説明

蓄電池、蓄電池システム、および蓄電池の異常検知方法

【課題】蓄電池の異常を検知可能な新しい蓄電池システムを提供する。
【解決手段】機械的な応力の印加によって発光する応力発光材料を含む発光層11が、外装表面に形成された蓄電池10と、応力発光材料の発光を検出する光検出デバイス20と、光検出デバイスで検出された発光を監視して、蓄電池10の異常を検知0する異常検知手段31と、を含む蓄電池システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電池、蓄電池システム、および蓄電池の異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池やキャパシタなどの蓄電池の開発が進み、様々な電気機器の電源として広く用いられるようになってきている。また、蓄電池の電気容量の増大、すなわち出力の増大へのニーズは、大型のハイブリッド自動車や電気自動車などの電源としての期待が高まるにつれて、ますます大きなものとなっている。
【0003】
こうしたニーズに応えるために、蓄電池で使用される電極材料のエネルギー密度を高め、この電極材料をより高密度にパッケージングする工夫がなされている。しかしながら、電極材料のエネルギー密度を高めると、異常発熱などが起こりやすく蓄電池の危険性も高まってしまうため、蓄電池を安全に利用するための安全対策がより重要となる。
【0004】
従来の安全対策は、過放電や過充電などが起きないように蓄電池の充放電を精密に管理するとともに、サーミスタを用いて蓄電池の温度を測定し、蓄電池の異常発熱時に回路を遮断するといった電気回路上で行われるものであった(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−048861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電気回路上で行う安全対策は、蓄電池内部での内部ショートによる熱暴走反応や、その他異常な化学反応による事故を防止したり、警告したりすることはできないという問題点があった。
【0007】
したがって、上記事故を未然に防止し、警告することができる新しい蓄電池システムおよび蓄電池の異常検知方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示による蓄電池は、機械的な応力の印加によって発光する応力発光材料を含む発光層が、外装表面に形成される。
【0009】
本開示による蓄電池システムは、上記蓄電池と、応力発光材料の発光を検出する光検出デバイスと、光検出デバイスで検出された発光を監視して、蓄電池の異常を検知する異常検知手段と、を含む。
【0010】
また、本開示による蓄電池システムは、異常検知手段が、蓄電池の充電時において、応力発光材料の発光を継続的に監視し、蓄電池の放電時において、応力発光材料の発光を断続的に監視することもできる。
【0011】
さらに、本開示による蓄電池システムは、異常検知手段は、監視により得られた発光のパターンと、予め用意された、蓄電池の異常時における応力発光材料の発光パターンとを比較して、蓄電池の異常を検知することができる。
【0012】
さらに、本開示による蓄電池システムは、発光層が、外装表面のうち一面のみに形成されていることもできる。
【0013】
さらに、本開示による蓄電池システムは、発光層が、蓄電池の電極部を除く外装全面に形成されていることもできる。
【0014】
さらに、本開示による蓄電池システムは、発光層が、外装表面に所定のパターン形状で形成されていることもできる。
【0015】
さらに、本開示による蓄電池システムは、光検出デバイスが、前記発光層に対向して設置されることができる。
【0016】
さらに、本開示による蓄電池システムは、光検出デバイスが、発光層の面に倣った形状とすることができる。
【0017】
さらに、本開示による蓄電池システムは、蓄電池として、自動車に搭載される自動車用蓄電池を用いることができる。
【0018】
本開示による異常検知方法は、機械的な応力の印加によって発光する応力発光材料を含む発光層が、外装表面に形成された蓄電池と、発光層に対向して設置され、応力発光材料の発光を検出する光検出デバイスとを含む蓄電池システムにおける蓄電池の異常を検知する異常検知方法であって、光検出デバイスで検出された発光を監視すること、該監視により得られた発光のパターンと、予め用意された、蓄電池の異常時における応力発光材料の発光パターンとを比較して、蓄電池の異常を検知すること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本開示の第1実施形態に係る電池システム100の概略構成を示す図である。
【図2】図2aは、応力発光強度の応力依存性を示す図であって、図2bは、応力発光強度の歪み速度依存性を示す図である。
【図3】応力発光材料と各種透明樹脂との複合フィルムにおける応力発光強度の関係図を示す図である。
【図4】本実施形態の電池システム100の異常検知方法におけるフローチャートの一例を示す。
【図5】本実施形態の電池システム100の異常検知方法におけるフローチャートの一例を示す。
【図6】本開示の第2実施形態に係る電池システム200の概略構成を示す図である。
【図7】外装部13に形成される発光層11のパターン形状の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示を実施するための好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、蓄電池として、リチウムイオン電池を例にとって説明する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本開示の第1実施形態に係る電池システム100の概略構成を示す図である。
【0022】
電池システム100は、リチウムイオン電池10と、光検出デバイス20と、制御部30と、を含む。
【0023】
リチウムイオン電池10は、正極、負極、セパレータ、正極と負極との間でイオンの移動を可能にする電解液、正極および負極からリードされたそれぞれの端子を外部に導出しつつ、これらを収容する外装材(たとえば、アルミラミネート部材)で構成される。さらに、本実施形態のリチウムイオン電池10は、図1に示すように、応力発光材料を含む発光層11が、端子が外部に導出された電極部12を除いた外装材表面(外装部)13の一部に形成される。なお、リチウムイオン電池10の構成および機能は、発光層11を形成する以外は、従来のリチウムイオン電池10と共通とすることができる。また、リチウムイオン電池10は、衝撃等の外的負荷から電池自体を保護するための外装ケース40に収容することができる。
【0024】
発光層11は、機械的な応力の印加によって発光する応力発光材料を含む塗料を、外装部13の所定の箇所、たとえば、図1に示すように、外装部13のうち一面に均一に塗布することによって形成される。なお、所定の箇所とは、上記外装部13のうち一面に限られず、応力発光材料の発光強度が応力の絶対値と歪みの生じる速度に比例することから(図2参照)、たとえば、リチウムイオン電池10の異常時に外装部13に歪みが生じ、応力がかかる箇所とすることができる。図2aは、応力発光強度の応力依存性を示す図であり、図2bは、歪み速度依存性を示す図である(参照:https://ct.nishipla.or.jp/site/pdf/36.t_shingijuts6useminar/200501.pdf)。また、発光層11は、塗料を均一に塗布して形成する場合に限られず、たとえば、スパッタリングなどの方法で応力発光材料そのものを表面に付着させて形成することができる。
【0025】
ここで、本実施形態の応力発光材料は、視感度の高いユーロピウムを添加したアルミン酸ストロンチウム(SrAl22:Eu)粉末を用いる。この材料を塗料として用いる場合、ユーロピウム濃度を4%とすることで、各種透明樹脂(たとえば、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)など)との複合フィルムで良好な発光が得られることが知られている。図3は、応力発光材料と各種透明樹脂との複合フィルムにおける応力発光強度の関係図を示す(引用:産業技術総合開発機構 平成17年度 産業技術研究助成事業 研究成果報告書)。なお、応力発光材料は、上記材料に限られず、リチウムイオン電池10の外装部13の歪みの発生時や、圧力の上昇時において発光する材料であればよい。
【0026】
光検出デバイス20は、リチウムイオン電池10の発光層11に対向して設置され、応力発光材料の発光を検出する光検出器(たとえば、フォトディテクタダイオード)である。光検出デバイス20で変換された発光信号は、制御部30で処理される。光検出デバイス20は、発光層11の複数の箇所における発光を検出するため、1つに限られず、複数設置することもできる。なお、光検出デバイス20は、光を電気信号(発光信号)に変換するものであって、その構成および機能は、一般的な光検出器と共通とすることができるので、ここでの詳細な説明は省略する。また、光検出デバイス20は、リチウムイオン電池10の発光層11に対向して設置される場合に限られず、発光層11の発光を検出することができる位置に適宜任意に設置することができる。
【0027】
制御部30は、異常検知手段31と、記憶手段32とを含む。制御部30は、たとえば、一般的なマイクロチップなどを用いて実現することができる。
【0028】
異常検知手段31は、光検出デバイス20からの発光信号を受信することで、光検出デバイス20で検出された発光を監視し、リチウムイオン電池10の異常を検知する。異常検知手段31は、リチウムイオン電池10の充電時において、光検出デバイス20で検出された発光を継続的に監視し、リチウムイオン電池10の放電時において、光検出デバイス20で検出された発光を断続的に監視する。リチウムイオン電池10の歪みの変異と外装部材にかかる応力の上昇が発生しやすい充電時や放電時に、異常検知手段31は、光検出デバイスで検出された発光を監視することで、該監視に要する消費電力を低減しつつ、リチウムイオン電池10の使用時における安全性を確保することができる。また、リチウムイオン電池10の充電時は、電力が供給され続けるため、光検出デバイス20で検出された発光を継続的に監視することで、リチウムイオン電池10の使用時における安全性を向上することができる。
【0029】
異常検知手段31は、リチウムイオン電池10の放電時には、放電時の負荷電流値に応じた一定のインターバルで、光検出デバイス20で検出された発光を断続的に監視する。たとえば、リチウムイオン電池10の場合、0.3C(1Cとは、公称容量値の容量を有する電池を定電流放電して、ちょうど1時間で放電終了となる電流値を指す)を超えるような負荷電流値で放電する場合、少なくとも1秒に1回以上の頻度で検出を監視し、0.1Cを下回るような負荷電流値で放電する場合、10秒間に1回程度の検出を監視したり、または監視しないように決定することができる。放電時の負荷電流に応じた一定のインターバルは、リチウムイオン電池10の容量や特性に応じて適宜決定することができる。
【0030】
異常検知手段31によるリチウムイオン電池10の異常を検知する方法は、監視により得られた発光のパターンと、記憶手段32に予め記憶された、リチウムイオン電池10の異常時の応力発光材料の発光パターンとをパターンマッチングにより比較して、リチウムイオン電池10の異常を検知する方法を用いることができる。リチウムイオン電池10の異常時の応力発光材料の発光パターンは、たとえば、実験等により、発光層11を形成したリチウムイオン電池10に意図的に異常を発生させることによって得ることができ、記憶手段32に予め記憶される。発光パターンは、たとえば、一定期間における発光信号の強弱の変位パターンとすることができる。また、たとえば、複数の光検出デバイスによって、それぞれ発光層11の異なる箇所における応力発光材料の発光を検出する場合、それぞれの発光信号の生じ方のパターンとすることもできる。本実施形態では、異常時における発光パターンとして、充電時、放電時それぞれについて、警報必要レベルの発光パターンおよび使用停止(重大)レベルの発光パターンを含む、危険レベルが異なる複数の発光パターンを予め記憶手段32に記憶している。なお、充電時、放電時に共通の発光パターンを用いることもできる。
【0031】
異常検知手段31は、リチウムイオン電池10の異常を検知した場合、たとえば、その異常の危険レベルに応じて、リチウムイオン電池10を管理する管理システムに対して、警告を表示させる。この場合、リチウムイオン電池10の充電または放電を停止させてもよい。
【0032】
以下、図4および図5に示すフローチャートを参照して、電池システム100を用いて実施される本実施形態の異常検知方法を説明する。図4は、リチウムイオン電池10の充電時における異常検知方法の処理フローチャートであって、図5は、リチウムイオン電池10の充電時における異常検知方法の処理フローチャートである。なお、各図のフローチャートで示される各処理は、処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。
【0033】
ここで、まず、異常検知を開始する前に、制御部30は、リチウムイオン電池10が現在、充電状態または放電状態であるかの状態判断をする。該状態判断は、たとえば、リチウムイオン電池10に流れる電流を電流計で測定することによって判断することができる。
【0034】
リチウムイオン電池10が充電状態である場合について説明する。
【0035】
まず、図4に示すように、光検出デバイス20を動作させ、異常検知手段31により、光検出デバイス20で検出される発光を監視する(ステップS100)。発光が検出されない場合(ステップS101:No)、ステップS100の処理に戻って、光検出デバイス20で検出される発光を継続的に監視する。
【0036】
発光が検出された場合(ステップS101:Yes)、異常検知手段31は、監視により得られた発光のパターンと、記憶手段32に予め記憶された、リチウムイオン電池10の充電異常時における応力発光材料の発光パターンとを比較する(ステップS102)。上記比較は、たとえば、監視により得られた発光のパターンと、充電異常時における応力発光材料の発光パターンとをパターンマッチングすることによって行われる。より具体的には、充電異常時における応力発光材料の発光パターンとして記憶手段32に記憶された、警報必要レベルの発光パターンおよび使用停止(重大)レベルの発光パターンと、監視により得られた発光のパターンと、をパターンマッチングする。
【0037】
上記比較した結果、リチウムイオン電池10において問題が無いと判断された場合(ステップS103:No)、ステップS100の処理の処理に戻る。問題が無いと判断される場合は、監視により得られた発光のパターンに対応する(たとえば、差分合計が一定以下となる)発光パターンが記憶手段32に無い場合である。
【0038】
一方、上記比較した結果、監視により得られた発光のパターンが充電異常時における警報必要レベルの発光パターンに対応すると判断した場合(ステップS103:Yes、ステップS104:警告必要)、異常検知手段31は、リチウムイオン電池10を管理する管理システムに対して、警告を表示させる(ステップS105)。また、上記比較した結果、監視により得られた発光のパターンが充電異常時における使用停止レベルの発光パターンに対応すると判断した場合(ステップS103:Yes、ステップS104:重大)、異常検知手段31は、リチウムイオン電池10を管理する管理システムに対して、リチウムイオン電池10の充電を停止させる(ステップS106)。
【0039】
次に、リチウムイオン電池10が放電状態である場合について説明する。
【0040】
まず、図5に示すように、放電時の負荷電流値を取得して、負荷電流値が設定電流値以上であるか否かを判定する(ステップS200)。設定電流値は、たとえば、0.1Cとすることができる。
【0041】
負荷電流値が設定電流値以上であれば(ステップS201:Yes)、光検出デバイス20を動作させ、異常検知手段31により、光検出デバイス20で検出された発光を監視する(ステップS202)。一方、負荷電流値が設定電流値未満であれば(ステップS201:No)、ステップS202の処理に戻る。
【0042】
発光が検出されない場合(ステップS203:No)、一定のインターバルをおいて、該監視するステップS202の処理に戻る。なお、一定のインターバルは、放電時の負荷電流値に応じて決定することができ、たとえば、0.3Cを超える場合、1秒とすることができ、0.3Cを下回る場合、10秒とすることができる。
【0043】
発光が検出された場合(ステップS203:Yes)、異常検知手段31は、監視により得られた発光のパターンと、記憶手段32に予め記憶された、リチウムイオン電池10の放電異常時における応力発光材料の発光パターンとを比較する(ステップS204)。比較方法については、上記充電時の場合と同様にすることができる。
【0044】
上記比較した結果、リチウムイオン電池10において問題が無いと判断された場合(ステップS205:No)、ステップS202の処理の処理に戻る。
【0045】
一方、上記比較した結果、監視により得られた発光のパターンが放電異常時における警報必要レベルの発光パターンに対応すると判断した場合(ステップS205:Yes、ステップS206:警告必要)、異常検知手段31は、リチウムイオン電池10を管理する管理システムに対して、警告を表示させる(ステップS207)。また、上記比較した結果、監視により得られた発光のパターンが放電異常時における使用停止レベルの発光パターンに対応すると判断した場合(ステップS205:Yes、ステップS206:重大)、異常検知手段31は、リチウムイオン電池10を管理する管理システムに対して、リチウムイオン電池10の放電を停止させる(ステップS208)。
【0046】
以上、本実施形態の電池システムおよびリチウムイオン電池の異常検知方法によれば、リチウムイオン電池10の外装に現れる異常を発見・警告することができるため、電気回路上の安全対策では検知できない事故を未然に防止することができる。
【0047】
<第2実施形態>
第2実施形態の電池システム200は、光検出デバイスとして、フレキシブルなフォトディテクタが発光層11に倣って形成されている点で、第1実施形態の電池システム100と異なる。
【0048】
図6は、本開示の第2実施形態の電池システム200の概略構成を示す図である。なお、上記第1実施形態の電池システム100と共通とすることができる構成等については、ここでの説明を省略する。
【0049】
発光層11'は、応力発光材料を含む塗料を、電極部12を除く外装部13の表面全体に均一に塗布することによって形成される。なお、発光層11'は、外装部13の全ての表面に形成する場合に限られず、たとえば、応力を受けやすい1つの面のみとすることでき、この場合、コスト的、製造プロセス的に容易となる。
【0050】
光検出デバイス20'は、外装部13に密着させた状態で発光を検出することができるフレキシブルなフォトディテクタであって、発光層11'の面に倣った形状である。このようなフレキシブルフォトディテクタについては、ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin−Madison)において発表されたもの(URL:http://www.news.wisc.edu/16126)を適用することができる。なお、光検出デバイス20'は、フレキシブルフォトディテクタではなく、有機トランジスタを印刷することで形成したフレキシブルスキャナを用いることもできる。フレキシブルスキャナについては、東京大学において発表されたもの(URL:http://www.ntech.t.u-tokyo.ac.jp/Archive/Archive_download/Archive_douwnload.html)を適用することができる。
【0051】
光検出デバイス20'として、このようなフレキシブルフォトディテクタ等を用いることによって、発光層11が形成された面全体にわたって、その発光を検出することができる。
【0052】
<変形例>
以上のように本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は、以上の実施形態に限定されるべきものではなく、特許請求の範囲に表現された思想および範囲を逸脱することなく、種々の変形、追加、および省略が当業者によって可能である。
【0053】
たとえば、上記実施形態では、異常検知手段が、リチウムイオン電池10の充電時において、光検出デバイスで検出された発光を継続的に監視し、リチウムイオン電池10の放電時において、光検出デバイスで検出された発光を断続的に監視する場合を例にとって説明したが、本開示はこれに限られず、たとえば、充電時に、光検出デバイスで検出された発光を断続的に監視することもでき、一方、放電時に、光検出デバイスで検出された発光を継続的に監視することもできる。また、充電時、放電時のいずれか一方のみを監視するように構成することもできる。
【0054】
また、上記各実施形態では、発光層が、外装表面に均一に塗布することによって形成される場合を例にとって説明したが、本開示はこれに限られず、たとえば、図7に示すように、発光層を外装表面に所定のパターン形状で形成することもできる。図7aは、リチウムイオン電池10Aの外装部13の上に網目状に発光層11Aを形成した図を示し、図7bは、リチウムイオン電池10Bの外装部13の上に網目状に発光層11Bを形成した図を示す。このようにパターン形状で形成することによって、リチウムイオン電池10の異常時に外装が変形した場合、その発光のパターンの形状からリチウムイオン電池10の異常か否かに加え、異常個所を特定して検知することができる。
【0055】
さらに、上記各実施形態では、光検出デバイス等を用いた電池システムについて説明したが、本開示はこれに限られず、光検出デバイスを省略し、発光層11が外装部13に形成されたリチウムイオン電池10単体で用いることもできる。この場合、リチウムイオン電池10の異常時における応力発光材料の発光を、ユーザの目視によって監視することで、その異常の有無を判断することができる。また、応力発光材料が一定期間、発光が維持される材料を使用することによって、ユーザによる監視の手間と時間を軽減することができる。
【0056】
さらに、上記実施形態では、異常検知方法として、監視された発光のパターンと、記憶手段32に予め記憶された、リチウムイオン電池10の異常時における応力発光材料の発光パターンとをパターンマッチングにより比較する方法を例にとって説明したが、本開示はこれに限られない。たとえば、異常時の発光パターンを所定の発光強度を超えるパターンとして定義し、かかるパターンと比較する(監視により得られた発光のパターンに、所定の発光強度を超える発光があるか否かを判断する)ことで、蓄電池に異常があるか否かを検知することができる。
【0057】
さらに、上記各実施形態の電池システムに加えて、従来の電気回路上で行う安全対策システムを組み合わせることもできる。
【0058】
さらに、上記実施形態では、蓄電池としてリチウム電池10を例にとって説明したが、本開示はこれに限られず、充電および放電を繰り返す蓄電池であればよく、たとえば、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池などの二次電池、またはウルトラキャパシタなどのキャパシタに適用することができる。
【0059】
本開示は、携帯電話やノートパソコンのような携帯機器用の電池またはキャパシタに適用可能であり、また、家庭用燃料電池用の電池やキャパシタ、さらには、太陽電池併用キャパシタなどの環境対応発電機器の出力平滑用電池やキャパシタ、さらには、ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両に搭載される車両用蓄電池、さらには、通信基地局などバックアップ用電源などの産業用電池などに適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 リチウムイオン電池、
11 発光層、
12 電極部、
13 外装部、
20 光検出デバイス、
30 制御部、
31 異常検知手段、
32 記憶手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的な応力の印加によって発光する応力発光材料を含む発光層が、外装表面に形成された蓄電池と、
前記発光層に対向して設置され、前記応力発光材料の発光を検出する光検出デバイスと、
前記蓄電池の充電時において、前記光検出デバイスで検出された発光を継続的に監視し、前記蓄電池の放電時において、前記光検出デバイスで検出された発光を断続的に監視して、前記蓄電池の異常を検知する異常検知手段と、を含み、
前記異常検知手段は、前記監視により得られた発光のパターンと、予め用意された、前記蓄電池の異常時の前記応力発光材料の発光パターンとを比較して、前記蓄電池の異常を検知する、蓄電池システム。
【請求項2】
機械的な応力の印加によって発光する応力発光材料を含む発光層が、外装表面に形成された蓄電池。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電池と、
前記応力発光材料の発光を検出する光検出デバイスと、
前記光検出デバイスで検出された発光を監視して、前記蓄電池の異常を検知する異常検知手段と、
を含む蓄電池システム。
【請求項4】
前記異常検知手段は、
前記蓄電池の充電時において、前記光検出デバイスで検出された発光を継続的に監視して、前記蓄電池の異常を検知し、
前記蓄電池の放電時において、前記光検出デバイスで検出された発光を断続的に監視して、前記蓄電池の異常を検知する、請求項3に記載の蓄電池システム。
【請求項5】
前記異常検知手段は、前記監視により得られた発光のパターンと、予め用意された、前記蓄電池の異常時における前記応力発光材料の発光パターンとを比較して、前記蓄電池の異常を検知する、請求項3に記載の蓄電池システム。
【請求項6】
前記発光層は、前記外装表面のうち一面のみに形成されている、請求項3に記載の蓄電池システム。
【請求項7】
前記発光層は、前記蓄電池の電極部を除く外装全面に形成されている、請求項3に記載の蓄電池システム。
【請求項8】
前記発光層は、前記外装表面に所定のパターン形状で形成されている、請求項3に記載の蓄電池システム。
【請求項9】
前記光検出デバイスは、前記発光層に対向して設置される、請求項3に記載の蓄電池システム。
【請求項10】
前記光検出デバイスは、前記発光層の面に倣った形状である、請求項3に記載の蓄電池システム。
【請求項11】
前記蓄電池は、車両に搭載される車両用蓄電池である、請求項3に記載の蓄電池システム。
【請求項12】
機械的な応力の印加によって発光する応力発光材料を含む発光層が、外装表面に形成された蓄電池と、前記発光層に対向して設置され、前記応力発光材料の発光を検出する光検出デバイスとを含む蓄電池システムにおける前記蓄電池の異常を検知する異常検知方法であって、
前記光検出デバイスで検出された発光を監視すること、
前記監視により得られた発光のパターンと、予め用意された、前記蓄電池の異常時における前記応力発光材料の発光パターンとを比較して、前記蓄電池の異常を検知すること、
を含む異常検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−133243(P2011−133243A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290427(P2009−290427)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(509348786)エンパイア テクノロジー ディベロップメント エルエルシー (117)
【Fターム(参考)】