説明

蒸気発生装置

【課題】 小型で取り扱いやすく、しかもコストが安価でありながら、連続的に蒸気を発生させることができる蒸気発生装置を提供する。
【解決手段】 水を加熱して蒸気化する蒸気発生装置において、全体が金属材よりなる蒸気発生器本体10と、蒸気発生器本体10を加熱する加熱手段20とを含み、蒸気発生器本体10内に、所定容積の蒸発室11と、蒸発室11よりも小径であって給水ポンプから送水される水を蒸発室11内に供給する給水孔12と、蒸発室11よりも小径であって蒸発室11で生成された蒸気を外部に放出する蒸気噴射孔13とを一体に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を加熱して蒸気化する蒸気発生装置に関し、さらに詳しく言えば、液晶表示パネルの端子部など比較的小面積の部分を蒸気洗浄(スチーム洗浄)するのに好適な蒸気発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルや有機ELパネルなどの表示パネルには、そのパネル内の表示電極に電気的に連なるリード端子が形成された端子部が設けられており、その端子部にフレキシブル基板などの外部制御基板が接続される。また、機種によっては外部制御基板を接続する前の工程で端子部上に表示駆動用のICチップが実装されることがある。
【0003】
外部制御基板が接続されるまでの間、表示パネルは例えば偏光膜貼着工程や点灯検査工程などの各工程に流されるため、その間にリード端子に異物が付着することがある。その異物としては、液晶の残滓や油脂類,細かなゴミや繊維物などのほかに、汗や唾液,皮膚などの人体分泌物がある。
【0004】
これらの異物は、リード端子の電極腐蝕や接続不良の原因となるため、外部制御基板を接続するに先立って洗浄により除去する必要がある。通常、洗浄工程は点灯検査工程後に用意されているため、洗浄は表示部に偏光膜が貼着された状態で行われる。
【0005】
端子の洗浄方法には、大別してドライ洗浄とウエット洗浄とがある。このうち、ドライ洗浄は、通常、紫外線やプラズマを照射することにより行われる。これによれば、非接触であるため電極に傷を付けることなく、上記した残渣や人体分泌物などを比較的容易に除去することができる。
【0006】
しかしながら、紫外線洗浄について言えば、特に端子部の切り出し面の側の隙間に入り込んでいる液晶の残渣を除去する場合、その部分に照射される紫外線の一部が表示部側に回り込み、これにより偏光膜が変色(変質)してしまうという問題がある。
【0007】
また、プラズマ洗浄について言えば、リード端子の電極表面にプラズマを照射すると、安定な保護皮膜として機能している金属酸化膜までも除去され、かえって腐蝕を加速させてしまうという問題がある。さらに言えば、紫外線、プラズマのいずれのドライ洗浄によるにしても、その設備に高いコストがかかる。
【0008】
これに対して、ウエット洗浄では洗浄液が用いられるが、表示パネルには樹脂フィルムの一つとして偏光膜が貼着されているため、浸漬洗浄することができない。そのため、ウエット洗浄では有機溶剤を含ませた布や綿棒などで端子部の接続リード端子を拭くようにしているが、電極を擦る作業であるため電極を傷つけるおそれがある。
【0009】
そればかりでなく、端子部の切り出し面側の隙間に入り込んでいる液晶の残渣や、人体分泌物でとりわけ乾燥してしまっている汗や唾液は、有機溶剤を含ませた布や綿棒などで拭くだけでは十分に除去することができないという問題がある。
【0010】
そこで、例えば特許文献1による発明では、表示パネルの端子部に高温の蒸気(スチーム)を噴射させて端子部を洗浄することが提案されている。このスチーム洗浄によれば、高温の蒸気により端子部に付着している異物が浮き上がり、蒸気の噴射圧により端子部上から洗い流されるため、端子部のリード端子を痛めたり金属酸化皮膜を破壊することなく、人体分泌物を含めた異物や、塩分などの電解質を除去することができる。
【0011】
【特許文献1】特開2004−258368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記したスチーム洗浄を行う場合、従来ではボイラ式の蒸気発生装置を使用しているため、次のような問題がある。
【0013】
すなわち、ボイラ式の蒸気発生装置では、ボイラタンク内で水を加熱して蒸気を発生させ、その蒸気をホースを介してノズルにまで供給するようにしているため、熱損失が大きく蒸気温度が不安定で、場合によっては、蒸気が途中で結露し水滴としてノズルより放出されることがあり、所期の洗浄効果が得られない。
【0014】
また、ボイラタンク内に水を補給するときには、装置を一旦停止する必要がある。そればかりでなく、水補給後に運転を再開してから安定蒸気を得るまでにも時間がかかる。それ以前の問題として、ボイラ式の蒸気発生装置は一般的に大掛かりで、設備導入コストの負担も大きい。
【0015】
したがって、本発明の課題は、小型で取り扱いやすく、しかもコストが安価でありながら、連続的に蒸気を発生させることができる特に基板端子部などのスチーム洗浄に好適である蒸気発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、水を加熱して蒸気化する蒸気発生装置において、全体が金属材よりなる蒸気発生器本体と、上記蒸気発生器本体を加熱する加熱手段とを含み、上記蒸気発生器本体内に、所定容積の蒸発室と、上記蒸発室よりも小径であって給水ポンプから送水される水を上記蒸発室内に供給する給水孔と、上記蒸発室よりも小径であって上記蒸発室で生成された蒸気を外部に放出する蒸気噴射孔とが一体に形成されていることを特徴としている。
【0017】
本発明において、上記蒸気発生器本体の剛性を高めるうえで、上記蒸発室が円筒形もしくは紡錘形として形成され、上記給水孔と上記蒸気噴射孔とが同軸として、上記蒸発室の対向する内壁面に連通していることが好ましい。
【0018】
また、本発明の好ましい態様によれば、上記蒸発室の最大断面積と上記給水孔の断面積との比が10:1以下、また、上記蒸発室の最大断面積と上記蒸気噴射孔の断面積との比も10:1以下とされる。
【0019】
また、本発明において、上記給水孔には、その途中から分岐され、その各々が上記蒸発室に至る枝孔が含まれることが好ましい。蒸気発生装置として給水ポンプをさらに含む場合、その給水ポンプはチューブポンプであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、全体が金属材よりなり、加熱手段により加熱される蒸気発生器本体内に、蒸発室と、蒸発室よりも小径であって給水ポンプから送水される水を蒸発室内に供給する給水孔と、蒸発室よりも小径であって蒸発室で生成された蒸気を外部に放出する蒸気噴射孔とを一体に形成するという簡単な構成により、給水時にも運転を停止することなく、高圧の蒸気を連続的に得ることができる。
【0021】
また、蒸気発生器本体内に、給水孔,蒸発室および蒸気噴射孔が一体に形成され、蒸気発生器本体がノズルを兼用する形態であることから、単管状で小型化することができるため、取り扱いが容易である。しかも、給水から短時間で蒸気化可能であるため、応答性が良好で蒸気温度もコントロールしやすい。また、例えば金属ブロックをくり抜いて作製することができるため、安価でもある。
【0022】
さらには、蒸発室の最大断面積と給水孔の断面積との比を10:1以下、また、蒸発室の最大断面積と蒸気噴射孔の断面積との比も10:1以下とすることにより、蒸発室内の蒸気圧が必要以上に上昇することがなく、生成された蒸気の給水孔側への逆流などを防止することができる。また、給水ポンプに逆止構造のチューブポンプを用いることにより、圧力が高まっている蒸発室内に水を連続的に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、図面(図1ないし図4)により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図面中、図1は本発明による蒸気発生装置の構成を示す模式図,図2は本発明の要部である蒸気発生器本体の内部構造を概略的に示す拡大断面図である。
【0024】
図1に示すように、この蒸気発生装置は、蒸気発生器本体10と、蒸気発生器本体10を加熱する加熱手段20とを含み、基板端子部などのスチーム洗浄に使用される際には、蒸気発生器本体10に給水ポンプ30が接続される。
【0025】
本発明における蒸気発生器本体10は、金属材よりなり好ましくは単管(1本の管)状を呈するように形成される。図2に示すように、蒸気発生器本体10内には、蒸発室11と、本体10の一端側から蒸発室11に連通する給水孔12と、本体10の他端側から蒸発室11に連通する蒸気噴射孔13とが一体に形成される。
【0026】
蒸発室11は例えば円筒状に形成されてよいが、その孔径(断面積)は、水が気化して体積膨張し得るように、給水孔12の孔径よりも十分に広くする必要がある。換言すれば、給水孔12の孔径を蒸発室11の孔径よりも小さくする必要がある。また、気化した蒸気が所定の圧力をもって外部に噴出するようにするため、蒸気噴射孔13の孔径も蒸発室11の孔径よりも小さくする必要がある。
【0027】
蒸発室11,給水孔12および蒸気噴射孔13は、金属ブロックをくり抜くことにより形成することができる。上記したように各部分の孔径が異なるため、実際には、金属ブロックを2つ割とし、蒸発室11,給水孔12および蒸気噴射孔13の各部分を切削したのち、各金属ブロックを合体させればよい。金属材としては、SUSやチタンなどが最適であるが、切削面に硬質めっきなどの表面処理をすれば鉄やアルミニウムでも使用することができる。
【0028】
蒸発室11,給水孔12および蒸気噴射孔13の好ましい配置は同軸配置である。上記したように、給水孔12と蒸気噴射孔13の各孔径は、蒸発室11の孔径よりも小さくする必要があるが、その好ましい比率について説明する。なお、図2の例では、給水孔12の一端側に拡径されたインレット12aが形成されているが、ここで言う孔径は給水孔12自体の孔径(断面積)である。
【0029】
まず、蒸発室11の孔径に対する給水孔12の孔径については、気化した蒸気が給水ポンプ30の送水圧に抗して蒸発室11内の圧力により給水孔12側に逆流しないようにするため、蒸発室11の孔径と給水孔12の孔径の比率を10:1以下とすることが好ましい。
【0030】
ただし、加熱手段20により加熱される高温の蒸気室11の熱は、一体化された給水孔12の部分にも熱伝導しているため、給水孔12の孔径が大きいことにより、給水孔12内を流れる水の流速が遅くなれば、給水孔12内で水が沸騰するおそれがある。これを防止するうえで、蒸気化する量にも関係するが、蒸発室11の孔径と給水孔12の孔径の比率は20:1以下であることがより好ましい。
【0031】
次に、蒸発室11の孔径に対する蒸気噴射孔13の孔径については、蒸発室11内の圧力が必要以上に上昇しないように蒸気を噴出させるうえで、給水孔12の孔径とのバランスを考慮して、蒸発室11の孔径に対する蒸気噴射孔13の孔径は、給水孔12と同じく10:1以下、特には20:1以下が好ましい。
【0032】
図2の例において、蒸発室11は円筒状に形成されているが、図3に示すように、蒸発室11を紡錘形(卵形)としてもよく、これによれば、蒸発室11の部分の剛性をより高めることができる。なお、紡錘形とした場合の給水孔12,蒸気噴射孔13に対する孔径の基準は最大径である。また、蒸発室11を特に紡錘形とした場合には、その蒸発室11の壁面に孔を開けるだけでも蒸気噴射孔13とすることができる。
【0033】
給水孔12と蒸気噴射孔13は好ましくは同軸的に配置されるが、この場合、大量の蒸気を得ようとして、給水ポンプの送水圧を高めて給水孔12内の流速を速めたとき、その水が蒸気室11の壁面に落ちずにそのまま蒸気噴射孔13側に飛び、蒸気化の効率が低下することがある。
【0034】
これを防止するには、図4に示すように、給水孔12を多孔化、すなわち給水孔12を途中から例えば3つの枝孔121〜123に分岐させて蒸発器11に至るようにするとよい。これによれば、水の流速が落とされ、その出口付近で水の蒸発器11の壁面への接触面も増えるため、蒸気化の効率が高められる。
【0035】
また、図示しないが、蒸発器11の壁面をハニカム状としたり、蒸発器11の壁面にピンやリブなどを立てて、その壁面の表面積を広げることも、蒸気化の効率を高めるうえで有効である。
【0036】
加熱手段20には、高周波加熱や電磁誘導加熱を適用することも可能であるが、この例のように、安価に入手できしかも温度制御が容易な電気ヒータ21が好ましい。電気ヒータ21の場合、図2に示すように、その発熱コイル21aを蒸気発生器本体10に巻き付けることにより、蒸発室11に対してほぼ均一に熱を加えることができる。
【0037】
また、温度制御にしても、図1に示すように、電源22の電気ヒータ21への給電線にスイッチ23aを組み込むとともに、温度コントローラ23により図示しないサーミスタなどの温度センサを介して蒸気発生器本体10の温度を監視し、蒸気発生器本体10の温度が所定温度となるように、温度コントローラ23にてスイッチ23aをオンオフ制御すればよい。
【0038】
給水ポンプ30には、図1に示すように、チューブポンプ31を使用することが好ましい。チューブポンプ31によれば、弾性を有するチューブ31aの例えば2点を180゜の間隔をもって配置された一対の可動ローラ31b,31bで押し潰しながら、移動させてチューブ31a内の水を押し出す逆止構造であるため、蒸発室11内の圧力により水が押し戻されることがない。なお、基板端子部などをスチーム洗浄する場合には、純水もしくは超純水を用いることが好ましい。
【0039】
本発明の蒸気発生装置によれば、給水ポンプ30から送水される水が、蒸気発生器本体10内において、給水孔12から蒸発室11に給水されて蒸気化されたのち、蒸気噴射孔13から外部に噴射されるため、その途中での熱損失を最小限として、基板端子部などの被洗浄物を効果的にスチーム洗浄することができる。
【0040】
本発明においては、上記したように、蒸気発生器本体10内に給水孔12,蒸発室11および蒸気噴射孔13が一体に形成されているため、実際の寸法として、蒸気発生器本体10を例えば直径15mm,長さ80mm程度の小さな単管状とすることができる。また、給水ポンプ30から給水孔12を介して蒸発室11内に給水することにより、連続的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による蒸気発生装置の構成を示す模式図。
【図2】本発明の要部である蒸気発生器本体の概略的に示す拡大断面図。
【図3】上記蒸気発生器本体の変形例を示す模式的な断面図。
【図4】上記蒸気発生器本体の別の変形例を示す模式的な断面図。
【符号の説明】
【0042】
10 蒸気発生器本体
11 蒸発室
12 給水孔
13 蒸気噴射孔
20 加熱手段
21 電気ヒータ
21a 発熱コイル
22 電源
23 温度コントローラ
23a スイッチ
30 給水ポンプ
31 チューブポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱して蒸気化する蒸気発生装置において、
全体が金属材よりなる蒸気発生器本体と、上記蒸気発生器本体を加熱する加熱手段とを含み、上記蒸気発生器本体内に、所定容積の蒸発室と、上記蒸発室よりも小径であって給水ポンプから送水される水を上記蒸発室内に供給する給水孔と、上記蒸発室よりも小径であって上記蒸発室で生成された蒸気を外部に放出する蒸気噴射孔とが一体に形成されていることを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項2】
上記蒸発室が円筒形もしくは紡錘形として形成され、上記給水孔と上記蒸気噴射孔とが同軸として、上記蒸発室の対向する内壁面に連通していることを特徴とする請求項1に記載の蒸気発生装置。
【請求項3】
上記蒸発室の最大断面積と上記給水孔の断面積との比が10:1以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸気発生装置。
【請求項4】
上記蒸発室の最大断面積と上記蒸気噴射孔の断面積との比が10:1以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の蒸気発生装置。
【請求項5】
上記給水孔には、その途中から分岐され、その各々が上記蒸発室に至る枝孔が含まれることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の蒸気発生装置。
【請求項6】
上記給水ポンプとして、チューブポンプをさらに備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の蒸気発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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