説明

蓄電装置の加熱システム

【課題】 蓄電装置の温度および充放電レートによっては、蓄電装置の劣化が進行しやすくなってしまう。
【解決手段】 加熱システムは、ヒータと、電流センサと、温度センサと、コントローラとを有する。ヒータは、充放電を行う蓄電装置に熱を与える。電流センサは、蓄電装置の充放電時における電流値を検出し、検出結果をコントローラに出力する。温度センサは、蓄電装置の温度を検出し、検出結果をコントローラに出力する。コントローラは、ヒータの熱を用いた蓄電装置の加熱を制御する。コントローラは、温度センサによる検出温度が35℃以下であって、電流センサから取得した充放電レートが8Cよりも高いとき、蓄電装置を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置を加熱するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池が低温状態にあるときには、二次電池の入出力特性を確保するために、ヒータを用いて、二次電池を温める技術がある。また、特許文献1には、二次電池の劣化を抑制するために、二次電池のSOC(State of Charge)が閾値よりも低いときに、二次電池を加熱する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−330008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池は、SOCだけでなく、他の要因によっても劣化することがある。本願発明者によれば、二次電池の温度および充放電レートの関係に応じて、二次電池が劣化してしまうことが分かった。すなわち、充放電レートが同じであっても、二次電池の温度が異なることに応じて、二次電池の劣化状態が大きく変わってしまうことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願第1の発明である加熱システムは、ヒータと、電流センサと、温度センサと、コントローラとを有する。ヒータは、充放電を行う蓄電装置に熱を与える。電流センサは、蓄電装置の充放電時における電流値を検出し、検出結果をコントローラに出力する。温度センサは、蓄電装置の温度を検出し、検出結果をコントローラに出力する。コントローラは、ヒータの熱を用いた蓄電装置の加熱を制御する。コントローラは、温度センサによる検出温度が35℃以下であって、電流センサから取得した充放電レートが8Cよりも高いとき、蓄電装置を加熱する。
【0006】
本願第1の発明によれば、蓄電装置の温度および充放電レートの関係で発生する蓄電装置の劣化を抑制することができる。温度センサによる検出温度(蓄電装置の温度)が35℃以下であって、充放電レートが8Cよりも高いときには、蓄電装置の劣化が進行しやすくなることが分かった。ここで、ヒータの熱を用いて、蓄電装置の温度を上昇させれば、蓄電装置の劣化が進行するのを抑制することができる。
【0007】
充放電電流が変化するときには、所定期間内における充放電電流値の平均値から得られるレートを、充放電レートとすることができる。所定期間は、8Cよりも高い充放電レートで充放電が継続されることによる蓄電装置の劣化を考慮して、適宜設定することができる。充放電電流が変化しないときには、この電流値に基づいて、充放電レートが決定される。
【0008】
蓄電装置は、車両に搭載することができ、車両の走行に用いられるエネルギを出力することができる。上述したように、蓄電装置の劣化を抑制することにより、蓄電装置の出力を用いた車両の走行距離を延ばすことができる。蓄電装置を車両に搭載するときには、蓄電装置として、例えば、複数の単電池で構成された組電池を用いることができる。蓄電装置としては、例えば、リチウムイオン二次電池を用いることができる。
【0009】
本願第2の発明は、ヒータの熱を用いて、充放電を行う蓄電装置の加熱を制御する制御方法であって、蓄電装置の温度が35℃以下であって、蓄電装置の充放電時における充放電レートが8Cよりも高いとき、蓄電装置を加熱する。本願第2の発明によっても、本願第1の発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態である電池システムの構成を示す概略図である。
【図2】組電池の加熱処理を説明するフローチャートである。
【図3】実施例1〜5において、抵抗増加率の変化を示す図である。
【図4】実施例1〜5において、容量維持率の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
【0012】
本実施形態である電池システムについて、図1を用いて説明する。図1は、電池システムの構成を示す概略図である。本実施形態の電池システムは、車両に搭載されている。車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車は、車両を走行させるための動力源として、後述する組電池に加えて、燃料電池又はエンジンを備えている。電気自動車は、車両を走行させるための動力源として、後述する組電池だけを備えている。
【0013】
組電池10は、電気的に直列に接続された複数の単電池11を有する。単電池11としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることができる。組電池10を構成する単電池11の数は、組電池10の要求出力などを考慮して、適宜設定することができる。本実施形態では、組電池10を構成する、すべての単電池11が電気的に直列に接続されているが、電気的に並列に接続された複数の単電池11が組電池10に含まれていてもよい。
【0014】
電流センサ21は、組電池10の充放電時に、組電池10に流れる電流値を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。ここで、組電池10の放電時における電流値を正の値とし、組電池10の充電時における電流値を負の値とすることができる。
【0015】
温度センサ22は、組電池10の温度を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。温度センサ22は、組電池10に対して、1箇所に設けることもできるし、複数の箇所に設けることもできる。
【0016】
複数の温度センサ22を用いるときには、これらの温度センサ22の出力を考慮して、組電池10の温度を特定することができる。例えば、複数の温度センサ22によって検出された温度が互いに異なるときには、最大値又は最小値の温度を組電池10の温度とすることができる。
【0017】
ヒータ23は、コントローラ30からの制御信号を受けて、発熱する。具体的には、コントローラ30は、ヒータ23に通電することにより、ヒータ23を発熱させることができる。ヒータ23が生成した熱は、組電池10に伝わり、組電池10を温めることができる。ヒータ23は、組電池10に対して、1箇所設けることもできるし、複数の箇所に設けることもできる。
【0018】
コントローラ30は、メモリ30aを内蔵している。メモリ30aは、コントローラ30を動作させるためのプログラムや、各種の情報を記憶している。メモリ30aは、コントローラ30の外部に配置することもできる。
【0019】
組電池10は、システムメインリレーSMR−B,SMR−G,SMR−Pを介して、インバータ31と接続されている。システムメインリレーSMR−Bは、組電池10の正極端子およびインバータ31を接続するラインに設けられている。システムメインリレーSMR−Gは、組電池10の負極端子およびインバータ31を接続するラインに設けられている。
【0020】
システムメインリレーSMR−Pおよび電流制限抵抗24は、電気的に直列に接続されているとともに、システムメインリレーSMR−Gに対して、電気的に並列に接続されている。電流制限抵抗24は、負荷に突入電流が流れるのを抑制するために用いられる。システムメインリレーSMR−B,SMR−G,SMR−Pは、コントローラ30からの制御信号を受けて、オンおよびオフの間で切り替わる。
【0021】
組電池10をインバータ31と接続するとき、コントローラ30は、まず、システムメインリレーSMR−B,SMR−Pをオンにする。このとき、システムメインリレーSMR−Gは、オフのままである。これにより、組電池10の充放電電流は、電流制限抵抗24に流れる。次に、コントローラ30は、システムメインリレーSMR−Gをオンにした後に、システムメインリレーSMR−Pをオンからオフに切り替える。これにより、組電池10およびインバータ31の接続が完了する。
【0022】
コントローラ30は、システムメインリレーSMR−B,SMR−Gをオンからオフに切り替えることにより、組電池10およびインバータ31の接続を、遮断することができる。
【0023】
インバータ31は、組電池10から出力された直流電力を交流電力に変換して、モータ・ジェネレータ32に出力する。また、インバータ31は、モータ・ジェネレータ32から出力された交流電力を直流電力に変換して、組電池10に出力する。なお、組電池10およびインバータ31の間に、昇圧回路を配置することができる。昇圧回路は、組電池10の出力電圧を昇圧し、昇圧後の電力をインバータ31に出力する。また、昇圧回路は、インバータ31の出力電圧を降圧し、降圧後の電力を組電池10に出力することができる。
【0024】
モータ・ジェネレータ32は、インバータ31から出力された電力を受けて、車両を走行させるための運動エネルギを生成する。モータ・ジェネレータ32は、車輪と連結されており、モータ・ジェネレータ32が生成した運動エネルギは、車輪に伝達される。車両を停止させたり、減速させたりするとき、モータ・ジェネレータ32は、車両の制動時に発生する運動エネルギを、電気エネルギ(交流電力)に変換する。モータ・ジェネレータ32が生成した交流電力は、インバータ31に出力される。
【0025】
次に、本実施形態の電池システムにおける加熱処理について、図2に示すフローチャートを用いて説明する。図2に示す処理は、コントローラ30によって実行され、所定の周期で行われる。所定の周期としては、例えば、30分の周期とすることができる。
【0026】
ステップS101において、コントローラ30は、電流センサ21の出力に基づいて、組電池10の充放電時における電流値を取得する。コントローラ30は、所定の周期の間、電流センサ21を用いて、電流値を継続して取得する。組電池10の放電時には、電流値が正の値となり、組電池10の充電時には、電流値が負の値となる。
【0027】
ステップS102において、コントローラ30は、温度センサ22の出力に基づいて、組電池10の温度を取得する。そして、コントローラ30は、組電池10の温度が35℃以下であるか否かを判別する。温度35℃に関する情報は、メモリ30aに予め記憶されている。組電池10の温度が35℃よりも高いときには、本処理を終了する。組電池10の温度が35℃以下であるときには、ステップS103の処理に進む。
【0028】
ステップS103において、コントローラ30は、組電池10の充放電時における充放電レートが8Cよりも高いか否かを判別する。すなわち、コントローラ30は、充電レート又は放電レートが8Cよりも高いか否かを判別する。レート8Cに関する情報は、メモリ30aに予め記憶されている。充放電レートは、所定周期の間において、ステップS101の処理で取得された電流値の平均値に相当する。
【0029】
後述するように、ハイレート(8Cよりも高いレート)で組電池10の充放電が継続されると、組電池10が劣化しやすくなってしまう。所定周期とは、ハイレートの充放電が継続して発生しているか否かを判別するための期間であり、組電池10の劣化の進行状態などを考慮して、所定周期を適宜設定することができる。例えば、所定周期としては、30分以下の期間とすることができる。
【0030】
車両の走行パターンに応じて、電流センサ21によって検出される電流値は、変化する。コントローラ30は、所定周期の間において、電流値の変化を取得して、電流値の平均値を算出する。そして、コントローラ30は、電流値の平均値と、組電池10の容量とに基づいて、充放電レートを算出することができる。組電池10の容量は、予め測定しておくことができる。コントローラ30は、算出した充放電レートが8Cよりも高いか否かを判別する。
【0031】
充放電レートが8Cよりも低いときには、本処理を終了する。充放電レートが8Cよりも高いときには、ステップS104の処理に進む。ステップS104において、コントローラ30は、ヒータ23を駆動することにより、組電池10を温める。組電池10を温めることにより、組電池10の温度が上昇し、図2に示す処理によれば、組電池10の温度が35℃よりも高くなれば、コントローラ30は、ヒータ23の駆動を停止する。
【0032】
本実施形態によれば、図2に示す処理を行うことにより、組電池10の劣化を抑制することができる。ここで、組電池10の温度および充放電レート(平均値)を変化させたときの組電池10の劣化状態を示す実験結果について説明する。
【0033】
まず、下記の表1に示すように、実施例1〜5において、組電池10の温度および充放電レート(平均値)を異ならせた。各実施例1〜5に示す、温度および充放電レート(平均値)の条件において、組電池10の抵抗増加率および容量維持率を測定した。組電池10を構成する単電池11としては、リチウムイオン二次電池を用いた。
【0034】
【表1】

【0035】
図3には、実施例1〜5における抵抗増加率の変化を示している。図3において、縦軸は、抵抗増加率を示し、横軸は、放電量の累積値の平方根を示している。横軸は、車両の移動距離又は走行時間に相当する。
【0036】
抵抗増加率は、初期状態にある組電池10の抵抗値(Rini)と、劣化状態にある組電池10の抵抗値(Rr)との比(Rr/Rini)で表される。放電量の累積値は、電流センサ21によって検出された電流値を積算することによって得られる。ここで、放電電流を正の値とし、充電電流を負の値とすることができる。
【0037】
初期状態とは、組電池10の劣化を判定するための基準となる状態であり、例えば、組電池10を製造した直後の状態を、初期状態とすることができる。組電池10は、充放電によって劣化する傾向があるため、充放電を行った後の組電池10は、劣化状態にある組電池10となる。抵抗増加率は、組電池10の劣化を判定するための指標であり、抵抗増加率が上昇するほど、組電池10が劣化することになる。
【0038】
図3に示すように、実施例1,2,4,5では、放電量の累積値の平方根が増加しても、抵抗増加率は、上昇し難くなっている。一方、実施例3では、放電量の累積値の平方根が増加するにつれて、抵抗増加率が上昇している。
【0039】
図3に示す実験結果によれば、以下のことが分かる。実施例2,4では、充放電レート(平均値)が同じであり、組電池10の温度が異なっている。実施例2,4を比較すると、図3に示すように、放電量の累積値の平方根が増加しても、抵抗増加率は、上昇し難くなっている。このため、充放電レート(平均値)が7.2Cであるときには、組電池10の温度を変化させても、組電池10の劣化(抵抗増加率の上昇)には、影響を与え難くなっている。
【0040】
一方、実施例3,5では、充放電レート(平均値)が同じであり、組電池10の温度が異なっている。実施例3,5を比較すると、図3に示すように、実施例3では、抵抗増加率が上昇しているのに対して、実施例5では、抵抗増加率が上昇し難くなっている。このため、充放電レート(平均値)が8.9Cであるときには、組電池10の温度を変化させることにより、組電池10の劣化(抵抗増加率の上昇)を低減させることができる。すなわち、ヒータ23を用いて組電池10の温度を上昇させて、実施例3の状態から実施例5の状態に変化させることにより、組電池10の劣化(抵抗増加率の上昇)を抑制することができる。
【0041】
図4には、実施例1〜5における容量維持率の変化を示している。図4において、縦軸は、容量維持率を示し、横軸は、放電量の累積値の平方根を示している。容量維持率は、初期状態にある組電池10の容量(Cini)と、劣化状態にある組電池10の容量(Cr)との比(Cr/Cini)で表される。
【0042】
初期状態とは、組電池10の劣化を判定するための基準となる状態であり、例えば、組電池10を製造した直後の状態を、初期状態とすることができる。組電池10は、充放電によって劣化する傾向があるため、充放電を行った後の組電池10は、劣化状態にある組電池10となる。容量維持率は、組電池10の劣化を判定するための指標であり、容量維持率が低下するほど、組電池10が劣化することになる。
【0043】
図4に示すように、実施例1〜5では、放電量の累積値の平方根が増加するにつれて、容量維持率が低下している。ここで、実施例3では、実施例1,2,4,5と比べて、容量維持率が大きく低下している。
【0044】
図4に示す実験結果によれば、以下のことが分かる。実施例3,5では、充放電レート(平均値)が同じであり、組電池10の温度が異なっている。実施例3,5を比較すると、図4に示すように、実施例3では、容量維持率が大きく低下しているのに対して、実施例5では、容量維持率が低下し難くなっている。
【0045】
このため、充放電レート(平均値)が8.9Cであるときには、組電池10の温度を変化させることにより、組電池10の劣化(容量維持率の低下)を抑制することができる。すなわち、ヒータ23を用いて組電池10の温度を上昇させて、実施例3の状態から実施例5の状態に変化させることにより、組電池10の劣化(容量維持率の低下)を抑制することができる。
【0046】
以下の表2には、図3および図4に示す実験結果に基づいて、各実施例1〜5において、抵抗増加率の傾き(変化量)と、容量維持率の傾き(変化量)との関係を示す。表2において、抵抗増加率の傾きと、容量維持率の傾きは、最小二乗法に基づいて算出した。
【0047】
【表2】

【0048】
表2に示すように、実施例2,4を比較すると、組電池10の温度を変化させても、抵抗増加率や容量維持率は、変化し難くなっている。一方、実施例3,5を比較すると、組電池10を温めて、組電池10の温度を上昇させることにより、抵抗増加率の増加量や、容量維持率の低下量を抑制することができる。抵抗増加率の傾きおよび容量維持率の傾きを考慮すると、実施例3では、実施例1,2,4,5と比べて、組電池10の性能(入出力特性)が急激に低下していることが分かる。
【0049】
実施例3,5では、充放電レート(平均値)を8.9Cとしているが、充放電レートが8Cよりも高い状態であるときには、組電池10の温度との関係において、組電池10が劣化しやすくなってしまう。また、実施例3では、組電池10の温度を25℃とし、実施例5では、組電池10の温度を45℃としているが、組電池10の温度が35℃以下であるときには、充放電レートとの関係において、組電池10が劣化しやすくなってしまう。
【0050】
すなわち、組電池10の温度が35℃以下であるとともに、充放電レートが8Cよりも高いときには、実施例3と同様に、組電池10が劣化しやすくなってしまう。そこで、図2に示す処理で説明したように、組電池10の温度が35℃以下であるとともに、充放電レートが8Cよりも高いときには、組電池10を温めることにより、組電池10の劣化を抑制することができる。
【0051】
組電池10が低温状態にあるとき、ハイレートで充放電を行うと、正極および負極の間において、電解液の塩濃度分布にバラツキが発生しやすくなる。塩濃度分布のバラツキが発生すると、組電池10の性能が低下してしまう。低温状態とは、組電池10の温度が35℃よりも低い状態であり、ハイレートとは、充放電レートが8Cよりも高い状態である。
【0052】
電解液の塩濃度分布にバラツキが発生したときには、組電池10を温めることにより、塩濃度分布のバラツキを低減させることができる。このため、組電池10の温度が35℃以下であるとともに、充放電レートが8Cよりも高いときには、組電池10を温めることにより、塩濃度分布のバラツキを低減させて、組電池10の劣化を抑制することができる。
【0053】
組電池10が低温状態にあるとき、組電池10を一律に温めてしまうと、充放電レートによっては、組電池10の劣化を進行させてしまうことがある。そこで、本実施形態では、組電池10の温度および充放電レートの関係を考慮して、組電池10を温めるようにしている。すなわち、組電池10の温度が35℃以下であるとともに、充放電レート(平均値)が8Cよりも高いときにおいて、組電池10を温めるようにしている。これにより、組電池10の温度および充放電レートが特定の関係にあるときの組電池10の劣化を抑制することができる。
【0054】
本実施形態では、組電池10を温めるための専用のヒータ23を用いているが、これに限るものではない。組電池10を温めることができればよく、熱源は、適宜選択することができる。例えば、車両にエンジンが搭載されているときには、エンジンで発生した熱を組電池10に供給して、組電池10を温めることができる。
【0055】
具体的には、エンジンで発生した熱を、組電池10に供給するダクトを設けるとともに、ダクトにファンを設けることができる。組電池10を温めるときには、ファンを駆動することにより、エンジンの熱を組電池10に供給することができる。組電池10を温めないときには、ファンの駆動を停止させておけばよい。
【0056】
本実施形態では、車両の走行中に取得した充放電レートに基づいて、組電池10を温めるか否かを判別しているが、これに限るものではない。
【0057】
例えば、外部電源の電力を組電池10に供給して、組電池10を充電するシステムにおいても、本発明を適用することができる。外部電源とは、車両の外部に配置された電源であり、外部電源として、例えば、商用電源がある。外部電源の電力を組電池10に供給するときには、定電流で充電される。外部電源が交流電力を出力するときには、交流電力を直流電力に変換する充電器を車両に搭載することができる。外部電源が直流電力を出力するときには、直流電力を組電池10に供給すればよい。
【0058】
外部電源の電力を組電池10に供給し始めるときの組電池10の温度が35℃以下であり、充電レートが8Cよりも高いときには、ヒータ23を用いて、組電池10を温めることができる。組電池10を温め終わってから、組電池10の充電を開始してもよいし、組電池10を充電しながら、組電池10を温めてもよい。
【0059】
一方、組電池10の電力を外部機器に供給して、外部機器を動作させるシステムにおいても、本発明を適用することができる。外部機器とは、車両の外部に配置された電子機器であり、外部機器としては、例えば、電化製品がある。
【0060】
組電池10の電力を外部機器に供給し始めるときの組電池10の温度が35℃以下であり、放電レートが8Cよりも高いときには、ヒータ23を用いて、組電池10を温めることができる。組電池10を温め終わってから、組電池10の放電を開始してもよいし、組電池10を放電しながら、組電池10を温めてもよい。
【0061】
本実施形態では、組電池10が車両に搭載された場合について説明したが、これに限るものではない。単電池11が搭載される機器においては、本発明を適用することができる。ここで、単電池11の劣化を抑制するために、本実施形態で説明した加熱処理(図2参照)を行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
10:組電池(蓄電装置) 11:単電池
21:電流センサ 22:温度センサ
23:ヒータ 24:電流制限抵抗
30:コントローラ 30a:メモリ
31:インバータ 32:モータ・ジェネレータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電を行う蓄電装置に熱を与えるヒータと、
前記蓄電装置の充放電時における電流値を検出する電流センサと、
前記蓄電装置の温度を検出する温度センサと、
前記ヒータの熱を用いた前記蓄電装置の加熱を制御するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、前記温度センサによる検出温度が35℃以下であって、前記電流センサから取得した充放電レートが8Cよりも高いとき、前記蓄電装置を加熱することを特徴とする加熱システム。
【請求項2】
前記充放電レートは、所定期間内における充放電電流値の平均値から得られるレートであることを特徴とする請求項1に記載の加熱システム。
【請求項3】
前記蓄電装置は、車両の走行に用いられるエネルギを出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱システム。
【請求項4】
前記蓄電装置は、リチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の加熱システム。
【請求項5】
ヒータの熱を用いて、充放電を行う蓄電装置の加熱を制御する制御方法であって、
前記蓄電装置の温度が35℃以下であって、前記蓄電装置の充放電時における充放電レートが8Cよりも高いとき、前記蓄電装置を加熱することを特徴とする制御方法。
【請求項6】
前記充放電レートは、所定期間内における充放電電流値の平均値から得られるレートであることを特徴とする請求項5に記載の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−84389(P2013−84389A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222217(P2011−222217)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】