説明

蓋材

【課題】本発明が解決しようとする課題は、紙を基材とし、アルミニウム箔を使用せずに、遮光性とバリア性とを備え、さらに裏面の白色度をも向上させた蓋材を提供しようとするものである。
【解決手段】紙基材とバリア層とシーラント層を少なくとも有する積層シートからなる蓋材であって、前記バリア層は、紙基材と接する側に遮光インキ層を有し、シーラント層と接する側に白インキ層を有することを特徴とする蓋材である。また前記白インキ層は、2層の白べたインキ層からなることを特徴とする。また前記遮光インキ層は、墨べたインキ層であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器の蓋材に関し、特に紙を基材とし、アルミニウム箔を使用せずに、遮光性とバリア性とを備えた蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カップ入り即席麺の容器等の蓋材としては、紙層とアルミニウム箔とシーラント層を積層した積層材料が一般的に使用されてきた。この材料は、表面の印刷適性や、遮光性、ガスバリア性等の特性において優れた性質を持っている。
【0003】
遮光性は、内容物が外部から入射する光によって変質することを防止するために必要な性質であり、ガスバリア性は、水蒸気や酸素が透過することによって内容物が変質することを防止するために必要な性質である。これらの性質は、中間層としてアルミニウム箔を用いることによって比較的容易に達成できる。
【0004】
しかし近年、アルミニウム箔を使用した包装材料には、使用後の焼却時に焼却炉を傷めたり、多量の灰分を発生する等の環境上の問題に加え、製品検査において金属探知機の使用が制約される等の問題があるため、これに替わる材料が要望されるようになって来た。
【0005】
特許文献1に記載された蓋材は、アルミニウム箔を使用せずに防湿性と遮光性をもち、カール性や易剥離性に優れた蓋材である。この蓋材は、防湿性と遮光性を発現するために紙の表面基材とホットメルト層の中間に白色フィルムを使用したものである。
【0006】
また特許文献2に記載された積層体は、同様にアルミニウム箔を使用しない積層体であり、遮光性を有し、意匠性においても印刷絵柄層に「くすみ」を生じない特徴を備えており、蓋材としても使用できると記載されている。この積層体は、ベタ印刷層を有する印刷絵柄層と銀ベタ印刷層とを介在層を介して対向するように設けたことを特徴とする積層体である。
【0007】
また特許文献3に記載された本出願人の出願になるイージーピール蓋材は、同様にアルミニウム箔を使用しない、遮光性と表面の白色度を兼ね備えたイージーピール蓋材である。この蓋材は、紙材料層と樹脂フィルム層とイージーピール層とを積層して成り、紙材料層の内面または樹脂フィルム層の表面に、白色インキと黒色インキと白色インキを3色重ねて印刷して積層したことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-281096号公報
【特許文献2】特開2001-80019号公報
【特許文献3】特開2002-211630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された蓋材は、白色フィルムによって防湿性と遮光性を発揮するようにしたものであるが、実施例における測定データによると、防湿性は6〜20g/m、全光線透過率は8%であって、防湿性においても遮光性においてもアルミニウム箔には到底及ばないものである。
【0010】
特許文献2に記載された積層体は、実施例における測定データによると、遮光性においては全光線透過率が1.0%以下と優れているものの、バリア性のデータがなく、またそもそも紙を使用していないので、紙として認定される必要がある包装材料としては、使用することができないものである。
【0011】
特許文献3に記載されたイージーピール蓋材は、遮光性を発揮するために、白色インキと黒色インキと白色インキを3色重ねて印刷したものであるが、インキ層同士の相溶性により、どうしても3層がある程度混じり合うことが避けられない。このため全体としての遮光性や、紙層表面の白色度においては十分満足のできる蓋材が得られるものの、蓋材の裏面の白色度においては不十分であり、外観的に見劣りするものであるため、この改善が待たれていた。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、紙を基材とし、アルミニウム箔を使用せずに、遮光性とバリア性とを備え、さらに裏面の白色度をも向上させた蓋材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、紙基材とバリア層とシーラント層を少なくとも有する積層シートからなる蓋材であって、前記バリア層は、紙基材と接する側に遮光インキ層を有し、シーラント層と接する側に白インキ層を有することを特徴とする蓋材である。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記白インキ層が、2層の白べたインキ層からなることを特徴とする請求項1に記載の蓋材である。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、前記遮光インキ層が、墨べたインキ層であることを特徴とする請求項1または2に記載の蓋材である。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、前記バリア層が、無機物蒸着層を有するガスバリアフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓋材である。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、前記紙基材の表面に透明保護層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓋材である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る蓋材は、紙基材とバリア層とシーラント層を少なくとも有する積層シートからなる蓋材であるから、紙の重量を50%以上とすることにより、紙製の包装材料として認定されるものとすることができる。
【0019】
また、前記バリア層は、紙基材と接する側に遮光インキ層を有し、シーラント層と接する側に白インキ層を有するので、遮光インキ層と白インキ層とが相溶して混じり合うことはなく、全体としての遮光性を保持しつつ、シーラント層面から見た時の白色度を向上することができる。
【0020】
前記白インキ層が、2層の白べたインキ層からなる場合には、通常の印刷機を用いて十分な隠蔽性を備えた白インキ層を形成することが可能である。また前記遮光インキ層が、墨べたインキ層である場合も同様にして十分な遮光性を備えた遮光インキ層を通常の印刷機を用いて形成することができる。
【0021】
また、前記バリア層が、無機物蒸着層を有するガスバリアフィルムである場合において
は、アルミニウム箔に匹敵する高度なガスバリア性を有する蓋材とすることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る蓋材の実施態様の一例を示した断面説明図である。
【図2】本発明に係る蓋材の実施態様の一例を示した平面図である。
【図3】本発明に係る蓋材の他の実施態様を示した断面説明図である。
【図4】実施例と比較例における光線透過度のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面に従い、本発明に係る蓋材について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る蓋材の実施態様の一例を示した断面説明図である。本発明に係る蓋材1は、紙基材3とバリア層5とシーラント層9を少なくとも有する積層シートからなる蓋材であって、バリア層5は、紙基材3と接する側に遮光インキ層4を有し、シーラント層9と接する側に白インキ層10を有することを特徴とする蓋材である。
【0024】
図1に示した実施態様においては、紙基材3とバリア層5に設けた遮光インキ層4との間、およびバリア層5に設けた白インキ層10とシーラント層9との間をそれぞれ接着剤層8によって接着している。
【0025】
本発明に係る蓋材1は、紙基材3を有するので、紙基材3の重量を全体の50%以上となるようにすることにより、紙製として認定されうる蓋材である。紙基材3としては、広範な種類の紙が使用可能であり、特に限定されるものではないが、表面の白色度を必要とする場合には、片面アート紙、両面アート紙、片面コート紙、両面コート紙等を使用することが好ましい。紙の坪量としては、通常50g/m以上のものが使用される。
【0026】
紙基材3の表面には、図には示さないが、必要に応じて、着色や印刷を施すことができる。またこれら着色層や印刷層の保護や、表面の耐水性等を向上させるために、透明保護層を設けても良い。
【0027】
バリア層5としては、蓋材として必要なバリア性により、材質や厚さが決定されるが、バリア層5の表裏面に遮光インキ層4と白インキ層10とを設ける必要があることから、これらに対する加工適性も考慮する必要がある。バリア層5としては、通常軟包装材料として用いられる種々のプラスチックフィルムが使用できる。具体的な例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル系樹脂、セロハン、三酢酸セルロース(TAC)樹脂等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、アイオノマー樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン(PS)系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等の合成樹脂フィルムを単体で、または複合して使用することができる。
【0028】
これらの中で、上記加工適性や、バリア性、コスト等の点からみて最も好ましく使用で
きるものとしては、厚さ6〜12μm程度のPET樹脂フィルムが挙げられる。PET樹脂フィルムは、遮光インキ層4や白インキ層10の塗工後の熱風乾燥に耐えられる耐熱性を有しており、塗工適性に代表される各種加工適性に優れている。PET樹脂フィルム単体ではバリア性の点で不十分な場合には、PET樹脂フィルム単体に替えて、PET樹脂フィルムに酸化アルミニウムや酸化珪素を蒸着した無機物蒸着フィルムを使用することにより、アルミニウム箔に匹敵するガスバリア性を発揮させることも可能となる。
【0029】
バリア層5の、紙基材3と接する側に設ける遮光インキ層4については、隠蔽性の高い顔料を用いた公知の遮光性インキを用いて、べた状に均一に形成した被膜が使用できる。隠蔽性の高い顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、2酸化チタン、アルミニウム粉末等の顔料が挙げられるが、これらの中で、カーボンブラックを分散した墨インキをべた状に形成した墨べたインキ層は、最も高い遮光性を発揮する被膜のひとつである。
【0030】
バリア層5の、シーラント層9と接する側に設ける白インキ層10は、遮光インキ層4の暗色を隠蔽し、蓋材1の裏面を白く見せる働きを担っている。容器を開封した際に、蓋材の裏面が見えるため、蓋材1の裏面が暗色であると、特に内容物が食品であるような場合には、外観の印象が悪い。裏面に白インキ層10が存在することにより、シーラント層を通して、白インキ層10が目視されるため、蓋材の裏面が白く見えるのである。
【0031】
しかし白インキ層10を、無制限に厚くすることは実際上不可能であり、コストや加工条件や物性等の観点から自ずから制約されるものである。従って、これらの制約の中で、いかに裏面の白さを出すかが、技術的な課題となる。
【0032】
従来、遮光性と裏面の白さを両立させるために、墨インキ層/白インキ層/白インキ層のように、遮光性のインキ層と白インキ層を直接積層する方法が用いられていたが、この方法によると、暗色の遮光性インキ層と白インキ層とが相溶して混じり合い、裏面の白さが十分発揮されなかった。本発明に係る蓋材においては、バリア層5を挟んで、遮光インキ層4と白色インキ層10を独立した層として形成したので、この問題が解消され、裏面の白色度を向上させることができたものである。
【0033】
白インキ層10としては、公知の高隠蔽性白インキを用いることができる。白インキ層10を形成する方法としては、リバースロールコーター、ナイフコーター等の厚塗りが可能な方法によって1回で形成することもできるが、通常のグラビア印刷機を用いて、べた印刷を2回ないしは数回繰返す方法もある。重ね塗りをすることにより、通常のグラビア印刷機では、1回塗りで形成できないような塗工量の白インキ層を形成することができる。また、重ね塗りをすることにより、同量のインキ被膜であっても、1回塗りよりも隠蔽性が向上する場合がある。
【0034】
次にシーラント層9について説明する。シーラント層9は、蓋材1を容器本体の開口部あるいは、開口部に設けられたフランジ部に接着させて密封するための接着剤層であり、通常は熱シールによって接着が行われる。シーラント層9の材質としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
【0035】
蓋材の場合、手で容易に剥離して開封することができることが必要であり、このためシーラント層としては、イージーピール性をもったシーラントフィルムが使用されることが多い。
【0036】
紙基材3とバリア層5の表面に形成した遮光インキ層4との接着、ならびにバリア層5の裏面に形成した白インキ層10とシーラント層9との接着は、通常ドライラミネーション法によって行われる。ドライラミネーションに用いられる接着剤としては、公知のポリエステル系ないしはポリウレタン系接着剤が使用できる。
【0037】
図2は、本発明に係る蓋材の実施態様の一例を示した平面図である。図2に湿した蓋材は、円形の容器本体の開口部に設けたフランジ部に接着して使用する蓋材であり、開封しやすいようにつまみ部12が設けられている。
【0038】
図3は、本発明に係る蓋材の他の実施態様を示した断面説明図である。図3に示した蓋材1においては、紙基材3の表面に、接着剤層8を介して透明な保護層2が設けられている。バリア層5の表面には遮光インキ層4が設けられている。バリア層5は、裏面側に、無機物蒸着層11を有するガスバリアフィルムであり、無機物蒸着層11に接して、白べたインキ層1(6)と白べたインキ層2(7)が順次設けられている。遮光インキ層4は、接着剤層8を介して紙基材3と、また白べたインキ層2は、接着剤層8を介してシーラント層9と接着されている。なお紙基材3の表面には通常、着色層や印刷層が形成されているが、図では省略されている。
【0039】
図3に示した蓋材は、厚塗りが可能な特殊なコーターを使用することなく、通常のグラビア印刷機とドライラミネーターを用いて製造することができる。
以下実施例に基づいて、本発明に係る蓋材について具体的に説明する。
【実施例】
【0040】
バリア層として、厚さ12μmのPET樹脂フィルムの裏面に酸化アルミニウムを蒸着したガスバリアフィルム(凸版印刷社製GL−AEC−F)を用いて、この表面側に遮光インキ層として墨インキ(東洋インキ製造社製 LPGT)のべた印刷をグラビア印刷機を用いて行った。べた版の仕様は、70線であり、塗布量は、4g/mであった。ガスバリアフィルムの裏面側には、同様にグラビア印刷機を用いて、白インキ(東洋インキ製造社製 RM2)による白べたインキ層を2層設けた。べた版の仕様は、54線であり、総塗布量は、7g/mであった。紙基材として坪量79.1g/mの片面アート紙を用い、表面側にグラビア印刷機により所定の絵柄を印刷した。印刷面の透明保護層として、厚さ12μmのPET樹脂フィルムを使用した。シーラント層としては、イージーピールシーラント(東レフィルム加工社製 CF7601、厚さ30μm)を用いた。透明保護層、紙基材、バリア層、シーラント層の4層をドライラミネーター用接着剤を用いて貼り合わせ、4層の積層シートからなる蓋材を作成した。
<比較例>
【0041】
実施例1と同様の材料を用いて、同様に4層の積層シートからなる蓋材を作成した。但し、遮光インキ層と白インキ層は、ガスバリアフィルムの裏面側に、墨べたインキ層/白べたインキ層/白べたインキ層の順に3層重ねて形成した。
【0042】
実施例の蓋材と比較例の蓋材について、裏面の白色度と光線透過度を比較した。その結果、白色度については、比較例のL値58.55に対して、実施例では、L値77.41(ハンター方式による白色度(JIS P 8123))であり、白色度は、大幅に改善された。光線透過度については、比較例よりも若干劣る結果となったが、実用上全く問題のない範囲である。光線透過度の結果を図4に示す。
【符号の説明】
【0043】
1・・・蓋材
2・・・保護層
3・・・紙基材
4・・・遮光インキ層
5・・・バリア層
6・・・白べたインキ層1
7・・・白べたインキ層2
8・・・接着剤層
9・・・シーラント層
10・・・白インキ層
11・・・無機物蒸着層
12・・・つまみ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材とバリア層とシーラント層を少なくとも有する積層シートからなる蓋材であって、前記バリア層は、紙基材と接する側に遮光インキ層を有し、シーラント層と接する側に白インキ層を有することを特徴とする蓋材。
【請求項2】
前記白インキ層は、2層の白べたインキ層からなることを特徴とする請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
前記遮光インキ層は、墨べたインキ層であることを特徴とする請求項1または2に記載の蓋材。
【請求項4】
前記バリア層は、無機物蒸着層を有するガスバリアフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓋材。
【請求項5】
前記紙基材の表面に透明保護層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓋材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−73781(P2011−73781A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230326(P2009−230326)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】