説明

蓄電装置

【課題】 蓄電素子の温度調節に用いられる液状の熱交換媒体を、ケース内で移動させる構成において、熱交換媒体中を浮遊するような異物を捕集する。
【解決手段】 複数の蓄電素子(11)を備えた蓄電モジュール(10)と、蓄電モジュールとともにケース(20)内に収容され、蓄電素子との間で熱交換を行うための液状の熱交換媒体(4)と、熱交換媒体をケース内で移動させるためのファン(31)と、を有する。そして、熱交換媒体と、熱交換媒体とともに移動可能な異物とを分離させるための開口部(50a)を用いて、異物を捕集する捕集構造(50)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子の温度調節に用いられる液状の熱交換媒体を、ケース内で流動させる蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の単電池(二次電池)からなる組電池において、組電池の温度上昇を抑制するための構造が提案されている。特許文献1に記載の電池装置では、複数の単電池及び液状の冷媒を容器内に収容し、容器の内部及び外部の間で冷媒を循環させることにより、単電池の冷却を行っている。
【特許文献1】特開平6−124733号公報(段落0017、図4)
【特許文献2】特開2001−85072号公報(段落0020−0024、図2)
【特許文献3】特開2006−73256号公報(段落0023−0029、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の電池装置において、冷媒中を浮遊するような異物が容器内に混入してしまった場合には、この異物を除去する必要がある。
【0004】
ここで、特許文献2,3に記載の電源装置では、電池に対して空気を供給する構成において、異物を除去するための構成が記載されている。しかしながら、特許文献2,3には、液体を用いて電池の温度調節を行う場合において、液体中に含まれる異物を捕集するための構成については、何ら開示されていない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、蓄電素子の温度調節に用いられる液状の熱交換媒体を、ケース内で移動させる構成において、熱交換媒体中を浮遊するような異物を捕集することができる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1の発明である蓄電装置は、複数の蓄電素子を備えた蓄電モジュールと、蓄電モジュールとともにケース内に収容され、蓄電素子との間で熱交換を行うための液状の熱交換媒体と、熱交換媒体をケース内で移動させるためのファンと、を有する。そして、熱交換媒体と、熱交換媒体とともに移動可能な異物とを分離させるための開口部を用いて、異物を捕集する捕集構造を有することを特徴とする。
【0007】
蓄電モジュール及びファンの間における熱交換媒体の移動を制限することにより、ファンが位置する領域における熱交換媒体の界面位置を変化させるための仕切り部材を設けることができる。そして、捕集構造として、ファンの上方に配置され、開口部を用いて熱交換媒体の通過を許容するとともに、異物の通過を阻止するフィルタを用いることができる。これにより、フィルタを用いて、異物を捕集することができる。
【0008】
ここで、熱交換媒体は、ケースの底面と、仕切り部材のうち底面と対向する一端部との間を介して、ファンの位置する領域から蓄電モジュールの位置する領域に移動することになる。また、熱交換媒体は、ケースの上面と、仕切り部材のうち上面と対向する他端部との間を介して、蓄電モジュールの位置する領域からファンの位置する領域に移動することになる。
【0009】
また、ケースは、熱交換媒体の界面を内壁面から離した状態で熱交換媒体を収容することができる。そして、ケースの内壁面と熱交換媒体の界面との間に、気体の層を形成することができる。この構成では、ファンが位置する領域に対して、熱交換媒体を落下させることができ、フィルタを用いて異物を効率良く捕集することができる。
【0010】
一方、捕集構造として、熱交換媒体の流路上に位置して、開口部を介して異物を取り込む構造を用いることができる。具体的には、特定のスペース内に異物を取り込むことにより、異物を捕集することができる。
【0011】
また、捕集構造として、熱交換媒体の流路上に位置して、開口部を用いて熱交換媒体の通過を許容するとともに、異物の通過を阻止する構造を用いることができる。このように、異物の通過を阻止することにより、捕集構造上に異物をとどめておくことができる。
【0012】
本願第2の発明である蓄電装置は、複数の蓄電素子を備えた蓄電モジュールと、蓄電モジュールとともにケース内に収容され、蓄電素子との間で熱交換を行うための液状の熱交換媒体と、熱交換媒体をケース内で移動させるためのファンと、を有する。そして、熱交換媒体の流速を低下させることにより、熱交換媒体とともに移動可能な異物を捕集する捕集構造を有することを特徴とする。
【0013】
ここで、ファンの駆動により、ケースの内壁面に沿って熱交換媒体を移動させる場合において、蓄電モジュール及びケースの側面における間隔を、蓄電モジュール及びケースの底面における間隔よりも大きくすることができる。これにより、ケースの側面に沿って移動する熱交換媒体の流速を、ケースの底面に沿って移動する熱交換媒体の流速よりも低くすることができる。そして、熱交換媒体がケースの側面に沿って移動する際に、重力の作用を利用して、熱交換媒体及び異物を分離させることができる。すなわち、熱交換媒体に対して異物を落下させることができる。このとき、捕集構造は、ケースにおける側面及び底面の境界に位置する角部に異物を集めることができる。
【0014】
また、捕集構造として、ケースの側面に沿って設けられ、重力方向に移動する異物を取り込んで保持するためのスペースを設けておくことができる。これにより、捕集構造の上記スペース内に取り込まれた異物が上記スペース外に移動してしまうのを阻止することができる。
【0015】
一方、蓄電モジュールが、第1の蓄電素子と、第1の蓄電素子に対して重力方向で異なる位置であって、第1の蓄電素子よりもケースの側面から離れた位置に配置された第2の蓄電素子とを含んでいる場合において、捕集構造として、ケースの側面に対して傾斜した状態で上方に延びる板部材を用いることができる。ここで、板部材は、第1の蓄電素子上を通過する熱交換媒体の流路の幅を、第2の蓄電素子上を通過する熱交換媒体の流路の幅よりも狭くしている。
【0016】
これにより、第2の蓄電素子上を通過する熱交換媒体の流速を、第1の蓄電素子上を通過する熱交換媒体の流速よりも低くすることができる。そして、重力の作用を利用して、第2の蓄電素子上を通過する熱交換媒体に対して異物を落下させることができる。このとき、板部材は、ケースの側面に対して傾斜した状態で上方に延びているため、落下する異物を捕集することができる。
【発明の効果】
【0017】
本願第1及び第2の発明によれば、捕集構造によって、液状の熱交換媒体中に含まれる異物を捕集することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例1である電池パック(蓄電装置)の構成について、図1を用いて説明する。ここで、図1は、本実施例の電池パックの構成を示す分解斜視図である。本実施例の電池パックは、車両に搭載されている。
【0020】
この車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車とは、電池パックの他に、車両の走行に用いられるエネルギを出力する、内燃機関や燃料電池といった他の動力源を備えた車である。また、電気自動車は、電池パックの出力だけを用いて走行する車である。本実施例の電池パックは、放電によって車両の走行に用いられるエネルギを出力したり、車両の制動時に発生する運動エネルギを回生電力として充電したりする。なお、車両の外部からの電力供給を受けて充電を行うこともできる。
【0021】
本実施例の電池パック1は、電池モジュール(蓄電モジュール)10と、撹拌ユニット30と、ケース20とを有している。ケース20は、電池モジュール10及び撹拌ユニット30を収容するための空間を形成する収容部材21と、収容部材21の開口部21aを覆う蓋部材22とを有している。蓋部材22は、収容部材21にネジ等の締結部材によって固定されたり、溶接によって固定されたりする。これにより、ケース20の内部は、密閉状態となる。
【0022】
また、収容部材21及び蓋部材22は、熱伝導性や耐食性等に優れた材料、例えば、後述する熱交換媒体4の熱伝導率と同等又はこれよりも高い熱伝導率を有する材料で形成することができる。具体的には、収容部材21及び蓋部材22を、アルミニウムや鉄等といった金属で形成することができる。
【0023】
ここで、ケース20の内部には、電池モジュール10及び撹拌ユニット30の他に、電池モジュール10との間で熱交換を行うための熱交換媒体4が収容されている。この熱交換媒体4は、後述するように、電池モジュール10(単電池11)の温度を調節するために用いられる。
【0024】
熱交換媒体4は、絶縁性を有する液体であり、例えば、油や、フッ素系不活性液体を用いることができる。フッ素系不活性液体としては、例えば、フロリナート、Novec HFE(hydrofluoroether)、Novec1230(スリーエム社製)を用いることができる。
【0025】
なお、電池モジュール10や撹拌ユニット30の表面に絶縁処理を施しておけば、熱交換媒体4として、絶縁性を有する液体を用いなくてもよい。例えば、電池モジュール10の表面に、絶縁性を有する膜を形成しておくことができ、この場合には、水といった、絶縁性に優れていない熱交換媒体4を用いることができる。
【0026】
次に、電池モジュール10の構成について説明する。
【0027】
電池モジュール10は、複数の単電池11が電気的に直列に接続されたものである。複数の単電池11は、ケース20の内部において、並列に配置されている。単電池11としては、具体的には、蓄電素子としての二次電池を用いている。
【0028】
各単電池11は、両端側において、一対の支持プレート12によって支持されている。これらの支持プレート12は、ネジ等の締結部材(不図示)によって、ケース20(収容部材21)に固定されている。ここで、支持プレート12の外縁部は、ケース20の内壁面に当接するようになっている。なお、本実施例では、2つの支持プレート12を用いているが、これらの支持プレート12を一体として構成することもできる。
【0029】
また、各単電池11の両端には、正極用及び負極用の端子11aが設けられている。各単電池11の端子11aは、隣り合って配置された他の単電池11の端子11aとバスバー13を介して接続されている。すなわち、複数の単電池11を、バスバー13を介して電気的に直列に接続することにより、電池モジュール10として所望の出力を得ることができる。
【0030】
ここで、複数の単電池11のうち特定の単電池11には、正極用及び負極用の配線(不図示)が接続されており、これらの配線は、ケース20を貫通して、ケース20の外部に配置された電子機器に接続されている。電子機器としては、電力の供給を受けて動作するものであればよく、例えば、電池モジュール10の出力(電圧値)を変換するためのコンバータや、車両の走行に用いられるモータに電力を供給するためのインバータが挙げられる。
【0031】
各単電池11の内部には、発電要素が収容されている。発電要素は、電極板(正極板及び負極板)及びセパレータで構成されており、公知の構成を適宜、適用することができる。
【0032】
ここで、正極板としては、アルミニウム等の金属(合金を含む)で形成された集電体の表面に正極層を形成したものを用い、負極板としては、アルミニウム等の金属(合金を含む)で形成された集電体の表面に負極層を形成したものを用いることができる。より具体的には、ニッケル水素電池では、正極層の活物質として、ニッケル酸化物を用い、負極層の活物質として、MmNi(5−x−y−z)AlMnCo(Mm:ミッシュメタル)等の水素吸蔵合金を用いることができる。また、リチウムイオン電池では、正極層の活物質として、リチウム−遷移金属複合酸化物を用い、負極層の活物質として、カーボンを用いることができる。
【0033】
なお、本実施例では、円筒型の単電池11を用いているが、角型といった他の形状の単電池を用いることもできる。また、本実施例では、二次電池を用いているが、二次電池の代わりに、蓄電素子としての電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。
【0034】
一方、電池モジュール10の一端には、撹拌ユニット30が配置されている。ここで、撹拌ユニット30の両端は、一対の支持プレート12と同一面内に位置するように配置されている。以下、図2を用いて、撹拌ユニット30の構成について説明する。ここで、図2は、撹拌ユニット30の構成を示す外観斜視図である。
【0035】
ファン31は、回転軸32と、回転軸32の外周面に設けられた複数の羽根部33とを有している。また、ファン31は、単電池11と略平行となるように配置されている。ここで、複数の羽根部33は、回転軸32の周方向(回転方向)において等間隔に配置されており、各羽根部33は、曲面を持った形状に形成されている。ここで、ファン31としては、公知の構成のクロスフローファンを用いることができる。
【0036】
回転軸32の両端側は、軸受け35によって回転可能に支持されており、回転軸32の一端は、モータ34に接続されている。軸受け35は、支持板36に固定されている。ここで、支持板36の一部は、ファン31の外周面に沿った形状に形成されている。また、ファン31の長手方向における各羽根部33の長さは、単電池11の長手方向における長さと略等しくなっている。なお、各羽根部33の長さを、単電池11の長さよりも長くすることもできる。
【0037】
一方、ファン31と電池モジュール10(単電池11)との間には、互いに接続された第1の仕切り部材37及び第2の仕切り部材38が配置されている。第1の仕切り部材37は、図3に示すように、電池モジュール10における最も下方に位置する単電池11とケース20(収容部材21)の底面との間に配置されている。また、第2の仕切り部材38は、電池モジュール10に沿って重力方向(図3の上下方向)に延びており、第2の仕切り部材38の先端部38aが電池モジュール10の上部に位置している。ここで、第2の仕切り部材38のうち先端部38aを含む領域は、曲げ形成されており、図3に示すように、電池モジュール10の側に延びている。
【0038】
第1及び第2の仕切り部材37,38の幅は、ファン31の長手方向における羽根部33の長さと略等しくなっており、一対の支持プレート12の間隔とも略等しくなっている。
【0039】
一方、ケース20内の上部には、図3に示すように、空気層40が設けられている。そして、空気層40によって形成される熱交換媒体4の液面(界面)4aは、第2の仕切り部材38の先端部38aよりも上方に位置している。上方とは、重力が作用する方向とは逆の方向をいう。ここで、空気層40を設けておくことにより、ケース20内への熱交換媒体4の充填を容易に行うことができる。すなわち、ケース20の内部全体に熱交換媒体4を充填させる場合には、収容部材21に蓋部材22を固定した後に、熱交換媒体4を補充する必要があるが、本実施例のように、空気層40を設けるようにすれば、熱交換媒体4を補充する必要が無くなる。
【0040】
なお、液面4aは、第2の仕切り部材38の先端部38aと同じ位置にあってもよいし、先端部38aよりも低い位置にあってもよい。ここで、液面4aは、電池モジュール10の上面よりも上方であることが好ましい。すなわち、熱交換媒体4を電池モジュール10の全体に接触させておくことが好ましい。
【0041】
また、ファン31の上方には、フィルタとしての捕集部材50が配置されている。具体的には、第2の仕切り部材38、一対の支持プレート12及び収容部材21によって形成された領域内に、捕集部材50が配置されている。そして、捕集部材50の一端部は、第2の仕切り部材38に固定され、捕集部材50の他端部は、収容部材21の側壁に固定されている。また、捕集部材50には、複数の開口部50aが形成されている。開口部50aは、後述するように、熱交換媒体4の通過を許容するとともに、ケース20内に混入された異物の通過を阻止する機能を有している。ここでいう異物とは、熱交換媒体4中で浮遊するようなものであって、熱交換媒体4とともに移動できる物質である。
【0042】
なお、開口部50aの数、形状及び大きさ(開口面積)は、異物を捕集する観点から適宜設定することができる。また、本実施例では、捕集部材50を重力方向に対して傾斜させて配置しているが、これに限るものではない。具体的には、重力方向と直交する面内に位置するように、捕集部材50を配置することができる。また、捕集部材50のうち、第2の仕切り部材38に固定される端部が、収容部材21の側壁に固定される端部よりも上方に位置しているが、この逆の構成であってもよい。
【0043】
次に、上述した電池パック1の構成において、ファン31の駆動に伴う熱交換媒体4の流れについて説明する。
【0044】
モータ34の駆動によってファン31が回転すると、ファン31から熱交換媒体4が送り出される。ファン31から送り出された熱交換媒体4は、第1の仕切り部材37と収容部材21の底面との間を通過して、電池モジュール10の側に移動する。ここで、複数の羽根部33は、回転軸32の長手方向に延びているため、ファン31から送り出される熱交換媒体4は、層流を形成することになる。すなわち、熱交換媒体4は、羽根部33の幅(回転軸32の長手方向における長さ)と略同一の幅を有する流れを形成することになる。
【0045】
そして、ファン31から送り出された熱交換媒体4は、図4の矢印で示すように、電池モジュール10の周囲を辿るように進んで、ファン31に戻るようになっている。ここで、図4の矢印で示す熱交換媒体4の流れは、主な流れの成分を示すものであり、この流れとは異なる方向に進む成分も存在する。
【0046】
本実施例において、電池モジュール10(最も外側に位置する単電池11)とケース20の内壁面との間の距離(最短距離)は、隣り合う単電池11の間における距離(最短距離)よりも長くなっている。このように設定することで、ファン31から送り出される熱交換媒体4を、電池モジュール10の周囲に沿って移動させることができる。そして、電池モジュール10の周囲において、熱交換媒体4の主な流れ(層流)を発生させることにより、隣り合う単電池11の間にも熱交換媒体4の二次的な流れを発生させることができる。具体的には、図5に示すように、電池モジュール10の下方から上方に向かって、隣り合う単電池11の間を通過する熱交換媒体4の二次的な流れを発生させることができる。
【0047】
本実施例では、ファン31から送り出された熱交換媒体4が、層流となって単電池11に接触するようになっている。ここで、熱交換媒体4の層流の幅は、単電池11の長手方向における長さと略等しくなっているため、熱交換媒体4は、単電池11におけるすべての領域との間で熱交換を行うことができる。また、すべての単電池11に対して熱交換媒体4を接触させることにより、すべての単電池11との間で熱交換を行うことができる。
【0048】
ここで、単電池11は充放電によって発熱するが、単電池11に熱交換媒体4を接触させることにより、単電池11及び熱交換媒体4の間で熱交換が行われ、単電池11の熱が熱交換媒体4に伝達される。熱を持った熱交換媒体4は、上述したようにケース20の内部で流動し、ケース20の内壁面に接触することにより、ケース20に熱を伝達することができる。そして、ケース20に伝達された熱は、大気中に放出される。これにより、電池パック1(単電池11)の放熱(冷却)を行うことができる。
【0049】
また、単電池11が過度に冷却された場合には、電池パック1のケース20を温めれば、ケース20に伝達された熱が、熱交換媒体4を介して単電池11に伝達され、単電池11の温度低下を抑制することができる。このように、ケース20内に熱交換媒体4を収容させておくことにより、単電池11及びケース20の間における熱伝達を促進させることができる。
【0050】
さらに、熱交換媒体4は層流の状態で単電池11に接触するため、単電池11の長手方向における領域を略均等に冷却したり、温めたりすることができる。これにより、単電池11のうち長手方向における位置に応じて、温度のバラツキが発生するのを抑制することができる。また、電池モジュール10を構成するすべての単電池11に対して、流動状態の熱交換媒体4を到達させることができるため、すべての単電池11を冷却させたり、温めたりすることができる。これにより、電池モジュール10を構成する複数の単電池11における温度のバラツキを抑制することができる。
【0051】
一方、本実施例では、ケース20内の上部に空気層40を形成しているため、電池モジュール10を通過した熱交換媒体4は、第2の仕切り部材38の先端部38aを通過した後に、ファン31に戻ることになる。
【0052】
ここで、熱交換媒体4が第2の仕切り部材38の先端部38aを通過するときの流れについて、図6を用いて説明する。ここで、図6は、ファン31が動作している場合において、熱交換媒体4の液面4aの状態を示している。なお、図6に示す矢印は、熱交換媒体4の移動する方向を示している。
【0053】
ファン31を停止させているときには、図3に示すように、熱交換媒体4の液面4aは、重力方向と直交する面である水平面内に位置している。図3に示す状態からファン31が駆動されると、ファン31は、上方に位置する熱交換媒体4を吸い込むとともに、電池モジュール10の側に向かって熱交換媒体4を送り出す。
【0054】
ここで、ファン31が熱交換媒体4を吸い込むことにより、ファン31の上方に位置する熱交換媒体4の液面4aは低下する。そして、電池モジュール10が配置されている領域では、ファン31から送り出される熱交換媒体4によって、熱交換媒体4の液面4aが上昇する。
【0055】
ここで、ファン31及び電池モジュール10は、第1及び第2の仕切り部材37,38によって仕切られており、第1及び第2の仕切り部材37,38を境界として、ファン31が位置する領域Aの体積と、電池モジュール10が位置する領域Bの体積は異なっている。具体的には、電池モジュール10が位置する領域Bの体積は、ファン31が位置する領域Aの体積よりも大きくなっている。
【0056】
このため、ファン31により熱交換媒体4を吸い込む量と、ファン31により熱交換媒体4を送り出す量が同じであっても、ファン31が位置する領域Aにおける液面4aの変位量(下降量)と、電池モジュール10が位置する領域Bにおける液面4aの変位量(上昇量)は異なってくる。すなわち、ファン31が動作しているときには、領域Aにおける液面4aの変位量は、領域Bにおける液面4aの変位量よりも大きくなる。
【0057】
具体的には、図6に示すように、領域Aにおける液面4aは、領域Bにおける液面4aに対してファン31に近づく方向に変位する。このため、領域B内に存在する熱交換媒体4は、第2の仕切り部材38の先端部38aを通過した後、第2の仕切り部材38の面に沿って落下して、ファン31に導かれることになる。
【0058】
本実施例では、上述したように、ファン31の上方に捕集部材50を配置している。このため、第2の仕切り部材38の先端部38aを通過した熱交換媒体4は、捕集部材50の開口部50aを通過した後に、ファン31に到達することになる。ここで、図6に示すように、捕集部材50は、ファン31を駆動した状態における領域Aの液面4aよりも上方に配置することが好ましい。これにより、ケース20の内部に異物が混入してしまった場合には、捕集部材50を用いて異物を捕集することができる。
【0059】
ケース20内に異物が存在する場合には、熱交換媒体4の流れに沿って異物を移動させることができる。そして、熱交換媒体4が異物とともに、第2の仕切り部材38の先端部38aを通過すると、捕集部材50に向かって落下する。このとき、捕集部材50は、異物の通過を阻止するようになっているため、異物は、捕集部材50の上面に残ることになる。
【0060】
このように、ファン31を駆動し続けることにより、ケース20内に存在する異物のすべてを、捕集部材50によって捕集することができる。これにより、電池モジュール10が位置する領域Bから異物を除去することができる。ここで、ファン31を停止させると、領域Aにおける液面4aが図3に示す状態となるが、第2の仕切り部材38が配置されているため、捕集部材50によって捕集された異物が、電池モジュール10の位置する領域Bに移動してしまうのを抑制することができる。
【0061】
ここで、捕集部材50又は第2の仕切り部材38に対して磁石を取り付けておけば、異物が金属である場合において、この異物を磁石に引きつけておくことができる。
【0062】
また、本実施例では、ケース20内にファン31を配置しているため、ファン31の上方には、デッドスペースが生じることになる。このため、デッドスペースを用いて捕集部材50を配置することができ、ケース20内のスペースを効率良く利用することができる。また、捕集部材50を、ファン31の大きさに相当する大きさに形成することができるため、捕集部材50を大型化させることもでき、異物の捕集面積を増加させることができる。
【0063】
なお、本実施例では、ケース20内に空気層40を設けているが、これに限るものではない。例えば、空気層40を設けずに、ケース20の内部を熱交換媒体4で満たすことができる。また、空気層40の代わりに、空気以外の成分で構成された気体を用いることができる。さらに、気体の代わりに液体を用いることもできる。液体を用いる場合には、この液体及び熱交換媒体4が混合してしまうのを防止するために、液体及び熱交換媒体4の比重を異ならせておく必要がある。
【0064】
具体的には、空気層40に相当する領域内に設けられる液体の比重を、熱交換媒体4の比重よりも小さくすることができる。また、この液体は、熱交換媒体4と同様に、絶縁性を有する液体を用いることができる。ここで、上記液体として、ATF(Automatic Transmission Fluid(登録商標)、比重:0.84〜0.87)を用い、熱交換媒体4として、シリコンオイル(比重:0.94〜1.26)を用いることができる。また、上記液体として、ブタン、イソブタン又はペンタンを用い、熱交換媒体4として、ATFを用いることができる。
【0065】
上述した構成であっても、ケース20内に捕集部材50を配置しておくことにより、ケース20内に存在する異物を捕集部材50によって捕集することができる。この場合において、捕集部材50を配置する位置は、適宜設定することができる。ここで、捕集部材50における複数の開口部50aを含む面は、重力方向に対して直交又は傾斜していることが好ましい。これにより、重力の作用を用いて、異物を捕集部材50上にとどめておくことができる。
【0066】
一方、本実施例のように、異物を含む熱交換媒体4を落下させて捕集部材50に到達させるようにすれば、捕集部材50を配置することによる圧力損失の増加を抑制することができる。例えば、熱交換媒体4中に捕集部材50を位置させて、捕集部材50のすべての開口部50aにおいて熱交換媒体4を通過させる場合には、圧力損失の増加によって熱交換媒体4が開口部50aを通過し難くなってしまう。そこで、本実施例のように構成することで、熱交換媒体4が捕集部材50の開口部50aを容易に通過できるとともに、異物を捕集部材50上にとどめておくことができる。また、捕集部材50を大型化させても、捕集部材50の大型化に伴って圧力損失が増加することもない。
【0067】
以下に、ファン31を駆動する構成について説明する。
【0068】
まず、電池モジュール10の温度を直接的又は間接的に検出するための温度センサを設けておく。ここで、電池モジュール10の温度を直接的に検出する場合としては、例えば、温度センサを電池モジュール10に接触させておくことができる。なお、電池モジュール10を構成するすべての単電池11に対して温度センサを接触させておくこともできるし、少なくとも1つの特定の単電池11に対して温度センサを接触させておくこともできる。ここで、電池モジュール10のうち最も温度が高くなる単電池11が、単電池11の位置等によって特定できる場合には、この単電池11に対して温度センサを設けておくことができる。一方、電池モジュール10の温度を間接的に検出する場合としては、例えば、単電池11の出力値(電圧値)から単電池11の温度を予測することができる。
【0069】
そして、上述した温度センサの出力によって検出された電池モジュール10の温度が、所定の温度範囲の上限値よりも高い場合には、ファン31を動作させることができる。これにより、電池モジュール10を冷却することができ、電池モジュール10の温度上昇に伴う電池特性(出力特性)の劣化を抑制することができる。
【0070】
ここで、電池モジュール10の単電池11は、上述したように二次電池で構成されているが、二次電池は、温度に応じて電池特性が変化することが知られている。すなわち、二次電池の温度が所定の温度範囲から外れている場合には、電池特性が劣化してしまう。このため、二次電池の温度は、所定の温度範囲内に維持することが好ましい。
【0071】
一方、上述したように、ヒータを用いて電池パック1のケース20を温めれば、熱交換媒体4を介して電池モジュール10を温めることができる。このとき、ファン31を駆動することにより、電池モジュール10を効率良く温めることができる。
【実施例2】
【0072】
次に、本発明の実施例2である電池パックについて、図7を用いて説明する。ここで、図7は、電池パック内における一部(角部)の構成を示す概略図である。なお、実施例1で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用いている。以下、実施例1と異なる点について、主に説明する。
【0073】
実施例1の電池パック1では、捕集部材50を用いてケース20内の異物を捕集している。一方、本実施例では、電池モジュール10の周囲に沿って移動する熱交換媒体4の流速を変化させることにより、ケース20内の異物を捕集するようにしている。
【0074】
なお、本実施例において、ケース20の内部には、実施例1で説明した空気層40が設けられておらず、ケース20内のスペース全体が熱交換媒体4で満たされている。また、実施例1で説明した捕集部材50も配置されていない。
【0075】
本実施例では、電池モジュール10のうち最も側方に位置する単電池11とケース20の側面20aとの間の距離(最短距離)D1を、電池モジュール10のうち最も下方に位置する単電池11とケース20の底面20bとの間の距離(最短距離)D2よりも長くしている。ここで、図7の矢印で示すように、ファン31から送り出された熱交換媒体4は、ケース20の底面20bに沿って移動するとともに、ケース20の側面20aに突き当たって上方に向かって移動する。
【0076】
距離D1を距離D2よりも長くすることにより、ケース20の側面20aに沿って移動する熱交換媒体4の流速は、ケース20の底面20bに沿って移動する熱交換媒体4の流速よりも遅くなる。すなわち、熱交換媒体4の流速は、側面20a及び底面20bの境界に位置する角部を通過する際に、減少することになる。
【0077】
ここで、ケース20内の異物が熱交換媒体4とともに移動している場合において、熱交換媒体4がケース20の角部を通過した後は、異物が重力の作用を受けて落下することになる。すなわち、本実施例では、熱交換媒体4がケース20の角部を通過した際に、熱交換媒体4の流速を減少させているため、異物は、熱交換媒体4とともに移動せずに、重力による作用を受けて落下することになる。また、ケース20の角部では、熱交換媒体4が流動しにくくなっているため、ケース20の角部に落下した異物は、角部のスペースに留まることになる。これにより、ケース20内の異物をケース20の角部に捕集することができる。
【0078】
ここで、実施例1の図4及び図5に示すように、ケース20内で熱交換媒体4を循環させることにより、ケース20内に存在するすべての異物を、ケース20の角部に移動させることができる。
【0079】
本実施例では、実施例1で説明した捕集部材50を用いなくても、ケース20における側面20a及び底面20bと、電池モジュール10との位置関係を設定するだけで、ケース20内の異物を捕集することができる。なお、実施例1で説明した構成を併用することもでき、この場合には、異物の捕集効率を向上させることができる。
【0080】
次に、本実施例の変形例1について、図8を用いて説明する。ここで、図8は、ケース20の内部における角部周辺の構成を示す概略図である。
【0081】
本変形例では、ケース20内において、側面20aに沿って延びる板状の捕集部材60を配置している。捕集部材60は、ケース20の側面20aから離れて配置されており、捕集部材60及び側面20aの間に形成されたスペースS1を、異物Xをとどめておくためのスペースとして用いている。
【0082】
ここで、本変形例では、捕集部材60の先端部60aを電池モジュール10の側に曲げて、重力方向に対して傾斜させている。すなわち、先端部60a及び側面20aの間における幅を、他の部分における幅よりも広くしている。
【0083】
本変形例では、本実施例と同様に、熱交換媒体4がケース20の角部を通過した後に、熱交換媒体4の流速を減少させている。ここでいう角部は、ケース20の底面20bと捕集部材60との境界によって形成されている。そして、電池モジュール10及び捕集板60の間における距離(図7の距離D1に相当する)が、電池モジュール10及びケース20の底面20bの間における距離(図7の距離D2に相当する)よりも長くなっている。
【0084】
ここで、図8の矢印は、熱交換媒体4の流れる方向を示している。これにより、熱交換媒体4とともに移動する異物Xは、ケース20の角部を通過すると、重力の作用を受けてケース20の底面20bの側に移動する。
【0085】
ここで、図8の点線で示す矢印のように、捕集部材60及び側面20aの間に形成されたスペースS1に、異物Xを侵入させるようにすれば、上記スペースS1内に異物Xをとどめておくことができる。また、本変形例の電池パック1が搭載される車両の走行状態に応じて、ケース20が重力方向に対して傾斜したり、振動したりしても、上記スペースS1内に異物Xをとどめておくことができる。
【0086】
また、本変形例では、捕集部材60の先端部60aを重力方向に対して傾斜させているため、異物XをスペースS1内に取り込みやすくことができる。なお、先端部60aの形状は、スペースS1における異物Xの取込口を大きくできるものであればよく、いかなる形状であってもよい。例えば、先端部60aを曲面で構成することもできる。
【0087】
次に、本実施例の変形例2について、図9を用いて説明する。ここで、図9は、ケース20の内部における角部周辺の構成を示す概略図である。
【0088】
本変形例では、ケース20の角部に対して、板状の捕集部材70を配置している。捕集部材70は、ケース20の角部に向かって凸となる曲面で構成されており、異物Xの通過を許容するための複数の開口部70aを有している。そして、捕集部材70と、ケース20の側面20a及び底面20bとによって形成されたスペースS2に、異物Xを収容させるようにしている。
【0089】
本変形例においても、本実施例と同様に、熱交換媒体4がケース20の角部を通過した後に、熱交換媒体4の流速を減少させている。ここで、図9の矢印は、熱交換媒体4の流れる方向を示している。これにより、熱交換媒体4とともに移動する異物Xは、ケース20の角部を通過すると、重力の作用を受けてケース20の底面20bの側に移動する。
【0090】
ここで、ケース20の角部には、捕集部材70が配置されているため、重力の作用を受けた異物Xは、捕集部材70の開口部70aを通過して、スペースS2内に進入する。これにより、異物XをスペースS2内にとどめておくことができる。そして、車両の走行状態に応じて、ケース20が重力方向に対して傾斜したり、振動したりしても、上記スペースS2内に異物Xをとどめておくことができる。
【0091】
なお、本変形例では、捕集部材70を曲面で構成しているが、これに限るものではない。具体的には、捕集部材70を平板状に形成することもできる。ただし、本変形例のように、捕集部材70を曲面で構成することにより、ケース20の底面20bに沿って移動する熱交換媒体4を、側面20aに沿った方向に容易に向かわせることができる。
【0092】
次に、本実施例の変形例3について、図10を用いて説明する。ここで、図10は、ケース20の内部における角部周辺の構成を示す概略図である。
【0093】
本変形例では、ケース20の側面20aに対して傾斜し、上方に延びる板状の捕集部材80を設けている。ここで、電池モジュール10における角部に位置する単電池11aと、ケース20の側面20aとの間の距離(最短距離)は、距離D1に設定されている。また、単電池11aと、ケース20の底面20bとの間の距離(最短距離)は、距離D1よりも短い値に設定されている。さらに、捕集部材80及び単電池11aの間における距離(最短距離)も、距離D1に設定されている。
【0094】
一方、単電池11aの上方に位置する単電池11bは、単電池11aよりも側面20aから離れた位置に配置されている。そして、単電池11b及び側面20aの間における距離(最短距離)は、距離D1よりも長い距離D2に設定されている。
【0095】
本変形例の構成において、ケース20の底面20bに沿って移動する熱交換媒体4は、ケース20の角部に到達すると、ケース20の側面20aに沿って移動する。ここで、側面20aには、捕集部材80が設けられているため、熱交換媒体4は、捕集部材80の表面に沿って移動する。このとき、捕集部材80の先端部に到達するまでは、熱交換媒体4の流路の幅は、距離D1に相当するため、熱交換媒体4の流速は概ね変化しないようになっている。
【0096】
一方、熱交換媒体4が捕集部材80の先端部を通過すると、熱交換媒体4の流路の幅は、距離D2となる。このため、熱交換媒体4の流速は、捕集部材80を通過した後に、減少することになる。このように熱交換媒体4の流速を減少させると、本実施例で説明したように、熱交換媒体4とともに捕集部材80を通過した異物は、重力の作用を受けることによって、ケース20の底面20bの側に移動することになる。
【0097】
ここで、本変形例では、異物が重力の作用を受けて落下する軌跡上に、捕集部材80が位置しているため、異物は、捕集部材80の上面に到達する。また、捕集部材80及び側面20aの間に形成されたスペースには、熱交換媒体4が流れにくくなっているため、上記スペース内に異物をとどめておくことができる。このように、捕集部材80を用いても、異物を捕集することができる。また、本変形例では、単電池11b及び側面20aの間に形成されたデッドスペースに捕集部材80を配置しているため、ケース20内のスペースを効率良く利用することができる。
【0098】
なお、本変形例では、捕集部材80を平板状に形成しているが、これに限るものではなく、捕集部材80を曲面で構成することもできる。
【実施例3】
【0099】
次に、本発明の実施例3である電池パックについて、図11を用いて説明する。ここで、図11は、電池パック内における一部の構成を示す概略図である。なお、実施例1,2で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用いている。以下、実施例1と異なる点について、主に説明する。
【0100】
なお、本実施例において、ケース20の内部には、実施例1で説明した空気層40が設けられておらず、ケース20内のスペース全体が熱交換媒体4で満たされている。また、実施例1で説明した捕集部材50も配置されていない。
【0101】
本実施例では、ケース20の底面20bに対して複数の凹部20b1を形成している。各凹部20b1は、単電池11が延びる方向と同一方向に延びている。そして、複数の凹部20b1は、熱交換媒体4が移動する方向(図11の矢印で示す方向)に関して、所定の間隔を空けた状態で配置されている。なお、凹部20b1の数、形状及び大きさは、適宜設定することができる。
【0102】
本実施例の電池パック1では、実施例1で説明したように、電池モジュール10の周囲に沿って熱交換媒体4の流れ(層流)が発生するようになっている。このため、ケース20の底面20bに凹部20b1を設けることにより、凹部20b1内で熱交換媒体4を滞留させることができる。ここで、底面20bのうち、凹部20b1が形成されていない領域20b2と、電池モジュール10との間では、ファン31の駆動によって熱交換媒体4が効率良く流れるようになっている。
【0103】
ファン31を動作させていない場合には、ケース20内に存在する異物は、重力の作用を受けて、ケース20の底面20bに向かって移動する。そして、底面20bの凹部20b1内に移動した異物Xは、ファン31の動作によって熱交換媒体4の流れが発生したとしても、凹部20b1から抜け出にくくなる。また、底面20bの領域20b2上に異物Xが移動しても、熱交換媒体4の流れによって、異物Xを凹部20b1内に移動させることができる。
【0104】
これにより、凹部20b1内に異物Xをとどめておくことができ、ケース20内において異物が漂うのを抑制することができる。本実施例によれば、ケース20の底面20bに凹部20b1を形成しておくだけで、異物Xを捕集することができる。また、底面20bに凹部20b1を形成することにより、ケース20の表面積を増加させることができ、ケース20を介した放熱性を向上させることができる。さらに、凹部20b1を形成することで、ケース20の底面20bにおける強度を向上させることもできる。
【0105】
なお、本実施例では、ケース20の外面を、凹部20b1に沿った形状に形成しているが、これに限るものではない。すなわち、ケース20の内壁面に凹部20b1を形成するとともに、ケース20の外面を平坦な面で構成することができる。一方、実施例1で説明した構成及び、実施例2(変形例1−3を含む)で説明した構成のうち、少なくとも1つの構成を併用することもできる。この場合には、異物の捕集効率を向上させることができる。
【0106】
次に、本実施例の変形例1について、図12を用いて説明する。ここで、図12は、ケース20の内部における底面周辺の構成を示す概略図である。
【0107】
本変形例では、ケース20の底面20bのうち、凹部20b1が形成されていない領域20b2に対して、板状の捕集部材90を設けている。捕集部材90は、ファン31の動作による熱交換媒体4の流れる方向(図12の矢印で示す方向)とは逆方向に延びており、複数の開口部90aを有している。開口部90aは、熱交換媒体4の通過を許容するとともに、異物Xの通過を阻止するようになっている。
【0108】
本変形例の構成において、熱交換媒体4がケース20の底面20bに沿って移動すると、熱交換媒体4とともに異物も移動することになる。ここで、底面20bには捕集部材90が配置されているため、異物Xは、熱交換媒体4とともに、捕集部材90及び凹部20b1の間に形成されたスペースS3に進入する。
【0109】
スペースS3内に進入した熱交換媒体4は、捕集部材90の開口部90aを通過してスペースS3の外部に移動する。一方、スペースS3内に進入した異物Xは、開口部90aを通過することはできず、重力の作用を受けて、凹部20b1内に移動する。本実施例と同様に、凹部20b1では、熱交換媒体4が流動しにくくなっているため、凹部20b1に移動した異物Xは、凹部20b1内で留まることになる。これにより、異物Xを捕集することができる。
【0110】
なお、本変形例では、凹部20b1が設けられた底面20bに対して捕集部材90を設けた場合について説明したが、これに限るものではない。すなわち、平坦面として構成された底面20bに対して、本変形例で説明した捕集部材90を設けることもできる。この場合であっても、ケース20の底面20b及び捕集部材90の間に形成されたスペース内に異物をとどめておくことができる。
【0111】
次に、本実施例の変形例2について、図13を用いて説明する。ここで、図13は、ケース20の内部における底面周辺の構成を示す概略図である。
【0112】
本変形例では、平坦面として構成された底面20bに対して、捕集部材100を設けている。捕集部材100は、ファン31から送り出された熱交換媒体4が接触する側において、複数の開口部100aを有している。開口部100aは、異物Xの通過を許容する大きさに形成されている。
【0113】
また、捕集部材100のうち、複数の開口部100aが形成された面は、曲面で構成されており、ファン31から送り出された熱交換媒体4の一部を、隣り合う単電池11の間に導くようになっている。ここで、図13の矢印は、熱交換媒体4の流れる方向を示している。さらに、捕集部材100のうち、開口部100aが形成された領域以外の領域は、閉じた状態となっており、熱交換媒体4及び異物Xが通過できないようになっている。これにより、捕集部材100及び底面20bによって、異物Xを収容するためのスペースS4が構成される。
【0114】
本変形例において、熱交換媒体4とともに移動する異物Xが、捕集部材100に到達すると、異物Xは、捕集部材100の開口部100aを通過して、スペースS4内に進入する。ここで、スペースS4は、開口部100aを除き、捕集部材100によって覆われているため、異物Xは、スペースS4内に留まることになる。これにより、捕集部材100によって、異物Xを捕集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施例1である電池パックの分解斜視図である。
【図2】実施例1において、撹拌ユニットの構成を示す外観斜視図である。
【図3】実施例1における電池パック内の一部の構成を示す概略図である。
【図4】実施例1において、電池パック内の熱交換媒体の流れを説明するための図である。
【図5】実施例1において、電池パック内の熱交換媒体の流れを説明するための図である。
【図6】実施例1において、ファンが動作しているときの熱交換媒体の液面の状態を示す図である。
【図7】本発明の実施例2における電池パック内の一部の構成を示す概略図である。
【図8】実施例2の変形例1における電池パック内の一部の構成を示す概略図である。
【図9】実施例2の変形例2における電池パック内の一部の構成を示す概略図である。
【図10】実施例2の変形例3における電池パック内の一部の構成を示す概略図である。
【図11】本発明の実施例3における電池パック内の一部の構成を示す概略図である。
【図12】実施例3の変形例1における電池パック内の一部の構成を示す概略図である。
【図13】実施例3の変形例2における電池パック内の一部の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0116】
1:電池パック(蓄電装置)
4:熱交換媒体
10:電池モジュール(蓄電モジュール)
11:単電池(蓄電素子)
30:撹拌ユニット
37,38:仕切り部材
40:空気層
50:捕集部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電素子を備えた蓄電モジュールと、
前記蓄電モジュールとともにケース内に収容され、前記蓄電素子との間で熱交換を行うための液状の熱交換媒体と、
前記熱交換媒体を前記ケース内で移動させるためのファンと、
前記熱交換媒体と、前記熱交換媒体とともに移動可能な異物とを分離させるための開口部を用いて、前記異物を捕集する捕集構造と、を有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記蓄電モジュール及び前記ファンの間における前記熱交換媒体の移動を制限することにより、前記ファンが位置する領域における前記熱交換媒体の界面位置を変化させるための仕切り部材を有しており、
前記捕集構造は、前記ファンの上方に配置され、前記開口部を用いて前記熱交換媒体の通過を許容するとともに、前記異物の通過を阻止するフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記熱交換媒体は、
前記ケースの底面と、前記仕切り部材のうち前記底面と対向する一端部との間を介して、前記ファンの位置する領域から前記蓄電モジュールの位置する領域に移動するとともに、
前記ケースの上面と、前記仕切り部材のうち前記上面と対向する他端部との間を介して、前記蓄電モジュールの位置する領域から前記ファンの位置する領域に移動することを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記ケースは、前記熱交換媒体の界面を内壁面から離した状態で前記熱交換媒体を収容することを特徴とする請求項2又は3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記ケースの内壁面と前記熱交換媒体の界面との間に、気体の層が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記捕集構造は、前記熱交換媒体の流路上に位置しており、前記開口部を介して前記異物を取り込むことを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記捕集構造は、前記熱交換媒体の流路上に位置しており、前記開口部を用いて前記熱交換媒体の通過を許容するとともに、前記異物の通過を阻止することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項8】
複数の蓄電素子を備えた蓄電モジュールと、
前記蓄電モジュールとともにケース内に収容され、前記蓄電素子との間で熱交換を行うための液状の熱交換媒体と、
前記熱交換媒体を前記ケース内で移動させるためのファンと、
前記熱交換媒体の流速を低下させることにより、前記熱交換媒体とともに移動可能な異物を捕集する捕集構造と、を有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項9】
前記ファンは、前記ケースの内壁面に沿って前記熱交換媒体を移動させ、
前記捕集構造は、前記蓄電モジュール及び前記ケースの側面における間隔が前記蓄電モジュール及び前記ケースの底面における間隔よりも大きい構造であることを特徴とする請求項8に記載の蓄電装置。
【請求項10】
前記ケースの側面に沿って移動する前記熱交換媒体の流速が、前記ケースの底面に沿って移動する前記熱交換媒体の流速よりも低いことを特徴とする請求項9に記載の蓄電装置。
【請求項11】
前記捕集構造は、前記ケースにおける側面及び底面の境界に位置する角部に前記異物を集めることを特徴とする請求項9又は10に記載の蓄電装置。
【請求項12】
前記捕集構造は、前記ケースの側面に沿って設けられ、重力方向に移動する前記異物を取り込んで保持するためのスペースを有することを特徴とする請求項9から11のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項13】
前記蓄電モジュールは、第1の蓄電素子と、前記第1の蓄電素子に対して重力方向で異なる位置であって、前記第1の蓄電素子よりも前記ケースの側面から離れた位置に配置された第2の蓄電素子とを含み、
前記捕集構造は、前記ケースの側面に対して傾斜した状態で上方に延びており、前記第1の蓄電素子上を通過する前記熱交換媒体の流路の幅を、前記第2の蓄電素子上を通過する前記熱交換媒体の流路の幅よりも狭くする板部材を有することを特徴とする請求項8に記載の蓄電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−15957(P2010−15957A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177431(P2008−177431)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】