説明

蓄電装置の制御装置

【課題】電池劣化を抑制した蓄電装置の充放電制御を実現する。
【解決手段】ハイブリッド車両に搭載される蓄電装置の制御装置であって、蓄電装置の抵抗上昇に基づく劣化状態を検出する検出部と、蓄電装置の充放電制御を行うコントローラ10と、を有する。コントローラ10は、上昇した抵抗が時間経過に応じて低下する低下率と蓄電装置のSOCとの関係を予め規定した関係データに基づいて目標SOCを設定し、蓄電装置のSOCを監視して設定された目標SOCとなるように充放電制御を行う。コントローラ10は、検出部によって検出される上昇した抵抗が低下することに伴って変化する劣化状態に応じて、関係データに基づく目標SOCを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された蓄電装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、電池の劣化状態を検出し、劣化状態に応じて電池の目標SOCを高く設定し、電池のSOCが目標SOCとなるように電池の充放電を制御する。電池の劣化状態が所定の状態でも一定の出力及び走行距離を確保できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−030753号公報
【特許文献2】特開2009−123435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電池の劣化状態に応じて目標SOCを高く設定した充放電制御を行うと、一定の電池出力を確保することができるものの、電池のSOCが高い状態となり易い。このため、例えば、SOCが高い状態からの充電などにより、電池の容量劣化が促進されてしまうおそれがあり、電池の寿命低減を抑制することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願第1の発明であるハイブリッド車両に搭載される蓄電装置の制御装置は、蓄電装置の抵抗上昇に基づく劣化状態を検出する検出部と、蓄電装置の充放電制御を行うコントローラと、有する。コントローラは、上昇した抵抗が時間経過に応じて低下する低下率と蓄電装置のSOCとの関係を予め規定した関係データに基づいて目標SOCを設定し、蓄電装置のSOCを監視して設定された目標SOCとなるように、充放電制御を行う。このとき、上昇した抵抗が低下することに伴って変化する劣化状態が検出部によって検出され、コントローラが、上昇した抵抗の低下に伴う劣化状態の変化に基づいて、関係データに基づく目標SOCを変更する。
【0006】
本願第1の発明によれば、抵抗の上昇度合い(劣化度合い)に応じてSOC制御中心が制御されるので、蓄電装置のSOCを必要以上に高い状態に維持することなく、かつSOCが高い状態になることを低減できるので、劣化促進が抑制され、蓄電装置の寿命を向上させることができる。
【0007】
検出部は、関係データに基づいて設定された第1目標SOCを制御中心とする充放電制御から所定時間経過後の蓄電装置の抵抗を検出するとともに、コントローラは、所定時間経過後の上昇した抵抗の低下量と低下率に基づく予想低下量とに基づいて、目標SOCを変更することができる。
【0008】
具体的には、コントローラは、所定時間経過後の上昇した抵抗の低下量が、予想低下量と同じである場合、第1目標SOCを変更しないで充放電制御を継続し、所定時間経過後の上昇した抵抗の低下量が、予想低下量よりも小さい場合、第1目標SOCよりも高い第2目標SOCに変更し、蓄電装置のSOCを第2目標SOCとなるように充放電制御を行い、所定時間経過後の上昇した抵抗の低下量が、予想低下量よりも大きい場合、第1目標SOCよりも低い第3目標SOCに変更し、蓄電装置のSOCを第3目標SOCとなるように充放電制御を行うことができる。
【0009】
このため、上昇した抵抗の低下率に応じて設定された第1目標SOCをSOC制御中心とした充放電制御において、上昇した抵抗の低下度合い(劣化状態の変化度合い)を検出し、変化した蓄電装置の抵抗上昇度合いに応じてSOC制御中心をさらに変更するので、SOCが必要以上に高い状態で維持されることが抑制され、蓄電装置の劣化促進を抑制でき、寿命を向上させることができる。
【0010】
コントローラは、上昇した抵抗を所定の時間内に目標値まで低下させる低下率を算出し、関係データに基づいて算出された低下率に対応するSOCを目標SOCとして設定することができる。
【0011】
検出部は、蓄電装置の内部抵抗を検出し、検出した内部抵抗と所定の基準抵抗値との差分又は検出された内部抵抗の上昇率に基づいて、蓄電装置の抵抗上昇に基づく劣化状態を検出することができる。
【0012】
蓄電装置の抵抗上昇は、蓄電装置の電解液中の塩濃度の偏りによって発生する内部抵抗の増加によるものである。蓄電装置として、リチウムイオン二次電池を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ハイブリッド車両の構成ブロック図である。
【図2】ハイブリッド車両の搭載される電池の構成を示す図である。
【図3】電池の使用時間と電池抵抗の上昇量の関係を示した一例である。
【図4】ハイレート抵抗上昇の回復速度とSOCとの関係を示す図である。
【図5】SOC制御を示すフローチャートである。
【図6】ハイレート抵抗上昇に応じたSOC制御の一例を示す図である。
【図7】ハイレート抵抗上昇によって上昇した電池抵抗の回復状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0015】
(実施例1)
図1から図7は、実施例1を示す図である。図1は、本実施例のプラグインハイブリッド車両の構成ブロック図である。なお、プラグインハイブリッド車両を一例に説明するが、本実施例のコントローラ10は、外部電源からの外部充電機能を備えていないハイブリッド車両にも適用できる。
【0016】
図1に示すように、プラグインハイブリッド車100は、エンジン1、第1MG(Motor Generator)2、第2MG3、動力分配機構4、トランスミッション(無段変速機、減速装置など)5、及びバッテリ6が搭載される。
【0017】
エンジン1の出力軸は、動力分配機構4に接続される。動力分配機構4は、トランスミッション5の入力軸及び第1MG(発電用モータ)2の入力軸と連結される。トランスミッション5の出力軸は、駆動輪7のディファレンシャルギア(差動装置)8に連結され、エンジン1の動力が動力分配機構4を介して駆動輪7に伝達される。また、トランスミッション5の出力軸は、第2MG(走行用モータ)3の出力軸と連結され、第2MG3の動力がトランスミッション5を介して駆動輪7に伝達されるようになっている。
【0018】
動力分配機構4は、エンジン1が発生させる動力を2つの経路に分割し、トランスミッション5を介して駆動輪7に伝達する第1経路と、エンジン1が発生された動力を第1MG2に伝達して発電させる第2経路とを含む。動力分配機構4は、後述するコントローラ10によって制御され、コントローラ10は、エンジン1の駆動力を用いた走行制御やバッテリ6への充電制御等に応じて、第1及び第2経路それぞれに伝達される動力やその比率を制御する。
【0019】
バッテリ6(蓄電装置に相当する)は、第2MG3に電力を供給する電源装置であり、バッテリ6の直流電力は、インバータ9により交流電力に変換され、第2NG3に供給される。第2MG3は、三相同期モータや三相誘導モータなどの交流モータである。
【0020】
プラグインハイブリッド車100の回生制動時には、トランスミッション5を介して駆動輪7により第2MG3が駆動され、第2MG3がジェネレータ(発電機)として作動する。第2MG3は、バッテリ7から供給される電力によって駆動する車両走行の駆動源であるとともに、制動エネルギーを電力に変換する回生ブレーキとして作動し、第2MG3によって発電された電力(回生エネルギー)は、インバータ9を介してバッテリ6に蓄えられる。
【0021】
第1MG2は、エンジン1の動力により回転駆動することにより発電し、インバータ9を介して発電した電力をバッテリ6に供給するジェネレータである。第1MG2は、第2MG3と同様に、三相同期モータや三相誘導モータなどの交流モータで構成できる。
【0022】
エンジン1は、内燃機関である。エンジン1から排出される排気ガスは、不図示の触媒(例えば、三元触媒)を通じて車外に排気される。
【0023】
また、第1MG2により発電された電力は、そのまま第2MG3を駆動させる電力として供給したり、バッテリ6に蓄えられる電力として供給することができる。例えば、バッテリ6のSOCの状態や車両状況に応じて制御され、第2MG3は、バッテリ6に蓄えられた電力、第1MG2により発電された電力のうちのいずれか一方又は両方の電力により駆動する。
【0024】
コントローラ10は、プラグインハイブリッド車両100の制御装置であり、プラグインハイブリッド車両100全体で要求される車両要求出力を算出し、車両要求出力に基づいてエンジン1及びバッテリ6の出力制御を行う。
【0025】
コントローラ10は、エンジン1を制御するエンジン制御装置、第1MG2及び第2MG3を制御するモータ制御装置として機能するとともに、バッテリ6の充放電制御やバッテリ6のSOCや劣化状態などを管理するバッテリ制御装置として機能する。
【0026】
コントローラ10は、運転状態に応じて駆動供給源を選択し、エンジン1及び第2MG3のうちの一方又は両方からの駆動力を用いた車両の走行制御を遂行する。例えば、アクセル開度が小さい場合や車速が低い場合などには、エンジン1からの駆動力を使用せずに(エンジン1を停止した状態で)、第2MG120のみを駆動源としてプラグインハイブリッド車両の走行制御を行う。なお、第2MG120のみを駆動源としてプラグインハイブリッド車両の走行制御の場合でも、エンジン1を駆動して第1MG2による発電制御を行うことができる。
【0027】
一方、アクセル開度が大きい場合や車速が高い場合、又はバッテリ6のSOC(State Of Charge:残存容量)が小さい場合などには、エンジン1を駆動源として用いた走行制御を遂行する。このとき、コントローラ10は、エンジン1のみ、もしくはエンジン1および第2MG3の両方を駆動源としてプラグインハイブリッド車両の走行制御を行うことができる。
【0028】
また、本実施例のプラグインハイブリッド車両100は、外部電源200から供給される電力をバッテリ6に充電する外部充電手段を備える。プラグインハイブリッド車両100の側部には、インレット12が設けられ、プラグインハイブリッド車両100と外部電源200とを連結する接続プラグ210を有する充電ケーブル220が接続される。外部電源200は、家庭用電源や充電スタンドなどがある。
【0029】
コントローラ10は、外部充電手段を介した外部充電制御を遂行する電源制御装置として機能することができる。外部電源200から延設される接続プラグ210がインレット12に接続されたことを検出すると(インレット12又は接続プラグ210から出力される接続プラグ210とインレット12とが接続状態であることを示す信号を受信すると)、インレット12とバッテリ6との間に設けられた充電器11を制御して外部電源200から供給される電力を、バッテリ6に充電させる。
【0030】
充電器11は、インレット12とバッテリ6との間に接続され、外部電源200から供給される交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器や昇圧器などを含んで構成される。充電器11は、コントローラ10から出力される駆動信号に基づいて動作する。
【0031】
なお、外部電源200は、充電器11を備えることができる。つまり、外部電源200が充電器11を備える場合、プラグインハイブリッド車両100は、充電器11を備えていなくてもよい。
【0032】
なお、コントローラ10は、エンジン制御装置、モータ制御装置、バッテリ制御装置及び電源制御装置としての各機能が個別の制御装置で構成されたシステム構成でもよい。
【0033】
図2は、プラグインハイブリッド車両100に搭載されるバッテリ6を含む電池システムの構成を示す図である。
【0034】
バッテリ6は、直列に接続された複数の単電池6aを有する組電池である。単電池6a(蓄電素子)としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることができる。バッテリ6を構成する単電池6aの数は、要求出力などに基づいて、適宜設定することができる。また、バッテリ6は、並列に接続された複数の単電池6aを含んでいてもよい。単電池6aは、発電要素(例えば、正電極体、負電極体、正電極体及び負電極体の間に配置されるセパレータ(電解液を含む)を積層して構成することができる)を含んで構成されている。
【0035】
バッテリ6には、電圧監視IC20、電流センサ21及び温度センサ22が設けられている。電圧監視IC20、電流センサ21及び温度センサ22それぞれは、コントローラ10に接続されており、検出結果をコントローラ10に出力する。電圧監視IC20は、バッテリ6の端子間電圧、バッテリ6を構成する各単電池6aそれぞれの端子間電圧を検出する。電流センサ21は、充放電を行うバッテリ6の充放電電流を検出する。温度センサ22は、バッテリ6の温度を検出する。なお、温度センサ22は、電圧監視IC20に含まれるように構成することができ、例えば、バッテリ6の電圧及び温度を検出する監視ICとして構成できる。
【0036】
次に、本実施例のバッテリ6のSOC制御について説明する。上述したように、コントローラ10は、運転状態に応じて駆動源を自動的に選択し、エンジン1及び第2MG3のうちの一方又は両方からの駆動力を用いた車両の走行制御を遂行する。
【0037】
コントローラ10は、車両走行中のSOCを監視し、バッテリ6のSOCを所定の目標値又は目標値前後の所定の範囲内に維持して走行するように、エンジン1及び第2MG3を用いて走行制御を行うことができる。例えば、バッテリ6に蓄えられた電力(SOC)を所定の目標値よりも低くならないように、エンジン1の駆動力又は/及び第2MG3の駆動力(バッテリ6の電力)を用いた車両制御を行うことができ、SOCが目標値よりも低下すると、コントローラ10は、エンジン1を始動して第1MG2による充電制御を行い、目標値よりも低いSOCを目標値に近づけるように上昇させつつ、エンジン1の駆動力又は/及び第2MG3の駆動力(バッテリ6の電力)を用いて走行制御を遂行する。一方、SOCが目標値よりも高い場合、コントローラ10は、主に第2MG3の駆動力(バッテリ6の電力)を用いて走行制御を遂行し、目標値よりも高い状態にあるSOCを目標値に近づけるように低下させるように制御することができる。コントローラ10は、この目標値をSOC制御中心として、バッテリ6に対する充放電制御を行う。
【0038】
ここで、SOC(State of Charge)とは、バッテリ6の満充電容量に対する現在充電容量の割合を示すものである。コントローラ10は、電圧監視IC20又は電流センサ21の検出値を用いてバッテリ6のSOCを算出したり特定する処理を行い、充放電履歴やSOC情報を不図示の記憶部に記憶して管理する。なお、バッテリ6を構成する単電池6aそれぞれのSOC情報を管理することができる。
【0039】
バッテリ6のSOCは、バッテリ6のOCV(開放電圧:Open Circuit Voltage)から特定することができる。SOC及びOCVは対応関係にあるため、この対応関係を予め求めておけば、OCVからSOCを特定することができる。バッテリ6のOCVは、電圧監視IC20によって検出されたバッテリ6のCCV(端子電圧:Closed Circuit Voltage)から算出することができる。一方、電流センサ21を用いてバッテリ6の充放電電流を検出し、バッテリ6の充放電の際の電流値を積算することにより、組電池10のSOCを算出することができる。
【0040】
次に、本実施例のハイレート抵抗上昇とバッテリ6のSOC制御について説明する。充放電を行うバッテリ6(二次電池)の劣化状態には、バッテリ6の摩耗によって発生する劣化成分と、バッテリ6内の塩濃度の偏りによって発生する劣化成分(ハイレート劣化成分)とが含まれている。
【0041】
バッテリ6内の塩濃度の偏りによって劣化が発生すると電池抵抗が上昇する。例えば、放電時に正電極体内の電解液塩濃度が低下することによって、反応抵抗の上昇が発現し、また、充電時においても負電極体内の電解液塩濃度が低下することによって、反応抵抗の上昇が発現する。
【0042】
図3は、バッテリ6の使用時間と電池抵抗の上昇量の関係を示した一例である。バッテリ6は、初期抵抗を有しており、バッテリ6の充放電によって、摩耗劣化量が上昇する。また、バッテリ6の充放電によって、ハイレート抵抗上昇量が変化する。二次電池の抵抗上昇量は、摩耗劣化量およびハイレート抵抗上昇量の合計値である。
【0043】
ハイレート劣化成分の発生は、電池抵抗の上昇を監視することで検出することができる。例えば、バッテリ6の電池抵抗を、バッテリ6のOCVと充放電時の電圧(CCV)との差を充放電電流で除算して求め、図3に示すように予めハイレート劣化成分を含まない劣化(摩耗劣化)による電池抵抗(基準抵抗値に相当する)を減算することでハイレート劣化成分による抵抗上昇量(ハイレート抵抗上昇量)を算出することができる。ハイレート抵抗上昇量が所定値を超えていれば、ハイレート抵抗上昇が発生したものと検出することができる。
【0044】
また、ハイレート抵抗上昇率を用いてハイレート劣化成分の発生を検出することができる。例えば、許容値を設定しておき、ハイレート抵抗上昇率が許容値を超えているときに、ハイレート抵抗上昇が発生していると判定することができる。許容値は、ハイレート抵抗上昇量と、ハイレート抵抗上昇が発生していないときの電池抵抗とに基づいて設定することができる。
【0045】
一方、ハイレート劣化成分は、バッテリ6内の塩濃度の偏りによって発生するので、塩濃度の偏りの解消によりハイレート劣化成分によって上昇した抵抗が回復し、ハイレート劣化成分を含まない電池抵抗に回復することが知られている。
【0046】
図4は、単位時間当たりのハイレート抵抗上昇の回復量とバッテリ6のSOCとの関係を示す図である。図4は、ハイレート劣化成分によって上昇した抵抗の回復度合いとその時間を予め計測し、単位時間当たりの上昇した抵抗の低下量(回復量)を算出して、ハイレート抵抗上昇の回復速度(抵抗低下率)をバッテリ6のSOCとの関係で表した回復速度マップである。
【0047】
図4に示すように、バッテリ6のSOCが高いほど抵抗低下率である回復速度は大きくなり、SOCが低いほど回復速度は小さくなっている。回復速度マップは、予めコントローラ10が保持するように構成される。
【0048】
本実施例では、例えば、車両走行中のバッテリ6の充放電制御において、ハイレート抵抗上昇を検出し、ハイレート抵抗上昇が検出された場合には、ハイレート抵抗上昇の回復速度に応じた第1目標SOCを決定し、ハイレート抵抗上昇が検出される前の目標SOC(通常時の目標SOC)からハイレート抵抗上昇の回復速度に応じて決定された第1目標SOCをSOC制御中心として、充放電制御を遂行する。
【0049】
さらに、ハイレート抵抗上昇の回復速度に応じて決定された第1目標SOCをSOC制御中心とした充放電制御において、ハイレート抵抗上昇の回復度合い(劣化度の変化度合い)を検出し、ハイレート抵抗上昇の回復度合いに応じて第1目標SOCとは異なる第2目標SOCにSOC制御中心を変更し、発生したハイレート劣化成分の解消を図るように充放電制御を遂行する。
【0050】
図5から図7を参照し、本実施例の車両走行中の充放電制御の動作フローを説明する。図5は、コントローラ10によるハイレート抵抗上昇に応じたSOC制御のフローチャートである。図6は、ハイレート抵抗上昇に応じたSOC制御中心の遷移を示した図である。図7は、ハイレート抵抗上昇によって上昇した電池抵抗の回復状況を示す図である。
【0051】
図6に示すように、コントローラ10は、ハイレート劣化成分が検出されるまで所定のSOC(通常時の目標SOC)をSOC制御中心として、車両走行中のバッテリ6に対する充放電制御を遂行する。コントローラ10は、車両走行中の走行制御においてハイレート抵抗上昇検出を所定のタイミング毎に行う。コントローラ10は、ステップS101において、電圧監視IC20及び電流センサ21で検出された検出値に基づいてバッテリ6の電池抵抗を算出する。
【0052】
コントローラ10は、ステップS102において、ハイレート劣化成分を含まない摩耗劣化量を算出された電池抵抗から減算してハイレート抵抗上昇量を求め、算出されたハイレート抵抗上昇量が所定値を超えている場合、ハイレート抵抗上昇が発生したものと検出する。図6の例において、時間t1でハイレート抵抗上昇の発生が検出されている。
【0053】
コントローラ10は、ステップS102においてハイレート抵抗上昇の発生を検出すると、ステップS103に進み、図2に示した回復速度マップから回復速度に応じた第1目標SOCを取得する。コントローラ10は、予め設定されたハイレート抵抗上昇の回復目標時間に基づいて、ハイレート抵抗上昇量と回復目標時間とから単位時間あたりの回復量(回復速度)を算出する。コントローラ10は、算出された回復速度に対応するハイレート抵抗上昇に応じた第1目標SOCを、図4に示した回復速度マップから決定する。
【0054】
例えば、ハイレート抵抗上昇が検出される前の電池抵抗が1.5mΩの状態から、ハイレート抵抗上昇によって電池抵抗が20%増加して電池抵抗が1.8mΩとなった場合、0.3mΩの上昇抵抗値を回復目標時間で回復させる。回復目標時間が10分に設定されている場合、10分で目標値である電池抵抗1.50mΩまで低下させる低下率、すなまわち、0.3mΩの上昇抵抗値を回復させる回復速度が、0.03[mΩ/min]と計算できる。回復速度0.03に対応するSOCは、回復速度マップから取得することができる。なお、回復目標時間は、任意に設定することができ、例えば、数分や数十分程度の比較的短い時間とすることができる。
【0055】
コントローラ10は、ステップS103において、回復速度マップから取得したハイレート抵抗上昇に応じた第1目標SOCをSOC制御中心として設定する。目標SOCが設定された後、コントローラ10は、決定された第1目標SOCをSOC制御中心として充放電制御を行う(S104)。図6の例では、通常時の目標SOCから第1目標SOCにSOC制御中心を引き上げて充放電制御を行う(第1目標SOC>通常時の目標SOC)。
【0056】
なお、コントローラ10は、現行のSOC制御中心が引き上げられたり、引き下げられたりした場合、バッテリ6のSOCが変更後の各SOC制御中心を維持して走行するように、エンジン1及び第2MG3を用いて走行制御を行う。コントローラ10は、エンジン1を始動して第1MG2による充電制御を行い、バッテリ6のSOCを引き上げられたSOC制御中心に近づけるように上昇させつつ、エンジン1の駆動力又は/及び第2MG3の駆動力(バッテリ6の電力)を用いた走行制御を行ったり、主に第2MG3の駆動力(バッテリ6の電力)を用いた走行制御を遂行して、バッテリ6のSOCを引き下げられたSOC制御中心に近づけるように、低下させつつ、エンジン1の駆動力又は/及び第2MG3の駆動力(バッテリ6の電力)を用いた走行制御を行う。
【0057】
続いてコントローラ10は、ハイレート抵抗上昇に応じた第1目標SOCをSOC制御中心とする充放電制御が開始された後の所定時間経過後に、バッテリ6の電池抵抗を検出してハイレート抵抗上昇量の回復状況、すなわち、劣化度の変化度合いを確認し、劣化度の変化度合いに応じてさらにSOC制御中心を変更した充放電制御を行う。
【0058】
例えば、図6の例において、ハイレート抵抗上昇に応じた第1目標SOCをSOC制御中心とする充放電制御が開始される時間t1から所定時間経過後の時間t2の時点で、コントローラ10は、バッテリ6の電池抵抗を検出する(S105)。バッテリ6の電池抵抗の検出は、ステップS101と同様に行うことができる。
【0059】
コントローラ10は、ステップS105で検出された電池抵抗に基づいて、ハイレート抵抗上昇の回復状況を確認する(S106)。コントローラ10は、ステップS106において、ハイレート抵抗上昇が検出された時点の上昇した抵抗値が、時間t2の時点でどの程度低くなっているかを検出する。具体的には、第1目標SOCに対応する回復速度と回復目標時間とから、推定(予想)される抵抗値の低下の遷移を算出することができるので、時間t2の時点の電池抵抗が、推定される抵抗値の低下度合いからずれているか否かを判別することで、ハイレート抵抗上昇で上昇したバッテリ6の抵抗値の回復度合いを確認することができる。
【0060】
図7に示すように、コントローラ10は、ステップS106において、時間t2に時点で検出されたバッテリ6の電池抵抗値が、点線で示した回復速度に応じた椎定抵抗値の所定の範囲内であるか否かを判別する。コントローラ10は、時間t2の時点の回復した電池抵抗値が、回復速度に応じた推定抵抗値の範囲内であると判別された場合(図6、図7のAに示す状態)、ステップS107に進み、SOC制御中心を変更せずに、ステップS110に進んで第1目標SOCをSOC制御中心とした充放電制御を継続する。例えば、時間t1から所定時間経過後の時間t2における推定抵抗値が1.65mΩである場合、時間t2の時点で検出されたバッテリ6の電池抵抗値が1.65mΩであれば、コントローラ10は、SOC制御中心を変更しない。
【0061】
時間t2の時点で検出されたバッテリ6の電池抵抗値が、回復速度に応じた推定抵抗値よりも小さいと判別された場合(図6、図7のBに示す状態)、コントローラ10は、ステップS108に進み、推定抵抗値よりも電池抵抗の回復が遅いので、回復速度を大きくするために図4に示した回復速度マップに基づいて第1目標SOCよりも高い第2目標SOCをSOC制御中心に設定する。例えば、ハイレート抵抗上昇が検出された時点の上昇した抵抗値が1.8mΩ、所定時間経過後の時間t2の時点の推定抵抗値が1.65mΩである場合、時間t2に時点で検出されたバッテリ6の電池抵抗値が1.7mΩだとすると、回復目標時間内に上昇した抵抗値が低下しないので、コントローラ10は、第1目標SOCよりも高い第2目標SOCにSOC制御中心を引き上げる。
【0062】
例えば、時間t2が時間t1から5分経過した時間である場合、残りの5分でバッテリ6の電池抵抗値1.7mΩを1.5mΩまで回復させるための回復速度は、0.04となる。コントローラ10は、回復速度0.04に対応するSOCを回復速度マップから取得し、回復速度0.04に対応する回復速度マップから取得された第2目標SOCをSOC制御中心として設定する。このようにコントローラ10は、推定抵抗値よりも電池抵抗の回復が遅い場合、回復速度が速くするように第1目標SOCよりも高い第2目標SOCにSOC制御中心を引き上げる(第2目標SOC>第1目標SOC)。コントローラ10は、ステップS110に進んで第2目標SOCをSOC制御中心とした充放電制御を遂行する。
【0063】
時間t2の時点で検出されたバッテリ6の電池抵抗値が、回復速度に応じた推定抵抗値よりも大きいと判別された場合(図6、図7のCに示す状態)、ステップS109に進み、推定抵抗値よりも電池抵抗の回復が早いので、回復速度を遅くするために図4に示した回復速度マップに基づいて第1目標SOCよりも低い第3目標SOCをSOC制御中心に設定する。例えば、ハイレート抵抗上昇が検出された時点の上昇した抵抗値が1.8mΩ、所定時間経過後の時間t2の時点の推定抵抗値が1.65mΩである場合、時間t2の時点で検出されたバッテリ6の電池抵抗値が1.60mΩだとすると、回復目標時間よりも早い時間で上昇した抵抗値が目標抵抗値に低下しまうので、コントローラ10は、第1目標SOCよりも低い第3目標SOCにSOC制御中心を引き下げる。
【0064】
例えば、時間t2が時間t1から5分経過した時間である場合、残りの5分でバッテリ6の電池抵抗値1.60mΩを1.5mΩまで回復させるための回復速度は、0.02となる。コントローラ10は、回復速度0.02に対応するSOCを回復速度マップから取得し、回復速度0.02に対応する回復速度マップから取得された第3目標SOCをSOC制御中心として設定する。このようにコントローラ10は、推定抵抗値よりも電池抵抗の回復が早い場合、回復速度が遅くするように第1目標SOCよりも低い第3目標SOCにSOC制御中心を引き下げる(第1目標SOC>第3目標SOC)。コントローラ10は、ステップS110に進んで第3目標SOCをSOC制御中心とした充放電制御を遂行する。
【0065】
コントローラ10は、ステップS110での上昇した電池抵抗の回復度合いに応じて回復速度を変更した充放電制御から所定時間経過後、ステップS111において再度バッテリ6の電池抵抗を算出し、ハイレート抵抗上昇が発生したバッテリ6の抵抗値が、回復目標時間で到達する目標抵抗値まで回復したか否かを判別する(S112)。コントローラ10は、目標抵抗値まで回復していないと判別された場合、ステップS106に戻り、ステップS107〜S109で変更又は維持された目標SOCに対応する回復速度に応じた電池抵抗の回復状況を確認し、再度回復度合いに応じて回復速度に応じた目標SOCの設定及び設定された目標SOCをSOC制御中心とする充放電制御を遂行する(ステップS106からステップS111)。
【0066】
ステップS112において、コントローラ10は、ハイレート抵抗上昇が発生したバッテリ6の上昇していた抵抗値が目標抵抗値まで回復したと判別された場合、ステップS113に進み、ハイレート抵抗上昇に応じた目標SOCをSOC制御中心とする充放電制御を終了し、ハイレート抵抗上昇が生じていない通常時の目標SOCを制御中心とする制御に切り替えて(通常時の目標SOCにSOC制御中心を設定して)、充放電制御を継続して行う。図6の例に示すように、時間t3の時点でハイレート抵抗上昇の解消に伴って葉ハイレート抵抗上昇に応じたSOC制御中心での充放電制御を終了し、その後はハイレート抵抗上昇に応じた目標SOCよりも低い通常時の目標SOCに、SOC制御中心が移行した充放電制御が行われる。
【0067】
このように本実施例では、ハイレート抵抗上昇が検出された場合、ハイレート抵抗上昇の回復速度に応じた目標SOCにSOC制御中心を変更してハイレート抵抗上昇に伴うバッテリ6の劣化の解消を図りつつ、ハイレート抵抗上昇に伴うバッテリ6の劣化が解消された場合に、SOC制御中心を通常の目標SOCに変更する。
【0068】
このため、電池抵抗の上昇度合い(劣化度合い)に応じてSOC制御中心が制御され、発生した電池抵抗に対して必要以上にSOCを高い状態に維持する必要がなく、さらに、上昇した電池抵抗(発生した劣化)が解消された後、すなわち、電池抵抗の上昇度合いが0に変化したことに伴って、SOC制御中心を通常の低い目標SOCに変更することで、SOCが高い状態になることを低減できるので、バッテリ6の劣化促進が抑制され、バッテリ6の寿命を向上させることができる。
【0069】
特に、本実施例では、ハイレート抵抗上昇の回復速度に応じて決定された第1目標SOCをSOC制御中心とした充放電制御において、ハイレート抵抗上昇の回復度合い(劣化度の変化度合い)を検出し、ハイレート抵抗上昇の回復度合いに応じてSOC制御中心をさらに変更し、発生したハイレート劣化成分の解消を図るように充放電制御を遂行する。このため、SOCが必要以上に高い状態で維持されることが抑制され、バッテリ6の劣化促進を抑制でき、バッテリ6の寿命を向上させることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 エンジン
2 第1MG
3 第2MG
4 動力分配機構
5 トランスミッション
6 バッテリ
7 駆動輪
8 デフ
9 インバータ
10 コントローラ
11 充電器
12 インレット
100 プラグインハイブリッド車両
200 外部電源
210 接続プラグ
220 充電ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両に搭載される蓄電装置の制御装置であって、
前記蓄電装置の抵抗上昇に基づく劣化状態を検出する検出部と、
前記上昇した抵抗が時間経過に応じて低下する低下率と前記蓄電装置のSOCとの関係を予め規定した関係データに基づいて目標SOCを設定し、前記蓄電装置のSOCを監視して前記設定された目標SOCとなるように、前記蓄電装置の充放電制御を行うコントローラと、を有し、
前記検出部は、前記上昇した抵抗が低下することに伴って変化する劣化状態を検出し、
前記コントローラは、前記上昇した抵抗の低下に伴う劣化状態の変化に基づいて、前記関係データに基づく目標SOCを変更することを特徴とする蓄電装置の制御装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記関係データに基づいて設定された第1目標SOCを制御中心とする充放電制御から所定時間経過後の前記蓄電装置の抵抗を検出し、
前記コントローラは、前記所定時間経過後の前記上昇した抵抗の低下量と前記低下率に基づく予想低下量とに基づいて、前記目標SOCを変更することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置の制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記所定時間経過後の前記上昇した抵抗の低下量が、前記予想低下量と同じである場合、前記第1目標SOCを変更しないで前記充放電制御を継続し、
前記所定時間経過後の前記上昇した抵抗の低下量が、前記予想低下量よりも小さい場合、前記第1目標SOCよりも高い第2目標SOCに変更し、前記蓄電装置のSOCを前記第2目標SOCとなるように前記充放電制御を行い、
前記所定時間経過後の前記上昇した抵抗の低下量が、前記予想低下量よりも大きい場合、前記第1目標SOCよりも低い第3目標SOCに変更し、前記蓄電装置のSOCを前記第3目標SOCとなるように前記充放電制御を行う、ことを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置の制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記上昇した抵抗を所定の時間内に目標値まで低下させる低下率を算出し、前記関係データに基づいて前記算出された低下率に対応するSOCを前記目標SOCとして設定することを特徴とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の蓄電装置の制御装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記蓄電装置の内部抵抗を検出し、前記検出した内部抵抗と所定の基準抵抗値との差分又は前記検出された内部抵抗の上昇率に基づいて、前記蓄電装置の抵抗上昇に基づく劣化状態を検出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の蓄電装置の制御装置。
【請求項6】
前記蓄電装置の抵抗上昇は、前記蓄電装置の電解液中の塩濃度の偏りによって発生する内部抵抗の増加であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の蓄電装置の制御装置。
【請求項7】
前記蓄電装置は、リチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の蓄電装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−106481(P2013−106481A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250097(P2011−250097)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】