説明

葉酸含有組成物及び葉酸の安定化方法

【課題】ビタミンB群に属する葉酸は、様々な有益な作用を有するが、光等に対して極めて不安定であり、長期保存が困難である。したがって、本発明の課題は、葉酸の安定化である。
【解決手段】葉酸を安定化させるのに十分な量のポリフェノール、具体的には葉酸1モルに対して0.05モル以上のポリフェノール類、好適にはエピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキン及びエピカテキンから選ばれる1種以上のカテキン類を共存させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化された葉酸含有組成物、特に飲料として有益な液体組成物、および葉酸の安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1.葉酸とは;
葉酸は、ほうれん草から始めて抽出されたビタミンB群に属する水溶性ビタミンであり、人参、かぼちゃ等の野菜、アボガド等の果物、豆類、牛乳、黄卵、レバー、などに多く含まれている。
葉酸が、赤血球の産生やタンパク質の代謝あるいは核酸(DNAやRNA)の産生に重要なかかわりを有し、体細胞の分化・増殖に不可欠であり、また糖やアミノ酸消費にも不可欠であるなど、多くの有益な作用を有することは既によく知られている。
更に詳しくは、例えば、葉酸の作用の1つとして、細胞の中でホモシステインがたんぱく質の合成に必要なメチオニンに変換される反応を助ける働きをすることが知られている。
また、葉酸は、上記のとおり、細胞の分化・増殖やDNA合成に不可欠なものであって、特に胎児の細胞増殖が盛んな妊娠初期は、大変重要である。近年では、受胎前後に十分量の葉酸を摂取することで二分脊椎や無脳症などの神経管閉鎖障害のリスクが低減できることが多くの研究から明らかになってきており、厚生労働省では一般成人で240μg/日、妊婦で440μg/日の葉酸を摂ることを推奨している。
【0003】
また、葉酸は、ビタミンB12と協働してヘモグロビンの合成を助け赤血球を作る作用を有する。したがって、葉酸とビタミンB12からなる組成物は造血剤として有用である。さらに、同じく赤血球の産生に不可欠なビタミンBが適切に吸収されるためにはビタミンB12が必要なことから、赤血球の造血のためにはビタミンB12、ビタミンB及び葉酸の組み合わせが重要な意味を持っている。また、亜鉛が葉酸の吸収を促進する作用を有することから、葉酸組成物に加えて亜鉛を配合することは更に有効である。
【0004】
葉酸に関しては、少なくとも適度に高い血中濃度のホモシステインと少なくとも適度に低い血中濃度の葉酸塩およびビタミンB12を有する閉塞性血管病またはアルツハイマー病の患者に対して、葉酸、葉酸塩またはその誘導体、および必要に応じてビタミンB12、および必要に応じて有機ニトレート(たとえばイソソルビドモノニトレートもしくはジニトレート)、またはACE抑制剤もしくはアンギオテンシンIIアンタゴニスト、あるいはNEP/ACE抑制剤またはこれらの2種以上の混合物を投与することからなる、閉塞性血管病またはアルツハイマー病の処置法も報告されている。したがって、葉酸とビタミンB12からなる医薬組成物は、上記のごとき赤血球増多作用があるのみならず、閉塞性血管病またはアルツハイマー病の治療薬としても有効である。(例えば、特許文献1参照。)
このように、胎児から高齢者に至るまで、葉酸は人体にとって重要な栄養素であり、近年葉酸摂取の必要性が益々高まっている。
【0005】
2.葉酸化合物;
「葉酸」とは、狭義にはプロテイルモノグルタミン酸(合成葉酸)を指すが、広義には、補酵素型、すなわち還元型、一炭素単位置換型およびこれらのポリグルタミン酸の総称である。合成品(食品添加物)の葉酸は食物由来の葉酸に比べ、生体内の利用率が高いといわれている。これら合成品(食品添加物)は、BASF武田ビタミン株式会社及びディー・エス・エムジャパン株式会社等から入手できる。また、食物由来の場合は、緑茶、烏龍茶、紅茶等の茶類、大豆、ソラマメ等の豆類、からし菜、ほうれん草、みずかけ菜、なば菜、グリーンアスパラガス、春菊、サツマイモ、ブロッコリー、チンゲン菜等の野菜、いちご、パパイヤ、オレンジ、ミカン等の果物類から定法に従って抽出したものが使用可能である。これら植物からの葉酸抽出は、茶葉の場合は、温水乃至熱湯で抽出することによって、豆類、野菜類、果物類の場合は、搾汁液から不溶性画分を除き、抽出液を回収することによって達成される。
【0006】
3.葉酸化合物の化学構造;
葉酸化合物は、下記プテリン構造を有するものである。
【0007】
【化1】

【0008】
より詳しくは、葉酸は下記式で表される。
【0009】
【化2】

【0010】
上記において、グルタミン酸残基の不斉α−C原子がS−立体配置(αS)で存在するかまたはR−立体配置(αR)で存在し得る。葉酸エステルおよびその他の誘導体についても同様のことが言える。これらは(αS)−葉酸エステルおよび(αR)−葉酸エステルと呼ぶ。天然に産する葉酸 は(αS)−葉酸に相当する。
【0011】
還元型のテトラヒドロ葉酸は下記式で表される。
【0012】
【化3】

【0013】
この場合グルタミン酸残基の不斉α−炭素原子がS−立体配置(αS)で存在するかまたはR−立体配置(αR)で存在し、そしてテトラヒドロプテリン残基中の6位の不斉炭素原子がR−立体配置(6R)で存在するかまたはS−立体配置(6S)で存在し得る。テトラヒドロ葉酸のジアステレオマーは(6S,αS)−、(6S,αR)−、(6R,αS)−および(6R,αR)−テトラヒドロ葉酸と呼ぶことができる。テトラヒドロ葉酸エステルおよびその他誘導体についても同様なことが言える。これらは(6S,αS)−、(6S,αR)−、(6R,αS)−および(6R,αR)−テトラヒドロ葉酸エステルと称することができる。天然に産するテトラヒドロ葉酸は(6S,αS)−テトラヒドロ葉酸に相当する。(例えば、特許文献2参照。)
【0014】
その他、還元型葉酸の1つとして7,8−ジヒドロ葉酸も知られている。
また、5位及び/又は10位が置換された葉酸も知られている。例えば、5−メチルテトラヒドロ葉酸
、5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸、5−ホルミルテトラヒドロ葉酸、5−ホルムイミノテトラヒドロ葉酸、10−ホルミルテトラヒドロ葉酸、5,10−メテニルテトラヒドロ葉酸等である。
また、還元型葉酸のあるものは、重合型のポリグルタミル葉酸(2から8グルタミン酸残基を有する。例えば、ジグルタミル葉酸、トリグルタミル葉酸、テトラグルタミル葉酸、ペンタグルタミル葉酸およびヘキサグルタミル葉酸等)としても知られている。
重合型のポリグルタミル葉酸の化学構造式は下記のとおりである。
【0015】
【化4】

【0016】
ここで、nは1乃至7の整数であり、5位及び10位の窒素原子はメチル基、ホルミル基、ホルムイミノ基で置換されてもよく、あるいは5位、10位が互いにメチレン基、メテニル基によって結合されて環を形成してもよい。
【0017】
4.他のビタミンB類(ビタミンB12、ビタミンB);
上記葉酸は、ビタミンB6, B12, C がなくては十分にその効果を発揮しないとの報告もなされている。
また、これらビタミンB12やビタミンBについても、様々な有益な作用を有することが知られている。
例えば、ビタミンB12は、水溶性であり、コバルトと結合されることによってその効果を発揮し、赤血球を形成乃至再生して貧血を防ぎ、成長を促進し、脂肪、炭水化物、たんぱく質の使用を適切にコントロールし、刺激に対する過敏な反応を抑制し、また集中力、記憶力を高め、精神を安定させる作用を有する。したがって、ビタミンB12が欠乏すると悪性貧血、神経障害を引き起こす。ビタミンB12も、葉酸と同様、光や酸、アルカリに対して不安定である。
ビタミンBは、ピリドキシンとも呼ばれる水溶性のビタミンであり、摂取後8時間以内に排泄されることから毎日補給する必要がある。ビタミンBは、ビタミンB12の存在下に適切に吸収され、抗体や赤血球の産生あるいは胃酸分泌に不可欠であり、たんぱく質と脂肪の適切な吸収を助け、必須アミノ酸のトリプトファンがビタミンB(ナイアシン)に転換するのを助け、神経や皮膚のさまざまな障害の予防し、抗老化の核酸の正常な合成を促進する作用を有する。したがって、ビタミンBが欠乏すると、貧血、脂漏性皮膚炎、舌炎の原因ともなる。しかしながら、ビタミンBも、他のビタミンBと同様、必ずしも安定ではなく長期保存が困難である等の問題を抱えている。
【0018】
5.葉酸の安定性;
上記のとおり、近年、葉酸摂取の必要性が益々高まっているが、残念ながら葉酸は、必ずしも安定な化合物ではない。これら葉酸化合物が安定に存在し得るのは弱酸性から中性領域の限られた領域である。したがって、強酸性下では、葉酸は安定に存在することが不可能となる。また、葉酸は光によっても分解するので、PETボトル飲料に適用するにあたっても問題があった。
このように天然物由来の葉酸等のビタミン類は、非常に不安定であって、酸のみならず、経時的に酸素、熱、光などにより分解し、p−アミノ安息香酸、その他複雑な化合物を生じ、経時と共に葉酸量は低下してしまう傾向にあることが知られている。それ故、市販されている缶容器、紙容器、特にペットボトルなどの飲料においては、実際飲用する際には葉酸が必要摂取量をかなり下回る量しか含有していない場合がほとんどである。
【0019】
6.葉酸の安定化;
これら問題を解決する方法として、例えば、酸に対する葉酸の安定化方法として、エリスリトール及び/又はトレハロースを配合する方法が提案されている。(例えば、特許文献3参照。)。
また、(6R)−、(6S)−又は(6R,S)−5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸及びその塩の安定化方法として、それら葉酸水性溶液に、α− 、β−又はγ−シクロデキストリン又はα−、β−
又はγ−シクロデキストリンの誘導体を添加して安定化する方法も提案されている。(例えば、特許文献4参照。)
また、5,6,7,8−テトラヒドロ葉酸およびその誘導体の安定化法方法として、これら化合物の粉末を、不活性ガスの存在下脱酸素剤を共存させて、外気遮断して低温保存することによる安定化方法も提案されている。(例えば、特許文献5参照。)
しかしながら、これら安定化方法は、葉酸の安定化という観点においては目的を達成し得るものの、サイクロデキストリン等の配合剤はあくまで安定化のための第3成分以上の役割を演じるものではなかった。
【特許文献1】特表2001−504104号公報
【特許文献2】特表2003−504370号公報
【特許文献3】特開2002−097141号公報
【特許文献4】特開平07−018084号公報
【特許文献5】特開平06−065243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、単なる葉酸の安定化に止まらず、薬学的に有効な第3成分を用いることによってこれら葉酸を安定化することであり、他の目的は薬学的に有効な第3成分を含む安定化されたビタミンB類含有組成物、特に葉酸含有組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに到った。より詳しくは、本発明者らは、既に、多年にわたって食用に供され、人体に対する安全性が確認されている食品素材を調べ、ビタミンB類、特に葉酸の安定化成分として利用価値のあるものを検討した。その結果、ポリフェノール類化合物にビタミンB類、特に葉酸に対する強い安定化作用、特に水溶液中における葉酸等の光に対する安定化作用を有することを見出して本発明に至ったものである。
より具体的には、本発明は以下のとおりである。
【0022】
1.葉酸を安定化させるのに十分な量のポリフェノール類を含んでなる安定化された葉酸含有組成物。
2.飲料組成物である上記1に記載の葉酸含有組成物。
3.葉酸濃度が24μg/500mL乃至4,800μg/500mLである上記2に記載の葉酸含有組成物。
4.葉酸1モルに対して0.05モル以上のポリフェノール類を含有してなる上記1乃至3に記載の葉酸含有組成物。
5.葉酸濃度が24μg/500mL乃至4,800μg/500mLであり、ポリフェノール類含量が100μg/500mL乃至1,000mg/500mLであり、かつ葉酸1モルに対して0.05モル以上のポリフェノール類を含有してなる上記3に記載の葉酸含有組成物。
6.葉酸濃度が200μg/500mL乃至4,800μg/500mLである上記5に記載の葉酸含有組成物。
7.さらに葉酸1重量部に対して0.005乃至0.05重量倍量のビタミンB12、3乃至10重量倍量のビタミンB及び10乃至50重量倍量の亜鉛から選ばれる少なくとも1種を含有する上記1乃至6に記載の葉酸含有組成物。
8.葉酸が、葉酸、ジヒドロ葉酸、テトラヒドロ葉酸及びその誘導体、重合型のポリグルタメート及びその誘導体、そのエステル体及びその塩から選ばれる1種以上の葉酸である上記1乃至7に記載の葉酸含有組成物。
9.ポリフェノール類が、茶由来のエピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキン及びエピカテキンから選ばれる1種以上のカテキン類である上記1乃至8に記載の葉酸含有組成物。
10.ポリフェノール類が、エピカテキンガレートである上記9に記載の葉酸含有組成物。
11.葉酸と、該葉酸を安定化させるのに十分な量のポリフェノール類とを配合することを特徴とする葉酸含有組成物の安定化方法。
12.ポリフェノール類含量が、葉酸1モルに対して0.05モル以上である上記11に記載の葉酸含有組成物の安定化方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、安定化剤としてポリフェノール類化合物を用いることにより、葉酸を安定化し得たものであり、ポリフェノール類自体の効能・効果、薬効を併せて期待することができる。また、ポリフェノール類は、緑茶等に含まれるものであり安全性も確認されていることから、長期に摂取した場合においても何ら問題がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の態様について説明する。
本明細書において使用する用語の意味は以下のとおりである。
【0025】
「安定化された葉酸含有組成物」とは、葉酸が安定した状態で存在し得る葉酸含有組成物を意味し、形態的には、飲料や食品に添加するための葉酸及びポリフェノール類を含有してなる配合用原体としての固体組成物(粉末、錠剤等)、これら固体粉末組成物を飲料用原液に加えてなる飲料等の液体組成物、あるいはこれら固体粉末組成物をガムや飴等の食品に加えてなるガムや飴等の固形組成物として存在し得る。用途面から見た場合、該組成物は、医薬組成物;医薬部外品組成物;薬理効果を備えたいわゆる健康食品(サプリメント);飲料や食品に添加するための配合用組成物(食品添加物);該配合用組成物を添加して飲料とした飲料組成物;又は該配合用組成物を添加して食品とした食品組成物(栄養機能食品、特定保健用食品、機能性食品。)等に区分することができる。
【0026】
医薬組成物、医薬部外品組成物、薬理効果を備えたいわゆる健康食品(サプリメント)とする場合は、結合剤等の配合剤を適宜加えることによって、定法に従って、タブレット、カプセル、顆粒等の形態とすることにより、より一層摂取し易くすることができる。
配合用組成物として使用する場合は、粉末状の原体のままでもよいし、これを定法に従ってタブレット、カプセル、顆粒等の形態に加工して用いてもよい。
【0027】
飲料組成物は、好ましくは容器詰飲料組成物であり、例えば、緑茶、ウーロン茶、紅茶等の茶飲料;リンゴジュース、グレープフルーツジュース、オレンジジュース等のジュース類;果汁配合飲料;野菜汁配合飲料;コーヒー飲料;ココア飲料;牛乳等の乳飲料;コーラ、サイダー等の炭酸飲料;スポーツ飲料;豆乳;ミネラルウォーター;ニアウォーター飲料;ダイエットサポート飲料;栄養補給飲料等である。また、ビール、発泡酒、ワイン、日本酒等のアルコール飲料であってもよい。これら飲料用組成物は、緑茶、ウーロン茶、紅茶等の茶飲料乃至その原材料(例えば、茶抽出液)に、上記配合用組成物を適量配合することによって製造することができる。茶飲料の場合は、茶飲料それ自体にカテキン等のポリフェノール類が含有されているので、結果的に葉酸を安定化されうる範囲で適量配合することによっても製造することができる。
【0028】
食品組成物は、上記配合用組成物を原材料に適量配合して定法に従って加工することによって得られる菓子、パン、ヨーグルト、ゼリー、冷菓、キャンデイ、ガム等である。
【0029】
上記「安定化された葉酸含有組成物」は、好ましくは、ジュース類;果汁配合飲料;野菜汁配合飲料;乳飲料;茶飲料等の飲料組成物である。
【0030】
また、上記「飲料組成物」は、葉酸、ポリフェノール類化合物に併せて、食品添加物として使用可能な各種の甘味料、酸味料、無機酸塩、無機酸塩類、有機酸、栄養強化剤、酸化防止剤、香料、色素類、乳化剤、保存料、調味料、脂質類、タンパク質類、ペプチド類、多糖類、食物繊維類、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤等を単独或いは併用して配合してもよい。
甘味料としては、例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、異性化液糖、グリチルリチン、ステビア、アスパルテーム、フラクトオリゴ糖、環状オリゴ糖、人工甘味料等が挙げられる。
酸味料としては、天然成分から抽出した果汁類の他、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、リン酸が挙げられる。
無機酸類、無機酸塩類としては、リン酸、リン酸二ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。有機酸類、有機酸塩類としてはクエン酸、コハク酸、イタコン酸、リンゴ酸、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、栄養強化剤として、β−カロテン、ビタミンA、葉酸以外の他のビタミンB類(例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸等)、ビオチン、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、α-リポ酸、カルニチン、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅等が挙げられる。
容器詰飲料に使用される容器は、一般の飲料と同様に、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属管、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の形態で提供することができる。好ましくはPETボトルである。また、ここでいう容器詰飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0031】
「葉酸」とは、上記した葉酸;テトラヒドロ葉酸、ジヒドロ葉酸;5位及び/又は10位が置換された置換テトラヒドロ葉酸;及び、重合型のポリグルタメート(2から8のグルタミン酸残基を有する)を意味する。具体例としては、葉酸、7,8−ジヒドロ葉酸、5,6,7,8−テトラヒドロ葉酸、5−メチルテトラヒドロ葉酸、5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸、5,10−メテニルテトラヒドロ葉酸、5,10−ホルムイミノテトラヒドロ葉酸、5−ホルミルテトラヒドロ葉酸(ロイコボリン)、5−ホルミルイミノテトラヒドロ葉酸、10−ホルミルテトラヒドロ葉酸、重合型のポリグルタミル葉酸(2から8のグルタミン酸残基を有する)、それらのエステル体、及びそれらの塩、それらの混合物を挙げることができる。
重合型のポリグルタミル葉酸としては、例えば、5−ホルムイミノ−(6S)−テトラヒドロ葉酸等のテトラヒドロ葉酸のジグルタミル、トリグルタミル、テトラグルタミル、ペンタグルタミルおよびヘキサグルタミル誘導体等を挙げることができる。
また、特に限定のない限り、用語「葉酸」は 、両方のエナンチオマー(αS)および(αR)を包含し、そしてテトラヒドロ葉酸については、そのジアステレオマー((6S,αS)、(6S,αR)、(6R,αS)および(6R,αR))を包含する。
テトラヒドロ葉酸誘導体、重合型のポリグルタミル葉酸誘導体における誘導体とは、5位及び/又は10位における置換体を意味する。
本発明において、好ましい葉酸は、生体内の利用効率及び含有量のコントロールの観点からすると上記合成品(食品添加物)に分類される葉酸であり、具体的には、BASF武田ビタミン株式会社製、ディー・エス・エムジャパン株式会社等から入手できる。化学構造面からすると、特に好ましいのはプテロイルモノグルタミン酸である。また、天然物由来の場合は、緑茶、烏龍茶、紅茶等の茶類、大豆、ソラマメ等の豆類、からし菜、ほうれん草、みずかけ菜、なば菜、グリーンアスパラガス、春菊、サツマイモ、ブロッコリー、チンゲン菜等の野菜、いちご、パパイヤ、オレンジ、ミカン等の果物類から得られるもの(抽出されるもの)が使用可能である。これら食物から葉酸を抽出する方法は、茶葉の場合は温水乃至熱湯で抽出する方法、豆類、野菜類、果物類の場合は搾汁液から不溶性画分を除き、抽出液を回収する方法等、公知の一般的な方法を採用することができる。場合によっては、抽出することなくジュース等としてそのまま使用することも可能である。
【0032】
「ポリフェノール類」とは、水酸基を複数有するフェノール構造を有する一連の化合物を意味し、例えば、フラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノール、アントシアニジン、イソフラボンを挙げることができる。具体的には、上記フラボンとしては、ルチン、ルテオリン等を、フラボノールとしてはケルセチン、ケンフェロール等を、フラバノンとしてはヘスペリジン、ナリンジン等を、フラバノールとしてはカテキン類等を、アントシアニジンとしてはシアニジン等を、イソフラボンとしてはゲニステイン、ゲニスチン、ダイゼイン等を挙げることができ、カテキン類としては、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレートを挙げることができる。
その他、クロロゲン酸類、プロトアントシアニジン類、テアフラビン類、テアルビジン類等を挙げることができる。
好ましいポリフェノール類化合物は、カテキン類であり、特に好ましくは茶由来のエピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンまたはエピカテキンであり、さらに好ましくはエピカテキンガレートである。
上記ポリフェノール類の由来は特に限定されるものではないが、中でも、茶、コーヒー、ココア、ワイン、ブドウ、リンゴ、ベリー類、チェリー、レモン、オレンジ、シークワーシャー、グレープフルーツ、メロン、タマネギ、ブロッコリー、ホウレンソウ、ニンジン、セロリ、ナス、ニンニク、キャベツ、メキャベツ、キュウリ、ソバ、玄米、大豆、小豆、大麦、バジル、タラゴン、ハッカ、オレガノ、タイム、セージ、ローズマリーおよびそれらの混合物に由来するもの、特に茶に由来するものは、飲料としての応用も容易であり、好適である。特に、茶に含まれるカテキン類は、水溶性に優れ、日常的に飲用される嗜好飲料としての実績からより好ましい。
これら植物原料からポリフェノール類を抽出する方法は、水乃至熱湯で抽出し、残渣をろ過する方法、あるいは搾汁液から不溶性物を取り除く方法等、公知乃至周知の一般的な方法を採用することができる。
【0033】
「ビタミンB12」、「ビタミンB」とは、特に限定されるものではなく、工業的に生産された市販品であっても、あるいは食物中に含まれる「ビタミンB12」、「ビタミンB」それ自体であってもよい。
【0034】
「亜鉛」とは、食品として、又は医薬品として使用できる亜鉛類、特に体内吸収性を有する亜鉛類であればよく、特に制限されるものでない。
【0035】
次に、葉酸及びポリフェノール類の配合量について述べる。
厚生労働省の発表した食事摂取基準(2005年版)によれば葉酸の1日の摂取推奨量は、体重、年令、健康、性別その他の因子に応じて異なるが、成人で240μg/日、妊婦で440μg/日である。
日常的な飲食物から摂取される葉酸の量を考慮すると本発明組成物中に包含される葉酸の最低含量は上記推奨量の約1/10、即ち24μg/日であり、また、過剰に摂取された葉酸は体外に排出されて無害であること、生体内での利用率が50%と見積られる(葉酸は、小腸で消化酵素によって分解されて体内に吸収されるが、吸収・代謝過程で様々な段階を経ることにより生体内での利用率は50%と見積られる。)こと等を考えるとその最高含量は成人推奨量の約20倍、即ち4,800μgとすることができる。
この観点から、本発明の葉酸含有組成物からの適正な葉酸摂取量は、24μg/日乃至4,800μg/日であり、好ましく100μg/日乃至4,800μg/日、特に好ましくは200μg/日乃至4,800μg/日を目安とすることができる。
具体的には、飲料組成物である場合には、1日1本乃至2本を飲用するとして、24μg/500mL乃至4,800μg/500mL、好ましくは100μg/500mL乃至4,800μg/500mL、特に好ましくは200μg/500mL乃至4,800μg/500mLである。PETボトル飲料の場合は、日光に曝される可能性が高いので、さらに高濃度の300μg/500mL乃至4,800μg/500mLが好ましい。
医薬組成物、サプリメント、食品組成物の場合も、上記1日あたりの推奨量に基づいて適宜その含有量を決定すればよい。
なお、本発明のうち葉酸含有組成物の発明にあっては、葉酸に対するポリフェノール類の含量は安定化の観点からして重要であるが、葉酸それ自体の含有量は単に上記推奨量に基づいて適宜決定することができる。
【0036】
「葉酸を安定化させるのに十分な量のポリフェノール類」等における「安定化」とは、20℃、5,000ルクスの蛍光灯(人工気象器)下に置いた場合に、少なくとも葉酸に対する安定化効果が見出せることを意味し、好ましくは、当該条件下に1週間置いた場合に、葉酸の存存率が少なくとも50%以上、特に好ましくは70%以上であることを意味する。
【0037】
本発明の組成物に配合すべきポリフェノール類配合の下限値は葉酸の安定化に必要な最低量を意味し、その最低配合量(共存量)は、後述の実施例から明らかなとおり、葉酸に対しモル比で0.05倍(ECGの場合、重量比で0.05倍)、好ましくは葉酸に対しモル比で0.1倍(ECGの場合、重量比で0.1倍)である。一方、カテキン類等のポリフェノール類は無毒であり体脂肪低減等の効果があるものの、不必要に過剰に添加した場合には、カテキン類特有の苦渋味等の問題が発生することから、ポリフェノール類の含量は、100mg/日乃至1,000mg/日(飲料においては、100mg/500mL乃至1,000mg/500mL)とするのが好ましい。
例えば、葉酸が100μg/日乃至4,800μg/日(100μg/500mL乃至4,800μg/500mL)の場合、その安定化に必要なポリフェノール量の最低量は、ECGで0.05倍の5μg/日乃至240μg/日(飲料の場合は、5μg/500mL乃至240μg/500mL)であり、好ましくは、その0.1倍量の10μg/日乃至480μg/日(10μg/500mL乃至480μg/500mL)である。
しなしながら、必要なポリフェノールを十分に摂取するという観点からすると、ポリフェノール含量は、100mg/日乃至1,000mg/日(飲料の場合は、100mg/500mL乃至1000mg/500mL)とするのが好ましい。このような含量であれば、上記から明らかなとおり、ポリフェノールの摂取も十分であり、かつ、結果的に葉酸も自ずと安定化される。
【0038】
同じく厚生労働省の食事摂取基準(2005年版)によれば、「ビタミンB12」の1日あたりの推奨量は2.4μg/日であり、他方、葉酸の推奨量が240μg(妊婦で440μg)であることから、「ビタミンB12」を配合する場合は、葉酸に対してその0.005乃至0.05重量倍量を配合することが好ましい。好ましくは、1.2μg/日乃至12μg/日を目安とすることができる。具体的には、飲料組成物である場合には、1日1本乃至2本を飲用するとして、1.2μg/500mL乃至12μg/500mL、である。
【0039】
同じく厚生労働省の食事摂取基準(2005年版)によれば、「ビタミンB」の1日あたりの推奨量は成人男子で1.4mgであり、他方、葉酸の推奨摂取量が240μg(妊婦で440μg)であることから、「ビタミンB」を配合する場合は、葉酸に対してその3乃至10重量倍量を配合することが好ましい。
【0040】
「亜鉛」の1日あたりの推奨量は成人男子で9mg、女性7mgであり、他方、葉酸の推奨量が240μg(妊婦で440μg)であり、更には本発明組成物においては亜鉛は必須ではなく補助的な役割を担うことから、「亜鉛」を配合する場合は、葉酸に対してその10乃至50重量倍量を配合することが好ましい。
【0041】
本発明の葉酸含有組成物、特に飲料組成物は、遮光条件下での保管を組み合わせることにより、さらに葉酸安定化効果を高めることができる。遮光条件下での保管とは、遮光された箱等に透明または不透明の容器に入れた当該飲料の保管、および遮光性の容器に当該飲料を入れた保管など、飲料そのものに直接光を当てないような保管をいう。ここで、遮光条件とは、可視光の約50%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約90%以上がカットされる状態をいう。また、特に波長の短い光はエネルギーが高いため、波長約340nm以下の光が約80%以上、より好ましくは約90%以上カットされる状態が望ましい。例えば、金属製の缶容器中に充填された場合は、上記遮光条件をほぼ満足する。
【0042】
本発明に用いられる葉酸は高速液体クロマトグラフィー法、微生物定量法、ELISA法により定量できる。また、本発明に用いられるポリフェノール類は、高速液体クロマトグラフィー法、酒石酸鉄比色法、フォーリンデニス法、フォーリンチオカルト法等により定量できる。
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
1.葉酸の経時安定性試験;
20mLの50mMリン酸緩衝液(pH6)に葉酸(関東化学株式会社製。分子量441)100μM(終濃度)となるように溶解した。この葉酸溶液に、ポリフェノール類化合物として、それぞれエピガロカテキン(EGC;分子量306)(フナコシ株式会社製)(サンプル1)、エピガロカテキンガレート(EGCG;分子量458)(フナコシ株式会社製)(サンプル2)、エピカテキン(EC;分子量290)(フナコシ株式会社製)(サンプル3)およびエピカテキンガレート(ECG;分子量442)(フナコシ株式会社製)(サンプル4)を10μM(終濃度)添加して、サンプル1〜4とした。これらのサンプルを、25℃、5,000ルクスの人工気象器(日本医化機械製作所製)下に置くことにより、葉酸の経時安定性を試験した。
なお、ここでそれぞれの成分の重量換算値は、葉酸;44.1mg、EGC;3.06mg、EGCG;4.58mg、EC2.9mg、ECG;4.42mgである。
同時に比較例として、葉酸溶液を暗黒下に置いたもの(光照射なし)(サンプル5)、25℃、5,000ルクスの人工気象器下に置いたポリフェノール類化合物なしの葉酸溶液(サンプル6)、ビタミンC(L−アスコルビン酸;和光純薬工業株式会社製)を100μM(終濃度)のみ添加した葉酸溶液(サンプル7)も同様に試験した。
サンプルを一定時間置いた後、経時的に葉酸の測定を行った。また、対照として、同濃度のビタミンCを用いて比較した。
【0045】
2.葉酸の測定;
葉酸の測定は、紫外部吸収検出器を備えた高速液体クロマトグラフィーを用いて行った。内径4.6mm、長さ150mmで粒子サイズ3μmのODSカラム(和光純薬株式会社製)を用い、12%アセトニトリル(0.05%リン酸を含む)を流速0.8mL/分で通液した。サンプルは0.45μmのフィルターに通した後、290nmでの紫外吸収をモニターリングすることにより葉酸の定量をした。
【0046】
3.カテキンの測定;
カテキンの測定は電気化学検出器を備えた高速液体クロマトグラフィーを用いて行った。内径4.6mm、長さ150mmで粒子サイズ3μmのODSカラム(和光純薬株式会社製)を用い、12%アセトニトリル(0.05%リン酸、0.01%エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを含む)を流速0.8mL/分で通液した。サンプルは0.45μmのフィルターを通した後、印加電圧500mVでの反応をモニターリングすることにより各カテキンの定量をした。
【0047】
4.葉酸の経時安定性試験の結果;
上記経時安定性試験における結果(葉酸残存量)を図1に示す。
ポリフェノール類化合物なしの葉酸溶液(サンプル6)中の葉酸は、光照射条件下で1日目において全てが消失した。一方、ビタミンCのみ添加した葉酸溶液(サンプル7)では、ビタミンCの添加によって葉酸の劣化はやや抑制されたが、同濃度(10μM)で比較した場合に、ポリフェノール類化合物としてカテキン各種を添加したサンプル1〜4において、より長く葉酸が残存していた。これらのことにより、カテキン等のポリフェノール類の添加により、葉酸の安定性が増加したといえる。
また、葉に含まれるカテキンの種類による葉酸の安定化の違いを検討した結果、葉酸に対して0.1モル倍濃度(ECGの場合、重量比で0.01倍)でいずれのカテキン類も安定性改善の効果を有していた。また安定化の効果は、ECG>EC>EGCG>EGCの順に葉酸を安定化させる効果が高いことが分かった。
【実施例2】
【0048】
1.ポリフェノールの濃度依存性試験
ポリフェノール類化合物としてエピカテキンガレート(ECG)の濃度を変化させた場合の濃度依存効果を検討した。結果を図2に示す。
20mLの50mMリン酸緩衝液(pH6)に葉酸(和光純薬工業株式会社製)100μM(終濃度。44.1mg/L)となるように溶解した。この葉酸溶液に、ポリフェノール類化合物として、エピカテキンガレート(ECG;分子量442)(フナコシ株式会社製)を5μM(サンプル8。2.21mg)、10μM(サンプル9。4.42mg)、20μM(サンプル10。8.84mg)(終濃度)添加して、これらサンプルを25℃、5,000ルクスの人工気象器(日本医化機械製作所製)下に置くことにより、葉酸の経時安定性を試験した。
同時に比較例として、葉酸溶液を暗黒下に置いたもの(光照射なし)(サンプル11)も同様に試験した。
サンプルを一定時間置いた後、経時的に葉酸の測定を行った。
その結果、最も濃度の低い5μM試験区(モル比で0.05倍、ECGの場合、重量比で0.05倍)でも葉酸の安定化効果が観察された。そして、その効果は添加量に依存しており、10μM(モル比で0.1倍、ECGの場合、重量比で約0.1倍。)および20μM、特に葉酸に対してモル比で0.2倍量の20μMではより高い葉酸安定化効果が見出された。
【実施例3】
【0049】
葉酸を含む飲料を調整し、ポリフェノールによる安定化の試験を行った。各サンプルの製造方法は以下の通りである。
【0050】
実施例A
緑茶抽出物(テアフラン90S、株式会社伊藤園製)を1g/Lとなるようにイオン交換水に溶解し、葉酸(関東化学株式会社製)を終濃度で22mg/Lとなるように添加した。この溶液10mLをネジ付き試験管に入れ、121℃、20分間オートクレーブ処理した。
【0051】
実施例B
ウーロン茶葉100gに熱湯1Lを加え、10分間放置後、茶葉を取り除いた。その後、5000×gで20分、室温で遠心分離を行い、濃縮・乾固した。このウーロン茶エキス末を4g/Lとなるようにイオン交換水に溶解し、葉酸とビタミンCをそれぞれ終濃度で4.4mg/L、0.3g/Lをとなるように添加した。この溶液10mLをネジ付き試験管に入れ、121℃、20分間オートクレーブ処理した。
【0052】
実施例C
ダッタンソバ実を100gに対し、1.25Lの95℃の熱水を加え、20分間抽出した。抽出液を冷却後、そば実とメッシュろ過し、3000回転で15分間遠心分離した。このソバ抽出液を濃縮し、凍結乾燥した。このソバエキス末を1g/Lとなるようにイオン交換水に懸濁させ、4.4mg/Lとなるように葉酸を添加した。この溶液10mLをネジ付き試験管に入れ、121℃、20分間オートクレーブ処理した。
【0053】
実施例D
麦茶10gに対し、イオン交換水を1L加え、10分間煮沸した。この麦茶抽出液に対し、葉酸を33mg/Lとなるように添加し、この溶液10mLをネジ付き試験管に入れ、121℃、20分間オートクレーブ処理した。
【0054】
比較例
イオン交換水に葉酸を44mg/Lとなるように添加し、121℃、20分間オートクレーブ処理した。調製したサンプルを25℃、5,000ルクスの人工気象器に8日間置くことにより、葉酸の経時安定性を試験した。
【0055】
ポリフェノール類の測定
ポリフェノール類の測定はフォーリンデニス法、高速液体クロマトグラフィー法を用いて行った。フォーリンデニス法は、タンニン酸(ナカライテスク株式会社)を標準物質とした。
【0056】
結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
(結果)
比較例は、葉酸残存率が0になった一方で、実施例A、B、C、Dの葉酸含有飲料は、それぞれ約70%、70%、85%、55%であり、特に実施例A、B、Cでは約70%、85%の残存率という高い葉酸残存率を維持した。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、ポリフェノール類、特にカテキン類を共存させることにより葉酸を安定的に保持することができる。したがって、店頭等において照射条件下に曝されるPETボトル詰め葉酸含有飲料において効果的に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】ポリフェノール類化合物として各種カテキンを添加した場合の葉酸残存率を示すグラフである。(実施例1)
【図2】ポリフェノール類化合物としてエピカテキンガレートを添加した場合の、エピカテキンガレート濃度と葉酸残存率との関係を示すグラフである。(実施例2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉酸を安定化させるのに十分な量のポリフェノール類を含んでなる安定化された葉酸含有組成物。
【請求項2】
飲料組成物である請求項1に記載の葉酸含有組成物。
【請求項3】
葉酸濃度が24μg/500mL乃至4,800μg/500mLである請求項2に記載の葉酸含有組成物。
【請求項4】
葉酸1モルに対して0.05モル以上のポリフェノール類を含有してなる請求項1乃至3に記載の葉酸含有組成物。
【請求項5】
葉酸濃度が24μg/500mL乃至4,800μg/500mLであり、ポリフェノール類含量が100μg/500mL乃至1,000mg/500mLであり、かつ葉酸1モルに対して0.05モル以上のポリフェノール類を含有してなる請求項3に記載の葉酸含有組成物。
【請求項6】
葉酸濃度が200μg/500mL乃至4,800μg/500mLである請求項5に記載の葉酸含有組成物。
【請求項7】
さらに葉酸1重量部に対して0.005乃至0.05重量倍量のビタミンB12、3乃至10重量倍量のビタミンB及び10乃至50重量倍量の亜鉛から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1乃至6に記載の葉酸含有組成物。
【請求項8】
葉酸が、葉酸、ジヒドロ葉酸、テトラヒドロ葉酸及びその誘導体、重合型のポリグルタメート及びその誘導体、そのエステル体及びその塩から選ばれる1種以上の葉酸である請求項1乃至7に記載の葉酸含有組成物。
【請求項9】
ポリフェノール類が、茶由来のエピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキン及びエピカテキンから選ばれる1種以上のカテキン類である請求項1乃至8に記載の葉酸含有組成物。
【請求項10】
ポリフェノール類が、エピカテキンガレートである請求項9に記載の葉酸含有組成物。
【請求項11】
葉酸と、該葉酸を安定化させるのに十分な量のポリフェノール類とを配合することを特徴とする葉酸含有組成物の安定化方法。
【請求項12】
ポリフェノール類含量が、葉酸1モルに対して0.05モル以上である請求項11に記載の葉酸含有組成物の安定化方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−296379(P2006−296379A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127014(P2005−127014)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】