説明

蓄電池システムの制御方法及び制御回路

【課題】蓄電池の並列接続に適した蓄電池システムの制御方法及び蓄電池システムの制御回路を提供すること。
【解決手段】蓄電池モジュールを複数個並列に接続して使用する蓄電池システムの制御方法において、蓄電池モジュール3毎に該蓄電池モジュール3と接続するマイクロプロセッサ回路1、2を設け、マイクロプロセッサ回路1、2は接続されている蓄電池モジュール3の充放電を監視・制御するとともに、他のマイクロプロセッサ回路1または2と通信する通信手段を有し、あらかじめ定められたアルゴリズムによって決まる1つのマイクロプロセッサ回路1が、自らに接続されていない蓄電池モジュール3の充放電を監視・制御することを特徴とする蓄電池システムの制御方法を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池システムの制御方法及び制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は通常フロート充電されるため、充電時の発熱が極めて小さい。そのため5000Ahを超える容量の単セルも存在する(下記非特許文献1の第43頁参照)。この単セルを数十本直列にして使用する。通信用のバックアップ電源では直流48Vを供給するため、大型の単セルを23または24本直列にして使用する。鉛蓄電池においては必要な容量に応じて大容量の単セルを使用できるため、電池を並列に接続する必要がなく、並列制御技術も必要がなかった。
【0003】
これに対し、ニッケル水素蓄電池は一般に定電流で充電され、充電末期の発熱が大きい(非特許文献1、第252〜259頁参照)。そのため、大容量の単セルは熱制御が極めてむずかしく、現在のところ実用化されている単セルは容量100Ah程度が上限である。これを、必要に応じて数十本直列にして使用するが、容量を増やすために直列の本数を多くすると電圧が高くなり、使いにくくなる場含もある。そこで、直列にできる本数は電圧で限られ、それでも容量が不足する場合には、更に複数列並列に接続して使用する必要がある。
【非特許文献1】「最新 実用二次電池」、日本電池株式会社編 第2版 1999年、日刊工業新聞社。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電池の監視・制御のためにマイクロプロセッサ回路を搭載することが多い。複数列並列の蓄電池を1つのマイクロプロセッサ回路で監視・制御することは可能であるが、蓄電池の一部が故障した場合にも全部停止して交換しなければならない。また蓄電池を増設する場合も同様である。更に、1つのマイクロプロセッサ回路によって監視・御御される蓄電池システムを複数台同時に1つの負荷に並列に接続して使用する場合に、個々のプロセッサは独立に働くので、協調制御を行うことはできない。そのため、並列接続された蓄電池システムに流れる電流にばらつきや集中が起きるのを避けることができなかった。
【0005】
これに対し、マスター/スレーブ方式を採用し、マスターとスレーブの2種類のマイクロプロセッサ回路を用いて、各スレーブには1ないし複数個の蓄電池モジュールを監視・制御させ、マスターが各スレーブを監視・制御することにより、協調制御を行わせることができる。しかしこの場合、マスターが故障するとシステム全体が動作しなくなるため、通常は冗長構成を採り、マスターを少なくとも2つ用意して一方をバックアップ用に待機させる必要がある。また、マスターとスレーブの2種類のマイクロプロセッサ回路、ソフトウェアが必要となり、構成が複雑となってコストも上昇する。そのため、ニッケル水素蓄電池を多数並列に接続した大規模システムは実現が困難であった。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、蓄電池の並列接続に適した蓄電池システムの制御方法及び制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、上記課題を解決するために、請求項1に記載のように、
直列に接続された複数の蓄電池単セルから成る組蓄電池モジュールを複数個使用する蓄電池システムの制御方法において、前記組蓄電池モジュール毎に該組蓄電池モジュールと接続するマイクロプロセッサ回路を設け、各前記マイクロプロセッサ回路は、自らに接続されている前記組蓄電池モジュールの充放電を監視・制御するとともに、他の前記マイクロプロセッサ回路と通信する通信手段を有し、あらかじめ定められたアルゴリズムによって決まる1つの前記マイクロプロセッサ回路が、自らに接続されていない前記組蓄電池モジュールの充放電を監視・制御することを特徴とする蓄電池システムの制御方法を構成する。
【0008】
また、本発明においては、請求項2に記載のように、
請求項1に記載の蓄電池システムの制御方法において、前記マイクロプロセッサ回路はそれぞれ相異なるアドレスを有し、あらかじめ定められたアルゴリズムによって、前記アドレスに準拠して、1つの前記マイクロプロセッサ回路がサーバとなり、他の前記マイクロプロセッサ回路がクライアントとなり、サーバである前記マイクロプロセッサ回路は、自らに接続されている前記組蓄電池モジュールの充放電を監視・制御するとともに、前記通信手段を用いて、自らに接続されていないすべての前記組蓄電池モジュールの充放電を監視・制御することを特徴とする蓄電池システムの制御方法を構成する。
【0009】
また、本発明においては、請求項3に記載のように、
請求項2に記載の蓄電池システムの制御方法において、正常に動作する前記マイクロプロセッサ回路の中で、最も小さい数値のアドレスを有するマイクロプロセッサ回路がサーバとなることを特徴とする蓄電池システムの制御方法を構成する。
【0010】
また、本発明においては、請求項4に記載のように、
請求項2に記載の蓄電池システムの制御方法において、サーバである前記マイクロプロセッサ回路がクライアントである前記マイクロプロセッサ回路と通信できなくなった場合に、該サーバであるマイクロプロセッサ回路は自らの通信機能が故障しているか否かを判断し、自らの通信機能が故障していると判断した場合には、自らに接続された組蓄電池モジュールを充放電回路から切り離し、自らの電源を切り、自らの通信機能が故障していないと判断した場合には、該クライアントであるマイクロプロセッサ回路に接続された組蓄電池モジュールを充放電回路から切り離すことを特徴とする蓄電池システムの制御方法を構成する。
【0011】
また、本発明においては、請求項5に記載のように、
請求項2に記載の蓄電池システムの制御方法において、クライアントである前記マイクロプロセッサ回路がサーバである前記マイクロプロセッサ回路と通信できなくなった場合に、該クライアントは、自分を一時的にサーバ兼クライアントに設定し、アドレス探索を行い、自分より小さいアドレスが見つかれば、自分はサーバであることをやめ、クライアントとなり、自分より小さいアドレスが見つからなければ、一定時間内に接続されたクライアントがある場合には、クライアントであることをやめ、サーバとなり、その他の場合には、自らに接続された組蓄電池モジュールを充放電回路から切り離し、自らの電源を切ることを特徴とする蓄電池システムの制御方法を構成する。
【0012】
また、本発明においては、請求項6に記載のように、
請求項2に記載の蓄電池システムの制御方法において、クライアントである前記マイクロプロセッサ回路が監視・制御する前記組蓄電池モジュールの状態が異常であるが該クライアントであるマイクロプロセッサ回路があらかじめ定められた対応をしない場合に、サーバである前記マイクロプロセッサ回路が、該クライアントであるマイクロプロセッサ回路に接続された組蓄電池モジュールを充放電回路から切り離すことを特徴とする蓄電池システムの制御方法を構成する。
【0013】
また、本発明においては、請求項7に記載のように、
請求項2に記載の蓄電池システムの制御方法において、前記マイクロプロセッサ回路によって監視・制御されて動作している前記組蓄電池モジュールに、別のマイクロプロセッサ回路によって監視・制御されて動作する別の組蓄電池モジュールを並列接続する場合に、すべての前記マイクロプロセッサ回路のアドレスに重複がなければ、前記動作中の組蓄電池モジュールの動作を継続させたまま、前記別の組蓄電池モジュールを前記動作中の組蓄電池モジュールに並列接続し、前記あらかじめ定められたアルゴリズムによって、サーバとクライアントとを再決定することを特徴とする蓄電池システムの制御方法を構成する。
【0014】
また、本発明においては、請求項8に記載のように、
請求項1ないし7のいずれかに記載の蓄電池システムの制御方法において、前記マイクロプロセッサ回路の動作状態に関する情報がモニタへ向けて送出されることを特徴とする蓄電池システムの制御方法を構成する。
【0015】
また、本発明においては、請求項9に記載のように、
請求項1ないし8のいずれかに記載の蓄電池システムの制御方法において、前記蓄電池がニッケル水素蓄電池であることを特徴とする蓄電池システムの制御方法を構成する。
【0016】
また、本発明においては、請求項10に記載のように、
蓄電池システムの制御回路であって、請求項1ないし9のいずれかに記載の蓄電池システムの制御方法を遂行することを特徴とする蓄電池システムの制御回路を構成する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、並列に接続された蓄電池を、マイクロプロセッサ回路によりマスター/スレーブ方式を用いずに制御することが可能となり、予備のマスターが不要となるため冗長構成が不要となり、コストの低減が可能になる。さらに、各種の故障に対処することが可能であり、故障に基づく危険性が低く信頼性が高い制御方法及び制御回路を提供することが可能となる。すなわち、本発明の実施により、蓄電池の並列接続に適した蓄電池システムの制御方法及び制御回路を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る蓄電池システムの制御方法の特徴は、1を含むあらかじめ定められた並列数の蓄電池モジュールを、並列数が1である場合はそのまま、他の場合は並列接続して組蓄電池モジュールとし、組蓄電池モジュール毎に該組蓄電池モジュールと接続するマイクロプロセッサ回路を設け、各マイクロプロセッサ回路は自らに接続されている組蓄電池モジュールの充放電を監視・制御するとともに、他のマイクロプロセッサ回路と通信する通信手段を有し、あらかじめ定められたアルゴリズムによって決まる1つのマイクロプロセッサ回路が、自らに接続されていない前記組蓄電池モジュールの充放電を監視・制御することにある。
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、図1〜図2を参照しながら、実施の形態例を挙げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこの実施の形態例に限定されるものではない。
【0020】
[実施の形態例]
図1は、本発明に係る蓄電池システムの制御方法を遂行するための回路構成を説明する図である。
【0021】
定格容量100Ahのニッケル水素蓄電池10本を直列に接続し、さらにそれを4個直列に接続して蓄電池モジュール3とする。1を含むあらかじめ定められた並列数の蓄電池モジュール3を、並列数が1である場合はそのまま、他の場合は並列接続して組蓄電池モジュールとするが、本実施の形態例においては、並列数は1であり、蓄電池モジュール3が、そのまま組蓄電池モジュールとなる。
【0022】
蓄電池モジュール3毎に蓄電池モジュール3と接続するマイクロプロセッサ回路1、2を設け、各マイクロプロセッサ回路は接続されている組蓄電池モジュール3の充放電を監視・制御するとともに、他のマイクロプロセッサ回路1、2と、LAN5を介して通信する通信手段を有し、あらかじめ定められたアルゴリズムによって決まる1つのマイクロプロセッサ回路(ここではマイクロプロセッサ回路1、これをサーバと呼ぶ)が、前記通信手段を用いるか、あるいは前記通信手段を用いずに、すべての蓄電池モジュール3の充放電を監視・制御する。また、マイクロプロセッサ回路1、2は充放電器4とも接続され、マイクロプロセッサ回路1、2の指示で充放電回路のON/OFFが出来るようになっている。サーバ以外のマイクロプロセッサ回路(ここでは、マイクロプロセッサ回路2)をクライアントと呼ぶ。
【0023】
1つの蓄電池モジュール3とそれに対応するマイクロプロセッサ回路1または2の組み合わせを1ユニットとするならば、本実施の形態例においては、図1に示すように、このユニットを6ユニット並列に接続し、それに、直流負荷(図示せず)を負荷接続側7において接続し、整流器(図示せず)を整流器接続側6において接続した。
【0024】
LAN5には、マイクロプロセッサ回路1、2の動作状態(正常、異常の別、制御している蓄電池モジュール3のアドレスなど)や蓄電池モジュール3の状態(充放電の電流、電圧、残容量推定値など)などを表示するモニタ9が接続され、マイクロプロセッサ回路の動作状態や蓄電池モジュール3の状態などに関する情報がモニタへ向けて送出されるようにしておく。
【0025】
〈サーバの決定〉
マイクロプロセッサ回路1、2はそれぞれ相異なるアドレスを有し、あらかじめ定められたアルゴリズムによって、前記アドレスに準拠して、1つの前記マイクロプロセッサ回路(ここでは、マイクロプロセッサ回路1)がサーバとなり、他の前記マイクロプロセッサ回路がクライアント(ここでは、マイクロプロセッサ回路2)となり、サーバとして動作するマイクロプロセッサ回路1は、自らに接続されている前記組蓄電池モジュールの充放電を監視・制御するとともに、前記通信手段を用いて、自らに接続されていないすべての前記組蓄電池モジュールの充放電を監視・制御する。
【0026】
サーバの決定(したがってクライアントの決定)を行う場合に、各マイクロプロセッサ回路1、2にアドレスをつけることが有効である。図1に示したように、各マイクロプロセッサ回路1、2に 192.168.1.2 から 192.168.1.7 までのアドレスをつけ、図2に示すアルゴリズムに従い、サーバの決定(したがってクライアントの決定)及び、それぞれの機能設定を行うことができる。
【0027】
この場合に、マイクロプロセッサ回路1、2は、サーバにもクライアントにもなり得るものとする。
【0028】
図2に示すアルゴリズムに従い、各マイクロプロセッサ回路に組み込まれたプログラムは、それぞれ自分を一時的にサーバ兼クライアントにし、自分のアドレスより小さいアドレスを192.168.1.2 から順に探索する。すなわち、図2において、ステップS1でサーバ機能を設定し、ステップS2でクライアント機能を設定し、ステップS3でアドレス探索をする。
【0029】
ステップS4で自アドレスより小さなアドレスが見つかった場合にはステップS5でサーバに接続し、ステップS6でサーバ機能を解除し、クライアントとなる。すなわち、もし、192.168.1.2 を外部に見つければ、自分はサーバであることをやめ、クライアント(マイクロプロセッサ回路2)となって 192.168.1.2 に接続する。
【0030】
また、ステップS4で自アドレスより小さなアドレスが見つからなかったときは、ステップS7に進んで待機状態となり、ステップS8で相手がクライアントとしてサーバ接続してきた場合にステップS9でクライアント機能を解除し、サーバ(マイクロプロセッサ回路1)となる。すなわち、もしサーバ兼クライアントとなっている間に相手がクライアントとしてサーバ接続してきた場含は、クライアントであることをやめ、サーバとなる。
【0031】
以上の流れによって、アドレスに準拠して、1つのマイクロプロセッサ回路(この場合には、最も小さい数値のアドレスを有するもの)がサーバとなり、他がすべてクライアントとなる。
【0032】
クライアントは自らに接続された蓄電池モジュール3それぞれの電圧と充放電電流、モジュール温度を 10 秒ごとに計測し、その結果をサーバに送信するとともに、異常な値を計測した場合には充放電器内で該当蓄電池モジュール3を切り離す。サーバは各クライアントから送信されてくる蓄電池の計測データに異常がないかどうか確認し、異常な値が送信されているにも関わらず該当蓄電池モジュール3が切り離されていない場合には、該当蓄電池モジュール3に接続されたクライアントにコマンドを送信して、該当蓄電池モジュール3を切り離すことができる。
【0033】
〈蓄電池モジュールの増設〉
マイクロプロセッサ回路1または2によって監視・制御されて動作している蓄電池モジュール3に、別のマイクロプロセッサ回路によって監視・制御されて動作する別の並列蓄電池モジュールを並列接続する場合に、すべてのマイクロプロセッサ回路のアドレスに重複がなければ、動作中の並列蓄電池モジュール3の動作を継続させたまま、前記別の並列蓄電池モジュールを前記動作中の並列蓄電池モジュール3に並列接続し、図2に示すアルゴリズムに従い、サーバとクライアントとを再決定する。このようにして、並列蓄電池モジュールの増設を行うことができる。
【0034】
〈動作例〉
(サーバ故障のシミュレーション)
図1において、サーバであるアドレス 192.168.1.2 のマイクロプロセッサ回路1の電源を切ると、このマイクロプロセッサ回路1が監視・制御している蓄電池システムは不活性化され、充放電器との接続が切断されて動作しなくなる。それと共に、残りのマイクロプロセッサ回路2は再び一時的にサーバ兼クライアントとなり、自分のアドレスより小さいアドレスを 192.168.1.2 から順に探索する。アドレス 192.168.1.2 の回路1は動作していないので、次に小さいアドレス 192.168.1.3 のマイクロプロセッサ回路2がサーバとなり、残りはクライアントとなる。
【0035】
なお、サーバ探索中に停電等で整流器電圧が下がり、蓄電池が放電した場合には、探索中はサーバとしての機能は働かないので、その間協調制御はできないが放電には支障ない。数秒後にはサーバが確定するので、その後は協調制御ができる。
【0036】
なお、サーバであるアドレス 192.168.1.2 のマイクロプロセッサ回路がクライアントであるマイクロプロセッサ回路と通信できなくなった場合、サーバとクライアントのそれぞれのマイクロプロセッサ回路は、自らの通信機能が正常かどうかを判定して対処する。
【0037】
図3はサーバのアルゴリズムを示す流れ図である。まず、ステップS1で、サーバはクライアントと通信可能か否かを判定する。通信可能であればステップS1に戻り、通信不能であればステップS2に進む。サーバが全てのクライアントと通信不能であれば、サーバは自分の故障と判定し、少なくとも1つのクライアントと通信可能であれば、サーバは通信不能のクライアントを故障と判定する。サーバの故障と判定されればステップS3に進み、サーバは自らのマイクロプロセッサ回路に接続されている蓄電池モジュールを充放電回路から切り離し、ステップS4でサーバの電源を切る。もし、クライアントの故障と判定されれば、ステップS5に進み、サーバは故障と判定されたクライアントのマイクロプロセッサ回路に接続されている蓄電池モジュールを充放電回路から切り離す。
【0038】
図4はクライアントのアルゴリズムを示す流れ図である。まず、ステップS1でクライアントはサーバと通信可能か否かを判定し、通信可能であればステップS1に戻り、通信不能であればステップS2に進む。サーバとの通信が不能となったクライアントは自分を一時的にサーバ兼クライアントに設定し、図2に示したアルゴリズムによりアドレス探索を行う。もしステップS3において自分より小さいアドレスが見つかれば、ステップS4に進み、そのアドレスを有するマイクロプロセッサ回路をサーバとし、自らはサーバ機能を停止してクライアントとなる。また、もし自分より小さいアドレスが見つからない場合にはステップS4’に進み、他のクライアントが接続してきた段階でステップS5’で自らのクライアント機能を停止し、サーバとなる。一定時間(例えば5分)の問に新しいサーバが見つからず、また自らサーバとなることもなかった場合には、自らの故障と判断してステップS5”に進み、自分のマイクロプロセッサ回路に接続されている蓄電池モジュールを充放電回路から切り離した後、ステップS6”に進んでマイクロプロセッサ回路の電源を切る。
【0039】
万一、故障サーバが、自らのマイクロプロセッサ回路に接続されている蓄電池モジュールを充放電回路から切り離せない場合には、新しいサーバが該蓄電池モジュールを充放電回路から切り離す。また、故障クライアントが自らのマイクロプロセッサ回路に接続されている蓄電池モジュールを切り離せない場合には、サーバが該蓄電池モジュールを充放電回路から切り離す。
【0040】
また、蓄電池モジュールが放電停止電圧になっても接続されているクライアントが放電を停止しない、あるいは蓄電池電圧が正常範囲外であるのに、蓄電池モジュールを充放電回路から切り離さをい等の場合には、サーバはクライアントが故障していると判断し、図3に示すアルゴリズムと同様に、クライアントに代わって該蓄電池モジュールを充放電回路から切り離すことができる。
(クライアント故障のシミュレーション1)
次に、クライアントであるアドレス 192.168.1.5 のマイクロプロセッサ回路2の電源を切った後、整流器の電源を切って蓄電池システムから負荷に放電させたところ、残る4ユニットから正常に放電することが確認された。これは、アドレス 192.168.1.5 のマイクロプロセッサ回路との通信が不能になったことをサーバが検知し、図3のアルゴリズムに従って、アドレス 192.168.1.5 のマイクロプロセッサ回路に接続された蓄電池モジュールを充放電回路から切り離す制御を行ったからである。
【0041】
その後、整流器とアドレス 192.168.1.5 のマイクロプロセッサ回路2の電源を復電させ、再度整流器の電源を切って負荷に放電させたところ、今度は 192.168.1.5 のマイクロプロセッサ2も含めて5ユニットから正常に放電した。これも、アドレス 192.168.1.5 のマイクロプロセッサ回路動作が正常に戻ったことをサーバが検知し、それに対応する制御を行ったからである。
【0042】
なお、クライアントであるマイクロプロセッサ回路2の動作が異常であることをサーバであるアドレス 192.168.1.3 のマイクロプロセッサ回路2が認識した場合に、サーバであるアドレス 192.168.1.3 のマイクロプロセッサ回路が、該異常動作にあるマイクロプロセッサ回路2の電源を切るように、制御プログラムを組んでおけば、この場合にも、上記と同様に、正常に放電が継続される。
(クライアント故障のシミュレーション2)
次に、整流器を復電させ、アドレス 192.168.1.6 のマイクロプロセッサ回路2のLANケーブルを抜いて通信機能を停止させた。続いて整流器の電源を切って負荷に放電させたところ、アドレス 192.168.1.3、4、5、7、の4ユニットから正常に放電した。これは、この場合にも、アドレス 192.168.1.6 のマイクロプロセッサ回路との通信が不能になったことをサーバが検知し、図3のアルゴリズムに従って、アドレス 192.168.1.6 のマイクロプロセッサ回路に接続された蓄電池モジュールを充放電回路から切り離す制御を行ったからである。
(蓄電池モジュール異常のシミュレーション)
次に、アドレス 192.168.1.7 のマイクロプロセッサ回路2のプログラムを一部改変し、蓄電池モジュール3の電圧が40.0V以下であっても、サーバへの異常信号の発出と充放電器からの切り離しを行わないようにするとともに、蓄電池モジュール3中の接続を1箇所切断した。その後整流器を復電させ、アドレス 192.168.1.6 のマイクロプロセッサ回路2の通信機能を、LAN5との接続によって回復させた後、整流器の電源を切って負荷に放電させた。この時アドレス 192.168.1.3 のサーバは、蓄電池電圧 0Vを検出してからアドレス 192.168.1.7 のクライアントに充放電器からの蓄電池モジュール3の切り離し命令を出したため、該当の蓄電池モジュール3は充放電器から切り離され、アドレス 192.168.1.7 のユニットからの放電は行われなかった。
【0043】
次に、アドレス 192.168.1.7 のマイクロプロセッサ回路2の電源を一旦切って内蔵プログラムを正常に戻し、蓄電池モジュール3の断線を修復し、その後電源を投入した。その結果、アドレス 192.168.1.7 のマイクロプロセッサ回路2はクライアントとなって、アドレス 192.168.1.3 のサーバに接続された。またアドレス 192.168.1.7 のマイクロプロセッサ回路2は、自らに接続された蓄電池モジュール3の電圧、温度等が正常値になっていることを確認して充放電器に接続したので、再び充放電が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る蓄電池システムの制御方法を遂行するための回路構成を説明する図である。
【図2】マイクロプロセッサ回路の起動時のクライアント、サーバ決定のアルゴリズムを示す流れ図である。
【図3】サーバがクライアントと連絡不能になったときの、サーバの対処アルゴリズムを示す流れ図である。
【図4】サーバがクライアントと連絡不能になったときの、クライアントの対処アルゴリズムを示す流れ図である。
【符号の説明】
【0045】
1、2:マイクロプロセッサ回路、3:蓄電池モジュール、4:充放電器、5:LAN、6:整流器接続側、7:負荷接続側、8:モニタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の蓄電池単セルから成る組蓄電池モジュールを複数個使用する蓄電池システムの制御方法において、
前記組蓄電池モジュール毎に該組蓄電池モジュールと接続するマイクロプロセッサ回路を設け、各前記マイクロプロセッサ回路は、自らに接続されている前記組蓄電池モジュールの充放電を監視・制御するとともに、他の前記マイクロプロセッサ回路と通信する通信手段を有し、あらかじめ定められたアルゴリズムによって決まる1つの前記マイクロプロセッサ回路が、自らに接続されていない前記組蓄電池モジュールの充放電を監視・制御することを特徴とする蓄電池システムの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電池システムの制御方法において、
前記マイクロプロセッサ回路はそれぞれ相異なるアドレスを有し、あらかじめ定められたアルゴリズムによって、前記アドレスに準拠して、1つの前記マイクロプロセッサ回路がサーバとなり、他の前記マイクロプロセッサ回路がクライアントとなり、サーバである前記マイクロプロセッサ回路は、自らに接続されている前記組蓄電池モジュールの充放電を監視・制御するとともに、前記通信手段を用いて、自らに接続されていないすべての前記組蓄電池モジュールの充放電を監視・制御することを特徴とする蓄電池システムの制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電池システムの制御方法において、
正常に動作する前記マイクロプロセッサ回路の中で、最も小さい数値のアドレスを有するマイクロプロセッサ回路がサーバとなることを特徴とする蓄電池システムの制御方法。
【請求項4】
請求項2に記載の蓄電池システムの制御方法において、
サーバである前記マイクロプロセッサ回路がクライアントである前記マイクロプロセッサ回路と通信できなくなった場合に、該サーバであるマイクロプロセッサ回路は自らの通信機能が故障しているか否かを判断し、
自らの通信機能が故障していると判断した場合には、自らに接続された組蓄電池モジュールを充放電回路から切り離し、自らの電源を切り、
自らの通信機能が故障していないと判断した場合には、該クライアントであるマイクロプロセッサ回路に接続された組蓄電池モジュールを充放電回路から切り離すことを特徴とする蓄電池システムの制御方法。
【請求項5】
請求項2に記載の蓄電池システムの制御方法において、
クライアントである前記マイクロプロセッサ回路がサーバである前記マイクロプロセッサ回路と通信できなくなった場合に、該クライアントは、自分を一時的にサーバ兼クライアントに設定し、アドレス探索を行い、
自分より小さいアドレスが見つかれば、自分はサーバであることをやめ、クライアントとなり、
自分より小さいアドレスが見つからなければ、一定時間内に接続されたクライアントがある場合には、クライアントであることをやめ、サーバとなり、その他の場合には、自らに接続された組蓄電池モジュールを充放電回路から切り離し、自らの電源を切ることを特徴とする蓄電池システムの制御方法。
【請求項6】
請求項2に記載の蓄電池システムの制御方法において、
クライアントである前記マイクロプロセッサ回路が監視・制御する前記組蓄電池モジュールの状態が異常であるが該クライアントであるマイクロプロセッサ回路があらかじめ定められた対応をしない場合に、サーバである前記マイクロプロセッサ回路が、該クライアントであるマイクロプロセッサ回路に接続された組蓄電池モジュールを充放電回路から切り離すことを特徴とする蓄電池システムの制御方法。
【請求項7】
請求項2に記載の蓄電池システムの制御方法において、
前記マイクロプロセッサ回路によって監視・制御されて動作している前記組蓄電池モジュールに、別のマイクロプロセッサ回路によって監視・制御されて動作する別の組蓄電池モジュールを並列接続する場合に、すべての前記マイクロプロセッサ回路のアドレスに重複がなければ、前記動作中の組蓄電池モジュールの動作を継続させたまま、前記別の組蓄電池モジュールを前記動作中の組蓄電池モジュールに並列接続し、前記あらかじめ定められたアルゴリズムによって、サーバとクライアントとを再決定することを特徴とする蓄電池システムの制御方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の蓄電池システムの制御方法において、
前記マイクロプロセッサ回路の動作状態に関する情報がモニタへ向けて送出されることを特徴とする蓄電池システムの制御方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の蓄電池システムの制御方法において、
前記蓄電池がニッケル水素蓄電池であることを特徴とする蓄電池システムの制御方法。
【請求項10】
蓄電池システムの制御回路であって、
請求項1ないし9のいずれかに記載の蓄電池システムの制御方法を遂行することを特徴とする蓄電池システムの制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−5544(P2009−5544A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166147(P2007−166147)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】