説明

蓋の取付構造

【課題】 蓋の取付構造において、蓋の着脱作業を容易にし、かつ確実に着脱作業を行えるようにする。
【解決手段】 リアーケース2に凹嵌部10を設け、この凹嵌部10の開口部13を形成する底部14には、係合孔18と第2の係入凹部19,19とが設けられている。開口部13を形成する両側壁15,15には、ガイド凸部17,17が設けられており、両側壁15,15の矢印B方向の端部には第1の係入凹部16a,16aが設けられている。蓋25の両側部27,27には、第1の係入凹部16aに係入される第1の係入突起27aが設けられており、両側部27の先端面27b,27bは、ガイド凸部17に突き当てられる。蓋25の底部28の中央部には、係合孔18に係合する弾性変形可能な係合爪29aが設けられており、この係合爪29の両側には、第2の係入凹部19に係入される第2の係入突起30が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁等に掛けられる電子機器においてケーブルを配線するために筺体に設けた開口部を覆う蓋の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電子機器においては、ケーブルの屋内配線の作業を容易にするとともに配線の作業時間を短縮する目的で、電子機器を壁に掛けた状態で、ケーブルの屋内配線の作業を行うようにしている。この場合、壁と筺体との間のスペースが狭いため、電子機器の筺体に設けた開口部に、ケーブルを導出するために取り付ける蓋の着脱作業が煩雑になる。
【0003】
この問題を解消するために、従来の蓋の取付構造として、筺体に形成した凹嵌部に、蓋を案内する支持部と蓋に設けた突起が係入される係入孔とが設けられ、蓋が支持部によって筺体の背面板の面方向に案内されることによって、突起が係入孔に係入され、突起と係入孔との間に設けられたカム手段のカム作用によって、蓋が凹嵌部を覆うことにより、蓋を筺体にねじ止めし、蓋を取り付けるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−251909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来の蓋の取付構造においては、壁と筺体との間の狭い空間でのねじ止め作業が必要なため作業が煩雑になるというだけでなく、ドライバーを使用するスペースが取れない場合は作業に支障をきたすという問題があった。
【0006】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、蓋の着脱作業を容易にし、かつ確実に着脱作業が行える蓋の取付構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、筺体の背面板に凹嵌部を設け、この凹嵌部を囲む囲い壁の筺体の下端側に位置する部位に開口部を形成し、この開口部を覆う蓋の取付構造であって、
前記開口部の底部に係合孔を設け、前記開口部の互いに対向する両側壁にガイド凸部を設けるとともに、これら両側壁の前記底部と反対側の端部に第1の係入凹部を設け、前記蓋を、前記開口部を閉塞する弾性変形可能な閉塞部と、この閉塞部の両端から突設され前記両側壁に対接されるとともに前記ガイド凸部に突き当てられる両側部とによって形成し、前記蓋の両側部に前記第1の係入凹部に係入される第1の係入突起を設け、前記蓋の閉塞部に前記係合孔に係合する弾性変形可能な係合爪を設けたものである。
【0008】
本発明は、前記発明において、前記係合孔の両側に一対の第2の係入凹部を設け、前記蓋の閉塞部に前記第2の係入凹部に係入される第2の係入突起を設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蓋の両側部を筺体のガイド凸部に突き当て、このガイド凸部をガイドとして蓋を移動させることにより、蓋の第1の係入突起が開口部の第1の係入凹部に係入されるとともに、蓋の係合爪が弾性変形しながら筺体の係合孔に係合し、蓋が開口部を閉塞するようにして筺体に取り付けられる。このように、蓋を筺体に取り付けるのにねじを不要とし、かつガイド凸部によってガイドされながら係合爪の弾性変形によって行うようにしたことにより、蓋の取付作業が容易になり、かつ従来のようにドライバーを使用するスペースが取れない場合に作業に支障をきたすというようなことがなく、確実に蓋の取付けを行うことができる。また、蓋を筺体から取り外す場合は、蓋の閉塞部を弾性変形させることにより、係合爪と係合孔との係合が解除されるため、蓋の取り外し作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る蓋の取付構造を実施した電子機器を裏面側から視た斜視図である。
【図2】本発明に係る蓋の取付構造を実施した電子機器において、蓋を取り付けた状態を示す裏面側から視た要部の斜視図である。
【図3】本発明に係る蓋の取付構造を実施した電子機器を壁に掛けられた状態を示す、図2におけるIII-III 線断面図である。
【図4】本発明に係る蓋の取付構造を実施した電子機器において、蓋を取り外した状態を示す要部の底面図である。
【図5】本発明に係る蓋を示し、同図(A)は平面図、同図(B)は正面図、同図(C)は正面側から視た斜視図、同図(D)は背面側から視た斜視図である。
【図6】本発明に係る蓋を取り付ける方法を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図6に基づいて説明する。図1に全体を符号1で示す電子機器は、共に一面が開口し浅底状に形成され背面板5を有するリアーケース2およびフロントケース3によって構成され、これら両ケース2,3を互いの開口端縁を対接させて結合することにより筺体4が形成される。
【0012】
背面板5には、左右(矢印E−F方向)二対の壁掛け用フック部7と、左右二対のゴム足8と、電子機器1が壁に掛けられたときに、壁に対向する開口11が形成され周囲が囲い壁12によって囲まれた凹嵌部10とが設けられている。凹嵌部10の囲い壁12の背面板5の下端側(矢印D方向端部)に位置する部位には、長方形に形成された開口部13が設けられている。
【0013】
開口部13は、凹嵌部10の底部と連設された底部14とこの底部14の矢印E−F方向の両端から互いに対向するように立設する一対の側壁15,15とによって形成されている。これら側壁15,15の底部14と反対側の端部(矢印B方向端部)16に第1の係入凹部16aが設けられているとともに、両側壁15,15の底部14と矢印B方向端部16との間にガイド凸部17が互いに対向するように設けられている。底部14の矢印E−F方向の中央部には、係合孔18が設けられており、この係合孔18の裏面側には、後述する係合爪29aが係合する係合部18a(図3参照)が矢印D方向に延在している。この係合孔18の矢印E−F方向の両側には、一対の第2の係入凹部19,19が設けられている。
【0014】
20,21は凹嵌部10の底部に設けられたモジュラージャック、22は凹嵌部10の底部に実装された端子台、23は凹嵌部10の底部に実装された電源用ジャックである。
【0015】
図5に全体を符号25で示す蓋は、上記した開口部13を閉塞する長方形に形成された弾性変形可能な閉塞部26と、この閉塞部26の両端に互いに対向するように閉塞部26と直交する方向に突設された両側部27,27と、閉塞部26の下端に閉塞部26と直交する方向に突設され両側部27,27間に延在する底部28とによって構成されている。
【0016】
閉塞部26には、同図(D)に示すように、破断可能な窓26aが設けられており、この窓26aを閉塞部26から除去することにより、凹嵌部10内に設けられたモジュラージャック20,21に電気的に接続されるケーブル(図示せず)および電源用ジャック23に電気的に接続されるコード(図示せず)ならびに凹嵌部10内に設けられた端子台22に電気的に接続されたコード(図示せず)を電子機器1の外部に導出することが可能になる。
【0017】
蓋25の両側部27,27には、上記した第1の係入凹部16aに係入される第1の係入突起27aが設けられており、この両側部27,27の先端面27b,27bは、後述するように蓋25を開口部13に組み付ける際に、ガイド凸部17に突き当てられる。底部28の矢印E−F方向の中央部には、図3に示すように断面コ字状に形成された弾性変形可能な係合片29が突設されており、先端部には矢印D方向に突設され上記した係合孔18の係合部18aに係合する係合爪29aが設けられている。この係合片29の矢印E−F方向の両側には、上記した第2の係入凹部19,19に係入される第2の係入突起30,30が底部28に突設されている。
【0018】
次に、このように構成された蓋の取付構造において、蓋の着脱動作について説明する。予め、図1に示すようにリアーケース2から蓋25を取り外し、必要に応じてモジュラージャック20,21にケーブル(図示せず)を電気的に接続するとともに、電源用ジャック23にコード(図示せず)を電気的に接続し、かつ端子台22にコード(図示せず)を電気的に接続しておく。また、必要に応じて蓋25から窓26aを除去しておく。
【0019】
この状態としてから、蓋25が取り外すされた電子機器1を、図3に示すように壁31に掛け、図示を省略したケーブルやコードの配線作業を行う。配線作業が終了したら、図6に示すように、蓋25を矢印C方向に移動させ、蓋25の両側部27,27を両側壁15,15対接させながら、蓋25を開口部13に挿入する。次いで、両側部27,27の先端面27b,27bをガイド凸部17,17に突き当て、このガイド凸部17をガイドとして蓋25を矢印A方向へ移動させる。この移動によって、第1の係入凹部16a,16aに第1の係入突起27a,27aが係入されるとともに、第2の係入凹部19,19に第2の係入突起30,30が係入され、かつ係合孔18の係合部18aに係合片29が弾性変形しながら係合爪29aが係合する。
【0020】
係合部18aに係合爪29aが係合することにより、蓋25の矢印A−B方向への移動が規制される。また、係合部18aに係合爪29aが係合し、かつ第1および第2の係入凹部16a,19に第1および第2の係入突起27a,30が係入されることにより、蓋25の矢印C−D方向への移動が規制される。さらに、両側壁15,15に蓋25の両側部27,27が対接していることにより、蓋25の矢印E−F方向への移動が規制され、蓋25は開口部13を閉塞してリアーケース2に取り付けられる。リアーケース2に取り付けられた蓋25には、窓26aから導出されるケーブルやコード等によって、矢印D方向の負荷がかかったとしても、負荷がかかる方向Dが係合爪29aが係合部18aから係合が外れる方向と反対方向であるため、蓋25がリアーケース2から外れるようなことがない。
【0021】
このように、蓋25をリアーケース2に取り付けるのに、両側部27の先端面27bをガイド凸部17に突き当てた状態で、このガイド凸部17によってガイドされながら、第1および第2の係入凹部16a,19に第1および第2の係入突起27a,30が係入され、かつ係合部18aに係合爪29aが係合されるため、壁31とリアーケース2との間の限られたスペースにおいても蓋25の取付けの作業性が向上する。しかも、蓋25の取付けに当たっては、係合部18aに係合片29を弾性変形させながら係合爪29aが係合させるだけであって、ねじ止め作業が不要であるため、より作業性が向上するとともに、従来のようにドライバーを使用するスペースが取れない場合に作業に支障をきたすというようなことがなく、確実に蓋の取付けを行うことができる。
【0022】
次に、このように蓋26が取り付けられた電子機器1の保守点検を行う場合は、電子機器1を壁31に掛けた状態で、蓋25の閉塞部26の中央部を、指等によって図3中矢印C方向に押圧することにより、閉塞部26が矢印C方向に弾性変形するので、係合部18aと係合爪29aとの係合が解除される。この状態で、蓋26を矢印B方向にわずかに移動させることにより、第1および第2の係入凹部16a,19に対する第1および第2の係入突起27a,30の係入が解除されるため、蓋25をリアーケース2から取り外すことができる。このように、蓋25をリアーケース2から取り外すのに、ねじの螺合を解除することなく、閉塞部26を弾性変形させるだけで行えるため、取り外しの作業が容易になる。
【符号の説明】
【0023】
1…電子機器、2…リアーケース、5…背面板、10…凹嵌部、12…囲い壁、13…開口部、14…底部、15…側壁、16a…第1の係入凹部、17…ガイド凸部、18…係合孔、19…第2の係入孔、25…蓋、26…閉塞部、27…側部、27a…第1の係入突起、29a…係合爪、30…第2の係入突起、31…壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体の背面板に凹嵌部を設け、この凹嵌部を囲む囲い壁の筺体の下端側に位置する部位に開口部を形成し、この開口部を覆う蓋の取付構造であって、
前記開口部の底部に係合孔を設け、前記開口部の互いに対向する両側壁にガイド凸部を設けるとともに、これら両側壁の前記底部と反対側の端部に第1の係入凹部を設け、
前記蓋を、前記開口部を閉塞する弾性変形可能な閉塞部と、この閉塞部の両端から突設され前記両側壁に対接されるとともに前記ガイド凸部に突き当てられる両側部とによって形成し、
前記蓋の両側部に前記第1の係入凹部に係入される第1の係入突起を設け、前記蓋の閉塞部に前記係合孔に係合する弾性変形可能な係合爪を設けたことを特徴とする蓋の取付構造。
【請求項2】
前記係合孔の両側に一対の第2の係入凹部を設け、前記蓋の閉塞部に前記第2の係入凹部に係入される第2の係入突起を設けたことを特徴とする請求項1記載の蓋の取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−77097(P2011−77097A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224103(P2009−224103)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】