説明

薄片状物質及び塗料組成物

【課題】本発明は、薄片状物質を形成するガラスの溶融成形性を向上させ、且つ化学的耐久性が良好な薄片状物質用のガラス組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】薄片状物質を形成するガラスを
SiO :36〜50質量%
:5〜7質量%
ZnO :6〜25質量%
Al:8〜14質量%
CaO :21〜24質量%
MnO :0〜7質量%
の組成物を含み、該組成物の合計が95〜100質量%からなる実質的にアルカリを含有しないガラスとすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗料、インキ、化粧料、プラスチック、フィルム等に粒子として含有される薄片状物質に関する。
【背景技術】
【0002】
適切な大きさに制御された薄片状物質は、塗料、インキ、化粧料、プラスチック、フィルム等に粒子として含有される。当該薄片状物質は、表面が平坦性を有することから、薄片状物質からなる粒子を分散してなる物品では、薄片状物質の平面部に光が入射又は平面部で光が反射することで、光輝感等の独特の感応性を付与する。また、さらなる光輝感を付与するために薄片状物質の表面に金属被覆を施したものもある。薄片状物質は、特許文献1にあるようにEガラスの組成を有するものから得られている。また、特許文献2では、薄片状物質の耐アルカリ性を向上させるためのガラス組成物、特許文献3では、薄片状物質用のガラス組成物として溶融成形時の窯の寿命を長いものとすることができるガラス組成物が開示されている。
【特許文献1】特開昭63−201041号公報
【特許文献2】特開平9−110453号公報
【特許文献3】特開2001−21395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
薄片状物質は、塗料や樹脂成形体の充填材として使用されるので、化学的耐久性が高いことが好ましい。また、薄片状物質の表面に金属被覆を施す場合、酸性およびアルカリ性の溶液(水溶液)中で処理されることがあるため、耐酸性、耐アルカリ性、耐水性に優れることが好ましい。以上のような耐久性の観点から、薄片状物質を形成するガラスは、SiO含有量が多いことが好ましい。しかしながら、高いSiO含有量は、ガラスの溶融成形を難しいものとするので、薄片状物質のコスト増に繋がる。本発明は、薄片状物質を形成するガラスの溶融成形性を向上させ、且つ化学的耐久性が良好な薄片状物質用のガラス組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の薄片状物質は、
SiO :36〜50質量%
:5〜7質量%
ZnO :6〜25質量%
Al:8〜14質量%
CaO :21〜24質量%
MnO :0〜7質量%
の組成物を含み、該組成物の合計が95〜100質量%、好ましく98〜100質量%、より好ましくは100質量%からなる実質的にアルカリを含有しないガラスからなることを特徴とする。
【0005】
実質的にアルカリ、すなわち、Li、Na、K、Rb、Csを含有しないとは、不純物として含有することはあっても、意図的にガラス組成物に導入しないということである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の薄片状物質は、該物質を形成するガラス組成物が低い溶融温度を有し、溶融成形性に優れることから、薄片状物質の低コスト化に奏功する。また、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性等の化学的耐久性も良好であるので、塗料や樹脂成形体の充填材としての使用に効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の薄片状物質は、
SiO :36〜50質量%
:5〜7質量%
ZnO :6〜25質量%
Al:8〜14質量%
CaO :21〜24質量%
MnO :0〜7質量%
の組成物を含み、該組成物の合計が95〜100質量%からなる実質的にアルカリを含有しないガラスからなる。
【0008】
薄片状物質を形成するガラスに含まれる組成物中のSiOはガラスの基礎成分となるものである。36質量%未満では、ガラスの耐酸性等の化学的耐久性が低下する傾向があり、50質量%超では、ガラスの溶融温度が高いものとなり、薄片状物質のコスト増に繋がる。このため、組成物中のSiOの含有量は、さらには36〜45質量%とされることが好ましい。
【0009】
組成物中のBはガラスの溶融温度を低下させるものである。5質量%未満では、ガラスの溶融温度低下に効果が低く、7質量%超では耐アルカリ性等の化学的耐久性が低くなりやすい。このために組成物中のBは、さらには5.5〜6.5質量%、またさらには6〜6.5質量%とすることが好ましい。
【0010】
組成物中のAlは、ガラスの耐水性等の化学的耐久性を向上させる。8質量%未満では、耐水性の向上に効果が小さく、14質量%超では、ガラスの失透が生じやすくなる。このため組成物中のAlは、さらには8.5〜14質量%とすることが好ましい。
【0011】
組成物中のCaOは、ガラスの溶融温度を低いものとする。21質量%未満では、この効果が小さい。また、24質量%超ではガラスが失透しやすくなり、そして、ガラスを成形するときに融液の均質性が低下し、薄片状物質を得にくくなる。このため組成物中のCaOは、さらには21.5〜23.5質量%とすることが好ましい。
【0012】
組成物中のZnOは、ガラスの耐アルカリ性等の化学的耐久性を向上させる。この観点から、6質量%未満ではこの効果が小さい。また、25質量%超ではガラスが失透しやすくなる。このため組成物中のZnOは、さらには6.3〜24.5質量%、またさらには11〜24.5質量%とすることが好ましい。
【0013】
組成物中のMnOは、ガラスの耐水性を向上させるために導入してもよい。しかしながら、7質量%超ではガラスが失透しやすくなり、そして、ガラスを成形するときに融液の均質性が低下し、薄片状物質を得にくくなる。
【0014】
前記組成物は、ガラス中に95〜100質量%含まれる。ガラスは、前記組成物以外に、本発明の趣旨を本質的に変えない範囲で、酸化鉄、三酸化硫黄、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の他の成分が導入されることがある。
【0015】
本発明で得られる薄片状物質の厚さは0.1〜10μm、さらには0.2〜7μmであることが好ましい。10μmより厚いと薄片の断面にクラックが入りやすく、0.1μmより薄いと薄片が脆くなりやすい。尚、薄片の両主面(端面でない部分)は、略平行であることが好ましい。
【0016】
また、物品への分散性をより向上させることを目的とし、薄片状物質のアスペクト比(厚さに対する長径の比)が3〜300、好ましくは10〜200と設定してもよい。
【0017】
本発明の薄片状物質を充填材として分散された塗料組成物は、樹脂成分を有し、好ましくは硬化剤を有する。該樹脂成分としては、架橋性官能基を有する種々の樹脂が使用可能である。好ましい例として、架橋性官能基を有するポリエステル樹脂、架橋性官能基を有するアクリル樹脂、架橋性官能基を有するエポキシ樹脂、架橋性官能基を有する含フッ素樹脂等の架橋性官能基を有する硬化性樹脂等が挙げられる。そして、架橋性官能基の例としては、水酸基などが挙げられる。
【0018】
樹脂に含まれる架橋性官能基の数は、1分子中に1以上であればよいが、2以上であることが好ましい。特に、樹脂の水酸基価は、1〜300mgKOH/gが好ましく、5〜250mgKOH/gが好ましく、10〜150mgKOH/gが特に好ましい。これらの樹脂の数平均分子量は、好ましくは300〜15000、より好ましくは500〜5000、さらに好ましくは500〜3000とされる。
【0019】
前記樹脂成分は硬化剤とともに使用されることが好ましい。硬化剤の例としては、例えば、イソシアネート基及び/又はブロック化イソシアネート基を分子中に2以上含むポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物の例としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0020】
ブロック化イソシアネート化合物の例としては、例えば、上記のイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部又は全部をブロック化剤でブロックして製造したものが挙げられる。このブロック化剤の例としては、ε-カプロラクタム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソアミルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシムなどのケトオキシム系ブロック化剤、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾールなどのアゾール系ブロック化剤、フェノール、クレゾール、カテコール、ニトロフェノールなどのフェノール系ブロック化剤、イソプロパノール、トリメチロールプロパンなどのアルコール系ブロック化剤、マロン酸エステル、アセト酢酸エステルなどの活性メチレン系ブロック化剤などが挙げられる。
【0021】
該塗料組成物は、必要に応じ、硬化触媒、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、流動調整剤などの各種添加剤を配合してもよい。該塗料組成物は、塗料組成物を加温、有機溶剤又は反応性希釈剤を添加する等して所望の粘度に調整した後、エアースプレー、静電エアースプレー、ロールコーター、フローコーター、ディッピング形式による汎用の塗装機、刷毛、バーコーター、アプリケーターなどを用いて乾燥後の塗膜の膜厚が通常0.3〜300μmになるように塗布し、50〜300℃の温度で5秒〜48時間かけて硬化させる等して、支持体に塗装される。 該支持体の例としては、プラスチック、金属等が挙げられる。また、これらの支持体は、プライマー処理されたものであってもよい。
【実施例】
【0022】
SiO源として珪砂を、B源としてホウ酸を、ZnO源として亜鉛華を、Al源として酸化アルミニウムを、CaO源として炭酸カルシウムを、LiO源として炭酸リチウムを、NaO源として炭酸ナトリウムを、KO源として炭酸カリウムを、ZrO源として珪酸ジルコニウムを、MnO源として二酸化マンガンを、MgO源として炭酸マグネシウムを、BaO源として炭酸バリウムを、SrO源として炭酸ストロンチウムを要した。これらを所望の組成となるべく調合したうえで、白金ルツボに投入し、電気加熱炉内で1200〜1500℃、約6時間加熱溶融した。
【0023】
次に、加熱溶融の途中で白金棒によりガラス融液を攪拌してガラスを均質化させた。次に、溶融ガラスを鋳型に流し込み、ガラスブロックとし、600〜700℃に保持した電気炉に移入して該炉内で徐冷した。得られたガラス試料は泡や脈理の無い均質なものであった。
【0024】
各実施例のガラスに含まれる組成物と、各実施例の評価結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
<各実施例のガラスの評価>
1.失透温度
失透温度は、溶融ガラスから引き上げ法により採取した約3mmφのガラス棒を2〜3mm程度の長さに切断して、測定試料を作製した。温度傾斜炉(オザワ科学(株)製)中、設定温度で2時間保持した後、急冷法により測定した。失透温度の測定にはNikon社製偏光顕微鏡ECLIPSE E600 POLを用いた。なお、失透の発生が確認できた温度と確認できなかった温度との中間の温度を失透温度とした。
【0027】
2.作業温度及び溶融温度
作業温度及び溶融温度は白金球引き上げ法によって、また液相温度は白金ホルダーと温度傾斜炉を用いた急冷法によりそれぞれ測定した。
【0028】
3.熱膨張係数
熱膨張係数は、熱機械分析装置TMA8310(理学電機(株)製)を用いて、5℃/分で昇温したときの30〜300℃での伸び量から求めた。
【0029】
4.化学的耐久性
化学的耐久性としては、耐酸性、耐アルカリ性および耐水性を測定した。各測定では、ガラスサンプルの一部を、粒径が250〜425μmとなるまでボールミルで粉砕し、その粒状またはフレーク状ガラスを比重グラム精秤した。次に、80℃に保持した0.01Nの硝酸水溶液、10重量%の水酸化ナトリウム水溶液またはイオン交換水中に、この粒状またはフレーク状ガラスを24時間浸漬した後、その重量減少率(%)を算出した。この重量減少率が低いほど、耐酸性、耐アルカリ性または耐水性が高いことを示す。粒状ガラスの化学的耐久性はEガラスと同等であった。また、フレーク状ガラスの耐酸性はEガラスと同等であり、耐アルカリ性、耐水性はEガラスよりも優れていることが確認できた。中でも、組成物中のSiOの含有量が36〜45質量%、B含有量が6〜6.5質量%、ZnO含有量が11〜24.5質量%、Al含有量が8.5〜14質量%、CaO含有量が21.5〜23.5質量%、MnO含有量が0〜7質量%であるフレーク状ガラスは、耐酸性がEガラスで作製したフレーク状ガラスと同等で、耐アルカリ性、耐水性はEガラスで作製したフレーク状ガラスよりも良好であり、極めて優れた化学的耐久性を有することが確認できた。
【0030】
<薄片状物質の調製>
各実施例のガラスについて、公知の技術でフレーク状ガラスを作製したところ、安定して作製できることが確認できた。1200〜1500℃の電気炉で溶融したガラスに内径4〜6mmφの白金パイプの先端を浸し、エアーガンを用いて即座に空気を吹き入れた。空気圧はフレークの厚みが5μmとなるように設定した。
【0031】
各実施のガラスは、作業温度が1040℃以下であり、ガラスの成形作業が容易であり、生産コストの削減に寄与するものであった。
【0032】
<薄片状物質の金属被覆>
以下のように、各実施例のフレーク状ガラスに銀メッキ処理を施したところ、フレーク状ガラスが処理中に劣化されることなく均一に銀で被覆できることが確認できた。0.5重量%塩化スズ(II)水溶液に希塩酸を加えpH2〜2.5に調整後、フレーク状ガラスを加えて15分間撹拌して濾過と水洗をした。次に1.25重量%硝酸銀水溶液に0.5mol/l水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水を投入した溶液に、前記濾過したフレーク状ガラスを投入し均一に分散させた。さらに上記フレーク状ガラスが入って溶液に酒石酸ナトリウムカリウム四水和物、グルコースをイオン交換水に溶解させ、次にメタノールを加えて均一に調整した溶液を加えて30分間撹拌した。その後被膜が形成されたフレーク状ガラスを濾過、水洗して100℃の乾燥機で30分間乾燥させ、光輝性薄片状物質を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO :36〜50質量%
:5〜7質量%
ZnO :6〜25質量%
Al:8〜14質量%
CaO :21〜24質量%
MnO :0〜7質量%
の組成物を含み、該組成物の合計が95〜100質量%からなる実質的にアルカリを含有しないガラスからなることを特徴とする薄片状物質。
【請求項2】
請求項1に記載の薄片状物質、及び樹脂成分を有する塗料組成物。

【公開番号】特開2010−59039(P2010−59039A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68789(P2009−68789)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】