説明

蓄電装置

【課題】 コストアップを抑制しつつ、蓄電素子から放出されたガスを効率良く検出することができる蓄電装置を提供する。
【解決手段】 複数の蓄電素子(11)と、各蓄電素子に設けられ、蓄電素子内で発生したガスを排出させるための弁(60)と、複数の弁に接続され、各弁から排出されるガスを蓄電装置の外部に導くための排気管(70)と、ガスを検出するためのガスセンサ(80)と、を有する。ガスセンサは、排気管のうち、複数の弁との接続部よりもガスの排気経路における下流側の領域に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過充電等によって蓄電素子から発生したガスを検出することのできる蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池(単電池)は、一般的には、充放電を行う機能を備えた発電要素と、発電要素を収容する電池ケースとで構成されている。発電要素は、例えば、正極体、負極体及びセパレータによって構成されている。
【0003】
ここで、二次電池を過充電等すると、発電要素からガスが発生するおそれがある。そこで、電池ケース内の圧力変化を検出したり、発電要素における温度変化を検出したりすることにより、ガスの発生を検出するようにしているものがある。また、ガスの発生に伴って発生する音や振動を検出することによって、ガスの発生を検出するようにしているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、複数の単電池に対して1つの排気ダクトを接続しておき、この排気ダクトの内部に、単電池から放出されたガスを検出するためのセンサを配置しているものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−8631号公報(段落0034)
【特許文献2】特開平8−255637号公報(段落0009,0013、図1)
【特許文献3】特開2004−247059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電池ケース内の圧力変化や発電要素の温度変化を検出する場合には、圧力や温度を検出するためのセンサを単電池毎に設けなければならない。ここで、複数の単電池を電気的に直列に接続した組電池では、単電池の数だけ、上記センサを用意しなければならず、コストアップとなってしまう。
【0006】
また、音や振動を検出する構成では、外部環境からの影響を受けて検出精度が低下してしまうことがある。例えば、音又は振動を検出するセンサを備えた組電池を車両に搭載した場合には、車両の走行に伴う音や振動も上記センサによって検出されてしまうことがあり、ガスの発生を検出する精度が低下してしまう。
【0007】
一方、特許文献2に記載の構成では、ガスの発生を検出するためのセンサを配置する位置については、具体的に特定されていない。ここで、特許文献2の図1では、排気ダクトのうち、複数の単電池と接続された領域内に、センサを配置している。このような構成では、センサと単電池の位置関係によって、単電池から放出されたガスをセンサによって検出することができなくなってしまうことがある。
【0008】
ここで、センサに対して、ガスの排出経路の上流側に位置する単電池については、この単電池から放出されたガスをセンサによって検出することができる。しかし、センサに対して、ガスの排出経路の下流側に位置する単電池については、この単電池から放出されたガスが、センサに到達することなく、排気ダクトを介して排出されてしまうことがある。この場合には、センサによってガスの発生を検出することができなくなってしまう。
【0009】
そこで、本発明の目的は、複数の蓄電素子を備えた蓄電装置において、コストアップを抑制しつつ、いずれかの蓄電素子からガスが放出された場合でも、ガスの発生を検出することができる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明である蓄電装置は、複数の蓄電素子と、各蓄電素子に設けられ、蓄電素子内で発生したガスを排出させるための弁と、複数の弁に接続され、各弁から排出されるガスを蓄電装置の外部に導くための排気管と、ガスを検出するためのガスセンサと、を有する。そして、ガスセンサは、排気管のうち、複数の弁との接続部よりもガスの排気経路における下流側の領域に配置されている。
【0011】
ここで、排気管を、複数の蓄電素子の配列方向に沿って延びるように配置することができる。また、複数の蓄電素子の位置に応じて、排気管を複数に分岐させた場合には、排気管のうち、ガスの排気経路における最も下流側に位置する分岐点からさらに下流側の領域にガスセンサを配置することができる。これにより、複数の蓄電素子のうち、いずれの蓄電素子からガスが排出された場合でも、1つのガスセンサを用いてガスを検出することができる。したがって、複数のガスセンサを用いる場合に比べて、コストダウンを図ることができる。
【0012】
なお、蓄電素子は、充放電を行うための発電要素と、発電要素を収容し、弁が設けられたケースとで構成することができる。また、蓄電素子としては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池といった二次電池が挙げられる。
【0013】
本発明の蓄電装置は、車両に搭載することができる。この場合において、蓄電装置及び電子機器の間における電気的な接続を、接続状態及び非接続状態の間で切り換えるためのコントローラを設けておき、ガスセンサによってガスを検出したときには、蓄電装置及び電子機器の接続を非接続状態とすることができる。これにより、例えば、電子機器から蓄電装置への更なる充電を禁止して、ガスの更なる発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排気管のうち、複数の弁との接続部よりもガスの排気経路における下流側の領域にガスセンサを配置しているため、複数の蓄電素子のうち、いずれかの蓄電素子からガスが排出された場合でも、ガスを検出することができる。これにより、ガスセンサの数を低減することができ、コストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
まず、本発明の実施例1である電池パック(蓄電装置)の構成について、図1を用いて説明する。ここで、図1は、本実施例の電池パックの内部構成を示す斜視図である。本実施例の電池パックは、車両に搭載されている。
【0017】
上述した車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車とは、電池パックの他に、車両の走行に用いられるエネルギを出力する、内燃機関や燃料電池といった他の動力源を備えた車である。また、電気自動車は、電池パックの出力だけを用いて走行する車である。本実施例の電池パックは、放電によって車両の走行に用いられるエネルギを出力したり、車両の制動時に発生するエネルギや、車両の外部からの電力供給を受けて充電を行ったりする。
【0018】
本実施例の電池パックは、図1に示す電池ユニット1と、電池ユニット1を収納するパックケース(不図示)とを有している。電池ユニット1はパックケースに固定され、パックケースは車両本体に固定される。車両本体としては、例えば、フロアパネルやフレームがある。パックケースは、耐久性及び耐食性に優れた材料で形成することが好ましく、この材料として、具体的には、アルミ等の金属を用いることができる。パックケースの外面には、電池パック(電池ユニット1)の放熱性を向上させるために、複数の放熱フィンを設けることができる。
【0019】
また、パックケースの内部に気体を供給することにより、電池ユニット1の温度調節を行うことができる。この気体としては、例えば、車両の室内に存在する空気、車両の外部に存在する空気、空気とは異なる成分の気体を用いることができる。ここで、電池ユニット1が充放電によって発熱している場合には、電池ユニット1に気体(冷却用の気体)を供給することにより、電池ユニット1を冷却することができる。また、電池ユニット1が外部環境の影響を受けて冷やされた場合には、電池ユニット1に気体(加温用の気体)を供給することにより、電池ユニット1を温めることができる。
【0020】
一方、パックケースの内部に絶縁性の液体を充填しておき、絶縁性の液体を電池ユニット1と接触させることもできる。液体を用いることにより、電池ユニット1の熱を外部に逃がしやすくしたり、外部からの熱を電池ユニット1に伝達しやすくしたりすることができる。
【0021】
絶縁性の液体を用いる場合には、液体が漏れてしまうのを防止するために、パックケースを密閉状態としておく必要がある。絶縁性の液体としては、例えば、シリコンオイルといった絶縁油を用いることができる。また、絶縁油の代わりに不活性液体を用いることもできる。この不活性液体も絶縁性を有する液体であり、具体的には、フッ素系不活性液体である、フロリナート、Novec HFE(hydrofluoroether)、Novec1230(スリーエム社製)を用いることができる。
【0022】
次に、本実施例の電池ユニット1の構成について説明する。
【0023】
電池ユニット1は、2つの電池モジュール10で構成されている。各電池モジュール11は、バスバーによって電気的に直列に接続された複数の単電池(蓄電素子、二次電池)11で構成されており、これらの単電池11は一方向に並んで配置されている。また、2つの電池モジュール10は、バスバーによって電気的に直列に接続されている。
【0024】
各電池モジュール10において、隣り合う2つの単電池11の間には、一方の単電池11のうち、他方の単電池11と対向する側面に対して上述した気体を導くためのスペーサ20が配置されている。スペーサ20は、樹脂といった絶縁性の材料で形成することができる。
【0025】
各電池モジュール11には、この電池モジュール11を構成する複数の単電池11を拘束した状態で保持するための保持機構が設けられている。この保持機構は、電池モジュール11の両端に配置された一対のエンドプレート30と、一対のエンドプレート30を連結するための連結部材(不図示)とを有している。
【0026】
次に、単電池11の構成について、図2を用いて説明する。ここで、図2は、単電池11の構成を示す正面図である。
【0027】
図2において、単電池11は、発電要素11aと、発電要素11aを収容する電池ケース11bとを有している。電池ケース11bは、耐久性及び耐食性に優れた材料で形成することが好ましく、この材料として、具体的には、アルミ等の金属を用いることができる。また、電池ケース11bの上面には、安全弁60が設けられている。安全弁60の構成については、後述する。さらに、電池ケース11bの上面には、安全弁60を覆った状態で、排気管70が接続されている。排気管70の構成については、後述する。
【0028】
発電要素11aには、正極端子11c及び負極端子11dが接続されており、これらの端子11c,11dの一部は、電池ケース11bの外部に突出している。各単電池11における正極端子11c及び負極端子11dは、図3に示すバスバー40によって、他の単電池11における正極端子11c及び負極端子11dと電気的及び機械的に接続されている。ここで、図3は、電池モジュール11の一部を上方から見たときの図である。
【0029】
次に、発電要素11aの構成について、図4を用いて説明する。ここで、図4は、発電要素11aの概略構成を示す断面図である。
【0030】
集電体51のうち一方の面には正極層(電極層)52が形成され、他方の面には負極層(電極層)53が形成されている。この電極層52,53及び集電体51によって、バイポーラ電極54が構成される。電極層52,53は、インクジェット方式等を用いることにより、集電体51上に形成することができる。各電極層52,53には、正極及び負極に応じた活物質が含まれている。また、各電極層52,53には、必要に応じて、導電剤、バインダ、添加剤、イオン伝導性を高めるための無機固体電解質、高分子ゲル電解質又は高分子固体電解質、などが含まれる。
【0031】
また、2つのバイポーラ電極54の間には、電解質層(セパレータ)55が設けられている。電解質層55は、一方のバイポーラ電極54における正極層52に接触しているとともに、他方のバイポーラ電極54における負極層53に接触している。このように、バイポーラ電極54及び電解質層55が交互に積層されることにより、発電要素11aが構成されている。
【0032】
なお、本実施例の発電要素11aでは、図4に示すような積層構造としているが、これに限るものではなく、バイポーラ電極54を、電解質層55を介して巻いた構成であってもよい。
【0033】
ここで、発電要素11aの積層方向(図4の上下方向)における両端に位置する集電体51には、一方の面にのみ電極層(正極層52又は負極層53)が形成されている。また、他方の面には、電流を取り出すための電極端子(正極端子11c及び負極端子11d)が電気的及び機械的に接続されている。
【0034】
単電池11として、ニッケル水素電池を用いた場合には、正極層52の活物質として、ニッケル酸化物を用い、負極層53の活物質として、MmNi(5−x−y−z)AlMnCo(Mm:ミッシュメタル)等の水素吸蔵合金を用いることができる。また、電解質層55としては、セパレータとしての不織布に、電解液としての水酸化カリウムを含ませたものを用いることができる。
【0035】
また、単電池11として、リチウムイオン電池を用いた場合には、正極層52の活物質として、リチウム−遷移金属複合酸化物を用い、負極層53の活物質として、カーボンを用いることができる。そして、電解質層55として、セパレータに公知の有機電解液を含ませたものを用いることができる。一方、導電剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブを用いることができる。
【0036】
なお、本実施例では、図1に示すように、角型の単電池11を用いた場合について説明するが、これに限るものではなく、円筒型といった他の形状の単電池を用いることもできる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタを用いることもできる。
【0037】
さらに、本実施例では、バイポーラ電極54を用いた場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、集電体の両面に正極層を形成した正極体と、集電体の両面に負極層を形成した負極体とを用いることもできる。この場合には、正極体及び負極体が、電解質層を介して交互に配置されることになる。
【0038】
集電体51は、例えば、アルミニウム箔で形成したり、複数の金属(合金)で形成したりすることができる。また、金属(アルミニウムを除く)の表面にアルミニウムを被覆させたものを集電体51として用いることもできる。
【0039】
集電体51として、複数の金属泊を貼り合わせた、いわゆる複合集電体を用いることもできる。この複合集電体を用いる場合においては、正極用集電体の材料としてアルミニウム等を用い、負極用集電体の材料としてニッケルや銅等を用いることができる。また、複合集電体としては、正極用集電体及び負極用集電体を直接接触させたものを用いたり、正極用集電体及び負極用集電体の間に導電性を有する層を設けたものを用いたりすることができる。
【0040】
次に、単電池11の電池ケース11bに設けられた安全弁60の構成について、図5を用いて説明する。
【0041】
安全弁60は、後述するように、単電池11の異常時(例えば、過充電時)に発電要素11aからガスが発生した場合に、このガスを単電池11の外部、言い換えれば、排気管70に放出させるために用いられる。安全弁60は、具体的には、開口部61aが形成された外装部材61と、電池ケース11bに形成された開口部11b1を開閉するための蓋部材62と、蓋部材62を開口部11b1の側に付勢する付勢部材(バネ)63とを有している。
【0042】
外装部材61は、電池ケース11bの外表面に固定されている。また、付勢部材63は、一端が蓋部材62に固定され、他端が外装部材61の内面に固定されている。蓋部材62は、電池ケース11bの外表面に密接させるために、弾性変形が可能な部材によって形成されている。
【0043】
図5に示す状態において、蓋部材62は電池ケース11bに密接し、開口部11b1を塞いでいる。すなわち、安全弁60は、閉じ状態となっている。これにより、電池ケース11bの内部は、密閉状態となる。ここで、蓋部材62の大きさ(図5の左右方向の長さ)は、開口部11b1の大きさ(図5の左右方向の長さ)よりも大きく、外装部材61の大きさ(図5の左右方向の長さ)よりも小さくなっている。
【0044】
また、付勢部材63による付勢力は、以下に説明するように、ガスの発生に伴う電池ケース11bの内圧が所定値に到達したときに、蓋部材62が開口部11b1から離れる方向に移動できるように設定することができる。蓋部材62が開口部11b1から離れる方向に移動することにより、安全弁60は開き状態となる。
【0045】
具体的には、発電要素11aから発生しうるガスの量(予測値)に基づいて、付勢部材63の付勢力を設定することができる。例えば、電池ケース11bの内圧が、ガスの発生に伴って10気圧まで上昇する場合には、5気圧(設定値)に到達したときに、安全弁60が閉じ状態から開き状態に変化できるようにすることができる。
【0046】
本実施例の安全弁60では、電池ケース11bの内圧が所定値以上であるときには、開き状態となり、電池ケース11bの内圧が所定値よりも低いときには、閉じ状態となる。そして、安全弁60は、電池ケース11の内圧に応じて、開き状態及び閉じ状態の間で変化することになる。このような構成を、いわゆる復帰型の弁という。
【0047】
なお、安全弁60は、復帰型の弁ではなく、いわゆる破壊型の弁として構成することもできる。ここで、破壊型の弁とは、閉じ状態から開き状態に不可逆的に変化する弁をいう。
【0048】
破壊型の弁としては、具体的には、電池ケース11bの外表面に、溝部(切り欠いたものを含む)を形成しておくことができる。溝部を形成することにより、溝部が形成された部分において、電池ケース11bの厚さが他の部分よりも薄くなり、電池ケース11bの内部で発生したガスを外部に放出させることができる。ここで、溝部の大きさや深さといった寸法は、弁を閉じ状態から開き状態に変化させるときの、電池ケース11bの内圧(設定値)に応じて、適宜設定すればよい。
【0049】
また、本実施例では、電池モジュール10を構成するすべての単電池11に対して、安全弁60を設けているが、これに限るものではなく、少なくとも2つの単電池11に対して安全弁60を設けてもよい。この場合であっても、少なくとも2つの単電池11に関しては、単電池11の外部にガスを放出させることができる。
【0050】
一方、電池ケース11bには、排気管70が接続されている。具体的には、排気管70は、図2に示すように、各単電池11に設けられた安全弁60を覆うように配置されており、安全弁60から放出されたガスが排気管70にのみ導かれるようになっている。すなわち、安全弁60から放出されたガスが、排気管70の外に漏れないように、排気管70は、単電池11に対して固定されている。
【0051】
なお、本実施例では、排気管70を電池ケース11bに固定しているが、これに限るものではない。すなわち、安全弁60から放出されるガスを排気管70にのみ導くことができる構成であれば、いかなる構成であってもよい。例えば、電池ケース11bの上面に対して、安全弁60を覆う管を設けておき、この管を排気管70に接続することができる。また、本実施例では、電池ケース11bの上面に安全弁60を設けているが、他の位置に安全弁60を設けることもできる。
【0052】
排気管70は、各電池モジュール10に対して設けられており、図3に示すように、各電池モジュール11を構成する複数の単電池11が並ぶ方向に延びている。本実施例では、電池ユニット1が2つの電池モジュール10で構成されているため、2つの排気管70が設けられている。
【0053】
2つの排気管70は、図6に示すように、互いに接続されて、1つの排気管となっている。言い換えれば、排気管70は、2つの電池モジュール10に対応させて、分岐した構成となっている。そして、2つの電池モジュール10における単電池11からガスが放出された場合には、これらのガスは合流した後、1つの排気管70を通過することになる。
【0054】
1つに構成された排気管70は、車両の外部まで延びており、単電池11で発生したガスを車両の外部に排出させる。ここで、排気管70は、電池ユニット1を収容するパックケースを貫通しており、排気管70の一部は、パックケースの内部に位置しており、排気管70の他の部分は、パックケースの外部に位置している。また、図6の点線で示す矢印は、ガスの移動方向(排気経路)を示している。ここで、実際には、図6の点線で示す矢印とは異なる方向に進むガス成分も存在するが、主なガスの流れは、図6の点線で示す矢印となる。なお、ガスの移動経路における上流側(図6の左側)には、安全弁60が位置している。
【0055】
2つの排気管70の接続部分には、排気管70を流れるガスを検出するためのガスセンサ80が設けられている。ここで、ガスセンサ80の構成について、図7を用いて説明する。
【0056】
本実施例では、ガスセンサ80として、水晶振動子を備えたガスセンサを用いている。
【0057】
水晶振動子81は、水晶板82と、水晶板82の両面に形成された電極83とを有している。水晶振動子81は、発振回路84に電気的に接続されており、特定の発振周波数で振動するようになっている。また、水晶振動子81は、ガスを吸着するための感応膜85で覆われている。感応膜85としては、例えば、脂質膜を用いることができる。そして、脂質膜の分子構造、膜構造、被覆量に応じて、吸着するガスの種類や吸着量を変化させることができる。すなわち、感応膜85の構成としては、単電池11から発生するガスを吸着できるものを選択すればよい。
【0058】
単電池11としてリチウムイオン電池を用いた場合には、電解液として一般的には有機溶媒が使用されており、炭酸エステル、脂肪酸エステルといった芳香性を有する成分が含まれている。そして、この電解液が熱分解した場合には、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素が発生する。このため、感応膜85としては、上述した気体を吸着できるものを選択することができる。
【0059】
水晶振動子81は、ガスを吸着していない通常状態では、所定の周期で振動している。ここで、感応膜85がガスを吸着すると、質量変化によって水晶振動子81の周波数が変化することになる。ガスの吸着に伴う質量の変化と、水晶振動子81における発振周波数の変化量とは比例関係にあるため、この関係を利用することにより、ガスの濃度変化を測定することができる。
【0060】
なお、ガスセンサ80としては、水晶振動子を用いたガスセンサに限るものではなく、単電池11から放出された特定のガスを検出できるものであれば、いかなる構成であってもよい。例えば、半導体を利用したガスセンサを用いることができる。この半導体ガスセンサでは、金属酸化物半導体を用い、ガスの吸着に伴う半導体の電気伝導度の変化を測定することにより、ガスを検出することができる。
【0061】
次に、本実施例の電池パックを備えた車両における一部の回路構成について、図8を用いて説明する。
【0062】
電池パック100(電池ユニット1の正極及び負極)は、システムリレー101a,101bを介してインバータ102に接続されており、システムリレー101a,101bがオンである場合に、インバータ102に対して所定の電力を供給する。ここで、電池パック100及びインバータ102の間に、DC/DCコンバータを配置することもできる。これにより、電池パック100の電圧を昇圧した状態で、インバータ102に供給することができる。
【0063】
インバータ102は、走行モータ103に電気的に接続されており、電池パック100からの出力を用いて、走行モータ103を駆動する。これにより、本実施例の車両は、走行モータ103の駆動力を用いて走行することができる。
【0064】
コントローラ90は、ガスセンサ80の出力に基づいて、電池ユニット1のうちいずれかの単電池11からガスが発生しているか否かを判別する。ここで、単電池11からガスが発生している場合には、コントローラ90は、システムリレー101a,101bに対して制御信号を出力することにより、システムリレー101a,101bをオンからオフに切り換える。これにより、電池パック100及びインバータ102の間における電気的な接続は、遮断されることになる。
【0065】
本実施例では、各電池モジュール10から延びる2つの排気管70の接続部分に、ガスセンサ80を配置している。このため、電池モジュール10のいずれの単電池11からガスが排出されても、このガスはガスセンサ80を通過することになる。すなわち、1つのガスセンサ80を用いるだけで、電池ユニット1を構成する複数の単電池11のうち、いずれの単電池11からガスが放出されても、このガスを検出することができる。これにより、ガスセンサ80の数を最小限の数(1つ)にすることができ、複数のガスセンサ80を用いる場合に比べて、コストダウンを図ることができる。
【0066】
なお、本実施例では、図6に示すように、2つの排気管70が接続された個所にガスセンサ80を配置しているがこれに限るものではない。すなわち、2つの排気管70が接続された個所よりも、ガスの排出経路における下流側の領域にガスセンサ80を配置すればよい。
【0067】
また、本実施例では、電池ユニット1を構成する2つの電池モジュール10に対して、2つの排気管70を設け、これらの排気管70を互いに接続しているが、これに限るものではない。すなわち、電池ユニット1を1つの電池モジュール10で構成した場合や、3つの以上の電池モジュール10を並列に配置して電池ユニット1を構成した場合にも、本発明を適用することができる。
【0068】
電池ユニット1を1つの電池モジュール10で構成した場合には、1つの排気管70を用いることになる。この場合には、1つの排気管70のうち、電池モジュール10における複数の安全弁60と接続された部分よりも、ガスの排出経路における下流側の位置に、ガスセンサ80を設けることができる。これにより、複数の安全弁60のうち、いずれかの安全弁60からガスが放出された場合にも、ガスセンサ80によってガスの発生を効率良く検出することができる。
【0069】
また、電池ユニット1を3つ以上の電池モジュール10で構成した場合には、各電池モジュール10に対して排気管70を設けるとともに、これらの排気管70を接続して1つの排気管70とすることができる。言い換えれば、排気管70を、3つ以上の電池モジュール10に対応させて分岐させることができる。ここで、3つ以上の排気管70を接続する場合には、3つ以上の排気管70を1個所でまとめて接続して、1つの排気管70とすることもできるし、排気管70の接続個所を異ならせて、最終的に1つの排気管70とすることもできる。言い換えれば、排気管70を、1つの分岐点で3つ以上に分岐させることもできるし、複数の分岐点で複数に分岐させることもできる。
【0070】
この場合には、最終的に1つの排気管70が構成される領域において、ガスセンサ80を配置すればよい。言い換えれば、排気管70のうち最も排気口側に近い分岐点から排気口までの領域内にガスセンサ80を配置すればよい。これにより、いずれの単電池11からガスが排出された場合でも、1つのガスセンサ80を用いて、ガスを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】電池ユニットの構成を示す外観図である。
【図2】単電池の構成を示す正面図である。
【図3】電池モジュールの一部を上方から見たときの図である。
【図4】発電要素の構成を示す断面図である。
【図5】安全弁の構成を示す断面図である。
【図6】排気管の形状及びガスセンサの位置を説明するための図である。
【図7】ガスセンサの構成を示す図である。
【図8】車両の一部における構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0072】
1:電池ユニット
10:電池モジュール
11:単電池(蓄電素子)
60:安全弁
70:排気管
80:ガスセンサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電素子と、
前記各蓄電素子に設けられ、前記蓄電素子内で発生したガスを排出させるための弁と、
前記複数の弁に接続され、前記各弁から排出される前記ガスを蓄電装置の外部に導くための排気管と、
前記ガスを検出するためのガスセンサと、を有し、
前記ガスセンサは、前記排気管のうち、前記複数の弁との接続部よりも前記ガスの排気経路における下流側の領域に配置されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記排気管は、前記複数の蓄電素子の配列方向に沿って延びていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記排気管は、前記複数の蓄電素子の位置に応じて複数に分岐されており、
前記ガスセンサは、前記排気管のうち、前記ガスの排気経路における最も下流側に位置する分岐点からさらに下流側の領域に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記蓄電素子は、充放電を行うための発電要素と、前記発電要素を収容し、前記弁が設けられたケースとを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の蓄電装置を備えたことを特徴とする車両。
【請求項6】
前記蓄電装置及び電子機器の間における電気的な接続を、接続状態及び非接続状態の間で切り換えるためのコントローラを有しており、
前記コントローラは、前記ガスセンサによって前記ガスを検出したときには、前記蓄電装置及び前記電子機器の接続を非接続状態とすることを特徴とする請求項5に記載の車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−266563(P2009−266563A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113962(P2008−113962)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】