説明

蓋材

【課題】湯切り部の基材強度を強化し、湯切り作業や剥離作業に支障を来たす不用意な基材破断を生じることがなく、かつ製造容易な蓋材を提供する。
【解決手段】被着容器の周縁部を溶着密封する積層シート状の蓋材であって、少なくとも紙層31を含む表面材と、少なくとも最内層がシーラント層41からなり延伸プラスチックフィルムを含まない積層構成からなるシール基材とを有する蓋材において、前記シール基材の積層構成中に、環状オレフィン系重合体を含むコア樹脂層42を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収納し密封する容器の蓋材に関し、特に、使用時に内部に水や湯などの液体を入れて、湯または水を外部に排出した後に喫食する即席食品等に使用する容器の蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、普段は物品を密封して保管するとともに、使用時に内部に入れた水や湯などの液体を排出孔から外部に排出させる構造の容器として、即席食品の容器が知られている。このような容器を必要とする即席食品は、例えば焼きそば、スパゲティ等が挙げられる。これらの即席食品の喫食に際しては、注湯を行い、即席食品を可食状態にするための所定時間時間が経過した後、速やかに容器内から排湯する必要がある。
【0003】
この即席食品に使用する容器に関しては様々な形態が提案されている。例えば、容器の本体として、発泡ポリスチレン樹脂(PS)成形容器、ポリプロピレン樹脂(PP)成形容器、あるいは、ポリスチレン樹脂(PS)シートとポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)シートとをラミネートした積層材料により成形されている成形容器が一般に使用されている。この容器本体に、麺、具、ソースなどを収納し、湯切孔となる切り込みが形成されたプラスチック成形蓋を嵌合させて封止し、その全体をシュリンクフィルムでシュリンク包装した包装形態のものが一般的に使用されている。
【0004】
しかしながら、前記構成の包装形態の場合には、プラスチック成形蓋に湯切孔となる切り込みが形成されているため密封性が劣る。また、湯切孔の数が制限されるので湯切り二時間がかかる。嵌合蓋であるために湯切りするときに蓋が容器から外れる。あるいは、蓋と容器の隙間から湯が漏れ出して火傷する恐れがあるなどの問題点があった。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1に開示されているように、上述したプラスチック成形蓋に替わって、容器本体に密封シールする積層シートタイプの蓋材が開発されている。この蓋材は、表面シートと呼ばれる上シートと、その下層をなす複合層からなる下シートとから成り、容器本体の開口部の縁に剥離可能(イージーピール)にヒートシールすることで密封する。上シートと下シートの間の一部の領域には、易剥離剤を塗布して易剥離層が形成され、蓋材はその平面視において、易剥離層が形成された易剥離領域と、それ以外の接着(非剥離)領域とに分けられる。上シートには、易剥離層の領域の接着領域に近い所定の位置にミシン目が形成されている。下シートの易剥離領域には切り込みによる複数の湯切り孔がその表裏を貫通するように設けられている。また、上シートの易剥離領域の端の方の一部には、外側に突き出るように湯切り用プルタブが延設されている。一方、接着領域の一部には、容器本体から蓋材を剥がすために用いる開封用プルタブが外側に突き出るように延設されている。
【0006】
上記した構成の蓋材を容器に被せて内容物を包装することで、密封性に優れ、湯が漏れ出すことなく、また簡単な操作で速やかに湯切りが行え、所定時間蒸すことができるものである。喫食時には、ユーザは、開封用プルタブを持ち上げて蓋を一部開放し、湯を容器本体に注入する。その後、その開封用プルタブを閉じて容器本体の縁に折り曲げるように係止し、湯の加熱による調理時間の間待つ。その後、湯切り用プルタブを下シートから剥がすように引き上げつつ、下シートの易剥離領域を開放させ、引き上げた上シートの易剥離領域の所定部分をミシン目から切り取る。これにより、下シートの易剥離領域に複数の湯切り孔が出現する。そこで、容器を傾けて湯切り孔から加熱調理後の湯を排出する。湯切りが終わると、開封用プルタブを再び引き上げて、蓋を容器本体から分離させることで
、喫食が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−203653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の蓋材においては、下シートの強度が不十分であり、破断しやすいという問題点があった。例えば、上シートを剥がして湯切孔を現すときに、湯切孔をきっかけにして下シートが破れたり、排湯時に湯切孔間の部分が内容物の重量により破断して孔径が拡大し、食品まで流出してしまうことがあった。また、喫食時に湯切り部を引っ張って容器から除去する際、下シートが破断し、容器とシールされた下シートが容器本体の開口部の縁に残留してしまうことにより、喫食に支障を来たすことがあった。
【0009】
下シートの強度を補強するために、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの延伸フィルムを複合層中に積層させることも考えられるが、デッドフォールド(DF)性が低下して開口保持性が無くなり、お湯を注ぐときに閉じてしまう恐れがある。
【0010】
これに関連して、本出願人は特願2010−077136において、前記した特許文献1と同様な構成の積層シートタイプの蓋材であって、下シートが、Tダイによる溶融樹脂押出ラミネートにより積層された破れ防止樹脂層を含む積層体であり、前記破れ防止樹脂層が非晶性ポリエチレンテレフタレート系樹脂層、または、エチレンービニルアルコール共重合体層である蓋材を発明し提案している。この技術は製造における製膜条件の厳密なコントロールが必要とされるため、品種切り替え時の条件出し調整にやや時間を要する等の更なる改善点があった。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、湯切り部の基材強度を強化し、湯切り作業や剥離作業に支障を来たす不用意な基材破断を生じることがなく、かつ製造容易な蓋材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、被着容器の周縁部を溶着密封する積層シート状の蓋材であって、少なくとも紙層を含む表面材と、少なくとも最内層がシーラント層からなる積層構成であるシール基材とを有する蓋材において、前記シール基材の積層構成中に、環状オレフィン系重合体を含む樹脂層を有することを特徴とする蓋材である。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記被着容器の周縁部のシール部分における容器と蓋材との剥離強度(=シール強度)が5N/15mm以上、15N/15mm以下で、且つ、前記シール基材の破断強度が20N/15mm以上であることを特徴とする請求項1に記載する蓋材である。
ここで、剥離強度はJIS Z1707の「7.5ヒートシール強さ」に準拠した方法で測定される値で、試験速度は毎分500mm±50mm、剥離はT型剥離である。また、破断強度はJIS K7127に準拠した方法で測定される値で、試験速度は毎分500mm±50mmである。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記表面材と前記シール基材とが、所定の形状領域で易剥離層を介して剥離可能に積層された易剥離領域と接着領域とに区画されて互いに積層接着され、前記剥離可能領域の前記シール基材の一部に前記シール基材を貫通し前
記表面材の下部に達する環状のハーフカットが複数設けられ、前記シール基材の前記所定の形状領域を覆う前記表面材の一部を剥離することによって、前記シール基材に複数の湯切り孔を出現させることを特徴とする請求項1または2に記載する蓋材である。
【0015】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記シール基材は、前記表面材に接する側から順に、ポリエチレン/アルミ箔/樹脂層/シーラント層の層構成を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載する蓋材である。
【0016】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記シール基材を構成する前記樹脂層は、シクロオレフィンコポリマー(COC)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)との混合樹脂層からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載する蓋材である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蓋材は、少なくとも紙層を含む表面材と、最内層がシーラント層からなるシール基材とからなり、延伸プラスチックフィルムを含まない積層構成からなる蓋材において、前記シール基材の積層構成中に環状オレフィン系重合体を含む樹脂層を有することで、シール基材強度が改善され、不用意な剥離を生じることなく、蓋材を容器から剥離除去できることから、取り扱い性に優れているものである。
【0018】
また、本発明の蓋材を湯切り操作を必要とする即席食品に適用した場合には、湯切り部の基材強度が強化され、湯切り作業や剥離作業に支障を来たす不用意な基材破断を生じることがない。特に、シール基材中の、環状オレフィン系重合体を含む樹脂層を、紙、アルミ箔より内方側の層に形成した構成の蓋材では、湯切り部を容器から剥がして除去する際、強度の低い紙、アルミ箔が強度の強い環状オレフィン系重合体を含む樹脂層に容器の内方から支えられ、シール基材が表面材と一体となって除去される。これにより、紙、アルミ箔等の層が破断もしくは表層破壊し、容器に残存する可能性を低くすることが出来る。
【0019】
更に、本発明の蓋材のシール基材を構成する樹脂層として、シクロオレフィンコポリマー(COC)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)との混合樹脂を用いることで、押し出し作業性、成膜製が良好で、生産性の高い方法での安定した蓋材の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の蓋材の、一実施形態例を平面で示す説明図である。
【図2】図1に示した蓋材、および被着容器を断面で示した模式図である。
【図3】図2において一点鎖線で囲んだ場所を模式的に拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を一実施形態に基づき説明する。尚、以下の説明は、特に湯切り蓋材に適用した実施形態例について行うが、本発明の蓋材の技術は湯切り蓋材に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の蓋材の、一実施形態例に係る蓋材の一面の平面図である。また、図2は図1に示した蓋材および被着容器の断面模式図である。蓋材は被着容器の開口部周縁にシールされており、被着容器を封止している。また、蓋材は、被着容器にシールされるシール基材と、シール基材と剥離可能に積層された表面材とからなる積層体で形成されている。図3は、図2において一点鎖線で囲んだ場所を模式的に拡大した拡大断面図である。
【0023】
本発明の蓋材10は、図2に示すように、被着する被着容器20の周縁部を溶着密封する積層シート状の蓋材であって、少なくとも紙層31を含む表面材30と、少なくとも最内層がシーラント層41からなるシール基材40とを有する。そして、図3に示すように、シール基材40の積層構成中に、環状オレフィン系重合体を含む樹脂層42を有していることを特徴としている。なお、本発明の蓋材10においては、シール基材40の積層構成中に、延伸プラスチックフィルムは含まない。
【0024】
本発明の蓋材を湯切り蓋材に適用した例の一面の平面図を図1に示す。図1及び図2に示すように、本発明の蓋材10は、表面材30とシール基材40とが、所定の形状領域で易剥離層33を介して剥離可能に積層された易剥離領域50と接着領域60とに区画されて互いに積層接着されている。蓋材10の周縁部の易剥離領域50からは遠い側の接着領域60の1箇所に、開封用タブ61が設けられている。開封用タブ61にはハーフカットは形成されておらず、開封用タブ61に加えられた力がシール基材40にも伝わるため、開封用タブ61をつまんで捲ることで、蓋材10をシール基材40ごと被着容器20から引き剥がして開封することが出来る。また、易剥離領域50と接着領域60との境界線に近接した易剥離領域50上の表面材30に含まれる紙層31には、剥離用ハーフカット71が施されている。尚、剥離用ハーフカットの代わりに、表面材に含まれる紙層に、剥離用ミシン目を形成してもよい。
【0025】
さらに、剥離用ハーフカット71を挟んで開封用タブ61の反対側の易剥離領域50の一部にはシール基材40を貫通し表面材30の下部に達する湯切り孔用の環状のハーフカット72が複数設けられ、蓋材10のシール基材側から、湯切り孔用ハーフカット72が形成されているとともに、その周縁部に剥離用タブ51が設けられている。剥離用タブ51は、剥離用ハーフカット71に近接する位置に設けられている。剥離用タブ51と蓋材10との接続部分には、シール基材を切断する剥離開始用ハーフカット73が形成されている。蓋材10の易剥離領域50のシール基材40を覆う表面材30の一部を剥離することによって、シール基材40に複数の湯切り孔70を出現させることができる。
【0026】
次に、本発明の蓋材を湯切り蓋材に適用した層構成例を、図3を参照して説明する。蓋材10の表面材30は、被着容器20の外方となる側から内方に向かって、印刷層32/紙層31/易剥離層33の層構成を有しており、易剥離層33は目止めニス層34/剥離ニス層35の層構成からなる。また、蓋材10のシール基材40は、表面材30に接する側から、被着容器20の内方に向かって、ポリエチレン44/アルミ箔43/樹脂層42/シーラント層41の層構成を有しており、樹脂層42は環状オレフィン系重合体を含む。
【0027】
紙層を構成する紙としては、坪量79.4g/m〜127.9g/m程度の片面アート紙や片面コート紙、上質紙等が使用される。また紙の表面には通常、最終商品として必要な印刷や、保護ニス等が施される。
【0028】
易剥離層を構成する剥離ニス層には、例えば、ワックス系、ポリアミド系、シリコン系、アクリル系等の樹脂系のものが好適に用いられる。また、剥離ニスの紙への含浸を防止する為に、剥離ニス層と紙層との間に目止めニス層が設けられている。目止めニスは、例えば、硝化綿系、ウレタン系、ワックス系、ポリアミド系、シリコン系、アクリル系の樹脂系のものが好適に用いられる。
【0029】
表面材とシール基材とを接着・積層するためのポリオレフィン系の接着性樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリオレフィン
系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂を用いることが可能である。加工面、コスト面で好適にはLDPEが汎用的に用いられる。
【0030】
シール基材の積層構成中にアルミ箔を用いる場合、ガスバリア性、遮光性を付与できる。特に軟質のアルミニウム箔を用いた場合には、湯切り孔部分の表面材を剥離する際、湯切り孔ハーフカット内部のシール基材に表面材から分離される方向に発生する弾性反発力を低減する。また、注湯口を開口する際に必要な開口保持性を付与する他、一旦開封して湯を注いだ後に、開封部分を再封止する時のデッドフォールド性が良好となる。この場合、アルミニウム箔の厚さとしては、5μm未満では加工上取り扱いが困難であり、またデッドフォールド性が劣る。また、15μmを超える厚さであると、腰がありすぎて好ましくない上、経済的にも劣るという理由により、アルミ箔の厚みは5μm以上15μm以下が好適である。
【0031】
蓋材と被着容器の周縁部を溶着密封するためのシーラント層としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。シーラント層としては、上記材料の単層でもよいが、高価なイージーピールシーラントを用いる場合などには、シーラント層を薄くするために接着性樹脂との共押出しとしてもよい。
【0032】
次に、シール基材の積層構成中で樹脂層となる環状オレフィン系重合体混合樹脂層について説明する。環状オレフィン系重合体には、α−オレフィンとの付加重合体であるシクロオレフィンコポリマー(COC)と環状オレフィンの開環重合体であるシクロオレフィンポリマー((COP)がある。これらの環状オレフィン系重合体は、通常のポリエチレン(PE)ヤポリプロピレン(PP)に代表される結晶性ポリオレフィンとは異なり、環状オレフィン構造を有する非晶質の樹脂である。ガラス転移点Tgが100℃以上と高いものが多く、Tgが100℃以下のものでも耐熱性が良く、引張強度や曲げ強度などの物性強度も強い。例えば湯切り蓋材に適用した場合、お湯で蒸された状態での高温時での強度に優れており、シール基材の積層構成中で樹脂層に加えられることで、破れ防止機能が発揮される。何より、熱溶融押出し加工による製膜・積層が可能であることから、延伸フィルム基材を別工程でラミネートする工程を不要とし、ポリオレフィン接着層やシーラント層との共押出し加工を可能としている。樹脂単体の製膜適性はCOPが良好な一方で、材料コストが高く、また、材料硬度としてはCOCの方が優良である。
【0033】
樹脂層としての適用は、COCは単体での製膜適性は劣るが、特にLLDPEとの相溶性が良いことを利用し、LLDPEとの混合押出しにより、製膜適性を大幅に改善することができる。よって基材強度の改善性能、コスト面、製膜適性面より、環状オレフィン系重合体混合樹脂層については、COCとLLDPEの混合樹脂であることが望ましい。また樹脂混合比率については、特に限定はしないが、COCを20質量%以上添加すると腰強度の改善が期待される。COCを80質量%以上添加するとCOC単体樹脂とほぼ同等の流れ特性となり、またコストも嵩むことから、腰強度の改善と製膜適性を両立する為には、COCの混合比率については20質量%以上80質量%未満が好適である。
【0034】
なお、本実施形態例ではアルミ箔層を含む構成としているが、環状オレフィン系重合体混合樹脂層の腰強度の硬さを利用して、アルミレス構成におけるデッドホールド性改善効果を付与することができる。
【0035】
以上説明した積層構成の蓋材で、被着容器の周縁部を公知の方法で溶着密封する。被着容器の本体としては、発泡ポリスチレン樹脂(PS)成形容器、ポリプロピレン樹脂(PP)成形容器、あるいは、ポリスチレン樹脂(PS)シートとポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)シートとをラミネートした積層材料により成形されている成形容器があり、イージーピール可能なシーラント層の材質を選定する。本発明の蓋材においては、被着容器の周縁部のシール部分における被着容器と蓋材との剥離強度(=シール強度)は5N/15mm以上、15N/15mm以下とすることが望ましい。5N/15mm未満では、内容物を入れた状態での包装・物流条件で剥離が生じる恐れがある。また、15N/15mmを超える場合、開封が困難である。また、上記した剥離強度(=シール強度)に対応して、シール基材の破断強度は20N/15mm以上であることが必要である。上記した強度条件を満たすことで、湯切り後に蓋材全体を被着容器から剥がして除去する際に、湯切孔が形成された易剥離領域部分のシール基材を含めて、シール基材が表面材と一体となって除去される。これにより、紙、アルミ箔等の層が破断もしくは表層破壊し、被着容器に残存する可能性を低くすることが出来る。ここで、剥離強度はJIS Z1707の「7.5ヒートシール強さ」に準拠した方法で測定される値で、試験速度は毎分500mm±50mm、剥離はT型剥離である。また、破断強度はJIS K7127に準拠した方法で測定される値で、試験速度は毎分500mm±50mmである。
【0036】
以下に、本発明の蓋材の具体的実施例及び比較例について説明する。
【0037】
<実施例1>
坪量104.7/mの片面アート紙の裏面に、グラビア印刷機を利用して、ポーシェル版40μ版にて目止めコート剤を、ヘリオ版70Lにて離型ワニス剤を、図1に示す一面蓋材が多面付けされた形状で、易剥離可能領域のそれぞれに各コート剤を塗布・積層した。片面アート紙の表面には通常の絵柄インキの印刷を行って表面材を構成するグラビア印刷物を得た。次に、上記で得られたグラビア印刷物の裏面に、溶融した低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を膜厚20μmで押し出して、アルミ箔7μmと貼り合わせ加工し、積層物を得た。更に上記積層物のアルミ箔面にAC剤を塗工し、環状ポリオレフィン系重合体とLLDPEの混合層を15μm、シーラント樹脂層10μmを押し出した積層体を得て、実施例1の蓋材を得た。
【0038】
<実施例2〜7、比較例1〜4>
実施例1と同様の表面材を用いて、表1に示した積層構成で、環状オレフィン系重合体を含む樹脂層を有した実施例2〜7、及びそれを有しない比較例1〜4のシール基材構成を持った積層体を得て、それぞれの蓋材を作成した。実施例6、7及比較例4はアルミ箔を用いない構成であり、比較例1はPETフィルムを用いた構成である。なお、用いた材料を以下に記す。
片面アート紙:「グラビアアート」(王子製紙社製)104.7g/m
絵柄インキ:「エコカラーF」(東洋インキ製造社製)
目止め剤:目止めワニス「P1264」(東洋インキ製造社製)
離型剤:剥離ワニス「PB703」(東洋インキ製造社製)
LDPE:「L2340E」(住友化学社製)20μm
AL箔:軟質アルミ(住友アルミ社製)7μm
AC剤:「A3210」(三井化学社製)
COC:「TOPAS 8007F−500」(ポリプラスチック社製)
LLDPE:「カーネル KC570S」(日本ポリエチレン社製)
イージーピール(EP)シーラント樹脂層:「VN503」(三井デュポン社製)10μm
EMAA:「ニュクレル N0908C」(三井デュポン社製)
【0039】
【表1】

上記積層体をイズミ産業社製ロータリーダイカッターを用いて、第1ユニットにてシーラント面から易剥離層までの深さのハーフカットで湯切孔を、第2ユニットにて紙面から易剥離層までの深さのハーフカットで剥離予備線を、更に製品外周縁の抜き加工を行ない、実施例1〜7及び比較例1〜4の蓋材製品を得た。
【0040】
それぞれの蓋材製品を、発泡PS容器に135℃、0.5秒、0.4MPaの条件でシールした後、シール強度を測定した。JIS Z−1707の「7.5ヒートシール強さ」を評価方法として、蓋材および被着容器のシール部を15mm幅の短冊状にサンプリングし、被着容器内側からT字剥離時(つかみの速度:500mm/min.)の最大強度を採用した。その結果、実施例1〜7及び比較例1〜4の何れの蓋材も12N/15mmの値であった。その値を表2に示す。
【0041】
次に、それぞれの蓋材製品の剥離ニス塗工部分において、表面材を剥離して、その下のシーラント層までのシール基材部分の破断強度を測定した。JIS K−7127を評価手法として、下材を15mm幅の短冊状にサンプリングし、引張破断時(つかみの速度:500mm/min.)の最大強度を採用した。その値を、表2に示す。
【0042】
[剥離適性評価]
上記それぞれの蓋材製品を、内容物入りの被着容器(発泡PSカップ)に135℃×0.5MPa×0.55secでシールし、充填サンプルを得た。先ず、開封用タブを捲り、蓋材を基材ごと被着容器から剥がして、部分的に開封する。そして標線まで注湯した後、蓋材の開いた部分を押さえて開封口から熱が逃げるのを抑制し、所定時間内容物を熱湯処理する。次に、剥離用タブから剥離予備線に沿って開口領域の表面材を剥離することにより湯切り孔を露出させ、湯切り孔から排湯した後、蓋材全体を被着容器から除去する評価を行った。その結果を表2に示す。なお、表2には、樹脂層の製膜適性とデッドフォールド(DF)性もあわせて記載した。
剥離適性は剥離後の被着容器外観として、下記状態を目視判定した。
○:被着容器周縁部に紙破れ、アルミ破れ等の不具合が発生せず剥離可能
×:紙破れ、アルミ破れ等の剥離不適性発生
【0043】
【表2】

以上、説明したように、本発明の蓋材は、シール基材の積層構成中に環状オレフィン系重合体を含む樹脂層を有することで、シール基材強度が改善され、不用意な剥離を生じることなく、蓋材を被着容器から剥離除去でき、取り扱い性に優れていることがわかった。
【符号の説明】
【0044】
10・・蓋材 20・・被着容器 30・・表面材 31・・紙層
32・・印刷層 33・・易剥離層 34・・目止めニス層 35・・剥離ニス層
40・・シール基材 41・・シーラント層 42・・樹脂層 43・・アルミ箔
44・・ポリエチレン 50・・易剥離領域 51・・剥離用タブ
60・・接着領域 61・・開封用タブ 62・・剥離用ハーフカット
70・・湯切孔 71・・剥離用ハーフカット 72・・湯切孔用ハーフカット 73・・剥離開始用ハーフカット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着容器の周縁部を溶着密封する積層シート状の蓋材であって、少なくとも紙層を含む表面材と、少なくとも最内層がシーラント層からなる積層構成であるシール基材とを有する蓋材において、前記シール基材の積層構成中に、環状オレフィン系重合体を含む樹脂層を有することを特徴とする蓋材。
【請求項2】
前記被着容器の周縁部のシール部分における容器と蓋材との剥離強度(=シール強度)が5N/15mm以上、15N/15mm以下で、且つ、前記シール基材の破断強度が20N/15mm以上であることを特徴とする請求項1に記載する蓋材。
ここで、剥離強度はJIS Z1707の「7.5ヒートシール強さ」に準拠した方法で測定される値で、試験速度は毎分500mm±50mm、剥離はT型剥離である。また、破断強度はJIS K7127に準拠した方法で測定される値で、試験速度は毎分500mm±50mmである。
【請求項3】
前記表面材と前記シール基材とが、所定の形状領域で易剥離層を介して剥離可能に積層された易剥離領域と接着領域とに区画されて互いに積層接着され、前記易剥離領域の前記シール基材の一部に前記シール基材を貫通し前記表面材の下部に達する環状のハーフカットが複数設けられ、前記シール基材の前記所定の形状領域を覆う前記表面材の一部を剥離することによって、前記シール基材に複数の湯切り孔を出現させることを特徴とする請求項1または2に記載する蓋材。
【請求項4】
前記シール基材は、前記表面材に接する側から順に、ポリエチレン/アルミ箔/樹脂層/シーラント層の層構成を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載する蓋材。
【請求項5】
前記シール基材を構成する前記樹脂層は、シクロオレフィンコポリマー(COC)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)との混合樹脂層からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載する蓋材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−23238(P2013−23238A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157735(P2011−157735)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】