説明

蒸発燃料処理装置

【課題】燃料タンクで生じた蒸発燃料を処理する蒸発燃料処理装置であって、エンジンの負圧を利用することなく、キャニスタのパージを行うと共に、タンクの圧抜きを行う。
【解決手段】燃料タンク10の内圧を測定する圧力センサ17と、燃料タンク10と内燃機関の吸気管46とを連通する通路上に開閉弁44が設置されており、燃料タンク10の内圧が所定値以上である場合には燃料タンク10と吸気管46とが連通するよう開閉弁44が開弁される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両の燃料タンク内で生じた蒸発燃料を処理する蒸発燃料処理装置であって、内燃機関の負圧を利用することなく蒸発燃料を適切に処理する蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガソリン等を燃料とする車両には、燃料タンクの内圧上昇に基づく破損を回避しながら、蒸発燃料が大気中へ放散されることを防止する蒸発燃料処理装置が搭載されている。一般的な蒸発燃料処理装置は燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタを有しており、内燃機関の運転中に生じる負圧を利用して前記キャニスタをパージして、それにより脱離した蒸発燃料を内燃機関で燃焼するよう構成されている。
【0003】
しかし、内燃機関とモータとを併用するハイブリッド車両の場合は、モータでの走行中には内燃機関が停止しているため、内燃機関内に負圧が生じない。そのため、モータでの走行中にはキャニスタをパージすることができず、適切に蒸発燃料を処理することが困難である。この問題を解決するために、例えば下記特許文献1に記載された内燃機関停止中にも蒸発燃料を適切に処理することができる蒸発燃料処理装置がある。特許文献1の蒸発燃料処理装置では、燃料タンクで生じた蒸発燃料はキャニスタに供給され、内燃機関が稼働している場合には、従来どおり内燃機関で生じる負圧を利用してキャニスタをパージし、それによって脱離した蒸発燃料を内燃機関で燃焼する。一方、内燃機関が停止しておりモータが稼働している場合には、当該蒸発燃料処理装置はモータの動力で内燃機関を動かして内燃機関の排気通路上に設置された触媒に至る空気の流れを作ることで、キャニスタに吸着された蒸発燃料を触媒に供給して燃焼させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−24612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の蒸発燃料処理装置では、内燃機関が稼働している場合には、従来どおり内燃機関で生じる負圧を利用してキャニスタをパージしている。そのため、将来内燃機関のポンピングロスが低減されて、内燃機関で生じる負圧が小さくなる又はほぼ無くなった場合には、キャニスタのパージが十分に行えなくなる恐れがある。キャニスタのパージが十分に行われないと、キャニスタに新たに蒸発燃料が流入してもその全てを吸着できないという問題が生じる恐れがある。
【0006】
また、特許文献1の蒸発燃料処理装置は、燃料タンク内で生じた蒸発燃料を全てキャニスタに供給しており、パージによってキャニスタから脱離されなかった蒸発燃料を触媒によって燃焼している。そのため、キャニスタをパージすることによって内燃機関に回収される蒸発燃料の量が低下すると、触媒によって燃焼される蒸発燃料の量、すなわち、内燃機関の運転に用いられない燃料の量が増加し、結果的に燃費が悪化してしまう。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものである。本発明が解決しようとする課題は、内燃機関により生じる負圧を利用することなく適切にキャニスタをパージすると共に、内燃機関で燃焼される蒸発燃料の割合を増加させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る蒸発燃料処理装置は次の手段を採用する。
第1の発明に係る蒸発燃料処理装置は、内燃機関に供給される燃料を貯蔵するための燃料タンクと、燃料タンク内の蒸発燃料を吸着可能なキャニスタとを備え、少なくとも燃料タンクへの給油時には燃料タンク内で発生した蒸発燃料をキャニスタに供給する蒸発燃料処理装置であって、キャニスタに大気を導入することによって蒸発燃料をキャニスタから脱離するポンプと、キャニスタから脱離した蒸発燃料を燃焼可能な触媒と、燃料タンクの内圧を測定できる圧力センサと、燃料タンクと内燃機関の吸気管とを連通する通路として設けられており該通路に設置される開閉弁により該通路が連通・遮断されるタンク燃料パージ通路と、を備え、内燃機関の運転時における燃料タンク内圧を圧力センサで検知して、燃料タンク内圧が所定値以上である場合には開閉弁を開弁状態とし、燃料タンク内圧が所定値以下である場合には開閉弁を閉弁状態とする制御を行う構成であることを特徴とする。
【0009】
この蒸発燃料処理装置によれば、給油時にキャニスタに吸着された蒸発燃料はポンプが大気をキャニスタに導入することによって脱離されて触媒で燃焼される。そのため、稼働により生じる負圧が小さい又はほとんど負圧を生じない内燃機関を搭載した車両においても、確実にキャニスタから蒸発燃料を脱離することができるため、蒸発燃料がキャニスタに吸着することなく大気へ放出されることを防止できる。また、内燃機関の運転時に燃料タンク内圧が所定値以上である場合には、開閉弁が開かれ、燃料タンクと内燃機関の吸気管が連通する。このとき、タンク内圧は正圧になっているため、蒸発燃料が燃料タンクから内燃機関の吸気管に流入し、タンクの破損を防止することができる。また、給油時以外に燃料タンク内で生じた蒸発燃料が内燃機関に供給されて燃焼されるため、全ての蒸発燃料がキャニスタに供給される場合と比べて燃費の向上を図ることができる。
【0010】
第2の発明に係る蒸発燃料処理装置は、第1の発明に係る蒸発燃料処理装置であって、燃料タンクとキャニスタとを連通するタンク通路を連通・遮断するタンク通路弁を備え、タンク通路弁を給油時は開弁状態とし、給油時以外は閉弁状態とする制御を行う構成であることを特徴とする。
【0011】
この蒸発燃料処理装置によれば、タンク通路弁を制御することによって給油時に限って燃料タンクとキャニスタとを連通させることができる。これによって、燃料タンクとキャニスタとの連通・遮断の切り替えを適切に行うことができると共に、給油時以外には容易に燃料タンクを密閉状態に保つことができる。
【0012】
第3の発明に係る蒸発燃料処理装置は、第1又は第2の発明に係る蒸発燃料処理装置であって、ポンプで導入する大気を、キャニスタを介することなく触媒手前にバイパス可能な分流器を備え、分流器は、大気を任意の流量に分流可能であり、触媒に供給される蒸発燃料の濃度の調整を行う構成であることを特徴とする。
【0013】
この蒸発燃料処理装置によれば、キャニスタに導入される大気の量を調整することによってキャニスタから脱離される蒸発燃料の量を調整することができるため、触媒に供給される蒸発燃料の濃度を調整することができる。これによって、燃焼に最適な濃度で蒸発燃料を触媒に供給することが可能になり、結果的に燃焼後に排出される排気ガスの濃度を低減し、大気汚染を回避することができる。
【0014】
第4の発明に係る蒸発燃料処理装置は、第1から第3の発明のいずれかに係る蒸発燃料処理装置であって、キャニスタと触媒とを連通する触媒通路を連通・遮断する触媒通路弁と、触媒を加熱するヒータと、を備え、触媒で蒸発燃料を燃焼させる場合には、ヒータで触媒を活性化温度まで昇温後、触媒通路弁を開弁すると共にポンプを駆動する構成であることを特徴とする。
【0015】
この蒸発燃料処理装置によれば、触媒が活性化温度まで加熱された後に、触媒通路弁が開弁されてポンプが駆動されるため、触媒が活性化温度に到達する前に蒸発燃料が触媒に供給されることを防止できる。これにより、蒸発燃料が燃焼されることなく大気に放出されることを防止できるため、大気汚染を回避することができる。
【0016】
第5の発明に係る蒸発燃料処理装置は、第1から第4の発明のいずれかに係る蒸発燃料処理装置であって、内燃機関の運転時において、燃料タンク内圧が所定値以上であり且つA/Fフィードバック制御が可能である場合に、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸気管に供給する構成であることを特徴とする。
【0017】
この蒸発燃料処理装置によれば、蒸発燃料が吸気管に供給される際にはA/Fフィードバック制御が可能であるため、吸気管に供給された蒸発燃料の量に基づいてエンジンへの燃料の供給量がフィードバック制御を行うことができる。これによって、エンジンにおけるA/F比が変動することに起因する燃費の低下及び排気ガス濃度の悪化を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、内燃機関で生じる負圧を利用することなく、キャニスタのパージと燃料タンク内で生じた蒸発燃料の内燃機関への供給が可能である。そのため、生じる負圧が小さな内燃機関を搭載した車両においても、適切に蒸発燃料を処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の蒸発燃料処理装置の模式図である。
【図2】実施例1における弁、ポンプ及びヒータの作動タイミングとこれに伴う触媒温度及びタンク内圧の変化を示すグラフである。
【図3】実施例2の蒸発燃料処理装置の模式図である。
【図4】触媒へ供給される蒸発燃料の濃度と排気ガスの濃度との関係を表すグラフである。
【図5】触媒へ供給される蒸発燃料の濃度と触媒の温度との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の代表的な実施形態について図面を参照しながら説明するが、これに限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。特に、本発明の蒸発燃料処理装置に必須の構成要素である燃料タンク、キャニスタ、ポンプ、触媒、及び圧力センサを備える基本的構成を有する限り、その他種々の構成要素を付加できる。蒸発燃料処理装置は、揮発性の高い燃料(例えばガソリンなど)を燃料とする、自動車などの車輌へ好適に適用できる。
【0021】
(実施例1)
図1は実施例1の蒸発燃料処理装置の模式図である。当該蒸発燃料処理装置は、燃料Fを貯留する燃料タンク10、燃料タンク10内で発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタ12、キャニスタ12に大気(空気)を導入する電動ポンプ14、蒸発燃料を燃焼する触媒モジュール16、及び燃料タンク10内の内圧を測定する圧力センサ17を有する。
【0022】
燃料タンク10は密閉タンクである。燃料タンク10には、燃料タンク10の内圧を検知する圧力センサ17、燃料タンク10の給油口を開閉するためのキャップ18、及びキャップ18の開閉状態を判定するキャップセンサ19が設けられている。圧力センサ17及びキャップセンサ19からの検知信号は、エンジン・コントロール・ユニット(ECU)20へ入力される。燃料タンク10は、タンク通路22によってキャニスタ12と連通している。タンク通路22上にはタンク通路弁24が設置されており、当該タンク通路弁24を開閉することによって、タンク通路22の連通状態と遮断状態とを切り替えることができる。
【0023】
キャニスタ12の内部には吸着材Cが充填されている。吸着材Cとしては、空気は通すが蒸発燃料を吸着・脱離可能な多孔質体を使用できる。本実施例では活性炭を使用している。キャニスタ12には、その先端が大気に開放された大気通路26が連結されている。大気通路26上には、キャニスタ12に大気を導入するための電動ポンプ14とエアフィルタ28が設置されている。電動ポンプ14はECU20によって制御されており、大気通路26の先端から取り込まれてエアフィルタ28を通過した大気をキャニスタ12へと供給する。
【0024】
また、キャニスタ12は、触媒通路30を介して触媒モジュール16に連結されている。触媒通路30上には触媒通路弁32が設置されており、当該触媒通路弁32を開閉することによって、触媒通路30の連通状態と遮断状態とを切り替えることができる。
【0025】
触媒モジュール16は、蒸発燃料を燃焼させるための触媒34を内部に備える。触媒34として、蒸発燃料のHCと空気中のO2とを反応させてHCを水と二酸化炭素に分解する触媒を使用することができる。本実施例では、触媒34に白金触媒を用いている。触媒モジュール16は、触媒34の温度を測定するための温度センサ36と、触媒34を加熱するためのヒータ38とを備えている。温度センサ36は測定した触媒34の温度をECU20へ入力し、ECU20は温度センサ36によって測定された温度に基づいてヒータ38を制御する。触媒34はその触媒に固有の活性化温度以上で活性化するため、蒸発燃料を燃焼させる前に、触媒34は活性化温度(活性化判定値)までヒータ38によって加熱される。触媒34による蒸発燃料の燃焼反応は発熱反応であるため、蒸発燃料の燃焼が開始されると、ヒータ38で加熱しなくても触媒34は高温に保たれる。そのため、燃焼開始後はヒータ38を停止しても良い。触媒モジュール16は、先端が大気に開放された排気管40に連結されており、触媒モジュール16内で生じた二酸化炭素などを大気中へ放出することができる。
【0026】
燃料タンク10は、タンク燃料パージ通路42を介してエンジン(図示しない)と連通されている。タンク燃料パージ通路42上にはタンク燃料パージ通路弁44が設置されており、当該タンク燃料パージ通路弁44を開閉することによって、タンク燃料パージ通路42の連通状態と遮断状態とを切り替えることができる。タンク燃料パージ通路42の一端は、タンク通路弁24と燃料タンク10との間においてタンク通路22に連結されており、タンク燃料パージ通路42の他端は吸気管46に連結されている。吸気管46は、エンジンの稼動中に当該エンジンに大気(空気)を吸入する管である。吸気管46は、アクセルペダル(図示しない)の踏み込み量に応じて吸入される空気量を制御するスロットルバルブ48と、エアフィルタ50とを備える。なお、タンク燃料パージ通路弁44は、本明細書における開閉弁に相当する。
【0027】
また、タンク燃料パージ通路42は、該タンク燃料パージ通路42を介してエンジンに供給される蒸発燃料の量を測定するためのA/Fセンサ52を備える。A/Fセンサ52は測定した蒸発燃料の供給量をECU20に入力し、ECU20がインジェクタ(図示しない)からエンジンに噴射される燃料を当該供給量と同量だけ減量することによって、A/F比のフィードバック制御が行われる。
【0028】
タンク通路弁24、触媒通路弁32、及びタンク燃料パージ通路弁44は、ECU20によって開閉タイミングが制御される電磁弁である。ECU20は、中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)などを有する。ROMには所定の制御プログラムが予め記憶されており、CPUが、当該制御プログラムに基づいて、蒸発燃料処理装置の各構成要素を所定のタイミングで制御操作する。
【0029】
次に、蒸発燃料処理装置による蒸発燃料の処理機構について図2を参照しながら説明する。駐車中(キーオフ時)は、タンク通路弁24、触媒通路弁32、及びタンク燃料パージ通路弁44は、それぞれ閉じられている。給油時にキャップ18が燃料タンク10から外されると、キャップセンサ19からの信号がECU20に入力され、タンク通路弁24がECU20によって開かれる。給油に伴って燃料タンク10の内圧が上昇すると、燃料タンク10内の蒸発燃料含有ガスがタンク通路22を介してキャニスタ12内に流入する。すると、キャニスタ12内の吸着材Cによって蒸発燃料が選択的に捕捉され、主に空気からなる残りのガスは大気通路26を通って外部に放出される。これにより、大気汚染を回避しながら燃料タンク10の内圧を低減することができ、燃料タンク10の破損が防止される。給油後にキャップ18が燃料タンク10に装着されると、キャップセンサ19から信号がECU20に入力され、当該信号に基づきECU20がタンク通路弁24を閉じる。これにより、燃料タンク10は再度密閉される。
【0030】
キーオン操作がなされると(図2中、タイミングP1)、エンジンの稼動状態に関わらず、ヒータ38が触媒34を加熱し、温度センサ36が当該触媒34の温度を測定する。図2に示されるように、触媒34の温度が活性判定値に到達すると(タイミングP2)、ECU20はヒータ38を停止すると共に、触媒通路弁32を開き、電動ポンプ14を稼働させる。電動ポンプ14がエアフィルタ28を通過した空気をキャニスタ12に導入すると、キャニスタ12内の吸着材Cから蒸発燃料が脱離する。そして、脱離した蒸発燃料は、キャニスタ12に導入された空気と共に触媒通路30を介して触媒モジュール16へ流入する。蒸発燃料含有ガスは、触媒モジュール16内で触媒34によって燃焼されて排気管40から大気中へと放出される。これによって、キャニスタ12に捕捉された蒸発燃料をエンジンの負圧を利用することなく脱離させて触媒で燃焼させることができる。キーオフ操作がなされると(タイミングP7)、ECU20が電動ポンプ14を停止させると共に、触媒通路弁32を閉弁する。
【0031】
エンジンの稼動中の、A/Fフィードバック制御が可能な状態において、圧力センサ17により測定された燃料タンク10の内圧が所定の正圧(開弁判定値)以上になると(タイミングP3及びP5)、ECU20はタンク燃料パージ通路弁44を開放する。燃料タンク10内は正圧になっているため、タンク燃料パージ通路弁44が開放されると、燃料タンク10内の蒸発燃料はタンク燃料パージ通路42を通って吸気管46へと流入する。そして、吸気管46に流入した蒸発燃料はエンジンに供給されて燃焼される。ここで、A/Fセンサ52がタンク燃料パージ通路42を介してエンジンに供給される蒸発燃料の量を測定しており、ECU20に測定量が入力される。ECU20が、当該測定量に基づいてインジェクタからエンジン内に噴射される燃料の量をフィードバック制御するため、エンジンにおけるA/F比が一定に保たれる。このため、燃焼時のA/F比が変動することに起因する排気中の大気汚染物質の増加を防止することができると共に、燃料が過剰に消費されることが防止される。燃料タンク10内の蒸発燃料がタンク燃料パージ通路42に流入して燃料タンク10の内圧が所定値(例えば大気圧)まで低下すると(タイミングP4及びP6)、ECU20はタンク燃料パージ通路弁44を閉じる。このようにして、燃料タンク10の内圧が低減され、燃料タンク10の破損が防止される。なお、開弁判定値は燃料タンク10の耐圧強度未満であり、正圧であれば良いが、エンジンが停止している場合、給油時を除いてタンクの圧抜きがなされないことを考慮すると、燃料タンク10の耐圧強度に対して十分な余裕のある値に設定することが好ましい。
【0032】
(実施例2)
実施例1では電動ポンプ14により供給される空気は全てキャニスタ12に導入されたが、実施例2の蒸発燃料処理装置は、電動ポンプ14から供給される空気の一部をキャニスタ12を介さずに触媒モジュール16に供給する分流器60を備える。図3に示すように、分流器60は大気通路26上に電動ポンプ14とキャニスタ12との間に設置されている。分流器60は分岐通路62に連結されており、分岐通路62の他端は、キャニスタ12と触媒通路弁32との間で触媒通路30に連結されている。したがって、分流器60は電動ポンプ14から供給された空気を任意の割合でキャニスタ12と触媒通路30とに分流することができる。また、他の構成要素と同様に、ECU20が分流器60を制御している。
【0033】
触媒によって蒸発燃料を燃焼する場合、図4に示されるように触媒へ供給される蒸発燃料の濃度、すなわち空気と燃料の比率(A/F比)により、燃焼後に生じる排気ガスの濃度が変化する。具体的には、触媒へ供給される蒸発燃料の濃度を上昇させると、最適濃度(D1)に到達するまでは燃焼により生じる排気ガスの濃度が低下するものの、最適濃度(D1)を超えると、排気ガスの濃度は上昇してしまう。そのため、排気ガスの排出量を抑制するためには、最適濃度(D1)になるよう蒸発燃料と空気の混合比を調整する必要がある。ここで、触媒における蒸発燃料の燃焼は発熱反応であり、図5に示されるように、触媒へ供給される蒸発燃料の濃度によって燃焼中の触媒の温度は変化する。すなわち、触媒34に最適濃度(D1)の蒸発燃料が供給されているときには、触媒34の温度は最適温度(T1)に維持される。そのため、触媒34の温度が最適温度(T1)になるように蒸発燃料の供給量を調節することによって、最適濃度(D1)の蒸発燃料を供給することが可能であり、結果的に排気ガスの排出量を最小にすることができる。
【0034】
実施例2においては、キーオン操作をすると、ヒータ38が触媒34を加熱し、温度センサ36が触媒34の温度を測定する。触媒34の温度が活性判定値まで上昇すると、ECU20はヒータ38への通電を遮断し、触媒34の加熱を停止させる。そして、ECU20は、電動ポンプ14を稼働すると共に、触媒通路弁32を開弁する。電動ポンプ14がエアフィルタ28を通過した大気(空気)を分流器60に供給すると、分流器60は空気の一部をキャニスタ12に導入し、残りの空気は分岐通路62を介して触媒通路30へと導入される。キャニスタ12に導入された空気は、吸着材Cから脱離した蒸発燃料と共に触媒通路30へと流入し、分岐通路62を介して触媒通路30へと供給された残りの空気と共に触媒モジュール16へと供給されて燃焼される。このときの触媒34の温度は温度センサ36によって測定されており、ECU20へ入力される。ここで、測定された触媒温度が最適温度(T1)より低いと、ECU20は、キャニスタ12へ導入される空気を増やし、分岐通路62を流れる空気を減らすように分流器60を制御する。キャニスタ12に導入される空気が増えることによって、蒸発燃料の吸着材Cからの脱離が促進され、結果的に触媒モジュール16に供給される蒸発燃料の濃度が上昇する。一方、測定された温度が最適温度(T1)より高いと、ECU20は、キャニスタ12へ導入される空気を減らし、分岐通路62を流れる空気を増やすように分流器60を制御する。キャニスタ12に導入される空気が減ることによって、蒸発燃料の吸着材Cからの脱離が低減され、結果的に触媒モジュール16に供給される蒸発燃料の濃度が低下する。このように、触媒温度に基づきキャニスタ12をバイパスする空気の量を調節することによって、触媒モジュール16へ供給される蒸発燃料の濃度を最適濃度(D1)へと調整することができ、その結果、排気ガス濃度を低減することができる。なお、その他の構成は実施例1と同じなので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0035】
(変形例)
上記実施例1、2において、給油の開始及び終了の判定はキャップセンサ19からの信号に基づいて行われているが、他の手段を採用することもできる。例えば、給油の開始の判定は給油リッドオープンスイッチの操作により行い、給油の終了は当該操作から所定時間の経過により判定しても良いし、又は一定の車速への到達により判定しても良い。また、上記実施例1、2においては給油時のみに燃料タンク10内の蒸発燃料がキャニスタ12に流入する構成であるため、長期間エンジンが稼動されないと、燃料タンクの内圧が非常に高くなり、結果的に燃料タンクが破損する恐れがある。そのため、エンジンの停止時に燃料タンク10の内圧が所定値以上である場合にも、燃料タンク10内の蒸発燃料がキャニスタ12に流入する構成としても良い。この場合、例えばタンク通路22上にタンク通路弁24をバイパスする通路を設け、該通路上に所定圧力で開弁する機械式の調圧弁を設けることによって、燃料タンク10の圧抜きを行うことができる。
【0036】
また、上記実施例1、2においては、キーオン時にヒータ38が触媒34を加熱する際に、温度センサ36を用いて触媒温度が活性判定値に到達したことを判定しているが、ヒータ38による加熱を所定時間行うように設定しても良い。これにより、実施例1においては温度センサ36を省略することが可能である。
【0037】
上記実施例2においては、温度センサ36によって測定される触媒34の温度に基づいて蒸発燃料の濃度が調節されているが、触媒モジュール16に供給される蒸発燃料の濃度を直接測定しても良い。この場合、例えば温度センサ36の代わりにA/Fセンサを触媒モジュール16の入口付近に設置することにより、蒸発燃料の濃度を測定することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 燃料タンク
12 キャニスタ
14 電動ポンプ
16 触媒モジュール
17 圧力センサ
18 キャップ
19 キャップセンサ
20 ECU
22 タンク通路
24 タンク通路弁
26 大気通路
28 エアフィルタ
30 触媒通路
32 触媒通路弁
34 触媒
36 温度センサ
38 ヒータ
40 排気管
42 タンク燃料パージ通路
44 タンク燃料パージ通路弁(開閉弁)
46 吸気管
48 スロットルバルブ
50 エアフィルタ
52 A/Fセンサ
60 分流器
62 分岐通路
C 吸着材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に供給される燃料を貯蔵するための燃料タンクと、該燃料タンク内の蒸発燃料を吸着可能なキャニスタとを備え、少なくとも前記燃料タンクへの給油時には前記燃料タンク内で発生した蒸発燃料を前記キャニスタに供給する蒸発燃料処理装置であって、
前記キャニスタに大気を導入することによって蒸発燃料を前記キャニスタから脱離するポンプと、
前記キャニスタから脱離した蒸発燃料を燃焼可能な触媒と、
前記燃料タンクの内圧を測定できる圧力センサと、
前記燃料タンクと前記内燃機関の吸気管とを連通する通路として設けられ、該通路に設置される開閉弁により該通路が連通遮断されるタンク燃料パージ通路と、を備え、
前記内燃機関の運転時における燃料タンク内圧を前記圧力センサで検知して、燃料タンク内圧が所定値以上である場合には前記開閉弁を開弁状態とし、燃料タンク内圧が所定値以下である場合には前記開閉弁を閉弁状態とする制御を行うことを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸発燃料処理装置であって、
前記燃料タンクと前記キャニスタとを連通するタンク通路を連通・遮断するタンク通路弁を備え、
前記タンク通路弁を給油時は開弁状態とし、給油時以外は閉弁状態とする制御を行うことを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蒸発燃料処理装置であって、
前記ポンプで導入する大気を、前記キャニスタを介することなく前記触媒手前にバイパス可能な分流器を備え、
前記分流器は、大気を任意の流量に分流可能であり、前記触媒に供給される蒸発燃料の濃度の調整を行うことを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の蒸発燃料処理装置であって、
前記キャニスタと前記触媒とを連通する触媒通路を連通・遮断する触媒通路弁と、
前記触媒を加熱するヒータと、
を備え、前記触媒で蒸発燃料を燃焼させる場合には、前記ヒータで前記触媒を活性化温度まで昇温後、前記触媒通路弁を開弁するとともに前記ポンプを駆動することを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の蒸発燃料処理装置であって、
内燃機関の運転時において、燃料タンク内圧が所定値以上であり且つA/Fフィードバック制御が可能である場合に、前記燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸気管に供給することを特徴とする蒸発燃料処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−180824(P2012−180824A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46115(P2011−46115)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】