説明

蒸気プラズマバーナおよび蒸気切断装置を作動させる方法

本発明は、カソード(22)とノズル(23)の形態のアノード(24)とを有する工作物(20)を加工する蒸気プラズマバーナ(6)を作動させる方法であって、動作中にカソード(22)とアノード(24)および/または、工作物(20)の間に電源(2)により電流を印加する方法に関する。蒸気プラズマバーナ(6)を工作物(20)に接近させることで、カソード(22)とアノード(24)の間にパイロットアークを点火した後、カソード(22)と工作物(20)の間に工作物(20)に作業アークを形成し、電源(2)をアノード(24)から遮断することでパイロットアークを消失し、電流を所定の動作電流まで増加する。蒸気プラズマバーナの最適な動作を達成するために、加工動作中にカソード(22)と工作物(20)の間の電圧(UUE)を監視し、電圧(UUE)が閾値(UUEs)を越えると、電源(2)をアノード(24)に再接続して、パイロットアークを新たに形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物を加工するためにカソードとノズル形状のアノードとを有する蒸気プラズマバーナを作動させる方法に関する。作動中、電源によりカソードとアノードおよび/または工作物との間に電流が印加される。これにより、カソードとアノードの間のパイロットアークの点火後、蒸気プラズマバーナを工作物に接近させることでカソードと工作物の間に作業アークが形成される。パイロットアークは電源をアノードから遮断することにより消火される。電流は所定の動作電流まで増加される。
【0002】
本発明はさらに、蒸気切断装置に関する。この蒸気切断装置は、カソードとノズルの形状のアノードと含む蒸気プラズマバーナと、一方でカソードに接続され、他方で加工される工作物とアノードに接続された電源と、電源とアノードの間に接続して配置されたスイッチを制御する制御装置とを有する。
【背景技術】
【0003】
このタイプの蒸気プラズマバーナでは、負極のカソードとバーナの先端にノズルのように形成された正極のアノードとの間で電源により電気アークが点火される。水または流体は、適当なタンクから適当なダクトを介してバーナに供給され、加熱手段により蒸気まで加熱され、適当な導管を介して燃焼室に導かれ、そこでプラズマ形成媒体であるプラズマを発生する。プラズマジェットがノズルから無電流状態で放出され、その高エネルギー密度により工作物を溶融するのに使用される。工作物を切断するのに加え、蒸気プラズマバーナはまた、工作物を接合するのに使用することができる。
【0004】
プラズマに変化する媒体として、ガスの代わりに水または流体を使用することは、ガスボトルが要求されないという利点がある。水は多くの場所で利用でき、容易に提供することができる。プラズマに変化することができるガスを形成するために、水または流体は蒸発させなければならない。
【0005】
蒸気切断装置をスイッチオンにした後、液体媒体を蒸発させる蒸気プラズマバーナの加熱要素がスイッチオンされ、作動温度に達する。作動温度に達すると、蒸気プラズマバーナは「スタンバイモード」またはアイドルモードになる。蒸気プラズマバーナを作動状態にするために、カソードとアノードの間に所謂パイロットアークが点火される。加熱要素により、蒸発する液体媒体はプラズマガスを形成し、ノズルのように設計されたアノードの出口開口を通して、電気アークを外方に押し出す。この状態でバーナは所謂「非伝達モード」(non-transmitting mode)である。バーナが電源に接続された工作物に接近すると、工作物上をカソードまで流れ始め、所定の電流を超えると、工作物とカソードの間に作業アーク(working arc)を形成させる。作業アークがカソードと工作物の間に形成されるやいなや、パイロットアークは電源を遮断することにより、消火され、電流が所望の切断電流まで増加され、工作物の加工を開始することができる。このモードは「伝達モード」(transmitting mode)と言う。
【0006】
蒸気プラズマバーナが工作物から離れると、作業アークの遮断と工作物の加工の中断が生じる。加工を継続するために、パイロットアークを再び点火しバーナを非伝達モード、最終的に伝達モードにしなければならない。電気アークの消火は、特に蒸気プラズマバーナにおいて問題が生じる。プラズマ形成媒体の連続供給により、バーナが冷却され、作動が妨害されるからである。したがって非伝達モードと伝達モードの間の切り換え制御は特に蒸気プラズマバーナにもっとも重要である。
【0007】
従来、測定電流または電圧の関数として非伝達モードから伝達モードへの切り換えを制御する種々の方法が知られている。例えば、US6133543Aは、電気アークの電流を伝達モードで検出し、電源の断続を制御するのに使用することで、プラズマアークを制御する装置と方法を記載している。ここで使用されるバーナはガスで作動する伝統的なバーナである。
【0008】
WO2004/022276A1は、種々の動作電流および電圧を監視し、パイロットアークから作業アークへの切り換えを最適化するプラズマバーナを開示している。
【特許文献1】WO2004/022276A1
【発明の開示】
【0009】
本発明の目的は動作状態の最適な切換を達成することが出来る。蒸気プラズマバーナを作動させる前述の方法を提供することにある。本発明による方法は実質的に中断の無い工作物の加工を保証し、最適な加工結果を保証する。
【0010】
本発明の他の目的は蒸気プラズマバーナの最適な動作を達成することができる前述の蒸気切断装置を提供することにある。
【0011】
本発明の第一の目的は、カソード22と工作物20の間の電圧を加工動作中に監視し、電圧が閾値UUEsを越えるやいなや、電源2をアノード24に再接続して、パイロットアークを新たに形成する前述の方法により達成される。本発明による革新は、蒸気プラズマバーナは工作物から遠く離れて移動し、作業アークの消失が切迫した時に伝達モードから被伝達モードへ迅速に切換えることにある。蒸気プラズマバーナを移動がカソードと工作物の間の電圧を測定することによって決定される。所定の閾値が越えたときに蒸気プラズマバーナのアノードは電源に再接続され、カソードとアノードの間のパイロットアークは再点火されるという事実により、バーナは作業アークが消失したときでも、被伝達モードに留まる。これにより、工作物からのバーナの距離が再び所望の距離に達するやいなやプラズマ形成媒体によるバーナの冷却が防止され、動作の迅速な継続が補償される。この場合、作業アークが消失する前にパイロットアークが点火することを保証するために、カソードと工作物の間の電圧の閾値が越えた後、電源のアノードへの係合ができるだけ迅速に行わなければならない。
【0012】
閾値は、異なる動作パラメータとバーナタイプを考慮することができるように調整可能であることが有利である。
【0013】
有利な方法では、異なる閾値をメモリに設けて、使用する蒸気プラズマバーナを関数として検索可能で、および/または、調整可能である。
【0014】
加工動作中、バーナを再調整することができるために、前記動作電流(operating current)は加工動作中、調整可能であることが有利である。動作電流の強度は加工される工作物に適合される。
【0015】
本発明のさらなる特徴によると、前記電源は、前記工作物と前記カソードの間の電流が閾値を越えると、前記アノードから遮断することが企図されている。工作物とカソードの間の電流を監視することで、バーナが工作物に接近するにつれて流れ始めるカソードと工作部の間の部分電流が監視される。測定された電流が所定の閾値を超えるやいなや、アノードから電源を遮断することでパイロットアークが消失し、これにより作業アークのみが燃焼し続ける。これは、非伝達モードから伝達モードへの切換を示す。
【0016】
このために、前記電は、前記電が閾値を越えるやいなや、所定時間後に前記アノードから遮断することが有利である。前記時間の調整により、パイロットアークが再び消失される前にある時間燃焼することが保証される。これにより、切換頻度が高いと、スイッチにストレスを与えるが、振動の形成が防止される。前記時間は、閾値の超過を認識したときに、時間機能要素の開始により生じる。
【0017】
パイロットアークが再び消失する前に燃焼しなければならない最小時間は、1から1.4msの範囲であることが有利である。
【0018】
前記工作物とカソードの間の電流の閾値は、同様に調整可能であることが好ましい。
【0019】
前記パイロットアークは、前記カソードと前記アノードの間に高周波電圧を印加することにより点火することができる。
【0020】
前記パイロットアークは、軸方向に変位可能なカソードをアノードから上昇させることで点火することも同様に可能である。このような形態では、蒸気プラズマバーナの遮断状態で、カソードはアノードの上に配置されている。この状態では、短絡回路はカソードとアノードの間で優勢である。カソードとアノードの間でパイロットアークを点火できるように、蒸気プラズマバーナの供給液体媒体によりアノードから自動的に上昇させることが好ましいのは、動作状態だけである。
【0021】
アノードとカソードの間の短絡回路を監視するために、加工動作中、前記カソードと前記アノーの間の電圧を測定し、前記カソードと前記工作物との間の電圧と比較し、一致した場合に動作電流を減少する。これは本発明のさらなる特徴と一致する。したがって、カソードがアノードと出合ったときに動作電流が減少することが保護され、カソードとアノードの両方が確保される。
【0022】
さらに、前記カソードと前記アノードの間の電圧を測定し、短絡を検出すると前記電源の前記アノードからの遮断を防止することも実行可能である。この手段により、バーナと工作物の間の電気アークの点火は、アノードとカソードを短絡させることで防止される。パイロットアークの遮断、すなわち、伝達モードの達成が可能となるのは、ノズルとカソードの間のパイロットアークの点火後のみであり、アノードとカソードの間の短絡の開成前は実行できない。
【0023】
前記電源の前記アノードからの接続および/または遮断は所定の機能および例えば階段状または傾斜状に実現すれば、切換が突然に生じないので、要素は救済される。
【0024】
有利な方法では、前記蒸気プラズマバーナの水の流量は調整可能である。これにより、例えば、バーナの冷却は流量を増加することで改良することができる。
【0025】
本発明の目的は、前記カソードと前記工作物の間の電圧を測定する測定装置を有する前述の蒸気切断装置によっても達成され、この測定装置は前記制御装置に接続されている。
カソードと工作物の間の電圧を検出することで、前記電圧は制御装置の所定の閾値と比較され、その後に電源とアノードの間に接続して配置されたスイッチを適切な方法で制御することができる。
【0026】
前記カソードと前記工作物の間の電流を測定する測定装置が設けられ、この測定装置は前記制御装置と接続されていることが有利である。これにより、カソードと工作物の間の電流の所定の閾値が超過したときに、非伝達モードから伝達モードへの選択的切換が可能となる。
【0027】
工作物とカソードの間の電流を測定する装置も有利であり、この測定装置は前記制御装置に接続されている。この電流測定装置は、動作中に動作電流を検出するのに役立つ。
【0028】
バーナと工作物の間の短絡を検出するために、前記カソードと前記アノードの間の電圧を測定する測定装置が設けられ、この測定装置は前記制御装置と接続されている。
【0029】
前記制御装置は、アナログ回路で構成されていれば、特に伝達モードから非伝達モードに切り換えるときに要求され所望される短い切換時間が達成される。マイクロコントローラにより形成された制御装置では、ソフトウェアによる解決手段では達成することができない。
【0030】
前記スイッチはトランジスタ、特にIGBT(絶縁ゲート二極トランジスタ)からなることが好ましい。
【0031】
有利な方法で、所定の閾値を記憶するメモリが設けられ、このメモリは前記制御装置と接続されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
図1は蒸気切断工程のための基本装置1aを有する蒸気切断装置1を示す。基本装置1aは電源2、制御装置3、この制御装置3と関連する遮断要素4からなる。遮断要素4は容器5に接続されるとともに、バーナハンドル6aとバーナ本体6bを含む蒸気プラズマバーナ6に供給ライン7を介して接続され、蒸気プラズマバーナ6は容器5に設けられた流体8を供給されるようになっている。蒸気プラズマバーナ6への電気エネルギーの供給は電源2から配線9、10を介して行われる。
【0033】
蒸気プラズマバーナ6を冷却するために、蒸気プラズマバーナ6は冷却回路11により、オプションとして液体モニタを介して液体容器13と接続されてもよい。バーナ6または基本装置1aを作動させると、冷却回路11は制御装置3により始動され、冷却回路11を介してバーナ6を冷却する。冷却回路11を形成するために、バーナ6は冷却ライン14、15を介して液体容器13と接続されている。
【0034】
さらに基本装置1aは、蒸気切断装置1の異なるパラメータまたは動作状態を調整し、表示することができる入力および/または、表示装置16を有していてもよい。入力および/または表示装置16を介して調整されたパラメータは、制御装置3に伝送され、それにしたがって蒸気切断装置1の個々の要素を支配する。
【0035】
さらに、蒸気プラズマバーナ6は少なくともひとつの操作要素17、特にプッシュボタンスイッチを有していてもよい。プッシュボタンスイッチ18は、それを作動および/または非作動することにより、オペレータはバーナ6から制御装置3に蒸気切断工程が開始され、実行されたことを知らせることができる。さらに入力および/または表示装置16は、例えば切断される材料、使用流体、および例えば電流および電圧特性を予め調整し、予め規定するのに役立つ。言うまでもないが、更なる操作要素をバーナ6に配置して蒸気切断装置1または複数の動作パラメータをバーナ6から調整してもよい。このために、そのような操作要素は基本装置1a、特に制御装置3に配線またはバスシステムを介して直接に接続することができる。
【0036】
プッシュボタン装置18を作動すると、制御装置3は蒸気切断工程に要求される個々の要素を起動する。これにより、ポンプ(不図示)、遮断要素4および電源2は、例えば、最初に起動され、流体8および電気エネルギーをバーナ6に供給することを開始する。この後、制御装置3は冷却回路11を起動し、バーナ6の冷却を可能にする。流体8とエネルギー、特に電流および電圧をバーナ6に供給することにより、流体8はバーナ6内で高温ガス19、特にプラズマに変換され、バーナ6から流出するガス19により、工作物20上で切断工程を実行することができる。
【0037】
図2から4は、本発明による蒸気プラズマバーナ6の異なる動作状態6の概略図を示す。蒸気プラズマバーナ6はハウジング21を有し、このハウジング21にカソード22が配置され、カソード22は電源2と接続されている。ノズル23の形態のアノード24は電源2の正極と接続されている。
【0038】
図2によるアイドル状態またはスタンバイモードでは、補助の変位可能なカソード22はノズル23で押圧される。このモードでは短絡が存在するため、カソード22とアノード24の間で電気アークは点火されない。水を蒸発させるために蒸気プラズマバーナ6に収容された加熱手段は、動作媒体を予め加熱するためにすでに作動されている。
【0039】
カソード22とアノード24の間でパイロットアークを点火させるために、液体媒体、特に水の供給は図3に従って行われ、これにより補助の変位可能なカソード22はノズル23から持ち上げられ、適切な電力が存在することで、パイロットアークがカソード22とアノード24の間で点火される。このような接触点火の代わりに、パイロットアークの点火は高周波電圧を印加することで有効にすることができる。加熱手段で蒸発された水は燃焼室に供給され、ここでプラズマジェットを形成する媒体として役立つ。プラズマジェットはノズル23として設計されたアノード24に向けられた開口25を介して押し出され、その高エネルギー密度により、工作物20を切断し、また接続するのに使用することができる。蒸気プラズマバーナ6は、所謂非伝達モードである。
【0040】
図2によるスタンバイモードから図3による非伝達モードへの切り換えを最適化するために、種々の動作パラメータが測定され、制御装置25に供給される。制御装置25は電源2と蒸気プラズマバーナ6のアノード24との間に配置されたスイッチ30を制御する。具体的には、カソード22とアノード24の間の電圧UNUEを電圧測定装置26により測定し、電源2の正極から工作物20への電流IUEを電流測定装置28により測定する。さらに、カソード22と工作物20の間の電圧UUEを電圧測定装置27により測定し、電源2の負極から蒸気プラズマバーナのカソード22への電流ICUTを電流測定装置29により、測定することも考えられる。検出したデータは、スイッチを制御する制御装置25に供給され、電源2の正極をアノード24に接続する。電圧測定装置26により測定されたカソード22と蒸気プラズマバーナのアノード24との間の電圧UUNEを介して、カソード22とアノードまたはノズル24との間の短絡回路が遮断されたときが認識される。カソード22とアノード24の間のパイロットアークが点火されるのはそのときのみである。
【0041】
蒸気プラズマバーナ6は、電源2の正極に接続された工作物20に接近すると、小部分電流ICEが伝達電路上を流れ始める。電流測定装置28より測定される工作物20への電流ICEが所定の閾値IUEsを超えると、スイッチ30が制御装置25により駆動され、これにより電源2がアノード24から遮断される。これにより電気アークがカソード22から工作物20へ強制的に閃光し、電源2から供給される電流が所定の遮断電流ICUTまで上昇する。この場合、蒸気プラズマバーナ6は所謂伝達モードにある。蒸気プラズマバーナ6がさらに加工物20から取り除かれると、カソード22と工作物の間の電圧が増加する。電源2が調整された遮断電流ICUTを維持しようとするからである。電圧測定装置27により測定された電圧UUEが所定の閾値UUEsを越えると、スイッチ30が再び閉じる。これによりアノード24が電源2の正極と再接続されて、電気アークが遮断されるのを防止する。この状態では蒸気プラズマバーナ6は図3による非伝達モードに復帰している。これにより、二つの動作状態、すなわち伝達状態と非伝達状態の間の切り換えが必要に応じて行われる。このようにするために、スイッチ30の制御を迅速に行うことが重要である。このために、アナログ形態の制御装置25がマイクロコントローラによる具現化よりも適している。この電気アークの自動制御は、特定の工作物例えば多孔板を切断するときに重要である。これらの場合、工作物とバーナの間の距離の一定の変化により電気アークが消失される。これはパイロットアークの再点火と呼ぶ。加えて、電流の脈動はある材料の切断品質に有利である。本発明による方法により、エネルギー入力が減少する。
【0042】
他のオプションとして、制御装置3は切り換え処理を行う。この場合、例えばパイロットアークの最初の点火時点、すなわち処理の起動時に、切り換え信号を生成するか無効にしなければならない。これにより制御装置3は、切り換え信号に対する閾値を超えたときのみ、スイッチ30を開放する。これは非伝達モードから伝達モードへの切り換えが切り換え信号が例えば50Vを超えたときのみ実行可能であることを意味する。これは、カソードとアノードの間の短絡が確実に遮断され、すなわちカソードがアノードから持ち上げられ、カソード22とアノード24の間のパイロットアークがバーナ6の内部で確実に燃焼することを保障する。
【0043】
制御装置3による開放により、アナログ形態の制御装置25は、電気アークを工作物22に切り換えるように、スイッチ30を開くことができる。これは、カソード22をアノード24から持ち上げない限り、電気アークがノズル23と工作物20の間で燃焼しない。電気アークが燃焼しないということを保障する。例えばカソードが実際にアノード24から持ち上げられ、なければ、動作中に伝達モードと非伝達モードを切り換えることが不可能となる。さらに、これによりパイロットアークを介してバーナ6の信頼性のある加熱を達成することができることが保障される。これによりバーナ6から水蒸気以外の何も放出されない。これは制御装置3による介入により妨げられる。何故なら、ノズル3とカソード24の間で点火が行われる前にスイッチの動作を可能にするために、信号が消去することができないし、適切な信号を生成することができないからである。
【0044】
制御装置3による他の介入は、非伝達モードすなわちパイロットアークに戻るときに、工作物20とカソード22の間で電気アークが燃焼している伝達モードにおけるパイロットアークの制御装置3による監視である。これは、ノズル23とカソード24の間で所定時間好ましくは、1.2msの間パイロットアークが燃焼しなければならないことを意味する。そこで、電気アークが再び工作物20に点火され、パイロットアークが維持される前に、何処に電流が流れているかの問い合わせが行われる。これにより振動すなわちトグリング(toggling)が行われないことが保障される。何故なら使用されているスイッチ30は高い切り換え周波数を維持しないからである。
【0045】
もちろん、回路形態をデジタルまたはアナログで具現化することも可能である、これによりデジタル形態では制御手段25は制御装置3に統合してもよいし、制御装置3により具現化されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】蒸気切断装置の概略図。
【図2】アイドル状態の蒸気プラズマバーナの概略図。
【図3】非伝達モードの蒸気プラズマバーナの概略図。
【図4】伝達モードの蒸気プラズマバーナの概略図。
【符号の説明】
【0047】
1 蒸気切断装置
1a 基本装置
2 電源
3 制御装置
4 遮断要素
5 容器
6 蒸気プラズマバーナ
6a バーナハンドル
6b バーナ本体
7 供給ライン
8 流体
9,10 配線
11 冷却回路
13 液体容器
14,15 冷却ライン
16 表示装置
17 操作要素
18 プッシュボタンスイッチ
19 高温ガス
20 工作物
21 ハウジング
22 カソード
23 ノズル
24 アノード
25 制御装置
30 スイッチ
26,27 電圧測定装置
28,29 電流測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード(22)とノズル(23)の形態のアノード(24)とを有する工作物(20)を加工する蒸気プラズマバーナ(6)を作動させる方法であって、動作中にカソード(22)とアノード(24)および/または、工作物(20)の間に電源(2)により電流を印加し、これによりカソード(22)とアノード(24)の間にパイロットアークを点火した後、蒸気プラズマバーナ(6)を工作物(20)に接近させることでカソード(22)と工作物(20)の間に工作物(20)に作業アークを形成し、電源(2)をアノード(24)から遮断することでパイロットアークを消失し、電流を所定の動作電流まで増加する方法において、加工動作中にカソード(22)と工作物(20)の間の電圧(UUE)を監視し、電圧(UUE)が閾値(UUEs)を越えると、電源(2)をアノード(24)に再接続して、パイロットアークを新たに形成することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記閾値(UUEs)は調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
異なる閾値(UUEs)が設けられ、使用する蒸気プラズマバーナ(6)関数として調整可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記動作電流ICUTは加工動作中に調整可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記電源(2)は、前記工作物(20)と前記カソード(22)の間の電流(IUE)が閾値(IUEs)を越えると、前記アノード(24)から遮断することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記電源(2)は、前記電流IUEが閾値(IUEs)を越えるやいなや、所定時間(Δt)後に前記アノード(24)から遮断することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記時間は1から1.4msであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電流の閾値(IUEs)は調整可能であることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記パイロットアークは、前記カソード(22)と前記アノード(24)の間に高周波電圧を印加することにより点火することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記パイロットアークは、軸方向に変位可能なカソード(22)をアノード(24)から上昇させることで点火することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
加工動作中、前記カソード(22)と前記アノード(24)の間の電圧(UNUE)を測定し、前記カソード22と前記工作物(20)との間の電圧(UNUE)と比較し、一致した場合に動作電流を減少することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カソード(22)と前記アノード(24)の間の電圧(UNUE)を測定し、短絡を検出すると前記電源(2)の前記アノード(24)からの遮断を防止することを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記電源(2)の前記アノード(24)からの接続および/または遮断は、所定の機能により、例えば階段状または傾斜状に実現することを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記蒸気プラズマバーナ(6)の水の流量は調整可能であることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
カソード(22)とノズル(23)の形態のアノード(24)とを有する蒸気プラズマバーナ(6)と、一方で前記カソード(22)に接続され、他方で前記アノード(24)とともに処理される工作物(20)に接続された電源(2)と、前記電源(2)と前記アノード(24)の間に接続して配置されたスイッチ(30)を制御する制御装置(25)とを有する蒸気切断装置(1)において、前記カソード(22)と前記工作物(20)の間の電圧(UUE)を測定する測定装置(27)が設けられ、この測定装置(27)は前記制御装置(25)に接続されていることを特徴とする蒸気切断装置。
【請求項16】
前記カソード(22)と前記工作物(20)の間の電流(IUE)を測定する測定装置(28)が設けられ、この測定装置(28)は前記制御装置(25)と接続されていることを特徴とする請求項15に記載の蒸気切断装置。
【請求項17】
前記カソード(22)と前記工作物(20)の間の電流(ICUT)を測定する測定装置(
29)が設けられ、この測定装置(29)は前記制御装置(25)と接続されていることを特徴とする請求項15または16に記載の蒸気切断装置。
【請求項18】
前記カソード(22)と前記アノード(24)の間の電圧を測定する測定装置(26)が設けられ、この測定装置(26)は前記制御装置(25)と接続されていることを特徴とする請求項15から17のいずれかに記載の蒸気切断装置。
【請求項19】
前記制御装置(25)はアナログ回路で構成されていることを特徴とする請求項15か18のいずれかに記載の蒸気切断装置。
【請求項20】
前記スイッチ(30)はトランジスタ、特にIGBT(絶縁ゲート二極トランジスタ)から成ることを特徴とする請求項15から19のいずれかに記載の蒸気切断装置。
【請求項21】
所定の閾値を記憶するメモリが設けられ、このメモリは前記制御装置(25)と接続されていることを特徴とする請求項15から20のいずれかに記載の蒸気切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−506892(P2009−506892A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529411(P2008−529411)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【国際出願番号】PCT/AT2006/000365
【国際公開番号】WO2007/028182
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(504380611)フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (65)
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
【Fターム(参考)】