説明

蒸気発生装置

【課題】蒸気発生容器の上部に支持されたホルダに固定されて蒸気発生容器内に吊設された加熱棒が過熱状態となってもホルダから脱落しないようにする。
【解決手段】蒸気発生装置20は所定量の水を貯えた蒸気発生容器21の外周に巻回された誘導加熱コイル27と、蒸気発生容器21内の上部に支持されたホルダ31と、このホルダ31に上端部が固定されて蒸気発生容器21内に吊設された複数の加熱棒32とを備えている。複数の加熱棒32は誘導加熱コイル27に高周波電流を供給したときに発熱する部分を発熱部32dとし、この発熱部32dより上側で発熱しない非発熱部32eとし、この非発熱部32eには発熱部32dの熱がホルダ31に伝わるのを抑制して加熱棒32が脱落するのを防ぐための断熱部32b設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチームコンベクションオーブン等に用いる蒸気発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、蒸気を含んだ熱風により食材を加熱調理するスチームコンベクションオーブンが開示されており、このスチームコンベクションオーブンは、ハウジング内に設けられた調理庫内にヒータと送風ファンを備え、ハウジング内の調理庫の側方に蒸気を供給するための誘導加熱式の蒸気発生装置を備えている。このスチームコンベクションオーブンで蒸気を含んだ熱風により食材を加熱調理をするときには、蒸気発生装置から調理庫内に蒸気を供給させるとともに、調理庫内の蒸気を含んだ空気をヒータにより加熱しながら送風ファンにより対流させている。
【0003】
このスチームコンベクションオーブンに用いた蒸気発生装置は、所定量の水を貯えて蒸気を発生させる蒸気発生容器と、蒸気発生容器の外周に巻回された誘導加熱コイルと、蒸気発生容器内の上部に支持された樹脂製のホルダとこれに上端部が固定されて蒸気発生容器内に吊設された複数の加熱棒とを有した加熱体とを備えている。加熱棒は誘導加熱コイルにより発熱する部分を発熱部とし、この発熱部より上側に連続して発熱しない部分を非発熱部とし、この非発熱部の上端部がホルダに固定されている。この蒸気発生装置では、誘導加熱コイルに高周波電流を供給すると、加熱棒の発熱部が発熱して蒸気発生容器内の水を加熱し、蒸気発生容器内の水は蒸気となって吐出される。このとき、蒸気発生容器内の水位は蒸気の発生により減少するので、加熱棒の発熱部を超える上限水位を検出したときに給水手段による給水を停止し、発熱部の上端より少し下側となる下限水位を検出したときに給水手段により給水するように制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−255871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、蒸気発生装置において、加熱棒の発熱部を発熱させることで蒸気を発生させているときには、加熱棒の発熱部を超える上限水位とこの発熱部の上端より少し下側の下限水位との間の水位となるように制御されている。しかし、例えば水位センサが故障して、蒸気発生容器内の水位が下限水位より低くなると、加熱棒の発熱部の熱は蒸気発生容器内の水と熱交換されなくなり、樹脂製のホルダは発熱部から非発熱部に伝わる熱によって加熱棒の固定部分が溶け、加熱棒がホルダから蒸気発生容器内に脱落することがあった。本発明はこのような問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は所定量の水を貯えて蒸気を発生させる蒸気発生容器と、蒸気発生容器の外周に巻回された誘導加熱コイルと、蒸気発生容器内の上部に支持されたホルダと、このホルダに上端部が固定されて蒸気発生容器内に吊設された加熱棒とを有した加熱体とを備え、加熱棒は誘導加熱コイルに高周波電流を供給したときに発熱する部分を発熱部とし、この発熱部より上側で発熱しない部分を非発熱部とし、この非発熱部の上端部をホルダに固定させた蒸気発生装置において、加熱棒の非発熱部には発熱部の熱がホルダに伝わるのを抑制して加熱棒の脱落を防ぐ脱落防止手段を備えたことを特徴とする蒸気発生装置を提供するものである。
【0007】
上記のように構成した蒸気発生装置においては、加熱棒の非発熱部には発熱部の熱がホルダに伝わるのを抑制して加熱棒の脱落を防ぐ脱落防止手段を備えたので、加熱棒の発熱部が過熱状態となっても、発熱部の熱は脱落防止手段によってホルダに伝わるのを抑制されるので、ホルダに樹脂部材を用いても、ホルダは加熱棒の固定部分が溶けにくくなり、加熱棒は蒸気発生容器内に脱落しにくくなる。
【0008】
上記のように構成した蒸気発生装置の一実施形態は、脱落防止手段として加熱棒の非発熱部には発熱部の熱をホルダに伝達するのを妨げる断熱部材を介装してもよく、このようにしたときには、加熱棒の発熱部が水と熱交換されずに過熱状態となっても、発熱部の熱は非発熱部に介装された断熱部材によってホルダに伝わりにくくなるので、ホルダは加熱棒の固定部分が溶けにくくなり、加熱棒はホルダから蒸気発生容器内に脱落しにくくなる。この実施形態では、加熱棒は磁性体部材よりなり、断熱部材には加熱棒のキューリー温度より高い融点をもつ材料を用いれば、発熱部は断熱部材の融点を超えて発熱しないので、断熱部材が加熱棒の発熱部から伝わる熱によって溶けずに、加熱棒は断熱部より下側が蒸気発生容器内に脱落しないようになる。
【0009】
上記のように構成した蒸気発生装置の他の実施形態は、脱落防止手段として加熱棒の非発熱部の少なくとも一部には他の部分より径の小さい小径部を設けてもよく、このようにしたときには、加熱棒の発熱部が水と熱交換されずに過熱状態となっても、発熱部の熱は非発熱部の小径部によってホルダに伝わりにくくなるので、加熱棒はホルダを溶かして蒸気発生容器内に脱落しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の蒸気発生装置を内蔵したスチームコンベクションオーブンの第1の実施形態の正面図である。
【図2】図1のA−A線における縦断面図である。
【図3】図1のB−B線における縦断面図である。
【図4】蒸気発生装置の一部破断縦断面図である。
【図5】加熱体の斜視図である。
【図6】スチームコンベクションオーブンの制御装置のブロック図である。
【図7】第2の実施形態の蒸気発生装置の一部破断縦断面図である。
【図8】第3の実施形態の蒸気発生装置の一部破断縦断面図である。
【図9】(a)第3の実施形態の加熱体の斜視図であり、(b)固定プレートの斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の蒸気発生装置をスチームコンベクションオーブンに適用した第1の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1〜図3に示すように、スチームコンベクションオーブン10は、ハウジング11の内部に配置した食材の調理庫12と、この調理庫12の内部を加熱するために調理庫12内に設けたヒータ13と、調理庫12内の空気を対流させるために調理庫12内に設けた送風ファン14と、調理庫12内の温度を検出する庫内温度センサ15と、ハウジング11の内部にて調理庫12の側方に形成した機械室16に設けられて調理庫12内に蒸気を供給する蒸気発生装置20と、ハウジング11のフロントパネルに操作パネル17を備えている。
【0012】
図4に示すように、本発明の蒸気発生装置20は、所定量の水を貯えて蒸気を発生させる蒸気発生容器21と、蒸気発生容器21の外周に巻回された誘導加熱コイル27と、蒸気発生容器21内に収容されて誘導加熱コイル27に高周波電流を供給することで発熱する加熱体30とを備えている。
【0013】
蒸気発生容器21は上下が開口した樹脂製の円筒部材よりなり、機械室16の床面に設置されて調理庫12内の水を排出するのに用いる排水タンク18上に接続筒22を介して立設されている。蒸気発生容器21の上端開口は蒸気の吐出口21aとなっており、この吐出口21aには吐出する蒸気を調理庫12内に導出するための蒸気導出筒23が接続されている。また蒸気発生容器21の下端開口の排水口21bに接続された接続筒22には、排水弁24が設けられており、排水弁24を開放させると蒸気発生容器21内の水が排水タンク18に排出される。蒸気発生容器21の上部には加熱体30を支持するために下側に向かって細く形成されたテーパ面21cが形成されている。
【0014】
蒸気発生容器21の上下方向の中間部外周には環状のブラケット25,26が上下に離間して設けられており、このブラケット25,26の間に誘導加熱コイル27が巻回されている。また、ブラケット25,26には、その円周方向に沿って誘導加熱コイル27から漏出する電磁波を防ぐために複数個の棒状のフェライト28が設けられている。
【0015】
図4に示すように、蒸気発生容器21内には誘導加熱コイル27に高周波電流を供給することにより発熱して蒸気発生容器21内の水を加熱する加熱体30が収容されている。図4及び図5に示すように、加熱体30は、蒸気発生容器21の上部に支持された樹脂製のホルダ31と、このホルダ31に上端部が固定されて蒸気発生容器21内に吊設された7本の加熱棒32とを有している。ホルダ31は中心部に蒸気の通路が形成された略環状をした樹脂部材より、外周部に等間隔に形成された7つの突部31aを蒸気発生容器21の上部に形成されたテーパ面21cに係止させて支持されている。樹脂製のホルダ31は7本の加熱棒32の上端部をインサート成形により一体的に固着している。
【0016】
7本の加熱棒32は蒸気発生容器21の軸線方向に延びてその中心軸を中心とした同心円上に等間隔に配置されている。各加熱棒32は、ホルダ31に固定された固定部32aと、固定部32aの下端に連結された断熱部32bと、断熱部32bの下端に連結された加熱部32cとからなる。固定部32aは短い金属製棒状部材よりなり、固定部32aはインサート成形によりホルダ31に固着されている。断熱部32bは短いセラミックス製棒状部材よりなり、固定部32aの下端に螺合して固定されている。加熱部32cは、磁性体部材よりなり導電性を有した長い金属製棒状部材よりなり、断熱部32bの下端に螺合して固定されている。固定部32aと断熱部32bと加熱部32cとを連結してなる加熱棒32は、加熱部32cの誘導加熱コイル27と同じ高さ位置にあってこれに高周波電流を供給したときに発熱する部分を発熱部32dとし、固定部32aと断熱部32bと加熱部32cの発熱部32dより上側部分とからなり誘導加熱コイル27に高周波電流を供給しても発熱しない部分を非発熱部32eとし、加熱部32cの発熱部32dより下側部分で誘導加熱コイル27に高周波電流を供給しても発熱しない部分を非発熱部32fとしている。なお、本実施形態では加熱部32cには高耐銹性フェライト系ステンレスとしてNSSC−160Rが用いられている。このNSSC−160Rを用いた各加熱部32cのキューリー温度は約500℃となっている。また、断熱部32bは断熱性を有して加熱部32cのキューリー温度より高い融点の種々のセラミックスまたは高耐熱性の樹脂材料等から選択可能である。
【0017】
蒸気発生容器21の上部には温度センサ33が設けられており、温度センサ33は加熱棒32の非発熱部32eの部分の温度を検出することで加熱体30の過熱状態を検知するためのものである。温度センサ33は、この実施形態では、加熱棒32の非発熱部32eのうち、断熱部32bより下側(発熱部32d側)の加熱部32cの温度を検出している。
【0018】
蒸気発生容器21の側方には蒸気発生容器21内の水位を検知するための略筒状の水位検知容器40が立設されており、水位検知容器40は蒸気発生容器21の下部に連通管41により連通接続されている。水位検知容器40内には蒸気発生容器21内の水位を検出するための水位センサ42が設けられている。水位センサ42はフロートスイッチよりなり、支持部材により上下動可能に支持されたフロートにより、蒸気発生容器21内で加熱棒32の発熱部32dを超える水位として上限水位L1とこの発熱部32dより少し下側の水位として下限水位L2とを検出する。水位検知容器40の上部に設けられた給水部43には給水手段44が接続されている。給水手段44は、水道等の給水源から導出される給水管45と、給水管45に介装された給水弁46とからなる。給水弁46を開放すれば水位検知容器40内に給水され、水位検知容器40内に給水された水は連通管41を通って蒸気発生容器21内に送られる。また、水位検知容器40には上限水位L1を少し超える水位の水を排水するオーバーフロー管47が設けられている。
【0019】
スチームコンベクションオーブン10は制御装置50を備えており、図6に示すように、制御装置50はヒータ13と、送風ファン14と、庫内温度センサ15と、操作パネル17と、蒸気発生装置20の各機器として排水弁24、誘導加熱コイル27、温度センサ33、水位センサ42、給水弁46に接続されている。制御装置50は、マイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM及びタイマ(何れも図示省略)を備えている。CPUは、操作パネル17からの入力、庫内温度センサ15、蒸気発生装置20の温度センサ33、水位センサ42の各検出に基づき、ヒータ13、送風ファン14、排水弁24、誘導加熱コイル27及び給水弁46の作動を制御するプログラムを実行する。
【0020】
このスチームコンベクションオーブン10においては、例えばコンビモードによる調理プログラムを実行するときには、制御装置50は、調理に適した温度及び蒸気量となるように、ヒータ13と蒸気発生装置20と送風ファン14との作動を制御している。
【0021】
このスチームコンベクションオーブン10でコンビモードの調理プログラムを実行して蒸気発生装置20を作動させると、誘導加熱コイル27に高周波電流が供給され、加熱棒32の発熱部32dが発熱する。蒸気発生容器21内の水は発熱する加熱棒32により加熱されて湯となってから蒸気となり、この蒸気は蒸気導出筒23から調理庫12内に供給される。蒸気発生容器21内の水位は蒸気の発生により低下するため、制御装置50は蒸気発生容器21内の水位が上限水位L1と下限水位L2との間の水位となるように制御している。具体的には、制御装置50は水位センサ42により下限水位L2が検出されると給水弁46を開放させて給水させ、水位センサ42により上限水位L1が検出されると給水弁46を閉止させて給水を停止させるよう制御している。また、このスチームコンベクションオーブン10では、コンビモードの調理プログラムを実行して蒸気発生装置20を作動させたときに、制御装置50は加熱体30が過熱状態になると誘導加熱コイル27に高周波電流の供給を停止するように制御している。具体的には、制御装置50は温度センサ33により過熱状態として規定した110℃以上を検出すると、誘導加熱コイル27に高周波電流の供給を停止している。
【0022】
上記のように構成した蒸気発生装置10においては、過熱状態となった加熱棒32が蒸気発生容器21内に脱落するのを防ぐ脱落防止手段として、加熱棒32の上側部分の非発熱部32eとなる位置にはセラミックスよりなる断熱部32bを介装したので、発熱部32dの熱は断熱部32bによりホルダ31に固着された固定部32aに伝わりにくくなる。これにより、ホルダ31に樹脂部材を用いたときに、加熱棒32の発熱部32dが過熱状態となっても、ホルダ31は加熱棒32の固着部分が溶けにくくなり、加熱棒32はホルダ31から蒸気発生容器21内に脱落しにくくなる。
【0023】
また、加熱棒32を構成する断熱部32bには、加熱棒32の加熱部32cのキューリー温度より高い温度を融点とするセラミックスを用いたので、加熱部32cの発熱部32dが断熱部32bの融点を超えて発熱しないようになり、断熱部32bが加熱棒32の発熱部32dから伝わる熱によって溶けずに、加熱棒32は断熱部32bより下側の加熱部32cが蒸気発生容器21内に脱落しないようになる。
【0024】
また、温度センサ33は、加熱棒32の非発熱部32eのうち、断熱部32bより下側(発熱部32d側)の加熱部32cの温度を検出している。温度センサ33により加熱棒32の過熱状態を規定する温度を検出して、誘導加熱コイル27に高周波電流の供給を停止した後でも、加熱棒32の発熱部32dの熱は上側部分の非発熱部32eに伝わっていく。しかし、温度センサ33は非発熱部32eのうち断熱部32bより下側に固定された加熱部32cの温度を検出しているので、過熱状態となった発熱部32dから非発熱部32eに伝わる熱を早期に検出することができる。これにより、発熱部32dによる発熱を早期に停止させることができ、発熱部32dから非発熱部32eに伝わる熱を少なくでき、加熱棒32がホルダ31から蒸気発生容器21内に脱落しにくくなる。なお、上記の実施形態においては、固定部32aを廃して、断熱部32bの上端をホルダ31に固着させたものでもよく、このようにしたときにも、上述したのと同様の作用効果を得ることができる。
【0025】
次に、本発明による蒸気発生装置の第2の実施形態について説明する。この蒸気発生装置20Aにおいては、上述した第1の実施形態の加熱体30を加熱体30Aに代えている。以下にこの加熱体30Aについて説明する。図7に示すように、加熱体30Aは、蒸気発生容器21の上部のテーパ面21cに当接して支持されるホルダ31と、このホルダ31に上端部が固定されて蒸気発生容器21内に吊設された7本の加熱棒32Aとを有している。ホルダ31は中心部に蒸気の通路が形成された略環状の樹脂部材より、外周部に等間隔に形成された7つの突部31aを蒸気発生容器21の上部に形成されたテーパ面21cに係止させて支持されている。ホルダ31は7本の加熱棒32Aの上端部をインサート成形により一体的に固着している。
【0026】
7本の加熱棒32Aは蒸気発生容器21の軸線方向に延びてその中心軸を中心とした同心円上に等間隔に配置されている。各加熱棒32Aは、誘導加熱コイル27と同じ高さ位置にあってこれに高周波電流を供給したときに発熱する部分を発熱部32Adとし、発熱部32Adより上側及び下側で誘導加熱コイル27に高周波電流を供給しても発熱しない部分を非発熱部32Ae、32Afとしている。各加熱棒32Aの上側の非発熱部3Aeには、他の部分より径が細い小径部32Agが形成されている。また、温度センサ33は、加熱棒32Aの非発熱部32Aeのうち、小径部32Agより下側(発熱部32Ad側)の温度を検出している。これら以外は、上述した第1の実施形態と同様である。
【0027】
上記のように構成した蒸気発生装置20Aにおいては、過熱状態となった加熱棒32Aが蒸気発生容器21内に脱落するのを防ぐ脱落防止手段として、加熱棒32Aの上側部分の非発熱部32Aeには他の部分より径の小さい小径部32Agが形成されているので、発熱部32Adの熱は小径部32Agによりホルダ31に固着した部分に伝わりにくくなる。これにより、ホルダ31に樹脂部材を用いたときに、加熱棒32Aの発熱部32Adが過熱状態となっても、ホルダ31は加熱棒32Aの固着部分が溶けにくくなり、加熱棒32Aはホルダ31から蒸気発生容器21内に脱落しにくくなる。
【0028】
また、温度センサ33は、加熱棒32Aの非発熱部32Aeのうち、小径部32Agより下側(発熱部32d側)の温度を検出している。温度センサ33により加熱棒32の過熱状態を規定する温度を検出して、誘導加熱コイル27に高周波電流の供給を停止した後でも、加熱棒32Aの発熱部32Adの熱は上側部分の非発熱部32eに伝わっていく。しかし、温度センサ33は非発熱部32eのうち小径部32Agより下側の温度を検出しているので、過熱状態となった発熱部32Adから非発熱部32Aeに伝わる熱を早期に検出することができる。これにより、発熱部32Adによる発熱を早期に停止させることができ、発熱部32Adから非発熱部32Aeに伝わる熱を少なくでき、加熱棒32Aがホルダ31から蒸気発生容器21内に脱落しにくくなる。
【0029】
次に、本発明による蒸気発生装置の第3の実施形態について説明する。この蒸気発生装置20Bにおいては、上述した第1の実施形態の加熱体30を加熱体30Bに代えている。以下にこの加熱体30Bについて説明する。図8及び図9(a)に示すように、加熱体30Bは、蒸気発生容器21の上縁に当接して支持されるホルダ31Bと、このホルダ31Bに上端部が固定されて蒸気発生容器21内に吊設された6本の加熱棒32Bとを有している。ホルダ31Bは中心部に蒸気の通路が形成された略環状の樹脂部材より、上端外周部に形成されたフランジ31Baを蒸気発生容器21の上縁に係止させて支持されている。ホルダ31Bの下部には6本の加熱棒32Bをねじ31Bdにより固定するための環状の金属製固定リング31Bbがインサート成形により一体的に固着されている。図9(b)に示すように、固定リング31Bbにはその中心軸を中心とした同心円上に等間隔に加熱棒32Bを取り付けるための6つの貫通孔31Bcが形成されており、固定リング31Bbの上側から貫通孔31Bcを挿通させたねじ31Bdにより各加熱棒32Bの上端部が固定されている。
【0030】
6本の加熱棒32Bは蒸気発生容器21の軸線方向に延びてその中心軸を中心とした同心円上に等間隔に配置されている。各加熱棒32Bは、誘導加熱コイル27と同じ高さ位置にあってこれに高周波電流を供給したときに発熱する部分を発熱部32Bdとし、発熱部32Bdより上側及び下側で誘導加熱コイル27に高周波電流を供給しても発熱しない部分を非発熱部32Be、32Bfとしている。
【0031】
上記のように構成した蒸気発生装置20Bにおいては、過熱状態となった加熱棒32Bが蒸気発生容器21内に脱落するのを防ぐ脱落防止手段として、樹脂製のホルダ31にはインサート成形により固定リング31Bbが一体的に固着され、固定リング31Bbに各加熱棒32Bの上端がねじ31Bdにより固定されている。加熱棒32Bの発熱部32Bdが水と熱交換されずに過熱状態となって、発熱部32Bdの熱が上側の非発熱部32Beに伝達されると、ホルダ31Bは加熱棒32Bの周囲の部分が溶ける。しかし、各加熱棒32Bは固定リング31BbにねじBdに固定されており、この固定したねじ31Bdの頭部は固定リング31Bbの上面に係止しているので、各加熱棒32Bはホルダ31Bの溶融によっても蒸気発生容器21内に脱落しにくくなる。
【0032】
なお、この実施形態においては、樹脂製のホルダ31Bに金属製の固定リング31Bbをインサート成形し、固定リング31Bbに加熱棒32Bの上端部をねじ31Bdにより固定したものであるが、他の脱落防止手段として、ホルダに高い融点をもつ高耐熱性の樹脂を用い、このホルダを各加熱棒32の上端部を挿入してインサート成形したものでもよい。このようにしたときには、加熱棒が異常に過熱したときであっても、ホルダの加熱棒の上端部が挿入された接合部分が溶けることがなく、加熱棒が蒸気発生容器内に脱落しにくくなる。
【0033】
なお、本発明は各実施形態の蒸気発生装置に限られるものでなく、上述した各実施形態の蒸気発生装置を各々適宜組み合わせて、加熱棒がホルダを溶かして蒸気発生容器内に脱落するのを防ぐようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
20…蒸気発生装置、21…蒸気発生容器、27…誘導加熱コイル、30…加熱体、31…ホルダ、32…加熱棒、32b…断熱部、32Ab…小径部、32d…発熱部、32e…非発熱部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の水を貯えて蒸気を発生させる蒸気発生容器と、
前記蒸気発生容器の外周に巻回された誘導加熱コイルと、
前記蒸気発生容器内の上部に支持されたホルダと、このホルダに上端部が固定されて前記蒸気発生容器内に吊設された加熱棒とを有した加熱体とを備え、
前記加熱棒は前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給したときに発熱する部分を発熱部とし、この発熱部より上側で発熱しない部分を非発熱部とし、この非発熱部の上端部を前記ホルダに固定させた蒸気発生装置において、
前記加熱棒の非発熱部には前記発熱部の熱が前記ホルダに伝わるのを抑制して前記加熱棒の脱落を防ぐ脱落防止手段を備えたことを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気発生装置において、
前記脱落防止手段として前記加熱棒の非発熱部には前記発熱部の熱を前記ホルダに伝達するのを妨げる断熱部を設けたことを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の蒸気発生装置において、
前記加熱棒は磁性体部材よりなり、前記断熱部には前記加熱棒のキューリー温度より高い融点をもつ材料を用いたことを特徴とする。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の蒸気発生装置において、
前記脱落防止手段として前記加熱棒の非発熱部の少なくとも一部には他の部分より径の小さい小径部を設けたことを特徴とする蒸気発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−237475(P2012−237475A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105484(P2011−105484)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】