説明

蓄電システムを搭載した車両の制御装置及び制御方法

【課題】メンテナンス時に並列接続された蓄電装置間で循環電流が流れることを抑制する。
【解決手段】並列接続された複数の蓄電装置20A,20Bを有する蓄電システムの充放電制御を行う制御部51と、蓄電装置それぞれに設けられた充放電処理に関連する部品の異常を検出する異常検出部52とを含む。並列接続された複数の蓄電装置の一部に部品の異常が検出された場合、部品に異常がある蓄電装置の充放電を禁止しつつ部品に異常がある蓄電装置以外の蓄電装置の電力を走行用モータに出力させるように制御するとともに、部品に異常がある蓄電装置と部品に異常がある蓄電装置以外の蓄電装置との充電容量差が所定値以下となった場合に、蓄電システムから走行用モータ33への電力供給を終了させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電装置が並列に接続された蓄電システムを搭載する車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、並列接続された電池の一部に異常が発生した場合、異常電池を切り離しつつ正常電池の電力を用いた車両制御を許容し、正常電池を高SOCへと導いて停車後の再発進などの大電力出力にも対応できるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−282375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
並列接続される電池の一部に異常が発生した場合、特許文献1のように正常電池のSOCを高SOCに導くように制御すると、異常電池を交換用電池に交換した後の正常電池と交換用電池との電圧差(SOC差)が大きくなるおそれがある。電圧差が大きくなると、交換後の並列接続される電池間で流れる電圧差に応じた大きな循環電流に流れ、電池又は電流センサ等の電池部品を適切に保護することが難しい。
【0005】
このため、正常電池と交換用電池の電圧差を解消する充放電作業を含む交換作業を実施する必要があるが、電池異常のように電池自体を交換する場合に比べて電池自体には異常が見られずに電池に接続されるシステムメインリレーや電流センサ等の電池部品に異常がある場合、電池自体を交換する必要がないにも関わらず、並列に接続される電池部品に異常がある電池と他の電池との間で電圧差の解消する充放電作業を行わなければならないため、電池部品の交換費用が高くなってしまう課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1の発明である車両の制御装置は、並列接続された複数の蓄電装置を有する蓄電システムの充放電制御を行う制御部と、蓄電装置それぞれに設けられた充放電処理に関連する部品の異常を検出する異常検出部とを含む。複数の蓄電装置の一部に部品の異常が検出された場合、部品に異常がある蓄電装置の充放電を禁止しつつ部品に異常がある蓄電装置以外の蓄電装置の電力を走行用モータに出力させるように制御するとともに、部品に異常がある蓄電装置と部品に異常がある蓄電装置以外の蓄電装置との充電容量差が所定値以下となるまで、部品に異常がある蓄電装置以外の蓄電装置の電力を走行用モータに出力させるように制御し、充電容量差が所定値以下となった場合に、蓄電システムから走行用モータへの電力供給を終了させるように制御する。
【0007】
本願第1の発明によれば、並列接続された複数の蓄電装置の一部に部品の異常が検出された場合に、部品に異常がある蓄電装置以外の正常な蓄電装置の充放電制御を部品に異常がある蓄電装置の充電容量に基づいて制御し、充電容量差が所定値以下となった場合に、蓄電システムから走行用モータへの電力供給を終了させるように制御するので、部品交換後に並列接続された蓄電装置間で循環電流が流れることを抑制できる。さらに、蓄電装置自体を交換する場合に比べて部品の交換費用を低減させることができる。
【0008】
異常検出部は、蓄電装置それぞれの状態異常を検出することができ、制御部は、複数の蓄電装置の一部に状態異常が検出された場合、状態異常が検出された蓄電装置の充放電を禁止して状態異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置の電力を走行用モータに出力させるように制御しつつ、状態異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置の充電容量が所定値以下となった場合に、蓄電システムから走行用モータへの電力供給を終了させるように制御するように構成することができる。
【0009】
蓄電装置自体の交換を前提とする状態異常が検出された場合は、状態異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置の充電容量が所定値以下となるまで、状態異常がある蓄電装置以外の蓄電装置の電力を走行用モータに出力させるように制御することで、状態異常がある蓄電装置以外の蓄電装置の電力を効率よく使用した車両走行を行うことができる。
【0010】
部品の異常又は状態異常が検出された場合、蓄電システムに対する充電を禁止した充放電制御を行うことで、部品異常又は状態異常が発生した状態の蓄電システムから走行用モータへ電力が供給された車両走行の継続を低減させることができる。
【0011】
部品の異常が検出された場合、部品の異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置から走行用モータへの電力出力値を所定の上限値に制限した充放電制御を行うことで、部品異常がある蓄電装置以外の蓄電装置の電力を効率よく使用した車両走行を行うことができる。
【0012】
また、本願第2の発明である車両の制御方法は、複数の蓄電装置が並列接続され、車両の走行用モータに電力を供給する蓄電システムを搭載する車両の制御方法である。蓄電装置それぞれに設けられる充放電処理に関連する部品の異常を検出するステップと、複数の蓄電装置の一部に部品の異常が検出された場合に、部品の異常が検出された蓄電装置の充放電を禁止して部品の異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置の電力を走行用モータに出力させるように制御するステップと、部品の異常が検出された蓄電装置と部品の異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置との充電容量差が所定値以下となった場合に、蓄電システムから走行用モータへの電力供給を終了させるように制御するステップと、を含む。
【0013】
本願第2の発明によれば、並列接続された複数の蓄電装置の一部に部品の異常が検出された場合でも、部品に異常がある蓄電装置以外の正常な蓄電装置の充放電を許容しつつ、部品交換後に並列接続された蓄電装置間で循環電流が流れることを抑制でき、かつ蓄電装置自体を交換する場合に比べて部品の交換費用を低減させることができる。
【0014】
また、本願第2の発明において、蓄電装置自体の交換を前提とする状態異常が検出された場合は、状態異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置の充電容量が所定値以下となるまで、状態異常がある蓄電装置以外の蓄電装置の電力を走行用モータに出力させるように制御することで、状態異常がある蓄電装置以外の蓄電装置の電力を効率よく使用した車両走行を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1に係る電池システムの構成を示す図である。
【図2】実施例1に係る並列接続された組電池の一方の組電池による車両制御を示すフローチャートである。
【図3】実施例1に係る組電池の電圧挙動の一例を示す図である。
【図4】実施例1に係る組電池のSOCとOCVとの関係を示した図である。
【図5】実施例2に係る組電池交換方法の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0017】
(実施例1)
本発明の実施例1である電池システム(蓄電システムに相当する)について説明する。図1は、本実施例の電池システムの構成を示す図である。本実施例の電池システムは、車両に搭載することができる。車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車は、車両を走行させるための動力源として、後述する電池パックに加えて、エンジン又は燃料電池を備えている。電気自動車は、車両の動力源として、電池パックだけを備えている。
【0018】
本実施例の電池パックは、複数の電池スタックで構成される。図1に示すように、電池パックは、4つの電池スタック11〜14を含み、各電池スタックそれぞれは、複数の単電池を有する。単電池としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。単電池は、角型又は円筒型の単電池を用いることができる。
【0019】
単電池の内部は、発電要素(例えば、正極素子、負極素子、正極素子及び負極素子の間に配置されるセパレータ(電解液を含む)を積層して構成することができる)を含み、隣り合う2つの単電池がバスバーによって電気的に接続される。例えば、電池スタック11の両端には、一対のエンドプレートが配置され、一対のエンドプレートが拘束部材によって拘束されることによって、一方向に並べされた複数の単電池を拘束している。電池スタック12〜14も同様である。
【0020】
4つの電池スタック11〜14は、ワイヤーハーネスを介して電気的に接続されている。また、後述する電流遮断器22が固定されている。電流遮断器22は、電池スタック11〜14の電流経路を遮断するために用いられる。電流遮断器22は、プラグと、プラグに差し込まれるグリップとで構成でき、グリップをプラグから抜くことにより、電流経路を遮断することができる。
【0021】
本実施例では、4つの電池スタック11〜14を用いて、2つの組電池20A,20B(それぞれ蓄電装置に相当する)を構成しており、組電池20A,20Bは、電気的に並列に接続されている。組電池20A,20Bを構成する単電池の数は、互いに等しく、組電池20A,20Bは、複数の電池スタックを含んでいる。
【0022】
組電池20Aは、2つの電池スタック11,12で構成されており、電池スタック11,12は電気的に直列に接続されている。組電池20Bは、2つの電池スタック13,14で構成されており、電池スタック13,14は電気的に直列に接続されている。
【0023】
本実施例では、2つの電池スタックで1つの組電池を構成しているが、これに限らず、1つの電池スタック又は3つ以上の電池スタックで1つの組電池を構成することも可能である。また、電池パックに含まれる組電池は、並列に接続される3つ以上の組電池を含むように構成してもよい。
【0024】
各組電池20A,20Bには、ヒューズ21が設けられている。電池スタック11および電池スタック12の間には、電流遮断器22が設けられており、電池スタック13および電池スタック14の間には、電流遮断器22が設けられている。2つの電流遮断器22は、一体的に構成することができ、電流遮断器22のグリップを引き抜くことにより、各組電池30,31の電流経路を同時に遮断することができる。
【0025】
組電池20Aの正極端子には、システムメインリレーSMR_B1が接続されており、組電池20Bの正極端子には、システムメインリレーSMR_B2が接続されている。組電池20Aの負極端子には、システムメインリレーSMR_G1が接続されており、組電池20Bの負極端子には、システムメインリレーSMR_G2が接続されている。システムメインリレーSMR_B1,B2,G1,G2は、コントローラ50によってオン/オフの制御がなされる。システムメインリレーSMR_B1等は、例えば、リレースイッチである。
【0026】
組電池20A,20Bおよび後述する昇圧コンバータ31を電気的に接続するためには、システムメインリレーSMR_B1,B2、SMR_G1,G2をオフからオンに切り替える。これにより、組電池20A,20Bの充放電を行うことができる。
【0027】
組電池20A,20Bには、電流センサ23、電圧監視IC24、温度センサ25がそれぞれ設けられている。本実施例の電池パックは、システムメインリレーSMR_B1,B2,G1,G2、ヒューズ21、電流遮断器22、電流センサ23、電圧監視IC24、温度センサ25等の電池に接続される部品を含み、各電池部品は、組電池20A,20Bそれぞれに設けられてコントローラ50によって制御・監視されている。
【0028】
電流センサ23、電圧監視IC24、温度センサ25は、組電池20A,20Bの状態を表す物理量を検出するセンサ部品である。システムメインリレーSMR_B1,G1及びシステムメインリレーSMR_B2,G2は、対応する組電池20A,20Bと昇圧コンバータ31との接続を許容し、オン状態とオフ状態とで切り替わるスイッチ部品である。ヒューズ21、電流遮断器22は、組電池20A,20Bそれぞれの電流経路を遮断する電流遮断部品である。
【0029】
これらのセンサ部品、スイッチ部品、電流遮断部品等は、充放電処理に関連して各組電池20A,20Bに接続される電池部品であり、後述する異常検出処理において、電池部品の異常が検出される。なお、電池部品には、組電池20A,20Bのセンサ部品から出力される検出結果を処理したり、電池部品を監視する電子制御IC(ECU)を含むことができる。
【0030】
組電池20Aの電流センサ23は、システムメインリレーSMR_B1と昇圧コンバータ31との間に設けられ、組電池20Aの充放電電流を検出する。組電池20Bの電流センサ23は、システムメインリレーSMR_B2と昇圧コンバータ31との間に設けられ、組電池20Bの充放電電流を検出する。各電流センサ23は、検出結果をコントローラ50に出力する。
【0031】
各電圧監視IC24は、組電池20A,20Bそれぞれの電圧を検出し、検出結果をコントローラ50に出力する。電圧監視IC24は、組電池20A(20B)の電圧、単電池の電圧、組電池20A(20B)を構成する複数の単電池を複数の任意のブロックに分けたときの電圧が含まれる。各ブロックには、2つ以上の単電池が含まれる。
【0032】
各温度センサ25は、組電池20A,20Bそれぞれの温度を検出し、検出結果をコントローラ50に出力する。温度センサ25は、組電池20A,20Bの1箇所又は複数箇所に設けることができる。
【0033】
並列に接続された組電池20A、20Bを含んで構成される電池パックは、昇圧コンバータ31と接続されている。昇圧コンバータ31は、電池パックの出力電圧を昇圧して、昇圧後の電力をインバータ32に出力する。また、昇圧コンバータ31は、インバータ32の出力電圧を降圧して、降圧後の電力を電池パックに出力する。昇圧コンバータ31は、例えば、チョッパ回路で構成することができる。昇圧コンバータ31は、コントローラ50からの制御信号を受けて動作する。また、電池パックと昇圧コンバータ31との間には、電池パックから昇圧コンバータ31に入力される電流又は昇圧コンバータ31から電池パックに出力される電流を検出する電流センサ26が設けられている。電流センサ26は、電池パックの電池部品とは個別に設けられている。
【0034】
インバータ32は、昇圧コンバータ31から出力された直流電力を交流電力に変換して、交流電力をモータ・ジェネレータ(MG)33に出力する。モータ・ジェネレータ33としては、例えば、三相交流モータを用いることができる。また、インバータ32は、モータ・ジェネレータ33から出力された交流電力を直流電力に変換して、直流電力を昇圧コンバータ31に出力する。
【0035】
モータ・ジェネレータ33は、インバータ32からの交流電力を受けて、車両を走行させるための運動エネルギを生成する。モータ・ジェネレータ33は、車輪と接続されており、モータ・ジェネレータ33によって生成された運動エネルギは、車輪に伝達される。車両を減速させたり、停止させたりするとき、モータ・ジェネレータ33は、車両の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギ(交流電力)に変換する。モータ・ジェネレータ33によって生成された交流電力は、インバータ33に出力される。これにより、回生電力を電池パック(組電池20A,20B)に蓄えることができる。
【0036】
なお、本実施例の電池システムでは、電池パックから電力を受けて動作する負荷としてモータ・ジェネレータ33を用いることができる。また、昇圧コンバータ31を用いているが、昇圧コンバータ31を省略することもできる。すなわち、電池パックをインバータ32と接続することができる。
【0037】
また、電池パックは、補機又は充電器60に接続される。補機とは、電池パックから出力される電力を消費して動作する機器(電力消費機器)であり、例えば、車両に搭載されたエアコン、AV機器、照明装置等である。
【0038】
コントローラ50は、車両全体で要求される車両要求出力を算出し、車両要求出力に基づいて電池パックの出力制御に伴って並列に接続された組電池20A,20Bの充放電制御を行う制御装置である。コントローラ50は、車両出力要求に基づいてモータ・ジェネレータ33に組電池20A,20Bの電力を出力する放電制御、車両が減速したり、停止したりする際の車両制動時における回生電力を組電池20A,20Bに充電する充電制御を行う。なお、ハイブリッド自動車の場合、コントローラ50は、車両全体で要求される車両要求出力を算出し、車両要求出力に基づいてエンジン及び/又は電池パックの出力制御を行う制御装置として構成される。
【0039】
SOC(State of Charge)は、組電池の満充電容量に対する現在充電容量の割合を示すものであり、コントローラ50は、組電池20A,20BそれぞれのSOCを管理するために、電圧監視IC24による検出結果を用いて組電池20A,20BのSOCを算出したり特定する処理を行い、充放電履歴やSOC情報を記憶して管理することができる。
【0040】
組電池20A,20BのSOCは、組電池20A,20BのOCV(Open Circuit Voltage)から特定することができる。SOC及びOCVは対応関係にあるため、この対応関係を予め求めておけば、OCVからSOCを特定することができる。組電池20A,20BのOCVは、電圧監視IC24によって検出された電圧(CCV:Closed Circuit Voltage)から算出することができる。組電池20A,20BのSOCと共に、組電池10を構成する電池スタック11〜14それぞれのSOCを算出することもできる。また、SOCは、電流センサ24によって検出される各組電池20A,20Bの充放電電流値を積算することで算出することができる。
【0041】
充電器60は、不図示の外部電源(例えば、商用電源)から供給された交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータや、外部電源又はAC/DCコンバータから出力される外部充電電流(直流電流)を昇圧して組電池20A,20Bに出力するDC/DCコンバータ等を含んで構成することができる。なお、充電器60は、組電池20A,20Bから供給される電力を、車両に搭載されない外部接続可能な機器に出力するように構成することもできる。
【0042】
次に、車両制御に伴う充放電制御について詳細に説明する。本実施例では、電池パックを構成する並列に接続された複数の組電池の一部に異常が発生した場合、異常が発生した組電池(異常電池)を電池パックの入出力制御から切り離す一方で、異常電池に並列に接続されている正常な組電池(正常電池)の電力を用いた車両制御を許容する。
【0043】
そして、本実施例では、組電池20A,20Bそれぞれで検出される異常を、電池部品の異常である場合と電池自体の異常である場合とで区分し、正常な組電池のみを用いた車両制御における充放電制御を、電池部品の異常である場合と電池自体の異常である場合とで異なるように制御する。
【0044】
図1に示すように、コントローラ50は、車両制御部51及び異常検出部52を含んで構成することができる。車両制御部51は、車両全体で要求される車両要求出力に対して並列に接続された組電池20A,20Bの充放電制御を行う。なお、コントローラ50は、各組電池20A,20BそれぞれのSOC情報や充電履歴、各種の算出結果及び算出に使用する情報などを記憶する記憶部を含んで構成することもできる。
【0045】
異常検出部52は、並列に接続された組電池20A、20Bで構成される電池パックの電池部品の異常(故障)を検出する。
【0046】
異常検出部52は、例えば、システムメインリレーSMR_B1,B2,G1,G2それぞれを監視し、車両制御部51から各システムメインリレーに出力される制御信号に対する応答有無や制御信号に対する動作を監視することで、システムメインリレーSMR_B1,B2,G1,G2の異常を検出することができる。具体的には、システムメインリレーをオフ状態からオン状態に切り替える制御信号を出力した後に、電流センサ23の検出値が0である場合や、システムメインリレーをオン状態からオフ状態に切り替える制御信号を出力した後に、電流センサ23によって電流値が検出される場合、異常検出部52は、システムメインリレーの異常を検出することができる。
【0047】
電流センサ23の異常は、例えば、並列接続される各組電池20A、20Bそれぞれの電流センサ23で検出される電流値と、電池パックと昇圧コンバータ31との間に設けられた電流センサ26によって検出される電流値とを用いて、各電流センサ23の異常を検出することができる。例えば、電流センサ26で検出された電池パックの出力電流Aに対し、各電流センサ23で検出される電流値A1,A2が所定の閾値を超える場合(電流センサ26で検出された電池パックの出力電流A/2と、電流値A1,A2それぞれを比較し、差分が所定の閾値を超えている場合)、組電池20A、20Bそれぞれの電流センサ23の異常を検出することができる。
【0048】
電圧監視IC24の異常は、例えば、組電池20Aの電圧監視IC24が電池スタック11の各単電池間の電圧を検出するとともに、電池スタック11の端子間電圧を検出し、直列接続された単電池それぞれの電圧値と、電池スタック11の端子間電圧とを比較することで、電圧監視IC24の異常を検出することができる。例えば、4つの単電池が直列に接続された電池スタックにおいて、ある1つの単電池の電圧検出値が異常値を示すものの、他の3つの単電池それぞれで検出された電圧に基づいて算出される単電池4つ分の電圧合計値と、電池スタックの端子間電圧との差分が所定値以下である場合、ある1つの単電池の電圧検出値に誤りがある、すなわち、電圧監視IC24が故障していると判断することができる。
【0049】
温度センサ25の異常は、例えば、電池パックに流入する冷却風の温度を電池パックに接続される吸気ダクト等に設けられた別途の温度センサ(不図示)によって検出しておき、組電池20A,20Bそれぞれに流入する冷却風の温度を検出し、両者を比較することで差分が所定値を超える場合に、温度センサ25の異常を検出することができる。また、温度センサ25を各組電池20A、20Bで複数個所設け、複数の温度センサ25間で他の温度センサ25で検出された温度と比較し、差分が所定値を超えるか否かを判別して各組電池20A,20Bの温度センサ25それぞれの異常を検出することができる。
【0050】
ヒューズ21の異常(断線)は、例えば、ヒューズ21に診断回路を接続してヒューズ21の抵抗値等を検出してヒューズ21の断線有無を監視することで検出することができる。電流遮断器22も同様であり、例えば、電流遮断器22に診断回路を接続して電流遮断器22の抵抗値を監視することで、接触不良等による抵抗異常を電流遮断器22の異常として検出することができる。また、電池部品を監視する電子制御IC(ECU)の異常は、所定の診断モードで予め決められた制御信号を電子制御ICに出力し、入力される応答信号内容、有無等を診断することで、電子制御ICの異常を検出することができる。
【0051】
異常検出部52は、電池部品の異常検出とともに、組電池20A,20Bの電池異常(状態異常)を検出することができる。例えば、組電池20A,20を構成する各電池スタック又は各単電池毎に異常を検出し、組電池20A,20Bそれぞれの電池異常を検出することができる。組電池で複数の電池スタックで構成されている場合は、いずれか1つの電池スタックに状態異常が検出された場合、状態異常が検出された電池スタックを含む組電池全体が状態異常であると検出することができる。
【0052】
具体的には、異常検出部52は、電流センサ23によって検出された電流値に対して電圧監視IC24によって検出された電圧値が所定値を超える場合や、電池スタック間又は単電池間の電圧差が所定値以上である場合に、組電池20A,20Bに電池異常が発生したと判別することができる。また、例えば、電池温度、抵抗、SOCそれぞれが、電池異常に伴う所定の挙動を示す場合に、組電池20A,20Bに電池異常があると検出することができる。
【0053】
車両制御部51は、車両のイグニッションスイッチがオフからオンに切り替わると、システムメインリレーSMR−B1,B2,G1,G2をオフからオンに切り替え、充放電制御が開始することに伴って異常検出部52に対して異常検出処理を開始するように制御信号を出力する。車両制御部51は、異常検出処理によって電池パックに異常が検出された場合、電池部品異常及び状態異常の各異常に応じた電池パックの充放電制御を遂行する。
【0054】
異常検出部52は、電池パックを構成する複数の組電池20A,20Bそれぞれに対して電池部品異常又は電池異常を検出する。車両制御部51は、検出された異常が電池部品異常であるか電池異常であるかに応じて、異常が検出されていない正常な電池に対する異なる充放電制御を行う。図2は、本実施例の並列接続された複数の組電池の一部に異常が発生した場合の放電制御の動作フローを示すフローチャートである。
【0055】
ステップS101において、異常検出部52は、各組電池20A,20Bそれぞれの電池部品異常検出を行う。異常検出部52は、電池部品異常が検出されなかった場合、ステップS106に進み、各組電池20A,20Bそれぞれに対する電池異常検出を行う。電池部品異常検出を経て電池異常が検出されない場合は、ステップS101に戻る。
【0056】
ステップS102において、組電池20A,20Bの一方に電池部品異常が検出された場合、車両制御部51は、電池部品異常が検出された組電池を電池パックの充放電制御から切り離す。例えば、組電池20Bに電池部品異常が検出された場合、車両制御部51は、電池部品の異常が検出された組電池20Bの充放電を禁止して電池部品の異常が検出された組電池20B以外の組電池20Aの電力を走行用モータに出力させることを許容するために、システムメインリレーSMR_B1,G1はオンのまま、システムメインリレーSMR_B2,G2をオンからオフに切り替える。
【0057】
車両制御部51は、組電池20Aからモータ・ジェネレータ33に供給される電力出力値を、所定の上限値に制限する出力制限を実施して正常電池である組電池20Aの充放電制御を行う(S103)。出力制限を伴う組電池20Aの充放電制御により、組電池20Aの電力を使用した車両走行距離を、出力制限を実施しない場合に比べて長くすることができ、電力を使用した車両走行可能距離に対して組電池20Aの電力を効率よく使用することができる。
【0058】
また、車両制御部51は、組電池20Bの異常検出後の組電池20Aに対する充放電制御は、回生電力の充電を行わずに負荷への電力供給(放電)のみの出力制御を行うように、電池システム全体の充電を禁止した充放電制御を行う。後述する組電池の状態異常が検出された場合も同様である。電池部品異常又は状態異常が発生した状態の電池システムからモータ・ジェネレータ33へ電力が供給されて車両が走行の継続する機会を低減させることができる。つまり、異常が検出された時点で組電池20Aに蓄えられている電力を効率よく使用して電池システムの電力を使用した車両走行可能距離をできるだけ長くするように出力制限を実施しつつ、充電を禁止することで電池部品異常又は状態異常が発生した状態で電池システムからモータ・ジェネレータ33に電力が供給されて車両が走行する機会を無用に増加させないように制御することができる。
【0059】
車両制御部51は、ステップS104において、電池部品に異常がある組電池20Bの充電容量に基づいて、組電池20Aの充放電制御を遂行する。車両制御部51は、組電池の充電容量に対するSOCを用い、電池部品の異常が検出された組電池20BのSOCと正常な組電池20AのSOCのSOC差が所定値以下となるまで、組電池20Aを用いた放電制御を遂行する。つまり、並列に接続された組電池20A,20Bにおいて異常が検出された組電池20BのSOCと正常な組電池20AのSOCとの差分が所定値以下となるまで、組電池20Aの放電を許可した車両制御を遂行する。
【0060】
本実施例では、電池部品異常の場合、後述する電池異常のように異常が検出された組電池自体を交換用組電池と交換するのではなく、電池部品を修理、交換することを前提として、組電池20A,20B間のSOC差が所定値以下となるまで、組電池20Aを用いた放電制御を遂行している。このため、電池部品を交換する際の、並列接続されている組電池20A、20B間で電圧差が所定値まで低減しているので、電圧差によって組電池20A,20B間に流れる循環電流の抑制することができ、電池部品の修理、交換後の電池部品及び組電池20A,20Bを適切に保護することができる。
【0061】
ステップS104において異常が検出された組電池20BのSOCと正常な組電池20AのSOCとの差分が所定値以下となった場合、車両制御部51は、ステップS105に進み、組電池20Aの充放電制御を禁止するために、システムメインリレーSMR_B1,G1をオンからオフに切り替えて、組電池20Aの充放電制御を終了させる。つまり、車両制御部51は、電池システムの充放電制御を終了させるように制御する。電池パックに異常が検出された後に電池システムの充放電制御を終了させる場合、コントローラ50は、異常がない正常状態での充放電制御の終了ではないので、例えば、異常終了を示すフラグ等を立てて正常状態での充放電制御の終了と区別するようにすることができる。
【0062】
なお、車両走行中に充放電制御を終了させるにあたり、車両制御部51は、異常が検出された組電池20BのSOCと正常な組電池20AのSOCとの差分が所定値以下となる前の所定の時点で、予め電池システムの充放電制御を終了させることをユーザに知らせる制御(例えば、充放電制御を終了する旨のランプの点灯など)を行い、その後、電池システムの充放電制御を終了させるように制御することができる。また、異常が検出された組電池20BのSOCと正常な組電池20AのSOCとの差分が所定値以下となった時点から所定時間経過するまで組電池20Aの充放電制御を禁止せずに、その後に電池システムの充放電制御を終了するようにしてもよい。
【0063】
車両制御部51は、ステップS104の判別処理において、電池部品の異常が検出された時点の直前に電流センサ23や電圧監視IC24で検出される電流値、電圧値を用いて、電池部品の異常が検出された組電池20BのSOCを算出したり、電池部品の異常が検出された後に、電流センサ23や電圧監視IC24で検出した電流値、電圧値を用いて電池部品の異常が検出された組電池20BのSOCを算出することができる。車両制御部51は、電池部品の異常が検出された後の組電池20AのSOCを電流センサ23や電圧監視IC24で検出された検出値を用いて算出し、電池部品の異常が検出された際(組電池20Bの充放電制御が切り離された際)の組電池20BのSOCと比較し、組電池20A,20B間のSOC差を求めることができる。
【0064】
なお、車両制御部51は、組電池20A,20B間のSOC差が所定値以下となった場合以外にも、組電池20A,20BそれぞれのOCVを用いてステップS104の判別処理を行うことができる。
【0065】
上述したようにSOCとOCVとは対応関係にあるので、組電池20A,20B間それぞれのOCVを検出、算出して、OCV差が所定値以下となるまで、組電池20Aの放電を許可した車両制御を遂行することができる。車両制御部51は、電池異常の異常が検出された後の充放電制御から切り離された状態において電圧監視IC24で組電池20Bの電圧値を検出し、組電池20BのOCVを取得することができる。組電池20AのOCVは、上述したように電圧監視IC24によって検出された電圧値に基づいて、OCVを算出して取得することができる。OCVとSOCの関係は、組電池20A,20Bの容量劣化等に伴って変化するので、OCV差が所定値以下となるまで組電池20Aの放電を許可した車両制御を遂行することで、容量劣化等の影響を抑制して精度よく出力制限を行うことができる。
【0066】
また、車両制御部51は、電流センサ23で検出した組電池20Aの充放電電流を積算して、電流積算値から組電池20Aの放電可能容量以下となるまで、組電池20Aの放電を許可した車両制御を遂行することができる。
【0067】
図3は、組電池20A(正常電池)のOCVの電圧挙動の一例を示す図である。図3に示すように、電池部品の異常が発生した時点t1から電圧監視IC24によって検出された組電池20Aの電圧(CCV)の挙動を点線で示している。また、実線で示す組電池20Aの電圧の挙動は、電圧監視IC24によって検出された組電池20Aの電圧(CCV)から算出されるOCVである。
【0068】
電池部品の異常が検出された組電池20Bが充放電負荷と切り離されて充電・放電ができない状態となっている組電池20Bの電圧値は、OCV(Vn)として取得することができる。一方で、組電池20A,20B間のSOC差が所定値以下となるまでに許容される組電池20Aと組電池20Bとの間の許容電圧差(Va)を予め決めておくことで、組電池20AのOCV下限値(Vo=Vn−Va)を算出することができる。したがって、図4に示す予め作成された組電池のSOCとOCVとの関係マップに基づいて、組電池20BのVnに対応するSOC_nと組電池20AのVoに対応するSOC_oとを求めることができ、式1に示すように、組電池20Aの満充電容量[Ah]からSOC_nとSOC_oとの差分に対応する放電可能容量[Ah]を算出することができる。
(式1)
放電可能容量=満充電容量×(SOC_n−SOC_o)/100
【0069】
組電池20Aの満充電容量は、例えば、外部電源を用いた外部充電時の外部充電電流積算値から予め算出することができる。また、組電池20Aの製造時の初期状態における満充電容量からの現時点までの劣化容量を加味して満充電容量を算出することができる。
【0070】
車両制御部51は、電池部品の異常が検出された時点t1から組電池20A,20B間のSOC差が所定値以下となるまでに許容される組電池20Aの放電可能容量を算出し、組電池20Aの電流センサ23で検出される電流積算値が、放電可能容量以下となるまで組電池20Aの放電を許可した車両制御を遂行することができる。
【0071】
電池部品の異常が検出された時点の組電池20A,20BそれぞれのOCVは、車両制御における充放電に応じて異なるので、電池部品の異常が検出された時点での組電池20BのOCVに対する組電池20AのOCV下限値から、組電池20A,20B間のSOC差が所定値以下となるまでに許容される組電池20Aの放電可能容量を算出し、電流センサ23で検出される組電池20Aの電流積算値と比較することで、組電池20A,20Bの容量劣化や温度等の影響を抑制して精度よく出力制限を行うことができる。
【0072】
図2の説明に戻り、車両制御部51は、ステップS102において組電池20A,20Bそれぞれに電池部品異常が検出されなかった場合、続いて各組電池20A,20Bに電池異常検出を行う(S106)。
【0073】
ステップ106において、車両制御部51は、異常検出部52によって各組電池20A,20Bに電池異常が検出されていない場合、ステップS101に戻る。一方、異常検出部52によって組電池20A,20Bの一部に電池異常が検出された場合、車両制御部51は、電池部品に異常が検出された場合と同様に、電池異常が検出された組電池を電池パックの充放電制御から切り離す。
【0074】
車両制御部51は、電池部品に異常が検出された場合と異なり、電池異常が検出された組電池20A以外の組電池20Bからモータ・ジェネレータ33に供給される電力出力値を、所定の上限値に制限せずに、正常電池である組電池20Bの充放電制御を行う(S107)。
【0075】
車両制御部51は、ステップS108において、組電池20BのSOCが所定値以下となるまで、組電池20Bを用いた放電制御を遂行する。つまり、電池部品の異常が検出された場合は、電池部品の異常が検出された他方の組電池との相対的なSOC差に基づいて正常な組電池の充放電制御が行われるが、電池異常が検出された場合、電池異常である組電池自体を交換用組電池と交換することを前提に、並列に接続された組電池20A,20Bにおいて正常な組電池20BのSOCが所定値以下となるまで、組電池20Bの放電を許可した車両制御を遂行する。
【0076】
このように車両制御部51は、組電池20A自体の交換を前提とする状態異常が検出された場合は、状態異常が検出された組電池20A以外の組電池20Bの充電容量が所定値以下となるまで、組電池20Bの電力をモータ・ジェネレータ33に出力させるように制御することで、正常な組電池20Bに蓄えられた電力を効率よく使用した車両制御を行うことができる。
【0077】
ステップS108において正常な組電池20BのSOCが所定値以下となった場合、車両制御部51は、ステップS105に進み、組電池20Bの充放電を禁止するために、システムメインリレーSMR_B2,G2をオンからオフに切り替えて、組電池20Bの充放電制御を終了させ、電池システムの充放電制御を終了させるように制御する。
【0078】
なお、ステップS108の判別処理においても、車両制御部51は、組電池20BのSOCが所定値以下となった場合以外にも、組電池20BのOCVを用いたり、電流センサ23で検出した組電池20Bの充放電電流を積算した電流積算値を用いて、組電池20Bの放電を許可した車両制御を遂行することができる。
【0079】
また、組電池が複数の電池スタックで構成されている場合は、いずれか1つの電池スタックに状態異常が検出された場合、状態異常が検出された電池スタックを含む組電池全体が状態異常であると検出することができる。このため、組電池の交換には、組電池に含まれる複数の電池スタックのうち、状態異常が検出された1又は複数の電池スタックを交換することが含まれる。
【0080】
このように本実施例は、電池に発生する異常を、電池自体を交換することを前提とする電池異常と、電池自体を交換する必要がない電池部品の異常とに区別し、並列接続された複数の組電池の一部に電池部品の異常が検出された場合でも、電池部品に異常がある組電池以外の正常な組電池の充放電を許容しつつ、電池部品交換後に並列接続された組電池間で循環電流が流れることを抑制することができ、組電池自体を交換する場合に比べて電池部品の交換費用を低減させることができる。
【0081】
すなわち、本実施例の電池システムのように、異常電池を切り離して正常電池の充放電を許容した車両走行を行う場合、異常電池を交換用パックと交換する際に、並列接続される電池間で電圧差があると循環電流が発生し、循環電流によってハイレート劣化やリチウム金属の析出等などにより容量劣化が生じたり、ヒューズ切れ等のおそれがあり、電池又は電池部品を適切に保護することが難しい。
【0082】
このため、異常電池を健全な交換用電池に交換する際に、電圧差を解消する充放電作業を行い、過大な循環電流が流れることを抑制する交換作業を実施する必要があるが、本実施例では、電池に発生する異常を電池自体を交換することを前提とする電池異常と、電池自体を交換する必要がない電池部品の異常とに区別し、電池異常のように電池自体を交換する場合に比べて電池自体には異常が見られずに電池部品に異常がある場合、電池部品交換後に並列接続された組電池間で循環電流が流れることを抑制し、組電池自体を交換する場合に比べて電池部品の交換費用を低減させることができる。
【0083】
(実施例2)
図5は、実施例2を示す図である。本実施例は、電池異常が検出された組電池を交換用組電池に交換した後に、並列接続される交換用組電池を含む各組電池間の電圧を合わせたから、電池システムを使用可能にする。
【0084】
図5は、本実施例の組電池交換方法の処理フローを示す図である。例えば、上記実施例1において並列接続される組電池20A,20Bの一方に電池異常がある場合、電池異常が検出された組電池の交換メンテナンスを行う必要がある。
【0085】
本実施例のコントローラ50は、メンテナンスモードを有することができ、所定の制御信号に基づいてメンテナンスモードを遂行する。コントローラ50は、メンテナンスモードにおいて交換対象の組電池(又は組電池を構成する電池スタック11等)を交換する電池交換モードを実行し、交換後の電気的に並列に接続された組電池間のSOC均等化制御を遂行する。
【0086】
組電池を交換する作業者は、車両に設けられた所定の接続アダプタを介して情報処理装置をコントローラ50に接続する。作業者は、情報処理装置からメンテナンスモード指示信号(入力制御信号)を入力する。メンテナンス指示信号を受信したコントローラ50は、メンテナンスモード(電池交換モード)に移行する(S301)。このとき、システムメインリレーSMR_B1,G1,B2,G2は、オフである。
【0087】
コントローラ50は、並列接続された組電池20A,20Bのうち電池異常が検出された組電池を識別する。コントローラ50は電池異常が検出された組電池に対し、電池異常が検出された際に、不図示の記憶部に電池異常が検出された組電池を識別する情報を予め記憶しておくことができる。つまり。コントローラ50は、電池異常が検出された組電池を識別する情報を用いて、正常な組電池、例えば、組電池20Bを識別することができる。
【0088】
コントローラ50は、組電池20Bを電池異常が検出されていない正常な組電池として識別すると、組電池20BのSOCを不図示の記憶部から抽出し、組電池20Bが所定のSOCであるか否かを判別する(S302)。所定のSOCは、交換用組電池のSOCを用いることができる。
【0089】
コントローラ50は、組電池20Bが所定のSOCでないと判別された場合、組電池20Bを所定のSOCまで充電させるために、システムメインリレーSMR_B1,G1をオフのまま(電池異常が検出された組電池20Aの接続を禁止したまま)、システムメインリレーSMR_B2,G2をオフからオンに切り替える。コントローラ50は、外部電源から充電器60を介して組電池20Bに電気エネルギを充電させる充電制御を遂行する(S303)。外部電源と車両は、車両の搭載された充電アダプタに接続可能な充電ケーブル等を用いて接続することができる。
【0090】
ステップS303において、組電池を交換する作業者は、コントローラ50に接続された情報処理装置から充電許可信号を入力し、コントローラ50を充電許容モードに復帰させるモード切り替えを行うことができる。組電池を交換する電池異常が発生した場合、コントローラ50は、電池システムに対する充放電を禁止する充放電モード(異常終了モード)となっている場合は、充電許可信号によって充電許可モードに移行させる。
【0091】
コントローラ50は、ステップS303の外部電源からの充電制御において、充電中の組電池20BのSOCを監視し、例えば、所定のSOCまで充電された場合、組電池20Bへの充電を停止し、システムメインリレーSMR_B2,G2をオンからオフに切り替える。なお、コントローラ50は、充電中の組電池20Bの電圧を電圧監視IC24で検出することで、所定のSOCまで充電されたか否か、つまり、所定のSOCに対応する基準電圧に到達したか否かを判別することができる。このとき、外部電源を介して充電器60から出力される充電電流量に応じて異なる所定のSOCに対応する基準電圧を用いて、組電池20Bが所定のSOCまで充電されたか否かを判別するように構成することができる。
【0092】
コントローラ50は、交換作業を行う作業者に、組電池20Bが所定のSOCまで充電された旨、例えば、交換準備が完了した旨の表示等を出力する制御を行うことができる。作業者は、交換対象である電池異常が検出された組電池20Aと交換用組電池を交換する(S304)。
【0093】
コントローラ50は、交換用組電池に交換されたか否かを判別する(S305)。作業者は、交換作業が完了した後に情報処理装置からコントローラ50に交換完了を示す制御信号を入力し、コントローラ50は、この入力信号に基づいて交換用組電池が交換されたか否かを判別することができる。
【0094】
交換用組電池に交換された後、コントローラ50は、正常な組電池20Bと交換用組電池との間のSOCにSOC差(電圧差)生じているか否かを判別する(S306)。正常な組電池20Bと交換用組電池との間にSOC差が生じていない場合、ステップS307に進み、コントローラ50は、組電池交換後の電池システムの充放電制御を復帰させ(電池異常が検出された後の電池システムの異常終了モードを、充放電制御が許容される正常モードに移行させ)、電池システムを使用可能にする。
【0095】
一方、ステップS306において、コントローラ50は、正常な組電池20Bと交換用組電池との間にSOC差が生じていると判別された場合、ステップS308に進み、交換後の正常な組電池20Bと交換用組電池との間のSOCを均等化する処理を行う。
【0096】
ステップS308において、コントローラ50は、正常な組電池20BのSOCよりも交換用組電池のSOCが高いと判別される場合には、ステップS309に進み、システムメインリレーSMR_B2,G2をオフからオンに切り替えて、正常な組電池20Bを充電する。一方、正常な組電池20BのSOCよりも交換用組電池のSOCが低いと判別される場合には、ステップS310に進み、システムメインリレーSMR_B2,G2をオフからオンに切り替えて、正常な組電池20Bの電力を放電させる。コントローラ50は、充電器60を介して外部接続可能な電力消費機器や車両に搭載されたエアコン、AV機器、照明装置等に組電池20Bの電力を出力することで、正常な組電池20Bを放電させることができる。
【0097】
ステップS309、S310での正常な組電池20Bの充放電後、コントローラ50は、ステップS306に戻り、交換用組電池に交換された後の正常な組電池20Bと交換用組電池との間のSOC差(電圧差)が解消されているか否かを判別し、正常な組電池20Bと交換用組電池との間のSOC差が解消されている場合は、ステップS307に進む。
【0098】
交換後の並列接続された組電池間にSOC差が生じていても(例えば、自然放電等)、交換用組電池に交換された後の正常な組電池20Bと交換用組電池との間のSOCを均等化してから電池システムを充放電可能な正常モードに復帰させるので、電池システムの好適な状態で使用させることができる。
【符号の説明】
【0099】
11〜14 電池スタック
20A,20B 組電池(蓄電装置)
21 ヒューズ
22 電流遮断器
23,26 電流センサ
24 電圧監視IC
25 温度センサ
31 昇圧コンバータ
32 インバータ
33 モータ・ジェネレータ
50 コントローラ
51 車両制御部
52 異常検出部
60 充電器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電装置が並列接続され、走行用モータに電力を供給する蓄電システムを搭載した車両の制御装置であって、
前記蓄電システムの充放電制御を行う制御部と、
前記蓄電装置それぞれに設けられた充放電処理に関連する部品の異常を検出する異常検出部と、を含み、
前記制御部は、複数の前記蓄電装置の一部に前記部品の異常が検出された場合、前記部品の異常が検出された蓄電装置の充放電を禁止して前記部品の異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置の電力を前記走行用モータに出力させるように制御するとともに、前記部品の異常が検出された蓄電装置と前記部品の異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置との充電容量差が所定値以下となった場合に、前記蓄電システムから前記走行用モータへの電力供給を終了させるように制御することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記異常検出部は、前記蓄電装置それぞれの状態異常を検出し、
前記制御部は、複数の前記蓄電装置の一部に前記状態異常が検出された場合、前記状態異常が検出された蓄電装置の充放電を禁止して前記状態異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置の電力を前記走行用モータに出力させるように制御するとともに、前記状態異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置の充電容量が所定値以下となった場合に、前記蓄電システムから前記走行用モータへの電力供給を終了させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記部品の異常又は前記状態異常が検出された場合、前記蓄電システムに対する充電を禁止した充放電制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記部品の異常が検出された場合、前記部品の異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置から前記走行用モータへの電力出力値を所定の上限値に制限することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の制御装置。
【請求項5】
複数の蓄電装置が並列接続され、車両の走行用モータに電力を供給する蓄電システムを搭載する車両の制御方法であって、
前記蓄電装置それぞれに設けられる充放電処理に関連する部品の異常を検出するステップと、
複数の前記蓄電装置の一部に前記部品の異常が検出された場合に、前記部品の異常が検出された蓄電装置の充放電を禁止して前記部品の異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置の電力を前記走行用モータに出力させるように制御するステップと、
前記部品の異常が検出された蓄電装置と前記部品の異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置との充電容量差が所定値以下となった場合に、前記蓄電システムから前記走行用モータへの電力供給を終了させるように制御するステップと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
前記蓄電装置の状態異常を検出するステップと、
複数の前記蓄電装置の一部に前記状態異常が検出された場合、前記状態異常が検出された蓄電装置の充放電を禁止して前記状態異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置の電力を前記走行用モータに出力させるように制御するステップと、
前記状態異常が検出された蓄電装置以外の蓄電装置の充電容量が所定値以下となった場合に、前記蓄電システムから前記走行用モータへの電力供給を終了させるように制御するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−99167(P2013−99167A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241357(P2011−241357)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】