説明

薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子とその製造方法

【課題】 薄板状形態を保持したままの、シリカ骨格中のSiを他金属で置換した、多孔質シリカ金属複合体粒子とその製造方法等の新しい技術手段を提供する。
【解決手段】 下記式
(Si1-nn)O2
式中、Mは多価金属を表し、
nはゼロを含まない0.1以下の数である、
で表される化学的組成を有する薄板状シリカ金属複合体粒子であって、厚さが0.5μm未満の、シリケート骨格中のSi原子が多価金属で置換されていることを特徴とする薄板状シリカ金属複合体粒子とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム状に規則配列した3nm(1000℃焼成物の細孔径が小さくなることによって数値を5から3に変更)以上の細孔径を有する薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子とその製造方法に関するものである。より詳細には、本発明は、非イオン性界面活性剤の円盤状分子集合体形成能に基づいて、アルカリ珪酸塩から生成するシリカ溶存種と非イオン性界面活性剤との高次規則構造体形成能を利用して、ハニカム状に規則配列した幅3nm以上の1次元メソ細孔を持ち、0.5ミクロン未満の厚さの薄片状粒子形態を有する、ミクロ構造の規則性とマクロ形態を制御した薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子とその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1992年界面活性剤のミセル規則集合体形成能に基づいて合成されるメソポーラス物質の発見以来、メソ細孔の規則構造のみならず、ミクロンからミリメートルサイズのマクロ形態まで制御した高次規則構造を有する多孔質材料の研究開発が活発に行われている(非特許文献1)。また、現在ではシリカ系のみならず金属酸化物に関するメソポーラス材料の開発も重要な研究課題となっている。合成法においても、環境への負荷の抑制並びに経済的なコスト面から、ポリマー系の非イオン系界面活性剤、またシリカ原料としてアルカリ珪酸塩を使用する方法が注目されている(非特許文献2)。
【0003】
しかし、アルカリ珪酸塩とポリマー系の非イオン系界面活性剤を同時に使用し、且つマクロ形態を制御した報告例は極めて少ないのが現状である。その例として次の数例を挙げることができる。
(1)塩酸に溶解し、2℃に維持した直鎖非イオン性ポリオキシエチレン酸性溶液に、珪酸ナトリウム水溶液を添加し、安定なミセル集合体を調整した後、20〜70℃に加温し、更にシリカの縮重合を進行させる為にフッ化物を添加して3日間の反応を行うことで、直径5μm程度の球状シリカメソ多孔体を合成している(非特許文献3)。
(2)塩酸に溶解したトリブロック共重合体溶液に、エタノールを溶媒としたTMB(1,3,5-トリメチルベンゼン)溶液を混合し、強攪拌下で珪酸ナトリウム水溶液を滴下する。さらにNaOHでpH調整し、4時間熟成することで、中空状球形メソポーラスシリカを合成している(非特許文献4)。
【0004】
また、本発明者らによって、(3)アルカリ珪酸塩と非イオン系界面活性剤としてトリブロック共重合体を使用して球状シリカ多孔体が合成できることが報告されている(特許文献1)。さらに、(4)アルカリ珪酸塩と非イオン系界面活性剤としてトリブロック共重合体を使用してロッド状並びに繊維状メソシリカ多孔体が合成できることも明らかにされている(特許文献2)。この公知技術においては、珪酸ソーダとトリブロック共重合体(商品名
Pluronic P123)を塩酸酸性溶液中において反応させ、攪拌の有無によって、単分散ロッド状並びに繊維状のシリカメソ多孔体を選択的に合成している。
【0005】
しかし、上記公知技術においては、ロッド状粒子の長さ方向(厚さ)の制御方法に関しては全く検討されておらず、薄板状のメソポーラス粒子並びに製造方法は明らかにされていない。一方、シリカ骨格中の金属元素は酸化、還元触媒発現サイト、あるいは種々の触媒担体として有用である。非イオン系界面活性剤を用いる場合、強酸性下での合成が一般的で、直接反応によってシリカ骨格中のSiを他金属で置換することは難しいことが知られている(非特許文献5)。強酸下では金属元素イオン(M)は孤立して存在し、シリカ骨格中にそのまま取り込むことができれば極めて高分散状態で存在することが期待されるが、実際にはSi−O−Mの結合が形成され難い。そのため、金属元素を含むシリカ系多孔質材料を合成するには、多くはアルカリ性条件下での直接反応、あるいは一旦作製した多孔体の細孔表面を金属元素によって化学修飾するといった間接的な方法が適用される。
【0006】
さらに、薄膜状メソポーラス物質の研究は盛んであるが、特に膜平面の垂直方向に1次元メソチャンネルが貫通した合成例は難しく、その例はほとんど知られていない。さらに、シリカ骨格中のSiを他の金属元素で置換したメソポーラス物質は種々報告されているが、強酸性下では金属イオンは孤立して存在し金属イオンが酸素イオンを介してSiと結合し難いことからメタロシリケート(シリカ骨格中のSiを他金属元素で置換したシリカ化合物)の直接合成は稀であり、これまで、金属元素を含むシリカ系多孔質材料において一次元メソ孔がハニカム状に規則配列した薄板状の形態を有するメソポーラス材料は知られていない。
【0007】
また、均一細孔を有する物質において、細孔径を拡張することは、細孔を反応場とする化学反応において、従来不可能であった大きな分子を対象とすることを可能とするもので、学術的及び実用的に極めて重要な研究課題である。ゼオライト開発の経緯、並びにメソポア多孔体の発明とその後の強い関心と現在まで衰えぬ基礎研究並びに応用開発への期待がこのことを物語っている(非特許文献6)。一方、メソポーラス材料の合成手法においては、使用する界面活性剤の種類等、反応条件によって細孔径が制御でき、特に疎水基が長くなる程、大きな細孔径を持つものが得られる傾向が認められる。また、ミセルを大きくする添加助剤1,3,5−トリメルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン等の有機化合物を使用することで細孔径の拡張が可能である。さらに、シリカメソ多孔体合成時におけるフッ化物添加効果として、シリカ骨格の形成を促進するばかりでなく(非特許文献7)、細孔径拡張効果が報告されている(非特許文献8)。さらに、非イオン系界面活性剤を用いる場合、3次元規則ミセル集合体の形成に障害のない範囲で反応温度を高くすることによってメソポア多孔体の細孔径を拡張できることが知られている。
【非特許文献1】1) Ciesla, U.; Schuth, F. Microporous Mesoporous Mater. 1999, 27,131. 2) Stein, A. Adv. Mater. 2003, 15, 763.
【非特許文献2】1) Sierra, L.; Guth, J-L. Microporous Mesoporous Mater. 1999, 28,243. 2) Kim, S.S.; Pauly, T.R.; Pinnavaia T. J. Chem. Commun. 2000, 835. 3)Kim, J.M.; Stucky, G.D. Chem. Commun. 2000, 1159. 4) Kim, S.S.; Pauly, T.R.;Pinnavaia T.J. Chem. Commun. 2000, 1661.
【非特許文献3】Boissiere, C.; Larbot, A.; van der Lee, A.: Kooyman, P.J.; Prouzet,E. Chem. Mater. 2000, 12, 2902.
【非特許文献4】Sun, Q.; Kooyman, P.J.; Grossmann, J.G.; Bomans, P.H.H.; Frederik,P.M.; Magusin, P.C.M.M.; Beelen, T.P.M.; van Santen, R.A.; Sommerdijk,N.A.J.M. Adv. Mater. 2003, 15, 1097.
【非特許文献5】Wu, S.; Han, Y.; Zou, Y.-C.; Song, J.-W.; Zhao, L.; Di, Y.; Liu,S.-Z.; Xiao, F.-S. Chem. Mater., 2004, 16, 486.
【非特許文献6】Davis, M.E. Nature 2002, 417, 813.
【非特許文献7】Boissiere, C.; van der Lee, A.; El Mansouri,A.; Larbot, A.; Prouzet,E. Chem. Commun.1999, 2047.
【非特許文献8】Bagshaw, S.A.J. Mater. Chem. 2001, 11, 831.
【特許文献1】特開2004−143026
【特許文献2】特開2003−342019
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、珪酸ソーダとトリブロック共重合体を使用してマクロ形態を制御した多孔質粒子の報告例は極めて少なく、薄板状で、しかもシリカ骨格中のSiを他金属元素で置換した薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の合成例は報告されていない。まして、薄板状のマクロ形態を保持したまま、シリカ骨格中に多価金属を導入しかつ細孔径を拡張することはこれまでにない新規な方法によってしか達成できない。
【0009】
そこで、本発明者らは、安価なアルカリ珪酸塩をシリカ源とし、無毒性の非イオン性界面活性剤をテンプレートとするとの本発明者によりこれまでに開発された技術を踏まえ、酸化、還元触媒発現サイトとしての金属元素をシリカ骨格中に有し、触媒として、あるいは触媒担体として、化学工業、環境浄化、食品工業、医療、あるいはセンサー等としての有用性が大きく期待される。薄板状形態を保持したまま、シリカ骨格中のSiを他金属で置換した、薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子とその製造方法、および前記の特徴を有する薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子において細孔径の拡張法等の新しい技術手段と、その結果得られる大細孔径薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子を提供することを課題としている。さらに、本薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は、1000℃以上の高温焼成を行っても、焼結等による粒子形態の変化は認められない薄さであり、薄板状のまましかもハニカム状の細孔の規則性を保持することが可能で、高耐熱性薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子が提供されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意検討を進め、その過程において、強酸下においてシリカ・界面活性剤の高次構造形成能と、その高次構造を円盤状とするための金属種を厳密に選択することで、最終的に薄板状形態を有し、シリカ骨格中のSiを他金属で置換した薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の合成に成功した。
【0011】
すなわち、従来の低コスト、低環境負荷な材料設計に基づいて、細孔構造、マクロ形態を薄板状に制御するために、無毒性で、生分解性の非イオン性界面活性剤を使用し、更にシリカ源として安価なアルカリ珪酸塩を用いた強酸性反応系における高次規則構造の形成過程と、添加する金属元素を選択することにより、反応中間生成物である薄板状多孔質シリカ金属複合粒子の前駆体となる界面活性剤を含んだ有機無機ナノ複合体を50℃以下の一定温度で生成させ、最終的に有機成分を取除くことにより、シリカ骨格中のSiを他金属元素で置換した厚さ0.5ミクロン未満の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子を実現した。
【0012】
さらに、50℃以下の反応温度で生成する多孔質シリカ金属複合粒子前駆体を含む懸濁液を、60℃以上のより高温において静置し熟成するだけで得られる有機無機ナノ複合体から最終的に有機成分を取除くことにより、シリカ骨格中のSiを他金属元素で置換した厚さ0.5ミクロン未満で、かつ細孔径がより大きな薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子が製造できることを見出した。
【0013】
本発明は以上のような全く新しい、従来では予期することのできない知見を踏まえて完成されたものである。すなわち、本発明によれば、
1.下記式
(Si1−n)O
式中、Mは多価金属を表し、
nはゼロを含まない0.1以下の数である、
で表される化学的組成を有し、走査型顕微鏡観察により薄板状粒子の薄板の厚さが0.5μm未満であり、シリケート骨格中のSi原子が多価金属で置換されていることを特徴とする薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子が提供される。
本発明の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子においては、
2.多価金属Mによる置換によりアンモニア昇温脱離スペクトル測定によるピークが100〜400℃に存在し、固体酸性を有すること、
3.透過型電子顕微鏡観察により、薄板平面に対し垂直方向に一次元チャンネル状細孔が貫通して存在し且つチャンネル状細孔がハニカム状に規則配列していること、
4.回折角0.5乃至5度(CuKα)に細孔の規則配列構造を示すX線回折ピークを有すること、
5.前記薄板状粒子のBET比表面積が500m/g以上且つメソ細孔径が5〜20nmの範囲にあり、全細孔容積が0.5ml/g以上を有すること
が好ましい。
【0014】
また、本発明によれば、酸に溶解した非イオン性界面活性剤の溶液に、アルカリ珪酸塩水溶液を攪拌しながら混合し、生成する非イオン性界面活性剤を含んだ有機無機ナノ複合体と反応溶液との懸濁溶液に、金属塩を添加して、たとえば10秒から20分間攪拌後、攪拌を停止し、そのまま一定時間静置してメソポア多孔体前駆体を薄板状に成長させ、最終的に有機成分を除去することを特徴とする薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の製造方法が提供される。
【0015】
すなわち、本発明の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の製造方法においては、
6.酸性水溶液及び非イオン性界面活性剤の混合液に、アルカリ珪酸塩水溶液の反応温度15℃乃至50℃の温度での攪拌下の混合と多価金属の金属塩の添加を行い、10秒〜20分間経過後、攪拌を停止し、一定時間熟成した後に得られた固形反応物中の非イオン性界面活性剤を除去することを特徴としている。そして、本発明のこの方法においては、
7.攪拌を停止し、そのまま静置するか、あるいは60〜200℃で静置して熟成させた後に固形反応物中の非イオン性界面活性剤を除去すること、
8.アルカリ珪酸塩中のSiO1モル当たり、非イオン性界面活性剤を0.01乃至0.02モルの量、酸を4乃至7モルの量、水を150乃至400モルの量、さらに金属塩を0.02乃至0.40モルの量で用いること、
が好ましい。
さらに、本発明の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子を850℃以上の高温で加熱して高耐熱性薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子が得られる。
【0016】
すなわち、本高耐熱性薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子においては、
9.シリケート骨格中の多価金属Mの一部あるいは全てが金属酸化物として結晶化され、薄板の厚さが0.5μm未満を維持すること、
10.透過型電子顕微鏡観察により、薄板平面に対し垂直方向に一次元チャンネル状細孔が貫通して存在し且つチャンネル状細孔がハニカム状に規則配列し、150m2/g以上
のBET比表面積を有し、且つ細孔径分布ピークが3から10nmに存在し、0.2ml/g以上の全細孔容積を有すること、
が好ましい。
【0017】
そして、本発明においては、上記のとおりの薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子について、これを用いた、樹脂または塗料用ナノコンポジット材料、フィルム状成型体用ナノコンポジット材料、吸着もしくは分離剤、光触媒またはその担体、酸化触媒またはその担体をも提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、安価なアルカリ珪酸塩をシリカ源として用い、安全性の高い非イオン性界面活性剤をテンプレートとして使用し、更に比較的短時間で、薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子が提供される。
【0019】
また、本発明によれば、細孔構造の制御剤として非イオン性界面活性剤を使用し、アルカリ珪酸塩水溶液と酸性水溶液を混合する極めて単純な反応系において、多孔体の前駆体となる界面活性剤を含んだ円盤状の有機無機ナノ複合体を比較的短時間で選択的に作製し、最終的に有機物を取除くことによる、薄板状シリカ多孔質粒子及びシリカ骨格中のSiを他金属で置換した薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の製造方法が提供される。
【0020】
しかも、本薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は、薄板状形態を有すると同時に、薄板面を垂直に貫通する1次元メソチャンネル孔がハニカム状に規則配列していることが大きな特徴である。
【0021】
さらに、上記常温付近、常圧下で薄板状多孔体の前駆体となる界面活性剤を含んだ有機無機ナノ複合体を、より高温下で静置・熟成することによって、細孔径の大きな薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子並びにその製造方法が提供される。
【0022】
本発明による薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は、メソ孔と連結してマイクロ孔が共存する場合には、その特異な細孔構造に基づく強い吸着作用と高い粒子内拡散能を利用して、環境汚染排出ガス状物質等の浄化プロセスへの応用、あるいはゼオライトやシリカゲルに代わるシリカ系多孔体として新規用途を導くことが期待される。さらに、薄板状形態を利用することによって、樹脂添加剤、インク吸着用フィラー、増粘剤等の用途や、さらには単独乃至他の無機物質および有機化合物と混合することによりフェルト様に加工成型し、各種フィルター素材として広く利用することが可能である。特に、細孔径が広範囲に制御できることから、大きなメソ孔を利用することによって、酵素あるいは有機官能基を有する大きな分子の吸着・分離・吸蔵・固定剤等として利用することができる。また、薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は、シリカ骨格中の金属元素が触媒能発現の活性サイトとなり酸化触媒、還元触媒あるいはそれらの触媒担体として、光触媒等を含め種々の用途に使用できる。さらに、1000℃の高温でもハニカム状の規則配列構造を有することから、上記各種応用に際し高温環境において耐熱性多孔性材料としての利用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明では、ミクロンオーダーの薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子とその製造において、シリカ源としてアルカリ珪酸塩を用い、金属アルコキシド等の高価な有機シリカを使用する必要がないこと、テンプレートとして高価な4級アンモニウム塩等を使用せずに無毒性、生分解性、安価な非イオン性界面活性剤を使用できること、また温和な温度条件下、短時間で薄板状粒子を高収率で得られること、特に添加する金属種を選択することによって、多孔質シリカ金属複合粒子を薄板状に制御できることを大きな特徴としている。そして、このような特徴は全く新規なもので、従来の技術からは予期できないものである。
【0024】
本発明による薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は、既に指摘した通り、薄板状の形状を呈すると同時に、薄板状平面に垂直に1次元メソチャンネルが貫通してハニカム状に細孔が規則配列しており、このような薄板状多孔質粒子の生成機構は以下のように推定される。
【0025】
アルカリ珪酸塩は強酸性水溶液下でシリカ溶存種がプラスに帯電し[I]、一方、強酸に溶解した非イオン性界面活性剤[N]においても、界面活性剤表面の親水基部分がプロトン[H]に覆われることでプラスの電荷を帯び、プラスに帯電したシリカ溶存種、界面活性剤の両表面間に陰イオン[X]が介在することで、電気的に安定なメソ構造体[N
][X]を形成すると推定される。この時、非イオン性界面活性剤は自己秩序形
成能を有し、複数の分子によって構成された球状集合体がさらに高次の2次元六方晶のロッド状ミセルを形成し、シリカ溶存種が存在しても、両者間における協調的な秩序形成が進行し、ロッド状有機無機メソ構造体が生成することになる。このロッド状有機無機メソ構造体の伸張方向の長さを短く保ち、それぞれの粒子の凝集を抑制することで、薄板状の形態を有する粒子が得られることになる。有機成分を焼成或は溶媒抽出等の処理により除去することで得られる最終生成物は、薄板状形態を有すると同時に、薄板面を垂直に貫通する1次元メソチャンネル孔がハニカム状に規則配列していることになる。更に、非イオン性界面活性剤の親水性部がシリカ骨格中に進入することによりメソ孔以外にマイクロ孔も形成される。
【0026】
上記ロッド状有機無機メソ構造体の厚さは、反応温度を比較的低く設定することで可能であるが、金属塩を添加しない、純粋なシリカ系の薄板状多孔質粒子の厚さを0.5μm未満にすることは難しい。
【0027】
本発明では、非イオン性界面活性剤の高次構造として薄いロッド状ミセル集合体、すなわち円盤状の集合体を形成させる目的で、種々の金属塩を添加し、その効果を検討した。その結果、多くの金属塩はロッド状有機無機メソ構造体を伸張させる逆の効果を示すことを見出すと共に、数種類の金属塩はロッド状構造体の伸張を抑制すると同時に、比較的高温においても同様な効果を発揮することを明らかにした。さらに、この抑制効果をもたらす金属元素は酸性条件下においてもシリカ骨格中のSiを置換する能力を有することを明らかにできた。本発明においては、上記の複合的な効果を利用することによって、シリカ骨格中のSiを金属元素で置換した、薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子が合成できることを見出した。
【0028】
さらに、金属塩の添加により生成する円盤状構造体は50〜60℃では一般に伸張してロッド状構造体に変化するが、温度の上昇により伸張が抑制され再度円盤状構造体となり、この場合非イオン性界面活性剤の親水基がより疎水性を帯びることから、最終的に大きなメソ細孔の形成を可能とすると考えられる。
【0029】
なお、有機無機メソ構造体を構成する界面活性剤の親水基はシリカ骨格内に侵入しており、その除去に伴いマイクロ孔形成の要因となり、薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は独特のマクロ形態と、メソ孔とマイクロ孔を併せ持つことになる。しかも、メソ孔は薄板面に垂直にハニカム状に規則配列している。ただし、高温になるほど親水基は疎水性を帯びマイクロ孔の形成が抑制されるようになる。
【0030】
図1A及び図1Bは、後述の実施例において例示したそれぞれTiとZrを含有する場合の本発明の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の走査電子顕微鏡写真である。いずれも幅1ミクロン、厚さ約0.3〜0.4ミクロンの六角薄板状粒子が強く凝集しない状態で存在していることがわかる。
【0031】
たとえばこのように、本発明の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子においては、走査型電子顕微鏡観察により薄板状粒子の薄板の厚さが0.5μm未満であり、シリケート骨格中のSi原子がTiをはじめとする各種の多価金属Mで置換され、前記のとおりの(Si1-n)O2の化学組成を有している。ここで、係数nは0.1以下の数である。たとえば、後述の実施例として示した表1においては金属含有両の値を100で割った値として、この係数nは、薄板状では0.011〜0.047となる。
【0032】
図2は、図1に示した本発明の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子のそれぞれの透過型電子顕微鏡写真である。いずれも、薄板状平面に垂直に1次元メソチャンネルが貫通し且つこのチャンネル状細孔がハニカム状に規則配列していることがわかる。
【0033】
本発明の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は、シリケート骨格中のSiを他の金属原子で置換したことに起因して固体酸性を有する。図3、図7および図8は、Ti、Zrを含有する場合の本発明の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子について例示したアンモニア昇温脱離スペクトルである。脱離ピークがいずれの場合も100〜400℃に存在することから、金属サイトに起因する固体酸性が発現することがわかる。
【0034】
また、図4は、本発明のTiをシリカ骨格中に含む薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の紫外可視分光スペクトルである。220nmの顕著なピークは、シリケート骨格中のSiがTiによって置換されたことを明示するものである。
【0035】
図5および図11は、本発明の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の粉末X線回折パターン(X線源:CuKα)で、回折角2θ=0.5乃至5.0度にメソ孔の規則配列を示す複数のピークが認められる。
【0036】
本発明の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は、いずれもIV型の吸着等温線を持ち、一次粒子内にメソ孔を持つこと、さらに図6、図9および図10の細孔径分布曲線(BJH法)からシャープな細孔径分布を有していることが明らかで、本細孔特性評価はXRD回折並びにTEM像の結果からも裏付けられる。そして、本発明によれば、薄板状粒子のBET比表面積が500m2/g以上で、かつ、メソ細孔径が5〜20nmの範囲にあり
、全細孔容積が0.5ml/g以上を有する多孔質シリカ金属複合体粒子が提供される。
【0037】
さらに、図12AのTEM像は、本薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子が、たとえば1000℃の高温においてもハニカム状に規則配列した細孔構造を保持することを明示するもので、このことは図13AのXRD回折パターンに複数のピークが認められることから支持される。また、図12BのTEM像から、高温焼成によりSiと置換していたZrがZrOとして結晶化し、5nm以下のナノ粒子としてシリカマトリックス中に高分散状態で存在することが分かる。ZrOナノ粒子の存在状態は、図13BのXRD回折パターンのブロードなピークとして認められる。
【0038】
マイクロ孔に関しては、製造方法の具体的形態によっても制御されることになる。たとえば製造方法については、その代表的な形態として、酸性水溶液及び非イオン性界面活性剤の混合液に、反応温度15℃〜50℃の範囲において、
<A>アルカリ珪酸塩水溶液を攪拌下に混合し、その後直ちに多価金属の金属塩を添加し、10秒〜20分間後に攪拌を停止し、そのままの温度で一定時間熟成した後に、もしくは、
<B>アルカリ珪酸塩水溶液を攪拌下に混合しながら多価金属の金属塩を添加し、10秒〜20分間後に攪拌を停止し、60℃〜200℃の温度範囲に静止して一定時間熟成した後に、得られた固形反応物中の非イオン性界面活性剤を除去する方法が示される。
【0039】
前者の<A>製造方法(表1)では全細孔容積の内0.08ml以上の細孔容積を有する。一方、<B>製造方法(表2)では、細孔特性は熟成温度に顕著に依存すること、また含有される金属元素による依存度の差異が明瞭である。Zrを含む場合には、特にマイクロ孔容積は熟成温度の上昇によって著しい減少が認められるが、細孔径は10nm以上で全細孔容積は1ml/g以上と大きな値を示す。
【0040】
本発明における多価金属については、シリケートのSi原子を置換するものとして各種であってよいが、代表的には、原子価4をとるTi,Zrや、原子価3〜5をとるCr,V,MnあるいはSn,Ge,等が好適なものとして例示される。
【0041】
本発明の製造方法について説明すると、まず、酸性水溶液及び非イオン性界面活性剤の混合液に、アルカリ珪酸塩水溶液を15℃〜50℃の範囲で攪拌下に混合する。また、この混合後、もしくは混合しながら多価金属の金属塩を添加する。そしてその添加終了後に10秒〜20分間経過した後に攪拌を停止する。この停止後に静止して得られる固形反応物中の非イオン性界面活性剤を除去する。
【0042】
図14Aは、金属塩を添加せず25℃で得られた純粋な薄板状シリカ多孔質粒子のSEM像であり、反応温度が低い場合にも、厚さ0.5ミクロン以下の薄板状に制御することは難しい。また、図14Bは、純粋なシリカ多孔質粒子の場合、わずかに反応温度を上げるだけで薄板状からロッド状に変化してしまうことを示している。一方、図1Aは比較的高い温度である36℃で得られた薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子であり、さらに図1Bは25℃で生成する反応中間体を150℃で熟成して得られた薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子であり、金属塩の添加が薄板状粒子の厚さを減少させるために極めて有効であることを明示している。
【0043】
本発明の製造法においては、純粋な薄板状多孔質シリカ粒子は比較的低温下でしか生成しないが、金属塩の添加によって薄板状粒子の生成温度範囲が広くなると同時に厚さも薄くなることが大きな特徴である。金属塩の添加時間は、生成物の凝集状態に影響を及ぼすが、反応開始(2種類の反応溶液の混合時点)から、10分を超えて添加すると、薄板状粒子は凝集するものの、大きなフロックに成長することはない。金属塩の添加量も、薄板状粒子の厚さ、凝集状態に大きな影響を及ぼし、少なすぎても過剰であっても凝集し易くなると同時に薄板が厚くなる傾向が認められる。また、反応温度も薄板状粒子の厚さ、凝集状態に大きな影響を及ぼす。攪拌と熟成を同一温度で行う場合には、その温度が高すぎると凝集し易くなると同時に薄板も厚くなり易い。一方、熟成温度を攪拌時よりも高くすると、薄板状粒子が得られるようになり比較的凝集の程度が弱くなる傾向がある。
【0044】
本製造法において、規則的に配列したメソ孔を有する薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の前駆体を、15〜50℃の常圧下において短時間で製造できる。特に、本製造法においては、シリカ骨格中のSiを他金属で置換した薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子が得られ、金属種によって細孔径、細孔容積等の制御が可能である。さらに、前記の特徴を有する薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子において細孔径の拡張法等の新しい技術手段と、その結果得られる大細孔径薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子が提供される。
【0045】
本発明の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は、所定の濃度の酸に溶解した非イオン性界面活性剤溶液と、水で希釈したアルカリ珪酸塩水溶液を攪拌下に混合し一定時間経過後、金属塩を添加した後、攪拌を停止し、一定時間静置することにより、非イオン性界面活性剤とシリカ及び金属溶存種との協調的秩序形成能に基づいて生成する非イオン性界面活性剤を包含したシリカ金属複合体である多孔体前駆体から、最終的に非イオン性界面活性剤を焼成或は溶媒抽出等の手段により除去することで作製される。
【0046】
さらに、本薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は、850℃以上の高温焼成を行っても、焼結等による粒子形態の変化は認められない薄さであり、薄板状のまましかもハニカム状の細孔の規則性を保持することが可能で、高耐熱性薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子が提供されることになる。この場合の焼成温度としては850℃〜1500℃の範囲が好適に考慮される。さらには950℃〜1200℃の範囲が考慮される。
[原料]
本発明で使用される、シリカ原料、非イオン性界面活性剤、酸、及び金属塩について更に説明する。
【0047】
本発明で使用されるシリカ原料としては、アルカリ珪酸塩を使用することが可能で、比較的廉価であるナトリウム珪酸塩が好ましい。ナトリウム珪酸塩としてはNaO・mSiO式中、mは1乃至4の数、特に2.5乃至3.5の数である組成を有するナトリウム珪酸塩水溶液を使用することが好ましい。
【0048】
非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレンオキシド(PEO)を含む高分子界面活性剤が使用でき、特にPEOを含むトリブロック共重合体が好ましく、さらにはポリエチレンオキシドーポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド(PEO−PPO−PE
O)の使用が最適である。
【0049】
本発明で使用される、トリブロック共重合体の重合比、平均分子量並びに疎水基の重量割合が重要であり、その平均分子量は約4800以上で、疎水基の重量割合が、重量65%以上であることが望ましい。
【0050】
本発明で使用される金属塩として、シリカ骨格中のSiを強酸性下で置換することにできるTi、Zr、V等を含む塩化物、硝酸塩、硫酸塩、オキソ酸素酸塩が利用できる。
【0051】
酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等が使用できる。
【0052】
本発明の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の合成において、出発原料の混合モル比は、SiO:非イオン性界面活性剤:酸:金属塩:水 =1:0.01〜0.02:4〜7:0.02〜0.4:150〜400であるのが好ましい。
【0053】
更に、出発原料の混合方式を詳細に記述すると、薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子合成においては、所定の濃度の酸に溶解した非イオン性界面活性剤溶液(A)に、水に希釈したアルカリ珪酸塩水溶液(B)を攪拌下で添加する。原料溶液A及びBは予め同じ所定温度に調整して混合し、攪拌しながら20秒〜5分後に金属塩の添加し、20秒から20分経過後攪拌を停止する。ここで、攪拌と静置反応を同一温度で行う場合、15〜50℃、さらに好ましくは20〜40℃で2時間から24時間静置して熟成を行う。一方、攪拌時より高温で静置反応を行う場合には、攪拌停止後反応容器をそのまま昇温するか、あるいは一定温度に保持した恒温装置に反応容器を移動し、60〜200℃、さらに好ましくは70〜180℃で30分から10時間静置し熟成する。
【0054】
上記いずれの場合も、反応後懸濁液から固体生成物を分離し、室温〜100℃で充分乾燥させる。最後に有機成分を除去して薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子を作製するために、200℃以上で2時間以上、好ましくは400℃以上で1時間加熱処理する。
[用途]
本発明による薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は、メソ孔と連結してマイクロ孔が共存する場合には、その特異な細孔構造に基づく強い吸着作用と高い粒子内拡散能を利用して、環境汚染排出ガス状物質等の浄化プロセスへの応用、あるいはゼオライトやシリカゲルに代わるシリカ系多孔体として新規用途を導くことが期待される。さらに、薄板状形態を利用することによって、樹脂添加剤、インク吸着用フィラー、増粘剤等の用途や、さらには単独乃至他の無機物質および有機化合物と混合することによりフェルト様に加工成型し、各種フィルター素材として広く利用することが可能である。特に、細孔径が広範囲に制御できることから、大きなメソ孔を利用することによって、酵素あるいは有機官能基を有する大きな分子の吸着・分離・吸蔵・固定剤等として利用することができる。さらに、薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は、シリカ骨格中の金属元素が触媒能発現の活性サイトとなり酸化触媒、還元触媒あるいはそれらの触媒担体として、光触媒等を含め種々の用途に使用できる。さらに、850℃以上、たとえば1000℃の高温でもハニカム状の規則配列構造を有することから、上記各種応用に際し高温環境において耐熱性多孔性材料としての利用が可能である。
【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されない。
【0056】
尚、実施例で行った各試験方法は次の方法により行った。
(測定法)
(1)走査型電子顕微鏡:日本電子株式会社製JSM5300を使用し、加速電圧10kV、WD10mmで観察した。
(2)比表面積・細孔径分布:日本ベル製BELSORP28を使用し、液体窒素温度で測定した窒素吸着等温線からBET比表面積を求め、細孔容積はt−プロット法により求め、細孔径分布はBJH法により解析した。
(3)形状:走査型電子顕微鏡写真から観察した。
(4)粒子サイズ:走査型電子顕微鏡写真で測定した。
(5)X線回折:リガク製ロータフレックスRU−300を使用し、CuKα線源、加速電圧40kV、80mAで測定した。
(6)高分解能電子顕微鏡:HITACHI製HF-2000を使用し、加速電圧200
kVで観察した。
(7)化学分析:試料を1000℃、2時間強熱した後、アルカリ溶融後、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES法)にて金属元素並びにSi含有量を測定した。
(8)紫外可視分光光度計:島津製作所製UV-2500を使用し、積分球方式による拡散反射
測定をBaSO4を標準物質として測定した。
(実施例1)
水を加えて希釈した市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)を、2Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic
P123 (PE
20PPO70PEO20)(平均分子量5800)(Aldrich)溶液に攪拌しながら添加
する。両原料溶液は予め所定温度37℃に調整して混合する(反応開始点)。両原料溶液を混合後素早く直ちに塩化チタン(TiCl)を添加する。添加してから、1分間で攪拌を停止して、反応開始点から6時間反応させた。混合溶液のモル比はSiO:Pluronic
P123:NaO:HCl:HO=1:0.017:0.312:5.88:201
.5であり、TiClの同モル比は0.18(実施例1−1)、0.45(実施例1−2)及び0.89(実施例1−3)である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。反応後固体生成物を濾別し、洗浄後、50℃で十分乾燥させる。最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去し薄板状Ti含有多孔質シリカ金属複合体粒子を得る。
【0057】
図1Aは、本実施例1−2の薄板状Ti含有多孔質シリカ金属複合体粒子の走査電子顕微鏡写真である。幅1ミクロン、厚さ0.3〜0.4ミクロンの六角薄板状粒子が比較的良く分散して存在していることがわかる。
【0058】
図2Aは、本実施例1−2の薄板状Ti含有多孔質シリカ金属複合体粒子の透過型電子顕微鏡写真である。薄板状平面に垂直に約5nmの1次元メソチャンネルが貫通し且つハニカム状に規則配列していることが明らかである。
【0059】
図3は本実施例のアンモニア昇温脱離スペクトルであり、Ti含有量が多くなるほど、脱離量が多いことから固体酸量が大きく、さらにピーク位置がやや高温側にシフトすることから酸強度が強くなることがわかる。
【0060】
図4は本実施例の紫外可視分光スペクトルであり、いずれも220nmに顕著なピークが認められ、しかもTi含有量が増加しても260nm付近にブロードなショルダーピークが存在せず、シリケート骨格中のSiがTiによって置換され、Tiは4配位で存在することがわかる。
【0061】
図5は、本実施例の薄板状シリカ金属複合体粒子の粉末X線回折パターン(X線源はCuKα)で、回折角2θ=0.5乃至5.0度にメソ孔の規則配列を示す複数のピークが認められる。
【0062】
図6は、本発明の薄板状Ti含有多孔質シリカ金属複合体粒子の細孔径分布曲線である。
【0063】
表1に本実施例の薄板状Ti含有多孔質シリカ金属複合体粒子中のTiモル%、BET比表面積、全細孔容積、マイクロ孔容積、さらに固体酸量を示す。
(実施例2)
水を加えて希釈した市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)を、2Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic
P123 (PE
20PPO70PEO20) (平均分子量5800)(Aldrich)溶液に攪拌しながら添加
する。両原料溶液は予め所定温度25℃に調整して混合し(反応開始点)、両原料溶液を混合後素早く塩化チタンを添加してから、1分間で攪拌を停止し、反応開始点から6時間反応させた。混合溶液のモル比はSiO:Pluronic
P123:NaO:HCl:H
=1:0.017:0.312:5.88:201.5であり、TiClの同モル比は0.45である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。反応後固体生成物を濾別し、洗浄後、50℃で十分乾燥させる。最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去し薄板状Ti含有多孔質シリカ金属複合体粒子を得る。
【0064】
本実施例の生成物の形態、メソ構造並びに固体酸性質の特徴は、実施例1の薄板状Ti含有多孔質シリカ金属複合体粒子と同様である。ただし、図6に示す通り、細孔径は小さく、反応温度によって本発明の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の細孔径は制御可能なことがわかる。表1に本実施例の薄板状Ti含有多孔質シリカ金属複合体粒子の細孔特性等を記載する。
(実施例3)
水を加えて希釈した市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)を、2Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic
P123 (PE
20PPO70PEO20) (平均分子量5800)(Aldrich)溶液に攪拌しながら添加
する。両原料溶液は予め所定温度25℃に調整して混合し(反応開始点)、両原料溶液を混合後素早くオキシ塩化ジルコニウム(ZrClO・8HO)を添加してから、1分間で攪拌を停止し、反応開始点から6時間反応させた。混合溶液のモル比はSiO:Pluronic
P123:NaO:HCl:HO=1:0.017:0.312:5.88:2
01.5であり、オキシ塩化ジルコニウムの同モル比は0.02(実施例3−1)、0.09(実施例3−2)及び0.18(実施例3−3)である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。反応後固体生成物を濾別し、洗浄後、50℃で十分乾燥させる。最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去し薄板状Zr含有多孔質シリカ金属複合体粒子を得る。
【0065】
図1Aおよび図2Aに示した実施例1における形態並びにメソ構造の特徴は、本実施例の薄板状Zr含有多孔質シリカ金属複合体粒子においても同様と認められた。また、図5には本実施例3−2の粉末X線回折パターンを示した。
【0066】
図7は本実施例のアンモニア昇温脱離スペクトルであり、Zr存在量が多くなるほど、脱離量が多いことから固体酸量が大きく、さらにピーク位置がやや高温側にシフトすることから酸強度が強くなることがわかる。
【0067】
表1に本実施例の薄板状Zr含有多孔質シリカ金属複合体粒子中のZrモル%、BET比表面積、全細孔容積、マイクロ孔容積、及び固体酸量を示す。
(実施例4)
水を加えて希釈した市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)を、2Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic
P123 (PEO20PPO70PEO20) (平均分子量5800)(Aldrich)溶液に攪拌しながら添加
する。両原料溶液は予め所定温度25℃に調整して混合し(反応開始点)、両原料溶液を混合後素早く硝酸ジルコニル(Zr(NOO・2HO)を添加してから、1分間で攪拌を停止して、反応開始点から6時間反応させた。混合溶液のモル比はSiO:Pluronic
P123:NaO:HCl:HO=1:0.017:0.312:5.88:2
01.5であり、硝酸ジルコニルの同モル比は0.05(実施例4−1)、0.10(実施例4−2)及び0.16(実施例4−3)である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。反応後固体生成物を濾別し、洗浄後、50℃で十分乾燥させる。最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去し薄板状Zr含有多孔質シリカ粒子を得る。
【0068】
図1、図2、図5に示した実施例1における形態並びにメソ構造の特徴は、本実施例の薄板状Zr含有多孔質シリカ金属複合体粒子においても同様と認められた。
【0069】
図8は本実施例のアンモニア昇温脱離スペクトルであり、Zr存在量が多くなるほど、脱離量が多いことから固体酸量が大きいことがわかる。
【0070】
図9は、本実施例の薄板状Zr含有多孔質シリカ金属複合体粒子の細孔径分布曲線である。
【0071】
表1に本実施例の薄板状Zr含有多孔質シリカ金属複合体粒子中のZrモル%、BET比表面積、全細孔容積、マイクロ孔容積、及び固体酸量を示す。
(実施例5)
水を加えて希釈した市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)を、2Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic
P123 (PE
20PPO70PEO20)(平均分子量5800)(Aldrich)溶液に攪拌しながら添加
する。両原料溶液は予め所定温度37℃に調整して混合する(反応開始点)。両原料溶液を混合後素早く直ちにオキシ塩化ジルコニウム(ZrClO・8HO)を添加し、30秒経過した後攪拌を停止し、60〜160℃の一定温度に保持した乾燥機内に反応容器を移し、反応開始点から6時間静置し熟成した。混合溶液のモル比はSiO:Pluronic
P123:NaO:HCl:HO=1:0.017:0.312:5.88:201.
5であり、ZrClO・8HOの同モル比は0.09である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。反応後固体生成物を濾別し、洗浄後、65℃で十分乾燥させる。最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去し薄板状Zr含有多孔質シリカ金属複合体粒子を得る。
【0072】
表2に、熟成温度を変化させて得られた薄板状Zr含有多孔質シリカ複合体粒子のBET比表面積、全細孔容積、マイクロ孔容積を示す。熟成温度による細孔パラメータの変化が顕著で、特に温度が高いほど細孔径が大きく、120℃以上ではマイクロ孔容積の減少が著しい。図10は細孔径分布曲線である。また、図1B及び図2Bは、それぞれ本実施例5−4の薄板状Zr含有多孔質シリカ金属複合体粒子の走査電子顕微鏡写真と透過型電子顕微鏡写真である。幅1ミクロン、厚さ0.3〜0.4ミクロンの六角薄板状粒子が比較的良く分散して存在していることがわかる。さらに、図2Bから、細孔径が拡張してもハニカム状の規則構造が保持されていることが明瞭で、図11Aに示すXRD回折パターンに認められる低角の複数のピークに対応している。一方、600℃の加熱処理においては高角のXRD回折パターン(図11B)は非晶質構造の特徴であるブロードピークだけが認められ、金属成分が酸化物として結晶化せず、シリカ骨格中に存在することを指示している。
(実施例6)
水を加えて希釈した市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)を、2Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic
P123 (PE
20PPO70PEO20)(平均分子量5800)(Aldrich)溶液に攪拌しながら添加
する。両原料溶液は予め所定温度37℃に調整して混合する(反応開始点)。両原料溶液を混合後素早く直ちに塩化チタン(TiCl)を添加し30秒経過した後、攪拌を停止し、60〜150℃の一定温度に保持した乾燥機内に反応容器を移し、反応開始点から6時間静置し熟成した。混合溶液のモル比はSiO:Pluronic
P123:NaO:HCl
:HO=1:0.017:0.312:5.88:201.5であり、TiClの同モル比は0.45である。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。反応後固体生成物を濾別し、洗浄後、65℃で十分乾燥させる。最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去し薄板状Ti含有多孔質シリカ金属複合体粒子を得る。
【0073】
表2に、熟成温度を変化させて得られた薄板状Ti含有多孔質シリカ複合体粒子のBET比表面積、全細孔容積、マイクロ孔容積を示す。細孔径分布を図10に示す。なお、SEM像、TEM像並びにXRD回折パターンはそれぞれ図1、図2、図11に相当する特徴を有している。
【0074】
従来50℃以上の高温において薄板状シリカ金属複合体粒子を製造することは不可能であったが、実施例5及び実施例6の結果から、本発明の新規製造法によって高温でも細孔の規則配列構造を有する薄板状シリカ金属複合体粒子が得られることが明らかになった(図1B、図2B)。しかも、熟成温度によって細孔径の制御でき、薄板状形態を破壊することなく、図10に示す通り高温ほど細孔径は大きく10nm以上のメソ細孔を賦与することが可能である。さらに、熟成温度を一定として、熟成時間によっても同様にマクロ形態を保持したまま細孔径を制御することも可能である。
【0075】
なお、製造方法並びに反応温度(熟成温度)による含有金属量の差異は僅かであり、したがって固体酸量への影響もほとんど認められないことから、表2の実施例全てにおいて金属含有量と固体酸量の測定は行っていない。
(実施例7)
実施例5および実施例6に記載の一部の反応生成物を1000℃まで2時間で昇温し、さらに1000℃で1時間保持し加熱生成物を作製した。表3に得られた薄板状金属含有多孔質シリカ金属複合体粒子の構造特性パラメータを示す。1000℃加熱処理生成物のBET比表面積、全細孔容積並びに細孔径は、600℃(表2)の場合と比較すると、いずれも減少し、マイクロ孔の存在は認められなくなる。しかし、薄板状形態は加熱処理温度によって変わらず、1000℃処理生成物は図1と同様なマクロ形態を有している。図12Aは本実施例7−3(表2の実施例5−4に対応)のTEM写真であり、細孔径は減少するものの、図2B同様ハニカム状に規則配列した細孔が薄板状粒子を貫通して存在することが明瞭であり、この規則配列構造は図13Aに示すXRD回折パターンの低角に存在する複数のピークとして認められる。さらに、図13Bの高角側のXRD回折パターン上に認められるZrO酸化物に帰属されるブロードピークの存在は、低温ではシリカ細孔壁中に4配位で存在したZr元素が、高温での加熱処理によってZrOに結晶化することを示している。図12Bに示す高倍のTEM写真は、ZrO粒子が5nm以下の微粒子として高分散状態で存在することを示している。
(比較例1)
水を加えて希釈した市販のJIS3号珪酸ナトリウム(SiO:23.6%、NaO:7.59%)を、2Nの塩酸に溶解したトリブロック共重合体Pluronic
P123 (PE
20PPO70PEO20) (平均分子量5800)(Aldrich)溶液に攪拌しながら添加
する。両原料溶液は予め所定温度に調整して混合し(反応開始点)、金属塩を添加せず、45秒間で攪拌を停止して、反応開始点から6時間反応させた。混合溶液のモル比はSiO:Pluronic
P123:NaO:HCl:HO=1:0.017:0.312:5.
88:201.5であり、反応温度を25℃(比較例1−1)と36℃(比較例1−2)とした。尚、HOには全ての原料由来の水が含まれている。反応後固体生成物を濾別し、洗浄後、65℃で十分乾燥させる。最終的に600℃の電気炉中で1時間焼成を行うことで有機成分を除去し薄板状多孔質シリカ粒子を得る。
【0076】
図14Aは、本比較例1−1のシリカ多孔質粒子の走査電子顕微鏡写真である。表1には細孔特性を示した。反応温度が25℃と低い場合には、薄板状の幅1ミクロン、厚さ0.6ミクロンの六角薄板状粒子が凝集して得られる。一方、図14Bから明らかなように、36℃では長さ約1ミクロンに伸張したロッド状粒子となることがわかる。
【0077】
図14並びに図1から、金属塩の添加によって、薄板状粒子の厚さが薄くなり、さらに金属によっては反応温度が高くても薄い粒子が得られることが明らかである。従って、金属塩の添加は薄板状粒子の形成を促進する作用を有していることと考えられる。
(比較例2)
実施例5に記載の一部の反応生成物を600℃で1時間加熱した生成物を、さらに1200℃まで2時間で昇温し、1200℃で1時間保持した。得られた加熱生成物についてはいずれも窒素吸着等温線を正確に測定することはできず、比表面積は5m/g以下と
推定される。XRD回折パターンにおいて、回折角0.5から5度(CuKα)の低角に回折ピークが存在しないことからも、1200℃では細孔が消失したことが分かる。高角のXRD回折パターンを1000℃と比較すると、非晶質シリカとZrOに起因するピークはブロードであるが、いずれも強度が大きくなり結晶化が進んでいることが明瞭であった。
【0078】
一方、図15に示すSEM像から、本比較例は、1200℃の高温焼成においても薄板状の形態を保持し、厚さ0.5μm未満の無孔性の薄板状シリカ金属複合体粒子が作製できることを示している。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明による薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は、メソ孔と連結して共存するマイクロ孔を利用して強吸着作用とメソ孔による粒子内拡散能に優れていることから、環境汚染排出ガス状物質等の浄化プロセスへの応用、あるいはゼオライトやシリカゲルに代わるシリカ系多孔体として新規用途を導くことが期待される。さらに、薄板状形態を利用することによって、樹脂添加剤、インク吸着用フィラー、増粘剤等の用途や、さらには単独乃至他の無機物質および有機化合物と混合することによりフェルト様に加工成型し、各種フィルター素材として広く利用することが可能である。特に、細孔径が広範囲に制御できることから、大きなメソ孔を利用することによって、酵素あるいは有機官能基を有する大きな分子の吸着・分離・吸蔵・固定剤等として利用することができる。さらに、薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は、シリカ骨格中の金属元素が触媒能発現の活性サイトとなり酸化触媒、還元触媒あるいはそれらの触媒担体として、光触媒等を含め種々の用途に使用できる。また、本薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子は、1000℃以上の高温焼成を行っても、形状並びにハニカム状の細孔配列構造を保持することから、高耐熱性薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子として上記の他種々の用途に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明のTi含有の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子(A)とZr含有の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子(B)の走査電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明のTi含有の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子(A)とZr含有の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子(B)の透過型電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明のTi含有の薄板状シリカ金属複合体粒子のアンモニア昇温脱離スペクトルである。
【図4】本発明のTi含有の薄板状シリカ金属複合体粒子の紫外可視分光スペクトルである。
【図5】本発明の薄板状シリカ金属複合体粒子のX線回折パターンである。
【図6】本発明のTi含有の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の数例についての細孔径分布曲線である。
【図7】本発明のZr含有の薄板状シリカ金属複合体粒子のアンモニア昇温脱離スペクトルである。
【図8】本発明のZr含有の場合のアンモニア昇温脱離スペクトルである。
【図9】本発明のZr含有の場合の数例についての細孔径分布曲線である。
【図10】本発明のZr並びにTi含有の場合の数例についての細孔径分布曲線である。
【図11】本発明Zr含有薄板状シリカ金属複合体粒子のX線回折パターンである。(150℃のZrロッド 600℃)
【図12】本発明の1000℃で加熱処理して作製したZr含有の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の規則配列(A)及びZrO粒子の存在と分布状態(B)を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図13】本発明の1000℃で加熱処理して作製したZr含有の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の細孔構造の規則配列(A)並びにZrO粒子の存在(B)を示すX線回折パターンである。
【図14】比較例1の2種類のシリカ多孔質粒子のSEM像である。
【図15】比較例2の無孔性Zr含有薄板状シリカ金属複合体粒子のSEM像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式
(Si1−n)O
式中、Mは多価金属を表し、
nはゼロを含まない0.1以下の数である、
で表される化学的組成を有し、走査型顕微鏡観察により薄板状粒子の薄板の厚さが0.5μm未満であり、シリケート骨格中のSi原子が多価金属で置換されていることを特徴とする薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子。
【請求項2】
多価金属Mによる置換によりアンモニア昇温脱離スペクトル測定によるピークが100〜400℃に存在し、固体酸性を有することを特徴とする請求項1に記載の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子。
【請求項3】
透過型電子顕微鏡観察により、薄板平面に対し垂直方向に一次元チャンネル状細孔が貫通して存在し且つチャンネル状細孔がハニカム状に規則配列していることを特徴とする請求項1または2に記載の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子。
【請求項4】
回折角0.5乃至5度(CuKα)に細孔の規則配列構造を示すX線回折ピークを有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子。
【請求項5】
前記薄板状粒子のBET比表面積が500m/g以上且つメソ細孔径が5〜20nmの範囲にあり、全細孔容積が0.5ml/g以上を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子。
【請求項6】
酸性水溶液及び非イオン性界面活性剤の混合液に、アルカリ珪酸塩水溶液の反応温度15℃乃至50℃の温度での攪拌下の混合と多価金属の塩の添加を行い、10秒〜20分間経過後、攪拌を停止し、一定時間熟成した後に得られた固形反応物中の非イオン性界面活性剤を除去することを特徴とするシリケートの骨格中のSi原子が多価金属で置換されている薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の製造方法。
【請求項7】
攪拌を停止し、そのまま静置するか、あるいは60〜200℃で静置して熟成させた後に、固形反応物中の非イオン性界面活性剤を除去することを特徴とする請求項6の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の製造方法。
【請求項8】
アルカリ珪酸塩中のSiO1モル当たり、非イオン性界面活性剤を0.01乃至0.02モルの量、酸を4乃至7モルの量、水を150乃至400モルの量、さらに多価金属塩を0.02乃至0.40モルの量で用いることを特徴とする請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子であって、シリケート骨格中の多価金属の一部あるいは全てが金属酸化物として結晶化され、薄板の厚さが0.5μm未満であることを特徴とする耐熱性薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子。
【請求項10】
透過型電子顕微鏡観察により、薄板平面に対し垂直方向に一次元チャンネル状細孔が貫通して存在し且つチャンネル状細孔がハニカム状に規則配列し、150m2/g以上のBE
T比表面積を有し、且つ細孔径分布ピークが3から10nmに存在し、0.2ml/g以上の全細孔容積を有することを特徴とする請求項9に記載の耐熱性薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子。
【請求項11】
請求項6の方法により製造された薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子を850℃以上に加熱することを特徴とするシリケート骨格中の多価金属の一部または全てが金属酸化物として結晶化され、薄板の厚さが0.5μm未満であることを特徴とする耐熱性薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項1から5、9および10のうちのいずれかに記載の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子からなることを特徴とする樹脂または塗料用ナノコンポジット材料。
【請求項13】
請求項1から5、9および10のうちのいずれかに記載の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子からなることを特徴とするフィルム状成型体用ナノコンポジット材料。
【請求項14】
請求項1から5、9および10のうちのいずれかに記載の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子からなることを特徴とする吸着・分離剤。
【請求項15】
請求項1から5、9および10のうちのいずれかに記載の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子からなることを特徴とする増粘剤。
【請求項16】
請求項1から5、9および10のうちのいずれかに記載の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子からなることを特徴とする光触媒またはその担体。
【請求項17】
請求項1から5、9および10のうちのいずれかに記載の薄板状多孔質シリカ金属複合体粒子からなることを特徴とする酸化触媒またはその担体。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図9】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−151799(P2006−151799A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313537(P2005−313537)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】