説明

薄切片搬送装置

【課題】包埋ブロックから作製された薄切片を、予め定められた向きに整えながら基板で掬い取る位置まで搬送することができ、作業者にかかる負担を極力減らすこと。
【解決手段】包埋ブロックを薄切して作製された矩形状の薄切片Mを、薄切片が搬送されてきた搬送ポイントP1から、基板Gに掬い取られて処理される処理ポイントP2まで搬送する装置であって、底面2aと対向する2つの側面2bとで囲まれた空間に液体Waが貯留され、搬送ポイント及び処理ポイントを通過するように配置された水路2と、貯留された液体を水路に沿って搬送ポイントから処理ポイントに向けて流動させ、薄切片を液体の流れに乗せて移動させる流動手段3とを備え、水路が、薄切片が処理ポイントに達したときに、薄切片の向きが予め定められた向きとなるように姿勢を調整しながら移動させる薄切片搬送装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切して作製された薄切片を、スライドガラス等の基板上に固定させる際に使用する薄切片搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、理化学実験や顕微鏡観察に用いられる薄切片標本を作製する装置として、ミクロトームが一般的に知られている。この薄切片標本は、厚さが数μm(例えば、3μm〜5μm)の薄切片を、スライドガラス等の基板上に固定させたものである。ここで、ミクロトームを利用して薄切片標本を作製する一般的な方法について説明する。
【0003】
まず、ホルマリン固定された生物や動物等の生体試料をパラフィン置換した後、更に周囲をパラフィンで固めて強固にして、ブロック状態の包埋ブロックを作製する。次に、この包埋ブロックを専用の薄切り装置であるミクロトームにセットして、粗削りを行う。この粗削りによって、包埋ブロックの表面が平滑面となると共に、実験や観察の対象物である包埋された生体試料の観察したい面が表面に露出した状態となる。
【0004】
粗削りが終了した後、本削りを行う。これは、ミクロトームが有する切断刃により、包埋ブロックを上述した厚みで極薄にスライスする工程である。これにより、目的の面を持った薄切片を得ることができる。この際、包埋ブロックをミクロンオーダで制御し、薄くスライスすることで、薄切片の厚みを細胞レベルの厚みに近付けることができるので、より観察し易い薄切片標本を得ることができる。よって、可能な限り厚さが制御された薄い薄切片を作製することが求められている。なお、この本削りは、必要枚数の薄切片が得られるまで連続して行う。
【0005】
次いで、本削りによって得られた薄切片を伸展させる伸展工程を行う。つまり、本削りによって作製された薄切片は、上述したように極薄の厚みでスライスされたものであるので、皺がついた状態や、丸まった状態(例えば、Uの字状)となってしまう。そこで、この伸展工程によって、皺や丸みを取って伸ばす必要がある。
一般的には、水とお湯を利用して伸展させている。始めに、本削りによって得られた薄切片を水に浮かべる。これにより、生体試料を包埋しているパラフィン同士のくっつきを防止しながら、薄切片の大きな皺や丸みを取ることができる。その後、薄切片をお湯に浮かべる。これにより、薄切片が伸び易くなるので、水による伸展では取りきれなかった残りの皺や、切削時に受けた圧力によって生じた歪を取ることができる。
【0006】
そして、お湯による伸展が終了した薄切片をスライドガラス等の基板で掬って該基板上に載置する。なお、この時点で仮に伸展が不十分であった場合には、基板ごとホットプレート等に乗せてさらに熱を加える。これにより、薄切片をより伸展させることができる。
最後に、薄切片を乗せた基板を乾燥器内に入れて乾燥させる。この乾燥により、伸展で付着した水分が蒸発すると共に、薄切片が基板上に固定される。
その結果、薄切片標本を作製することができる。また、作製された薄切片標本は、主に生物、医学分野等で使用されている。
【0007】
上述した工程は、そのほとんどの工程を、経験を積んだ熟練の作業者が行っているのが一般的であるが、一部の工程を自動で行う薄切片試料作製装置(例えば、特許文献1参照)も知られている。この薄切片試料作製装置は、セットされた包埋ブロックを切断して薄切片を作製する工程と、作製した薄切片をキャリアテープによって搬送してスライドガラス上に転写させる工程と、スライドガラスごと薄切片を伸展装置まで搬送して伸展を行う工程とを、自動的に行っている装置である。この薄切片試料作製装置を利用することで、作業者の負担を若干減らすことができる。
また、作製された薄切片を自動的に水槽に搬送する切片採取装置(例えば、特許文献2参照)も知られている。この切片採取装置を利用することで、作製した薄切片を水槽まで搬送するという一部の工程を装置で行えるので、同様に作業者の負担を若干減らすことができる。
【特許文献1】特開2004−28910号公報
【特許文献2】特開平5−273094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の方法ではまだ以下の課題が残されていた。
初めに、高品質な薄切片標本を作製するためには、伸展が終了した薄切片をスライドガラス等の基板で掬って該基板上に載置する際に、基板の向きと薄切片の向きとを一致させる必要があった。通常、この作業は作業者が行っている。具体的には、一旦水中に基板を入れた後、水面に浮かんでいる薄切片の向きに基板の向きを合わせながら薄切片の一部を基板に接触させる。そして、ゆっくりと基板を水中から引き上げることで、基板の向きと薄切片の向きとを合わせながら、基板上に薄切片を掬い取ることができるものであった。このように、作業者は1枚1枚薄切片の向きを合わせる必要があるので、集中力を要し、非常に手間のかかる作業であった。特に、取り扱う薄切片の数が膨大である上、水面の揺らぎ等の影響を受けて薄切片の姿勢が容易に変化するので、作業者にかかる負担が大きいものであった。
【0009】
また、特許文献1及び2等に記載されている装置を利用することで、作業者の負担を若干減らすことができるが、薄切片を掬い取る作業については自動化を行うことが困難であった。つまり、ロボット等を利用して自動化を行う場合には、水面に浮かんだ薄切片の位置や向き等を常に確認し、これらの情報に基づいて基板の位置や向きを制御しながら薄切片を掬い取る等の複雑な制御を行う必要がある。ところが、これを行うには高度なプログラミング制御や複雑な機械的機構等が必要とされ、現実的に実現させることが難しいものであった。そのため、薄切片の向きを確認しながら該薄切片を基板上に載置する作業に関しては、かわらず作業者が行う必要があった。
【0010】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、包埋ブロックから作製された薄切片を、予め定められた向きに整えながら基板で掬い取る位置まで搬送することができ、作業者にかかる負担を極力減らすことができる薄切片搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明の薄切片搬送装置は、生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切して作製された矩形状の薄切片を、該薄切片が搬送されてきた搬送ポイントから、基板に掬い取られて処理される処理ポイントまで搬送する薄切片搬送装置であって、底面と対向する2つの側面とで囲まれた空間に液体が貯留され、前記搬送ポイント及び前記処理ポイントを通過するように配置された水路と、前記貯留された液体を前記水路に沿って前記搬送ポイントから前記処理ポイントに向けて流動させ、前記薄切片を液体の流れに乗せて移動させる流動手段とを備え、前記水路が、前記薄切片が前記処理ポイントに達したときに、該薄切片の向きが予め定められた向きとなるように姿勢を調整しながら移動させることを特徴とするものである。
【0012】
この発明に係る薄切片搬送装置においては、底面と対向する2つの側面とからなる水路に貯留された液体が流動手段によって搬送ポイントから処理ポイントに向かって流れている。よって、包埋ブロックを薄切して薄切片を作製した後、自動又は手段で搬送ポイントまで搬送すると、薄切片は液体に浮かびながら該液体の流れに乗って自動的に処理ポイントまで搬送される。
特にこの水路は、薄切片が処理ポイントに達したときに、該薄切片の向きが予め定められた向きとなるように姿勢を調整しながら薄切片を移動させている。従って、薄切片を必ず同じ向き、例えば、薄切片の長辺が流れに対して垂直となる横向きや、長辺が流れに対して平行となる縦向きに揃えた状態で、処理ポイントに搬送することができる。
【0013】
そして処理ポイントまで搬送された薄切片は、作業者によってスライドガラス等の基板上に掬い取られる。この際作業者は、従来のように1枚1枚薄切片の向きを確認しながら薄切片を掬い取る必要がない。そのため、従来の方法に比べ作業者にかかる負担を大幅に軽減でき、作業効率も向上することができる。また、処理ポイントに搬送されてきた薄切片の向きを、同じ方向に必ず揃えることができるので、掬い取る作業をロボット等に行わせることもでき、容易に自動化に対応することも可能である。また、液体を利用して薄切片を搬送しているので、搬送ポイントから処理ポイントまで搬送する間に、薄切片を伸展させることができる。よって、搬送と伸展とを同時に行うことができ、作業効率を高めることができる。
【0014】
また、本発明の薄切片搬送装置は、上記本発明の薄切片搬送装置において、前記水路が、前記搬送ポイントから前記処理ポイントに向けて順に配置された第1のテーパー領域と、方向転回領域と、第2のテーパー領域とからなり、前記第1のテーパー領域では、前記2つの側面間の間隔が前記方向転回領域側で前記薄切片の長辺と略同じ長さになるように、2つの側面が前記搬送ポイント側から漸次間隔が変化するテーパー状に形成され、前記方向転回領域では、前記2つの側面のうちいずれか一方の側面に形成され、前記薄切片の長辺が流れに対して垂直となる横向き状態で薄切片が前記第1のテーパー領域を通過したときに、薄切片の長辺に接触する段部と、2つの側面の間に設けられ、段部と長辺との接触点を中心として薄切片を転回させる転回空間とが設けられ、前記第2のテーパー領域では、前記2つの側面間の間隔が前記処理ポイント側で前記薄切片の短辺と略同じ長さになるように、2つの側面が前記方向転回領域側から漸次間隔が変化するテーパー状に形成され、薄切片の長辺が流れに対して平行となる縦向き状態で薄切片を通過させることを特徴とするものである。
【0015】
この発明に係る薄切片搬送装置においては、水路が搬送ポイントから処理ポイントに向けて順に、第1のテーパー領域と、方向転回領域と、第2のテーパー領域とに分かれて構成されている。
第1のテーパー領域では、対向する2つの側面が搬送ポイント側から隣接する方向転回領域に向かって漸次間隔が変化するテーパー状に形成されている。この際、2つの側面の間隔は、方向転回領域側で薄切片の長辺と略同じ幅になるように設定されている。このため、搬送ポイントから流れてきた薄切片は、ある程度の向きに規制された状態で次の方向転回領域に流れていく。つまり、長辺が流れに対して平行な縦向き状態、或いは、長辺が流れに対して垂直な横向き状態、或いは、縦向きが若干斜めになった状態のいずれかの状態で流れていく。
【0016】
なお、薄切片が流れの途中で縦向きから45度以上回転して斜めになった場合には、四隅のいずれかがテーパー状となった2つの側面に接触する。すると薄切片は、液体の流れを受けてこの点を中心に回転しながら移動する。そして最終的に薄切片は、横向き状態になるか或いは縦向き状態となる。このように、薄切片はある程度の向きに規制された状態で方向転回領域に流れていく。
【0017】
次いで、方向転回領域に流れてきた薄切片は、この領域でさらに向きが規制された状態で隣接する第2のテーパー領域に向かって流れる。まず、縦向き状態、或いは、縦向きが若干斜めになった状態で第1のテーパー領域から流れてきた薄切片は、段部に接触することなく転回空間を抜けて第2のテーパー領域に向かって流れていく。これは、段部の近傍では液体が淀んでいるので、薄切片が段部に近づき難いためである。これに対して、横向き状態で第1のテーパー領域から流れてきた薄切片は、長辺が段部に接触する。これは、薄切片がテーパー状となった2つの側面の間をすれすれで通過してきているので、流れに直交する方向に移動することができず、段部周辺の淀に打ち勝つためである。
【0018】
そして、段部に接触した薄切片は、液体の流れによって、段部と長辺との接触点を中心として転回し始める。この際、2つの側面間に設けられた転回空間にて転回する。これにより薄切片は、縦向き状態、或いは、縦向きが若干斜めになった状態で第2のテーパー領域に向かって流れる。このように、薄切片はこの方向転回領域を通過することで、縦向き状態、或いは、縦向きが若干斜めになった状態に規制される。
【0019】
次いで、第2のテーパー領域では、2つの側面の間隔が処理ポイント側で薄切片の短辺と略同じ長さになるように、2つの側面が方向転回領域側から処理ポイントに向かって漸次間隔が変化するテーパー状に形成されている。そのため、方向転回領域から流れてきた薄切片は、完全な縦向きであるとそのまま流れるが、縦向きが斜めになった状態であると、四隅のいずれかがテーパー状となった2つの側面に接触する。すると薄切片は、接触点を中心に回転しながら移動する。これにより薄切片は、最終的に完全に縦向きになった状態で第2のテーパー領域を通過して処理ポイントに達する。
上述したように、搬送ポイントにどのような向きで搬送されてきたとしても、流れの中で自動的に向きを調整して、最終的に縦向きにした状態で薄切片を処理ポイントに搬送することができる。
【0020】
また、本発明の薄切片搬送装置は、上記本発明の薄切片搬送装置において、前記流動手段が、前記搬送ポイントよりも上流側で前記水路に接続された第1の貯水槽と、前記処理ポイントで前記水路に接続された第2の貯水槽と、前記第1の貯水槽に接続され、前記液体が内部を流れる第1の管路と、前記第2の貯水槽に接続され、前記液体が内部を流れる第2の管路と、前記第1の管路及び前記第2の管路にそれぞれ接続された貯液タンクと、前記第1の管路に設けられ、前記第1の貯水槽から前記第2の貯水槽に向かう方向に前記液体を送り出す供給ポンプとを備えていることを特徴とするものである。
【0021】
この発明に係る薄切片搬送装置においては、供給ポンプを作動させると、貯液タンクから第1の管路を介して第1の貯水槽に液体が供給される。さらにこの液体は、第1の貯水槽から水路に供給されて搬送ポイントから処理ポイントに向かって流れる。そして、処理ポイントを通過した液体は、第2の貯水槽から第2の管路を流れて再び貯液タンクに戻ってくる。このように、液体を無駄にすることなく循環させることで、流れをつくりだして薄切片を搬送させることができる。特に、液体全体を流動させることができるので、薄切片を流れに乗せて確実に搬送ポイントから処理ポイントまで搬送することができる。
【0022】
また、本発明の薄切片搬送装置は、上記本発明の薄切片搬送装置において、前記第1の貯水槽には、該第1の貯水槽に溜まった前記液体の水位を一定量に規制する蓋部が設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
この発明に係る薄切片搬送装置においては、第1の貯水槽に蓋部が設けられているので、第1の管路から供給された液体が一旦蓋部の裏面に当たる。これにより、液体の水位を一定量に規制することができる。また、液面が過度に泡立つことを防止できるので、液体内に気泡が混入したり、水流が乱れたりし難い。そのため、薄切片を安定した状態で処理ポイントまで搬送することができる。
【0024】
また、本発明の薄切片搬送装置は、上記本発明の薄切片搬送装置において、前記蓋部の一部分には、前記液体との間に隙間を確保すると共に、外部と連通した連通孔を有する隆起部が設けられていることを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る薄切片搬送装置においては、仮に第1の貯水槽に供給されてきた液体内に気泡が混入していたとしても、該気泡を水路側に流す前に隆起部が作りだす隙間に集めることができる。また、この隙間に集まった気泡内の空気は、連通孔を介して蓋部の外部に放出される。よって、泡立ちがない液体を水路に確実に流すことができ、より安定した状態で薄切片を搬送することができる。
【0026】
また、本発明の薄切片搬送装置は、上記本発明のいずれかの薄切片搬送装置において、前記第1の貯水槽に隣接して設けられ、前記搬送ポイントから前記処理ポイントに向けて前記液体の流れを整える整流手段を備えていることを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係る薄切片搬送装置においては、第1の貯水槽に隣接して整流手段が設けられているので、第1の貯水槽から水路に流れる液体の流れをさらに安定させることができ、層流に近い状態で液体を流すことができる。そのため、さらに安定した状態で薄切片を搬送することができる。
【0028】
また、本発明の薄切片搬送装置は、上記本発明のいずれかの薄切片搬送装置において、前記第2の管路を閉塞可能なバルブと、該バルブによって前記第2の管路を閉塞したときに、前記水路から溢れた前記液体を回収する回収槽と、該回収槽と前記貯液タンクとの間に接続され、回収された前記液体が内部を流れる回収管路とを備えていることを特徴とするものである。
【0029】
この発明に係る薄切片搬送装置においては、水路に沿って薄切片を搬送している最中に、万が一薄切片が水路の途中で詰まったり破れたりした場合や、塵埃等が液体内に混入した場合に、これら薄切片や塵埃等を水路外に排除することができる。即ち、バルブを作動させて第2の管路を閉塞させる。すると、第2の貯水槽まで流れた液体が第2の管路を通って排出されないので、液体の水位が上昇して水路から溢れ出す。これにより、詰まったり破れたりした薄切片や塵埃等を、水路外に排除することができる。
【0030】
このように、搬送途中に薄切片に何らかの不具合が生じたり、塵埃等が水路に混入したりしても、これらの不具合に即座に対応することができる。よって、使い易さに優れている。また、排除された薄切片や塵埃等は、溢れ出た液体と共に回収槽に回収され、回収管路を通って貯液タンクに流れる。よって、回収した液体を、供給ポンプにより再度第1の貯水槽に供給することができる。そのため、液体を無駄にすることなく、有効利用することができる。
【0031】
また、本発明の薄切片搬送装置は、上記本発明の薄切片搬送装置において、前記処理ポイントに搬送されてきた薄切片を感知する感知センサと、前記薄切片が前記搬送ポイントに搬送されてきてから所定時間内に前記感知センサからの感知信号を受信したときに、受信してから一定時間経過後に前記バルブを作動させて前記第2の管路を閉塞させる制御部とを備えていることを特徴とするものである。
【0032】
この発明に係る薄切片搬送装置においては、搬送ポイントから処理ポイントに搬送されてきた薄切片を感知センサが感知して、その旨を制御部に知らせている。ここで、制御部は、薄切片が搬送ポイントに搬送されてきてから所定時間内に感知センサからの感知信号を受けると、薄切片が水路の途中で詰まる等の不具合もなく、確実に搬送されてきたと判断する。そして、制御部は、感知信号を受けてから一定時間経過後、薄切片の処理が処理ポイントで終了したと判断して、バルブを作動させて第2の管路を閉塞させる。
これにより、液体を水路から溢れさせることができ、薄切片に付着していた塵埃等を水路外に排除することができる。このように、薄切片を1枚処理する毎に、液体を溢れさせて塵埃等を排除するので、水路内の液体を常に清浄にすることができる。よって、薄切片の詰まりや、塵埃等が溜まってしまうことを未然に防止することができる。
【0033】
また、本発明の薄切片搬送装置は、上記本発明の薄切片搬送装置において、前記制御部が、前記薄切片が前記搬送ポイントに搬送されてきてから、前記所定時間が経過してもまだ前記感知信号を未受信のときに、前記バルブを作動させて前記第2の管路を閉塞させることを特徴とするものである。
【0034】
この発明に係る薄切片搬送装置においては、薄切片が搬送ポイントに搬送されてから所定時間経過しても、いまだ感知センサから感知信号が送られてこない場合には、制御部は搬送中に何らかの不具合(例えば、水路の途中で薄切片が詰まったり、薄切片が破けたりする等)が生じたと判断する。すると制御部は、バルブを作動させて第2の管路を閉塞させ、液体を水路から溢れ出させる。これにより、不具合が生じた薄切片を液体と一緒に水路外に排除することができ、次の薄切片の搬送に備えることができる。このように、搬送途中で薄切片に何らかの不具合が生じたとても、不具合を最小限の範囲に抑えることができ、薄切片の無駄な消費を抑えることができる。
【0035】
また、本発明の薄切片搬送装置は、上記本発明のいずれかの薄切片搬送装置において、前記2つの側面が、前記底面から離間するにつれて互いの間隔が広がるように設けられていることを特徴とするものである。
【0036】
この発明に係る薄切片搬送装置においては、水路の2つの側面が、底面から上方に向かって徐々に互いの間隔が広がるように設けられている。例えば、水路を断面視したときに、テーパー状或いは階段状になるように設けられている。よって、水路に貯留される液体の水位を調整するだけで、液面レベルで側面間の間隔を容易に広げることができる。従って、水位を変化させることで様々なサイズの薄切片を搬送することができ、利便性をさらに高めることができる。
【0037】
また、本発明の薄切片搬送装置は、上記本発明のいずれかの薄切片搬送装置において、前記水路の内面には、フッ素樹脂材料がコーティングされていることを特徴とするものである。
【0038】
この発明に係る薄切片搬送装置においては、水路の内面にフッ素樹脂材料がコーティングされているので、内面の滑り性を向上することができる。従って、摩擦による引っ掛かり等をできるだけなくして、より円滑に薄切片を搬送することができる。そのため、薄切片をより確実に処理ポイントまで搬送することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る薄切片搬送装置においては、包埋ブロックから作製された薄切片を、予め決められた向きに調整しながら基板で掬い取る処理ポイントまで搬送することができ、作業者にかかる負担を極力減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る薄切片搬送装置の第1実施形態を、図1から図12を参照して説明する。この薄切片搬送装置1は、生体試料Sが包埋された包埋ブロックBを薄切して作製された矩形状の薄切片Mを、該薄切片Mが搬送されてきた搬送ポイントP1からスライドガラス(基板)Gに掬い取られて処理される処理ポイントP2まで搬送する装置である。
【0041】
初めに、包埋ブロックBは、図1(a)に示すように、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィン等の包埋剤Nによってブロック状に固めたものである。これにより、生体試料Sがパラフィン内に包埋された状態となっている。なお、生体試料Sとしては、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適時選択させるものである。
また、薄切片Mは、この包埋ブロックBを図示しない切断刃によって例えば、3μm〜5μmの極薄に薄切することで矩形状に作製されたものである。なお、本実施形態では、図1(b)に示すように、長辺の長さがL、短辺の長さがW、対角線の長さがTの薄切片Mを例に挙げて説明する。
【0042】
本実施形態の薄切片搬送装置1は、図2から図4に示すように、底面2aと対向する2つの側面2bとで囲まれた空間に水(液体)Waが貯留され、搬送ポイントP1及び処理ポイントP2を通過するように配置された水路2と、貯留された水Waを水路2に沿って搬送ポイントP1から処理ポイントP2に向けて流動させ、薄切片Mを水Waの流れに乗せて移動させる流動手段3と、処理ポイントP2に搬送されてきた薄切片Mを感知する感知センサ4と、これら各構成品及び後述する各構成品を総合的に制御する制御部5とを備えている。
【0043】
なお、本実施形態では、包埋ブロックBから薄切された薄切片Mを、搬送機構6を利用して搬送ポイントP1まで搬送すると共に、処理ポイントP2に搬送されてきた薄切片Mを、把持ロボット7を利用してスライドガラスG上に掬う場合を例にして説明する。
上記搬送機構6は、図2及び図3に示すように、例えばローラに巻回された無端ベルトであり、切断刃によって薄切された薄切片Mを、切断場所から無端ベルト上に載せた状態で搬送ポイントP1まで搬送するようになっている。そして、この無端ベルトは、一端側が水路2内に貯留された水Waの中に浸かるように配置されている。
また、上記把持ロボット7は、スライドガラスGの一端側を把持した状態で、該スライドガラスGを自在に操ることができる多関節ロボットである。この把持ロボット7は、薄切片Mが処理ポイントP2まで搬送されてくるまで、スライドガラスGを処理ポイントP2に配置された後述する第2の貯水槽16内に入れた状態で待機するようになっている。そして、把持ロボット7は、処理ポイントP2に薄切片Mが搬送されてくると、該薄切片Mを掬うように作動するようになっている。
【0044】
上記水路2は、後述する回収槽12内に設けられたものであり、薄切片Mが処理ポイントP2に達したときに、該薄切片Mの向きを予め決められた向きとなるように姿勢を調整しながら移動させる水路2である。本実施形態では、薄切片Mの長辺が流れ(図2及び図3に示す矢印L1方向)に対して平行となる縦向きとなるように薄切片Mの向きを調整している。
【0045】
具体的に説明すると、この水路2は、図2から図5に示すように、搬送ポイントP1から処理ポイントP2に向けて順に配置された第1のテーパー領域E1と、方向転回領域E2と、第2のテーパー領域E3とに分かれて構成されている。
第1のテーパー領域E1では、図2に示すように、2つの側面2b間の間隔が方向転回領域E2側で薄切片Mの長辺と略同じ長さLとなるように、2つの側面2bが搬送ポイントP1側から漸次間隔が変化するテーパー状に形成されている。また、この第1のテーパー領域E1における底面2aは、図3に示すように、搬送ポイントP1の部分で一時的に深くなるように形成されている。これにより、一端側が水Waに浸かっている搬送機構6が、底面2aに接触しないようになっている。
【0046】
上記方向転回領域E2では、図2及び図5に示すように、段部10と転回空間11とが設けられている。段部10は、2つの側面2bのうち、一方の側面2bに形成され、薄切片Mの長辺が流れに対して垂直となる横向き状態で薄切片Mが第1のテーパー領域E1を通過したときに、薄切片Mの長辺に接触する部分である。転回空間11は、2つの側面2b間に設けられ、段部10と長辺との接触点を中心として薄切片Mを、例えば少なくとも45度以上転回させる空間である。
【0047】
段部10は、第1のテーパー領域E1と方向転回領域E2との境から、薄切片Mの短辺の長さWだけ離間した位置に形成されている。つまり、薄切片Mが第1のテーパー領域E1を横向き状態で完全に通過したときに、長辺が自然と接触する位置に形成されている。また、他方の側面2bは、この段部10の角部P0を中心に、薄切片Mの対角線の長さTを半径として離間するように膨らみを帯びて形成されている。これにより、段部10の角部P0に薄切片Mの4隅の一つが接触した状態で該薄切片Mが回転したとしても、他方の側面2bに接触しないようになっている。つまり、この膨らみを帯びて形成されている他方の側面2bと、段部10が形成されている一方の側面2bとで囲まれている空間が、上記転回空間11とされている。
【0048】
上記第2のテーパー領域E3では、図2に示すように、2つの側面2b間の間隔が、処理ポイントP2側で薄切片Mの短辺Wと略同じ長さになるように、2つの側面2bが方向転回領域E2側から漸次間隔が変化するテーパー状に形成されており、薄切片Mを縦向き状態でのみ通過させることができるように設計されている。
【0049】
上述したように構成された水路2は、図4に示すように、水路2の底面2aが回収槽12の底面12aから一定の高さに位置するように設計されている。この回収槽12は、図2に示すように、上面視長方形状に形成されており、内側に水路2と、後述する第1の貯水槽15及び第2の貯水槽16とを完全に収容できるサイズに形成されている。また、回収槽12の高さは、水路2の高さよりも高くなるように形成されている。
【0050】
上記流動手段3は、図2及び図3に示すように、搬送ポイントP1よりも上流側で水路2に接続された第1の貯水槽15と、処理ポイントP2で水路2に接続された第2の貯水槽16と、第1の貯水槽15に接続され、内部を水Waが流れる供給路(第1の管路)17と、第2の貯水槽16に接続され、内部を水Waが流れる排出路(第2の管路)18と、供給路17と排出路18とにそれぞれ接続された貯水タンク(貯液タンク)19と、供給路17に設けられ、第1の貯水槽15から第2の貯水槽16に向かう方向に液体を送り出す供給ポンプ20とを備えている。
【0051】
第1の貯水槽15は、回収槽12の底面2aと側面2bとの一部分を利用して形成されており、底面2aに形成された給水口15aを介して前記供給路17に接続されている。また、本実施形態の第1の貯水槽15には、該第1の貯水槽15に溜まった水Waの水位を一定量に規制する蓋部15bが開口を塞ぐように設けられている。そして、第1の貯水槽15に供給された水Waが、この蓋部15bの裏面に接触するようになっている。
【0052】
またこの蓋部15bは、第1の貯水槽15側から水路2側に延出しており、水路2の底面2aの上方にも位置するようになっている。そしてこれら水路2の底面2aと2つの側面2bと蓋部15bの裏面とで囲まれるスリット空間P3によって、第1の貯水槽15から水路2に流れ込む水Waの流量を絞り込んで一定量に規制することができると共に、水Waの流れを整えることができるようになっている。つまり、スリット空間P3は、第1の貯水槽15に隣接して設けられ、搬送ポイントP1から処理ポイントP2に向けて水Waの流れを整える整流手段の機能を果たしている。
【0053】
第2の貯水槽16は、回収槽12の底面12aの一部分を利用して形成されており、仕切り板16aを挟んで2部屋構造になっている。一方の部屋には、把持ロボット7によってスライドガラスGが待機している。また、他方の部屋は、底面12aに形成された排水口16bを介して排出路18に接続されている。この第2の貯水槽16は、通常時では一方の部屋が水路2を流れてきた水Waで満たされている。また、仕切り板16aを越えて他方の部屋に侵入した水Waが、排水口16bを介して排出路18から排出されている。
【0054】
また、排出路18には、該排出路18を閉塞するバルブ25が設けられている。このバルブ25は、制御部5によって制御されるようになっている。また、バルブ25によって排出路18を閉塞した場合には、水路2に貯留されている水Waの水位が上昇し、水路2から溢れる。そして、回収槽12がこの溢れた水Waを回収するようになっている。この回収槽12の底面12aには、第2の貯水槽16と同様に排水口12bが形成されており、該排水口12bを介して回収管路26が接続されている。この回収管路26は、貯水タンク19に接続されている。つまり、回収槽12に溢れ出た水Waは、排水口12b及び回収管路26を介して貯水タンク19に戻るようになっている。
【0055】
上記感知センサ4は、図2に示すように、処理ポイントP2上に配置されており、処理ポイントP2に流れてきた薄切片Mを感知している。この感知センサ4は、内部にレーザ光を照射する照射部(不図示)と、処理ポイントP2に流れてきた薄切片Mで反射したレーザ光を受光する受光部(不図示)とを有しており、反射強度の差から薄切片Mの感知を行う非接触型のセンサである。但し、反射強度の差に限られるものではない。また、非接触型ではなく、接触により感知する接触型でも構わない。
そして感知センサ4は、薄切片Mを感知すると、感知信号を制御部5に出力してその旨を知らせるようになっている。
【0056】
制御部5は、搬送ポイントP1に搬送機構6によって薄切片Mが搬送されてきてから所定時間以内に感知センサ4からの感知信号を受信する、受信してから一定時間経過後にバルブ25を作動させて、排出路18を閉塞させるように制御を行っている。
更に制御部5は、搬送ポイントP1に搬送機構6によって薄切片Mが搬送されてきてから、所定時間経過してもまだ感知センサ4から感知信号が送られてこない場合にも、やはり同様にバルブ25を作動させて排出路18を閉塞させるように制御を行っている。この制御部5の作動については、後に詳細に説明する。
【0057】
次に、このように構成された薄切片搬送装置1により、搬送ポイントP1から処理ポイントP2まで薄切片Mの向きを調整しながら搬送する場合について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、初期状態として、第1の貯水槽15、水路2及び第2の貯水槽16には、決められた量の水Waが既に満たされた状態となっているものとする。
【0058】
まず初めに、制御部5は、搬送機構6及び供給ポンプ20に信号を出力して両者を作動させる。搬送機構6は、この信号を受けて切断刃によって薄切された薄切片Mの搬送を開始する(S1)。この際、制御部5は、内部タイマのカウントを開始し、感知センサ4からの感知信号の受信を待つ待機状態に移行する。一方、供給ポンプ20は、貯水タンク19に貯留されている水Waを、供給路17を介して第1の貯水槽15に供給する。供給された水Waは、蓋部15bの裏面に当たって流速や乱流が抑えられた後、スリット空間P3を通過して水路2側に流れ始める(S2)。
【0059】
これにより、既に満たされている水Waが搬送ポイントP1から処理ポイントP2に向かって一定の速度で流れ始める。そして、搬送機構6により搬送ポイントP1に搬送されてきた薄切片Mは、水Waに浸かることで搬送機構6から離間して水面に浮かぶと共に、水Waの流れに沿って移動しはじめる。この際、薄切片Mの向きは、とくに決められておらず、様々な向きで水面を流れはじめる。
【0060】
なお、水路2を流れた水Waは、第2の貯水槽16に溜まった後、排水口16bを介して排出路18を流れ、貯水タンク19に流れる。その後、再び供給ポンプ20によって供給路17を通って第1の貯水槽15に流される。このように、供給ポンプ20を作動させることで、水Waを循環させることができので、無駄のない効率的な使用を行うことができる。
【0061】
水面を水路2に沿って流れはじめた薄切片Mは、まず、第1のテーパー領域E1を通過する。この第1のテーパー領域E1では、2つの側面2bの間隔が隣接する方向転回領域E2側で薄切片Mの長辺と略同じ長さLとなるように設計されている。このため薄切片Mは、ある程度の向きに規制された状態で次の方向転回領域E2に流れていく。
つまり、薄切片Mは、図7に示すように、長辺が流れに対して平行な縦向き状態、或いは、図8に示すように、長辺が流れに対して垂直な横向き状態、或いは、縦向きが若干斜めになった状態のいずれかの状態で流れていく。
【0062】
なお、薄切片Mが流れの途中で縦向きから45度以上回転して斜めになった場合には、図9及び図10に示すように、薄切片Mの四隅のいずれかが2つの側面2bに接触する。すると薄切片Mは、水Waの流れを受けてこの点を中心に回転しながら移動する。そして最終的に薄切片Mは、横向き状態になるか或いは縦向き状態となる。このように薄切片Mは、上述した3つの状態(縦向き状態、横向き状態、縦向きが若干斜めになった状態)に規制された状態で流れていく。
【0063】
次いで、方向転回領域E2に流れてきた薄切片Mは、この領域でさらに向きが規制された状態で隣接する第2のテーパー領域E3に向かって流れる。まず、縦向き状態、或いは、縦向きが若干斜めになった状態で第1のテーパー領域E1から流れてきた薄切片Mは、図7及び図9に示すように、段部10に接触することなく転回空間11を抜けて第2のテーパー領域E3に向かって流れていく。これは、段部10の近傍では水Waが淀んでいるので、薄切片Mが段部10に近づき難いためである。
【0064】
これに対して、図8及び図10に示すように、横向き状態で第1のテーパー領域E1から流れてきた薄切片Mは、長辺が段部10に接触する。これは、薄切片Mがテーパー状となった2つの側面2bの間をすれすれで通過してきているので、流れに直交する方向に移動することができず、段部10周辺の淀みに打ち勝つためである。
そして段部10に接触した薄切片Mは、液体の流れによって段部10と長辺との接触点を中心として転回し始める。この際、2つの側面2b間に設けられた転回空間11にて少なくとも45度以上転回する。
その結果、薄切片Mは、図7から図10に示すように、縦向き状態、或いは、縦向きが若干斜めになった状態で第2のテーパー領域E3に向かって流れる。このように、薄切片Mはこの方向転回領域E2を通過することで、縦向き状態、或いは、縦向きが若干斜めになった状態に規制される。
【0065】
次いで、第2のテーパー領域E3では、2つの側面2bの間隔が処理ポイントP2側で薄切片Mの短辺と略同じ長さWになるように、2つの側面2bが方向転回領域E2側から処理ポイントP2に向かって漸次間隔が変化するテーパー状に形成されている。そのため、方向転回領域E2から流れてきた薄切片Mは、完全な縦向きである場合にはそのまま通過するが、縦向きが若干斜めになった状態の場合には四隅のいずれかがテーパー状となった2つの側面2bに接触する。すると薄切片Mは、接触点を中心に回転しながら移動する。これにより薄切片Mは、最終的に完全に縦向きになった状態で第2のテーパー領域E3を通過して処理ポイントP2に達する。
【0066】
上述したように、薄切片Mが搬送ポイントP1にどのような向きで搬送されてきたとしても、流れの中で自動的に向きを調整して、最終的に縦向きにした状態で薄切片Mを処理ポイントP2に搬送することができる。
【0067】
次いで、処理ポイントP2に薄切片Mが流れてくると、図2及び3に示すように、感知センサ4が薄切片Mを感知して感知信号を制御部5に出力する。制御部5は、感知信号を受信すると、内部タイマのカウントを停止すると共に、その間に要した時間が予め決められた所定時間内であるか否かを判断する(S3)。ここで、所定時間内であった場合(S3においてYESの場合)には、制御部5は薄切片Mが水路2の途中で詰まる等の不具合もなく確実に搬送されてきたと判断し、把持ロボット7に掬い上げを開始する旨の信号を出力する。そして把持ロボット7は、制御部5からの信号を受けて、スライドガラスGを第2の貯水槽16から引き上げる(S4)。ここで薄切片Mは、制御部5が把持ロボット7に信号を出力する間も流れているので、処理ポイントP2で待機しているスライドガラスGに接触した状態となっている。これにより、把持ロボット7がスライドガラスGを引き上げることで、薄切片Mを確実に掬い上げることができ、スライドガラスG上に薄切片Mを載置することができる。
【0068】
特に、薄切片Mを縦向きにした状態で処理ポイントP2に搬送しているので、把持ロボット7の作動を単純化することができる。つまり、薄切片Mの向きを確認しながら薄切片Mを掬い取る等といった複雑な作動を把持ロボット7に求める必要がない。単に、搬送されてきた薄切片Mを掬い取るだけの単純な作動を把持ロボット7に行わせるだけで、確実にスライドガラスGの向きと薄切片Mの向きとを同じ方向に一致させることができる。従って、薄切片Mを掬い取る作業を、容易に把持ロボット7に行わせることができ、自動化に対応することができる。その結果、1枚1枚薄切片Mの向きを確認しながら作業者が手作業で掬い取っていた従来の方法に比べて、作業者にかかる負担を大幅に軽減でき、作業効率を格段に向上することができる。
【0069】
また、水Waを利用して薄切片Mを搬送しているので、搬送ポイントP1から処理ポイントP2まで搬送する間に、薄切片Mを伸展させることができる。よって、搬送と伸展とを同時に行うことができ、作業効率を高めることができる。
また、第1の貯水槽15には蓋部15bが設けられているので、水Waの水位を一定量に規制することができる。また、水面が過度に泡立つことを防止できるので、水Waに気泡が混入したり、水流が乱れたりし難い。そのため、薄切片Mを安定した状態で処理ポイントP2まで搬送することができる。更に、第1の貯水槽15に隣接してスリット空間P3が設けられているので、第1の貯水槽15から水路2に流れる水Waの流れをさらに安定させることができ、層流に近い状態で水Waを流すことができる。そのため、さらに安定した状態で薄切片Mを搬送することができる。
【0070】
また、制御部5は、感知信号を受けてから一定時間が経過した後、薄切片Mの処理(上述した掬い取り処理)が処理ポイントP2で終了したと判断して、バルブ25に作動信号を送る。バルブ25は、この作動信号を受けて排出路18を閉塞する。すると、第2の貯水槽16内の水Waが排出路18を通って排出されないので、徐々に水位が上昇する。そして、図11及び図12に示すように、ついには水路2から水Waが溢れ出す(オーバーフロー)(S5)。これにより、先ほど搬送した薄切片Mに付着していた塵埃等を水路2外に排除することができる。
このように、薄切片Mを1枚処理する毎に、水Waを水路2外に溢れさせて塵埃等を排除するので、水路2内の水Waを常に清浄に維持することができる。よって、薄切片Mの詰まりや塵埃等が溜まってしまうことを未然に防止することができる。
【0071】
また、排除された塵埃等は、溢れ出た水Waと共に回収槽12に回収され、排水口12bを介して回収管路26を通った後、貯水タンク19に流れる。また、回収した水Waを、供給ポンプ20によって再度第1の貯水槽15に供給することができる。そのため、水Waを無駄にすることなく、有効利用することができる。
【0072】
そして、制御部5は、一定時間上記オーバーフローを行わせた後、バルブ25に再度作動信号を送って、排出路18の閉塞を解除させる。これにより、水位が徐々に減少して再度元の水位となる。その後制御部5は、次の薄切片Mを搬送してくるように搬送機構6に信号を送って作動させる。そして、上述した動作を繰り返して、次の薄切片Mを処理ポイントP2まで搬送すると共に、スライドガラスG上に載置させる。これを複数回繰り返すことで、スライドガラスG上に薄切片Mが載置された薄切片標本を必要枚数作製することができる。
【0073】
ここで、上述した薄切片Mの搬送中において、制御部5が内部タイマをカウントし始めてから予め決められた所定時間経過しても、いまだ感知センサ4から感知信号が送られて来ない場合(S3においてNOの場合)には、該制御部5は、搬送中に何らかの不具合が生じたと判断する。例えば、水路2の途中で薄切片Mが詰まったり、薄切片Mが破けたりする等の不具合が生じたと判断する。すると制御部5は、この場合にもバルブ25に作動信号を送って排出路18を閉塞させ、水Waを水路2から溢れ出させる。これにより、不具合が生じた薄切片Mを水Waと一緒に水路2外に排除することができ、次の薄切片Mの搬送に備えることができる。このように搬送途中で薄切片Mに何らかの不具合が生じたとしても、これらの不具合に即座に対応して該不具合を最小限の範囲に抑えることができ、薄切片Mの無駄な消費を抑えることができる。
【0074】
上述したように、本実施形態に係る薄切片搬送装置1によれば、包埋ブロックBから作製された薄切片Mを、予め決められた向き(縦向き)に調整しながら、スライドガラスGで掬い取る処理ポイントP2まで搬送することができ、作業者にかかる負担を極力減らすことができる。
【0075】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る薄切片搬送装置の第2実施形態を、図13から図15を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、1種類の薄切片Mしか対応できなかったのに対し、第2実施形態では、サイズの異なる2種類の薄切片Mに対応することができる点である。
【0076】
即ち、本実施形態の薄切片搬送装置30は、図13に示すように、底面31aから離間するにつれて互いの間隔が広がるように階段状に形成された2つの側面31bを有する水路31を備えている。具体的には、図14に示すように、水路31を断面視したときに、2つの側面31bが2段に形成されている。そして2段目の側面31bの間隔X1が、3つの各領域において1段目の側面31bの間隔X2よりも2割程度広くなっている。
【0077】
また、本実施形態の薄切片搬送装置30は、図13に示すように、第1の貯水槽15と水路31との間に上下に可動する可動板32が設けられている。この可動板32は、制御部5によって制御されており、水路31の底面31aとの隙間が自在に調整できるようになっている。これにより、第1の貯水槽15から水路31に流れ込む流量を制限することが可能とされている。なお、第1の貯水槽15の蓋部15bは、図を見易くするため図示を省略している。
【0078】
また、第2の貯水槽16の仕切り板16aにも同様に、上下に可動する可動板33が設けられている。この可動板33もまた制御部5によって制御されるようになっている。この可動板33は、最も下方に下げたときに、水路31の底面31aと略同じ高さになり、最も上方に上げたときに、水路31の上面と略同じ高さになるように設定されている。
そして、この両可動板32、33を上下に可動させることで、水位のコントロールを行うことができるようになっている。
【0079】
また、本実施形態の薄切片搬送装置30は、回収槽12の内側に嵌り込むように水路31、第1の貯水槽15及び第2の貯水槽16が設けられており、第2の貯水槽16に隣接した位置に部屋が確保されている。そして、バルブ25を作動させて排出路18を閉塞させたときに、水路31から溢れ出た水Waが、第2の貯水槽16を乗り越えて、全てこの部屋に流れ込むようになっている。つまり、この部屋が回収槽12として機能する。また、この回収槽12に流れ込んだ水Waは、排水口12bを介して回収管路26を通り貯水タンク19へと回収されていく。
【0080】
このように構成された薄切片搬送装置30を利用して、サイズの異なる2種類の薄切片Mを搬送する場合について説明する。
まず、可動板33を水路31の1段目の半分程度の高さまで上昇させると共に、可動板32を底面31aから所定量だけ上昇させる。その後、第1の貯水槽15に水Waを供給して、水路31に水Waを流す。水路31に流れた水Waは、可動板33の高さまで水位が上昇した後、該可動板33を乗り越えて第2の貯水槽16に流れ、排水口16bから排出路18に排出されていく。よって、図14に示すように、水位を水路31の1段目に収まるように調整することができる。その後、最初の薄切片Mを水路31に流して処理ポイントP2まで搬送する。搬送時の作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0081】
次に、最初に搬送した薄切片Mよりもサイズの大きい薄切片Mを搬送する場合には、可動板33を水路31の2段目の半分程度の高さまで上昇させると共に、可動板32をさらに底面31aから離間させて水量を増加させる。これにより、図15に示すように、水Waの水位を水路31の2段目に収まるように調整することができる。その結果、さらにサイズの大きい薄切片Mを水路31に流すことができ、処理ポイントP2まで搬送することができる。
【0082】
上述したように、本実施形態の薄切片搬送装置30によれば、両可動板32、33を上下に可動させることで、水Waの水位を容易に調整して、水面レベルで側面31b間の間隔を容易に広げることができる。従って、サイズの異なる2種類の薄切片Mを容易に搬送することができる。よって、使い易く、機能性を高めることができる。
【0083】
なお、本実施形態では、水路31が2段に形成されている場合を例に挙げて説明したが、2段に限られず、3段以上の多段に水路31を形成しても構わない。こうすることで、さらにサイズの異なる多種類の薄切片Mを搬送することができる。
また、水路31を断面視したときに、階段状ではなくテーパー状となるように水路31を形成しても構わない。
【0084】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0085】
例えば、上記各実施形態では、処理ポイントP2まで搬送されてきた薄切片Mを、把持ロボット7を利用してスライドガラスG上に掬い取る構成にしたが、把持ロボット7ではなく従来通り作業者が手作業で薄切片Mを掬い取っても構わない。この場合であっても、薄切片Mが全て縦向きに揃った状態で搬送されてくるので、従来のように薄切片Mの向きを1枚1枚確認する必要がない。従って、作業者にかかる負担を軽減でき、作業効率を向上することができる。但し、上述したように、把持ロボット7を備えることで、作業効率を大幅に軽減することができる。
【0086】
また、水路2、31の内面に、フッ素樹脂材料をコーティングしておくことが好ましい。こうすることで、内面の滑り性を向上することができるので、摩擦による薄切片Mの引っ掛かりをできるだけなくして、より円滑に薄切片Mを搬送することができる。そのため、薄切片Mをより確実に処理ポイントP2まで搬送することができる。
【0087】
また、水Waを利用した場合を説明したが、水路2、31に貯留する液体は水Waに限定されるものではない。例えば、水Waに何らかの物質を混合させた化学液でも構わない。また、水Waを使用する場合には、薄切片Mを構成するパラフィン(包埋剤N)が溶けない程度の温度まで温めた水Waを使用しても構わない。こうすることで、薄切片Mを搬送する際に、伸展させ易くなる。
【0088】
また、図16に示すように、第1の貯水槽15の上方を塞いでいる蓋部15bの一部分に、水Waとの間に隙間Fを確保すると共に、外部と連通した連通孔15cを有する隆起部15dを設けると良い。こうすることで、仮に第1の貯水槽15に供給されてきた水Waの中に気泡が混入していたとしても、該気泡を水路31側に流す前に、隆起部15dが作りだす隙間Fに集めることができる。また、この隙間Fに集まった気泡内の空気は、連通孔15cを介して蓋部15bの外部に放出される。従って、泡立ちがない水Waを水路31に確実に流すことができ、より安定した状態で薄切片Mを搬送することができる。
なお、連通孔15cにダクトを取り付けて、このダクトを通じて気泡を外部に放出しても構わない。
【0089】
また、上記各実施形態では、薄切片Mを縦向き(長辺が流れに対して平行となる向き)状態で搬送ポイントP1に搬送されるように水路2、31を構成したが、この向きに限定されるものではない。予め決められた向きで搬送ポイントP1に搬送されるように、水路2、31を構成すれば良い。
【0090】
また、上記各実施形態では、水路2、31を直線状に構成したが、この場合に限られず、自由に設計して構わない。
例えば、図17に示すように、途中で屈曲するように、底面41a及び2つの側面40bからなる水路40を構成しても構わない。この場合においても、水路40は、第1のテーパー領域E1と、方向転回領域E2と、第2のテーパー領域E3とから構成されており、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0091】
即ち、図18に示すように、薄切片Mが縦向き状態で搬送ポイントP1において水面に浮かんだ場合には、そのままの状態で水Waの流れに乗って、第1のテーパー領域E1、方向転回領域E2及び第2のテーパー領域E3を通過して、処理ポイントP2に達する。
また、図19に示すように、薄切片Mが、縦向きが若干斜めになった状態で搬送ポイントP1において水面に浮かんだ場合には、縦向き状態と同様にそのままの状態で水Waの流れに乗って、第1のテーパー領域E1及び方向転回領域E2を通過して、処理ポイントP2に達する。
【0092】
一方、図20に示すように、薄切片Mが横向き状態で搬送ポイントP1において水面に浮かんだ場合には、そのままの状態で水Waの流れに乗って第1のテーパー領域E1を通過し、方向転回領域E2に流れる。そして、薄切片Mは、長辺が段部10に当たると共に、転回空間11内で少なくとも45度以上転回する。そして、縦向き状態或いは縦向きが若干斜めになった状態で、方向転回領域E2を脱し、第2のテーパー領域E3に流れる。そして、この第2のテーパー領域E3にて、向きが調整されて最終的には縦向きになった状態で処理ポイントP2に達する。
【0093】
また、図21に示すように、薄切片Mが、横向きが若干斜めになった状態で搬送ポイントP1において水面に浮かんだ場合には、この第1のテーパー領域E1にて向きが調整され、横向きになった状態で方向転回領域E2に流れる。この後は、上述した図20に示す場合と同様の動きにより、最終的には縦向きになった状態で処理ポイントP2に達する。
このように、途中が屈曲した水路40であっても、薄切片Mを縦向きにした状態で処理ポイントP2まで確実に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る薄切片搬送装置で搬送される薄切片を示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は薄切片のサイズを示す図である。
【図2】本発明に係る薄切片搬送装置の第1実施形態を示す上面図である。
【図3】図2に示す薄切片搬送装置の断面矢視A−A図である。
【図4】図2及び図3に示す薄切片搬送装置の断面矢視B−B図である。
【図5】図2に示す薄切片搬送装置の水路の一部を拡大した図である。
【図6】図2に示す薄切片搬送装置により、薄切片を搬送ポイントから処理ポイントまで搬送する際のフローチャートである。
【図7】図2に示す薄切片搬送装置により搬送される薄切片の軌跡を図示したものであって、薄切片が縦向き状態で搬送ポイントから流れた場合の図である。
【図8】図2に示す薄切片搬送装置により搬送される薄切片の軌跡を図示したものであって、薄切片が横向き状態で搬送ポイントから流れた場合の図である。
【図9】図2に示す薄切片搬送装置により搬送される薄切片の軌跡を図示したものであって、薄切片が縦向きから若干斜めになった状態で搬送ポイントから流れた場合の図である。
【図10】図2に示す薄切片搬送装置により搬送される薄切片の軌跡を図示したものであって、薄切片が横向きから若干斜めになった状態で搬送ポイントから流れた場合の図である。
【図11】図2に示す薄切片搬送装置の第2の貯水槽を拡大した断面図であって、水をオーバーフローさせて、水路から溢れさせている状態を示した図である。
【図12】図11に示す状態における、水路の断面図である。
【図13】本発明に係る薄切片搬送装置の第2実施形態を示す斜視図である。
【図14】図13に示す薄切片搬送装置の水路の断面図であって、水の水位が1段目に調整された状態で薄切片が搬送されている状態を示す図である。
【図15】図13に示す薄切片搬送装置の水路の断面図であって、水の水位が2段目に調整された状態で薄切片が搬送されている状態を示す図である。
【図16】第1の貯水槽に上方に設けた蓋部の変形例を示す図であって、水面との間に隙間を作る隆起部が形成された蓋部を示す図である。
【図17】薄切片搬送装置の変形例を示した上面図であって、途中で屈曲した水路を有する薄切片搬送装置の図である。
【図18】図17に示す薄切片搬送装置により搬送される薄切片の軌跡を図示したものであって、薄切片が縦向き状態で搬送ポイントから流れた場合の図である。
【図19】図17に示す薄切片搬送装置により搬送される薄切片の軌跡を図示したものであって、薄切片が縦向きから若干斜めになった状態で搬送ポイントから流れた場合の図である。
【図20】図17に示す薄切片搬送装置により搬送される薄切片の軌跡を図示したものであって、薄切片が横向き状態で搬送ポイントから流れた場合の図である。
【図21】図17に示す薄切片搬送装置により搬送される薄切片の軌跡を図示したものであって、薄切片が横向きから若干斜めになった状態で搬送ポイントから流れた場合の図である。
【符号の説明】
【0095】
B 包埋ブロック
E1 第1のテーパー領域
E2 方向転回領域
E3 第2のテーパー領域
F 蓋部と水面との隙間
G スライドガラス(基板)
M 薄切片
P1 搬送ポイント
P2 処理ポイント
P3 スリット空間(整流手段)
S 生体試料
Wa 水(液体)
1、30 薄切片搬送装置
2、31、40 水路
2a、31a、40a 水路の底面
2b、31b、40b 水路の側面
3 流動手段
4 感知センサ
5 制御部
10 段部
11 転回空間
12 回収槽
15 第1の貯水槽
15b 蓋部
15d 隆起部
15c 連通孔
16 第2の貯水槽
17 供給路(第1の管路)
18 排出路(第2の管路)
19 貯水タンク(貯液タンク)
20 供給ポンプ
25 バルブ
26 回収管路




【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切して作製された矩形状の薄切片を、該薄切片が搬送されてきた搬送ポイントから、基板に掬い取られて処理される処理ポイントまで搬送する薄切片搬送装置であって、
底面と対向する2つの側面とで囲まれた空間に液体が貯留され、前記搬送ポイント及び前記処理ポイントを通過するように配置された水路と、
前記貯留された液体を前記水路に沿って前記搬送ポイントから前記処理ポイントに向けて流動させ、前記薄切片を液体の流れに乗せて移動させる流動手段とを備え、
前記水路は、前記薄切片が前記処理ポイントに達したときに、該薄切片の向きが予め定められた向きとなるように姿勢を調整しながら移動させることを特徴とする薄切片搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薄切片搬送装置において、
前記水路は、前記搬送ポイントから前記処理ポイントに向けて順に配置された第1のテーパー領域と、方向転回領域と、第2のテーパー領域とからなり、
前記第1のテーパー領域では、前記2つの側面間の間隔が前記方向転回領域側で前記薄切片の長辺と略同じ長さになるように、2つの側面が前記搬送ポイント側から漸次間隔が変化するテーパー状に形成され、
前記方向転回領域では、前記2つの側面のうちいずれか一方の側面に形成され、前記薄切片の長辺が流れに対して垂直となる横向き状態で薄切片が前記第1のテーパー領域を通過したときに、薄切片の長辺に接触する段部と、2つの側面の間に設けられ、段部と長辺との接触点を中心として薄切片を転回させる転回空間とが設けられ、
前記第2のテーパー領域では、前記2つの側面間の間隔が前記処理ポイント側で前記薄切片の短辺と略同じ長さになるように、2つの側面が前記方向転回領域側から漸次間隔が変化するテーパー状に形成され、薄切片の長辺が流れに対して平行となる縦向き状態で薄切片を通過させることを特徴とする薄切片搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薄切片搬送装置において、
前記流動手段は、
前記搬送ポイントよりも上流側で前記水路に接続された第1の貯水槽と、
前記処理ポイントで前記水路に接続された第2の貯水槽と、
前記第1の貯水槽に接続され、前記液体が内部を流れる第1の管路と、
前記第2の貯水槽に接続され、前記液体が内部を流れる第2の管路と、
前記第1の管路及び前記第2の管路にそれぞれ接続された貯液タンクと、
前記第1の管路に設けられ、前記第1の貯水槽から前記第2の貯水槽に向かう方向に前記液体を送り出す供給ポンプとを備えていることを特徴とする薄切片搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の薄切片搬送装置において、
前記第1の貯水槽には、該第1の貯水槽に溜まった前記液体の水位を一定量に規制する蓋部が設けられていることを特徴とする薄切片搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の薄切片搬送装置において、
前記蓋部の一部分には、前記液体との間に隙間を確保すると共に、外部と連通した連通孔を有する隆起部が設けられていることを特徴とする薄切片搬送装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の薄切片搬送装置において、
前記第1の貯水槽に隣接して設けられ、前記搬送ポイントから前記処理ポイントに向けて前記液体の流れを整える整流手段を備えていることを特徴とする薄切片搬送装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載の薄切片搬送装置において、
前記第2の管路を閉塞可能なバルブと、
該バルブによって前記第2の管路を閉塞したときに、前記水路から溢れた前記液体を回収する回収槽と、
該回収槽と前記貯液タンクとの間に接続され、回収された前記液体が内部を流れる回収管路とを備えていることを特徴とする薄切片搬送装置。
【請求項8】
請求項7に記載の薄切片搬送装置において、
前記処理ポイントに搬送されてきた薄切片を感知する感知センサと、
前記薄切片が前記搬送ポイントに搬送されてきてから所定時間内に前記感知センサからの感知信号を受信したときに、受信してから一定時間経過後に前記バルブを作動させて前記第2の管路を閉塞させる制御部とを備えていることを特徴とする薄切片搬送装置。
【請求項9】
請求項8に記載の薄切片搬送装置において、
前記制御部は、前記薄切片が前記搬送ポイントに搬送されてきてから、前記所定時間が経過してもまだ前記感知信号を未受信のときに、前記バルブを作動させて前記第2の管路を閉塞させることを特徴とする薄切片搬送装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の薄切片搬送装置において、
前記2つの側面が、前記底面から離間するにつれて互いの間隔が広がるように設けられていることを特徴とする薄切片搬送装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の薄切片搬送装置において、
前記水路の内面には、フッ素樹脂材料がコーティングされていることを特徴とする薄切片搬送装置。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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