領域の設定、加工・観察に用いる一連のビーム条件が自動で設定される。
【0021】
移動ステージ21、載置基台24、試料台29、試料18等は試料室20に内置される。液体金属イオン源1、集束レンズ3、ビーム制限絞り4、偏向電極5、対物レンズ6などからなるイオン光学系は、鏡筒部60に内置される。鏡筒部60、試料室20の内部は真空に保たれる。鏡筒部60、試料室20は、連通しているので同じ真空度になっている。
【0022】
試料台29には、減速手段の昇圧電源部7が設置される。昇圧電源部7は昇圧回路を有する。低圧供給用外部電源部8は、試料室20の外に備えられる。減速手段は、昇圧電源部7、低圧供給用外部電源部8を有する。
【0023】
供給用外部電源部8は低圧供給回路を有する。昇圧電源部7には、低圧供給用外部電源部8より直流の低圧供給電力が供給される。この低圧の電圧Vrefによって制御される昇圧電源部7は、高い直流の電圧を発生する。
【0024】
電圧VrefはDC24VまたはDC24V以下である。供給される低い電圧Vrefの電力は、昇圧電源部7により、10KVから30KV程度の直流高電圧に昇圧される。
【0025】
電圧Vrefには、DC12、DC5V等が選択して使用することにより、昇圧する電圧が制御される。
【0026】
図2に試料台29の詳細図を示す。
【0027】
イオンビームの照射により加工が施される試料18を載せる加工用の試料台29は、試料搭載部34、昇圧電源部用載置部33、試料台底板部31、試料搭載部側絶縁部材35、昇圧電源部側絶縁部材36、昇圧電源部7、GND電位取得用接触子38、Vref電圧接続線41、減速電圧Vr接続線42、GND電位接続線43を有する。
【0028】
Vref電圧接続線41、GND電位接続線43は、昇圧電源部7の昇圧回路の入力側になる。減速電圧Vr接続線42は昇圧回路の出力側になる。入力側がDC24Vの低圧、出力側が10KVから30KVの直流高圧になっている。
【0029】
試料台底板部31と昇圧電源部用載置部33の間に介在する昇圧電源部側絶縁部材36により、試料台底板部31と昇圧電源部用載置部33は電気的な絶縁により分離される。
【0030】
また、試料搭載部34と昇圧電源部用載置部33の間に介在する試料搭載部側絶縁部材35により試料搭載部34と昇圧電源部用載置部33は絶縁により分離される。このため、昇圧電源部用載置部33は、試料搭載部34と試料台底板部31の双方に対して絶縁される。
【0031】
試料台底板部31、昇圧電源部用載置部33、試料台底板部31は、導電性を有する金属性の材料で形成される。GND電位接続線43は、昇圧電源部用載置部33に接続され、GND電位取得用接触子38が昇圧電源部用載置部33に接触するので、昇圧電源部7のGND側はアースされる。Vref電圧接続線41は、試料台底板部31に接続される。つまり、昇圧回路の入力側は、プラス側の一端であるVref電圧接続線41が試料台底板部31に接続され、マイナス側の他端であるGND電位接続線43が昇圧電源部用載置部33に接続される。
【0032】
また、昇圧回路の出力側は、プラス側の一端である減速電圧Vr接続線42が試料搭載部34に接続され、マイナス側の他端であるGND側は昇圧電源部7の外枠に接続され、外枠を介して昇圧電源部用載置部33に接続される。
【0033】
図5に示すように、試料台29の試料台底板部31が載る載置基台24は、ステージ用絶縁材25を介して移動ステージ21の上に取り付けられる。この載置基台24は、導電性を有する金属性の材料で形成される。載置基台24には、クランプ50が設けられ、このクランプ50も導電性を有する金属性の材料で形成される。
【0034】
クランプ50は、載置基台24に取り外し自在に載置される試料台29を保持する。試料台29の試料台底板部31は、両側に係合部51を有する。この係合部51にクランプ50を掛けて、試料台29を載置基台24に確実に保持するのである。
【0035】
クランプ50は、導電性を有する金属性の材料で形成されているので、このクランプ50を介して載置基台24と試料台底板部31は、電気的に接続される。
【0036】
低圧供給線23は、試料室20に配線される。低圧供給線23の一端は、載置基台24に接続され、他端は試料室20を貫通して試料室20の外側に設けた接続端子22に接続される。接続端子22には、試料室20の外側に備えた低圧供給用外部電源部8の低圧供給回路の一端が別の低圧供給線を介して接続される。低圧供給回路の他端は、アースに接続される。
【0037】
このため、低圧供給用外部電源部8の低圧供給回路は、低圧供給線23、クランプ50、試料台底板部31、Vref電圧接続線41等を介して昇圧電源部7の昇圧回路の入力側に接続される。これにより、DC24Vの低圧電力が低圧供給用外部電源部8から昇圧電源部7に供給される。
【0038】
低圧供給線23、試料室20の外側に配線される低圧供給線等は、低圧供給回路の他端がアース接続になっているので、一本で低圧電力の供給が行える。アース接続によらない配線をするときには、二本の低圧供給線を用いる。
【0039】
この低圧供給線23は24V以下の低圧であるので、30KVの高圧に比べて絶縁被覆が薄く、線の太さは30KVのものより格段に細くなる。このため、低圧供給線23は、高耐圧の絶縁被覆を施した太目の硬い高電圧ケーブルとは違って可撓性に富み、移動ステージ21の移動動作に際して振動が生じたり、移動動作の障害になったりする支障がない。また、細い低圧供給線は、高耐圧の絶縁被覆を施した太目の硬い高電圧ケーブルと比べ安価である。さらに、接続部分の端子類も高圧用に比べ、小型化でき、安価になる。また、低圧供給線を引き出す試料室20の貫通穴については、真空に対するシール構造を施すだけですむ。高耐圧の絶縁を施す必要がないので安価になる。
【0040】
昇圧電源部7は、低圧供給線23、クランプ50、試料台底板部31、Vref電圧接続線41等を介して供給される低圧電力を元にして減速電圧Vrを生成し、Vr接続線42を介して試料搭載部34に印加する。
【0041】
試料18は試料搭載部34に電気的に接続された状態で搭載されるため、試料18には減速電圧Vrが印加される。この減速電圧Vrの印加により、加速電圧Voが下げられるので、試料18に照射するビームの照射速度が減速し、試料18に生じるダメージは緩和される。
【0042】
図6は、各部位の電位をわかり易く示した図である。
【0043】
試料搭載部34およびVref電圧接続線41はVref電位となり、GND電位取得用接触子38、試料搭載部34およびGND電位接続線43はGND電位となる。Vr接続線42、試料搭載部34および試料18は昇圧電源部7にて形成された減速電圧Vr電位となる。
【0044】
図4に、イオンビーム電流測定の概略図を示す。
【0045】
加工用の試料台29(図5に示す)を載置基台24から外し、代わりに予備室26から測定用の試料台70を出して載置基台24に付け替える。外した試料台29は、図5に示すように予備室26に置かれる。
【0046】
測定用の試料台70は、試料18を搭載する試料搭載部71、載置基台24に載る試料台底板部72を有する。試料台底板部72は、クランプ50が掛けられる係合部を有する。
【0047】
接続端子22には、低圧供給用外部電源部8に代えてイオンビーム電流測定機(図示せず)が接続される。低圧供給線23は、測定信号の取り出し線になる。
【0048】
このように、このイオンビーム装置は、加工用の試料台と測定用の試料台を付け替え、低圧供給用外部電源部とイオンビーム電流測定機の接続替えをすることにより、簡単に交換が行われる。
【0049】
なお、この実施例では、X,Y,Zの3軸が搭載されているが、試料の回転(R)軸や傾斜(T)軸が搭載されている構成にすることも可能である。
【0050】
移動ステージ21はベース部分30を介して試料室(GND電位)に接触しており、電位はGND電位である。移動ステージ21の上に載置基台24が設置されるが、移動ステージ21と載置基台24とはステージ用絶縁材25を用いて電気的に絶縁されている。
【0051】
ここでは、試料上に照射されるイオンビーム電流を測定することを目的としており、低圧供給線23(信号線)を介して接続端子22に接続されている。これは、試料18に電位を印加することを目的としていないため、接続端子22、低圧供給線23、およびステージ用絶縁材25の絶縁耐圧は数100V程度であればよく、安価な市販の端子や信号線を用いることができる。
【0052】
接続端子22からの出力は試料室20(GND電位)に接続されており、イオンビーム照射による試料18のチャージアップを防止している。
【0053】
測定用の試料台70は、試料18を搭載する試料搭載部71、載置基台24に載る試料台底板部72を有する。
【0054】
通常使用する試料台70は、試料搭載部71、試料台底板部72で構成される。試料台底板部72の底面から試料18の表面までの高さを調整するために、試料搭載部71は上下に高さ調整できるようになっている。試料台底板部72から試料18までは電気的に接続されたら状態になっている。試料台70は予備排気室26から試料室20内に移される。試料台70を移す時以外は試料室20と予備排気室26はゲートバルブ27にて真空的に遮断されている。
【0055】
たとえば、ここで述べた載置基台24のところに数kVのオーダのVrを印加できるようにするには接続端子22を高電圧印加できるコネクタに替え、低圧供給線23も数kVオーダーの高電圧に対応したケーブルに替え、ステージ用絶縁材25なども高電圧印加に対応できるように改造する必要がある。また、高圧印加用のケーブルは一般的に固く重いため、ケーブルの張力や自重などで移動ステージの動きに影響が出たり、外部の振動が移動ステージ上の試料に伝わってしまう可能性がある等の問題が生じる。
【0056】
しかし、上述したように本発明の実施例では、試料台29の昇圧電源部用載置部33に昇圧電源部7を設け、低圧の電力を供給して昇圧電源部7で試料搭載部34に印加する高電圧の減速電圧Vrを生成するようにしたので、上記の問題が一掃される。
【0057】
すなわち、試料室20に備えた低圧供給用外部電源部8の電圧Vref(DC24V以下)により制御する方法を取るため、測定信号を通電する信号用の低圧供給線23を使用できるので安価である。
【0058】
接続端子22に電圧Vrefを印加すると、低圧供給線23を介して載置基台24もVref電位になり、それに接触している試料台底板部31もVref電位となる。つまり、接続端子22から試料台底板部31に跨る範囲は、Vref電位(DC24V以下)であるので、感電などの事故防止になる。
【0059】
同時にアース電位を得るためにGND電位取得用接触子38を移動ステージ21に接触させる。試料18には、Vrefを元に昇圧電源部7にて昇圧された減速電圧Vrを、減速電圧Vr接続線42および試料搭載部34を介して印加する。試料搭載部34は試料搭載部側絶縁部材35により昇圧電源部用載置部33とは絶縁される。試料搭載部側絶縁部材35は試料搭載部34にVrを印加しても放電や絶縁破壊を起こさないような耐電圧性能を有している。
【0060】
試料台29の試料台底板部31が載置基台24に装着された状態でなければ、昇圧電源部7に電圧Vrefが印加されるため、試料台29の未装着状態では高圧の減速電圧Vrは発生しない。このため、試料台の取り付けが済むまでは放電などのトラブルは起こりえず、安全性も向上する。
【0061】
二次信号検出器9には10kVの電圧を印加して二次電子を捕集する。本実施例ではV0=15kV、Vr=8kVを印加した。Vr=8kVの電圧が印加された試料から発生する二次電子は約8keVのエネルギーであるので、二次信号検出器9に印加した10kVの電圧により形成される電界に引かれて検出器9に取り込まれる。本実施例の場合、照射エネルギー(V0−Vr)=8kVとなり、このビームを用いたときのダメージ層の厚さは約3nmに低減できた。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施例に係わるもので、イオンビーム装置(FIB装置)の概略を示す概略図。
【図2】本発明の実施例に係わるもので、試料台の概略を示す概略図。
【図3】FIB照射による試料へのダメージを示した図。
【図4】本発明の実施例に係わるもので、移動ステージの載置基台にイオンビーム電流を測定する測定用の試料台を載せた状態を示す概略図。
【図5】本発明の実施例に係わるもので、移動ステージの載置基台にイオンビーム加工用の試料台を載せた状態を示す概略図。
【図6】本発明の実施例に係わるもので、試料台の電位分布の概略図。
【符号の説明】
【0063】
1…荷電粒子ビーム発生源、29…加工用の試料台、13…荷電粒子ビーム発生源用高電圧電源、7…昇圧電源部、8…低圧供給用外部電源部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを発生する荷電粒子ビーム発生源と、前記荷電粒子ビームが照射される試料を載置する試料台と、前記荷電粒子ビーム発生源に加速電圧を印加する荷電粒子ビーム発生源用高電圧電源と、前記試料に照射する前記荷電粒子ビームの照射速度を減速する減速電圧を前記試料台に印加する減速手段とを備え、
前記減速手段は、昇圧電源部と、低圧供給用外部電源部とを有し、
前記昇圧電源部を前記試料台に設けたことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
荷電粒子ビームを発生する荷電粒子ビーム発生源と、前記荷電粒子ビーム発生源を内置し、かつ内部が真空に保たれる鏡筒部と、前記荷電粒子ビームが照射される試料を載置する試料台と、前記試料台を内置し、かつ内部が真空に保たれる試料室と、前記荷電粒子ビーム発生源に加速電圧を印加する荷電粒子ビーム発生源用高電圧電源と、前記試料に照射する前記荷電粒子ビームの照射速度を減速する減速電圧を前記試料台に印加する減速手段とを備え、
前記減速手段は、昇圧電源部と、低圧供給用外部電源部とを有し、
前記昇圧電源部を前記試料台に設け、
前記低圧供給用外部電源部を前記試料室の外に備え、
前記昇圧電源部と低圧供給用外部電源部とを低圧供給線を介して接続したことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子ビームの照射により前記試料から発生する二次荷電粒子を検出する二次荷電粒子検出手段を設け、
前記二次荷電粒子検出手段に印加する検出印加電圧が前記減速電圧よりも高いことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項2に記載された荷電粒子線装置において、
前記低圧供給用外部電源部より前記昇圧電源部に供給する供給電圧は、DC24V以下であることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
荷電粒子ビームを発生する荷電粒子ビーム発生源と、前記荷電粒子ビーム発生源に加速電圧を印加する荷電粒子ビーム発生源用高電圧電源と、前後左右および上下方向に移動自在なる移動ステージと、前記移動ステージにステージ用絶縁材を介して置かれる載置基台と、前記載置基台に載せ替えされる加工用の試料台および測定用の試料台と、前記移動ステージ、前記加工用の試料台および前記測定用の試料台を内置し、かつ内部が真空に保たれる試料室と、前記載置基台に設けられ、かつ載せ替えされる加工用の試料台および測定用の試料台を取り外し自在に保持するクランプとを備え、
前記加工用の試料台および測定用の試料台は、前記荷電粒子ビームが照射される試料を載置する試料搭載部を有し、
前記載置基台に前記加工用の試料台を載置して、前記試料に荷電粒子ビームによる加工を施す際には、前記試料搭載部に減速電圧を印加して前記荷電粒子ビームの照射速度を減速し、
前記荷電粒子ビームの照射速度を減速させる減速手段は、前記試料台に設ける昇圧電源部と、前記試料室の外に備える低圧供給用外部電源部と、前記昇圧電源部と低圧供給用外部電源部とを接続する低圧供給線を有し、
前記載置基台に前記測定用の試料台を付け替えて、前記試料に照射する荷電粒子ビームのビーム量を測定する際には、前記低圧供給線を測定用の信号線として用いて測定信号を前記試料室の外に導くことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
荷電粒子ビームを発生する荷電粒子ビーム発生源と、前記荷電粒子ビーム発生源に加速電圧を印加する荷電粒子ビーム発生源用高電圧電源と、前後左右および上下方向に移動自在なる移動ステージと、前記移動ステージにステージ用絶縁材を介して載置される載置基台と、前記載置基台を内置し、かつ内部が真空に保たれる試料室とが備わる荷電粒子線装置の前記載置基台に取り外し自在に載置される加工用の試料搭載台において
この試料台は、前記荷電粒子ビームが照射される試料を載置する試料搭載部を有し、
前記試料に照射する前記荷電粒子ビームの照射速度を減速する減速電圧を前記試料搭載部に印加するところの減速手段の昇圧電源部を前記試料台に設けたことを特徴とする加工用の試料搭載ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載された加工用の試料台において、
この試料台は、前記試料搭載部の下側に試料搭載部側絶縁部材を介して設けられる昇圧電源部用載置部を有し、
前記昇圧電源部を前記昇圧電源部用載置部に載置したことを特徴とする加工用の試料台。
【請求項8】
請求項7に記載された加工用の試料台において、
この試料台は、前記昇圧電源部用載置部の下側に昇圧電源部側絶縁部材を介して設けられる試料台底板部を有し、
前記載置基台に設けたクランプが掛けられる係合部を前記試料台底板部に設けたことを特徴とする加工用の試料台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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