説明

蓄熱式温水床暖房装置

【課題】 深刻化する地球環境問題に於いて、温室効果ガス削減が至上課題となっている。特にエネルギー消費の大きい暖房システムの改善と余剰となっている深夜電力の有効利用は、環境保全への貢献となる。
【解決手段】 本発明は、深夜電力を有効利用したヒートポンプ型温水器を使い、蓄放熱型石板を使った乾式工法による蓄熱式床暖房装置である。
上記蓄放熱型石板は、蓄熱量が大きく放熱が遅行となる鉄分と気泡が含まれる溶岩石に温水パイプ用溝を設け、さらに、蓄熱と即放熱できる配管方法と、金属製の熱伝導が高い放熱板を組合せ、蓄熱と同時に暖房の必要時間帯の暖房不足に即放熱対応ができる特徴を持つ。また、限られた床下根太間部分の空隙に、空気層と熱反射シートを組み入れた遮熱構造を備えている他、一般的な床や躯体の構造変更を不要とし、施工簡素化の特徴を持つ蓄熱式温水床暖房装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省エネルギー性能の高い、床暖房用のヒートポンプ式熱源機器のエネルギー効率をさらに高める手段として、余剰となる深夜電力を活用させることを目的とする。
環境保全に貢献できる深夜電力の有効利用は、前記ヒートポンプ式熱源機器から得た温熱水を床暖房用温水パネルに蓄熱の要素を取り入れる。同蓄熱機能によって、深夜に余剰となる電力が活かされることを特徴とした、省エネルギーに貢献できる床暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記ヒートポンプ式熱源機器は、熱媒体の温水を高効率で加熱する機能を備えている。しかし、同ヒートポンプ式熱源機器には、同温水熱を一定時間蓄熱ができる機能が付属されていない。
前記ヒートポンプ式熱源機器と、これに組み合わされ市販されている温水式床暖房放熱パネルは、温水を循環させると同時に放熱し、温水循環が止まると放熱も止まる状態となっているため、深夜の余剰となっている電力が有効に活用されていない状況となっている。
【0003】
また、従来の蓄熱型床暖房システムとして、土間もしくは床部分に断熱材を敷き、その上部に架橋ポリエチレンパイプを配管して、生コンクリートを打設する湿式施工工法が、蓄熱型温水式床暖房工法として一般的に普及している。
その他、従来の技術として、根太間の空間に温水パイプと蓄熱用の砂を配置した、工法が特許文献1、蓄熱式床暖房装置として記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−178321号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
同ヒートポンプ式熱源機器の電力エネルギーの効率をさらに向上させるには、余剰となる深夜電力の活用が望ましい。
上記ヒートポンプ式熱源機器からつくられる温水熱を温水式床暖房用の放熱板に蓄熱機能を設け、放熱時間を遅行させることが可能となる。同放熱遅行によって、深夜電力の有効利用と昼間の電力消費を削減させることを課題とする。
【0006】
温水熱を温水式床暖房用の放熱部に蓄熱機能を持たせる手段として、生コンクリートの蓄熱容量を利用した湿式工法が、蓄熱型床暖房の主流となっている。
しかし、湿式工法による様々な不具合が起きうるため、これを改善するには、蓄熱機能を持つ放熱部を乾式工法に転換することを課題とする。
【0007】
また、上記蓄熱機能を持つ放熱部を乾式工法に改善するには、一般的な床構造の根太間の空隙に収まる蓄熱層の容積であることが望ましい。
そして、前記蓄熱層の省エネ性能を確保するため、断熱の要素を組みこむことが重要課題となる。
【0008】
さらに、蓄熱型の暖房立ち上がり時間の遅行を改善させることを課題とする。蓄熱体の暖め難く冷め難い特徴を活かしながら、温水循環の直後から短時間に放熱暖房ができる、蓄熱と即放熱の相反する性能を満たし、これまで蓄熱型の欠陥要素であった温水循環後に於いて、蓄熱放熱板の上面温度上昇時間の遅行状況を改善できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
建築物の暖房設備に於いて、最も省エネルギーなヒートポンプ方式熱源機器を使った床暖房システムが、省エネルギー効果を発揮している。しかし、同ヒートポンプ方式熱源機器は、蓄熱の機能を備えていないため、深夜の時間帯の余剰となる電力が有効に活用されていない。
前記課題を解決するための手段として、ヒートポンプ型床暖房用温水器からつくられた温水熱を温水式床暖房用の放熱板に一定時間蓄熱できる機能を付け加え、放熱を遅行させる暖房方法によって、深夜電力の有効な利用ができることを特徴とする。
【0010】
深夜電力の有効利用ができる蓄熱型温水式床暖房の現況としては、請求項2に示される湿式工法に於いて、建築工事の施工手順や規格変更などが生じ易い。また、生コン打設後の完全乾燥まで1年余を要すため、同コンクリートの湿気の影響によって、床材の品質劣化や耐久性への問題が懸念されている。さらに、床下の空間がなくなるなど、建築構造自体の変化から、様々な影響を与えることが想定できる。
上記湿式工法による蓄熱型温水式床暖房の諸問題を解決するためには、蓄熱部分を湿式工法から乾式工法へ転換させることによって、湿式工法の各問題点が解消できる。
【0011】
請求項3の蓄熱型床暖房放熱板を乾式工法へ移行するためには、蓄熱量が大きく体積が小さい素材の選定が重要となる。
上記蓄放熱板の材料には、蓄熱量が大きい鉄分を含有し、さらに放熱が遅くなる気泡がたくさん含まれている溶岩石が、蓄熱量が大きく放熱が遅くなる要素を備えるため、同蓄放熱板としての性能が活されることを特徴とする。
前記蓄熱量や放熱遅行が備わっている溶岩石は、加工が容易であり、さらに材料価格が安価で入手し易いため、施工費を含めた工事費全体の価格が安く、しかも半永久的な耐久性が確保できる。
現在出回っている、蓄熱機能を持たない床暖房用放熱パネル各種と同程度または、それ以下の設備費となる。また、暖房維持費の低減をはじめ床暖房用蓄放熱石板は劣化が無く、再利用が永続できるなど、環境保全に貢献できる。
【発明の効果】
【0012】
乾式工法に於ける蓄熱用石板の上面に温水パイプ用の溝を設け、同溝に温水パイプを配列して、同石板に蓄熱と同時に床面への熱伝播が早くできる構造を特徴とする。また、蓄熱用石板の上面に金属箔の貼り付けや金属製放熱板を重ね、同温水パイプから前記放熱材へ、さらに床面への熱伝播状態を早くできることによって、蓄熱型の欠陥的要素である室温立ち上がり時間の遅行状態の改善を目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の床暖房蓄放熱石板(I型)
【図2】本発明の床暖房蓄放熱石板(L型)
【図3】本発明の床暖房蓄放熱石板(U型)
【図4】本発明の金属パネル
【図5】本発明の床構造断面図
【図6】本発明の床構造透視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の概要を説明する。建築物の暖房設備である、床暖房システムの熱源装置の一種として、ヒートポンプ方式の熱源機器が開発され、各メーカーから市販されるに至っている。
同ヒートポンプ型床暖房用温水器は、床暖房システムの省エネルギー性能の向上に貢献している。さらに、環境保全及び省エネルギー性を向上させるためには、深夜の時間帯の余剰となる電力を有効に活用することが好ましい。
【0015】
上記深夜電力エネルギーを用いた、ヒートポンプ型床暖房用温水器からつくられた、同温水熱を温水式床暖房用の放熱板に一定時間蓄熱できる機能を加へて放熱時間を遅行させ、昼間の電力消費の削減を目的とする。
【0016】
温水式床暖房の蓄熱型温水式床暖房放熱部に於いて、架橋ポリエチレンパイプを土間もしくは床部分に配管して、生コンクリートを打設する湿式施工工法が一般的に行われている。同生コンクリートを現場打設する湿式工法は、コンクリートの完全乾燥まで1年余の時間を要する。その他、建築躯体へ施工や工程など、様々な形で負荷要因が顕著となっている。
上記湿式工法の諸問題を解消するために、床暖房用放熱板を蓄熱型乾式工法へ工法転換したことを特徴とする。
【0017】
蓄熱型床暖房放熱板を乾式工法へ移行するためには、蓄熱量が大きく体積が小さい素材の選定が重要となる。
上記蓄放熱板の材料には、蓄熱量が大きい鉄分を含有し、さらに放熱が遅くなる気泡がたくさん含まれている溶岩石が、蓄熱量が大きく放熱が遅くなる要素を備える。同特性を床暖房用蓄放熱板として活かせることを特徴とする。
また、蓄熱量や放熱遅行が備わっている一般的な岩石を使う場合、加工性や材料費及び、施工費を含めた工事費全体の価格が安くなることが重要である。
上記溶岩系の岩石を蓄熱型床暖房用放熱パネルに加工した石板を、床暖房用蓄放熱石板の名称を持って以後表記するものとする。
【0018】
前記床暖房用蓄放熱石板を用いた蓄熱式床暖房は、一般的な床構造の構造や寸法を改善、もしくは改良しない状態に於いて、同床構造の根太間及び根太高さの限られた空間に収納設置できる形状及び寸法とする。
さらに、乾式工法となるため、建築躯体及び床構造への湿気の負荷をはじめ施工手順や規格変更など、これらの様々な影響が改善される。
【0019】
上記溶岩石等を床暖房用蓄放熱石板に加工し、限定された石板容積に於いて一定量の蓄熱容量を確保させると同時に、空気層と熱反射シートが挿入できる構造を容易につくり、熱反射による断熱構造を用いたことを特徴とする。
【0020】
同床暖房用蓄放熱石板250×250×45mmに、温水パイプが挿入できる溝を設ける。同床暖房用蓄放熱石板1枚に対して、温水往き管及び還り管の2本のパイプ用溝を設け、同溝の形状は、直線・L型・U型の3種類の溝形状を特徴とする。
また、同温水パイプ寸法に合わせた溝寸法として、L型及びU型の床暖房用蓄放熱石板に関しては、パイプの膨張及び伸縮による逃げを見越した溝の形状とする。
【0021】
上記蓄熱型放熱板の熱伝播遅行を改善するため、前記床暖房用蓄放熱石板の上部に、温水パイプ用の溝を設け、温水パイプの放熱が直上に施工されている床材に熱伝播され易い配管構造を特徴とする。
同構造に於いて、前記温水パイプに温水を循環させたとき、温水熱は床暖房用蓄放熱石板の上部に熱伝導して、同石板からの輻射熱が、床面へ短時間に熱放射が行われる特性を活かす。
これまでの蓄熱型床暖房の温水パイプは、蓄熱層の底辺に配管される施工となるため、温水パイプから蓄熱体へ、さらに蓄熱体から床材及び室内までの熱伝播の時間が掛り過ぎると言う、構造上の弱点となる暖房立ち上がり時間の遅行問題が緩和できる。
さらに、床面及び室内への熱伝播を効率よく早める方法として、床暖房用蓄放熱石板の溝面及び、同石板の上部表面に熱伝導及び放熱が早いアルミ箔や金属箔などを貼り付ける。或は、床暖房用蓄放熱石板と、プレス成型をした金属製の床暖房用放熱板を組み合わせる。
前記床暖房用の放熱部分の材質を複合化することによって、蓄熱型の欠陥的要素である、床及び室内が温まるまでの時間が短縮できる機能を持たせることを特徴とする。
【0022】
以下、図面を使いながら本発明の詳細について説明する。
上記蓄熱量が大きく放熱遅行型の溶岩石を床暖房用蓄放熱石板、図1〜3として用いるためには、一般的に施工が可能な床構造、図5〜6の根太14bとの間隔幅258mm、及び根太高さ58mm程度を考慮して、幅×高さの限られた空間、図5に於いて、床暖房用蓄放熱石板、図1〜3及び、空気層15dと熱反射シート15cが挿入できる構造として、一定の蓄熱と遮熱性能を発揮させることができる。
【0023】
前記根太空間の状況から、床暖房用蓄放熱石板、図1〜3の寸法は250×250mmとして、高さは45mmとする。その他、空気層15d、10mm前後、熱反射シート15c、1mm以下の各寸法の組合せ構造を基本とする。
【0024】
床暖房用蓄放熱石板、図1〜3と熱反射シート15cの間の空気層15dは、木製のスペーサー15bを現場の施工状況にあわせ、10mm角〜12mm角前後として、床暖房用蓄放熱石板、図1〜3の4点が支持できる施工とし、空気層15dと熱反射シート15cを活かした熱反射遮熱性能が充分得られる構造とする。
【0025】
前記床暖房用蓄放熱石板250×250×45mm 図1〜3に、温水パイプ15aが挿入できる溝10a〜12aを必要とする。同床暖房用蓄放熱石板、図1〜3、1枚に対して、各2本の溝10a〜12aを設け、同溝の形状は、直線10a・L型11a11b・U型12aの3種類の形状とする。
【0026】
さらに、同温水パイプ15aの寸法に合わせた溝、図2〜3の形状として、温水パイプの膨張及び伸縮に対応できる状態とする。例えば、架橋ポリエチレンパイプ15aの呼び寸法10mmを挿入する場合、溝10aの幅13mm、深さ15mm程度の溝、図1〜3を設け、L型、図2及びU型、図3の床暖房用蓄放熱石板に関しては、パイプの膨張による逃げを見越した形状、図2〜3とする。
【0027】
前記床暖房用蓄放熱石板、図1〜3、250×250×45mmに、温水パイプ用溝10a、11a、11b、12aを床暖房用蓄放熱石板上部に設け、温水パイプ15aの放熱が、直上に施工されている床材14aに熱伝播され易い配管構造とする。同構造に於いて、前記温水パイプ15aに温水を循環させたとき、温水熱は床暖房用蓄放熱石板、図1〜3の上部に熱伝導して、同石板からの輻射熱が、床材面14aへ早く熱放射が行われる特徴を活かす。
【0028】
これまでの蓄熱型床暖房の温水パイプ15aは、蓄熱層の底辺に配管される施工となるため、温水パイプから蓄熱体へ。さらに、蓄熱体から床材及び室内までの熱伝播の時間が遅くなると言う、構造上の弱点である暖房立ち上がり時間の遅行問題が緩和できる。
【0029】
従来の蓄熱型床暖房システムの課題であった放熱遅行からの暖房立ち上がり時間の不備は、急激な冷え込みや暖房の必要時間帯18〜23時前後に放熱量の不足が起き易く、同時間帯の暖房不足に対して、室温への加温が即応できない状態が起きていた。
上記状態を解消するために、床面及び室内への熱伝播を効率よく早める方法として、床暖房用蓄熱石板、図1〜3の溝10a、11a、11b、12aと、同石板の上部表面に熱伝導及び放熱が早いアルミ箔や金属箔などを貼り付ける。或は、床暖房用蓄熱石板、図1〜3と、プレス成型をした金属製の床暖房用放熱板、図4、13を組み合わせたことを特徴する、乾式床暖房用蓄放熱石板。
【0030】
前記乾式床暖房用蓄放熱石板によって、施工上の様々な問題解消と、余剰となる深夜電力の有効利用が可能となり、暖房コストの削減及び、環境保全への貢献ができる。さらに、蓄熱型の床暖房の欠陥的要素である、室温コントロールが簡易にできることを特徴とする、乾式工法蓄熱型及び即放熱型床暖房用蓄放熱石板。
【符号の説明】
【0031】
10 蓄放熱石板:I型
10a 温水パイプ用溝
11 蓄放熱石板:L型
11a 温水パイプ用溝外
11b 温水パイプ用溝内
12 蓄放熱石板:U型
12a 温水パイプ用溝
13 金属パネル
13a 金属パネル温水パイプ用溝
14a 床材
14b 根太
14c 捨て張
15a 温水パイプ
15b スペーサー
15c 熱反射シート
15d 空気層
16a 柱
16b 土台
16c 大引き
17a 布基礎
17b 基礎ベース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の一般的床構造の状態に於いて、前記床構造の根太14b間及び床材14aと、捨て張14c間の許容できる容積範囲に蓄熱型温水式床暖房の温水パイプ15a、金属パネル13、蓄放熱石板10、11、12と、空気層15d及びスペーサー15bと、熱反射シート15cが収納できる乾式工法による蓄熱式温水床暖房装置に於いて、蓄放熱石板10、11、12に溶岩石を用いることによって溶岩石の特質である、鉄分含有による蓄熱能力と、気泡が含まれるため暖め難く冷め難い特性を活かすことを目的とし、尚且つ蓄熱物質の短所となる放熱遅行を改善するため、上記蓄放熱用石板10、11、12の上面に温水パイプ用の溝10a、11a、11b、12aを設け、同溝に温水パイプ15aを配列することによって、温水パイプからの放熱が、床材へ熱伝播の時間短縮ができる配管構造を特徴とし、さらに、蓄放熱用石板の上面に熱伝導及び放熱が早いアルミ箔や金属箔などを貼り付け、又は、プレス成型をした金属製放熱板13を重ね、蓄熱型床暖房の暖房立ち上がり時間の短縮を目的とした要素を備え、さらに、上記蓄熱型温水式床暖房用の蓄放熱石板の下部に空気層15dと熱反射シート15cを施設し、遮熱による断熱構造を特徴とする蓄熱式温水床暖房装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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