説明

蓄冷剤容器用の樹脂材料、及び蓄冷剤容器

【課題】熱伝導性、及び凍結・解凍の繰り返しに対する耐久性を向上させることのできる蓄冷剤容器用の樹脂材料を提供する。
【解決手段】蓄冷剤容器用の樹脂材料は、母材として(A)JISK6922−1に規定されるメルトフローレートが0.01〜10g/10minである高密度ポリエチレン樹脂を含有し、さらに(B)エチレン−α−オレフィン共重合体及び(C)球状フィラーを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に蓄冷剤を封入して使用される蓄冷剤容器用の樹脂材料、及び蓄冷剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に蓄冷剤が封入された蓄冷剤容器は、保冷材として、保冷を要する食材等の物品の輸送や保管するための保冷容器(例えば、クーラーボックス)内に収容して使用されている(例えば、特許文献1参照)。たとえば、予め冷凍庫等で冷却された状態の保冷材を保冷容器内に収納することにより、容器内の温度を低下させるとともに容器内を低温状態に維持することができる。
【0003】
また、蓄冷剤を封入した冷却トレイを冷蔵庫や冷凍庫の冷凍室に収納するとともに、その冷却トレイに食品を載置することにより、冷凍室内における食品冷凍の急速化を図る技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の冷却トレイは、内部に蓄冷剤が封入された合成樹脂製又は金属製の蓄冷剤容器と、その蓄冷剤容器上に配置される金属板とから構成されている。こうした冷却トレイが収納された冷凍室では、冷却トレイの金属板上に食品が載置されると、その食品は冷凍室内に供給される冷気に加えて冷却トレイ内の蓄冷剤Tによっても熱を奪われるため、急速に温度が低下して冷凍状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−069126号公報
【特許文献2】特開2005−083629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓄冷剤容器は成形の容易性やコストの観点から、金属よりも合成樹脂により形成することが好ましい。しかしながら、合成樹脂製の蓄冷剤容器は金属製の蓄冷剤容器と比較して熱伝導性が低く、冷却トレイや保冷材等に適用した場合の冷却性が劣るという問題がある。さらに、蓄冷剤容器には凍結・解凍を繰り返す使用態様に耐えうる耐久性も求められる。
【0006】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱伝導性、及び凍結・解凍の繰り返しに対する耐久性に優れた蓄冷剤容器、及び蓄冷剤容器用の樹脂材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の樹脂材料は、内部に蓄冷剤を封入して使用される蓄冷剤容器用の樹脂材料であって、母材として(A)JISK6922−1に規定されるメルトフローレートが0.01〜10g/10minである高密度ポリエチレン樹脂を含有し、さらに(B)エチレン−α−オレフィン共重合体及び(C)球状フィラーを含有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の樹脂材料は、請求項1に記載の発明において、前記(A)高密度ポリエチレン樹脂を25〜60質量%、前記(B)エチレン−α−オレフィン共重合体を10〜25質量%、(C)前記球状フィラーを30〜50質量%含有することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の蓄冷剤容器は、内部に蓄冷剤を封入して使用される合成樹脂製の蓄冷剤容器であって、母材として(A)JISK6922−1に規定されるメルトフローレートが0.01〜10g/10minである高密度ポリエチレン樹脂を含有し、さらに(B)エチレン−α−オレフィン共重合体及び(C)球状フィラーを含有する樹脂材料により形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の樹脂材料は、請求項3に記載の発明において、前記樹脂材料は、前記(A)高密度ポリエチレン樹脂を25〜60質量%、前記(B)エチレン−α−オレフィン共重合体を10〜25質量%、(C)前記球状フィラーを30〜50質量%含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蓄冷剤容器用の樹脂材料、及び蓄冷剤容器を用いることにより蓄冷剤容器の熱伝導性、及び凍結・解凍の繰り返しに対する耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は蓄冷剤容器の斜視図、(b)は(a)のX−X線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の蓄冷剤容器の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(a)及び(b)に示すように、合成樹脂製の蓄冷剤容器1は中空箱状に形成されている。蓄冷剤容器1には蓄冷剤容器の変形を抑制することを目的として、円錐台上のボス2及び突条リブ3が設けられている。本実施形態においては、蓄冷剤容器1の上壁及び下壁の中央部分に対して、上下一対のボス2が6組形成されるとともに長手方向に延びる突条リブ3が形成されている。また、図1(b)に示すように、上下一対のボス2はその先端面同士が互いに溶着された状態となっている。こうした蓄冷剤容器1は、例えばブロー成形により成形することができる。
【0014】
そして、蓄冷剤容器1は、内部に形成される収容空間内に蓄冷剤Tが封入された状態で使用される。蓄冷剤Tとしては、冷却トレイや保冷材等に一般に用いられる公知のもの(例えば、特開平4−23883号公報に記載される蓄冷剤)を用いることができる。
【0015】
次に、蓄冷剤容器1を形成する樹脂材料について説明する。上記樹脂材料は、母材として(A)高密度ポリエチレン樹脂を含有し、(B)エチレン−α−オレフィン共重合体及び(C)球状フィラーを含有する。
【0016】
(A)高密度ポリエチレン樹脂は、(B)エチレン−α−オレフィン共重合体及び(C)球状フィラーとの併用により、上記樹脂材料により形成される蓄冷剤容器の熱伝導性、及び凍結・解凍の繰り返しに対する耐久性を向上させる。なお、ここでいう高密度ポリエチレン樹脂とは、JISK6922−1の分類に準じた高密度ポリエチレンを意味する。高密度ポリエチレン樹脂は、JISK6922−1に規定されるメルトフローレート:MFR(温度190℃、荷重21.18N)が0.01〜10.0g/10minであることが好ましく、0.03〜1.0g/10minであることがより好ましく、0.03〜0.3g/10minであることがさらに好ましい。高密度ポリエチレン樹脂のMFRが0.01g/10min未満である場合には、例えば、ブロー成形を行った際に、押出し機への負荷が大きくなりすぎて、パリソンの形成が難しくなる、又はパリソンの肉厚が厚くなりすぎる。また、高密度ポリエチレン樹脂のMFRが10.0g/10minを超えると、粘度が低すぎてパリソンの形成自体ができなくなる。
【0017】
上記樹脂材料における高密度ポリエチレン樹脂の含有量は、好ましくは25〜60質量%である。高密度ポリエチレン樹脂の含有量が25質量%未満である場合には、製品使用時に凍結・解凍を繰り返すことによって亀裂等の破損が生じやすくなる。また、高密度ポリエチレン樹脂の含有量が60質量%を超えると、ブロー成形後の収縮が大きくなることから、成形後の蓄冷剤容器に過度の変形が生じやすくなる。
【0018】
(B)エチレン−α−オレフィン共重合体は、(A)高密度ポリエチレン樹脂及び(C)球状フィラーとの併用により、上記樹脂材料により形成される蓄冷剤容器の熱伝導性、及び凍結・解凍の繰り返しに対する耐久性を向上させる。また、(B)エチレン−α−オレフィン共重合体は、(C)球状フィラーを含有させることにより生じる容器の剛性の低下を好適に抑制する。
【0019】
(B)エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えばエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ペンテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−ヘプテン共重合体、及びエチレン−オクテン共重合体が挙げられる。これらのエチレン−α−オレフィン共重合体のうちの一種のみを含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。上記樹脂材料におけるエチレン−α−オレフィン共重合体の含有量は、好ましくは10〜25質量%である。エチレン−α−オレフィン共重合体の含有量が10質量%未満である場合には、製品使用時に凍結・解凍を繰り返すことによって亀裂等の破損が生じやすくなる。また、エチレン−α−オレフィン共重合体の含有量が25質量%を超えると、製品の剛性が低下して凍結時の蓄冷剤容器1の変形が大きくなる。
【0020】
(C)球状フィラーは、(A)高密度ポリエチレン樹脂及びエチレン−α−オレフィン共重合体との併用により、上記樹脂材料により形成される蓄冷剤容器の熱伝導性、及び凍結・解凍の繰り返しに対する耐久性を向上させる。また、(C)球状フィラーは、(B)エチレン−α−オレフィン共重合体を含有させることにより生じる容器の軟質化を好適に抑制する。
【0021】
(C)球状フィラーとしては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩、金属粉末、黒鉛が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムが挙げられる。金属酸化物としては、例えば酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、及び酸化亜鉛が挙げられる。金属炭酸塩としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、及び炭酸亜鉛が挙げられる。金属粉末としては、例えば亜鉛、マグネシウム、及びアルミニウムが挙げられる。これらの球状フィラーのうちの一種のみを含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。上記樹脂材料における球状フィラーの含有量は、好ましくは30〜50質量%である。球状フィラーの含有量が30質量%未満である場合には、ブロー成形後の収縮が大きくなることから、成形後の蓄冷剤容器に過度の変形が生じやすくなる。また、球状フィラーの含有量が50質量%を超えると、製品使用時に凍結・解凍を繰り返すことによって亀裂等の破損が生じやすくなる。ここで、本明細書における球状フィラーの「球状」とは、真球状のみを意味するものではなく、概して略球状であること意味する。
【0022】
なお、上記樹脂材料には、上記樹脂材料により形成される蓄冷剤容器の熱伝導性、及び凍結・解凍の繰り返しに対する耐久性を向上させるという作用を損なわない範囲において、上記各成分以外の成分、例えば可塑剤、酸化防止剤、加水分解抑制剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、及び難燃剤を目的に応じて適宜配合することができる。それらの成分は各用途における常法に従って所定量が配合される。
【0023】
次に本実施形態における作用効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態の樹脂材料は、母材として(A)JISK6922−1に規定されるメルトフローレートが0.01〜10.0g/10minである高密度ポリエチレン樹脂を含有し、さらに(B)エチレン−α−オレフィン共重合体及び(C)球状フィラーを含有する。したがって、上記構成を備える樹脂材料により形成された蓄冷剤容器は、熱伝導性、及び凍結・解凍の繰り返しに対する耐久性に優れたものとなる。また、蓄冷剤容器の熱伝導性が向上することにより、封入された蓄冷剤をより短時間で凍結することが可能になるとともに、冷却トレイや保冷材として使用した場合における冷却性が向上する。
【0024】
さらに、蓄冷剤容器の熱伝導性が向上することにより、蓄冷剤容器の成形時において、高温状態の蓄冷剤容器の熱を速やかに外部に放出することが可能となる。具体的には、成形型内での冷却時間を同じとした場合、上記樹脂材料からなる蓄冷剤容器は従来の樹脂材料からなる同容器と比較して、より冷却された状態(より低い温度)で成形型から取り出されることになる。これにより、蓄冷剤容器をより短時間で冷却することができ、ひいては蓄冷剤容器の成形サイクルを短縮することができる。また、成形した蓄冷剤容器を成形型から取り出した後の冷却時における合成樹脂の収縮は、蓄冷剤容器の変形を生じさせる原因となるが、上記構成によれば、成形型から取り出したときには蓄冷剤容器の温度が十分に低くなっているため、その後の収縮を少なく抑えることができる。
【0025】
(2)本実施形態の樹脂材料は、好ましくは、(A)高密度ポリエチレン樹脂を25〜60質量%、前記(B)エチレン−α−オレフィン共重合体を10〜25質量%、(C)前記球状フィラーを30〜50質量%含有する。したがって、蓄冷剤容器を形成した際における熱伝導性、及び凍結・解凍の繰り返しに対する耐久性の向上作用をより確実に得ることができる。
【0026】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 蓄冷剤容器1に設けられるボス2及び突条リブ3の数、形状、及び形成位置は特に限定されるものではない。また、ボス2及び突条リブ3の一方又は両方を省略してもよい。
【0027】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記(B)エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレン−プロピレン共重合体及びエチレン−オクテン共重合体から選ばれる少なくとも一種であり、前記(C)球状フィラーは、炭酸カルシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする前記樹脂材料。
【0028】
(ロ)前記(B)エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレン−プロピレン共重合体及びエチレン−オクテン共重合体から選ばれる少なくとも一種であり、前記(C)球状フィラーは、炭酸カルシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする前記蓄冷剤容器。
【実施例】
【0029】
次に、実施例及び比較例を挙げて上記実施形態を更に具体的に説明する。
表1に示す組成の化合物を混合して実施例及び比較例の樹脂材料を得た。この実施例及び比較例の樹脂材料を用いて、所定形状の樹脂板を成形し、その樹脂板について「熱伝導率」、「曲げ弾性率」、「シャルピー衝撃値」を測定した。
【0030】
また、実施例及び比較例の樹脂材料を用いて、図1に示す蓄冷剤容器をブロー成形により成形した。具体的には、上記樹脂材料を溶融した溶融樹脂からなる筒状のパリソンを挟むようにしてブロー成形型を型閉めするとともに、ブロー成形型で挟まれたパリソン内に空気を吹き込むことにより、中空箱状の蓄冷剤容器を成形した。蓄冷剤容器の外径寸法は、縦300mm、横200mm、厚さ25mm、壁厚2mm程度である。
【0031】
そして、成形型内にて蓄冷剤容器を60秒間冷却した後、成形型から蓄冷剤容器を取り出し、室温にて蓄冷剤容器をさらに自然冷却することにより蓄冷剤容器を得た。ここで、成形型から取り出した直後の各蓄冷剤容器の温度を測定したところ、比較例1の樹脂材料からなる蓄冷剤容器の温度が80℃であったのに対して、実施例1〜3及び比較例2の樹脂材料からなる蓄冷剤容器の温度は30℃程度まで下がっていた。また、比較例3の樹脂材料からなる蓄冷剤容器の温度は40℃程度であった。
【0032】
そして、得られた実施例及び比較例の樹脂材料からなる蓄冷剤容器について、「剛性」の評価を行なった。また、各蓄冷剤容器内に蓄冷剤を封入し、この蓄冷剤が封入された蓄冷剤容器について、「蓄冷剤の凍結性」、「落下衝撃耐性」の評価を行なった。
【0033】
[熱伝導率]
表1に示す組成の樹脂材料を用いて、縦100mm、横100mm、厚さ2mmの樹脂板を作成した。そして、その樹脂板の熱伝導率について、熱線法を用いて熱伝導率を測定する測定器(QTM500、京都電子工業社製)を使用し、薄膜モードの測定条件にて測定した。
【0034】
[曲げ弾性率]
表1に示す組成の樹脂材料を用いて作成した試験片について、JISK6922−2に準拠して曲げ弾性率を測定した。
【0035】
[シャルピー衝撃値]
表1に示す組成の樹脂材料を用いて作成した試験片について、JISK7111−1に準拠してシャルピー衝撃値(ノッチ付き)を測定した。
【0036】
[剛性の評価]
蓄冷剤未封入の蓄冷剤容器を手で押圧し、蓄冷剤容器の剛性を触覚にて判断した。そして、以下の基準により剛性の評価を行なった。
【0037】
○:容器として耐えうる剛性を有している。
×:容器として耐えうる剛性を有していない。
[蓄冷剤の凍結性の評価]
各例の冷却トレイを−25℃の冷凍庫内に投入し、封入された液体状態の蓄冷剤が凍結するまでの時間を測定した。
【0038】
[落下衝撃耐性の評価]
内部に蓄冷剤を封入した状態で、蓄冷剤の凍結及び解凍(室温における自然解凍)を5回繰り返した後、1mの高さから落下させ、蓄冷剤容器に破損(割れ等)が生じているか否かを目視にて観察した。そして、以下の基準により落下衝撃耐性の評価を行なった。なお、本評価は「凍結・解凍の繰り返しに対する耐久性」に対応する評価である。
【0039】
○:破損は確認できなかった。
×:破損が確認された。
なお、表1中の「成分」欄における(A)〜(C)の表記は本願請求項記載の各成分に対応する物質を示し、(a)、(c)の表記は、比較例においてA成分及びC成分の代替成分として用いた物質を示す。また、表1中における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。
【0040】
表1に示す樹脂材料の各成分は以下のとおりである。
高密度ポリエチレン樹脂:東ソー社製、ニポロンハード8600A(JISK6922−1に規定されるMFRが0.03)
低密度ポリエチレン樹脂:東ソー社製、ペトロセン173(JISK6922−1に規定されるMFRが0.3)
エチレン−プロピレンゴム:三井化学社製、タフマーA−0550S
エチレン−オクテンゴム:ダウ社製、エンゲージ8200
炭酸カルシウム(球状):淡南化学社製、ライトンS−4
酸化マグネシウム(球状):協和化学工業社製、パイロキスマ5301K
タルク(板状):日本タルク社製、ミクロエースK−1
【0041】
【表1】

表1に示すように、蓄冷剤容器を形成する合成樹脂として、母材として高密度ポリエチレン樹脂を含有し、さらにエチレン−α−オレフィン共重合体及び球状フィラーを含有する各実施例の樹脂材料を用いた場合には、蓄冷剤の凍結性、剛性、及び落下衝撃耐性の各評価に優れた蓄冷剤容器が得られることが分かる。また、高密度ポリエチレン樹脂のみからなる比較例1の樹脂材料と比較して、各実施例の樹脂材料は熱伝導性に優れていることが分かる。こうした熱伝導性の差により、成形型の内部における合成樹脂の冷却が促進され、上記製造工程において、各実施例の樹脂材料からなる蓄冷剤容器は、比較例1の樹脂材料からなる蓄冷剤容器と比較して、より冷却された状態(より低い温度)で成形型から取り出されたと考えられる。
【0042】
一方、高密度ポリエチレン樹脂のみからなる比較例1の樹脂材料を用いた場合には、各実施例と比較して、蓄冷剤が凍結するまでの時間が長く、蓄冷剤の凍結性の評価が低い結果であった。また、球状フィラーに代えて板状のタルクを添加した比較例2の樹脂材料を用いた場合には、各実施例と比較して、落下衝撃耐性の評価が低い結果であった。また、母材として低密度ポリエチレン樹脂を含有し、さらに球状フィラーのみを含有する比較例3の樹脂材料を用いた場合には、各実施例と比較して剛性の評価が低い結果であった。なお、比較例3の樹脂材料を用いた蓄冷剤容器は剛性が低いことから、同容器を凍結させた際に過度の変形が確認された。
【符号の説明】
【0043】
T…蓄冷剤、1…蓄冷剤容器、2…ボス、3…突条リブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に蓄冷剤を封入して使用される蓄冷剤容器用の樹脂材料であって、
母材として(A)JISK6922−1に規定されるメルトフローレートが0.01〜10g/10minである高密度ポリエチレン樹脂を含有し、さらに(B)エチレン−α−オレフィン共重合体及び(C)球状フィラーを含有することを特徴とする樹脂材料。
【請求項2】
前記(A)高密度ポリエチレン樹脂を25〜60質量%、前記(B)エチレン−α−オレフィン共重合体を10〜25質量%、(C)前記球状フィラーを30〜50質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項3】
内部に蓄冷剤を封入して使用される合成樹脂製の蓄冷剤容器であって、
母材として(A)JISK6922−1に規定されるメルトフローレートが0.01〜10g/10minである高密度ポリエチレン樹脂を含有し、さらに(B)エチレン−α−オレフィン共重合体及び(C)球状フィラーを含有する樹脂材料により形成されていることを特徴とする蓄冷剤容器。
【請求項4】
前記樹脂材料は、前記(A)高密度ポリエチレン樹脂を25〜60質量%、前記(B)エチレン−α−オレフィン共重合体を10〜25質量%、(C)前記球状フィラーを30〜50質量%含有することを特徴とする請求項3に記載の蓄冷剤容器。

【図1】
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【公開番号】特開2011−190960(P2011−190960A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56175(P2010−56175)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】