説明

蓄電デバイス

【課題】複数の蓄電セルの温度差を小さくすることができ、高い信頼性を有する蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】本発明に係る蓄電デバイス100は、正極、負極、および電解液が収容された外装体12を有する蓄電セル10と、外装体12の外表面に形成された放熱板20と、を含み、蓄電セル10と放熱板20とは、交互に積層され、放熱板20は、3つ以上設けられ、複数の放熱板20のうち、最外に配置された放熱板20は、最外に配置された放熱板20の内側に配置された放熱板20よりも、熱伝導率が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスの構成要素である蓄電セルは、例えば、シート状の正極および負極をセパレータを介して対向配置させながら所定数積層してなる電極体を、電解液とともに外装体内に密封したものである。このような密閉型蓄電セルは、蓄電デバイスの小型化および高エネルギー化を図るために、複数積層され、例えば直列に接続されて使用される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−228610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電セルは充放電により発熱するが、上記のように複数の蓄電セルを積層すると、最外に配置された蓄電セル(端部に配置された蓄電セルともいえる)と、最外に配置された蓄電セルの内側に配置された蓄電セル(中央部に配置された蓄電セルともいえる)と、に温度差が生じることがある。より具体的には、中央部に配置された蓄電セルは、該蓄電セルの両側に配置された蓄電セルの発熱の影響を受けて蓄熱しやすく、最外に配置された蓄電セルに比べて、温度上昇が大きくなる傾向にある。このように充放電時に蓄電セル間に温度差が生じると、蓄電セルの劣化速度や充放電特性が変化してしまい、蓄電デバイス全体としての信頼性が低下してしまう。
【0005】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、複数の蓄電セルの温度差を小さくすることができ、高い信頼性を有する蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0007】
[適用例1]
本発明に係る蓄電デバイスの一態様は、
正極、負極、および電解液が収容された外装体を有する蓄電セルと、
前記外装体の外表面に形成された放熱板と、
を含み、
前記蓄電セルと前記放熱板とは、交互に積層され、
前記放熱板は、3つ以上設けられ、
複数の前記放熱板のうち、最外に配置された前記放熱板は、前記最外に配置された前記放熱板の内側に配置された前記放熱板よりも、熱伝導率が小さい。
【0008】
[適用例2]
適用例1において、
前記最外に配置された前記放熱板の熱伝導率は、120W/mK以上240W/mK以下であり、
前記内側に配置された前記放熱板の熱伝導率は、300W/mK以上430W/mK以下であることができる。
【0009】
[適用例3]
適用例1または2において、
前記最外に配置された前記放熱板の材質は、アルミニウムであり、
前記内側に配置された前記放熱板の材質は、銅であることができる。
【0010】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれか1例において、
前記放熱板と接合されたヒートシンクを、さらに含むことができる。
【0011】
[適用例5]
適用例4において、
前記ヒートシンクを冷却するための冷却部を、さらに含むことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る蓄電デバイスによれば、複数の放熱板のうち、最外に配置された放熱板は、内側に配置された放熱板よりも、熱伝導率が小さい。すなわち、内側に配置された放熱板は、最外に配置された放熱板よりも、蓄電セルで発生した熱を、効率よく放熱させることができる。そのため、複数の蓄電セルのうち、最外に配置された蓄電セルの内側に配置された蓄電セル(例えば中央部に配置された蓄電セル)が、最外に配置された蓄電セルに比べて高温となることを抑制することができる。したがって、複数の蓄電セル間の温度差を小さくする(均一化する)ことができる。その結果、蓄電セルの劣化速度や充放電特性の差を小さくすることができ、本発明に係る蓄電デバイスは、高い信頼性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す斜視図。
【図2】本実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図3】本実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図4】本実施形態に係る蓄電デバイスの蓄電セルを模式的に示す断面図。
【図5】本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図6】本実施形態の第2変形例に係る蓄電デバイスを模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
1. 蓄電デバイス
まず、本実施形態に係る蓄電デバイスについて、図面を参照しなら説明する。図1は、本実施形態に係る蓄電デバイス100を模式的に示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る蓄電デバイス100を模式的に示す断面図であって、図1のII−II線断面図(水平方向(XY平面)の断面図)である。図3は、本実施形態に係る蓄電デバイス100を模式的に示す断面図であって、図1のIII−III線断面図(垂直方向(XZ平面)の断面図)である。なお、図1では、便宜上、外郭部材40を透視して図示している。また、図2および図3では、便宜上、外郭部材40、および外装体12内に収容される正極や負極等を省略して図示している。
【0016】
蓄電デバイス100は、図1〜図3に示すように、蓄電セル10と、放熱板20と、ヒートシンク30と、外郭部材40と、を含むことができる。
【0017】
蓄電セル10は、複数設けられている。図示の例では、6つの蓄電セル10が設けられているが、その数は特に限定されず、蓄電デバイス100の用途に応じて適宜変更することができる。具体的な蓄電セル10の形態としては、リチウムイオンキャパシタ、二次電池、電気二重層キャパシタなどを例示することができる。蓄電セル10は、外装体12と、正極端子16と、負極端子18と、を有する。
【0018】
外装体12は、正極、負極、および電解液を収容している。外装体12の形状は、正極、負極、および電解液を収容することができれば特に限定されず、例えば、2枚のフィルムを張り合わせたラミネート型でもよし、箱型でもよいし、円筒型でもよい。図2および図3に示す例では、外装体12をラミネート型(ラミネートフィルム)として図示している。
【0019】
ラミネートフィルムからなる外装体12は、図2および図3に示すように、第1扁平面13と、第1扁平面13と反対を向き(図示の例では+X方向を向き)第1扁平面13より面積の小さい第2扁平面14と、を有することができる。外装体12は、図2に示すように、例えば、凸の部分を有し、第2扁平面14は、凸の部分を形成する面であるといえる。図2および図3に示す例では、隣り合う蓄電セル10は、放熱板20を介して、一方の蓄電セル10の第1扁平面13と、他方の蓄電セル10の第2扁平面14と、が対向するように配置されている。図示はしないが、隣り合う蓄電セル10は、放熱板20を介して、第1扁平面13同士が対向するように、または、第2扁平面14同士が対向するように配置されていてもよい。第1扁平面13と第2扁平面14との間の距離(蓄電セル10の厚み)は、例えば、5mm程度である。
【0020】
ラミネートフィルムの材質としては、ポリプロピレンやナイロンなどの合成樹脂の一部を、アルミニウム箔や銅箔などの金属箔としたものなどが挙げられる。このようなフィルム状の外装体12を用いることにより、例えば、金属等からなる硬質の外装体(金属缶等)を用いる場合に比べて、蓄電セル10の小型化や軽量化を図ることができる。
【0021】
正極端子16および負極端子18は、図2に示すように、外装体12から突出して設けられている。より具体的には、正極端子16および負極端子18は、外装体12の密閉性を保持した状態で、外装体12の内側から外側まで延出している。正極端子16は、外装体12内の正極と電気的に接続されており、負極端子18は、外装体12内の負極と電気的に接続されている。正極端子16の材質としては、例えば、アルミニウムが挙げられる。負極端子18の材質としては、例えば、銅、ニッケルが挙げられる。なお、外装体12の内部構造については、後述する。
【0022】
図1および図2に示す例では、複数の蓄電セル10が直列に接続されるように、隣り合う蓄電セル10の正極端子16および負極端子18は、配線17を介して接続されている。図示はしないが、蓄電デバイス100の用途に応じて、複数の蓄電セル10は、並列に接続されることもできる。
【0023】
放熱板20は、外装体12の外表面に設けられている。蓄電セル10と放熱板20とは、例えばX軸方向に沿って、交互に積層されている。放熱板20は、3つ以上設けられ、図示の例では、6つの蓄電セル10の各々を挟むように7つの放熱板20が設けられている。より具体的には、X軸方向に沿って、放熱板20a,20b,20c,20d,20e,20f,20gの順で配置されている。したがって、最外に配置された放熱板20a,20gは、複数の蓄電セル10のうち最外に配置された蓄電セル10に設けられることができる。
【0024】
隣り合う蓄電セル10の間に設けられた放熱板20は、一方の蓄電セル10の第1扁平面13と、他方の蓄電セル10の第2扁平面14と、に接合されていてもよい。また、図2および図3に示すように、最外に配置された放熱板20aは、最外に配置された蓄電セル10の第1扁平面13に接合されていてもよく、最外に配置された放熱板20gは、最外に配置された蓄電セル10の第2扁平面14に接合されていてもよい。放熱板20と蓄電セル10との接合は、例えば接着剤を用いて行われる。接着剤としては、例えば、粘着性および熱伝熱率が高く、熱抵抗の低い、アクリル系熱伝導シート、アクリル接着剤付グラファイトシートを用いることができる。
【0025】
放熱板20は、例えば、X軸方向を厚み方向とする板状の形状を有し、その厚みは、0.2mm以上20mm以下である。放熱板20のY軸方向の長さは、例えば、100mm以上200mm以下であり、放熱板20のZ軸方向の長さは、例えば、100mm以上200mm以下である。
【0026】
放熱板20は、蓄電セル10において発生した熱を、放熱させることができる。さらに、放熱板20は、蓄電セル10において発生した熱を、ヒートシンク30に伝熱させることができる。すなわち、放熱板20は、伝熱板としての機能も有することができる。
【0027】
複数の放熱板20のうち、最外に配置された放熱板20a,20gは、例えば、放熱板20a,20gの内側に配置された(放熱板20a,20gの間に配置された)放熱板20b,20c,20d,20e,20fよりも熱伝導率が小さい。具体的には、放熱板20a,20gの熱伝導率は、120W/mK以上240W/mK以下であり、材質としては、アルミニウムが挙げられる。また、放熱板20b,20c,20d,20e,20fの熱伝導率は、300W/mK以上430W/mK以下であり、材質としては、銅や銀が挙げられるが、コストを考慮すると、銅であることが望ましい。
【0028】
上記では、最外に配置された放熱板20a,20gのみが、他の放熱板20に比べて熱伝導率が低い例について説明したが、本実施形態に係る蓄電デバイス100では、最外に配置された放熱板20a,20gの内側に、放熱板20a,20gよりも熱伝導率が大きい放熱板20を少なくとも1つ有していればよい。この熱伝導率が大きい放熱板20は、中央部に配置された蓄電セル10が高温となることを考慮すると、複数の放熱板20のうち中央部に配置されていることが望ましい。
【0029】
例えば、最外に配置された放熱板20a,20g、およびこれらの隣りに配置された放熱板20b,20fの材質をアルミニウムとし、残りの放熱板20c,20d,20eの材質を銅としてもよい。また、例えば、複数の放熱板20のうち、中央に配置された放熱板20dの材質のみを銅とし、他の放熱板20の材質をアルミニウムとしてもよい。
【0030】
さらに、複数の放熱板20において、最外から中央部に向かうにつれて、熱伝導率が徐々に変化するような形態でもよい。すなわち、放熱板20a,20gの材質をアルミニウムとし、放熱板20b,20fの材質を銅とし、放熱板20c,20d,20eの材質を銀としてもよい。このような形態は、複数の蓄電セル10が中央に近づくにつれて徐々に高温となる場合に効果的である。
【0031】
このように、放熱板20の材質(熱伝導率)は、複数の蓄電セル10の発熱量や発熱する位置によって、適宜変更されることができる。
【0032】
放熱板20は、図1および図3に示すように、端部22を有することができる。端部22は、例えば、放熱板20の端部22以外の部分に比べて、大きな厚みを有することができる。すなわち、端部22は、X軸方向の長さが大きい。これにより、ヒートシンク30との接合面積を大きくすることができる。
【0033】
ヒートシンク30は、放熱板20と接合されている。図示の例では、ヒートシンク30は、蓄電セル10および放熱板20の積層方向(X軸方向)と直交する方向(Z軸方向)において、全ての放熱板20と接合されている。これにより、複数の放熱板20を熱的に連結することができる。そのため、蓄電セルにおいて発生した熱によって、例えば1つの蓄電セルのみが劣化することを抑制しつつ、蓄電デバイス100全体を冷却することができる。蓄電セル10において発生した熱は、放熱板20をZ軸方向に伝わり、端部22からからヒートシンク30へ伝熱されて、ヒートシンク30から放熱されることができる。ヒートシンク30の材質としては、例えば、アルミニウム、銅が挙げられる。
【0034】
ヒートシンク30と放熱板20との接合は、特に限定されないが、例えば、予め、ヒートシンク30および放熱板20の端部22に複数の穴(図示せず)を設け、ヒートシンク30の穴と端部22の穴とが重なるように両者を配置したのち、該穴径(直径)より外径の大きいノックピン(図示せず)を圧入することにより行うことができる。ノックピンは、塑性変形しながら穴に挿入されるため、ノックピンと穴との間に空隙が生じず、ヒートシンク30と放熱板20と間の熱抵抗を小さくすることができる。これにより、放熱板20に伝わった蓄電セル10の熱を、効率よくヒートシンク30から放熱することができる。さらに、ヒートシンク30と放熱板20の端部22との間に、シリコングリスや銀入りペースト等の高い伝熱特性を示す材料を塗布し、伝熱性低下の一因となる空隙を充填することによって、熱抵抗を小さくしてもよい。
【0035】
ヒートシンク30は、図1および図3に示すように、例えば、直方体の一面に複数の凹部を形成してなる凸部32を有する。凸部32は、ヒートシンク30の放熱板20と接合する面と反対側の面に形成されている。凸部32の数は、特に限定されない。凸部32により、ヒートシンク30の表面積を大きくすることができ、放熱性を向上させることができる。
【0036】
外郭部材40は、図1に示すように、放熱板20とヒートシンク30とが接合できる形態で、蓄電セル10および放熱板20を包囲している。外郭部材40の形態は、特に限定されず、例えば、粘着テープからなる外郭部材40を蓄電セル10等に巻きつけることによって、蓄電セル10等を包囲していてもよいし、箱型のケース体からなる外郭部材40内に蓄電セル10等を収容することによって、蓄電セル10等を包囲してもよい。
【0037】
外郭部材40として用いることのできる粘着テープは、粘着性および絶縁性を有し、さらに、放熱性を有することが望ましい。これにより、充放電時に発生する蓄電セル10の熱を放熱することができ、蓄電セル10の温度上昇を抑制することができる。粘着テープとしては、例えば、銅箔やアルミ箔付ポリエステルフィルムが挙げられる。
【0038】
なお、図示はしないが、粘着テープによって包囲された蓄電セル10等を、さらにアルミニウムなどからなるケース体に収容してもよい。また、図示はしないが、ヒートシンク30は、外郭部材40内に収容されていてもよい。
【0039】
次に、蓄電セル10の内部構造について説明する。図4は、図2に示した本実施形態に係る蓄電デバイス100の蓄電セル10の1つを示す断面図あって、蓄電セル10の(外装体12の)内部構造を模式的に示す断面図である。以下では、一例として、蓄電セル10がリチウムイオンキャパシタである場合について説明する。
【0040】
蓄電セル10は、図4に示すように、外装体12に収容された電極積層体5および電解液(図示せず)を有する。図示の例では、電極積層体5および電解液は、第1ラミネートフィルム12aと第2ラミネートフィルム12bとからなる外装体12内に収容されている。
【0041】
電極積層体5は、電解液に浸漬されている。電極積層体5は、正極1と、負極2と、リチウム極3と、セパレータ4と、を有する。正極1、負極2、リチウム極3、およびセパレータ4は、シート状の形状を有する。図示の例では、電極積層体5は、第1ラミネートフィルム12aの内側の底面から、リチウム極3、負極2、正極1、負極2、正極1、負極2、リチウム極3の順で積層され、極と極との間、および極とラミネートフィルムとの間にセパレータ4を介することによって構成されている。電極積層体5において、正極1および負極2は、それぞれ並列に接続されている。
【0042】
なお、正極1および負極2の数は、特に限定されない。同様に、リチウム極3の数および設置場所も特に限定されない。また、電極積層体5の形態は、図4に示す例に限定されず、例えば、正極、負極、リチウム極、およびセパレータを重ねて積層シートを形成し、該積層シートを捲回させてなる捲回構造体でもよい。
【0043】
正極1は、正極集電体1aと、正極活物質層1bと、を有する。正極集電体1aとしては、多孔性の金属箔を用いることができる。正極集電体1aの材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレスが挙げられる。正極集電体1aの厚みは、例えば、15μm以上50μm以下である。正極集電体1aは、正極リード6を介して、正極端子16に接続されている。
【0044】
正極活物質層1bは、正極集電体1aに形成されている。図示の例では、正極活物質層1bは、正極集電体1aの両面に形成されているが、片面にのみ形成されていてもよい。正極活物質層1bの厚みは、例えば、60μm以上90μm以下である。
【0045】
正極活物質層1bは、正極活物質を含有している。正極活物質は、ヘキサフルオロホスフェート(PF)や、テトラフルオロボレート(BF)のようなアニオンを可逆的に担持できる物質である。より具体的には、正極活物質としては、活性炭、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であるポリアセン系物質(PAS)が挙げられる。
【0046】
正極活物質層1bの形成方法としては、まず、正極活物質粉末およびバインダーを、水系媒体または有機溶媒中に分散してスラリーを調整する。必要に応じて、導電性粉末を混入させてもよい。次に、調整したスラリーを正極集電体1aの表面に塗布して乾燥させる。このようにして、正極活物質層1bを得ることをできる。
【0047】
負極2は、負極集電体2aと、負極活物質層2bと、を有する。負極集電体2aとしては、多孔性の金属箔を用いることができる。負極集電体2aの材質としては、例えば、銅、ステンレス、ニッケルが挙げられる。負極集電体2aの厚みは、例えば、10μm以上50μm以下である。負極集電体2aは、負極リード7を介して、負極端子18に接続されている。
【0048】
負極活物質層2bは、負極集電体2aに形成されている。図示の例では、負極活物質層2bは、負極集電体2aの両面に形成されているが、片面にのみ形成されていてもよい。負極活物質層2bの厚みは、例えば、20μm以上50μm以下である。
【0049】
負極活物質層2bは、負極活物質を含有している。負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵できる物質である。より具体的には、負極活物質としては、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、もしくはそれらの粉砕品が挙げられる。
【0050】
負極活物質層2bの形成方法としては、まず、負極活物質粉末およびバインダーを、水系媒体または有機溶媒中に分散してスラリーを調整する。必要に応じて、導電性粉末を混入させてもよい。次に、調整したスラリーを負極集電体2aの表面に塗布して乾燥させる。このようにして、負極活物質層2bを得ることをできる。
【0051】
リチウム極3は、リチウム極集電体3aと、リチウム箔3bと、を有する。リチウム極集電体3aとしては、多孔性の金属箔を用いることができる。リチウム極集電体3aの材質としては、例えば、銅、ステンレスが挙げられる。リチウム極集電体3aの厚みは、例えば、10μm以上200μm以下である。
【0052】
リチウム箔3bは、例えば、リチウム極集電体3aの一方の面に圧着されている。リチウム箔3bの材質は、リチウムである。リチウム箔3bは、リチウムイオンの供給源として機能することができる。すなわち、リチウム極集電体3aと負極集電体2aとを負極リード7を介して接続させて短絡させることにより、リチウム箔3bは、電解液に溶解してリチウムイオンとなることができる。そして、リチウムイオンは、電気化学的に電解液を介して負極活物質層2bにドープ(「プレドープ」ともいえる)される。その結果、負極2の電位を下げることができる。リチウム箔3bの厚みは、例えば、50μm以上300μm以下である。
【0053】
なお、リチウム箔3bは、プレドープによって、例えば完全に電解液に溶解するが、図示の例では、便宜上、電解液の図示を省略し、電解液に溶解する前のリチウム箔3bを図示している。
【0054】
電解液としては、リチウム塩を電解質とする非プロトン性有機溶媒電解質溶液を用いる。非プロトン性有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホランなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、Li(CSONなどが挙げられる。
【0055】
本実施形態に係る蓄電デバイス100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0056】
蓄電デバイス100によれば、複数の放熱板20のうち、最外に配置された放熱板20a,20gは、例えば、放熱板20a,20gの内側に配置された放熱板20b,20c,20d,20e,20fよりも、熱伝導率が小さい。すなわち、放熱板20b,20c,20d,20e,20fは、放熱板20a,20gよりも、蓄電セル10で発生した熱を、効率よく放熱させることができる。そのため、複数の蓄電セルのうち、最外に配置された蓄電セルの内側に配置された蓄電セル(例えば中央部に配置された蓄電セル)が、最外に配置された蓄電セルに比べて高温となることを抑制することができる。したがって、複数の蓄電セル10間の温度差を小さくする(均一化する)ことができる。その結果、蓄電セル10間の電圧の差を小さくすることができ、蓄電デバイス100は、高い信頼性を有することができる。例えば、蓄電セルが積層された場合、特に、最外に配置された蓄電セルと、その内側に配置された蓄電セルと、の間で、温度差が生じやすい。
【0057】
蓄電デバイス100によれば、放熱板20と接合されたヒートシンク30を有することができる。上記のとおり、内側に配置された放熱板20b,20c,20d,20e,20fは、最外に配置された放熱板20a,20gよりも熱伝導率が大きいので、内側に配置された蓄電セル10の熱を、効率よくヒートシンク30に伝えることができる。そのため、複数の蓄電セル10間の温度差を小さくすることができる。
【0058】
2. 変形例
次に、本実施形態の変形例に係る蓄電デバイスについて、図面を参照しながら説明する。以下、本実施形態の変形例に係る蓄電デバイスにおいて、本実施形態に係る蓄電デバイス100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
2.1. 第1変形例
まず、本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図5は、本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイス200を模式的に示す断面図である。なお、図5は、図3に対応している。
【0060】
蓄電デバイス100の例では、図3に示すように、1つのヒートシンク30を有していた。これに対し、蓄電デバイス200は、図5に示すように、複数のヒートシンク30を有する。図示の例では、ヒートシンク30は、2つ設けられ、2つのヒートシンク30は、蓄電セル10および放熱板20の積層方向(X軸方向)と直交する方向(Z軸方向)において、放熱板20の端部22と接続され、放熱板20を介して、互いに対向配置されている。
【0061】
蓄電デバイス200によれば、蓄電デバイス100に比べて、ヒートシンク30の数が多い分、放熱性を向上させることができる。
【0062】
2.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る蓄電デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図6は、本実施形態の第2変形例に係る蓄電デバイス300を模式的に示す斜視図である。なお、図6では、便宜上、外郭部材40を透視して図示している。
【0063】
蓄電デバイス300は、図6に示すように、冷却部50を有する。冷却部50としては、ヒートシンク30を冷却することができれば、その形態は特に限定されないが、例えば、冷却ファンを用いることができる。冷却部50の配置は、例えば、ヒートシンク30の凸部32に直接送風できるように、ヒートシンク30に接続されている。これにより、ヒートシンク30は、より効率よく放熱することができる。
【0064】
なお、図5に示した蓄電デバイス200のようにヒートシンク30を複数有する形態では、冷却部50は、ヒートシンク30の数に応じて、複数設けられていてもよい。
【0065】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0066】
1 正極、1a 正極集電体、1b 正極活物質層、2 負極、2a 負極集電体、
2b 負極活物質層、3 リチウム極、3a リチウム極集電体、3b リチウム箔、
4 セパレータ、5 電極積層体、6 正極リード、7 負極リード、10 蓄電セル、
12 外装体、12a 第1ラミネートフィルム、12b 第2ラミネートフィルム、
13 第1扁平面、14 第2扁平面、16 正極端子、17 配線、18 負極端子、
20 放熱板、22 端部、30 ヒートシンク、32 凸部、40 外郭部材、
50 冷却部、100〜300 蓄電デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、および電解液が収容された外装体を有する蓄電セルと、
前記外装体の外表面に形成された放熱板と、
を含み、
前記蓄電セルと前記放熱板とは、交互に積層され、
前記放熱板は、3つ以上設けられ、
複数の前記放熱板のうち、最外に配置された前記放熱板は、前記最外に配置された前記放熱板の内側に配置された前記放熱板よりも、熱伝導率が小さい、蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
前記最外に配置された前記放熱板の熱伝導率は、120W/mK以上240W/mK以下であり、
前記内側に配置された前記放熱板の熱伝導率は、300W/mK以上430W/mK以下である、蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記最外に配置された前記放熱板の材質は、アルミニウムであり、
前記内側に配置された前記放熱板の材質は、銅である、蓄電デバイス。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記放熱板と接合されたヒートシンクを、さらに含む、蓄電デバイス。
【請求項5】
請求項4において、
前記ヒートシンクを冷却するための冷却部を、さらに含む、蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−160543(P2012−160543A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18456(P2011−18456)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(307037543)JMエナジー株式会社 (57)
【Fターム(参考)】