説明

蒸着冶具、車両用灯具の製造方法および車両用灯具

【課題】デザインの自由度が向上でき、歩留まりが向上し、かつ、サイドマーカーの設置有無による作り分けを低コストで行うことができる蒸着冶具、車両用灯具の製造方法および車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具のハウジングにおける開口部が閉塞部材により閉塞された状態で、ハウジングの表面に被膜を真空蒸着する際に、ハウジングを支持する蒸着冶具において、ハウジングの表面を露出しつつ、ハウジングを取付け可能に構成されたマスク本体41と、ハウジングの裏面側において、マスク本体を取付け可能に構成された取付け板47と、を備え、マスク本体を取付け板に取り付けた際に、マスク本体と取付け板との間に隙間dが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着冶具、車両用灯具の製造方法および車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米国では車両の後部側方を照射するサイドマーカーを設置することが法制化されている。以前は、このサイドマーカーをリヤフェンダー後方のバンパー部材などに設置していたが、近年では、生産効率の観点からテールランプとサイドマーカーとを一体化したリヤコンビネーションランプを採用することが主流となっている(例えば、特許文献1参照)。一方、サイドマーカーの設置が法制化されていない日本や欧州用の車両では、生産効率を考慮して、基本的には米国用のリヤコンビネーションランプのハウジングを使用し、サイドマーカー用の光源部(開口部)を塞いだハウジングを用いてリヤコンビネーションランプを製造している。
【0003】
サイドマーカー用の光源部を塞ぐ手法としては、該光源部を塞ぎ、かつ、周囲のハウジング表面(仕上面)と略面一になるように構成されたプレート部材をハウジングに装着する。その状態でハウジングを蒸着チャンバ内に導入し、蒸着チャンバ内を真空引きして、ハウジングおよびプレート部材の表面に例えばアルミ材料を真空蒸着する手法が知られている。このとき、蒸着の材料費や蒸着時間などの生産効率を考慮すると、ハウジングおよびプレート部材の表面のみに被膜を形成させることが望ましい。そのため、ハウジングの蒸着領域以外をマスキングするためのマスク冶具をハウジングに装着し、ハウジング周縁部および裏面を露出しない状態(ハウジングの裏面を密封させた状態)で真空蒸着を行っている。
【特許文献1】特開2005−44657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サイドマーカー用の光源部にプレート部材を装着することにより、蒸着チャンバ内を真空引きする際に、サイドマーカー用の光源部内(密封空間)の空気が抜け難くなり、アルミ材料を蒸着する際に、サイドマーカー用の光源部内の圧力が蒸着チャンバ内の圧力より高くなってしまうことがある。すると、アルミ材料を蒸着している最中に、ハウジングとプレート部材との隙間から微量の空気が漏れるため、ハウジングとプレート部材との境界部にアルミ材料が蒸着し難くなるという問題があった。結果として、歩留まりが低下するという問題があった。
【0005】
また、特許文献1の車両用灯具は、テールランプおよびサイドマーカーのバルブ(光源)を共用化し、かつ、サイドマーカーを設ける場合と設けない場合とのハウジング成形用の金型を共用可能にしたものであるが、構造上、例えば、テールランプとサイドマーカーとの間にウインカーを設けることができず、デザイン上の制約があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、デザインの自由度が向上でき、歩留まりが向上し、かつ、サイドマーカーの設置有無による作り分けを低コストで行うことができる蒸着冶具、車両用灯具の製造方法および車両用灯具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車両用灯具(例えば、実施形態におけるリヤコンビネーションランプ10)のハウジング(例えば、実施形態におけるハウジング15)における開口部(例えば、実施形態における外側開口部33,内側開口部24など)が閉塞部材(例えば、実施形態におけるプレート部材35,蓋部材56)により閉塞された状態で、前記ハウジングの表面(例えば、実施形態における表面16)に被膜を真空蒸着する際に、前記ハウジングを支持する蒸着冶具(例えば、実施形態におけるマスク冶具40)において、前記ハウジングの表面を露出しつつ、前記ハウジングを取付け可能に構成されたマスク本体(例えば、実施形態におけるマスク本体41)と、前記ハウジングの裏面(例えば、実施形態における裏面18)側において、前記マスク本体を取付け可能に構成された取付け板(例えば、実施形態における取付け板47)と、を備え、前記マスク本体を前記取付け板に取り付けた際に、前記マスク本体と前記取付け板との間に隙間(例えば、実施形態における隙間d)が形成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載した発明は、車両に配置され、該車両の前方または後方を照射する第一光源部(例えば、実施形態におけるテールランプ部21)および前記車両の側方を照射する第二光源部(例えば、実施形態におけるサイドマーカー部31)が少なくとも形成されたハウジングを備え、前記第一光源部には、光源(例えば、実施形態におけるテールランプ用バルブ23)からの光を前記車両の前方または後方に照射する第一外側開口部(例えば、実施形態における外側開口部27)と、前記第一光源部の光源が配される第一内側開口部(例えば、実施形態における内側開口部24)とが形成され、前記第二光源部には、光源からの光を前記車両の側方に照射する第二外側開口部(例えば、実施形態における外側開口部33)と、前記第二光源部の光源が配される第二内側開口部(例えば、実施形態における内側開口部32)とが形成され、前記ハウジングの表面に被膜(例えば、実施形態におけるアルミ被膜37)を真空蒸着する工程の前に、前記第一光源部の前記第一内側開口部に蓋部材(例えば、実施形態における蓋部材56)を配置して、前記第一内側開口部を閉塞する工程と、前記第二光源部の前記第二外側開口部にプレート部材(例えば、実施形態におけるプレート部材35)を配置して、前記第二外側開口部を閉塞する工程と、を有する車両用灯具の製造方法において、前記ハウジングの表面を露出しつつ、前記ハウジングにマスク本体を取り付ける工程と、前記ハウジングの裏面側において、前記マスク本体を取付け板に取り付ける工程と、を有し、前記マスク本体を前記取付け板に取り付ける工程では、前記マスク本体と前記取付け板との間に隙間を形成した状態で取り付けることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載した発明は、請求項2の製造方法により製造される車両用灯具において、前記プレート部材の表面(例えば、実施形態における表面36)の周縁部(例えば、実施形態における周縁部39)が面取りされていることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載した発明は、前記ハウジングの前記第一光源部と前記第二光源部との間に、前記車両の進行方向を表示する第三光源部(例えば、実施形態におけるウインカー部22)が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した発明によれば、蒸着冶具を用いてハウジング表面に被膜を形成する際に、マスク本体と取付け板との間に隙間を形成することで、マスク本体の内部空間を確実に真空引きすることが可能となる。
一般的に車両用灯具のハウジングにおいて、光源を取り付ける箇所には開口部が形成されており、真空蒸着を行う際にはその開口部に閉塞部材(蓋部材、プレート部材)を取り付ける。つまり、マスク本体にハウジングを取り付け、そのマスク本体を取付け板に隙間なく密着させると、マスク本体の内部空間が密閉空間となり、真空引きしても内部空間の空気が抜け難い。すると、被膜材料をハウジングの表面に蒸着させる際に、内部空間に残留している空気が、ハウジングの開口部と閉塞部材との隙間から漏洩し、開口部と閉塞部材との境界部において所望の被膜が蒸着しないことがあった。
しかしながら、本発明によればマスク本体の内部空間を確実に真空引きすることができるため、ハウジング表面に所望の被膜を形成することができ、歩留まりを向上することができる効果がある。
【0012】
請求項2に記載した発明によれば、ハウジングには第一光源部および第二光源部が設置可能とされているが、第二光源部を必要としない場合には、プレート部材を取り付けることで、ハウジング表面に所望の被膜を形成することができ、歩留まりを向上することができる効果がある。
つまり、例えばサイドマーカー(第二光源部)を設置可能なハウジングにおいて、サイドマーカーを設置しないときには、プレート部材を取り付けた上で、ハウジングおよびプレート部材の表面に被膜を蒸着することによりサイドマーカーが設置されないハウジングを製造することができる。結果として、サイドマーカーの設置有無による作り分けを、プレート部材を設けるか否かですることができ、簡易な構成で、かつ、低コストで行うことができる効果がある。
【0013】
請求項3に記載した発明によれば、ハウジングとプレート部材との境界部分において、被膜材料が蒸着され易くなり、所望の被膜が形成されたハウジングを得ることができる効果がある。また、被膜材料を一度の蒸着工程で確実に付着させることができるため、歩留まりを向上することができる効果がある。
【0014】
請求項4に記載した発明によれば、ハウジングに複数の光源部が形成された車両用灯具を得ることができる。また、複数の光源部がそれぞれ独立して設けられているため、所望の方向を照射できる配置にさえすればよく、車両用灯具のデザインの自由度を向上することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。なお、本実施形態では、リヤコンビネーションランプを用いて説明する。
(リヤコンビネーションランプ)
図1はリヤコンビネーションランプの斜視図であり、図2は図1のA−A線に沿う断面図である。図1、図2に示すように、リヤコンビネーションランプ10は、車両の後方両隅分にそれぞれ設けられており、光源としてのバルブが複数収容されるハウジング15と、ハウジング15の表面16に取付けられるレンズ17と、を備えている。本実施形態のリヤコンビネーションランプ10は、車両の後方を照射するテールランプ部21および車両の右折または左折の進行方向を表示するウインカー部22を備えている。なお、図1のリヤコンビネーションランプ10は、車両の左後方に設けられるものである。
【0016】
図3はハウジングの斜視図である。図3に示すように、ハウジング15は、例えば樹脂材料により射出成形されたものであり、テールランプ部21のテールランプ用バルブ23(図2参照)を配置可能な内側開口部24およびウインカー部22のウインカー用バルブ25(図2参照)を配置可能な内側開口部26が形成されている。この内側開口部24および内側開口部26は、ハウジング15の最外面(表面)に対して凹状に窪んだ底面にそれぞれ形成されている。なお、図3のハウジング15は、車両の右後方に設けられるものである。
【0017】
内側開口部24に取り付けられたテールランプ用バルブ23から照射される光は、車両後方側に形成された外側開口部27を介して車両の後方に照射され、当該車両の後方に位置する別の車両の運転者や歩行者などが視認できるようになっている。同じく、内側開口部26に取り付けられたウインカー用バルブ25から照射される光は、車両後方側に形成された外側開口部28を介して車両の後方に照射され、当該車両の後方に位置する別の車両の運転者や歩行者などが車両の進行方向(右折または左折)を視認できるようになっている。なお、テールランプ用バルブ23は赤色に光り、ウインカー用バルブ25は橙色に光るようになっている。
【0018】
また、テールランプ部21とウインカー部22とは略水平方向に沿って並列するように配置されており、テールランプ部21が車両の水平方向内側に配置され、ウインカー部22が車両の水平方向外側に配置されている。また、ハウジング15には、ウインカー部22の車両の水平方向外側で、車両の側面に対応する位置に、サイドマーカー用バルブ(不図示)を設置可能な内側開口部32および外側開口部33が形成されている(図2参照)。つまり、このリヤコンビネーションランプ10のハウジング15には、テールランプ部21、ウインカー部22およびサイドマーカー部31が形成されている。
【0019】
ここで、サイドマーカーの設置を法制化している米国では、赤色に照射するサイドマーカー用バルブを内側開口部32に取り付け、外側開口部33を介して車両の側方に光を照射するように構成するが、日本や欧州などではサイドマーカーの設置が義務化されておらず、基本的にはサイドマーカーを設置しない。本実施形態では、サイドマーカーを設置しない場合について説明する。
【0020】
サイドマーカーを設置しない場合は、外側開口部33を覆うようにプレート部材35が取付けられ、周囲のハウジング15の表面16とプレート部材35の表面36とが面一になるように構成されている。なお、プレート部材35はハウジング15と同じ樹脂材料で形成されている。ハウジング15の表面16およびプレート部材35の表面36には、例えばアルミ被膜37が蒸着されている。このように構成することで、外見上はサイドマーカーを取り付けるための内側開口部32および外側開口部33がハウジング15に形成されていることは認識できない。つまり、プレート部材35を取り付けるか否かで、ハウジング15を作り分けすることなくサイドマーカーが取り付けられるリヤコンビネーションランプとサイドマーカーが取り付けられていないリヤコンビネーションランプとを作り分けることができる。
【0021】
(マスク冶具)
図4はマスク冶具の斜視図であり、図5はマスク冶具にハウジング15を取り付けたときの水平断面図である。図4、図5に示すように、マスク冶具40は、例えばステンレスなどの金属で形成されており、ハウジング15の表面16に例えばアルミ材料を真空蒸着させるときに使用する。マスク冶具40は、ハウジング15をセットするマスク本体41と、マスク本体41を取り付ける平板状の取付け板47と、を備えている。
【0022】
マスク本体41は、ハウジング15の表面16の周縁部19に当接し、表面16のそれ以外の部分が露出する開口部43が形成されている。開口部43にはフランジ部44が全周に亘って形成されており、このフランジ部44とハウジング15の周縁部19とが当接するように構成されている。また、ハウジング15をマスク本体41に取り付けたときに、ハウジング15の裏面18を取り囲むようにフランジ部44から立上るように壁部45が延設されている。そして、壁部45の頂部46の一部が取付け板47に当接されるようになっている。
【0023】
図6はマスク本体を取付け板に設置した状態の側面図である。図6に示すように、マスク本体41の上面42には、マスク本体41を後述する蒸着釜61に取り付けるための取付け部材48が設けられている。取付け部材48は、マスク本体41の上面42から後方(壁部45の頂部46)側に突出するフランジ部49が2箇所形成され、各フランジ部49に対して略鉛直上方に延設した第一本体片51,51と、第一本体片51,51の頂部同士を連接する連接片58と、連接片58に対して略直角(水平方向)後方側に延設した第二本体片52と、を備えている。そして、第二本体片52の端部にはフランジ部53が形成されており、フランジ部53において取付け部材48(マスク本体41)を蒸着釜61に着脱可能に構成されている。なお、フランジ部49および53には、それぞれ貫通孔が形成され、それぞれマスク本体41および蒸着釜61とボルトを用いて接合できるようになっている。
【0024】
取付け板47にマスク本体41を取り付けると、マスク本体41の下端(下面54)ではマスク本体41と取付け板47とが当接し、マスク本体41の上端(上面42)では取付け部材48のフランジ部49が取付け板47と当接するため、マスク本体41と取付け板47との間には隙間dが形成される。
【0025】
図7はマスク本体の背面図である。図7に示すように、マスク本体41の背面59には、マスク本体41の下面54と上面42との間を繋ぐように構成された板状の押え部材55が設けられている。押え部材55は、マスク本体41の下面54の端部とヒンジ57を介して連結されており、マスク本体41の上面42側で図示しない係止部で係止されるように構成されている。したがって、マスク本体41にハウジング15を取り付ける際には、押え部材55の上端側の係止部をマスク本体41から外し、ハウジング15をマスク本体41に取り付けた後に、再度押え部材55の上端側の係止部をマスク本体41に係止する。すると、押え部材55がハウジング15の裏面18側を押し付けるようになり、ハウジング15をマスク本体41に固定することができるようになっている。
【0026】
(リヤコンビネーションランプの製造方法)
次に、リヤコンビネーションランプ10の製造方法について説明する。なお、本実施形態で製造するのは、サイドマーカーが設置されないリヤコンビネーションランプ10である。
【0027】
まず、ハウジング15およびプレート部材35を射出形成などでそれぞれ製造する。このときプレート部材35の表面36の周縁部39は全周に亘って面取りされている(図2参照)。
【0028】
図8に示すように、プレート部材35をエアブローした後、ハウジング15の外側開口部33にプレート部材35を取り付ける。プレート部材35を取り付けた後、ハウジング15およびプレート部材35をエアブローする。
【0029】
図9に示すように、プレート部材35が取り付けられたハウジング15をマスク本体41にセットする。このとき、ハウジング15をマスク本体41の壁部45の頂部46(背面)側から挿入し、ハウジング15の周縁部19とマスク本体41のフランジ部44とを当接させる。すると、ハウジング15の表面16(周縁部19を除く)がマスク本体41の開口部43から露出してセットされる。そして、マスク本体41に取り付けられた押え部材55(図7参照)を係止させて、ハウジング15をマスク本体41に固定する。なお、このときテールランプ部21の内側開口部24およびウインカー部22の内側開口部26には、各開口部を閉塞する蓋部材56(図5参照)を取り付けておく。
【0030】
図10に示すように、ハウジング15が取付けられたマスク本体41を蒸着釜61にセットする。このとき、蒸着釜61の扉62に取付け板47が予め取付けられており、その取付け板47にマスク本体41を当接させるようにしてセットする。すると、マスク本体41の下面54側ではマスク本体41と取付け板47とが当接され、上面42側では取付け部材48によりマスク本体41と取付け板47との間に隙間dが形成される(図6参照)。そして、マスク本体41に取り付けられた取付け部材48のフランジ部53を扉62の接合箇所(不図示)に接合することでマスク本体41が蒸着釜61にセットされる。なお、蒸着釜61の扉62に複数のマスク冶具40を取り付ける(本実施形態では、2個)。
【0031】
図11に示すように、蒸着釜61の内部の所定位置に、アルミニウム片63をセットする。その後、扉62を閉めて、蒸着釜61の内部を真空状態にし、ハウジング15の表面16にアルミ被膜37を蒸着させる。このとき、取付け板47とマスク本体41との間には隙間dが形成されているため、蒸着釜61の内部を真空引きしたときに、ハウジング15の裏面18側に形成されている空間W1(図5参照)も確実に真空引きすることができる。つまり、プレート部材35の裏面側の空間W2(内側開口部32と外側開口部33との間の空間)も確実に真空状態にすることができる(図5参照)。結果として、アルミ材料をハウジング15の表面16に真空蒸着する際に、ハウジング15とプレート部材35との境界部65にもその周囲と略同一条件のアルミ材料が蒸着されることとなる(図5参照)。
【0032】
図12に示すように、ハウジング15へのアルミ蒸着が終了すると、蒸着釜61よりマスク本体41を取り出すとともに、マスク本体41よりハウジング15を取り外す。すると、ハウジング15の表面16(周縁部19を除く)の全面にアルミ被膜37が形成されたものが作られる。
【0033】
その後、蓋部材56を取り外し、テールランプ用バルブ23をテールランプ部21の内側開口部24に取り付け、ウインカー用バルブ25をウインカー部22の内側開口部26に取り付ける。
【0034】
そして、ハウジング15の表面16側にレンズ17を取り付け、ハウジング15の周縁部19においてハウジング15とレンズ17とを接合(接着)して、リヤコンビネーションランプ10の製造が完了する(図1参照)。
【0035】
本実施形態によれば、サイドマーカー部31を閉塞するプレート部材35が取り付けられたハウジング15の表面16にアルミ被膜37を形成する際に、マスク冶具40のマスク本体41と取付け板47との間に隙間dを形成したため、マスク本体41の内部空間W1およびプレート部材35の裏面側の空間W2を確実に真空引きすることが可能となる。したがって、ハウジング15とプレート部材35との境界部65においてアルミ被膜37を確実に蒸着させることができる。結果として、ハウジング15の表面16に所望のアルミ被膜37を形成することができ、歩留まりを向上することができる。
【0036】
また、ハウジング15にはテールランプ部21、ウインカー部22およびサイドマーカー部31を形成したが、サイドマーカー部31を使用しないときには、プレート部材35を取り付けた上で、ハウジング15の表面16およびプレート部材35の表面36にアルミ被膜37を蒸着することによりサイドマーカーが設置されないハウジング15を製造することができる。結果として、サイドマーカーの設置有無による作り分けを、プレート部材35を設けるか否かですることができ、簡易な構成で、かつ、低コストで行うことができる。
【0037】
また、プレート部材35の表面36の周縁部39を面取りしたため、ハウジング15とプレート部材35との境界部65において、アルミ被膜37が蒸着され易くなり、所望のアルミ被膜37が形成されたハウジング15を得ることができる。また、アルミ被膜37を一度の蒸着工程で確実に付着させることができるため、歩留まりを向上することができる。
【0038】
さらに、本実施形態のハウジング15にはテールランプ部21、ウインカー部22およびサイドマーカー部31を形成した。また、各部の光源をそれぞれ独立して配置できるようにしたため、各光源が所望の方向を照射できるように配置さえすればよく、リヤコンビネーションランプ10のデザインの自由度を向上することができる。
【0039】
尚、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な構造や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態において、テールランプおよびウインカーの機能を有するリヤコンビネーションランプを用いて説明したが、それ以外にもハザードランプや後進ランプ(バックランプ)の機能を有するものに採用してもよい。
また、本実施形態において、取付け部材を用いてマスク本体を蒸着釜の蓋に取り付ける場合の説明をしたが、マスク本体を取付け板に取り付ける構成にしてもよい。つまり、取付け板に取付け部材との係止部を設け、係止部に取付け部材を係止させることでマスク本体を取付け板に取り付けるように構成してもよい。
また、本実施形態において、マスク本体の裏面側に押え部材をヒンジ機構を介して取り付けた場合の説明をしたが、ヒンジを用いずにネジ接合で取り付ける構造を採用したり、バネを用いた付勢手段によりハウジングを押え付ける機構を採用してもよい。
さらに、本実施形態では、プレート部材の周縁部を面取りした場合の説明をしたが、ハウジングの外側開口部33の周縁部を面取りしてもよく、両方とも面取りした構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態におけるリヤコンビネーションランプの斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるハウジングの斜視図である。
【図4】本発明の実施形態におけるマスク冶具の斜視図である。
【図5】本発明の実施形態におけるマスク冶具の水平断面図(ハウジング取付時)である。
【図6】本発明の実施形態におけるマスク冶具の側面図である。
【図7】本発明の実施形態におけるマスク本体の背面図である。
【図8】本発明の実施形態におけるハウジングに被膜を真空蒸着する際の工程を示す説明図(1)である。
【図9】本発明の実施形態におけるハウジングに被膜を真空蒸着する際の工程を示す説明図(2)である。
【図10】本発明の実施形態におけるハウジングに被膜を真空蒸着する際の工程を示す説明図(3)である。
【図11】本発明の実施形態におけるハウジングに被膜を真空蒸着する際の工程を示す説明図(4)である。
【図12】本発明の実施形態におけるハウジングに被膜を真空蒸着する際の工程を示す説明図(5)である。
【符号の説明】
【0041】
10…リヤコンビネーションランプ(車両用灯具) 15…ハウジング 16…表面 18…裏面 19…周縁部 21…テールランプ部(第一光源部) 22…ウインカー部(第三光源部) 23…テールランプ用バルブ(光源) 24…内側開口部(開口部、第一内側開口部) 27…外側開口部(第一外側開口部) 31…サイドマーカー部(第二光源部) 32…内側開口部(第二内側開口部) 33…外側開口部(開口部、第二外側開口部) 35…プレート部材(閉塞部材) 36…表面 37…アルミ被膜(被膜) 40…マスク冶具(蒸着冶具) 41…マスク本体 47…取付け板 56…蓋部材(閉塞部材) d…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具のハウジングにおける開口部が閉塞部材により閉塞された状態で、前記ハウジングの表面に被膜を真空蒸着する際に、前記ハウジングを支持する蒸着冶具において、
前記ハウジングの表面を露出しつつ、前記ハウジングを取付け可能に構成されたマスク本体と、
前記ハウジングの裏面側において、前記マスク本体を取付け可能に構成された取付け板と、を備え、
前記マスク本体を前記取付け板に取り付けた際に、前記マスク本体と前記取付け板との間に隙間が形成されていることを特徴とする蒸着冶具。
【請求項2】
車両に配置され、該車両の前方または後方を照射する第一光源部および前記車両の側方を照射する第二光源部が少なくとも形成されたハウジングを備え、
前記第一光源部には、光源からの光を前記車両の前方または後方に照射する第一外側開口部と、前記第一光源部の光源が配される第一内側開口部とが形成され、
前記第二光源部には、光源からの光を前記車両の側方に照射する第二外側開口部と、前記第二光源部の光源が配される第二内側開口部とが形成され、
前記ハウジングの表面に被膜を真空蒸着する工程の前に、
前記第一光源部の前記第一内側開口部に蓋部材を配置して、前記第一内側開口部を閉塞する工程と、
前記第二光源部の前記第二外側開口部にプレート部材を配置して、前記第二外側開口部を閉塞する工程と、を有する車両用灯具の製造方法において、
前記ハウジングの表面を露出しつつ、前記ハウジングにマスク本体を取り付ける工程と、
前記ハウジングの裏面側において、前記マスク本体を取付け板に取り付ける工程と、を有し、
前記マスク本体を前記取付け板に取り付ける工程では、前記マスク本体と前記取付け板との間に隙間を形成した状態で取り付けることを特徴とする車両用灯具の製造方法。
【請求項3】
請求項2の製造方法により製造される車両用灯具において、
前記プレート部材の表面の周縁部が面取りされていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
前記ハウジングの前記第一光源部と前記第二光源部との間に、前記車両の進行方向を表示する第三光源部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−231021(P2009−231021A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74515(P2008−74515)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】