説明

蓄電デバイス

【課題】 動作電圧をより高くすることができ、エネルギー密度がより高い蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】 正極1及び負極2は帯状をなしており、セパレータ9,9によって正極1を挟持して、この正極1に負極2を対向配置させ、この状態で正極1、負極2及びセパレータ9,9を長円状に巻回してある。正極1は、導電性帯材で形成した集電部材の両面に、正極用活物質を含む正極層を設けて構成してあり、負極2も、同じ集電部材の両面に、負極用活物質を含む負極層を設けて構成してある。そして、正極用活物質として黒鉛を用い、負極用活物質として電界液に含まれる陽イオンを吸蔵し得る金属酸化物を用いてある。また、非水溶媒にLiPF6を溶解させてなる電解液を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電を繰り返すことができる蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動モータを搭載した自動車の動力補助電源として、電気二重層キャパシタが注目されている。電気二重層キャパシタは、電解液中に距離を隔てて配置した正極及び負極の間にセパレータを介装させて構成されており、電気二重層キャパシタの両電極に電圧を印加すると、正極の表面及び負極の表面に、電解液中の陰イオン及び陽イオンがそれぞれ引き寄せられるため、各電極と電解液との界面にそれぞれ生成される電荷層によって電気二重層が形成され、これによって静電的に電気を蓄える。
【0003】
かかる電気二重層キャパシタは、市販の二次電池のように充放電の際に化学反応を伴わないため、二次電池に比べて、エネルギー効率が高い一方、反応熱が少なく、また、負荷応答性が速く、長寿命である等の長所を有している。しかし、当該電気二重層キャパシタは、二次電池に比べてエネルギー密度(電気容量)が低いという短所があった。
【0004】
そのため、従来の電気二重層キャパシタにあっては、比表面積が大きい活性炭を用いて形成した電極を搭載することによって、エネルギー密度を向上させていた。また、電極材料として、賦活処理により直径が2nm以下のミクロ細孔又は直径が2nm〜50nmのメソ細孔を複数形成して比表面積を更に大きくなした活性炭粒子又は活性炭繊維も開発されている。
【0005】
一方、後記する特許文献1にあっては、正極が活性炭を用いて構成してあり、また負極がLi4Ti512を用いて構成してあり、リチウムイオンを含む電解液を充填してなる蓄電デバイスが開示されている。
かかる蓄電デバイスにあっては、前述した電気二重層の形成に加えて、負極がリチウムイオンを吸蔵することができるため、エネルギー密度が更に向上する。
【特許文献1】特表2002−542582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の蓄電デバイスにあっては、正極の比表面積を大きくなしてあるため、蓄電デバイスに印加する電圧を3V程度以上にした場合、反応性に富む正極による電解液の電気分解を招来して電解液が劣化するので、動作電圧を高くすることができないという問題があった。
一方、エネルギー密度が更に高い蓄電デバイスの開発も要求されている。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、動作電圧をより高くすることができ、またエネルギー密度がより高い蓄電デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る蓄電デバイスは、正極用活物質を含有する正極及び負極用活物質を含有する負極と、陰イオン及び陽イオンを含む電解質とを備え、前記陰イオン及び陽イオンの移動によって放充電を行う蓄電デバイスにおいて、前記正極用活物質は黒鉛であり、前記負極用活物質は陽イオンを吸蔵し得る金属酸化物であることを特徴とする。
【0009】
本発明の蓄電デバイスにあっては、正極及び負極において、電解質中の陰イオン及び陽イオンが移動することによって放充電を行う場合、正極を構成する正極用活物質は黒鉛であり、負極を構成する負極用活物質は陽イオンを吸蔵し得る金属酸化物である。
【0010】
このように正極用活物質として、活性炭に比べて反応性に乏しい黒鉛を用いるため、蓄電デバイスに印加する電圧を3V程度以上にした場合であっても、前記電解質が正極によって劣化することが回避される。従って、蓄電デバイスの動作電圧をより高くすることができる。なお、かかる劣化の回避は、前記電解質を所要の溶媒に溶解させた電界液にあっては、電解質に加えて当該溶媒についても行われ、前記電界質を所要の高分子ポリマーに包含させたゲル状の電解質にあっては、電解質に加えて当該高分子ポリマーについても行われる。
更に、3V程度以上という、活性炭を用いた場合より高い電圧まで充電することができるため、蓄電デバイスのエネルギー密度が向上する。
【0011】
一方、負極用活物質として、電界質に含まれる陽イオンを吸蔵し得る金属酸化物を用いる。これによって、黒鉛を正極用活物質としてを含有する正極に電界質に含まれる陰イオンを吸蔵させることができる。
【0012】
このように、正極に陰イオンを吸蔵させることができるため、活性炭に比べて比表面積が小さい黒鉛を正極用活物質として用いた場合であっても、蓄電デバイスのエネルギー密度を向上させることができる。
【0013】
(2)本発明に係る蓄電デバイスは必要に応じて、前記負極用活物質はニオブ酸化物又は/及びリチウム含有ニオブ酸化物であり、前記陽イオンはリチウムイオンであることを特徴とする。
【0014】
本発明の蓄電デバイスにあっては、陽イオンとしてリチウムイオンを含有しているため、高いエネルギー密度を実現することができる。
【0015】
一方、負極用活物質としてニオブ酸化物又は/及びリチウム含有ニオブ酸化物を用いた場合、リチウムイオンを含む電解質を用いた場合であっても、負極に金属リチウムが析出することが防止されるため、蓄電デバイスの安全性が高い。
【0016】
また、ニオブ酸化物又は/及びリチウム含有ニオブ酸化物にあっては、リチウムイオンの吸蔵・放出に際して膨張収縮が非常に小さいため、吸蔵・放出を複数サイクル実施した場合であっても、リチウムイオンの吸蔵・放出特性が安定しており、従って放充電を複数回繰り返した場合であっても蓄電機能が低下し難く、蓄電デバイスの寿命が長い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(本発明の実施形態)
図1は、本発明に係る蓄電デバイスの一例を示す模式的縦断面図であり、図中、21は一端が閉塞された筒状の筐体である。筐体21の他端開口は蓋部材22で封止されるようになっており、筐体21の内面及び蓋部材22の内面は絶縁処理されている。
【0018】
この筐体21内に正極1及び負極2が挿入されている。図1に示した蓄電デバイスにあっては、これら正極1及び負極2は帯状をなしており、絶縁材を帯状に成形してなるセパレータ9,9によって例えば正極1を挟持して、この正極1に負極2を対向配置させ、この状態で正極1、負極2及びセパレータ9,9を、筐体21の形状に応じて側面視が長円状に巻回してある。
【0019】
一方、前述した蓋部材22には、一対の端子23,24が設けてある。これら端子23,24にはリード線31,32の一端がそれぞれ固着してあり、両リード線31,32の他端は、正極1及び負極2の一端縁部に各別に接続してある。
【0020】
そして、前述した如く巻回した正極1、負極2及びセパレータ9,9を筐体21内に挿入し、また筐体21内に電解液を注入した後、蓋部材22で筐体21の開口を封止して蓄電デバイスが形成されている。
【0021】
ところで、前述した正極1は、導電性帯材で形成した集電部材の両面に、正極用活物質を含む正極層を設けて構成してあり、同様に負極2も、同じ集電部材の両面に、負極用活物質を含む負極層を設けて構成してある。
【0022】
本発明にあっては、この正極用活物質として黒鉛を用いている。
ここで、黒鉛とは、X線回折による(002)面のピーク位置から求めたd(002)が0.335〜0.344nmの範囲内にあるものをいう。なお、かかる黒鉛の結晶性は特に限定されない。
【0023】
このように正極用活物質として、活性炭に比べて反応性に乏しい黒鉛を用いるため、蓄電デバイスに印加する電圧を3V程度以上にした場合であっても、正極による電解液の電気分解が生じず、電解液の劣化が回避される。
更に、3V程度以上という、活性炭を用いた場合より高い電圧まで充電することができるため、蓄電デバイスのエネルギー密度が向上する。
【0024】
一方、黒鉛の比表面積は活性炭の比表面積に比べて非常に小さいため、黒鉛の単位質量当たりの陰イオンの吸着量も活性炭のそれに比べて非常に少なく、したがって黒鉛を用いた蓄電デバイスのエネルギー密度は活性炭を用いた蓄電デバイスのエネルギー密度を超えることはできないものと考えられてきた。
【0025】
しかし、負極において陽イオンが吸蔵(インターカーレーション)される場合、正極の黒鉛において、陰イオンの吸着に加えて陰イオンの吸蔵も生じることが判明した。かかる吸蔵現象の発生は、後述する実施例において、充電の際の正電極の電圧が所定電圧で略一定になることより理解できる。
これらのことより、本発明に係る蓄電デバイスにあっては、正極に活性炭を用いた場合に比べてエネルギー密度を格段に向上させることができた。
【0026】
ところで、前述した電解液の溶媒としては、非水溶媒が用いられており、具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、メチルホルムアミド、メチルアセテート、ジエチルカーボネート、ジメチルエーテル(DME)、プロピレンカーボネート(PC)、γ―ブチルラクトン(GBL)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)等の炭酸エステル類、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)、又は分子の一部にフッ素を含有する前記各非水溶媒からなる群から選ばれる1又は複数の非水溶媒を用いることができる。
【0027】
また、電解質としての陰イオンには、4フッ化ホウ酸イオン(BF4-)、6フッ化リン酸イオン(PF6-)、過塩素酸イオン(ClO4-)、6フッ化ヒ素イオン(AsF6-)、6フッ化アンチモンイオン(SbF6-)、ペルフルオロメチルスホニルイオン(CF3SO2-)、ペルスルホロメチルスルホナイトイオン(CF3SO3-)からなる群から選ばれる1又は複数の陰イオンを用いることができる。
【0028】
一方、電解質としての陽イオンには、対称又は非対象の四級アンモニウムイオン、エチルメチルイミダゾリウム又はスピロ−(1,1´)−ビピロリジニウム等のイミダゾリウム誘導体イオン、リチウムイオンからなる群から選ばれる1又は複数の陽イオンを用いることができる。
【0029】
以上のような各組成の電解液にあって、非水溶媒にLiPF6を溶解させてなる電解液が好適である。かかる電解液にあっては、陽イオンとしてリチウムイオンを含有しているため、高いエネルギー密度を実現することができるのに加え、陰イオンとして6フッ化リン酸イオンを含有するため、水分と反応し、液中の水分を除去することができるという優れた作用を奏する。
【0030】
なお、本実施の形態では、筐体21内に電界液を注入した蓄電デバイスについて説明したが、本発明はこれに限らず、電界液に代えて、固体電解質、又は高分子ポリマー内に前記陰イオン及び陽イオンを含む電解液を包含させてなるゲル状の電解質等を用いることもできる。なお、固体電解質を用いる場合、セパレータ9,9を配設しない構成にすることもできる。
【0031】
一方、前述した負極用活物質としては、前述した電界液に含まれる陽イオンを吸蔵し得る金属酸化物を用いる。これによって、前述した如く黒鉛を正極用活物質としてを含有する正極に電界液に含まれる陰イオンを吸蔵させることができる。
かかる金属酸化物としては、酸化ニオブといったニオブ酸化物、又はリチウム含有酸化ニオブといったリチウム含有ニオブ酸化物が好適である。
【0032】
すなわち、負極用活物質としてニオブ酸化物又はリチウム含有ニオブ酸化物を用いた場合、前述したリチウムイオンを含む電解質を用いた場合であっても、負極に金属リチウムが析出することが防止されるため、蓄電デバイスの安全性が高い。
【0033】
これは、ニオブ酸化物又はリチウム含有ニオブ酸化物にリチウムイオンが吸蔵される際の電圧が略1Vである一方、リチウムイオンが金属リチウムとして析出する電位が0Vであり、リチウムイオンが吸蔵される間に析出電位である0V以下になることが無いからである。
【0034】
また、ニオブ酸化物又はリチウム含有ニオブ酸化物にあっては、リチウムイオンの吸蔵・放出に際して膨張収縮が非常に小さいため、吸蔵・放出を複数サイクル実施した場合であっても、リチウムイオンの吸蔵・放出特性が安定しており、従って放充電を複数回繰り返した場合であっても蓄電機能が低下し難く、蓄電デバイスの寿命が長い。
【0035】
ここで、ニオブ酸化物の結晶構造は、斜方晶系又は単斜晶系等の結晶系に拘らず用いることができ、また非晶質性のものも用いることができる。また、ニオブ酸化物の粒子形状も、粒状、繊維状等、種々の形状のものを用いることができる。
【0036】
また、ニオブ酸化物及びリチウム含有酸化ニオブの粒子径についても特に制限されない。
なお、ニオブ酸化物又はリチウム含有ニオブ酸化物に他の金属を、本発明の効果を阻害しない範囲でドープした負極用活物質を用いることもできる。
【0037】
このように本発明に係る蓄電デバイスにあっては、前述した如く電界液との反応性がより低い黒鉛を含有する正極を備えるため、作動電圧をより高くすることができ、また、負極が電界液中の陽イオンを吸蔵するのに加え、正極が電界液中の陰イオンを吸蔵するため、蓄電デバイスのエネルギー密度を向上させることができる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明に係る蓄電デバイスと他の蓄電デバイスとの比較試験を行った結果について説明する。
図2は、比較試験に用いた蓄電デバイスの基本構成を示す模式的分解斜視図であり、図中、56はカップ状の底部カバーである。
【0039】
底部カバー56の周壁天井面部には複数(図2にあっては3本)の支持柱57,57,57が相互に適宜の距離を隔てて立設してあり、各支持柱57,57,57によって、適宜の高さ寸法を有する環状のセル本体52及び適宜の重さを有する蓋状の上部カバー42を支持するようになっている。
【0040】
一方、セル本体52及び上部カバー42の周縁近傍の部分にはそれぞれ、支持柱57,57,57を挿通させる挿通孔52a,52a,52a、42a,42a,42aが貫通してある。そして、セル本体52及び上部カバー42はこの順に、対応する挿通孔52a,52a,52a、42a,42a,42a内に前記支持柱57,57,57を挿通させて底部カバー56上に載置してあり、これによって柱状の筐体が構成されるようになっている。
【0041】
また、底部カバー56とセル本体52との間、及びセル本体52と上部カバー42との間にはそれぞれOリング53,50が介装させてあり、セル本体52内に注入される電解液の漏出を防止している。
【0042】
セル本体52内には、円形シート状の参照電極55、板材に複数の孔を開設してメッシュ状になした押さえ板54、長方形厚板の中央に開口を設けてなる保持ガイド49がこの順に重積させてある。
【0043】
更に、保持ガイド49の前記開口内には導電性の正極集電体1a及びシート状の正極電極部1bを具備する正極1、セパレータ9、並びに、シート状の負極電極部2b及び導電性の負極集電体2aを具備する負極2がこの順に重積してあり、保持ガイド49によってこれら各部品が保持されている。
【0044】
前述した上部カバー42の裏面中央には螺旋状のバネ部材43が垂設してあり、該バネ部材43の弾性力によって、前述した参照電極55、押さえ板54、正極1、セパレータ9、及び負極2に押圧力を加えるようになしてある。
【0045】
前述した底部カバー56及びセル本体52内には電解液が充填されており、これによって前述した保持ガイド49内の正極1、セパレータ9、及び負極2が電解液中に浸漬されている。
ここで、正極1は、例えば次のようにして作製した。
【0046】
すなわち、正極用活物質が3質量部、及び結着材として、アセチレンブラックとポリテトラフルオロエチレンとを2:1の質量比で混合した粉末(TBA)が1質量部となるようにそれぞれ秤量し、それらをめのう製の乳鉢に投入して十分に混練する。そして、得られた混練物を、前述した正極集電体1aたるアルミニウム製の板材の一面に塗末した後、その厚みが略0.1mmになるように圧下することによって、正極電極部1bを形成するとともに該正極電極部1bを正極集電体1aに圧着させて正極1を得た。
【0047】
また、負極2は、正極用活物質に代えて負極用活物質を用いた以外は、前同様にして作製した。
また、電界液は前述したECとDECとを容量比で1:2に混合させた溶媒にLiPF6を1mol/Lとなるように溶解させたものを用いた。
【0048】
比較試験に用いた各正極用活物質及び負極用活物質の原料並びに目付比を次表に挙げる。なお、目付比とは、正極用活物質の質量を負極用活物質材料の質量で除した値をいう。
【0049】
【表1】

【0050】
表に示したように、正極用活物質として、本発明例1から本発明例5では非晶性の黒鉛を用い、本発明例6では結晶性の黒鉛を用いた。
また、負極用活物質として、本発明例1、本発明例2及び本発明例6では斜方晶系の酸化ニオブを用い、本発明例3及び本発明例4では単斜晶系の酸化ニオブを用い、また本発明例5ではLi含有酸化ニオブを用いた。
【0051】
一方、比較例にあっては正極用活物質として、比較例1及び比較例2では非晶性の黒鉛を用い、比較例3では活性炭を用いた。
また、比較例にあっては負極用活物質として、比較例1では非晶性の黒鉛を用い、比較例2では活性炭を用い、比較例3では斜方晶系の酸化ニオブを用いた。
【0052】
そして、各本発明例又は各比較例の正極用活物質をそれぞれ含有する各正極、及び各本発明例又は各比較例の負極用活物質をそれぞれ含有する各負極を前述した比較試験用の蓄電デバイスに配置し、3.5V又は3.0Vの充電電圧、1mAの定電流の充電電流で充電を開始し、所定電圧に達した時点で定電圧に切り換えることによって、合計で2時間の充電を行った後、1mAで0Vに達するまで放電させ、各材料における電気容量(mAh/g(負極用活物質))を求めた。
【0053】
なお、比較例3にあっては、活性炭を用いた正極に2.5Vを超える電圧を印加すると、電界液の分解が生じてガスが発生するため、印加電圧を2.5Vにした。
その結果を次表に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表より明らかな如く、黒鉛を用いたいずれの正極にあっても3.5Vの充電電圧で電界液の分解を招来せず、活性炭を用いた正極の場合より、高い電圧で動作させることができた。
また、充電電圧が3.5Vの場合、該当するいずれの本発明例にあっても、該当するいずれの比較例より電気容量が2.5倍以上増大しており、高エネルギー化を図ることができた。
また、本発明例1にあっては、充電電圧を3.0Vに低下させた場合であっても、比較例の中で最も電気容量が大きかった比較例2の場合より、電気容量が増大していた。
【0056】
ここで、各本発明例の内、本発明例2に係る蓄電デバイスの放充電曲線を示すグラフを図3に、また、本発明例2に係る蓄電デバイスの充電時における電圧の変化及び当該各電極の充電時における電圧の変化を示すグラフを図4に示す。
【0057】
なお、図3にあっては、放充電を複数回繰り返した結果を示している。
図3から明らかな如く、放充電を複数回繰り返した場合であっても、安定して高いエネルギー密度が実現されていた。
一方、図4から明らかな如く、正極の電圧が一定になっているため、正極を構成する黒鉛において陰イオンの吸蔵現象が生じていると考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る蓄電デバイスの一例を示す模式的縦断面図である。
【図2】比較試験に用いた蓄電デバイスの基本構成を示す模式的分解斜視図である。
【図3】本発明例2に係る蓄電デバイスの放充電曲線を示すグラフである。
【図4】本発明例2に係る蓄電デバイスの充電時における電圧の変化及び当該各電極の充電時における電圧の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1 正極
2 負極
9 セパレータ
21 筐体
22 蓋部材
23 端子
24 端子
31 リード線
32 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用活物質を含有する正極及び負極用活物質を含有する負極と、陰イオン及び陽イオンを含む電解質とを備え、前記陰イオン及び陽イオンの移動によって放充電を行う蓄電デバイスにおいて、
前記正極用活物質は黒鉛であり、前記負極用活物質は陽イオンを吸蔵し得る金属酸化物であることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
前記負極用活物質はニオブ酸化物又は/及びリチウム含有ニオブ酸化物であり、前記陽イオンはリチウムイオンである請求項1記載の蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−40180(P2010−40180A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197974(P2008−197974)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月29日 社団法人電気化学会発行の「電気化学会第75回大会講演要旨集」に発表
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【Fターム(参考)】