蓄電池劣化傾向推定システムおよび蓄電池劣化傾向推定プログラム
【課題】 蓄電池の劣化傾向をより適正に推定する。
【解決手段】 特定の放電電流値での初期放電特性を記憶した放電特性データベース4と、蓄電池のある放電電流値における放電容量の経年変化の傾向を記憶した経年変化データベース5と、蓄電池劣化傾向推定プログラム6とを備える。蓄電池劣化傾向推定プログラム6は、放電特性データベース4に記憶された初期放電特性に基づいて、入力された実放電電流値に対する初期放電特性を算出し、測定された実放電電圧が所定の電圧以下の場合には、入力された実放電時間と実放電電圧と算出した初期放電特性とに基づいて、経年後放電特性を算出し、所定の電圧よりも高い場合には、経年値に対する放電容量を経年変化データベース5から取得し、この放電容量と実放電電流値と算出した初期放電特性とに基づいて、経年後放電特性を算出する。
【解決手段】 特定の放電電流値での初期放電特性を記憶した放電特性データベース4と、蓄電池のある放電電流値における放電容量の経年変化の傾向を記憶した経年変化データベース5と、蓄電池劣化傾向推定プログラム6とを備える。蓄電池劣化傾向推定プログラム6は、放電特性データベース4に記憶された初期放電特性に基づいて、入力された実放電電流値に対する初期放電特性を算出し、測定された実放電電圧が所定の電圧以下の場合には、入力された実放電時間と実放電電圧と算出した初期放電特性とに基づいて、経年後放電特性を算出し、所定の電圧よりも高い場合には、経年値に対する放電容量を経年変化データベース5から取得し、この放電容量と実放電電流値と算出した初期放電特性とに基づいて、経年後放電特性を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓄電池の容量や寿命などの特性を推定する蓄電池劣化傾向推定システムおよび蓄電池劣化傾向推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
シール型鉛蓄電池やリチウムイオン二次電池などの蓄電池は、使用年数の経過に伴ってその容量が低下し、容量が所定の容量未満に達した場合には、新たな蓄電池と交換する必要がある。また、蓄電池の製造メーカなどによって、蓄電池の期待寿命が提示されているが、蓄電池の実際の寿命は、使用環境や使用条件などによって影響される。このため、実際の運用においては、現時点での蓄電池容量がどのくらいであるかを知り、さらには、寿命に至るまでの期間・残寿命を予測して、蓄電池交換などの計画を策定する必要がある。
【0003】
一方、現時点での蓄電池容量を正確に知るには、放電試験を行う必要があるが、蓄電池を終止電圧(放電を終了させるべき電圧)まで放電させるには、長時間を要し、その間、蓄電池の使用が不可能となる。つまり、UPS(Uninterruptible Power Supply)などのバックアップ電源として使用されている蓄電池の場合、放電試験を行っている間は、バックアップ電源としての機能が失われてしまう。このため、蓄電池を終止電圧まで放電させることなく、短時間放電するだけで、蓄電池容量を推定することが可能な技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。例えば、蓄電池を短時間放電して蓄電池の端子電圧を測定し、測定電圧の変化から蓄電池容量を推定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−040967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓄電池は、定格容量や期待寿命が同等であっても、設計思想や製造工程の違いなどによって、経年に伴う容量の変化が異なる。また、経年に伴って、蓄電池の放電特性が異なることも、本発明者によって確認されている。つまり、経年によって放電カーブが変化し、例えば、放電直後の電圧低下が、経年に伴って大きくなり、また、放電率(放電電流)が高いほど、経年に伴う電圧降下が大きいことが、本発明者によって確認されている。このため、経年に伴う蓄電池の容量変化特性や放電特性などを考慮しなければ、蓄電池の劣化傾向を正確・適正に推定することはできず、蓄電池を短時間放電して、例えば、蓄電池の端子電圧の変化のみから蓄電池容量を推定したとしても、正確・適正な蓄電池容量を推定することはできない。
【0006】
そこでこの発明は、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能な蓄電池劣化傾向推定システムおよび蓄電池劣化傾向推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、経年してない状態における蓄電池の放電特性を初期放電特性、経年後の蓄電池の放電特性を経年後放電特性とし、
蓄電池の経年値および、蓄電池を実放電した際の実放電電流値と測定された実放電時間とその実放電電圧などを入力する入力手段と、
特定の放電電流値での初期放電特性を記憶した放電特性記憶手段と、
蓄電池のある放電電流値における放電容量の経年変化の傾向を記憶した経年変化記憶手段と、
前記放電特性記憶手段に記憶された初期放電特性に基づいて、前記入力手段で入力された実放電電流値に対する初期放電特性を実放電電流の初期放電特性として算出し、前記入力手段で入力された実放電電圧が所定の電圧以下の場合には、前記入力手段で入力された実放電時間と実放電電圧と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流値に対する経年後放電特性を実放電電流の経年後放電特性として算出し、前記実放電電圧が前記所定の電圧よりも高い場合には、前記入力手段で入力された経年値に対する放電容量を前記経年変化記憶手段から取得し、取得した放電容量と前記実放電電流値と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流の経年後放電特性を算出する処理手段と、
を備えることを特徴とする蓄電池劣化傾向推定システムである。
【0008】
この発明によれば、入力手段で蓄電池の経年値や、蓄電池を実放電した際の実放電電流値などを入力すると、処理手段によって、まず、入力された実放電電流値に対する初期放電特性が実放電電流の初期放電特性として算出される。次に、入力された実放電電圧が所定の電圧以下の場合には、入力された実放電時間と実放電電圧と実放電電流の初期放電特性とに基づいて、実放電電流値に対する経年後放電特性が実放電電流の経年後放電特性として算出される。一方、実放電電圧が所定の電圧よりも高い場合には、入力された経年値に対する放電容量が経年変化記憶手段から取得され、この放電容量と実放電電流値と実放電電流の初期放電特性とに基づいて、実放電電流の経年後放電特性が算出される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の蓄電池劣化傾向推定システムにおいて、前記処理手段は、前記実放電電流の経年後放電特性に基づいて、所定の容量に至るまでの寿命(期間)を算出する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の蓄電池劣化傾向推定システムにおいて、前記放電特性記憶手段には、製造設計が異なる蓄電池ごとに前記初期放電特性が記憶され、前記経年変化記憶手段には、製造設計が異なる蓄電池ごとに前記経年変化の傾向が記憶され、前記処理手段は、前記入力手段で入力された蓄電池の製造設計に対応した初期放電特性と経年変化の傾向とに基づいて、前記実放電電流の経年後放電特性を算出する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、経年してない状態における蓄電池の放電特性を初期放電特性、経年後の蓄電池の放電特性を経年後放電特性とし、蓄電池の経年値および、蓄電池を実放電した際の実放電電流値と測定された実放電時間とその実放電電圧などが入力され、
コンピュータに、
特定の放電電流値での初期放電特性に基づいて、入力された実放電電流値に対する初期放電特性を実放電電流の初期放電特性として算出するステップと、
入力された実放電電圧が所定の電圧以下の場合に、入力された実放電時間と実放電電圧と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流値に対する経年後放電特性を実放電電流の経年後放電特性として算出するステップと、
前記実放電電圧が前記所定の電圧よりも高い場合に、蓄電池のある放電電流値における放電容量の経年変化の傾向に基づいて、入力された経年値に対する放電容量を取得し、取得した放電容量と前記実放電電流値と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流の経年後放電特性を算出するステップと、
を実行させるための蓄電池劣化傾向推定プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1および4に記載の発明によれば、蓄電池を実放電した際に測定された実放電電圧が所定の電圧以下の場合、つまり、経年した蓄電池に対して信頼性の高い測定データが得られている場合には、その測定データ(実放電時間と実放電電圧)に基づいて実放電電流の経年後放電特性を算出する。このため、信頼性の高い測定データに基づく適正な実放電電流の経年後放電特性が得られる。一方、蓄電池を実放電した際に測定された実放電電圧が所定の電圧よりも高い場合、つまり、経年した蓄電池に対して信頼性の高い測定データが得られていない場合には、蓄電池の経年値に相応する放電容量と初期放電特性などに基づいて、実放電電流の経年後放電特性を算出する。このため、蓄電池の経年値に基づく適正な実放電電流の経年後放電特性が得られる。このようにして、適正な実放電電流の経年後放電特性が得られることで、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、所定の容量に至るまでの寿命が算出されるため、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能となるとともに、蓄電池に対する措置を適正かつ迅速に行うことが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、蓄電池の製造設計に対応した初期放電特性と経年変化の傾向とに基づいて、実放電電流の経年後放電特性を算出するため、より適正な実放電電流の経年後放電特性が得られる。この結果、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態に係る蓄電池劣化傾向推定システムを示す概略構成ブロック図である。
【図2】図1のシステムの経年変化データベースに記憶されている経年変化の傾向例を示す図である。
【図3】図1のシステムの蓄電池劣化傾向推定プログラムのフローチャートである。
【図4】図3のプログラムによる初期放電カーブの算出方法を示す図である。
【図5】図3のプログラムによる経年後放電カーブの算出方法の一例を示す図である。
【図6】図3のプログラムによる初期放電カーブと経年後放電カーブの一例を示す図である。
【図7】図3のプログラムによる経年後放電カーブの算出方法の他例を示す図である。
【図8】図3のプログラムによる初期放電カーブと経年後放電カーブの他例を示す図である。
【図9】図3のプログラムによる容量推移線と実験データの一例を示す図である。
【図10】図1のシステムで入力される入力パラメータの一例を示す図である。
【図11】図1のシステムにおける期待寿命と周囲温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
図1は、この発明の実施の形態に係る蓄電池劣化傾向推定システム1を示す概略構成ブロック図である。この蓄電池劣化傾向推定システム1は、蓄電池の容量や寿命などの特性を推定するシステムであり、主として、入力部(入力手段)2と、表示部3と、放電特性データベース(放電特性記憶手段)4と、経年変化データベース(経年変化記憶手段)5と、蓄電池劣化傾向推定プログラム(処理手段)6と、これらを制御などする中央処理部7とを備え、汎用コンピュータから構成されている。ここで、経年してない状態(新品)における蓄電池の放電特性を「初期放電特性」、経年後の蓄電池の放電特性を「経年後放電特性」とし、また、主として、通信機器などの負荷に対してバックアップ電源として機能するシール型鉛蓄電池を対象蓄電池とする場合について、以下に説明する。
【0018】
入力部2は、蓄電池の経年値および蓄電池を実放電した際の実放電電流値と測定された実放電時間とその実放電電圧等の入力パラメータなどを入力するものであり、キーボードやマウスなどで構成されている。表示部3は、入力部2で入力された入力パラメータや蓄電池劣化傾向推定プログラム6による演算結果などを出力表示するものであり、LCDなどで構成されている。
【0019】
放電特性データベース4は、特定の放電電流値での初期放電特性を記憶したデータベースである。具体的には、蓄電池の定格容量ごとに、例えば、10時間放電率(「C」を定格容量とした場合の0.1C放電電流値)の初期放電カーブ(初期放電特性)、5時間放電率(0.16C放電電流値)の初期放電カーブ、3時間放電率(0.23C放電電流値)の初期放電カーブなどが記憶されている。さらに、製造設計が異なる蓄電池ごとの初期放電カーブが記憶されている。すなわち、製造工程や設計思想などは、蓄電池の放電特性などに影響を与えるため、製造工程や設計思想などが異なる蓄電池ごと、例えば、製造メーカごとに、初期放電カーブが記憶されている。
【0020】
経年変化データベース5は、蓄電池のある放電電流値における放電容量の経年変化の傾向を記憶したデータベースである。具体的にこの実施の形態では、周囲温度が25℃での蓄電池の定格容量ごとに、図2に示すように、定格容量の放電時間率である10時間放電率の放電容量の経年変化の傾向を示す実験データL1と、この実験データL1に基づく近似曲線L2とが記憶されている。さらに、放電特性データベース4と同様に、製造設計が異なる蓄電池ごとの経年変化の傾向が記憶されている。すなわち、製造工程や設計思想などは、蓄電池容量の経年変化などに影響を与えるため、製造工程や設計思想などが異なる蓄電池ごと、例えば、製造メーカごとに、経年変化の傾向が記憶されている。
【0021】
蓄電池劣化傾向推定プログラム6は、入力部2で入力された入力パラメータに基づいて、対象蓄電池の実放電電流の経年後放電特性などを算出するプログラムである。すなわち、実際に蓄電池を放電した際の放電電流値と、その際に測定された少なくとも1点(1組)の実放電時間とその実放電電圧とに基づいて、放電した時点における経年後放電特性などを算出するものであり、コンピュータに、
放電特性データベース4に記憶された初期放電特性に基づいて、入力部2で入力された実放電電流値に対する初期放電特性を実放電電流の初期放電特性として算出する初期特性ステップと、
入力部2で入力された実放電電圧が所定の電圧以下の場合に、入力部2で入力された実放電時間と実放電電圧と実放電電流の初期放電特性とに基づいて、実放電電流値に対する経年後放電特性を実放電電流の経年後放電特性として算出する第1の経年後特性ステップと、
入力部2で入力された実放電電圧が所定の電圧よりも高い場合には、入力部2で入力された経年値に対する放電容量を経年変化データベース5から取得し、取得した放電容量と実放電電流値と実放電電流の初期放電特性とに基づいて、実放電電流の経年後放電特性を算出する第2の経年後特性ステップと、
算出した実放電電流の経年後放電特性に基づいて、所定の容量に至るまでの寿命を算出する寿命ステップと、
を実行させるためのプログラムである。
【0022】
ここで、実放電とは、バックアップの対象である負荷に対して蓄電池から電力供給(放電)した場合や、蓄電池から試験機器に対して電力供給した場合などが挙げられる。従って、例えば、バックアップの対象である負荷に対して放電した場合には、負荷への放電電流値が実放電電流値となる。また、実放電は、単電池(単一の電池・セル)に対して行う場合でも、単電池を複数接続して構成した組電池に対して行う場合であってもよい。すなわち、放電特性データベース4や経年変化データベース5には、単電池としての初期放電特性や経年変化の傾向が記憶されているが、組電池に対して実放電を行った場合には、組電池全体の電圧(総電圧)を直列に接続された単電池の数(セル数)で除算した電圧(平均セル電圧)を実放電電圧とする。
【0023】
具体的には、図3に示すように、まず、入力部2で入力された実放電電流値に対する初期放電特性を実放電電流の初期放電カーブ(初期放電特性)として算出する(ステップS1、初期特性ステップ)。例えば、実放電電流値が0.12C(=定格容量C×0.12)で、放電特性データベース4に10時間放電率(0.1C)の初期放電カーブと5時間放電率(0.16C)の初期放電カーブが記憶されている場合、図4に示すように、0.1Cの初期放電カーブと0.16Cの初期放電カーブとの間に按分されるように、0.12Cの初期放電カーブD1を算出する。ここで、入力部2で入力された蓄電池の定格容量や製造メーカ(製造設計)に対応した0.1Cなどの初期放電カーブを放電特性データベース4から取得して、0.12Cの初期放電カーブD1を算出する。
【0024】
次に、入力部2で入力された実放電電圧が所定の電圧以下であるか否かを判断する(ステップS2)。つまり、実放電の際に実放電電圧が所定の電圧以下まで測定された否かを判断する。このような判断を行うのは、実放電電圧が所定の電圧以下まで測定されている場合には、経年した蓄電池に対して信頼性の高い測定データが得られている、と考えられるからである。このことは、経年に伴って蓄電池の放電特性が変化し、例えば、放電直後の電圧低下が経年に伴って大きくなり、高い電圧時(放電初期の電圧降下時)の測定データのみでは、適正な放電特性(放電カーブ)を推定することができない、との本発明者の考察によるものである。このため、所定の電圧は、適正な放電カーブを推定することが可能な電圧、例えば、放電終止電圧(各放電電流値に対して放電を終了させるべき電圧)に近い電圧に設定されている。
【0025】
そして、実放電電圧が所定の電圧以下の場合には、入力部2で入力された実放電時間と実放電電圧と実放電電流の初期放電カーブとに基づいて、実放電電流値に対する経年後放電カーブ(経年後放電特性)を実放電電流の経年後放電カーブとして算出する(ステップS3、第1の経年後特性ステップ)。具体的には、図5、6に示すように、実放電時間と実放電電圧とのポイントP1を通るように、ステップS1で算出した実放電電流の初期放電カーブD1を按分、変形させて、実放電電流の経年後放電カーブD2を算出する。
【0026】
一方、実放電電圧が所定の電圧よりも高い場合には、まず、入力部2で入力された経年値に対する放電容量を経年変化データベース5から取得する(ステップS4)。すなわち、蓄電池の製造年月からの経過年数に相応する放電容量を取得する。このとき、入力部2で入力された蓄電池の定格容量や製造メーカ(製造設計)に対応した経年変化の近似曲線L2(図2)を経年変化データベース5から検索して、放電容量を取得する。また、入力部2で入力された平均周囲温度が25℃よりも高い場合には、入力部2で入力された経年値を25℃に換算した経年値として、放電容量を取得する。すなわち、アレニウスの法則により、平均周囲温度が25℃よりも高い場合、次式のように蓄電池の劣化が加速することから、経年値を25℃に換算する。
F25=F×2^{(T−25)/10}
F:実際の経過年月
F25:25℃に換算した経過年月
T:平均周囲温度
【0027】
次に、取得した放電容量に基づいて、経年値に対する実放電電流値での放電容量を算出する(ステップS5)。すなわち、経年変化データベース5に記憶されている経年変化の放電電流値と実放電電流値とに基づいて、経過年数に相応する実放電電流値での放電容量を算出する。具体的には、例えば、次式のように、経年変化データベース5の放電電流値における初期容量CP1と実放電電流値における初期容量CP2との比と、経年変化データベース5の経年値に対する放電容量CP3とに基づいて、実放電電流値での経年値に対する放電容量CP4を算出する。
CP4=CP2/CP1×CP3
【0028】
続いて、ステップS5で算出した放電容量CP4と実放電電流の初期放電カーブとに基づいて、実放電電流の経年後放電カーブ(経年後放電特性)を算出する(ステップS6)。すなわち、図7、8に示すように、放電容量がステップS5で算出した放電容量CP4となるように、実放電電流の初期放電カーブD1を按分、変形させて、実放電電流の経年後放電カーブD2を算出する。なお、図7における「補正後放電時間」が経年後放電カーブD2に相当し、「補正後容量」が放電容量CP4に相当する。
【0029】
また、この実施の形態では、実放電時間と実放電電圧(P1)と実放電電流の初期放電カーブD1とに基づく実放電電流の経年後放電カーブD3も、比較参考などのために算出する。なお、図7における「放電時間(実測時)」が経年後放電カーブD3に相当し、「容量」が実放電時間と実放電電圧(P1)に基づく放電容量に相当する。以上のステップS4〜S6が、上記の第2の経年後特性ステップに該当する。
【0030】
次に、算出した実放電電流の経年後放電カーブD2に基づいて、定格容量の放電時間率(定格時間率)での実容量を算出する(ステップS7)。すなわち、経年後放電カーブD2から実放電電流値での放電容量を算出し、この放電容量を定格時間率での実容量に換算する。このとき、例えば、定格時間率における初期容量と実放電電流値における初期容量との比に基づいて、実容量に換算する。例えば、実放電電流値が0.16C、その放電容量が65.7%で、定格時間率が0.1Cの場合、定格時間率での実容量が70.3%などと算出される。
【0031】
続いて、ステップS7で算出した実容量に基づいて、所定の容量に至るまでの寿命を算出する(ステップS8)。すなわち、図9に示すように、経過年数と容量の関係を示すグラフ上に実容量をプロットし、初期容量と実容量(複数ある場合には複数の実容量)とを線で結び容量推移線L3とする。このとき、ステップS4の場合と同様に、入力部2で入力された平均周囲温度が25℃よりも高い場合には、アレニウスの法則に基づいて、入力部2で入力された経年値を25℃に換算した経年値(経過年数)として、実容量をプロットする。そして、この容量推移線L3に基づいて、所定の容量に至るまでの推定寿命や残寿命を算出する。ここで、この実施の形態では、蓄電池の寿命とみなす容量(例えば、70%)と、蓄電池の更改計画を要する容量(例えば、80%)とを所定の容量として、この2つの容量に至るまでの推定寿命や残寿命を算出する。以上のステップS7、S8が、上記の寿命ステップに該当する。なお、推定寿命とは、製造年月から寿命に至るまでの推定期間を示し、残寿命とは、現時点(実放電時)から寿命に至るまでの推定期間を示す。
【0032】
次に、このような構成の蓄電池劣化傾向推定システム1の作用、動作などについて説明する。まず、蓄電池を実放電させた後に、その実放電時の情報を入力パラメータとして入力部2で入力する。具体的には、図10に示すように、蓄電池メーカ・型式、蓄電池個数、負荷電流(実放電電流値)、周囲温度、製造年月、放電計測日などを入力する。このとき、入力パラメータに基づいて、蓄電池容量(定格容量)、放電率、経過年が算出される。さらに、蓄電池を実放電した際に測定した実放電時間とその実放電電圧を入力する。
【0033】
次に、蓄電池劣化傾向推定プログラム6を起動すると、上記のようにして、実放電電流の初期放電カーブD1と実放電電流の経年後放電カーブD2とが算出され、図6、8に示すような放電カーブD1、D2が表示部3に表示される。また、容量の推定推移を示す上記の容量推移線L3が算出され、図9に示すように、経年変化の傾向を示す実験データL1とともに、表示部3に表示される。このように、実放電に基づく容量推移線L3が実験データL1とともに表示されるため、蓄電池の劣化傾向が適正か否かを目視によって容易かつ迅速に把握することができる。
【0034】
さらに、蓄電池劣化傾向推定プログラム6において、上記のように、所定の容量に至るまでの推定寿命や残寿命が算出され、表示部3に表示される。すなわち、例えば、定格容量の80%に至る推定寿命は10年、定格容量の70%に至る推定寿命は11.2年などと算出、表示される。また、この推定寿命と同時に、適正な期待寿命が表示部3に表示される。ここで、適正な期待寿命とは、対象の蓄電池において、期待される設計寿命に対して、平均周囲温度を考慮した寿命である。具体的には、例えば、図11に示すように、平均周囲温度が25℃以下における期待される設計寿命が15年とする。このとき、平均周囲温度が25℃よりも高い場合には、アレニウスの法則により寿命が短くなり、例えば、平均周囲温度が28℃の場合、12.2年程度となる。このように、実放電に基づく推定寿命や残寿命と、適正な期待寿命が表示部3に表示されるため、蓄電池の劣化傾向や蓄電池の異常の有無などを、適正かつ容易に把握することができる。
【0035】
以上のように、この蓄電池劣化傾向推定システム1によれば、蓄電池を実放電した際に測定された実放電電圧が所定の電圧以下の場合、つまり、経年した蓄電池に対して信頼性の高い測定データが得られている場合には、その測定データ(実放電時間と実放電電圧)に基づいて実放電電流の経年後放電カーブD2が算出される。このため、信頼性の高い測定データに基づく適正な経年後放電カーブD2が得られる。一方、蓄電池を実放電した際に測定された実放電電圧が所定の電圧よりも高い場合、つまり、経年した蓄電池に対して信頼性の高い測定データが得られていない場合には、蓄電池の経年値に相応する放電容量と初期放電カーブD1などに基づいて、実放電電流の経年後放電カーブD2が算出される。このため、蓄電池の経年値に基づく適正な経年後放電カーブD2が得られる。このようにして、適正な実放電電流の経年後放電カーブD2が得られることで、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能となる。しかも、低い電圧まで実放電させない場合であっても、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能となる。
【0036】
さらには、蓄電池の製造メーカ(製造設計)に対応した初期放電カーブと経年変化の傾向とに基づいて、実放電電流の経年後放電カーブD2が算出される。つまり、蓄電池の放電特性や寿命などの特性に影響を与える製造設計に基づいて経年後放電カーブD2が算出されるため、より適正な経年後放電カーブD2が得られる。この結果、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能となる。また、所定の容量に至るまでの推定寿命や残寿命が算出されるため、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能となるとともに、蓄電池に対する措置を適正かつ迅速に行うことが可能となる。さらに、実放電電流の経年後放電カーブD2が表示されるため、どのような放電軌跡を経て終止電圧に至るかや、残りどのくらい放電が可能であるか、などを容易に判断することが可能となる。また、負荷に対して実放電が行われた場合、負荷に対しての実放電電流の経年後放電カーブD2が表示されるため、実負荷に対しての現時点(実放電時)での放電特性を適正に把握することができる。
【0037】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、入力部2を入力手段とし、入力部2で入力パラメータを入力しているが、実放電時に電圧や放電時間などを測定する測定装置を入力手段とし、測定装置で測定した測定データを入力パラメータとして直接入力するようにしてもよい。また、放電カーブを放電特性としているが、放電容量値のみを放電特性としてもよい。つまり、初期放電特性や経年後放電特性として放電カーブを算出せずに、放電容量値のみを算出するようにしてもよい。さらに、シール型鉛蓄電池を対象とする場合のみならず、リチウムイオン二次電池などその他の蓄電池にも適用できることは、勿論である。
【符号の説明】
【0038】
1 蓄電池劣化傾向推定システム
2 入力部(入力手段)
3 表示部
4 放電特性データベース(放電特性記憶手段)
5 経年変化データベース(経年変化記憶手段)
6 蓄電池劣化傾向推定プログラム(処理手段)
7 中央処理部
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓄電池の容量や寿命などの特性を推定する蓄電池劣化傾向推定システムおよび蓄電池劣化傾向推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
シール型鉛蓄電池やリチウムイオン二次電池などの蓄電池は、使用年数の経過に伴ってその容量が低下し、容量が所定の容量未満に達した場合には、新たな蓄電池と交換する必要がある。また、蓄電池の製造メーカなどによって、蓄電池の期待寿命が提示されているが、蓄電池の実際の寿命は、使用環境や使用条件などによって影響される。このため、実際の運用においては、現時点での蓄電池容量がどのくらいであるかを知り、さらには、寿命に至るまでの期間・残寿命を予測して、蓄電池交換などの計画を策定する必要がある。
【0003】
一方、現時点での蓄電池容量を正確に知るには、放電試験を行う必要があるが、蓄電池を終止電圧(放電を終了させるべき電圧)まで放電させるには、長時間を要し、その間、蓄電池の使用が不可能となる。つまり、UPS(Uninterruptible Power Supply)などのバックアップ電源として使用されている蓄電池の場合、放電試験を行っている間は、バックアップ電源としての機能が失われてしまう。このため、蓄電池を終止電圧まで放電させることなく、短時間放電するだけで、蓄電池容量を推定することが可能な技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。例えば、蓄電池を短時間放電して蓄電池の端子電圧を測定し、測定電圧の変化から蓄電池容量を推定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−040967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓄電池は、定格容量や期待寿命が同等であっても、設計思想や製造工程の違いなどによって、経年に伴う容量の変化が異なる。また、経年に伴って、蓄電池の放電特性が異なることも、本発明者によって確認されている。つまり、経年によって放電カーブが変化し、例えば、放電直後の電圧低下が、経年に伴って大きくなり、また、放電率(放電電流)が高いほど、経年に伴う電圧降下が大きいことが、本発明者によって確認されている。このため、経年に伴う蓄電池の容量変化特性や放電特性などを考慮しなければ、蓄電池の劣化傾向を正確・適正に推定することはできず、蓄電池を短時間放電して、例えば、蓄電池の端子電圧の変化のみから蓄電池容量を推定したとしても、正確・適正な蓄電池容量を推定することはできない。
【0006】
そこでこの発明は、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能な蓄電池劣化傾向推定システムおよび蓄電池劣化傾向推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、経年してない状態における蓄電池の放電特性を初期放電特性、経年後の蓄電池の放電特性を経年後放電特性とし、
蓄電池の経年値および、蓄電池を実放電した際の実放電電流値と測定された実放電時間とその実放電電圧などを入力する入力手段と、
特定の放電電流値での初期放電特性を記憶した放電特性記憶手段と、
蓄電池のある放電電流値における放電容量の経年変化の傾向を記憶した経年変化記憶手段と、
前記放電特性記憶手段に記憶された初期放電特性に基づいて、前記入力手段で入力された実放電電流値に対する初期放電特性を実放電電流の初期放電特性として算出し、前記入力手段で入力された実放電電圧が所定の電圧以下の場合には、前記入力手段で入力された実放電時間と実放電電圧と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流値に対する経年後放電特性を実放電電流の経年後放電特性として算出し、前記実放電電圧が前記所定の電圧よりも高い場合には、前記入力手段で入力された経年値に対する放電容量を前記経年変化記憶手段から取得し、取得した放電容量と前記実放電電流値と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流の経年後放電特性を算出する処理手段と、
を備えることを特徴とする蓄電池劣化傾向推定システムである。
【0008】
この発明によれば、入力手段で蓄電池の経年値や、蓄電池を実放電した際の実放電電流値などを入力すると、処理手段によって、まず、入力された実放電電流値に対する初期放電特性が実放電電流の初期放電特性として算出される。次に、入力された実放電電圧が所定の電圧以下の場合には、入力された実放電時間と実放電電圧と実放電電流の初期放電特性とに基づいて、実放電電流値に対する経年後放電特性が実放電電流の経年後放電特性として算出される。一方、実放電電圧が所定の電圧よりも高い場合には、入力された経年値に対する放電容量が経年変化記憶手段から取得され、この放電容量と実放電電流値と実放電電流の初期放電特性とに基づいて、実放電電流の経年後放電特性が算出される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の蓄電池劣化傾向推定システムにおいて、前記処理手段は、前記実放電電流の経年後放電特性に基づいて、所定の容量に至るまでの寿命(期間)を算出する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の蓄電池劣化傾向推定システムにおいて、前記放電特性記憶手段には、製造設計が異なる蓄電池ごとに前記初期放電特性が記憶され、前記経年変化記憶手段には、製造設計が異なる蓄電池ごとに前記経年変化の傾向が記憶され、前記処理手段は、前記入力手段で入力された蓄電池の製造設計に対応した初期放電特性と経年変化の傾向とに基づいて、前記実放電電流の経年後放電特性を算出する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、経年してない状態における蓄電池の放電特性を初期放電特性、経年後の蓄電池の放電特性を経年後放電特性とし、蓄電池の経年値および、蓄電池を実放電した際の実放電電流値と測定された実放電時間とその実放電電圧などが入力され、
コンピュータに、
特定の放電電流値での初期放電特性に基づいて、入力された実放電電流値に対する初期放電特性を実放電電流の初期放電特性として算出するステップと、
入力された実放電電圧が所定の電圧以下の場合に、入力された実放電時間と実放電電圧と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流値に対する経年後放電特性を実放電電流の経年後放電特性として算出するステップと、
前記実放電電圧が前記所定の電圧よりも高い場合に、蓄電池のある放電電流値における放電容量の経年変化の傾向に基づいて、入力された経年値に対する放電容量を取得し、取得した放電容量と前記実放電電流値と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流の経年後放電特性を算出するステップと、
を実行させるための蓄電池劣化傾向推定プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1および4に記載の発明によれば、蓄電池を実放電した際に測定された実放電電圧が所定の電圧以下の場合、つまり、経年した蓄電池に対して信頼性の高い測定データが得られている場合には、その測定データ(実放電時間と実放電電圧)に基づいて実放電電流の経年後放電特性を算出する。このため、信頼性の高い測定データに基づく適正な実放電電流の経年後放電特性が得られる。一方、蓄電池を実放電した際に測定された実放電電圧が所定の電圧よりも高い場合、つまり、経年した蓄電池に対して信頼性の高い測定データが得られていない場合には、蓄電池の経年値に相応する放電容量と初期放電特性などに基づいて、実放電電流の経年後放電特性を算出する。このため、蓄電池の経年値に基づく適正な実放電電流の経年後放電特性が得られる。このようにして、適正な実放電電流の経年後放電特性が得られることで、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、所定の容量に至るまでの寿命が算出されるため、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能となるとともに、蓄電池に対する措置を適正かつ迅速に行うことが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、蓄電池の製造設計に対応した初期放電特性と経年変化の傾向とに基づいて、実放電電流の経年後放電特性を算出するため、より適正な実放電電流の経年後放電特性が得られる。この結果、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態に係る蓄電池劣化傾向推定システムを示す概略構成ブロック図である。
【図2】図1のシステムの経年変化データベースに記憶されている経年変化の傾向例を示す図である。
【図3】図1のシステムの蓄電池劣化傾向推定プログラムのフローチャートである。
【図4】図3のプログラムによる初期放電カーブの算出方法を示す図である。
【図5】図3のプログラムによる経年後放電カーブの算出方法の一例を示す図である。
【図6】図3のプログラムによる初期放電カーブと経年後放電カーブの一例を示す図である。
【図7】図3のプログラムによる経年後放電カーブの算出方法の他例を示す図である。
【図8】図3のプログラムによる初期放電カーブと経年後放電カーブの他例を示す図である。
【図9】図3のプログラムによる容量推移線と実験データの一例を示す図である。
【図10】図1のシステムで入力される入力パラメータの一例を示す図である。
【図11】図1のシステムにおける期待寿命と周囲温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
図1は、この発明の実施の形態に係る蓄電池劣化傾向推定システム1を示す概略構成ブロック図である。この蓄電池劣化傾向推定システム1は、蓄電池の容量や寿命などの特性を推定するシステムであり、主として、入力部(入力手段)2と、表示部3と、放電特性データベース(放電特性記憶手段)4と、経年変化データベース(経年変化記憶手段)5と、蓄電池劣化傾向推定プログラム(処理手段)6と、これらを制御などする中央処理部7とを備え、汎用コンピュータから構成されている。ここで、経年してない状態(新品)における蓄電池の放電特性を「初期放電特性」、経年後の蓄電池の放電特性を「経年後放電特性」とし、また、主として、通信機器などの負荷に対してバックアップ電源として機能するシール型鉛蓄電池を対象蓄電池とする場合について、以下に説明する。
【0018】
入力部2は、蓄電池の経年値および蓄電池を実放電した際の実放電電流値と測定された実放電時間とその実放電電圧等の入力パラメータなどを入力するものであり、キーボードやマウスなどで構成されている。表示部3は、入力部2で入力された入力パラメータや蓄電池劣化傾向推定プログラム6による演算結果などを出力表示するものであり、LCDなどで構成されている。
【0019】
放電特性データベース4は、特定の放電電流値での初期放電特性を記憶したデータベースである。具体的には、蓄電池の定格容量ごとに、例えば、10時間放電率(「C」を定格容量とした場合の0.1C放電電流値)の初期放電カーブ(初期放電特性)、5時間放電率(0.16C放電電流値)の初期放電カーブ、3時間放電率(0.23C放電電流値)の初期放電カーブなどが記憶されている。さらに、製造設計が異なる蓄電池ごとの初期放電カーブが記憶されている。すなわち、製造工程や設計思想などは、蓄電池の放電特性などに影響を与えるため、製造工程や設計思想などが異なる蓄電池ごと、例えば、製造メーカごとに、初期放電カーブが記憶されている。
【0020】
経年変化データベース5は、蓄電池のある放電電流値における放電容量の経年変化の傾向を記憶したデータベースである。具体的にこの実施の形態では、周囲温度が25℃での蓄電池の定格容量ごとに、図2に示すように、定格容量の放電時間率である10時間放電率の放電容量の経年変化の傾向を示す実験データL1と、この実験データL1に基づく近似曲線L2とが記憶されている。さらに、放電特性データベース4と同様に、製造設計が異なる蓄電池ごとの経年変化の傾向が記憶されている。すなわち、製造工程や設計思想などは、蓄電池容量の経年変化などに影響を与えるため、製造工程や設計思想などが異なる蓄電池ごと、例えば、製造メーカごとに、経年変化の傾向が記憶されている。
【0021】
蓄電池劣化傾向推定プログラム6は、入力部2で入力された入力パラメータに基づいて、対象蓄電池の実放電電流の経年後放電特性などを算出するプログラムである。すなわち、実際に蓄電池を放電した際の放電電流値と、その際に測定された少なくとも1点(1組)の実放電時間とその実放電電圧とに基づいて、放電した時点における経年後放電特性などを算出するものであり、コンピュータに、
放電特性データベース4に記憶された初期放電特性に基づいて、入力部2で入力された実放電電流値に対する初期放電特性を実放電電流の初期放電特性として算出する初期特性ステップと、
入力部2で入力された実放電電圧が所定の電圧以下の場合に、入力部2で入力された実放電時間と実放電電圧と実放電電流の初期放電特性とに基づいて、実放電電流値に対する経年後放電特性を実放電電流の経年後放電特性として算出する第1の経年後特性ステップと、
入力部2で入力された実放電電圧が所定の電圧よりも高い場合には、入力部2で入力された経年値に対する放電容量を経年変化データベース5から取得し、取得した放電容量と実放電電流値と実放電電流の初期放電特性とに基づいて、実放電電流の経年後放電特性を算出する第2の経年後特性ステップと、
算出した実放電電流の経年後放電特性に基づいて、所定の容量に至るまでの寿命を算出する寿命ステップと、
を実行させるためのプログラムである。
【0022】
ここで、実放電とは、バックアップの対象である負荷に対して蓄電池から電力供給(放電)した場合や、蓄電池から試験機器に対して電力供給した場合などが挙げられる。従って、例えば、バックアップの対象である負荷に対して放電した場合には、負荷への放電電流値が実放電電流値となる。また、実放電は、単電池(単一の電池・セル)に対して行う場合でも、単電池を複数接続して構成した組電池に対して行う場合であってもよい。すなわち、放電特性データベース4や経年変化データベース5には、単電池としての初期放電特性や経年変化の傾向が記憶されているが、組電池に対して実放電を行った場合には、組電池全体の電圧(総電圧)を直列に接続された単電池の数(セル数)で除算した電圧(平均セル電圧)を実放電電圧とする。
【0023】
具体的には、図3に示すように、まず、入力部2で入力された実放電電流値に対する初期放電特性を実放電電流の初期放電カーブ(初期放電特性)として算出する(ステップS1、初期特性ステップ)。例えば、実放電電流値が0.12C(=定格容量C×0.12)で、放電特性データベース4に10時間放電率(0.1C)の初期放電カーブと5時間放電率(0.16C)の初期放電カーブが記憶されている場合、図4に示すように、0.1Cの初期放電カーブと0.16Cの初期放電カーブとの間に按分されるように、0.12Cの初期放電カーブD1を算出する。ここで、入力部2で入力された蓄電池の定格容量や製造メーカ(製造設計)に対応した0.1Cなどの初期放電カーブを放電特性データベース4から取得して、0.12Cの初期放電カーブD1を算出する。
【0024】
次に、入力部2で入力された実放電電圧が所定の電圧以下であるか否かを判断する(ステップS2)。つまり、実放電の際に実放電電圧が所定の電圧以下まで測定された否かを判断する。このような判断を行うのは、実放電電圧が所定の電圧以下まで測定されている場合には、経年した蓄電池に対して信頼性の高い測定データが得られている、と考えられるからである。このことは、経年に伴って蓄電池の放電特性が変化し、例えば、放電直後の電圧低下が経年に伴って大きくなり、高い電圧時(放電初期の電圧降下時)の測定データのみでは、適正な放電特性(放電カーブ)を推定することができない、との本発明者の考察によるものである。このため、所定の電圧は、適正な放電カーブを推定することが可能な電圧、例えば、放電終止電圧(各放電電流値に対して放電を終了させるべき電圧)に近い電圧に設定されている。
【0025】
そして、実放電電圧が所定の電圧以下の場合には、入力部2で入力された実放電時間と実放電電圧と実放電電流の初期放電カーブとに基づいて、実放電電流値に対する経年後放電カーブ(経年後放電特性)を実放電電流の経年後放電カーブとして算出する(ステップS3、第1の経年後特性ステップ)。具体的には、図5、6に示すように、実放電時間と実放電電圧とのポイントP1を通るように、ステップS1で算出した実放電電流の初期放電カーブD1を按分、変形させて、実放電電流の経年後放電カーブD2を算出する。
【0026】
一方、実放電電圧が所定の電圧よりも高い場合には、まず、入力部2で入力された経年値に対する放電容量を経年変化データベース5から取得する(ステップS4)。すなわち、蓄電池の製造年月からの経過年数に相応する放電容量を取得する。このとき、入力部2で入力された蓄電池の定格容量や製造メーカ(製造設計)に対応した経年変化の近似曲線L2(図2)を経年変化データベース5から検索して、放電容量を取得する。また、入力部2で入力された平均周囲温度が25℃よりも高い場合には、入力部2で入力された経年値を25℃に換算した経年値として、放電容量を取得する。すなわち、アレニウスの法則により、平均周囲温度が25℃よりも高い場合、次式のように蓄電池の劣化が加速することから、経年値を25℃に換算する。
F25=F×2^{(T−25)/10}
F:実際の経過年月
F25:25℃に換算した経過年月
T:平均周囲温度
【0027】
次に、取得した放電容量に基づいて、経年値に対する実放電電流値での放電容量を算出する(ステップS5)。すなわち、経年変化データベース5に記憶されている経年変化の放電電流値と実放電電流値とに基づいて、経過年数に相応する実放電電流値での放電容量を算出する。具体的には、例えば、次式のように、経年変化データベース5の放電電流値における初期容量CP1と実放電電流値における初期容量CP2との比と、経年変化データベース5の経年値に対する放電容量CP3とに基づいて、実放電電流値での経年値に対する放電容量CP4を算出する。
CP4=CP2/CP1×CP3
【0028】
続いて、ステップS5で算出した放電容量CP4と実放電電流の初期放電カーブとに基づいて、実放電電流の経年後放電カーブ(経年後放電特性)を算出する(ステップS6)。すなわち、図7、8に示すように、放電容量がステップS5で算出した放電容量CP4となるように、実放電電流の初期放電カーブD1を按分、変形させて、実放電電流の経年後放電カーブD2を算出する。なお、図7における「補正後放電時間」が経年後放電カーブD2に相当し、「補正後容量」が放電容量CP4に相当する。
【0029】
また、この実施の形態では、実放電時間と実放電電圧(P1)と実放電電流の初期放電カーブD1とに基づく実放電電流の経年後放電カーブD3も、比較参考などのために算出する。なお、図7における「放電時間(実測時)」が経年後放電カーブD3に相当し、「容量」が実放電時間と実放電電圧(P1)に基づく放電容量に相当する。以上のステップS4〜S6が、上記の第2の経年後特性ステップに該当する。
【0030】
次に、算出した実放電電流の経年後放電カーブD2に基づいて、定格容量の放電時間率(定格時間率)での実容量を算出する(ステップS7)。すなわち、経年後放電カーブD2から実放電電流値での放電容量を算出し、この放電容量を定格時間率での実容量に換算する。このとき、例えば、定格時間率における初期容量と実放電電流値における初期容量との比に基づいて、実容量に換算する。例えば、実放電電流値が0.16C、その放電容量が65.7%で、定格時間率が0.1Cの場合、定格時間率での実容量が70.3%などと算出される。
【0031】
続いて、ステップS7で算出した実容量に基づいて、所定の容量に至るまでの寿命を算出する(ステップS8)。すなわち、図9に示すように、経過年数と容量の関係を示すグラフ上に実容量をプロットし、初期容量と実容量(複数ある場合には複数の実容量)とを線で結び容量推移線L3とする。このとき、ステップS4の場合と同様に、入力部2で入力された平均周囲温度が25℃よりも高い場合には、アレニウスの法則に基づいて、入力部2で入力された経年値を25℃に換算した経年値(経過年数)として、実容量をプロットする。そして、この容量推移線L3に基づいて、所定の容量に至るまでの推定寿命や残寿命を算出する。ここで、この実施の形態では、蓄電池の寿命とみなす容量(例えば、70%)と、蓄電池の更改計画を要する容量(例えば、80%)とを所定の容量として、この2つの容量に至るまでの推定寿命や残寿命を算出する。以上のステップS7、S8が、上記の寿命ステップに該当する。なお、推定寿命とは、製造年月から寿命に至るまでの推定期間を示し、残寿命とは、現時点(実放電時)から寿命に至るまでの推定期間を示す。
【0032】
次に、このような構成の蓄電池劣化傾向推定システム1の作用、動作などについて説明する。まず、蓄電池を実放電させた後に、その実放電時の情報を入力パラメータとして入力部2で入力する。具体的には、図10に示すように、蓄電池メーカ・型式、蓄電池個数、負荷電流(実放電電流値)、周囲温度、製造年月、放電計測日などを入力する。このとき、入力パラメータに基づいて、蓄電池容量(定格容量)、放電率、経過年が算出される。さらに、蓄電池を実放電した際に測定した実放電時間とその実放電電圧を入力する。
【0033】
次に、蓄電池劣化傾向推定プログラム6を起動すると、上記のようにして、実放電電流の初期放電カーブD1と実放電電流の経年後放電カーブD2とが算出され、図6、8に示すような放電カーブD1、D2が表示部3に表示される。また、容量の推定推移を示す上記の容量推移線L3が算出され、図9に示すように、経年変化の傾向を示す実験データL1とともに、表示部3に表示される。このように、実放電に基づく容量推移線L3が実験データL1とともに表示されるため、蓄電池の劣化傾向が適正か否かを目視によって容易かつ迅速に把握することができる。
【0034】
さらに、蓄電池劣化傾向推定プログラム6において、上記のように、所定の容量に至るまでの推定寿命や残寿命が算出され、表示部3に表示される。すなわち、例えば、定格容量の80%に至る推定寿命は10年、定格容量の70%に至る推定寿命は11.2年などと算出、表示される。また、この推定寿命と同時に、適正な期待寿命が表示部3に表示される。ここで、適正な期待寿命とは、対象の蓄電池において、期待される設計寿命に対して、平均周囲温度を考慮した寿命である。具体的には、例えば、図11に示すように、平均周囲温度が25℃以下における期待される設計寿命が15年とする。このとき、平均周囲温度が25℃よりも高い場合には、アレニウスの法則により寿命が短くなり、例えば、平均周囲温度が28℃の場合、12.2年程度となる。このように、実放電に基づく推定寿命や残寿命と、適正な期待寿命が表示部3に表示されるため、蓄電池の劣化傾向や蓄電池の異常の有無などを、適正かつ容易に把握することができる。
【0035】
以上のように、この蓄電池劣化傾向推定システム1によれば、蓄電池を実放電した際に測定された実放電電圧が所定の電圧以下の場合、つまり、経年した蓄電池に対して信頼性の高い測定データが得られている場合には、その測定データ(実放電時間と実放電電圧)に基づいて実放電電流の経年後放電カーブD2が算出される。このため、信頼性の高い測定データに基づく適正な経年後放電カーブD2が得られる。一方、蓄電池を実放電した際に測定された実放電電圧が所定の電圧よりも高い場合、つまり、経年した蓄電池に対して信頼性の高い測定データが得られていない場合には、蓄電池の経年値に相応する放電容量と初期放電カーブD1などに基づいて、実放電電流の経年後放電カーブD2が算出される。このため、蓄電池の経年値に基づく適正な経年後放電カーブD2が得られる。このようにして、適正な実放電電流の経年後放電カーブD2が得られることで、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能となる。しかも、低い電圧まで実放電させない場合であっても、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能となる。
【0036】
さらには、蓄電池の製造メーカ(製造設計)に対応した初期放電カーブと経年変化の傾向とに基づいて、実放電電流の経年後放電カーブD2が算出される。つまり、蓄電池の放電特性や寿命などの特性に影響を与える製造設計に基づいて経年後放電カーブD2が算出されるため、より適正な経年後放電カーブD2が得られる。この結果、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能となる。また、所定の容量に至るまでの推定寿命や残寿命が算出されるため、蓄電池の劣化傾向をより適正に推定することが可能となるとともに、蓄電池に対する措置を適正かつ迅速に行うことが可能となる。さらに、実放電電流の経年後放電カーブD2が表示されるため、どのような放電軌跡を経て終止電圧に至るかや、残りどのくらい放電が可能であるか、などを容易に判断することが可能となる。また、負荷に対して実放電が行われた場合、負荷に対しての実放電電流の経年後放電カーブD2が表示されるため、実負荷に対しての現時点(実放電時)での放電特性を適正に把握することができる。
【0037】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、入力部2を入力手段とし、入力部2で入力パラメータを入力しているが、実放電時に電圧や放電時間などを測定する測定装置を入力手段とし、測定装置で測定した測定データを入力パラメータとして直接入力するようにしてもよい。また、放電カーブを放電特性としているが、放電容量値のみを放電特性としてもよい。つまり、初期放電特性や経年後放電特性として放電カーブを算出せずに、放電容量値のみを算出するようにしてもよい。さらに、シール型鉛蓄電池を対象とする場合のみならず、リチウムイオン二次電池などその他の蓄電池にも適用できることは、勿論である。
【符号の説明】
【0038】
1 蓄電池劣化傾向推定システム
2 入力部(入力手段)
3 表示部
4 放電特性データベース(放電特性記憶手段)
5 経年変化データベース(経年変化記憶手段)
6 蓄電池劣化傾向推定プログラム(処理手段)
7 中央処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経年してない状態における蓄電池の放電特性を初期放電特性、経年後の蓄電池の放電特性を経年後放電特性とし、
蓄電池の経年値および、蓄電池を実放電した際の実放電電流値と測定された実放電時間とその実放電電圧などを入力する入力手段と、
特定の放電電流値での初期放電特性を記憶した放電特性記憶手段と、
蓄電池のある放電電流値における放電容量の経年変化の傾向を記憶した経年変化記憶手段と、
前記放電特性記憶手段に記憶された初期放電特性に基づいて、前記入力手段で入力された実放電電流値に対する初期放電特性を実放電電流の初期放電特性として算出し、前記入力手段で入力された実放電電圧が所定の電圧以下の場合には、前記入力手段で入力された実放電時間と実放電電圧と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流値に対する経年後放電特性を実放電電流の経年後放電特性として算出し、前記実放電電圧が前記所定の電圧よりも高い場合には、前記入力手段で入力された経年値に対する放電容量を前記経年変化記憶手段から取得し、取得した放電容量と前記実放電電流値と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流の経年後放電特性を算出する処理手段と、
を備えることを特徴とする蓄電池劣化傾向推定システム。
【請求項2】
前記処理手段は、前記実放電電流の経年後放電特性に基づいて、所定の容量に至るまでの寿命を算出する、ことを特徴とする請求項1に記載の蓄電池劣化傾向推定システム。
【請求項3】
前記放電特性記憶手段には、製造設計が異なる蓄電池ごとに前記初期放電特性が記憶され、前記経年変化記憶手段には、製造設計が異なる蓄電池ごとに前記経年変化の傾向が記憶され、
前記処理手段は、前記入力手段で入力された蓄電池の製造設計に対応した初期放電特性と経年変化の傾向とに基づいて、前記実放電電流の経年後放電特性を算出する、ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の蓄電池劣化傾向推定システム。
【請求項4】
経年してない状態における蓄電池の放電特性を初期放電特性、経年後の蓄電池の放電特性を経年後放電特性とし、蓄電池の経年値および、蓄電池を実放電した際の実放電電流値と測定された実放電時間とその実放電電圧などが入力され、
コンピュータに、
特定の放電電流値での初期放電特性に基づいて、入力された実放電電流値に対する初期放電特性を実放電電流の初期放電特性として算出するステップと、
入力された実放電電圧が所定の電圧以下の場合に、入力された実放電時間と実放電電圧と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流値に対する経年後放電特性を実放電電流の経年後放電特性として算出するステップと、
前記実放電電圧が前記所定の電圧よりも高い場合に、蓄電池のある放電電流値における放電容量の経年変化の傾向に基づいて、入力された経年値に対する放電容量を取得し、取得した放電容量と前記実放電電流値と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流の経年後放電特性を算出するステップと、
を実行させるための蓄電池劣化傾向推定プログラム。
【請求項1】
経年してない状態における蓄電池の放電特性を初期放電特性、経年後の蓄電池の放電特性を経年後放電特性とし、
蓄電池の経年値および、蓄電池を実放電した際の実放電電流値と測定された実放電時間とその実放電電圧などを入力する入力手段と、
特定の放電電流値での初期放電特性を記憶した放電特性記憶手段と、
蓄電池のある放電電流値における放電容量の経年変化の傾向を記憶した経年変化記憶手段と、
前記放電特性記憶手段に記憶された初期放電特性に基づいて、前記入力手段で入力された実放電電流値に対する初期放電特性を実放電電流の初期放電特性として算出し、前記入力手段で入力された実放電電圧が所定の電圧以下の場合には、前記入力手段で入力された実放電時間と実放電電圧と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流値に対する経年後放電特性を実放電電流の経年後放電特性として算出し、前記実放電電圧が前記所定の電圧よりも高い場合には、前記入力手段で入力された経年値に対する放電容量を前記経年変化記憶手段から取得し、取得した放電容量と前記実放電電流値と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流の経年後放電特性を算出する処理手段と、
を備えることを特徴とする蓄電池劣化傾向推定システム。
【請求項2】
前記処理手段は、前記実放電電流の経年後放電特性に基づいて、所定の容量に至るまでの寿命を算出する、ことを特徴とする請求項1に記載の蓄電池劣化傾向推定システム。
【請求項3】
前記放電特性記憶手段には、製造設計が異なる蓄電池ごとに前記初期放電特性が記憶され、前記経年変化記憶手段には、製造設計が異なる蓄電池ごとに前記経年変化の傾向が記憶され、
前記処理手段は、前記入力手段で入力された蓄電池の製造設計に対応した初期放電特性と経年変化の傾向とに基づいて、前記実放電電流の経年後放電特性を算出する、ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の蓄電池劣化傾向推定システム。
【請求項4】
経年してない状態における蓄電池の放電特性を初期放電特性、経年後の蓄電池の放電特性を経年後放電特性とし、蓄電池の経年値および、蓄電池を実放電した際の実放電電流値と測定された実放電時間とその実放電電圧などが入力され、
コンピュータに、
特定の放電電流値での初期放電特性に基づいて、入力された実放電電流値に対する初期放電特性を実放電電流の初期放電特性として算出するステップと、
入力された実放電電圧が所定の電圧以下の場合に、入力された実放電時間と実放電電圧と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流値に対する経年後放電特性を実放電電流の経年後放電特性として算出するステップと、
前記実放電電圧が前記所定の電圧よりも高い場合に、蓄電池のある放電電流値における放電容量の経年変化の傾向に基づいて、入力された経年値に対する放電容量を取得し、取得した放電容量と前記実放電電流値と前記実放電電流の初期放電特性とに基づいて、前記実放電電流の経年後放電特性を算出するステップと、
を実行させるための蓄電池劣化傾向推定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−153951(P2011−153951A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16264(P2010−16264)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】
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