説明

薄膜の結晶化方法および薄膜蛍光体

【課題】電界放射型ディスプレイなどに用いられる薄膜蛍光体の発光特性を改善する。
【解決手段】基板10の上層に形成された、非結晶または非結晶を含む薄膜(蛍光体層3)の表面を凹凸化し、該薄膜表面にレーザ光40を照射して該薄膜を結晶化する。レーザ照射によるアニールの効果を高め、従来技術では、達成できなかったレーザ照射による発光強度の強い蛍光体を作製することができる。さらに、蛍光体層3から取り出される光量も増加し、電界放射型ディスプレイの性能を大幅に向上させることができる。前記凹凸化はドライエッチングによって行うことができ、蛍光体層の形成に用いた成膜装置をドライエッチングに利用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放射型ディスプレイに用いられる薄膜蛍光体などの薄膜を結晶化する薄膜の結晶化方法および結晶化がなされた薄膜蛍光体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電界放射型ディスプレイの陽極では、透明電極を有する透明基板上にブラックマトリクスによって区画された蛍光体層が形成されている。このような蛍光体層は、図6に示すように、基板11上に透明電極12や絶縁層をスパッタ法や蒸着法など成膜方法によって成膜する。ブラックマトリクス13は黒色カーボンを材料としてレーザアプレーション法によって形成することができる。さらに、蛍光体層10をスパッタ法や蒸着法等の成膜方法により形成する。
蛍光体層10は、図示を省略した陰極の所定のものから照射される電子線により蛍光体が励起されて発光する。これを透明電極及び基板を通して視認することができる。さらに、必要な場合は、図6のように蛍光体層上に帯電防止層14が形成される。
電界放射型ディスプレイの性能は、蛍光体の発光特性にも大きな影響を受けるため、この発光特性を向上させるという要望がなされている。
【0003】
蛍光体層では、実際に光っている強さと蛍光体層の外側に出てくる光の強さが異なることがある。これは、図7に示すように、蛍光体層10や透明電極、透明基板11内で発光が反射して、取り出し側と反対の側に一部の光が放射されてしまうためである。
特許文献1では、発光層の上下に凹凸構造を設けることによって発光特性の改善を図っている。すなわち、蛍光体表面に凹凸構造を設けることにより、発光面積が大きくなり、さらに、光が散乱・回析されるため、光の取り出し側と反対側に放射される光を減らし、発光面から取り出し側外部に放出される光が増加する。
【0004】
また、蛍光体には通常結晶化されたものが用いられており、結晶化の良否も蛍光体の発光特性に影響を与える。
通常、蛍光体の結晶化には高温の熱処理が必要である。しかし、従来使用されている基板の耐熱温度は500〜600℃程度であり、高温での熱処理を行った場合、基板の変質や変形が生じる可能性がある。このため、高温での熱処理を行うことは困難であり、基板への影響が無い程度の温度での処理を行うことになり、十分な結晶化を行うことができず、発光も弱いという問題がある。特許文献2では、従来の方法では実現できなかった基板への影響が少ない薄膜蛍光体の結晶化方法として、レーザによる短時間・局所的な処理を提案している。この方法は局所的・短時間処理のため、基板への影響が少ないという利点を有している。
【特許文献1】特開2003−92426号公報
【特許文献2】特開2005−255949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明では、蛍光体を凹凸構造とすることによって外へ出てくる光の量の向上を図っているが、蛍光体の発光そのものの向上には至っておらず、大元の発光の量が少なければ、最大限発光を取り出すことができたとしても、限りがあるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2では、レーザによる短時間・局所的な熱処理であるため、十分な結晶化を行うためには、高いエネルギを照射する必要がある。しかし、結晶化を促して、高いエネルギーを照射した場合、過剰な熱を与えてしまい、構成元素が蒸発したり、目的の結晶以外の物質が形成されてしまう可能性がある。さらには、用いている基板や透明電極へ熱が伝わり、それぞれの特性を維持できないことも考えられる。このため、レーザによる結晶化には限度があり、結晶化された蛍光体の発光も弱い。
【0007】
これらの状況のため、蛍光体の発光する量を向上すべく原料の組成比や不純物の添加、成膜や熱処理における温度や雰囲気など、作成条件の様々な試みがされてきているが、現状では十分に満足する結果が得られるには至っていない。
【0008】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、レーザ照射によるアニールの効果を高め、従来技術では、達成できなかったレーザ照射による発光強度の強い蛍光体を作製することができる薄膜の結晶化方法および薄膜蛍光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の薄膜の結晶化方法のうち、請求項1記載の発明は、基板の上層に形成された、非結晶または非結晶を含む薄膜の表面を凹凸化し、該薄膜表面にレーザ光を照射して該薄膜を結晶化することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の薄膜の結晶化方法の発明は、請求項1記載の発明において、前記薄膜が蛍光体であることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の薄膜の結晶化方法の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記基板の上に透明電極が積層され、該透明電極の上に前記薄膜が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の薄膜の結晶化方法の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記凹凸化がドライエッチングによってなされることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の薄膜の結晶化方法の発明は、請求項4記載の発明において、前記基板の上層に、スパッタ法による成膜手段によって前記薄膜を形成し、その後、前記成膜手段を用いたドライエッチングによって該薄膜の表面を凹凸化することを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の薄膜の薄膜結晶体の発明は、薄膜の表面が凹凸形状を有し、該凹凸形状表面から薄膜の深さ方向にかけて結晶化がなされていることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の薄膜結晶体の発明は、請求項6記載の発明において、前記薄膜が、基板上に積層された透明電極の上に形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の薄膜の結晶化方法によれば、凹凸化された薄膜表面にレーザ光を照射することにより、レーザ光が照射される面積が広がり、これまでに比べて熱が伝わりやすくなる。また、受光面積が増えることにより単位面積当たりの受光エネルギ量が小さくなり、照射エネルギを増やしても薄膜への損傷を回避することができる。そして、凹部となる部分にレーザ光が照射されることで、相対的に深い部分にレーザ光が照射されることになり、更に深い部分まで熱が伝わるようになる。また、凸部分は熱が集中して結晶になりやすく、凸部分を核として結晶化が進みやすくなる。従来は、照射されたレーザ光は薄膜に吸収されて、結晶化が進むものの、一部は層内において反射して、レーザ照射面から外部に出てきてしまう。しかし、本発明では、薄膜の表面が凹凸形状であることにより、外部に出てしまっていたレーザ光を薄膜の表面内側で反射して、再び薄膜へと戻すことができ、結晶化に再度寄与させることが可能となる。これが繰り返し起きることで、取り込まれたレーザ光が有効に利用されて薄膜の結晶化がなされる。
【0017】
従来のレーザ照射では、レーザの膜厚方向への侵入深さが浅いために、基板への影響が無いエネルギーでのレーザで薄膜への熱処理を行うことがむずかしく、また、局所的な熱処理であるため、十分なエネルギーが与えられず、十分な結晶性が得られにくかったが、本発明では、上記のように薄膜の表面を凹凸構造とし、その上面からレーザを照射することによって、薄膜が十分結晶化され、その結果、薄膜が蛍光体である場合には強い発光を得ることができる。
【0018】
なお、薄膜表面の凹凸化方法は、本発明としては特に限定をされるものではなく、凹凸の程度も特に限定されない。凹凸表面は、凹凸化の処理によって成膜されたままの薄膜表面に比べて凹凸形状が付与されているものであればよい。好適な凹凸化の方法としてはドライエッチングの方法が挙げられる。その他にフォトリソグラフィなどの方法を採用することができる。ドライエッチングの方法は、薄膜を基板の上層(直接または透明基板を介在させる場合のいずれであってもよい)に形成する際に、スパッタ法を用いた成膜装置を用いれば、該成膜装置で逆スパッタによりそのままドライエッチングを行うことも可能になる。
【0019】
本発明が適用される薄膜は、特定の用途に限定をされるものではない。但し、自身で発光した光を効果的に取り出すことができることから薄膜蛍光体への適用が効果的にあり、さらに電界放射型ディスプレイにおいては、性能の大幅な向上をもたらすことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上、説明したように、本発明の薄膜の結晶化方法によれば、基板の上層に形成された、非結晶または非結晶を含む薄膜の表面を凹凸化し、該薄膜表面にレーザ光を照射して該薄膜を結晶化するので、薄膜や基板に損傷を与えることなく薄膜の結晶化を十分に行うことを可能にする。特に薄膜が蛍光体である場合、蛍光体の発光量を増大させるとともに、取り出し光量も多くすることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1は、薄膜としての蛍光体を備える電界放射型ディスプレイの陽極の製造工程を示すものである。
図1(a)に示すように、絶縁性光透過性を有する透明基板1上に透明電極2や絶縁層をスパッタ法や蒸着法など成膜方法によって成膜する。なお、透明電極2等は、レーザアプレーション法などによって形成したブラックマトリクス6によって区画されており、ブラックマトリクス6を覆う適当なマスク7を配置した状態で上記成膜がなされる。ブラックマトリックス6は黒色カーボンなどを材料として形成することができる。
【0022】
さらに、図1(b)に示すように、透明電極2上には、ブラックマトリクス6によって区画された蛍光体層3をスパッタ法や蒸着法等の成膜方法により形成する。この際にもブラックマトリクス6を覆う適当なマスク7を配置した状態で上記成膜がなされる。
さらに、その後、図1(c)に示すように、ドライエッチングにより蛍光体層3の表面を凹凸として、凹凸形状表面3aを有する蛍光体層3を得る。
【0023】
なお、蛍光体層3の成膜にスパッタ法を用いた場合、同一の装置を使用し、エッチングを行うことができ、新たに装置を導入することなく、凹凸構造を形成できる。このとき、凹凸形状表面3aの厚さは、蛍光体層3に対して、レーザを照射した際に熱の影響が透明電極2や透明基板1へ及ばない程度とする。これは、膜厚が極端に薄い部分を形成すると、レーザを照射したときに透過してしまい、透明電極2や透明基板1などの蛍光体層3以外へ影響を及ぼし、それらの特性を損なう恐れがあるためである。
【0024】
上記蛍光体層3を成膜するスパッタ装置の一例を図3に基づいて説明する。
スパッタ装置は、真空室20を備え、該真空室20に真空ポンプ22と雰囲気ガス供給装置23が接続されている。真空室20内上部には、成膜対象となる中間基板24が配置され、該中間基板24を加熱するヒータ25と、中間基板24の表面を露出させておく開口板26を備えている。また、真空室20内下方には、スパッタターゲット27が配置され、スパッタターゲット27と、中間基板24との間に開閉自在なシャッタ28が設けられている。
【0025】
上記成膜装置では、真空ポンプ22で真空室20内の真空引を行った後、雰囲気ガス供給装置22によって、Arなどの雰囲気ガスを真空室20内に導入する。必要に応じてヒータ25により中間基板24を加熱し、スパッタターゲット27に電圧を印加して、雰囲気ガスイオンをスパッタターゲット27に衝突させる。この際に、シャッタ28は開いておくことにより、スパッタされた原子が中間基板24に成膜される。中間基板24として、前記した基板1上に透明電極2が積層され、マスク7が配置されたものを用いることで、透明電極2上に成膜を行うことができ、スパッタターゲット27の成分調整によって、透明電極2上に所望の蛍光体層3を形成することができる。
【0026】
成膜条件は、例えば緑色蛍光体として知られるEuを添加したSrGaでは、スパッタターゲット27にSrGa:Euを用い、中間基板24の温度は透明電極2及び透明基板1が特性を保ちうる温度(約500℃〜600℃)以下とし、真空度10−1〜10−3Torr、投入電力100W〜300Wとし、Arガス雰囲気において、非結晶もしくはわずかに結晶を有する蛍光体層3を成膜する。構成元素である硫黄は、スパッタ中に欠損しやすいため、不足を補うためにHS雰囲気での成膜は非常に有効である。
成膜には、このほかにも蒸着法によっても成膜が可能である。使用するスパッタターゲットもSr、Ga、Sを別個に配置し、EuはSr上に任意の割合で配置し、蛍光体層3を成膜することも可能である。これらの方法は、蛍光体の成膜方法としては、一般的な方法である。
【0027】
非結晶もしくはわずかに結晶を有する上記蛍光体層3を成膜後、エッチングによって表面に凹凸構造を形成する。装置は、蛍光体層の成膜に使用した成膜装置を用いることが可能である。シャッタ28を閉じた状態で、真空度10−1〜10−3Torr、投入電力100W〜300Wとし、Arガス雰囲気において、逆スパッタを行って蛍光体層3に凹凸形状表面3aを得る。真空後、投入電力、及びエッチングの時間を変えることにより、凹凸の荒さを変えることができる。このとき、凹凸部分の厚さは、蛍光体層3に対して、レーザを照射した際に熱の影響が透明電極2や透明基板1へ及ばない程度とする。これは、膜厚が極端に薄い部分を形成すると、レーザを照射したときに透過してしまい、透明電極や透明基板などの蛍光体層以外へ影響を及ぼし、それらの特性を損なう恐れがあるためである。
【0028】
上記蛍光体層3は、非結晶もしくはわずかに結晶を有しており、これを結晶化させるため、図1に示すように、レーザ光40を凹凸形状表面3aを通して蛍光体層3へ照射する。
このとき、照射するレーザ光40は、蛍光体が吸収する波長とする。レーザ光の強度については、蛍光体層3の下に位置する透明電極2や透明基板1へレーザ光の影響が及ばない程度の強さとする。通常用いられる基板の歪点が500℃から600℃であり、透明電極は耐熱特性は300℃から600℃と、蛍光体の結晶化温度に比べて低いため、高エネルギのレーザ光を照射した場合、変形や変質が生じる可能性があるためである。以上の条件を満たすレーザを照射すると、凸部分に熱が集中して結晶ができやすく、更にレーザを照射することによって、結晶化した凸部分が核として結晶が形成されていく。また、蛍光体層3の表面を凹凸としたことで表面積が広がり、従来方法に比べて、蛍光体層3の照射されるレーザ光の量が増え、結晶化を促すことができる。そして、エッチングにより削られて凹んだ分、深いところへレーザが照射されるようになり、さらに深い部分へレーザが及び、厚さ方向への結晶化を促進させることができる。従来のレーザ照射方法では、物質によってはレーザが表面に近い部分で吸収されてしまうために膜厚方向への結晶化が困難であったが本発明では、このような課題も解決されている。
【0029】
照射されたレーザ光40は、蛍光体層3に吸収されるが、一部は層内で反射してレーザ照射面から外部に出てきてしまう。しかし、この凹凸構造では、従来の方法では外部に飛び出してしまう光を反射して、蛍光体層3へ戻すことができ 結晶化に再度用いることができる。これを練り返すことによって照射されたレーザ光を有効に利用することができる。
レーザ照射では、通常の熱処理に比べて、短時間・局所的に高いエネルギーが与えられるために、蒸気圧の低い構成元素が抜けやすい。これを防ぐために、例えば硫化物であれば硫化水素雰囲気にて行うなどすることが望ましい。
【0030】
図4は、上記レーザ照射に用いるレーザ照射装置の一例を示すものである。該レーザ照射装置は、エキシマレーザ光を出力するレーザ出力部30を備え、該レーザ出力部30から出力されたレーザ光の整形、集束等を行う光学系31、32、33を介して、レーザ光40が被照射物に照射される。この形態では、被照射物として、基板1に積層された透明基板2上に、蛍光体層3が形成されたものが用いられ、該蛍光体層3は凹凸形状表面3aを有している。
【0031】
該蛍光体層3にレーザ光40を照射することで、図2に示すように十分に結晶化がなされた薄膜蛍光体5が得られる。すなわち、非結晶もしくは非結晶を含む蛍光体層3は、レーザ40の照射を受けて、凹凸形状表面形状5aを有し、凹凸形状表面5aから深さ方向にかけて結晶化した薄膜蛍光体5となる。その後、必要に応じて薄膜蛍光体5のチャージアップを防止する帯電防止層を成形することができる。
【0032】
上記薄膜蛍光体5では、例えば、X線回折測定(薄膜法)によって、X線の照射角度を例えば0.5°、1°、2°というように変えていけば、X線の侵入深さが変わるので、表面と深い部分との結晶の違いがわかり、表面から深さ方向にかけて結晶化されていることが確認できる。より具体的には、表面付近などの結晶化された部分では、回折ピークはシャープであり、強度は強い。逆に基板や電極付近では、非結晶な部分が多いことによって強度は弱くなり、幅広いピークが現れる。
【0033】
以上のような工程をへて結晶化を行うことにより、従来の熱処理及びレーザ照射では、実現が困難であった、十分結晶化され、強い発光を示す蛍光体の作製が可能となる。
上記薄膜蛍光体5を有する電界放射型ディスプレイの陽極に、図2に示すように、図示しない陰極から電子線を照射すると、蛍光体が励起されて発光する。この際に、薄膜蛍光体5は、前記レーザアニールによって十分な結晶化がなされており、蛍光体自身による多くの発光量が得られている。
【0034】
薄膜蛍光体5から生じた光は、透明電極2および透明基板1を通して外部に放出され、視認することができる。また、一部の光は、薄膜蛍光体5の反対側に進み、電子線を照射した側からも同様に発光が確認できるが、多くの光は凹凸形状表面5aの内側で反射して透明電極2および透明基板1側の外部に放出される。このため、薄膜蛍光体5で生じた光の大半を透明基板1側の外部に取り出すことができる。またFEDでは、高電圧型において、帯電防止のためにアルミニウムなどのメタル層が設けられている。この層は、同時に発光を反射させ、発光の取り出し効率を高める役割も担う。しかし、低電圧型では、電子線が侵入できる深さが浅くなるため、帯電防止膜を施すと蛍光体層を十分励起できなくなる。しかし、図5(b)に示す本発明のように電子線照射面を凹凸にすることによって、光が凹凸面で反射され、基板面から発光が放出される。この凹凸構造は、低電圧型の発光の取り出し効率の改善にも有効である。なお、図中、17は絶縁層、18は電極である。
【0035】
また、無機ELでは、図5(a)に示すとおり、基板1と薄膜蛍光体5の間に、電極の以外に絶縁層15が形成される。しかし、レーザによる結晶化では、結晶化を行いたい層以外への影響はほとんどないことから、この結晶化方法を無機ELの製造工程へ取り入れることが可能である。なお、図中16はカラーフィルタである。
【0036】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記説明の内容に限定をされるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲での適宜の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る蛍光体層の製作工程を示し、(a)は蛍光体層の成膜前を示す説明図、(b)は蛍光体層の成膜後を示す説明図、(c)は蛍光体層のエッチングの様子を示す説明図、(d)は凹凸の蛍光体層へレーザを照射する様子を示す説明図である。
【図2】本発明の薄膜蛍光体を備える電界放射型ディスプレイの陽極を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いられる成膜装置を示す図である。
【図4】同じく、レーザ照射装置を示す図であり、正面図と右側面図からなる。
【図5】同じく、本発明の薄膜蛍光体を備える無機ELの断面図および電界放射型ディスプレイの陽極を示す断面図である。
【図6】従来の電界放射型ディスプレイの陽極を示す断面図である。
【図7】蛍光体層及び基板面での反射を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 透明基板
2 透明電極
3 蛍光体層
5 薄膜蛍光体
5a 凹凸形状表面
40 レーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上層に形成された、非結晶または非結晶を含む薄膜の表面を凹凸化し、該薄膜表面にレーザ光を照射して該薄膜を結晶化することを特徴とする薄膜の結晶化方法。
【請求項2】
前記薄膜が蛍光体であることを特徴とする請求項1記載の薄膜の結晶化方法。
【請求項3】
前記基板の上に透明電極が積層され、該透明電極の上に前記薄膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜の結晶化方法。
【請求項4】
前記凹凸化がドライエッチングによってなされることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜の結晶化方法。
【請求項5】
前記基板の上層に、スパッタ法による成膜手段によって前記薄膜を形成し、その後、前記成膜手段を用いたドライエッチングによって該薄膜の表面を凹凸化することを特徴とする請求項4記載の薄膜の結晶化方法。
【請求項6】
薄膜の表面が凹凸形状を有し、該凹凸形状表面から薄膜の深さ方向にかけて結晶化がなされていることを特徴とする薄膜蛍光体。
【請求項7】
前記薄膜が、基板上に積層された透明電極の上に形成されていることを特徴とする請求項6記載の薄膜蛍光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−235168(P2008−235168A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76477(P2007−76477)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】