説明

薄い固体酸化物電池

本発明は、薄く、原則として支持されていない固体酸化物電池、及び当該固体酸化物電池の製造方法に関する。この固体酸化物電池は、少なくとも多孔質アノード層、電解質層及び多孔質カソード層を備え、アノード層及びカソード層が、電解質材料、少なくとも1種の金属及び触媒材料を含み、この薄い可逆電池の全厚が約150μm以下である。本発明はまた、薄く、原則として支持されていない固体酸化物電池、及び当該固体酸化物電池の製造方法に関する。この固体酸化物電池は、少なくとも多孔質アノード層、電解質層及び多孔質カソード層を備え、アノード層及びカソード層が電解質材料及び触媒材料を含み、電解質材料がドープジルコニアであり、この薄い可逆電池の全厚が約150μm以下である。本発明はさらに、薄い分離膜を提供する。この分離膜は、少なくとも多孔質アノード層と、混合導電性材料を含む膜層と、多孔質カソード層とを備え、アノード層及びカソード層が、混合導電性材料及び触媒材料を含み、この薄い分離膜の全厚が約1050μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は薄く、原則的には支持されていない固体酸化物電池(SOC)及び当該固体酸化物電池を作製するための方法に関する。本発明はさらに、とりわけ酸素若しくは合成ガスの生成用の酸素分離膜として使用することができる、又は高純度水素の生成用の水素分離膜として使用することができる薄い分離膜、並びに当該分離膜を作製するための方法に関する。
【0002】
[背景技術]
固体酸化物電池(SOC)には一般に、固体酸化物燃料電池(SOFC)、固体酸化物電解電池(SOEC)又は膜など、異なる用途向けに設計された電池が含まれる。それら電池の共通の基本構造により、たとえば、SOFC用途並びにSOEC用途においては同じ電池を使用することができる。SOFCにおいては、燃料を電池に供給し電力に変換する一方、SOECにおいては、電力を印加して燃料を生成する。これらの電池は「可逆的」と称される。
【0003】
固体酸化物燃料電池(SOFC)は当技術分野において周知であり、様々な設計で提供される。典型的な構成は、2つの電極間に挟まれている電解質層を備える。動作中、通常約500℃〜約1100℃の温度で、一方の電極は酸素又は空気に接触し、他方の電極は燃料ガスに接触している。
【0004】
先行技術において提案されている最も一般的な製造プロセスは、単電池の製造を含む。一般的には、支持体を設け、その上にアノード層を形成し、その後電解質層を塗布する。そのように形成した半電池を乾燥させ、その後場合によっては還元性雰囲気中で、焼結する。最後に、完全な電池を得るために、その上にカソード層を形成する。或いは、電極層の一方又は電解質層を、厚さ約300μm以上の支持層として使用することができる。
【0005】
この手法では、得られた電池の機械的安定性を提供するために比較的厚い支持層が必要となり、それにより単電池の全厚が増大する。さらに、高い電圧及び電力を得るために、多くの電池が直列に積み重ねられる。しかしながら、個々の電池の厚さが大きいと電池の性能が制限されることになり、また電池スタックの電力/容積又は電力/重量が減少することになる。さらに、厚さが大きいとより多くの材料が使用され、したがってスタックのコスト全体も増大する。
【0006】
米国特許出願公開第2004/00115503号明細書は、多孔質導電性支持層と、前もって作製した電気化学デバイス層と、前記支持層と前記電気化学デバイス層との間の接着層とを備える電気化学デバイスアセンブリを開示している。導電性支持層は、50〜750μmの厚さを有する。
【0007】
米国特許出願公開第2002/0048699号明細書は、多孔質領域及び多孔質領域と境を接する非多孔質領域を含むフェライト系ステンレス鋼支持基板と、基板の多孔質領域の一方の表面の下に位置し、基板の多孔質領域のまわりの基板の非多孔質領域に密閉して取り付けられているフェライト系ステンレス鋼バイポーラ板と、基板の多孔質領域の他方の表面の上に位置する第1の電極層と、第1の電極層の上に位置する電解質層と、電解質層の上に位置する第2の電極層とを備えるSOFCに関する。基板は、好ましくは50〜250μmの厚さを有する。
【0008】
米国特許出願公開第2004/0166380号明細書は、固体酸化物燃料電池において使用するための多孔質電極を製造する方法に関する。電解質材料の粉末から電極を形成し、テープ成形して2層のグリーンテープを形成する。前記層の一方は後の電極層となり、他方の層は電解質層となる。その後、得られたグリーンテープを焼結して、第1の層の表面近くの電解質材料の多孔質マトリックスと、第2の層からの電解質材料の緻密層とを形成する。最終的な電極は、多孔質部分に電子伝導性材料を含浸させることによって形成される。
【0009】
米国特許第5,273,837号明細書は、チャネル構造(channelled structure)が形成されるように組み合わせた平坦な波形セラミックシートを備える耐熱衝撃性の燃料電池設計に関する。これらのシートは、薄い可撓性セラミックとして設けられる。前記可撓性の、予備焼結したセラミックシートは、電解質又は電解質下部構造として使用され、高強度であるが約45μmを超えないごくわずかな厚さの自立型(free−standing)シートとして製造することができる。電極層と組み合わせても、前記下部構造の厚さは150μmを超えない。
【0010】
しかしながら、代替のエネルギー変換器としての固体酸化物燃料電池の重要性の高まりを考慮すると、これまで先行技術によって提供された電池と比較して性能が改善されたSOFCが望まれる。
【0011】
上述の固体酸化物燃料電池設計と同様に、分離膜が電極に挟まれた薄い膜層を備える。
【0012】
このような分離膜を使用して、たとえば、COとHとの混合物である合成ガスを生成することができる。空気及びメタンをそれぞれカソード及びアノードで供給し、膜の部分酸化により合成ガスを得る。高純度水素の生成のための水素分離に分離膜を使用することもできる。この場合、膜材料はプロトン伝導性でなければならない。
【0013】
通常、厚さが約300μm以上である支持層を使用して膜を支持し、所要の強度を提供する。或いは、対応する厚さを有する電極層の一方を支持体として使用することもできる。たとえば、金属はセラミック層よりも機械的に頑強であるため、金属電極が電極材料として提案されている。
【0014】
しかしながら、これまで先行技術によって提供された膜と比較して性能が改善された薄く、原則として支持されていないセラミック分離膜が望まれている。
【0015】
国際公開第2006/082057号パンフレットは、可逆固体酸化物燃料電池を製造する方法に関する。この方法は、1)金属支持層を設けるステップと、2)金属支持体層上にカソード前駆体層を形成するステップと、3)カソード前駆体層上に電解質層を形成するステップと、4)得られた多層構造を焼結するステップと、5)カソード層を形成するためにカソード前駆体層を含浸するステップと、6)電解質層の上にアノード層を形成するステップとを含む。
【0016】
国際公開第2005/122300号パンフレットは、実質的に純粋な電子伝導性酸化物となる金属支持体と、ドープセリア、ScYSZ、Ni−Fe合金で構成される活性アノード層と、酸素イオン伝導体に基づく共ドープしたジルコニアで構成される電解質層と、活性カソード層と、単相LSMのカソード電流コレクタへの遷移層としてのLSMとフェライトとの混合物の層とを備えるSOFC電池に関する。
【0017】
米国特許出願公開第2006/025718号明細書は、コバルト及びニッケルで構成される金属粒子と、固体酸化物で構成される電解質粒子とを含むサーメットを含む燃料電池電極材料を開示している。前記金属粒子は20〜90mol%のコバルト及び残分のニッケルを、CoO及びNiOに換算してそれぞれ含む。
【0018】
米国特許第6,017,647号明細書は、緻密な電解質膜と接触している多孔質複合電極を有する、固体電気化学デバイス向けの酸素電極/電解質複合構造を開示している。
【0019】
英国特許出願公開第1000576号明細書は、互いに反対側に配置されている一対の表面を提示する多孔質焼結電極材料の本体を備える、燃料電池用のガス電極に関する。この電極材料は電気化学的に活性で、前記表面間の前記本体内で中央に配置されているガスチャネルのネットワークで、前記中央のガスチャネルを通して前記活性表面と一体で、また前記活性表面と接続している多孔質焼結材料の複数のブリッジであり、ガスチャネルは、多孔質焼結材料の細孔の横断面積よりも実質的に大きい横断面積を有し、活性表面間の電極全体に実質的に均等に分布している。
【0020】
米国特許第5273837号明細書は、チャネル構造が形成されるように組み合わせた平坦な波形セラミックシートを備える耐熱衝撃性の燃料電池設計を開示している。これらのシートは、薄い可撓性セラミックとして設けられ、燃料電池電極及び/又はそこに結合している電流伝導体と共に可撓性セラミックを組み込んだコンプライアント(compliant)電解質下部構造の構成部品として使用する場合には特に効果的である。
【0021】
[概要]
比較的厚い支持層を有する先行技術のSOFC及び分離膜の不利点に鑑み、本発明の目的は、薄く、可逆的で、原則として支持されていない固体酸化物電池、特に固体酸化物燃料電池、及び当該固体酸化物電池の製造方法を提供すること、さらに、薄く、原則として支持されていない分離膜、並びに当該分離膜の製造方法を提供することである。
【0022】
前記目的は、薄い固体酸化物電池(SOFC/SOEC)によって実現される。この薄い固体酸化物電池は、少なくとも多孔質アノード層、電解質層及び多孔質カソード層を備え、アノード層及びカソード層が、電解質材料、少なくとも1種の金属及び触媒材料を含み、この薄い可逆電池の全厚が約150μm以下である。
【0023】
前記目的はさらに、薄い固体酸化物電池によって実現される。この薄い固体酸化物電池は、少なくとも多孔質アノード層、電解質層及び多孔質カソード層を備え、アノード層及びカソード層が電解質材料及び触媒材料を含み、電解質材料がドープセリアであり、この薄い可逆電池の全厚が約150μm以下である。
【0024】
前記目的は、上記薄い固体酸化物電池の製造方法によっても実現される、この方法は、
第1の電極層を設けるステップと、
前記第1の電極層の上に電解質層を塗布するステップと、
前記電解質層の上に第2の電極層を塗布するステップと、
得られた構造を焼結するステップと、
第1及び第2の電極層に触媒材料又はその前駆体を含浸するステップとを含む。
【0025】
前記目的はさらに、薄い分離膜によって実現される。この薄い分離膜は、少なくとも多孔質アノード層と、混合導電性材料を含む膜層と、多孔質カソード層とを備え、アノード層及びカソード層が、混合導電性材料及び触媒材料を含み、この薄い分離膜の全厚が約150μm以下である。
【0026】
最後に、前記目的は、上記薄い分離膜の製造方法によって実現される。この方法は、
第1の電極層を設けるステップと、
前記第1の電極層の上に膜層を塗布するステップと、
前記電極層の上に第2の電極層を塗布するステップと、
得られた構造を焼結するステップと、
第1及び第2の電極層に触媒材料又はその前駆体を含浸するステップとを含む。
【0027】
好ましい諸実施形態は、従属請求項に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】電解質層1と、2つの電極層2及び3とを備える、本発明による固体酸化物電池を示す図である。
【図2】電解質層4と、電極層5〜8とを備える、本発明による固体酸化物電池を示す図である。
【図3】2つの電解質層9及び10と、2つの電極層11及び12とを備える、本発明による固体酸化物電池を示す図である。
【図4】電解質層13と、2つの電極層14及び15とを備える、本発明によるパターン化固体酸化物電池を示す図である。
【0029】
[発明の詳細な説明]
本発明は、薄く、原則として支持されていない固体酸化物電池を対象とする。この固体酸化物電池は、少なくとも多孔質アノード層、電解質層及び多孔質カソード層を備え、アノード層及びカソード層が、電解質材料、少なくとも1種の金属及び触媒材料を含み、この薄い可逆電池の全厚が約150μm以下である。
【0030】
本発明はさらに、薄く、原則として支持されていない固体酸化物電池を対象とする。この固体酸化物電池は、少なくとも多孔質アノード層、電解質層及び多孔質カソード層を備え、アノード層及びカソード層が電解質材料及び触媒材料を含み、電解質材料がドープセリアであり、この薄い可逆電池の全厚が約150μm以下である。
【0031】
固体酸化物電池は、好ましくは固体酸化物燃料電池(SOFC)である。固体酸化物電解電池(SOEC)である固体酸化物電池も好ましい。さらに好ましい一実施形態においては、この固体酸化物電池は「可逆的」、すなわち、SOFC用途においても、SOEC用途においても利用することができる。したがって、同じ基本的な電池設計により、広範囲の用途が可能となる。
【0032】
さらに、本発明のSOC及び膜は原則として「支持されていない」。追加の支持層が不要で、追加の支持層に関連する上で概要を示した不利点を、効果的に回避することができる。さらに、有利には電極層のいずれも支持層として機能しない、すなわち、支持体として機能するために層厚さを増大させる必要がないため、SOC又は膜の全厚がかなりの程度まで減少する。このことは、やはり追加の支持層を省略するが、代わりに電池を支持するために電極層の1つの厚さを増大させることが依然として必要となる先行技術の設計とは際立って対照的である。本発明では、電解質層と、同じ材料を用いて構築された2つの電極内の骨格構造とを備えるサンドイッチ三層(又は多層)により十分な強度が実現される。
【0033】
全出力を増大させるために、電池を組み合わせてスタックを形成することができる。したがって、本発明は、直列に接続した複数の電池から形成したこのようなスタックも対象とする。
【0034】
好ましい一実施形態においては、SOCの電解質層が約2〜約20μm、より好ましくは約6〜約18μmの厚さを有する。
【0035】
さらに、カソード層及び/又はアノード層は約65μm以下、より好ましくは約45μm以下、さらにより好ましくは約40μm以下の厚さを有する。
【0036】
この薄い固体酸化物電池の全厚は約150μm以下、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下である。100μm以下の全厚が最も好ましい。
【0037】
電極前駆体層は共に多孔質で、同じ組成を有する。これら2つの多孔質電極前駆体層に適切な材料を含浸することによって、触媒活性(及び場合によっては電子伝導性の増大)を実現する。含浸前、電池は対称性を有する。これにより、使用時の温度サイクル中に電解質層に及ぼされる機械的力が確実に対称的となる。さらに、電極層の熱膨張が間に挟まれている電解質層の熱膨張よりも大きいため、電池の冷却時に電解質層は圧縮される。有利なことに、共に電池の機械的強度の向上をもたらす。
【0038】
図1からわかるように、電極層を単一層2及び3として形成することができる。一方、図2からわかるように、これら電極層を、それぞれの側に同数の層を備える多層構造として形成することもできる。図2に示すように、各電極が2つの層5、7及び6、8を備える。もちろん、必要に応じて各電極が3つ以上の層を有することもできる。
【0039】
一実施形態においては、アノード層及びカソード層が共に、電解質材料、少なくとも1種の金属及び触媒材料を含む。少なくとも1種の金属が、好ましくはNi、FeCrMx合金及びNiCrMx合金からなる群から選択され、Mxが、Ni、Ti、Ce、Mn、Mo、W、Co、La、Y、Zr、Al及びこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、少なくとも1種の金属がFeCrMx合金である。
【0040】
その結果、最終的に得られた電極構造は、3つの独立した浸透相(percolating phase)、すなわち、電解質材料、金属及び多孔性を備える。
【0041】
さらに、電解質材料は、好ましくはドープジルコニア、ドープセリア、没食子酸塩及びプロトン伝導性電解質からなる群から選択される。
【0042】
電極機能に必要となる触媒粒子は、好ましくは、使用中、又は制御された雰囲気における特定加熱サイクル中の、含浸によって添加する前駆体と、金属相から溶離する元素又は骨格構造内の電解質材料との間の化学反応において形成することもできる。好ましい一実施形態においては、金属から触媒粒子にMn、Ni、又はCoを供給する。
【0043】
電極層は、有利には電解質材料、少なくとも1種の金属及び触媒材料を含む。したがって、前記電解質材料を含む電極層はイオン伝導性を提供し、同時に電解質層とうまく接着する。一方、金属は電子伝導性を提供し、電極層の熱膨張係数を増大させる。さらに、金属は焼結電極層の一部であるため、最終的な電池における触媒材料に浸透する必要がない。
【0044】
さらに、有利には、触媒材料を、含浸ステップ中に非常に微細な粒子として形成することができる。というのは、金属が電極層に浸透電子伝導性(percolating electronic conductivity)を提供するからである。したがって、触媒粒子の不利な粗大化(coarsening)を効率的に低減又は回避することができる。加えて、より少量の触媒しか必要とせず、製造コストがさらに削減される。
【0045】
別の実施形態においては、薄い固体酸化物電池の電解質材料が具体的にはドープセリアを含む。この場合、アノード層及びカソード層が少なくとも1種の金属を含むことが必須ではなくなる。もちろん、適用目的によっては、必要に応じて金属を添加することができる。
【0046】
上述の好ましい諸実施形態は、もちろん電解質材料としてドープセリアを含む特定の実施形態にも当てはまるが、アノード層及びカソード層が少なくとも1種の金属を含むことが必須ではなくなる。
【0047】
上述の薄い固体酸化物電池、特に薄い可逆固体酸化物燃料電池は、下記方法によって得られる。この方法は、
第1の電極層を設けるステップと、
前記第1の電極層の上に電解質層を塗布するステップと、
前記電解質層の上に第2の電極層を塗布するステップと、
得られた構造を焼結するステップと、
第1及び第2の電極層に触媒材料又はその前駆体を含浸するステップとを含む。
【0048】
好ましくは、第1及び第2の電極層と前記電解質層とを独立に、たとえば、テープ成形によって作製し、その後積層して、すなわち、圧延によって積層して、薄い固体酸化物燃料電池を形成する。
【0049】
電極層及び電解質層をテープ成形するステップを、互いの上に直接それぞれの層を共成形する(co−casting)ことによって行うことも好ましい。これは、「ウエットオンドライ(wet on dry)」成形及び「ウエットオンウエット(wet on wet)」成形を含めたテープ成形によって行うことができる。ウエットオンウエットテープ成形を使用することがさらに好ましい。
【0050】
これにより、2つの層の互いへの優れた接着が確実となる。さらに、ウエットオンウエット成形では乾燥ステップを省略することができ、したがってプロセスの時間効率がより良く、したがってコスト効率がより高くなる。有利には、共成形により製造コストが大きく削減される。
【0051】
別の好ましい実施形態においては、図3において層9及び10が示すように、薄い可逆固体酸化物燃料電池の電解質層が、少なくとも2つの層を備える多層構造である。前記多層構造の全厚は、上述のとおりやはり約2〜約20μm、より好ましくは約6〜約18μmである。したがって、電解質層は、たとえば、それぞれ厚さが約5μmである2つの層から形成することができる。
【0052】
さらに好ましい一実施形態においては、電極層が、図2において電極層5、7及び6、8が示すように、それぞれ約65μm以下、より好ましくは約40μm以下の同じ全厚を有する少なくとも2つの層を備える多層構造であってもよい。これら少なくとも2つの層が異なる熱膨張係数(TEC)を有する多層構造がより好ましい。これは、たとえば、それぞれの層中の異なる量の金属によって実現することができる。
【0053】
好ましくは、外側の電極層7、8のTECが、電解質層4に接触している電極層5、6のTECよりも小さい。電解質層4が最も小さいTECを有する。
【0054】
より好ましい一実施形態においては、カソード層及びアノード層が、図2に示すようにそれぞれ2つの異なる層を有し、電解質層に直接接触しているそれぞれの層が同一の熱膨張係数を有し、この熱膨張係数の値は、電解質層の熱膨張係数よりも大きく、また電極それぞれの第2の層の熱膨張係数よりも大きい。さらに、それぞれの第2の層の熱膨張係数もまた同一である。
【0055】
カソード層及びアノード層がそれぞれ3層以上の層を備える場合、さらなる各層は、電解質層により近い側の層の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数を有する一方で、電池構造全体の対称性を維持する。
【0056】
最終的な電池構造は対称構造であるため、電解質層が上述のように少なくとも2つの電極層によって挟まれていると、電解質層に接触している2つの層よりも小さいTECを有するそれぞれの層が冷却中に圧縮されることになる。これは、より内側の層と比較して熱膨張係数がより小さい電解質のそれぞれの側の最外層によるものである。その結果、電池が有利なことに安定性の向上を示し、電池寿命がより長くなる。
【0057】
さらに好ましい一実施形態においては、パターン化構造を得るために、作製した電池構造を焼結前に型取りする。パターン化構造としては、リボン構造又は図4に示すようなエッグトレー構造が挙げられる。このパターンは、有利には後の使用時に電池内のガスチャネルとして作用する。前記パターンは、電池全体の剛性及びハンドリング強度に寄与する。電池の型取りによりスタックの電力/容積性能がさらに向上し、このことは一部の用途において非常に有利である。
【0058】
さらに、この場合、直列に積層されている個々の電池を分離するそれぞれの相互接続部は、平坦な箔でよく、前記ガスチャネルを備える構造を有する必要はない。これにより、相互接続部のコストが削減され、製造方法全体のコスト効果がより大きくなる。
【0059】
或いは、本発明の方法においては、これらの層の共成形と積層との組合せを利用することができる。たとえば、上述の多層電極を使用する場合、それぞれの電極多層構造を共成形し、その後電解質層に積層することができ、好ましい。もちろん、それぞれの層の積層と共成形との他の組合せが可能である。たとえば、多層電解質を使用する場合、電解質層を共成形し、その後電極層に積層することができる。
【0060】
この多層構造の焼結ステップの後、電極層に触媒又はその前駆体を含浸する。これは、第1の電極層をマスキングし、マスキングされていない第2の電極層に含浸し、その後第1の電極層をデマスキングし、第2の、現在含浸済みの電極層をマスキングし、次いで第2の電極層に含浸し、最後に第1の電極層をデマスキングすることによって行うことができる。
【0061】
有利には、この触媒材料を、含浸ステップ中に非常に微細な粒子として形成することができる。というのは、金属が電子伝導性を提供するからである。したがって、そうでなければ電池を焼結する際に生じる触媒粒子の不利な粗大化を、効率的に低減又は回避することができる。加えて、より少量の触媒しか必要とせず、電池の製造コストがさらに削減される。
【0062】
また、電流収集材料の含浸は少しか必要ではなく、性能全体の向上にも寄与する。
【0063】
好ましくは、カソード層として機能することになる第1又は第2の電極層の含浸用の触媒又はその前駆体が、水マンガン鉱(manganites)、フェライト、輝コバルト鉱(cobaltites)及びニッケレート(nickelates)或いはこれらの混合物からなる群から選択される。例として、ランタンストロンチウムマンガナイト、ランタニドストロンチウム鉄コバルト酸化物、(Gd1−xCa)Fe1−yCo、(La1−xSr)MnO3−δ)、(Ln1−xSr)MnO3−δ、(La1−xSr)Fe1−yCo3−δ、(Ln1−xSr)Fe1−yCo3−δ、(Y1−xCa)Fe1−yCo3−δ、(Gd1−xSr)Fe1−yCo3−δ、(Gd1−xSr)Fe1−yCo、(Gd1−xCa)Fe1−yCo3−δ、(Y,Ca)Fe1−yCo3−δ、(Y1−xCa)Fe1−yCo又はこれらの混合物が挙げられる。Ln=ランタニドである。
【0064】
上記式において、xは好ましくは約0〜1、より好ましくは約0.1〜0.5、最も好ましくは0.2〜0.3である。yは好ましくは約0〜1、より好ましくは約0.1〜0.5、最も好ましくは0.2〜0.3である。
【0065】
上述の触媒と共に、ドープジルコニアやドープセリアなどの電解質材料を含浸することもできる。
【0066】
アノード層として機能することになる第1又は第2の電極層の含浸用の触媒又はその前駆体が、Ni、FeNi1−x合金、並びにNiとドープセリア/ジルコニアとの混合物又はCuとCuとドープジルコニア/セリアとの混合物からなる群から選択されることも好ましい。或いは、Ma=Ba、Sr、Ca;Mb=V、Nb、Ta、Mo、W、Th、U;0≦s≦0.5であるMaTi1−xMb3−δ、又はM=T、V、Mn、Nb、Mo、W、Th、UであるLnCr1−x3−δを使用することもできる。xは好ましくは約0〜1、より好ましくは約0.1〜0.5、最も好ましくは0.2〜0.3である。yは好ましくは約0〜1、より好ましくは約0.1〜0.5、最も好ましくは0.2〜0.3である。
【0067】
含浸前の焼結ステップは好ましくは、約900℃〜約1500℃、好ましくは約1000℃〜約1400℃の温度で行う。
【0068】
当業者には周知である孔形成剤(pore former)、焼結助剤、溶媒などの添加物を、必要に応じて層組成物に添加することができる。
【0069】
本発明はまた、薄く、また原則として支持されていない分離膜も対象とする。この分離膜は、少なくとも多孔質アノード層と、混合導電性材料を含む膜層と、多孔質カソード層とを備え、アノード層及びカソード層が、混合導電性材料及び触媒材料を含み、この薄い分離膜の全厚が約150μm以下である。
【0070】
この薄い分離膜は、膜が酸素イオン伝導体として設計されている場合、とりわけ酸素又は合成ガスの生成用の酸素分離膜として使用することができる。或いはこの膜は、代わりにプロトン伝導性材料に基づいている場合、とりわけ、たとえば低温燃料電池における貯蔵又は使用向けの、高純度水素の生成用の水素分離膜として使用することができる。
【0071】
好ましい一実施形態においては、アノード層及びカソード層が少なくとも1種の金属を含む。この少なくとも1種の金属は、SOCについて上で詳細に示した金属と同じである。
【0072】
さらに好ましい一実施形態においては、混合導電性材料がドープセリア、没食子酸塩及びプロトン伝導性電解質からなる群から選択される。ドープセリアである電解質がより好ましい。ドープセリア用の好ましいドーパントはSm又はGdである。
【0073】
膜層及び電極層の混合導電性材料としてドープセリアを含む成分の1つの利点は、セリアの電子伝導性の増大により、前記構造を約550〜約1000℃の温度で高温酸素分離膜として使用することができることである。しかしながら、約550℃未満では、セリアは主にイオン伝導性を示し、したがって代わりに前記成分を前記温度で可逆SOFCとして使用することができる。
【0074】
別の好ましい実施形態においては、膜層が、混合導電性材料としてドープセリアを含む。より好ましい一実施形態においては、膜層がドープセリアを含む場合に、アノード層及びカソード層が少なくとも1種の金属を含む。
【0075】
電解質層、電極層及びこれらの層の材料についての上述の好ましい諸実施形態はすべて、分離膜の膜層、電極層及びこれら層の材料にも当てはまる。
【0076】
この薄い分離膜は下記方法によって得られる。この方法は、
第1の電極層を設けるステップと、
前記第1の電極層の上に膜層(混合導電性材料の気密層)を塗布するステップと、
前記膜層の上に第2の電極層を塗布するステップと、
得られた構造を焼結するステップと、
第1及び第2の電極層に触媒材料又はその前駆体を含浸するステップとを含む。
【0077】
SOFCの製造方法及びこのSOFCの材料についての上述の好ましい諸実施形態はすべて、薄い分離膜の製造方法にも当てはまる。
【0078】
以下では、本発明を実施例に関してさらに説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0079】
[実施例]
実施例1:薄い固体酸化物電池の作製
第1のステップは、2つの層(層1−電極前駆体層及び層2−電解質層)のテープ成形を含む。テープ成形用の懸濁液を、添加剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)及びEtOH+MEKを用いる粉末のボールミル粉砕によって作製する。粒径の制御後、ダブルドクターブレード装置(double doctor blade set−up)を用いて懸濁液をテープ成形し、その後テープを乾燥させる。
【0080】
層1:懸濁液は、SYSZ(スカンジア及びイットリアドープ安定化ジルコニア)と、FeCr粉末とを、体積比1:1で含む。未加工厚さ(green thickness)は約40μmである。層の焼結気孔率は約50%である。
層2:懸濁液は、焼結助剤としてのAlを有するSYSZ粉末に基づいている。この箔の未加工厚さは約15μmである。層の焼結密度は理論密度の96%より大きい。
【0081】
第2のステップは、上述の箔の積層により、図1に示すように2つの電極前駆体層(2、3)間に挟まれた電解質層(1)を備える層状構造とすることを含む。この積層は、ダブルロール装置における加熱したロールを用いることによって行うが、ワンパスで行われる。
【0082】
第3のステップにおいては、積層テープを方形の片に切断する。これは、ナイフ打抜き(knife punching)によって行われ、12×12〜30×30cmの範囲の焼結領域がもたらされる。
【0083】
第4のステップは焼結を含む。空気流の下で約50℃/hの温度上昇を伴って約500℃まで積層板を加熱する。2時間の均熱の後、炉を排気し、Hを導入する。3時間の均熱時間の後、100℃/hの温度上昇を伴って炉を約1200℃まで加熱し、5時間放置した後、室温まで冷却する。
【0084】
第5のステップはカソードの含浸である。焼結後の電池は片側が閉じている。La、Sr、Co及びFeの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、硝酸塩分解のための中間加熱ステップとともに6回行う。この含浸ペロブスカイト系カソード(impregnated perovskite cathode)の得られた組成は、(La0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O3−δである。
【0085】
第6のステップでは、アノードを含浸する。カソード含浸側は閉じている。Ni、Ce及びGdの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、含浸硝酸塩分解のための浸潤ごとの中間加熱スケジュールとともに5回行う。この含浸アノード部の得られた組成は、40vol%のNi及び60vol%の(Ce0.9Gd0.1)O2−δである(NiOの還元後)。
【0086】
そのように形成した電池は、約90μmの厚さを有し、電池のスタックに組み込む準備ができている。積み重ねる前の熱処理は必要ない。
【0087】
実施例2:薄い固体酸化物電池の作製
ステップ5においてカソードを含浸することの他は、実施例1についての上記概略のように電池を製造する。焼結後の電池は片側が閉じている。(La0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O3−δ及び(Ce0.9Sm0.1)O2−δコロイド懸濁液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、中間加熱ステップとともに6回行う。
【0088】
得られた電池は、約95μmの厚さを有し、電池のスタックに組み込む準備ができている。積み重ねる前の熱処理は必要ない。
【0089】
実施例3:薄い固体酸化物電池の作製
ステップ1〜4については実施例1で説明したように作製を行う。
【0090】
第5のステップはカソードの含浸である。焼結後の電池は、ポリマーシールによって片側が閉じている。(La0.75Sr0.25)MnO3−δのコロイド懸濁液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、浸潤ごとの中間乾燥とともに6回行う。
【0091】
この電池を、実施例1で説明したように完成させる。得られた電池は、約100μmの厚さを有し、電池のスタックに組み込む準備ができている。積み重ねる前の熱処理は必要ない。
【0092】
実施例4:薄い固体酸化物電池の作製
第1のステップは、2つの層(層1−電極前駆体層及び層2−電解質層)のテープ成形を含む。テープ成形用の懸濁液を、添加剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)及びEtOH+MEKを用いる粉末のボールミル粉砕によって作製する。粒径の制御後、ダブルドクターブレード装置を用いて懸濁液をテープ成形し、その後テープを乾燥させる。
【0093】
層1:懸濁液は、孔形成剤としての木炭を用いるFeCr金属粉末を有する(Ce0.9Gd0.1)O2−δに基づいている。未加工厚さは約40μmである。層の焼結気孔率は約50%である。
層2:懸濁液は、(Ce0.9Gd0.1)O2−δ粉末に基づいている。この箔の未加工厚さは約12μmである。層の焼結密度は理論密度の96%より大きい。
【0094】
第2のステップは、上述の箔の積層により、図1に示すように2つの電極前駆体層(2、3)間に挟まれた電解質層(1)を備える層状構造とすることを含む。この積層は、ダブルロール装置における加熱したロールを用いることによって行うが、ワンパスで行われる。
【0095】
第3のステップにおいては、積層テープを方形の片に切断する。これは、ナイフ打抜きによって行われ、12×12〜30×30cmの範囲の焼結領域がもたらされる。
【0096】
第4のステップは焼結を含む。空気流の下、温度約50℃/hの上昇で約500℃まで積層板を加熱する。2時間の均熱の後、炉を排気し、Hを導入する。3時間の均熱時間の後、100℃/hの温度上昇を伴って炉を約1200℃まで加熱し、5時間放置した後、室温まで冷却する。
【0097】
第5のステップはカソードの含浸である。焼結後の電池は片側が閉じている。La、Sr、Co及びFeの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、硝酸塩分解のための中間加熱ステップとともに6回行う。この含浸ペロブスカイト系カソードの得られた組成は、(La0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O3−δである。
【0098】
第6のステップでは、アノードを含浸する。カソード含浸側は閉じている。Ni、Ce及びGdの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、含浸硝酸塩分解のための浸潤ごとの中間加熱スケジュールとともに5回行う。この含浸アノード部の得られた組成は、40vol%のNi及び60vol%の(Ce0.9Gd0.1)O2−δである(NiOの還元後)。
【0099】
そのように形成した電池は、厚さ約100μmで、電池のスタックに組み込む準備ができている。積み重ねる前の熱処理は必要ない。
【0100】
実施例5:非常に薄い電解質層を有する薄い固体酸化物電池の作製
第1のステップは、2つの層(層1−電極前駆体層及び層2−電解質層)のテープ成形を含む。テープ成形用の懸濁液を、添加剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)及びEtOH+MEKを用いる粉末のボールミル粉砕によって作製する。粒径の制御後、ダブルドクターブレード装置を用いて懸濁液をテープ成形し、その後テープを乾燥させる。
【0101】
層1:懸濁液は、SYSZとFeCr粉末とを、体積比1:1で含む。未加工厚さは約40μmである。層の焼結気孔率は約50%である。
層2:懸濁液は、Zr0.78Sc0.20.022−δ粉末に基づいている。この箔の未加工厚さは約5μmである。層の焼結密度は理論密度の96%より大きい。
【0102】
この電池を、実施例1で説明したように完成させる。そのように形成した電池は厚さ約80μmで、電池のスタックに組み込む準備ができている。積み重ねる前の熱処理は必要ない。
【0103】
実施例6:多層電極を有する薄い固体酸化物電池の作製
第1のステップは、3つの層、2つの金属含有電極前駆体層(層1及び2)並びに1つの電解質層(層3)のテープ成形を含む。テープ成形用の懸濁液を、添加剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)及びEtOH+MEKを用いる粉末のボールミル粉砕によって作製する。粒径の制御後、ダブルドクターブレード装置を用いて懸濁液をテープ成形し、その後テープを乾燥させる。これらの層の相対的な熱膨張係数(TEC)は、TEC層3<TEC層1<TEC層2である。
【0104】
層1:懸濁液は、SYSZとFeCr粉末とを、体積比1:1で含む。20vol%の黒鉛を孔形成剤として使用する。未加工厚さは約30μmである。層の焼結気孔率は約50%である。
層2:懸濁液は、体積比1:1.1のSYSZとFeCr粉末とに基づいている。15vol%の黒鉛を孔形成剤として使用する。この箔の未加工厚さは約25μmである。層の焼結気孔率は約50%である。
層3:懸濁液は、SYSZ粉末に基づいている。この箔の未加工厚さは約10μmである。層の焼結密度は理論密度の96%より大きい。
【0105】
第2のステップは、上述の箔の積層により、(層1−層2−層3−層2−層1の順序でそれぞれの側の2つの電極前駆体層間に挟まれた)電解質層を備える層状構造とすることを含む。この層構造は、図2に示す層4〜8に対応する。この積層は、ダブルロール装置における加熱したロールを用いることによって行うが、ワンパスで行われる。
【0106】
第3のステップにおいては、積層テープを方形の片に切断する。これは、面積が約600cmである試料のナイフ打抜きによって行われる。
【0107】
この電池を、実施例1で説明したように完成させる。得られた電池は厚さ約120μmで、電池のスタックに組み込む準備ができている。積み重ねる前の熱処理は必要ない。
【0108】
実施例7:多層電解質を有する薄い固体酸化物電池の作製
第1のステップは、2つの層(層1−電極前駆体層及び層2−電解質層)のテープ成形を含む。テープ成形用の懸濁液を、添加剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)及びEtOH+MEKを用いる粉末のボールミル粉砕によって作製する。粒径の制御後、ダブルドクターブレード装置を用いて懸濁液をテープ成形し、その後テープを乾燥させる。
【0109】
層1:懸濁液は、SYSZとFeCr粉末とを、体積比1:1で含む。未加工厚さは約40μmである。層の焼結気孔率は約50%である。
層2:懸濁液は、SYSZ粉末に基づいている。この箔の未加工厚さは約3μmである(焼結後の厚さは約2μm)。層の焼結密度は理論密度の96%より大きい。
【0110】
第2のステップは、上述の箔の積層により、図3に示すように2つの電極前駆体層(11、12)間に挟まれた2つの電解質層(9、10)を備える層状構造とすることを含む。この積層は、ダブルロール装置における加熱したロールを用いることによって行うが、ワンパスで行われる。
【0111】
第3のステップにおいては、積層テープを方形の片に切断する。これは、ナイフ打抜きによって行われ、12×12〜30×30cmの範囲の焼結領域がもたらされる。
【0112】
第4のステップは焼結を含む。空気流の下、約50℃/hの上昇で約500℃まで積層板を加熱する。2時間の均熱の後、炉を排気し、Hを導入する。3時間の均熱時間の後、100℃/hの温度上昇を伴って炉を約1200℃まで加熱し、5時間放置した後、室温まで冷却する。
【0113】
第5のステップはカソードの含浸である。焼結後の電池は、ゴムシールによって片側が閉じている。Gd、Sr、Co及びFeの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、硝酸塩分解のための中間加熱ステップとともに6回行う。この含浸ペロブスカイト系カソードの得られた組成は、(Gd0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O3−δである。
【0114】
第6のステップでは、アノードを含浸する。カソード含浸側はゴムシールによって閉じている。Cu、Ni、Ce及びGdの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、含浸硝酸塩分解のための浸潤ごとの中間加熱スケジュールとともに6回行う。この含浸アノード部の得られた組成は、4vol%のCu、38vol%のNi及び58vol%の(Ce0.9Gd0.1)O2−δである(NiOの還元後)。
【0115】
得られた電池は厚さ約100μmで、電池のスタックに組み込む準備ができている。積み重ねる前の熱処理は必要ない。
【0116】
実施例8:型取りしたパターン化構造を有する薄い固体酸化物電池の作製
ステップ1及び2は、実施例1で説明したように行う。
【0117】
第3のステップにおいては、積層テープを方形の片に切断する。これは、ナイフ打抜きによって行われ、最大40×40cmの範囲の焼結領域がもたらされる。
【0118】
第4のステップにおいて、図4に示すように、電解質層(13)及び2つの電極前駆体層(14、15)をプレスすることによって、積層構造に型取りしたエッグトレーパターン構造が与えられる。
【0119】
第5のステップは焼結を含む。空気流の下、約50℃/hの上昇で約500℃まで積層板を加熱する。2時間の均熱の後、炉を排気し、Hを導入する。3時間の均熱時間の後、100℃/hの温度上昇を伴って炉を約1200℃まで加熱し、5時間放置した後、室温まで冷却する。
【0120】
第6のステップはカソードの含浸である。焼結後の電池は、ゴムシールによって片側が閉じている。Gd、Sr、Co及びFeの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、硝酸塩分解のための中間加熱ステップとともに6回行う。この含浸ペロブスカイト系カソードの得られた組成は、(Gd0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O3−δである。
【0121】
第7のステップでは、アノードを含浸する。カソード含浸側はゴムシールによって閉じている。Ni、Ce及びGdの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、含浸硝酸塩分解のための浸潤ごとの中間加熱スケジュールとともに7回行う。この含浸アノード部の得られた組成は、50vol%のNi及び50vol%の(Ce0.9Gd0.1)O2−δである(NiOの還元後)。
【0122】
得られた電池は厚さ約95μmで、電池のスタックに組み込む準備ができている。積み重ねる前の熱処理は必要ない。
【0123】
実施例9:セリア−低温SOFC高温酸素分離膜の作製
第1のステップは、2つの層(層1−電極前駆体層及び層2−電解質層)のテープ成形を含む。テープ成形用の懸濁液を、添加剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)及びEtOH+MEKを用いる粉末のボールミル粉砕によって作製する。粒径の制御後、ダブルドクターブレード装置を用いて懸濁液をテープ成形し、その後テープを乾燥させる。
【0124】
層1:懸濁液は、事前に仮焼した(Ce0.9Gd0.1)O2−δと、孔形成剤としての木炭10vol%とを含む。未加工厚さは約40μmである。層の焼結気孔率は約50%である。
層2:懸濁液は、(Ce0.9Gd0.1)O2−δ粉末に基づいている。この箔の未加工厚さは約12μmである。層の焼結密度は理論密度の96%より大きい。
【0125】
ステップ2〜4は、実施例1で説明したように行う。
【0126】
第5のステップはカソードの含浸である。焼結後の電池は、ゴムシールによって片側が閉じている。La、Sr、Co及びFeの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、硝酸塩分解のための中間加熱ステップとともに6回行う。この含浸ペロブスカイト系カソードの得られた組成は、(La0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O3−δである。
【0127】
第6のステップでは、アノードを含浸する。カソード含浸側はゴムシールによって閉じている。NiO及び(Sr0.8La0.2)(Nb0.1Ti0.9)O3−δのコロイド懸濁液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、浸潤ごとの中間乾燥とともに5回行う。NiO:SLNTの体積比は1:10である。
【0128】
得られた膜は厚さ約100μmで、電池のスタックに組み込む準備ができている。積み重ねる前の熱処理は必要ない。
【0129】
実施例10:セリア−低温SOFC高温酸素分離膜の作製
(Ce0.9Gd0.1)O2−δとFeCr粉末との体積1:1の混合物を層1に使用することの他は、実施例9で説明したように膜を得た。
【0130】
実施例11 セリア−低温SOFC高温酸素分離膜の作製
第1のステップは、各層のテープ成形後の中間乾燥による、3層構造(層1及び3−電極前駆体層並びに層2−電解質層)の共成形を含む。テープ成形用の懸濁液を、添加剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)及びEtOH+MEKを用いる粉末のボールミル粉砕によって作製する。粒径の制御後、以下で説明するようにダブルドクターブレード装置を用いて懸濁液をテープ成形し、その後成形物を乾燥させる。
【0131】
懸濁液1、層1及び3:懸濁液は、事前に仮焼した(Ce0.9Gd0.1)O2−δと、孔形成剤としての木炭10vol%とを含む。未加工厚さは約40μmである。層の焼結気孔率は約50%である。
懸濁液2、層2:懸濁液は、焼結助剤としてのCoを有する(Ce0.9Gd0.1)O2−δに基づいている。この箔の未加工厚さは約12μmである。層の焼結密度は理論密度の96%より大きい。
【0132】
ポリマー箔上に層1をテープ成形する。乾燥後、層1上に直接層2をテープ成形し、後に続く乾燥後、層2の層1を備える2層構造上に直接、層3(懸濁液1)をテープ成形する。
【0133】
第2のステップにおいては、共成形テープを方形の片に切断する。これは、ナイフ打抜きによって行われ、200〜600cmの範囲の焼結領域がもたらされる。
【0134】
第3のステップは焼結を含む。空気流の下、約50℃/hの上昇で約500℃まで積層板を加熱する。2時間の均熱の後、100℃/hの温度上昇を伴って炉を約1150℃まで加熱し、5時間放置した後、室温まで冷却する。
【0135】
第5のステップはカソードの含浸である。焼結後の電池は、片側が閉じている。La、Sr及びCoの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、硝酸塩分解のための中間加熱ステップとともに6回行う。この含浸ペロブスカイト系カソードの得られた組成は、(La0.6Sr0.4)CoO3−δである。
【0136】
第6のステップでは、アノードを含浸する。カソード含浸側は閉じている。Ni、Ce及びGdの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、含浸硝酸塩分解のための浸潤ごとの中間加熱スケジュールとともに5回行う。この含浸アノード部の得られた組成は、50vol%のNi及び50vol%の(Ce0.9Gd0.1)O2−δである(NiOの還元後)。
【0137】
得られた膜は厚さ約100μmで、電池のスタックに組み込む準備ができている。積み重ねる前の熱処理は必要ない。
【0138】
実施例12 セリア−低温SOFC高温酸素分離膜の作製
第1のステップは、中間乾燥なしで、3層構造(層1及び3−電極前駆体層並びに層2−電解質層)の共成形を含む。テープ成形用の懸濁液を、添加剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)及びEtOH+MEKを用いる粉末のボールミル粉砕によって作製する。粒径の制御後、以下で説明するようにダブルドクターブレード装置を用いて懸濁液をテープ成形し、その後成形物を乾燥させる。
【0139】
懸濁液1、層1及び3:懸濁液は、事前に仮焼した(Ce0.9Gd0.1)O2−δと、孔形成剤としての木炭10vol%とを含む。未加工厚さは約40μmである。層の焼結気孔率は約50%である。
懸濁液2、層2:懸濁液は、(Ce0.9Gd0.1)O2−δに基づいている。この箔の未加工厚さは約12μmである。層の焼結密度は理論密度の96%より大きい。
【0140】
3つのドクターブレード装置を、ポリマーフィルム上に直列に設置し、これら3つの層を互いの上に直接テープ成形する。層1(懸濁液1)−層2(懸濁液2)及び層3(懸濁液1)。
【0141】
第2のステップにおいては、共成形テープを方形の片に切断する。これは、ナイフ打抜きによって行われ、200〜600cmの範囲の焼結領域がもたらされる。
【0142】
第3のステップは焼結を含む。空気流の下、約50℃/hの上昇で約500℃まで積層板を加熱する。2時間の均熱の後、100℃/hの温度上昇を伴って炉を約1150℃まで加熱し、5時間放置した後、室温まで冷却する。
【0143】
第5のステップはカソードの含浸である。焼結後の電池は、片側が閉じている。La、Sr及びCoの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、硝酸塩分解のための中間加熱ステップとともに6回行う。この含浸ペロブスカイト系カソードの得られた組成は、(La0.6Sr0.4)CoO3−δである。
【0144】
第6のステップでは、アノードを含浸する。カソード含浸側は閉じている。Ni、Ce及びGdの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、含浸硝酸塩分解のための浸潤ごとの中間加熱スケジュールとともに5回行う。この含浸アノード部の得られた組成は、50vol%のNi及び50vol%の(Ce0.9Gd0.1)O2−δである(NiOの還元後)。
【0145】
得られた膜は厚さ約100μmで、電池のスタックに組み込む準備ができている。積み重ねる前の熱処理は必要ない。
【0146】
実施例13 薄い固体酸化物電池の作製
第1のステップは、2つの層(層1−電極前駆体層及び層2−電解質層)のテープ成形を含む。テープ成形用の懸濁液を、添加剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)及びEtOH+MEKを用いる粉末のボールミル粉砕によって作製する。粒径の制御後、ダブルドクターブレード装置を用いて懸濁液をテープ成形し、その後テープを乾燥させる。
【0147】
層1:懸濁液は、事前に仮焼した(LSGM1520=La0.85Sr0.15Ga0.8Mg0.2又はLSGM2015)と、孔形成剤としての黒鉛20vol%とを含む。未加工厚さは約40μmである。層の焼結気孔率は約50%である。
層2:懸濁液は、孔形成剤としての木炭を用いる(La0.85Sr0.15Ga0.8Mg0.2)粉末に基づいている。この箔の未加工厚さは約12μmである。層の焼結密度は理論密度の96%より大きい。
【0148】
第2のステップは、上述の箔の積層とともに、図1に示すように2つの電極前駆体(2、3)層間に挟まれた電解質層(1)を備える層状構造とすることを含む。この積層は、ダブルロール装置における加熱したロールを用いることによって行うが、ワンパスで行われる。
【0149】
第3のステップにおいては、積層テープを方形の片に切断する。これは、ナイフ打抜きによって行われ、12×12〜30×30cmの範囲の焼結領域がもたらされる。
【0150】
第4のステップは焼結を含む。空気流の下、約50℃/hの上昇で約500℃まで積層板を加熱する。2時間の均熱の後、100℃/hの温度上昇を伴って炉を約1400℃まで加熱し、4時間放置した後、室温まで冷却する。
【0151】
第5のステップはカソードの含浸である。焼結後の電池は、ゴムシールによって片側が閉じている。La、Sr、Fe、Coの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、硝酸塩分解のための中間加熱ステップとともに6回行う。この含浸カソードの得られた組成は、(La0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O3−δである。
【0152】
第6のステップでは、アノードを含浸する。カソード含浸側はゴムシールによって閉じている。La、Sr、Mn及びCrの硝酸塩溶液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、含浸硝酸塩分解のための浸潤ごとの中間加熱スケジュールとともに5回行う。この含浸アノード部の得られた組成は、La0.75Sr0.25Cr0.5Mn0.53−δである。
【0153】
得られた電池は厚さ約100μmで、電池のスタックに組み込む準備ができている。積み重ねる前の熱処理は必要ない。
【0154】
実施例14:薄い固体酸化物電池(プロトン伝導体)の作製
第1のステップは、2つの層(層1−電極前駆体層及び層2−電解質層)のテープ成形を含む。テープ成形用の懸濁液を、添加剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)及びEtOH+MEKを用いる粉末のボールミル粉砕によって作製する。粒径の制御後、ダブルドクターブレード装置を用いて懸濁液をテープ成形し、その後テープを乾燥させる。
【0155】
層1:懸濁液は、事前に仮焼したSrCe0.95Yb0.053−δと、孔形成剤としての黒鉛20vol%とを含む。未加工厚さは約40μmである。層の焼結気孔率は約50%である。
層2:懸濁液は、SrCe0.95Yb0.053−δ粉末に基づいている。この箔の未加工厚さは約15μmである。層の焼結密度は理論密度の96%より大きい。
【0156】
第2のステップは、上述の箔の積層により、図1に示すように2つの電極前駆体層(2、3)間に挟まれた電解質層(1)を備える層状構造とすることを含む。この積層は、ダブルロール装置における加熱したロールを用いることによって行うが、ワンパスで行われる。
【0157】
第3のステップにおいては、積層テープを方形の片に切断する。これは、ナイフ打抜きによって行われ、12×12〜30×30cmの範囲の焼結領域がもたらされる。
【0158】
第4のステップは焼結を含む。空気流の下、約50℃/hの上昇で約500℃まで積層板を加熱する。2時間の均熱の後、100℃/hの温度上昇を伴って炉を約1600℃まで加熱し、4時間放置した後、室温まで冷却する。
【0159】
第5のステップはカソードの含浸である。焼結後の電池は、ゴムシールによって片側が閉じている。Pd又はPtのコロイド懸濁液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、中間加熱ステップとともに6回行う。
【0160】
第6のステップでは、アノードを含浸する。カソード含浸側はゴムシールによって閉じている。Pd又はPtのコロイド懸濁液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、中間加熱ステップとともに6回行う。
【0161】
得られた電池は厚さ約100μmで、電池のスタックに組み込む準備ができている。積み重ねる前の熱処理は必要ない。
【0162】
実施例15:薄いプロトン膜電池(プロトン膜)の作製
第1のステップは、2つの層(層1−電極前駆体層及び層2−電解質層)のテープ成形を含む。テープ成形用の懸濁液を、添加剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)及びEtOH+MEKを用いる粉末のボールミル粉砕によって作製する。粒径の制御後、ダブルドクターブレード装置を用いて懸濁液をテープ成形し、その後テープを乾燥させる。
【0163】
層1:懸濁液は、Sr−ジルコン酸塩とFeCr粉末とを体積比1:1で含む。未加工厚さは約40μmである。層の焼結気孔率は約50%で、細孔径は1〜2μmの範囲にある。
層2:懸濁液は、Sr−ジルコン酸塩粉末に基づいている。この箔の未加工厚さは約15μmである。層の焼結密度は理論密度の96%より大きい。
【0164】
第2のステップは、上述の箔の積層により、図1に示すように2つの電極前駆体層(2、3)間に挟まれた電解質層(1)を備える層状構造とすることを含む。この積層は、ダブルロール装置における加熱したロールを用いることによって行うが、ワンパスで行われる。
【0165】
第3のステップにおいては、積層テープを方形の片に切断する。これは、ナイフ打抜きによって行われ、200〜600cmの範囲の焼結領域がもたらされる。
【0166】
第4のステップは焼結を含む。空気流の下、約50℃/hの上昇で約500℃まで積層板を加熱する。2時間の均熱の後、炉を排気し、Hを導入する。3時間の均熱時間の後、100℃/hの温度上昇を伴って炉を約1300℃まで加熱し、5時間放置した後、室温まで冷却する。
【0167】
第5のステップはカソードの含浸である。Pd又はPd−Ag合金のコロイド懸濁液を、多孔質構造へ真空浸潤させる。この浸潤は、浸潤ごとの中間加熱スケジュールとともに5回行う。
【0168】
そのように形成した膜は厚さ約90μmで、電池のスタックに組み込む準備ができている。積み重ねる前の熱処理は必要ない。
【0169】
本発明は、薄い、好ましくは可逆的な、原則として支持されていない固体酸化物電池、特に固体酸化物燃料電池を提供する。この電池は非常に薄く、すなわち、約150μm以下の全厚を有する。非常に薄い電池であるため、所与の定格出力に、より少ない材料しか必要とせず、電池の製造コストが削減される。
【0170】
電解質層の、また多層構造の場合、場合によっては外層の対称構造及び圧縮により、電池の機械的安定性の向上を実現することができる。
【0171】
電極層は、有利には電解質材料を、一実施形態においては少なくとも1種の金属と触媒材料とを含む。金属はこの場合、焼結電極層の一部であるため、触媒材料に浸透する必要なく電子伝導性が提供される。
【0172】
さらに、この場合、電極層の電子伝導性は、金属を含有せず焼結後に含浸させるだけの電極層と比較して高く、電池の性能全体が向上する。
【0173】
さらに、触媒材料を、含浸ステップ中に非常に微細な粒子として形成することができる。というのは、金属が電子伝導性を提供するからである。したがって、電池の焼結中の触媒粒子の不利な粗大化を効率的に低減又は回避することができる。加えて、より少量の触媒しか必要とせず、製造コストがさらに削減される。
【0174】
さらに、電流収集材料の含浸は少しか必要ではなく、性能の向上にも寄与する。
【0175】
最後に、ニッケル粒子は必ずしも浸透回路網を構成しないので、アノードの酸化還元安定性を得ることができる。
【0176】
別の実施形態においては、電極層はドープセリアを含み、有利には電極層は電解質材料及び触媒材料を含む。この実施形態においては、電極層が少なくとも1種の金属を含むことが不要である。電解質層の、また多層構造の場合、場合によっては外層の対称構造及び圧縮により、電池の機械的安定性の向上を実現することもできる。
【0177】
上述の利点はもちろん、本発明の薄い分離膜にも当てはまる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも多孔質アノード層、電解質層及び多孔質カソード層を備える薄い固体酸化物電池であって、前記アノード層及び前記カソード層が、電解質材料、少なくとも1種の金属及び触媒材料を含み、前記薄い電池の全厚が約150μm以下である薄い固体酸化物電池。
【請求項2】
前記電解質層が、約2〜約20μmの厚さを有する、請求項1に記載の薄い固体酸化物電池。
【請求項3】
前記カソード層及び/又はアノード層が、約65μm以下の厚さを有する、請求項1又は2に記載の薄い固体酸化物電池。
【請求項4】
前記少なくとも1種の金属が、Ni、FeCrMx合金及びNiCrMx合金からなる群から選択され、Mxが、Ni、Ti、Ce、Mn、Mo、W、Co、La、Y、Zr、Al及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の薄い固体酸化物電池。
【請求項5】
前記電解質材料が、ドープジルコニア、ドープセリア、没食子酸塩.及びプロトン伝導性電解質からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の薄い固体酸化物電池。
【請求項6】
少なくとも多孔質アノード層、電解質層及び多孔質カソード層を備える薄い固体酸化物電池であって、前記アノード層及び前記カソード層が電解質材料及び触媒材料を含み、前記電解質材料がドープセリアであり、可逆な前記薄い電池の全厚が約150μm以下である薄い固体酸化物電池。
【請求項7】
前記電解質層が、少なくとも2つの層を備える多層構造である、請求項1〜6のいずれかに記載の薄い固体酸化物電池。
【請求項8】
前記アノード層及び前記カソード層が、それぞれ少なくとも2つの層を備える多層構造である、請求項1〜7のいずれかに記載の薄い固体酸化物電池。
【請求項9】
前記カソード及び前記アノードの前記少なくとも2つの層が互いに異なる熱膨張係数を有し、前記電解質層に直接接触している前記それぞれの層が、前記電解質層の熱膨張係数よりも大きく、また前記電極の前記それぞれの第2の層の熱膨張係数よりも大きい同一の含浸前熱膨張係数を有する、請求項8に記載の薄い固体酸化物電池。
【請求項10】
第1の電極層を設けるステップと、
前記第1の電極層の上に電解質層を塗布するステップと、
前記電解質層の上に第2の電極層を塗布するステップと、
前記得られた構造を焼結するステップと、
前記第1及び第2の電極層に触媒材料又はその前駆体を含浸するステップと
を含む、請求項1または6に記載の薄い固体酸化物電池の製造方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の電極層と前記電解質層とが、テープ成形によって独立に作製され、前記層がその後圧延によって積層されて、前記固体酸化物燃料電池が形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電極層の上に前記電解質層を塗布する前記ステップ及び前記電解質層の上に前記第2の電極層を塗布する前記ステップが、ウエットオンドライテープ成形によって行われる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記電極層の上に前記電解質層を塗布する前記ステップ及び前記電解質層の上に前記第2の電極層を塗布する前記ステップが、ウエットオンウエットテープ成形によって行われる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
パターン化構造を得るために、前記電池構造を焼結前に型取りするステップをさらに含む、請求項10〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記カソード層として機能することになる前記第1又は第2の電極層の前記含浸用の前記触媒又はその前駆体が、水マンガン鉱、フェライト、輝コバルト鉱及びニッケレート或いはこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記アノード層として機能することになる前記第1又は第2の電極層の前記含浸用の前記触媒又はその前駆体が、Ni、NiFe1−x、並びにNi(又はNiFe1−x)とドープセリア/ジルコニアとの混合物又はCuとCuとドープジルコニア/セリアとの混合物、並びにMa=Ba、Sr、Ca;Mb=V、Nb、Ta、Mo、W、Th、U;0≦s≦0.5であるMaTi1−xMb3−δ、又はM=T、V、Mn、Nb、Mo、W、Th、UであるLnCr1−x3−δからなる群から選択される、請求項10〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
少なくとも多孔質アノード層と、混合導電性材料を含む膜層と、多孔質カソード層とを備える薄い分離膜であって、前記アノード層及び前記カソード層が、前記混合導電性材料及び触媒材料を含み、前記薄い分離膜の全厚が約150μm以下である薄い分離膜。
【請求項18】
前記膜層が、前記混合導電性材料としてドープセリアを含む、請求項17に記載の薄い分離膜。
【請求項19】
前記アノード層及び前記カソード層が、少なくとも1種の金属をさらに含む、請求項17又は18に記載の薄い分離膜。
【請求項20】
第1の電極層を設けるステップと、
前記第1の電極層の上に膜層を塗布するステップと、
前記膜層の上に第2の電極層を塗布するステップと、
前記得られた構造を焼結するステップと、
前記第1及び第2の電極層に触媒材料又はその前駆体を含浸するステップと
を含む、請求項17〜19のいずれかに記載の薄い分離膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−510635(P2010−510635A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537554(P2009−537554)
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010194
【国際公開番号】WO2008/061782
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(507018838)テクニカル ユニヴァーシティー オブ デンマーク (11)
【Fターム(参考)】