説明

蒸気タービン

【課題】シールストリップとアブレイダブル層が接触して損傷を受けた場合でもメンテナンス性が高く、かつアブレイダブル層が必要以上に削り取られることを防ぐことで漏洩流体の量を一層低減させた動翼先端のシール構造を提供し、これによって蒸気タービンの効率を一層向上させる
【解決手段】本発明に係る蒸気タービンは、ケーシング1と、ケーシング内に回転可能に配設されるロータ2と、ロータと略同軸に配置され、ケーシングに係合されるノズルダイアフラム3と、ノズルダイアフラムに隣接する位置にてロータの外周に円周方向に配設される複数の動翼4と、動翼の先端部に円周状に配置され半径方向外方に突出する少なくとも1条のシールストリップ4dと、ノズルダイアフラムに剛体接続されて前記シールストリップに対し半径方向に対向するとともにこの対向面にアブレイダブル材からなるアブレイダブル部分5aを備えるアブレイダブル構造体5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンに係り、特にその動翼先端部における作動流体の漏洩防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な蒸気タービンを図9に示す。蒸気タービン100は、ケーシング1内に回転可能に配設されるロータ2を備え、このロータ2が作動流体である蒸気により回転する。ケーシング1にはノズルダイアフラム3が固定されてケーシング1と同様に静止部を形成している。ノズルダイアフラム3は、環状のノズルダイアフラム外輪3aとノズルダイアフラム内輪3bの間に形成される蒸気通路に複数のノズル翼3cを円周方向に配置してなり、このノズルダイアフラム外輪3aがケーシング1に固定されてロータ2と略同軸に配置される。
【0003】
ロータ2の外周部のうちノズルダイアフラム3に軸方向に隣接する位置には、複数の動翼4がそれぞれ間隔を隔てて円周方向に配置され、ロータ2とともに回転部を構成する。動翼4は植込部4a、動翼有効部4b、翼先端部4cを備え、植込部4aがそれぞれロータ2の外周部に係合して植設される。動翼有効部4bは蒸気通路部に配置され、ノズル翼3cから流出した蒸気が動翼有効部4bの周囲を通過する際に仕事をして回転力を発生させる。翼先端部4cは、各動翼4の外周部分に設けられる構造部材であり、隣接する動翼4の翼先端部4cと円周方向に接触することで全体として環状部材を形成し、翼有効部4bの先端部分を固定させる役割などを果たしている。なお、ノズルダイアフラム外輪3aは、動翼4の翼先端部4cの位置まで延長されて設けられており、翼先端部4cと半径方向に対向している。
【0004】
蒸気タービン100においては、ノズルダイアフラム3と動翼4との1対が1つのタービン段落を形成しており、蒸気タービン100に供給された蒸気は、ノズルダイアフラム3のノズル翼3cの間に導かれてその流れの方向を変えられ、次いで動翼4の翼有効部4cの間に導かれて動翼4とロータ2とに回転力を発生させる。なお、図9に示した蒸気タービン100においては、ノズルダイアフラム3と動翼4からなるタービン段落が2段落示されており、これらの2段落のノズルダイアフラム4がボルト9によって締結されて配置されている。
【0005】
このような蒸気タービン100においては、ロータ2や動翼4などの回転部とケーシング1や静翼3などの静止部の間に漏洩流れが発生する。この漏洩流れ量が多いほど、蒸気タービン100の効率および出力が低下してしまう。このため、可能な限り回転部と静止部の間隙を狭くする必要がある。このような理由から、動翼4の動翼先端部4cの外周部に、円周状に配置され半径方向外方に突出するシールストリップ4dを設け、シールストリップ4d先端と対向するノズルダイアフラム外輪3aとの間隙をできるだけ小さくすることで漏洩流れを防止する構造が知られている。さらに、シールストリップと対向するノズルダイアフラム3aの表面に、快削性材料であるアブレイダブル材からなるコーティング層(アブレイダブル層3d)などを設けることで、シールストリップ4dでアブレイダブル層3dを削らせることでさらに間隔を狭くして漏洩流れの量を抑制する試みもなされている。
【0006】
蒸気タービンは、起動時などの過渡運転時にロータやケーシングが熱により変形を生じるため、定格運転時のみを考慮して回転部と静止部の間隙を最小隙間に設定することは不可能である。また、運転時に回転部と静止部の間に接触が生じる場合には、シールストリップがこの接触により損傷を受ける場合がある。著しく損傷を受ける場合もあり、シール構造の修復が可能な構造としておく必要がある。
【0007】
このような、シールストリップとアブレイダブル層による漏洩流れを減少させるシール構造として、例えば特許文献1に記載のものが従来より知られている。この従来技術では、動翼先端部に設けられたシールストリップに対向するノズルダイアフラム外輪の内周側に、アブレイダブル層を有する複数のアーチ形シール支持体セグメントをバネを介して取り付けている。このような構造とすることで、起動停止などのタービンの過渡状態の間、アブレイダブル層を有するシール支持体セグメントを半径方向外向きに移動させることを可能とさせている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−65076(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の従来技術に係るシールストリップとアブレイダブル層によるシール構造では、アブレイダブル層を有するシール支持体セグメントがバネを介してノズルダイアフラムに係合されており、半径方向に移動可能に設けられている。このため、シールフィンがアブレイダブル層に接触した場合、特に起動停止時などのタービンの過渡状態ではシール支持体セグメントが半径方向にがたつくなど不安定な挙動を示し、これによりシールフィンとアブレイダブル層とが深く接触する状態が生じる可能性がある。このようにして、シールストリップとアブレイダブル層が深く接触すると、定常運転時ではその部分において間隙が大きくなり漏洩蒸気量が増すばかりでなく、接触のしかたによってはシールストリップやアブレイダブル層を損傷するという問題点があった。
【0010】
また、この従来技術に係るシール構造では、シール支持体セグメントを半径方向に移動可能にバネを介してノズルダイアフラム外輪に係合させるため、ノズルダイアフラム外輪の構造的な強度を十分に保つため、ノズルダイアフラム外輪が大きくなるという不利な点もあった。
【0011】
このような問題を生じないようにするためには、シール支持体セグメントをバネを介してノズルダイアフラム外輪に係合させる構造ではなく、図9に示したように、シールストリップ4dに対向するノズルダイアフラム外輪3aの表面に直接アブレイダブル層をコーティングなどにより設けることが考えられている。このような構造とすることで、アブレイダブル層3dの部分が半径方向に移動することがないため、シールフィン4dにより削られる部分を最小限に抑えることができ、これにより漏洩流体の量を少なく抑えることができる。しかしながら、図9に示した構成の場合、内周面にアブレイダブル層を備える各段落のノズルダイアフラム外輪3aがボルト9で締結されて一体に形成されているため、ある段落のシールストリップ4dとアブレイダブル層3dが接触することにより損傷を受けた場合にはその段落のノズルダイアフラム3全体を取り外してアブレイダブル層3dの修理を行なうこととなり、シール構造の修復が困難となるという別の問題が生じる。
【0012】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、シールストリップとアブレイダブル層が接触して損傷を受けた場合でもメンテナンス性が高く、かつアブレイダブル層が必要以上に削り取られることを防ぐことで漏洩流体の量を一層低減させた動翼先端のシール構造を提供し、これによって蒸気タービンの効率を一層向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の課題を解決するために、本願発明に係る蒸気タービンは、ケーシングと、ケーシング内に回転可能に配設されるロータと、ロータと略同軸に配置され、ケーシングに係合されるノズルダイアフラムと、ノズルダイアフラムに隣接する位置にて前記ロータの外周に円周方向に配設される複数の動翼と、動翼の先端部に円周状に配置され半径方向外方に突出する少なくとも1条のシールストリップと、ノズルダイアフラムに剛体接続されてシールストリップに対し半径方向に対向するとともに対向面にアブレイダブル材からなるアブレイダブル部分を備えるアブレイダブル構造体とを具備することを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、アブレイダブル構造体がノズルダイアフラムと別体に設けられるとともに、このアブレイダブル構造体が例えばボルトなどを介してノズルダイアフラムに剛体接続されているので、これを簡易に取り外すことができる。これによってシールストリップとアブレイダブル部分が接触して損傷を受けた場合でもその修復を比較的簡単に行なうことができる。また、アブレイダブル構造体とノズルダイアフラムとが剛体接続されているため、アブレイダブル構造体のノズルダイアフラムに対する位置が半径方向に移動することがなく、過渡状態であってもアブレイダブル部分ががたついたりして大きく削り取られるといった事態は生じにくい。このため削り取られるアブレイダブル部分を必要最小限に抑えることができるので、漏洩蒸気の量を一層低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、漏洩蒸気量を一層低減するとともに、メンテナンス性の高い動翼先端のシール構造を提供することができ、よって蒸気タービンの効率を一層高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る蒸気タービンの1段落を、回転軸を含む断面である子午面において示した子午断面図である。
【0018】
蒸気タービン100は、ケーシング1内に回転可能に配設されるロータ2を備え、このロータ2が作動流体である蒸気により回転する。ケーシング1にはノズルダイアフラム3が固定されてケーシング1と同様に静止部を形成している。ノズルダイアフラム3は、環状のノズルダイアフラム外輪3aとノズルダイアフラム内輪3bの間に形成される蒸気通路に複数のノズル翼3cを円周方向に配置してなり、このノズルダイアフラム外輪3aがケーシング1に固定されてロータ2と略同軸に配置される。
【0019】
ロータ2の外周部のうちノズルダイアフラム3に軸方向に隣接する位置には、複数の動翼4がそれぞれ間隔を隔てて円周方向に配置され、ロータ2とともに回転部を構成する。動翼4は植込部4a、動翼有効部4b、翼先端部4cを備え、植込部4aがそれぞれロータ2の外周部に係合して植設される。動翼有効部4bは蒸気通路部に配置され、ノズル翼3cから流出した蒸気が動翼有効部4bの周囲を通過する際に仕事をして回転力を発生させる。翼先端部4cは、各動翼4の外周部分に設けられる構造部材であり、隣接する動翼4の翼先端部4cと円周方向に接触することで全体として環状部材を形成し、翼有効部4bの先端部分を固定させる役割などを果たしている。
【0020】
蒸気タービン100においては、ノズルダイアフラム3と動翼4との1対が1つのタービン段落を形成しており、蒸気タービン100に供給された蒸気は、ノズルダイアフラム3のノズル翼3cの間に導かれてその流れの方向を変えられ、次いで動翼4の翼有効部4cの間に導かれて動翼4とロータ2とに回転力を発生させる。なお、図9に示した蒸気タービンと同様、図1に示した本発明の第1実施形態に係る蒸気タービン100においても、ノズルダイアフラム3と動翼4からなるタービン段落を複数段落備えるとともに、これらの複数段落のノズルダイアフラム4がボルト9によって締結された配置とすることができる。
【0021】
本実施形態に係る蒸気タービンは、アブレイダブル部分5aをその内周面に備えるアブレイダブル構造体5が、ノズルダイアフラム外輪3aの動翼4側に剛体接続されて動翼4の動翼先端部4cと対向する位置に円周方向に設けられている。なお本実施の形態では、ノズルダイアフラム外輪3aの外周側に段差部7が設けられており、アブレイダブル構造体5をこの段差部7に係合させて位置合わせを行い、この状態で軸方向に配置されたボルト穴にボルト6を螺合させ、ノズルダイアフラム外輪3aにアブレイダブル構造体5を剛体接続させている。
【0022】
なお、アブレイダブル構造体5とノズルダイアフラム外輪3aとの接続方法はこれには限らず、例えば係合部を設けてがたつきなく係合される構成として剛体接続させてもよい。また、アブレイダブル部分5aは、アブレイダブル構造体5aの表面に直接的にコーティングや肉盛あるいは溶射等の手段を用いて形成される。
【0023】
ここで、アブレイダブル層5aの材質は、コバルト、ニッケル、クロム、アルミニウム及びイットリウム系の材料(CoNiCrAlY系材料)、ニッケル、クロム、アルミニウム系の材料(NiCrAl系材料)、あるいは、ニッケル、クロム、鉄、アルミニウム、ホウ素及び窒素系の材料(NiCrFeAlBN系材料)など、公知の快削性材料各種を用いることができる。
【0024】
そして、アブレイダブル構造体5に対向する動翼4の動翼先端部4cの外周部には、円周状に配置され半径方向外方に突出するシールストリップ4dが設けられる。本実施の形態ではこのようにして、シールストリップ4d先端とアブレイダブル構造体5のアブレイダブル部分5aとを対向させ、このシールストリップ4dによりアブレイダブル部分5aを削り取らせることでこれらの間隙をできるだけ小して漏洩流れを防止している。なお、動翼先端部4cにはシールストリップ4dが設けられているが、このシールストリップ4dは動翼先端部4cに一体的に削り出しによって設けるか、あるいは動翼先端部4cにコーキングなどにより埋め込んで設置することができる。また、シールストリップ4dはの代わりにナイフエッジを設けることでも同様に十分な漏洩流れの低減を図ることができる。
【0025】
また、本実施の形態では、アブレイダブル部分5aが設けられるアブレイダブル構造体5の内周面は、軸方向にその高さ(内周面の半径)を変えた、所謂Hi−Low構造としている。このように軸方向にアブレイダブル構造体5の内周面の高さを異ならしめることで、漏洩流れの一層の低減を図っている。
【0026】
また、図1に示したとおり、本実施の形態においては、動翼先端部4cには複数条のシールストリップ4dが設けられているが、各シールストリップ4dとアブレイダブル構造体5のアブレイダブル部分5aとの間隔は全て等しくしてもよく、あるいは上流側から順次間隔を狭めていくなど、それぞれ設計条件によって異ならせることも可能である。
【0027】
このような構成によれば、アブレイダブル構造体5はノズルダイアフラム外輪3aに剛体接続、すなわちバネなどを介さずにリジッドに接続されているため、アブレイダブル構造体5のノズルダイアフラム3に対する位置が半径方向に移動することがなく、過渡状態であってもアブレイダブル層ががたついたりして大きく削り取られるといった事態は生じにくい。このため削り取られるアブレイダブル部分5aを必要最小限に抑えることができるので、漏洩蒸気の量を一層低減することができる。
【0028】
また、アブレイダブル構造体5がノズルダイアフラム3と別体に設けられ、例えばボルト6などを介してノズルダイアフラム外輪3aに接続されているので、これを簡易に取り外すことができる。このため、シールストリップ4dとアブレイダブル部分5aが接触して損傷を受けた場合でもその修復を比較的簡単に行なうことができる。さらにアブレイダブル部分5aの交換を行なう場合であっても、ノズルダイアフラム3やノズルダイアフラム外輪3a全体の交換ではなく、アブレイダブル部分5aを含むアブレイダブル構造体5のみを交換すれば足りるため、メンテナンスに掛かる時間を短縮することができる。
【0029】
図2および図3はそれぞれ、図1におけるアブレイダブル構造体5とノズルダイアフラム外輪3aとの接続状態を軸方向上流側から見た概略図である。なお、図2および図3において、図1と同一の構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0030】
上述のように、アブレイダブル構造体5はノズルダイアフラム外輪3aに対し、軸方向に配設されたボルト6を介して剛体接続されている。そして、図2に示したとおり、アブレイダブル構造体5は円周方向に一周に亘って設けられているが、本実施の形態においては、アブレイダブル構造体5が水平面において上下に2分割された半円の環状部材として構成されている。ボルト6は、複数本が円周方向に間隔を置いて配置されており、これらのボルト6によって、2分割されたアブレイダブル構造体5がノズルダイアフラム外輪3aの上半部および下半部に軸方向に剛体接続されている。すなわち、図2に示した例では、アブレイダブル構造体5を上下2つに分割することで、部品点数をできるだけ少なくしている。
【0031】
さらに図3に示したとおり、水平面での上下2分割ではなく、アブレイダブル構造体5をそれぞれ一周のうち45°の部分ごとに分割した8つの分割体とするなど、2つ以上の複数の分割体によって構成することも可能である。
【0032】
このようにアブレイダブル構造体5を円周方向に複数に分割して設けて、それぞれをボルト9によってノズルダイアフラム外輪3aに剛体接続させることで、メンテナンス時に損傷が生じたアブレイダブル構造体5のみを交換することが可能となる。
【0033】
図4および図5に本実施の形態の蒸気タービンの変形例に係るタービン段落の子午断面図を示す。図4および図5において図1乃至図3と同一の構成については同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0034】
図4に示すように、この変形例においては、ノズルダイアフラム外輪3aに段差部を設けるのではなく、アブレイダブル構造体5の外周側にインロー部8を形成している。そしてこのインロー部8をノズルダイアフラム外輪3aの内周端部に係合させてノズルダイアフラム3aにボルト6で剛体接続させる構成としている。
【0035】
このようにアブレイダブル構造体にインロー部8を設け、これをノズルダイアフラム外輪3aに係合させて剛体接続させることによって、アブレイダブル構造体5のノズルダイアフラム3に対する位置精度を向上させることが可能となる。従ってアブレイダブル部分5aの切削範囲を十分に小さく抑えることができるので、漏洩蒸気の量を一層低減することが可能となる。
【0036】
さらに、図5に示したように、インロー部8のアスペクト比を変更して軸方向よりも半径方向が大きくなるようにすれば、剛体接続されるアブレイダブル構造体5にがたつきなどが生じる虞をさらに低減させることができる。このようにすることで、アブレイダブル部分5aの切削範囲をより十分に管理することが可能となる。
【0037】
次に、本実施の形態の別の変形例を図6および図7を参照して説明する。図6および図7はそれぞれ、本発明の蒸気タービンの第1の実施の形態の別の変形例に係る子午断面図のうち、動翼先端のシール部分を拡大した概略図である。図6および図7において、図1乃至図5までと同一の構成要素には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0038】
本変形例においても、動翼4の動翼先端部4cに設けられたシールストリップ4dに対向する位置に、図1に示した第1の実施の形態と同様、アブレイダブル構造体5がノズルダイアフラム外輪3aにボルト6を介して剛体接続されて設けられている。図1に示した第1の実施の形態では、アブレイダブル構造体5がノズルダイアフラム外輪3aの下流側に軸方向に配置されたボルト6によって締結されていたが、本変形例では、ノズルダイアフラム外輪3aには、ノズル翼3cに対する下流側に肩部3eが設けられている。
【0039】
そして、図6および図7に係る変形例では、アブレイダブル構造体5が、肩部3eの内周側に半径方向に配置されたボルト6によって螺合されて剛体接続されている。なお、本変形例においても、ボルト6は複数本が円周方向に沿って間隔を置いて配置される。
【0040】
なお、図6で示した変形例では、ボルト6は半径方向外側から螺合させられているが、これに限らず、図7に示したように、アブレイダブル構造体5を半径方向内周側からボルト6によってノズルダイアフラム外輪3aの肩部3eに剛体接続させるようにすることもできる。
【0041】
このように、ボルト6を半径方向に配置して、アブレイダブル構造体5を半径方向に剛体接続した構造とすることで、アブレイダブル構造体5の大きさを小型化することが可能である。また、シールストリップ4dとアブレイダブル部分5aとの接触によってアブレイダブル部分5に損傷が生じた場合などに、アブレイダブル構造体5を取り外す作業を半径方向から行なうことができるため、メンテナンス性を向上させることができる。さらに、ノズルダイアフラム外輪3aは肩部3eを備えることからノズルダイアフラム3aに十分な強度を持たせることができる。
【0042】
さらに、図8を用いて本発明の第2の実施の形態について説明する。図8は、本発明の蒸気タービンの第2の実施の形態に係る子午断面図のうち、動翼先端のシール部分を拡大した概略図である。
【0043】
本実施の形態においても、動翼先端のシール部分以外の構成については図1で示した第1の実施の形態と同様である。図8において、図1乃至図7と同一の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0044】
図8に示したとおり本実施の形態では、図6および図7に示した第1の実施の形態の変形例と同様、ノズルダイアフラム外輪3aには、ノズル翼3cに対する下流側に肩部3eが設けられている。そして、この肩部3eの中に凹部が設けられており、この凹部にアブレイダブル構造体5としてのシール支持体セグメントが剛に取り付けられている。
【0045】
ここで、アブレイダブル構造体5には、図1で示した第1の実施の形態と同様、その内周面の、シールストリップ4dと対向する部位にアブレイダブル部分5aが設けられており、このシールストリップ4dとアブレイダブル部分5aによって蒸気をシールしている。アブレイダブル構造体5のアブレイダブル部分5aの反対側にあたる外周側には、ノズルダイアフラム外輪3aの肩部3eに設けられた凹部と係合する凸部が設けられており、この凸部を凹部に係合させることでアブレイダブル構造体5aがノズルダイアフラム外輪3aに剛体接続される。
【0046】
特に、本実施の形態では、アブレイダブル構造体5の凸部とノズルダイアフラム外輪3aの凹部との間に、軸方向と半径方向の位置を固定するための金属片10が挟み込まれている。ここで、この金属片10は、ノズルダイアフラム3やアブレイダブル構造体5の本体を構成する、例えばCrMoV材や12Cr材などといったの材料よりも熱膨張係数の高い材料が用いられる。なお、このような材料の代表例としては、アルミやステンレス系の材料が挙げられる。
【0047】
このように、ノズルダイアフラム外輪3aとアブレイダブル構造体5との係合部に、熱膨張係数の高い金属片10を挟み込むことによって、定常運転時にはこの金属片が膨張することにより軸方向及び半径方向の微小な間隙をなくし、アブレイダブル構造体5をノズルダイアフラム3aに対してがたつきなく、剛に固定することができる。
【0048】
これによって、第1の実施の形態同様、アブレイダブル構造体5のノズルダイアフラム3に対する位置が半径方向および軸方向に移動することがなくなるため、過渡状態であってもアブレイダブル層ががたついたりして大きく削り取られるといった事態は生じにくくなる。このため削り取られるアブレイダブル部分5aを必要最小限に抑えることができるので、漏洩蒸気の量を一層低減することができる。
【0049】
さらに、第1の実施の形態と同様に、アブレイダブル構造体5がノズルダイアフラム3と別体に設けられてノズルダイアフラム外輪3aに取り付けられているので、シールストリップ4dとアブレイダブル部分5aが接触して損傷を受けた場合でもその修復を比較的簡単に行なうことができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、アブレイダブル構造体5以外の構成は従来のタービン段落のものを流用できるため、既設の蒸気タービンの改修を行なう際にも本発明を容易に実施できる。
【0051】
なお、本実施の形態においては、ノズルダイアフラム外輪3aの凹部とアブレイダブル構造体5の凸部をこれらの間に熱膨張係数が大きい金属片10を介在させてがたつきなく取り付けているが、これに限らず、アブレイダブル構造体5とノズルダイアフラム外輪3aがリジッドに接続されれば十分である。
【0052】
すなわち、例えばアブレイダブル構造体5の凸部を構成する材料をノズルダイアフラム外輪3aの凹部を構成する材料よりも熱膨張係数の大きな材料とすることで、金属片10を介在させずともアブレイダブル構造体5の凸部が運転時に熱膨張によって剛体的に係合させるようにすることもできる。あるいは、アブレイダブル構造体5の凸部をノズルダイアフラム外輪3aに係合させるにあたり、冷やし嵌めを用いることによってアブレイダブル構造体5をノズルダイアフラム外輪3aに対してがたつきなく取り付けるなど、公知の手法を種々用いて剛体接続させることが可能である。
【0053】
また、図8に示した実施の形態では、ノズルダイアフラム外輪3aに凹部を、アブレイダブル構造体5に凸部を設けてこれらを係合させているが、これとは逆に、ノズルダイアフラム外輪に凸部を、アブレイダブル構造体5に凹部を設けてこれらを係合させて剛体接続させる構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る蒸気タービンの1段落を、回転軸を含む断面である子午面において示した子午断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る蒸気タービンの、アブレイダブル構造体とノズルダイアフラム外輪との接続状態を軸方向上流側から見た概略図
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る蒸気タービンの、アブレイダブル構造体とノズルダイアフラム外輪との接続状態の別の例を軸方向上流側から見た概略図
【図4】本発明の第1の実施の形態の蒸気タービンの変形例に係るタービン段落の子午断面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態の蒸気タービンの別の変形例に係るタービン段落の子午断面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態の蒸気タービンの別の変形例に係る子午断面図のうち動翼先端のシール部分を拡大した概略図。
【図7】本発明の第1の実施の形態の蒸気タービンの別の変形例に係る子午断面図のうち動翼先端のシール部分を拡大した概略図。
【図8】本発明の第2の実施の形態の蒸気タービンの変形例に係るタービン段落の子午断面図のうち、動翼先端のシール部分を拡大した概略図。
【図9】一般的な蒸気タービンのタービン段落を示す子午断面図。
【符号の説明】
【0055】
1・・・ケーシング
2・・・ロータ
3・・・ノズルダイアフラム
3a・・・ノズルダイアフラム外輪
3b・・・ノズルダイアフラム内輪
3c・・・ノズル翼
3d・・・アブレイダブル層
4・・・動翼
4a・・・植込部
4b・・・動翼有効部
4c・・・動翼先端部
4d・・・シールストリップ
5・・・アブレイダブル構造体
5a・・・アブレイダブル部分
6・・・ボルト
7・・・段差部
8・・・インロー部
10・・・金属片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと
前記ケーシング内に回転可能に配設されるロータと、
前記ロータと略同軸に配置され、前記ケーシングに係合されるノズルダイアフラムと、
前記ノズルダイアフラムに隣接する位置にて前記ロータの外周に円周方向に配設される複数の動翼と、
前記動翼の先端部に円周状に配置され、半径方向外方に突出する少なくとも1条のシールストリップと、
前記ノズルダイアフラムに剛体接続されて前記シールストリップに対し半径方向に対向するとともに、この対向面にアブレイダブル材からなるアブレイダブル部分を備えるアブレイダブル構造体と、
を具備することを特徴とする蒸気タービン。
【請求項2】
請求項1記載の蒸気タービンにおいて、アブレイダブル構造体は円周方向に複数に分割されてなることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蒸気タービンにおいて、アブレイダブル構造体はノズルダイアフラムにボルトにより固定されていることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項4】
請求項3記載の蒸気タービンにおいて、ボルトはロータに対する軸方向に配置されてアブレイダブル構造体をノズルダイアフラムに固定することを特徴とする蒸気タービン。
【請求項5】
請求項3記載の蒸気タービンにおいて、ボルトはロータに対する半径方向に配置されてアブレイダブル構造体をノズルダイアフラムに固定することを特徴とする蒸気タービン。
【請求項6】
請求項1または2記載の蒸気タービンにおいて、アブレイダブル構造体はノズルダイアフラムに嵌合されてなることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項7】
請求項6記載の蒸気タービンにおいて、アブレイダブル構造体とノズルダイアフラムとの嵌合部に介挿され、前記ノズルダイアフラムを構成する材料よりも熱膨張係数の大きな材料からなる部材片を更に具備することを特徴とする蒸気タービン。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載の蒸気タービンにおいて、シールストリップは動翼の先端部の構造体から削り出されて形成されていることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項記載の蒸気タービンにおいて、シールストリップは動翼の先端部に埋め込まれて形成されていることを特徴とする蒸気タービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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