説明

蓋付き雨水桝の施工方法および蓋体

【課題】雨樋のメンテナンスを行いやすい蓋付き雨水桝を施工する方法を提供する。
【解決手段】
蓋付き雨水桝1aは、地中90に埋設された四角筒状の桝本体20と、桝本体20の上方に開口した上部開口23を塞ぐ蓋体110とを備え、蓋体110は、遮光性で、雨樋30が貫通する程度の開口の切り欠き19を備えている。蓋付き雨水桝1aを施工する方法は、桝本体20の上部開口23の蓋体10の切り欠き19が配置される位置に雨樋30が挿入された状態にすることと、切り欠き19が雨樋30を囲むように蓋体110を取り付けることとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨樋からの排水が流入する蓋付き雨水桝の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、雨水浸透桝に関し、桝本体に流入したゴミやドロによる導出孔の目詰まりを防止しつつ、桝本体から雨水を地中に勢いよく排水することで浸透率の向上を図った雨水浸透桝を提供することが記載されている。そのため、特許文献1には、桝本体の側壁上部に雨水を導入する導入管が取り付き、桝本体の下部に桝本体を支持する底版塊が取り付くと共に、桝本体の側壁と底版塊に、雨水を地中に浸透させる複数の導出孔が設けられた雨水浸透桝に於て、上記桝本体の側壁に設ける導出孔を、桝本体の内面から外面へ向けて順次拡開し、且つ下方に傾斜した断面卵形状の導出孔とし、また、雨水浸透桝に於て、底版塊に設ける導出孔を、底版塊の内面から外面へ向けて順次拡開する断面卵形状の導出孔としたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−169295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
雨水浸透桝などの雨水を貯留および/または浸透させる設備では、桝本体に雨水を導入する雨樋などの導入管に詰まった異物を取り除くことが行われることがあるが、特許文献1に開示された技術においては、導入管が桝本体の側壁に取り付けられているため、地中に埋設された導入管を掘り起こしてから清掃を含めたメンテナンスを行う必要があり手間がかかる。その一方で、建物の美観を損なわないように雨樋が雨水桝に接続されていることが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様の1つは、雨樋からの排水が流入する蓋付き雨水桝の施工方法である。蓋付き雨水桝の桝本体の上部開口に設置される蓋体は、遮光性で、雨樋が貫通する程度の開口の切り欠きを含み、当該施工方法は、桝本体の上部開口の蓋体の切り欠きが配置される位置に雨樋が挿入された状態にすることと、切り欠きが雨樋を囲むように蓋体を取り付けることとを含む。
【0006】
この方法は、蓋付き雨水桝を施工する際に、切り欠きを備えた蓋体を用いることにより、切り欠きが雨樋を囲むように蓋体を取り付けることができる。このため、桝本体の上部開口から雨樋を桝本体に挿入できるので、桝本体の側壁から雨樋を挿入したり、雨樋を地中配管したりする必要がない。したがって、地中配管に伴う手間やコストを省くことができ、蓋体の取り付けだけでなく取り外しも簡単に行うことができるので、雨樋および/または雨水桝のメンテナンスを行いやすい。さらに、蓋体の切り欠きは雨樋を貫通させる程度の開口であるので、この切り欠きを雨樋によりほぼ占有できる。このため、蓋体全体の遮光性は維持できるので、上部開口からゴミや泥などの異物が入り込むことを抑制し、桝本体内での藻や草の発生や、臭気の発生も抑制できる。
【0007】
蓋体は、単板で、周縁の一部に切り欠きが設けられており、雨樋が挿入された状態にすることは、上部開口の周縁の近傍に雨樋が挿入された状態にすることを含むことが望ましい。上部開口は、多角形であり、蓋体は、多角形で、少なくとも1つの角部に切り欠きが設けられており、雨樋が挿入された状態にすることは、上部開口の周縁の角部に雨樋が挿入された状態にすることを含むことが望ましい。この方法は、雨樋が上部開口の角部の近傍に挿入された状態にしてから、切り欠きが雨樋を囲むように蓋体を取り付けるので、上部開口の角部を有効に利用して蓋付き雨水桝を施工できる。
【0008】
本発明の異なる態様の1つは、雨樋からの排水が流入する蓋付き雨水桝の遮光性の蓋体であって、雨樋が貫通する程度に開口の大きさが限定された切り欠きを含む蓋体である。この蓋体は、雨樋が貫通する程度に開口の大きさが限定された切り欠きを備えているので、切り欠きに雨樋を挿入することにより、雨樋を地中配管することなく、雨樋からの排水を桝本体に導くことができる。
【0009】
蓋体は、単板で、蓋付き雨水桝の桝本体の上部開口に設置されており、切り欠きは、蓋体の周縁に配置されていることが望ましい。切り欠きが蓋体の周縁に配置されているので、簡単に、蓋体の取り付けおよび取り外しを行うことができ、雨樋および/または雨水桝のメンテナンスを行いやすい。
【0010】
蓋体は、多角形であり、切り欠きは、蓋体の周縁の辺部の中央に配置されていることが望ましい。桝本体の上部開口が多角形で、雨樋が上部開口の辺部の中央に配置されるタイプの蓋付き雨水桝を施工するのに適している。蓋体は、多角形であり、切り欠きは、蓋体の周縁の角部に配置されていることがさらに望ましい。桝本体の上部開口が多角形で、雨樋が上部開口のいずれかの角部に配置されるタイプの蓋付き雨水桝を施工するのに適している。切り欠きは、蓋体の上面の側から下面の側に向けてテーパー状に狭まっていることが望ましい。
【0011】
本発明のさらに異なる態様の1つは、上記蓋体と、蓋体が設置される上部開口を含む桝本体とを有する蓋付き雨水桝である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】蓋付き雨水桝を模式的に示した断面図。
【図2】第1の実施形態に係る蓋体を示した斜視図。
【図3】異なる蓋付き雨水桝を模式的に示した断面図。
【図4】図4(a)は第2の実施形態に係る蓋体をセットする前の工程を示した図、図4(b)は第2の実施形態に係る蓋体をセットする工程を示した図。
【図5】図5(a)は第3の実施形態に係る蓋体をセットする前の工程を示した図、図5(b)は第3の実施形態に係る蓋体をセットする工程を示した図。
【図6】異なる蓋付き雨水桝を模式的に示した斜視図。
【図7】図7(a)は第4の実施形態に係る蓋体を上方向から示した斜視図、図7(b)は第4の実施形態に係る蓋体を下方向から示した斜視図。
【図8】蓋体のバリエーションを示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本発明に係る蓋付き雨水桝1の概要を模式的に示している。蓋付き雨水桝1は、地中90に埋設された四角筒状の桝本体20と、桝本体20の上方に開口した平面視四角形状の上部開口23に設置される蓋体(桝蓋)10とを備えている。本例の蓋付き雨水桝1は、家屋(建物、建屋)40の周囲に設けられた犬走り41の外側に設置されている。蓋付き雨水桝1は、桝本体20の側壁に多孔が設けられていたり、桝本体20の底壁がなく桝本体20が浸透式で雨水を貯留および浸透する設備としての機能を備えていてもよく、あるいは、桝本体20が非浸透式で他の貯留浸透設備と浸透管(地中配管)などによりつながり雨水を地中90に流したり、公共排水に雨水を流したりするものであってもよい。
【0014】
桝本体20は、上下方向を除く前後左右の4方を覆うコンクリート製の側壁22(22a〜22d)と、側壁22a〜22dにより囲まれた中空の第1の領域21とを備えている。側壁22a〜22dのそれぞれには、方形状の複数の孔29が設けられており、上部開口23には、蓋体10を支持する蓋受け部23aが設けられている。桝本体20は、基礎材として敷設した砂質土層91の上方に敷き詰めた透水性の砕石層92により周囲を覆われている。砂質土層91および砕石層92の周囲には、土砂の浸入(逆流)による目詰まりを抑制するために透水シート93が設けられている。
【0015】
桝本体20の上部開口23を塞ぐ蓋体10は、全体が遮光性(非透光性)かつ非透水性のコンクリート製であり、ほぼ中央に、雨樋30が貫通する程度の開口の孔部19hを備えている。蓋体10の孔部19hには、家屋40に併設された雨樋30が挿入されている。雨樋30は、家屋40の外壁43に沿って地表面94に垂直に延びる縦樋(竪樋)30aと、エルボ管31を介して地表面94に平行に延びる呼び樋(横樋)30bと、蓋体10の切り欠き19に挿入される縦樋31aとを備えている。
【0016】
家屋40の屋根42から流下した雨水を含む排水は、雨樋30の縦樋30a、横樋30bおよび縦樋31aを経由して、桝本体20の第1の領域21に導かれる。第1の領域21において一時的に貯留された排水は、桝本体20の下方に開口した下部開口28および/または側壁22の複数の孔29から砕石層92に浸透し、砕石層92から徐々に地中(地下)90に排出される。雨樋30のサイズの一例は、一般住宅用では直径が40−60mmであり、集合住宅または工場用では70−110mmである。なお、本明細書において遮光性とは、蓋体10の上面11の側から下面12の側を視認することができず、下面12の側から上面11の側を視認することができないことをいう。
【0017】
図2に、蓋付き雨水桝1に用いられる第1の実施形態に係る蓋体10の概要を斜視図により示している。この蓋体10は、同一形状の2つの片蓋体10aを備えている。片蓋体10aは、全体が遮光性(非透光性)かつ非透水性のコンクリート製であり、周縁14の辺部の中央に、上下方向に貫通する平面視半円形状の切り欠き19を備えている。蓋体10の孔部19hは、2つの片蓋体10aの切り欠き19を組み合わせることにより形成されている。なお、蓋体10は、単板で、中央を貫通する平面視円形状の孔部19hを備えていてもよい。
【0018】
2つの片蓋体10aを組み合わせた蓋体10は、平面視正方形状であり、上面11と、下面12と、上面11および下面12を上下方向に接続する4つの側面13(13a〜13d)とを備えている。さらに、蓋体10は、中央を貫通する平面視円形状の孔部19hと、対向する側面13bおよび13dのそれぞれの中央を切り欠いた平面視台形状の取っ手(手掛け)18とを備えている。上面11と側面13との接続部分は面取り加工されている。平面視円形状の孔部19hのサイズの一例は、直径63−80mmであり、蓋体10の上面11のサイズの10%以下であることが好ましい。平面視台形状の取っ手18のサイズの一例は、上底の長さが5−6cmであり、下底の長さが5−6cmであり、高さが5−6cmである。本例の蓋体10は、全体が遮光性かつ非透水性のコンクリート製であるが、蓋体10の材質はこれに限定されず、全体が遮光性であれば、ポーラスコンクリートなどの多孔質のコンクリート製、樹脂製、鋳鉄製であってもよい。蓋体10は、鋳鉄製よりも安価なコンクリート製または樹脂製であることが好ましい。
【0019】
図1に示すように、この蓋付き雨水桝1は、蓋体10に切り欠き19を組み合わせた孔部19hが設けられているので、孔部19hに雨樋30を挿入することにより、排水を桝本体20の第1の領域(中空領域、貯留領域)21に導くことができる。このため、桝本体20の側壁22を削孔して、雨樋30を削孔した側壁22から挿入するために地中90に配管させる必要がなく、地中配管に伴う手間やコストを省くことができる。さらに、雨樋30を地中90に埋設させないので、雨樋30に詰まった落ち葉や泥などの異物を取り除く際にも雨樋30を地中90から掘り起こす必要がなく、清掃を含めた種々のメンテナンスに伴う手間やコストを省くことができる。また、雨樋30を地中90に埋設させないので、寒冷地の凍結した地表面や舗装された箇所において雨樋を地中から掘り起こす手間やコストを省くことができる。
【0020】
この蓋付き雨水桝1は、蓋体10の孔部19hに雨樋30が挿入されているので、雨樋30のエルボ管31を外したり、蓋体10を上方向に持ち上げて外したりすることにより、地上で簡単に、雨樋30および/または桝本体20のメンテナンスを行うことができる。桝本体20のメンテナンスを行う際には、外した蓋体10を呼び樋30bに吊り掛ける(引っ掛ける)ようにしてもよい。さらに、雨樋30を地中90に埋設させないので、地中で使用する場合よりも雨樋30の厚みや強度を小さくでき、安価な雨樋30を使用しやすい。
【0021】
この蓋付き雨水桝1は、蓋体10の孔部19hに雨樋30が挿入されているので、雨樋30から排出される排水を桝本体20の第1の領域21に確実に導くことができる。このため、雨樋30から排出された排水が風などにより吹き上げられ、排水が周囲に散らばることを抑制できる。さらに、蓋体10は遮光性かつ非透水性であるため、いったん第1の領域21に排出された排水が風などにより吹き上げられ、蓋体10の下面12から上面11に向けて漏れ出すことも抑制できる。
【0022】
この蓋付き雨水桝1は、蓋体10が遮光性かつ非透水性であり、孔部19hを除いて上面11および下面12を貫通する取水(集水)のための開口はなく、さらに、孔部19hには雨樋30が挿入されているので、この蓋体10により桝本体20の上部開口23をほとんど隙間のない状態で塞ぐことができる。このため、上部開口23からゴミや泥などの異物が入り込むことを抑制でき、さらに、ネズミや害虫などが侵入することも抑制できる。さらに、桝本体20に落ち葉が詰まった場合や、桝本体20に他の設備を接続して雑排水が混入した場合であっても、臭気が上昇して地上に漏れ出すことを抑制できる。
【0023】
図1および図2に示すように、孔部19hを形成する切り欠き19は、蓋体10の上面11の側から下面12の側に向けてテーパー状に狭まっている。すなわち、蓋体10の4つの側面13(13a〜13d)は、上面11よりも下面12の方の面積が小さくなる方向(順テーパ)に形成されているのに対して、切り欠き19は、上面11よりも下面12の方の面積が大きくなる方向(逆テーパー)に形成されている。このため、雨樋30と上面11との間の隙間11aよりも、雨樋30と下面12との間の隙間12aの方を小さくできるので、地表面94からゴミや泥などが入り込むことを抑制できる。さらに、雨樋30はメンテナンスの際の出し入れを含めて切り欠き19との接触により傷付く可能性があるが、隙間11aを大きくすることにより上面11に接触する確率を低下させ、隙間12aを小さくすることにより下面12に接触する確率を向上させることができるので、雨樋30の塗料の剥がれなどの損傷(痛み)を地上から目立たないようにできる。
【0024】
図3に、異なる蓋付き雨水桝1aの概要を模式的に示している。蓋付き雨水桝1aは、地中90に埋設された四角筒状の桝本体20と、桝本体20の上方に開口した平面視四角形状の上部開口23に設置される蓋体110とを備えている。図3は、蓋付き雨水桝1aを、家屋40の犬走り41が設けられていない位置で外壁43に沿って設置した状態を示している。なお、この蓋付き雨水桝1aは、図1のように犬走り41の外側に設置することも可能であり、さらに、犬走り41の有無にかかわらず、雨樋30と接続できる位置であれば、家屋40に対して様々な位置に設置できる。以下で説明する蓋付き雨水桝においても同様である。また、以降の実施形態において上記実施形態と共通の構成については、共通の符号を付して説明を省略する。
【0025】
蓋体110は、単板で、全体が遮光性かつ非透水性のコンクリート製であり、周縁(外周)14の一部に、雨樋30が貫通する程度に開口の大きさが限定された切り欠き19を備えている。本例の蓋付き雨水桝1aは、家屋40の外壁43に近接して配置されており、さらに、蓋体110の切り欠き19が外壁43の側、すなわち雨樋30の側を向くように、蓋体110が取り付けられている。このため、上記実施形態とは異なり、外壁43に沿って延びる縦樋30aにより、排水を桝本体20の第1の領域21にストレートに導くことができ、エルボ管31や呼び樋30bを接続する手間やコストを省くことができる。さらに、この蓋付き雨水桝1aは、蓋体110の切り欠き19が周縁14に配置されているので、簡単に、蓋体110の取り付けおよび取り外しを行うことができる。このため、雨樋30および/または桝本体20のメンテナンスを行いやすい。
【0026】
蓋体110の切り欠き19は、蓋体110の上面11の側から下面12の側に向けて真っ直ぐ(ストレート)に形成されているが、上面11よりも下面12の方の面積が小さくなる方向(順テーパー)に形成されていてもよい。
【0027】
図4に、第2の実施形態に係る蓋体110を用いて蓋付き雨水桝1aを施工する方法を示しており、図4(a)は蓋体110を桝本体20に取り付ける前の工程を示した図であり、図4(b)は蓋体110を桝本体20に取り付ける工程を示した図である。
【0028】
図4(a)に示すように、この蓋体110も、平面視正方形状であり、上面11と、下面12と、上面11および下面12を上下方向に接続する4つの側面13(13a〜13d)とを備えている。さらに、蓋体110は、周縁14の辺部14aの中央、すなわち側面13aの中央を切り欠いた平面視正方形状の切り欠き19と、上面11および下面12のそれぞれの中央を上下方向に貫通する平面視長方形状(扁円形状、楕円形状)の取っ手18とを備えている。切り欠き19は、1つの側面13aを切り欠いて形成した3つの側面19a〜19cにより囲まれるように設けられている。平面視正方形状の切り欠き19の平面視開口サイズは、蓋体110の上面11のサイズの10%以下であることが好ましい。以降においても同様である。平面視長方形状の取っ手18のサイズの一例は、短辺の長さが2−3cmであり、長辺の長さが5−6cmである。
【0029】
桝本体20は、家屋40の外壁43に沿って地表面94に垂直に延びる雨樋30の位置に合せて、雨樋30が桝本体20の第1の領域21に挿入された状態になるように地中90に埋設されている。本例では、雨樋30が上部開口23の周縁24の近傍に配置されるように、とくに雨樋30が外壁43の側の側壁22aのほぼ中央に配置されるように、桝本体20の第1の領域21に挿入されている。このように、蓋付き雨水桝1aを施工する方法は、上部開口23の周縁24の近傍に雨樋30が挿入された状態にすること(第1の工程)を含む。なお、第1の工程では、外壁43に沿って下ろされた雨樋30の位置に合せて、第1の領域21に雨樋30が挿入されるように桝本体20を埋設してもよく、あるいは、埋設された桝本体20の位置に合せて、第1の領域21に雨樋30が挿入されるように外壁43に沿って雨樋30を下ろしてもよい。
【0030】
図4(b)に示すように、雨樋30は、外壁43の側の側壁22aのほぼ中央に配置されるように、桝本体20の第1の領域21に挿入されている。さらに、蓋体110は、切り欠き19が周縁14の辺部14aの中央に配置されている。このため、蓋体110の辺部14aを外壁43の側、すなわち側壁22aの側に向けることにより、切り欠き19が雨樋30を囲むように蓋体110を取り付けること(第2の工程)ができる。
【0031】
この蓋付き雨水桝1aを施工する方法は、切り欠き19が周縁14に設けられた蓋体110を用いることにより、雨樋30を囲むように蓋体110を取り付けることができるので、簡単に蓋付き雨水桝1aを施工できる。このため、桝本体20の側壁22を削孔して、雨樋30を削孔した側壁22から挿入するために地中90に配管させる必要がなく、地中配管に伴う手間やコストを省くことができる。さらに、切り欠き19が周縁14に設けられた蓋体110を用いることにより、蓋体110の取り付けだけでなく取り外しも簡単に行うことができるので、雨樋30および/または桝本体20のメンテナンスを行いやすい蓋付き雨水桝1aを提供できる。
【0032】
この蓋付き雨水桝1aを施工する方法は、切り欠き19が周縁14に設けられた蓋体110を用いることにより、雨樋30を囲むように蓋体110を取り付けることができるので、雨樋30から排出される排水を桝本体20の第1の領域21に確実に導く蓋付き雨水桝1aを施工できる。このため、雨樋30から排出された排水が風などにより吹き上げられ、排水が周囲に散らばることを抑制する蓋付き雨水桝1aを提供できる。さらに、蓋体110は遮光性かつ非透水性であるため、いったん第1の領域21に排出された排水が風などにより吹き上げられ、蓋体110の下面12から上面11に向けて漏れ出すことも抑制する蓋付き雨水桝1aを提供できる。
【0033】
この蓋付き雨水桝1aを施工する方法は、雨樋30が上部開口23の周縁24の近傍に挿入された状態にしてから(第1の工程)、切り欠き19が雨樋30を囲むように蓋体110を取り付けるので(第2の工程)、桝本体20の上部開口23をほとんど隙間のない状態で塞ぐことができる。このため、上部開口23からゴミや泥などの異物が入り込むことを抑制し、さらに、ネズミや害虫などが侵入することも抑制する蓋付き雨水桝1aを提供できる。さらに、桝本体20に落ち葉が詰まった場合や、桝本体20に他の設備を接続して雑排水が混入した場合であっても、臭気が上昇して地上に漏れ出すことを抑制する蓋付き雨水桝1aを提供できる。
【0034】
このように、本例の蓋体110は、切り欠き19が周縁14の辺部14a〜14dの中央に設けられているので、桝本体20の上部開口23が四角形で、雨樋30が桝本体20のいずれかの側壁22a〜22dのほぼ中央に配置されるタイプの蓋付き雨水桝1aを施工するのに適している。さらに、この蓋体110は、切り欠き19が1つの側面13aを切り欠いて3つの側面19a〜19cにより囲まれるように設けられているので、雨樋30の全周(外周)を囲む第1の実施形態に係る蓋体10とは異なり、雨樋30の3方のみを囲むことができる。このため、蓋体110の取り付けおよび/または取り外しの際に、雨樋30に接触する可能性のある方向を4方向から3方向に減らすことができ、接触面積を減少させやすい。
【0035】
図5に、第3の実施形態に係る蓋体210を用いて蓋付き雨水桝1aを施工する方法を示しており、図5(a)は蓋体210を桝本体20に取り付ける前の工程を示した図であり、図5(b)は蓋体210を桝本体20に取り付ける工程を示した図である。
【0036】
図5(a)に示すように、この蓋体210も、平面視正方形状であり、上面11と、下面12と、上面11および下面12を上下方向に接続する4つの側面13(13a〜13d)とを備えている。さらに、蓋体210は、4つの角部15(15a〜15d)のうち辺部14aおよび14bに挟まれた角部15aを切り欠いた平面視円形状の切り欠き19と、上面11の対向する辺部14bおよび14dの側に上面11に対して窪むように、かつ蓋体210の内部で内側に折れ曲がるように形成された1組の平面視長方形状の取っ手18とを備えている。切り欠き19は、2つの側面13aおよび13bを切り欠いて形成した半円形状の側面19aにより囲まれるように設けられている。平面視長方形状の取っ手18のサイズの一例は、短辺の長さが2−3cmであり、長辺の長さが5−6cmである。
【0037】
桝本体20は、家屋40の外壁43のコーナー部分44に沿って地表面94に垂直に延びる雨樋30の位置に合せて、雨樋30が桝本体20の第1の領域21に挿入された状態になるように地中90に埋設されている。本例では、雨樋30が上部開口23の周縁24の角部25に配置されるように、とくに雨樋30が外壁43のコーナー部分44の側、すなわち側壁22aおよび22dに挟まれた角部25dに配置されるように、桝本体20の第1の領域21に挿入されている。このように、蓋付き雨水桝1aを施工する方法は、上部開口23の周縁24の角部25dに雨樋30が挿入された状態にすること(第1の工程)を含む。
【0038】
図5(b)に示すように、雨樋30は、上部開口23の周縁24の角部25dに配置されるように、第1の領域21に挿入されている。さらに、蓋体210は、切り欠き19が周縁14の角部15aに配置されている。このため、蓋体210の角部15aを外壁43のコーナー部分44の側、すなわち桝本体20の角部25dの側に向けることにより、切り欠き19が雨樋30を囲むように蓋体210を取り付けること(第2の工程)ができる。
【0039】
この蓋付き雨水桝1aを施工する方法は、雨樋30が上部開口23の周縁24の角部25dに挿入された状態にしてから(第1の工程)、切り欠き19が雨樋30を囲むように蓋体210を取り付けるので(第2の工程)、桝本体20の4つの角部25a〜25dを有効に利用して蓋付き雨水桝1aを施工できる。さらに、切り欠き19が角部15aに設けられた蓋体210を用いることにより、外壁43のコーナー部分44などのような狭小な箇所であっても、蓋体210の取り付けおよび取り外しが簡単で、メンテナンスも行いやすい蓋付き雨水桝1aを提供できる。
【0040】
この蓋付き雨水桝1aを施工する方法は、切り欠き19が周縁14の角部15aに設けられた蓋体210を用いることにより、桝本体20の4つの角部25a〜25dのいずれかに配置された雨樋30を囲むように蓋体210を取り付けることができる。このため、外壁43のコーナー部分44に沿って下ろされた雨樋30の位置に合せて桝本体20を埋設すれば、雨樋30がいずれの角部25a〜25dに配置されていても、蓋体210を回転させることにより切り欠き19が雨樋30を囲むように取り付けることができる。
【0041】
このように、本例の蓋体210は、切り欠き19が周縁14の角部15aに設けられているので、桝本体20の上部開口23が四角形で、雨樋30が桝本体20のいずれかの角部25a〜25dに配置されるタイプの蓋付き雨水桝1aを施工するのに適している。さらに、この蓋体210は、取っ手18が上面11および下面12を上下方向に貫通していないので、切り欠き19を除いて蓋体210を上下方向に貫通する開口は一切なく、この蓋体210により桝本体20の上部開口23をいっそう隙間の少ない状態で塞ぐことができる。
【0042】
さらに、この蓋体210は、切り欠き19が2つの側面13aおよび13bを切り欠いて半円形状の1つの側面19aにより囲まれるように設けられているので、雨樋30の3方を囲む第2の実施形態に係る蓋体110とは異なり、雨樋30の2方あるいは片側半分のみを囲むことができる。このため、蓋体210の取り付けおよび/または取り外しの際に、雨樋30に接触する可能性のある方向を3方向から少なくとも片側半分に減らすことができ、接触面積をいっそう減少させやすい。
【0043】
図6に、第4の実施形態に係る蓋体310を用いて施工した蓋付き雨水桝1bの概要を斜視図により示している。この蓋付き雨水桝1bは、地中90に埋設された円筒状の桝本体20と、桝本体20の上方に開口した平面視円形状の上部開口23に設置される蓋体310とを備えている。
【0044】
図7に、第4の実施形態に係る蓋体310の概要を斜視図により示しており、図7(a)は蓋体310を平面方向(上方向)から示した図であり、図7(b)は蓋体310を底面方向(下方向)から示した図である。この蓋体310は、全体が遮光性かつ非透水性の樹脂製で、平面視円形状であり、上面11と、下面12と、上面11および下面12を上下方向に接続する側面13とを備えている。さらに、蓋体310は、円周縁14の一部、すなわち側面13の一部を切り欠いた平面視扁円形状(楕円形状)の切り欠き19と、上面11に対して窪むように形成された1組の平面視長方形状の取っ手18とを備えている。さらに、蓋体310は、下面12の側に格子状のリブ12rを備えている。
【0045】
このように、本例の蓋体310は、切り欠き19が円周縁14に切り欠き状に設けられているので、桝本体20の上部開口23が円形で、雨樋30が上部開口23の周縁24の近傍に配置されるタイプの蓋付き雨水桝1aを施工するのに適している。さらに、この蓋体310は樹脂製なので、軽量であり、蓋体310の取り付けおよび取り外しがいっそう簡単で、メンテナンスも行いやすい蓋付き雨水桝1aを提供できる。
【0046】
図8に、本発明に係る蓋体のバリエーションの一例を平面図により示している。図8(a)〜図8(c)に示すように、蓋体110、110aおよび110bは、平面視正方形状であり、周縁14の辺部14aの中央に、雨樋が貫通する程度に開口の大きさが限定された平面視正方形状の切り欠き19を備えている。図8(d)〜図8(f)に示すように、蓋体110c、110dおよび110eは、平面視正方形状であり、周縁14の辺部14aの中央に、雨樋が貫通する程度に開口の大きさが限定された平面視アーチ形状の切り欠き19を備えている。
【0047】
図8(a)および図8(d)に示すように、蓋体110および110cは、中央を上下方向に貫通する平面視長方形状(扁円形状、楕円形状)の取っ手18を備えている。図8(b)および図8(e)に示すように、蓋体110aおよび110dは、上面11の対向する辺部14bおよび14dの側に上面11に対して窪むように、かつ蓋体110aおよび110dの内部で内側に折れ曲がるように形成された1組の平面視長方形状の取っ手18とを備えている。蓋体110bおよび110eは、対向する側面13bおよび13dのそれぞれの中央を切り欠いた平面視台形状の取っ手18を備えている。なお、図8(a)は本発明の第2の実施形態に係る蓋体110を示した図である。
【0048】
図8(g)および図8(h)に示すように、蓋体210aおよび210bは、平面視正方形状であり、周縁14の角部15aに、雨樋が貫通する程度に開口の大きさが限定された平面視正方形状の切り欠き19を備えている。図8(i)および図8(j)に示すように、蓋体210cおよび210は、平面視正方形状であり、周縁14の角部15aに、雨樋が貫通する程度に開口の大きさが限定された平面視円形状の切り欠き19を備えている。
【0049】
図8(g)および図8(i)に示すように、蓋体210aおよび210cは、中央を上下方向に貫通する平面視長方形状(扁円形状、楕円形状)の取っ手18を備えている。図8(h)および図8(j)に示すように、蓋体210bおよび210は、上面11の対向する辺部14bおよび14dの側に上面11に対して窪むように、かつ蓋体210bおよび210の内部で内側に折れ曲がるように形成された1組の平面視長方形状の取っ手18とを備えている。なお、図8(j)は本発明の第3の実施形態に係る蓋体210を示した図である。
【0050】
図8(k)および図8(l)に示すように、蓋体310aおよび310bは、平面視円形状であり、周縁14の一部に、雨樋が貫通する程度に開口の大きさが限定された平面視正方形状の切り欠き19を備えている。図8(m)および図8(n)に示すように、蓋体310cおよび310は、平面視正方形状であり、周縁14の一部に、雨樋が貫通する程度に開口の大きさが限定された平面視アーチ形状の切り欠き19を備えている。
【0051】
図8(k)および図8(m)に示すように、蓋体310aおよび310cは、中央を上下方向に貫通する平面視長方形状(扁円形状、楕円形状)の取っ手18を備えている。図8(l)および図8(n)に示すように、蓋体310bおよび310は、上面11に対して窪むように形成された1組の平面視長方形状の取っ手18とを備えている。なお、図8(n)は本発明の第4の実施形態に係る蓋体310を示した図である。また、図8は、本発明に係る蓋体のバリエーションの一例に過ぎず、雨樋30が貫通する程度に開口の大きさが限定された切り欠き19を備えた遮光性の蓋体は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1、1a、1b 蓋付き雨水桝
10、110、210、310 蓋体
20 桝本体
30 雨樋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨樋からの排水が流入する蓋付き雨水桝の施工方法であって、
前記蓋付き雨水桝の桝本体の上部開口に設置される蓋体は、遮光性で、前記雨樋が貫通する程度の開口の切り欠きを含み、
当該施工方法は、
前記桝本体の前記上部開口の前記蓋体の切り欠きが配置される位置に前記雨樋が挿入された状態にすることと、
前記切り欠きが前記雨樋を囲むように前記蓋体を取り付けることとを含む、施工方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記蓋体は、単板で、周縁の一部に前記切り欠きが設けられており、
前記雨樋が挿入された状態にすることは、前記上部開口の周縁の近傍に前記雨樋が挿入された状態にすることを含む、施工方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記上部開口は、多角形であり、
前記蓋体は、多角形で、少なくとも1つの角部に前記切り欠きが設けられており、
前記雨樋が挿入された状態にすることは、前記上部開口の周縁の角部に前記雨樋が挿入された状態にすることを含む、施工方法。
【請求項4】
雨樋からの排水が流入する蓋付き雨水桝の遮光性の蓋体であって、
前記雨樋が貫通する程度に開口の大きさが限定された切り欠きを含む、蓋体。
【請求項5】
請求項4において、
当該蓋体は、単板で、前記蓋付き雨水桝の桝本体の上部開口に設置されており、
前記切り欠きは、当該蓋体の周縁に配置されている、蓋体。
【請求項6】
請求項4または5において、
当該蓋体は、多角形であり、
前記切り欠きは、当該蓋体の周縁の辺部の中央に配置されている、蓋体。
【請求項7】
請求項4または5において、
当該蓋体は、多角形であり、
前記切り欠きは、当該蓋体の周縁の角部に配置されている、蓋体。
【請求項8】
請求項4ないし7のいずれかにおいて、
前記切り欠きは、当該蓋体の上面の側から下面の側に向けてテーパー状に狭まっている、蓋体。
【請求項9】
請求項4ないし8のいずれかに記載の蓋体と、
前記蓋体が設置される上部開口を含む桝本体とを有する蓋付き雨水桝。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−23845(P2013−23845A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157550(P2011−157550)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(592136635)株式会社オーイケ (28)
【Fターム(参考)】