説明

薄膜層堆積方法及び得られる製品

本発明の主題は、低E薄膜多層により少なくとも1つの面が被覆された基材を得る方法であって、下記工程:
少なくとも2層の誘電体薄膜の間に少なくとも1層の銀薄膜を含む薄膜多層を前記基材の前記少なくとも1つの面上に堆積させること、及び、
前記多層の放射率及び/又はシート抵抗が少なくとも5%低減されるように、500〜2000nmの少なくとも1つの波長で発光するレーザ線の少なくとも1つの源を用いて、少なくとも1つの被覆された面を熱処理すること、
を含み、
処理前の前記多層は前記レーザ線を少なくとも部分的に吸収する少なくとも1層の薄膜を含み、それにより、前記レーザ線の少なくとも1つの波長での前記多層の吸収率は、前記多層により被覆された厚さ4mmの透明ガラス基材の前記レーザ線の前記少なくとも1つの波長での吸収率が10%以上であるようなものである、方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に基材上に堆積される無機薄膜層の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの薄膜は、基材、特に、平らな又は若干曲面のガラスから作られた基材上に堆積されており、それにより、得られる材料に特定の特性:光学特性、たとえば、所与の波長範囲の放射線の反射又は吸収、特定の導電特性、又は、クリーニング性もしくは自己クリーニング性材料を形成することの可能性に関する特性が付与される。
【0003】
これらの薄膜は、通常、無機化合物:酸化物、窒化物又はさらには金属をベースとする。その厚さは一般に数ナノメートルから数百ナノメートルであり、それゆえ用語「薄膜」が用いられる。
【0004】
最も興味深いことは、導電性及び赤外線反射特性を有する金属銀をベースとする薄膜があり、それゆえの、ソーラーコントロールガラス(グレージング)、特にアンチソーラーグレージング(入射太陽エネルギーの量を低減することを目的とする)及び/又は低E(低放射性)グレージング(建築物又は乗物の外側に散逸されるエネルギーの量を低減することを目的とする)におけるその薄膜の使用が挙げられる。
【0005】
特に、銀の酸化を防止し、そして可視光におけるその反射特性を低減するために、銀膜又は銀膜の各々は、一般に、多層中に導入される。ソーラーコントロールグレージング又は低Eグレージングの場合には、銀ベースの薄膜又は銀ベースの薄膜の各々は一般に、酸化物又は窒化物(たとえば、SnO2又はSi34)をベースとする2層の誘電体薄膜の間に配置される。銀膜の下に非常に薄い膜も配置されてよく、それにより、銀の湿潤化及び核生成を促進し(たとえば、酸化亜鉛ZnO膜)、そして銀膜の上に第二の非常に薄い膜(犠牲層、たとえば、チタンからできている)も配置されてよく、その第二の非常に薄い膜は、次の膜の堆積が酸化性雰囲気で行われるか、又は、熱処理の場合に多層中に酸素マイグレーションを起こす場合に、銀膜を保護することを意図している。これらの膜は、それぞれ、湿潤化膜及びブロッカー膜と呼ばれている。多層は数層の銀膜を含むこともできる。
【0006】
銀膜は、それが少なくとも部分的に結晶性の状態のときに、その幾つかの特性の改良が観測されるという特定の特徴を有する。その膜の結晶化度(すなわち、質量基準又は体積基準での結晶性材料の割合)及び結晶粒のサイズ(又はX線回折法により測定されるコヒーレント回折ドメインのサイズ)を最大化しようとすることが一般に探究されている。
【0007】
特に、高結晶化度及び、結果的に低残留分のアモルファス銀を有する銀膜が、主にアモルファスの銀膜よりも低い放射率、低い抵抗率及び高い可視線での透過率を有することが知られている。このようにして、これらの膜の導電率及び低E特性が改良される。グレインサイズの増加は、実際、粒界の減少を伴い、電荷キャリアの易動度を向上する。
【0008】
薄膜を、特にガラス基材上に堆積させるための工業規模で広く使用されている1つの方法は、以下にマグネトロンスパッタリングと呼ばれる磁場強化スパッタリングである。この方法において、堆積しようとする化学元素を含むターゲットの近傍において高真空中でプラズマを形成する。ターゲットに衝突することにより、プラズマの活性種が上記の元素を取り出し、それが基材上に堆積されて、所望の薄膜を形成する。この方法は、膜がターゲットから取り出された元素及びプラズマ中に含まれるガスの間の化学反応により生じる材料からなるときに「反応性」法と呼ばれる。この方法の主な利点は、一般に1つの同一のデバイス中で種々のターゲットの下に基材を連続的に通過させることにより、1つの同一のラインで非常に複雑な多層を堆積させることができる可能性があることにある。
【0009】
マグネトロン法の工業的規模での実施の際に、基材は周囲温度のままであるか、又は、特に、基材の進行速度が高いときに(そのことは経済的理由で一般に望ましい)、中程度の温度(80℃未満)に加熱される。しかしながら、有利に思えることが上記の膜の場合に欠点を構成する。というのは、関与する低温は、一般に、十分な結晶成長を起こらないようにするからである。そのことは薄い厚さの薄膜及び/又は融点が非常に高い材料からできた薄膜の場合に最も特に当てはまる。この方法を用いて得られる膜はそれゆえ、主として又はさらには完全にアモルファスであるか又はナノ結晶性(平均結晶グレインサイズは数ナノメートル未満)であり、所望の結晶化度及び所望のグレインサイズを得るために熱処理が必要であることが判っている。
【0010】
可能な熱処理は、堆積の間又は堆積の後のいずれかにおいてマグネトロンラインを出るときに基材を加熱することからなる。最も通常には、少なくとも200℃又は300℃の温度が必要である。薄膜を構成する材料の融点に基材の温度を近づけるほど、結晶化が良好になり、グレインサイズが大きくなるからである。
【0011】
しかしながら、工業マグネトロンライン中で(堆積の間に)基材を加熱することは困難であることが判っている。特に、放射を必要とする真空中での熱移動は制御が困難であり、そして数メートル幅の大きな基材の場合には高コストを伴うからである。薄いガラス基材の場合には、このタイプの処理はしばしば破損のリスクが高い。さらに、熱い基材上で堆積された銀膜は抵抗率が高いアイランド形態の不連続膜を形成する傾向がある。
【0012】
たとえば、基材をファーネス又はオーブン中に配置すること、又は、赤外線ランプなどの従来のヒータからの赤外線に基材を付すことなどにより、堆積後に、被覆された基材を加熱することも欠点を呈す。というのは、これらの種々の方法は、基材を加熱することと薄膜を加熱することとの間に区別が無い。基材を150℃よりも高い温度に加熱すると、大きな基材(数メートル幅)の場合には破壊を生じさせる傾向がある。というのは、基材の全幅にわたって同一の温度を確保することが不可能だからである。基材の加熱は、また、全体のプロセスを遅くする。というのは、基材を切断し又は貯蔵しようとする(一般に基材を互いに積層することにより貯蔵される)前に、基材が完全に冷却されるまで待つ必要があるからである。また、高度に制御された冷却は、ガラス内部の応力発生及びそれによる破損の可能性を回避するために不可欠である。このような高度に制御された冷却は非常に高価であるから、アニールは、一般に、ガラス内部の熱応力を除去するように十分に制御されず、そのことにより、インラインでの破損の数が増加する。また、アニールは、亀裂が直線的に伝播する傾向が大きいので、ガラスを切断するのが困難になるという欠点を有する。
【0013】
板ガラス(グレージング)を曲げ加工し及び/又は焼き戻しするならば、被覆された基材は、ガラスを軟化温度を超えて加熱すること(一般に、600℃を超え、又は、さらには700℃を超える温度で数分間)により加熱される。それゆえ、焼き戻し又は曲げ加工操作により、所望の薄膜結晶化を得ることができる。しかしながら、膜の結晶化を改良するという1つの目的だけでグレージングをこのような処理に付すのは高価である。さらに、焼き戻しされたグレージングはもはや切断できず、そして特定の薄膜多層はガラスの焼き戻しの間にさらされる高温に耐えられない。
【0014】
本願出願人により出願された特許出願WO2008/096089は、膜に対して極端に高い出力/単位面積を供給することからなる急速アニール法を記載している。熱が基材内部に拡散する時間なく、その膜は極端に急速に加熱される。このため、有意に基材を加熱することなく、薄膜を熱処理することができ、それにより、熱衝撃による破損のリスクが制限される。銀をベースとする膜の場合には、考えられる方法は赤外線発光レーザ、インダクション、プラズマトーチ又は火炎の作用を用いる方法である。これらの方法により、ガラスを焼き戻すことを以外には以前に達成することができなかった抵抗率を達成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、高い光透過率を維持しながら、さらにより低い抵抗率を達成し、上記の問題を取り除くことができる、改良された方法を提供することである。本発明の別の目的は、特に、大きな基材をより急速に処理し及び/又はより低出力のレーザデバイスを用いるための、より経済的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、本発明の1つの主題は、低E薄膜多層により少なくとも1つの面が被覆された基材を得る方法であって、下記工程:
少なくとも2層の誘電体薄膜の間に少なくとも1層の銀薄膜を含む薄膜多層を前記基材の前記少なくとも1つの面上に堆積させること、及び、
前記多層の放射率及び/又はシート抵抗が少なくとも5%低減されるように、500〜2000nmの少なくとも1つの波長で発光するレーザ線の少なくとも1つの源を用いて、少なくとも1つの被覆された面を熱処理すること、
を含む方法である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によると、処理前の多層はレーザ線を少なくとも部分的に吸収する少なくとも1層の薄膜を含み、それにより、レーザ線の少なくとも1つの波長での前記多層の吸収率は、前記多層により被覆された厚さ4mmの透明ガラス基材の前記レーザ線の前記少なくとも1つの波長での吸収率が10%以上であるようなものである。
【0018】
多層により被覆された基材の所与の波長での吸収率は、100%から、被覆された基材の同波長での光透過率と同被覆された基材の同波長での多層面での反射率とを引いた値と定義される。
【0019】
用語「透明ガラス」とは、フロート法により得られるソーダ−ライム−シリカガラスであって、膜により被覆されておらず、4mmの厚さで光透過率が約90%であり、光反射率が約8%であり、そしてエネルギー透過率が約83%であるガラスを意味するものと理解される。光透過率、光反射率及びエネルギー透過率は、たとえば、NF EN 410標準により定義される。典型的な透明ガラスは、たとえば、Saint-Gobain Glass Franceにより品名SGG Planiluxで、又は、AGC Flat Glass Europeにより品名Planibel Clairで販売されるものである。これらの基材は、従来から低Eグレージングを製造するために使用されている。
【0020】
本発明に係る方法は、もちろん、透明ガラス基材又は厚さ4mmの基材上に堆積されるコーティングに限定されない。コーティングはあらゆるタイプの基材上に被覆されてよいが、多層の吸収率は、もし厚さが4mmである透明ガラス基材上に多層が堆積されたならば、その多層により被覆された基材の吸収率が特許請求の範囲に規定されるとおりのものでなければならない。
【0021】
本発明に係る方法により、固相をなおも維持しながら、膜中に既に存在しているシードの周囲に物理化学的な結晶成長機構により銀薄膜の結晶化を促進するために十分なエネルギーを送達することが可能である。銀膜の結晶化の促進により、特に、アモルファス相残留物が消失し、及び/又は、コヒーレント回折ドメインのサイズが増加し、及び/又は、ポイント欠陥(空孔又格子間)又は双晶等の表面もしくはバルク欠陥の密度の低下をもたらすことができる。
【0022】
本発明に係る方法は、基材全体を有意に加熱することなく、低E多層のみを加熱するという利点を有する。このため、ガラスを切断し又は保管する前に遅い制御された冷却に基材を付す必要はもはやない。また、この方法により、既存の連続製造ラインにヒータを組み込むことができ、より特定的には、マグネトロンラインの真空堆積チャンバーの出口と、積み重ね形態でのガラスの保管のためのデバイスとの間の空間にヒータを組み込むことができる。また、特定の場合には、実際の真空堆積チャンバー内部で本発明に係る処理を行うことも可能である。
【0023】
レーザ線の使用では、一般に、基材の第一面とは反対面(すなわち、未被覆の面)上で100℃未満、そしてさらにしばしば50℃未満の温度を得るという利点がある。この特に有利な特徴は、熱交換係数が非常に高く、通常、400W/(m2.s)を超えるという事実によるものである。処理される多層上でのレーザ線の表面出力はさらに好ましくは20kW/cm2又は30kW/cm2以上である。
【0024】
この非常に高いエネルギー密度により、多層中で極端に急速に(一般に、1秒以下の時間で)所望の温度に到達させることができ、そして結果的に、それに見合って処理の時間を限定することが可能であり、それで、発生した熱が基材中に拡散する時間がない。このため、多層中の各ポイントは好ましくは、一般に1秒以下、又は、さらには0.5秒以下の時間、本発明に係る処理を受ける(特に、300℃以上の温度に加熱される)。対照的に、従来的に使用されている(放射線の焦点を合わせるデバイスを有しない)赤外線ランプでは、これらの高出力/単位面積を達成することができず、所望の温度に到達させるために処理時間をより長くしなければならず(しばしば数秒続ける)、それゆえ、放射線の波長を薄膜のみが吸収し、基材が吸収しないように調節したとしても、熱の拡散により基材が必然的に高温に加熱される。
【0025】
本発明に係る方法に関係する非常に高い熱交換係数のために、薄膜から0.5mmに位置するガラスの部分は、一般に、100℃を超える温度にさらされない。レーザ線の少なくとも1つの源により処理される面とは反対側の基材の面の温度は好ましくは熱処理の間に100℃を超えず、特に50℃を超えず、さらには30℃を超えない。
【0026】
送達されるエネルギーのほとんどはそれゆえ、多層により「使用」され、それにより、その多層が含んでいる銀膜又は各銀膜の結晶化特性を改良する。
【0027】
本発明に係る方法は、また、多層により被覆された厚さ4mmの透明ガラス基材のレーザ線の少なくとも1つの波長での吸収率が10%以上であるのに十分にレーザ線を吸収する少なくとも1層の薄膜が、処理前に多層中に存在することによっても改良される。処理前の多層は本明細書の残りの部分で「吸収性」膜と呼ぶこれらの膜を1層以上含んでよい。多層膜は、たとえば、1層の吸収性膜を含んでよく、又は2層もしくは3層もしくは4層、さらには5層又は6層の吸収性膜を含んでよい。吸収性膜の層数がいくつであれ、重要なポイントはレーザ波長での多層の吸収率が特許請求の範囲に規定されるとおりであることである。少なくとも1層の吸収性膜が存在する場合には、これはかなりレーザ処理の効果を高める:吸収性膜により吸収されるエネルギーは実際、銀膜付近で再放出され、この膜の局所温度を上げる。レーザ処理の効率の獲得される増加により、最終的な多層の放射特性を改良し、及び/又は、処理を加速し、及び/又は、より低出力を使用し、それゆえ、より高価でないレーザを使用することを補助する。
【0028】
さらに、レーザ処理の効率を上げるために、多層の吸収率は、多層により被覆された厚さ4mmの透明ガラス基材の吸収率が、レーザ処理の前に、レーザ線の少なくとも1つの波長において、好ましくは12%以上であり、又はさらには13%もしくは15%以上であり、さらには20%又は25%以上であるようなものである。
【0029】
本発明に係る方法を用いて得られる結晶化度は好ましくは20%又は50%以上であり、特に70%以上、さらには90%以上である。材料の総質量で結晶性材料の質量を除算したものとして定義されるこの結晶化度は、リートベルト法を用いたX線回折によって決定されうる。シード又は核から出発した結晶粒の成長による結晶化機構のために、結晶化度の増加は一般に、結晶粒のサイズ又はX線回折により測定されるコヒーレント回折の増加を伴う。
【0030】
また、結晶化特性の改良により、被覆された基材の光透過率は絶対値として少なくとも5%、特に10%、又は、ここでも絶対値として、さらには15%、さらに20%増加することが可能である(相対的増加ではない)。光透過率はNF EN 410標準により算出される。
【0031】
好ましくは、多層のシート抵抗及び/又は放射率は熱処理により少なくとも10%又は15%、あるいはさらには20%低減される。これは、処理前の放射率又はシート抵抗に対する相対的低下である。
【0032】
好ましい実施形態によると、多層は少なくとも2層の銀膜を含み、レーザ線の少なくとも1つの波長でのその多層の吸収率は、厚さが4mmである前記多層により被覆された透明ガラス基材の前記レーザ線の前記少なくとも1つの波長での吸収率が11%以上であるようなものであり、かつ、前記熱処理は多層の選択率が相対的大きさで少なくとも1%、特に少なくとも2%増加するようなものである。選択率とは、日射透過率(solor factor)に対する光透過率の比として定義される。
【0033】
これら2つの量は二重ガラスユニット上でNF EN 410標準により算出され、その二重ガラスは90%アルゴンを含む15mm厚キャビティーを側面に有する2枚の6mm厚の透明ガラス基材を含み、ここで、多層は面2、すなわち、建築物の外側と接している基材の面であって、外側に向いている面(それを面1と呼ぶ)とは反対側の面上にある。
【0034】
本発明の別の利点は、本方法により、基材でなく薄膜多層が焼き戻し操作と同等の操作を受けるということにある。ガラスを焼き戻しするときに、特定の薄膜多層の光学特性(色座標、光もしくはエネルギー透過率)が変性されるということが分かっている。それゆえ、本発明に係る方法により、焼き戻しされていないガラス(それゆえ、焼き戻しされたガラスに特異的な応力プロファイルをガラス中に有せず、そのため、切断することができる)を得ることができるが、それが焼き戻しされたのと実質的に同一の光学特性を有することができる。本発明に係る方法は、また、焼き戻しによる特定の欠点、特に多層の美観面での欠点(曇り外観など)を回避する。もし、本発明により処理された、被覆された基材を焼き戻ししようとすると、その光学特性はもはや焼き戻しにより影響を受けない。本発明に係る処理は、それゆえ、別の利点、すなわち、焼き戻ししていない状態と同一の焼き戻しした状態の光学特性を有する多層(特に2又は3層の銀膜を含む)を提供するという利点がある。それで、1つの同一の壁上に、基本的に同一の多層を含む焼き戻しされていないグレージングパネルと焼き戻しされたグレージングパネルであるが、同一の美的外観を有するものを組み合わせることが可能になる。焼き戻しの前に、焼き戻しされるグレージングは本発明により予備処理されても又はされなくてもよい。このため、1つの同一の壁上で、このため、同一の基本多層を含むが、3つの異なる処理:焼き戻し処理;本発明に係る熱処理;又は本発明に係る熱処理の後に焼き戻し処理を受けたグレージングパネルを組み合わせることが可能である。
【0035】
このため、本方法は、好ましくは、本発明により処理された被覆された基材と、本発明により処理されていないが焼き戻しされた被覆された基材との間のパラメータΔE*が2.0以下であり、特に1.5以下であるようなものである。別の形態では又は追加的に、本方法は、好ましくは、本発明により処理され、その後、焼き戻しされた、被覆された基材と、本発明により処理されたが、焼き戻しされていない、被覆された基材との間のパラメータΔE*が2.0以下であり、特に1.5以下であるようなものである。当該技術分野において知られているとおり、
【0036】
【数1】

【0037】
である。色座標L*、a*及びb*はイルミナントD65の下でCIE−1931リファレンスオブザーバ(reference observer)を用いて算出される。これらは反射における色座標であり、多層面、又は、多層とは反対側の基材面のいずれかに対するものである。用語ΔL*は問題となる2つの状態の間の座標L*の変化を表す。同一の規則は用語Δa*及びΔb*にも当てはまる。好ましくは、多層は少なくとも2層の銀膜を含み、特に2層又は3層の銀膜を含む。というのは、現在知られているこのような多層はどれも焼き戻しできないからであり、すべてのこのような多層の色特性が焼き戻しにより変動することを意味する。初めて、本発明に係る方法により、少なくとも2層又は3層の銀膜を含む焼き戻し可能な多層を得ることができるようになる。
【0038】
さらに低い抵抗率及び放射率値を得るために、基材は本発明に係る熱処理工程後に焼き戻し工程を受けてもよい。加熱焼き戻し工程は、一般に、ガラスを所望の最終寸法に切断した後に行われるであろう。
【0039】
続いて行ういかなる焼き戻しの後にも、コーティングが曇り又は腐食タイプの欠陥を有しないように、本発明に係る処理の後に、最小の吸収率を維持する目的で、レーザの出力を変更することが有利な場合がある。
【0040】
基材は好ましくはガラス又はポリマー有機物質からできている。基材は好ましくは透明であり、無色(それで、透明又は極透明ガラス)であるか又は有色であり、たとえば、ブルー、グレー又はブロンズである。ガラスは好ましくはソーダ−ライム−シリカタイプであるが、それはボロシリケート又はアルミノボロシリケートタイプのガラスからできていてもよい。好ましいポリマー有機物質はポリカーボネート又はポリメチルメタクリレート又はポリエチレンテレフタレート(PET)である。基材は、有利には、少なくとも1つの寸法が1m以上又は2m以上、さらには3m以上である。基材の厚さは、一般に、0.5mm〜19mmで様々であり、好ましくは0.7mm〜9mmであり、特に2〜8mmであり、又は、さらには4〜6mmである。基材は平らであるか又は曲面であり、又は、さらには可とう性である。
【0041】
ガラス基材は好ましくはフロートガラスのものであり、すなわち、溶融スズ浴(「フロート」浴と呼ばれる)上に溶融ガラスを注ぐことからなる方法により得ることができるものである。この場合において、処理される膜は基材の「スズ」面又は「雰囲気」面上で同様に良好に堆積されうる。基材の「雰囲気」面及び「スズ」面は、それぞれ、フロート浴中にある雰囲気と接触している基材の面及び溶融スズと接触している基材の面を指す。スズ面はガラス構造中に拡散している少量の表層量のスズを含む。基材は、特にガラスの表面上に形体をインプリントすることができる技術である、2つのローラの間でロール加工することによっても得ることができる。
【0042】
熱処理前又は熱処理後の低E多層は少なくとも2層の誘電体膜の間に少なくとも1層の銀膜を含む。多層中には少なくとも1層の吸収性膜が存在する。明細書中、以下において、本発明により処理される多層の好ましい構造を最初に説明し、その後、このような構造中の吸収性膜又は各吸収性膜の配置について詳細に説明していく。特に指示がないかぎり、与えられる厚さは物理的厚さである。
【0043】
熱処理前又は熱処理後の低E多層は、好ましくは、基材から出発して、少なくとも第一の誘電体膜、少なくとも銀膜、場合によりオーバーブロッカー膜を含む第一のコーティング、及び、少なくとも第二の誘電体膜を含む第二のコーティングを含む。
【0044】
好ましくは、銀膜又は各銀膜の物理的厚さは6〜20nmである。
【0045】
オーバーブロッカー膜は次の膜(たとえば、もしこれが酸化性又は窒化性雰囲気中で堆積されるならば)の堆積の間に、そして焼き戻し又は曲げ加工タイプの任意の熱処理の間に銀膜を保護することが意図される。
【0046】
銀層は、また、アンダーブロッカー膜上で、それと接触して堆積されてもよい。多層は、それゆえ、銀膜又は各銀膜と並んでオーバーブロッカー膜及び/又はアンダーブロッカー膜を含むことができる。
【0047】
ブロッカー(アンダーブロッカー及び/又はオーバーブロッカー)膜は、一般に、ニッケル、クロム、チタン、ニオブ、又は、これらの種々の金属の合金から選ばれる金属をベースとする。ニッケル−チタン合金(特に、質量基準で約50%の各金属を含むもの)及びニッケル−クロム合金(特に、80質量%のニッケル及び20質量%のクロムを含むもの)を特に挙げることができる。オーバーブロッカー膜は、また、たとえば、基材から外に向かって、チタン膜、その後、ニッケル合金(特にニッケル−クロム合金)膜、又は、その逆である、数層の積層膜からなることができる。記載した種々の金属は又は合金は、また、部分的に酸化されていてもよく、そして特に、酸素が化学量論量未満(たとえば、TiOx又はNiCrOx)であってよい。
【0048】
これらのブロッカー(アンダーブロッカー及び/又はオーバーブロッカー)膜は非常に薄く、通常、1nm未満の厚さであり、それにより、多層の光透過率に影響を及ぼさず、そして本発明に係る熱処理の間に部分的に酸化されうる。明細書の残部で示すとおり、少なくとも1層のブロッカー膜の厚さはより大きくてもよく、それにより、本発明に係る吸収性膜を構成することができる。一般に、ブロッカー膜は雰囲気又は基材から来る酸素を捕獲することができ、このため、銀膜の酸化を防止することができる犠牲膜である。
【0049】
第一の誘電体膜及び/又は第二の誘電体膜は、通常、酸化物(特に、酸化スズ)であり、又は、好ましくは窒化物、特に窒化ケイ素である(特に、基材からさらに離れている第二の誘電体膜の場合)。一般に、窒化ケイ素はドープされていてよく、たとえば、アルミニウム又はホウ素によりドープされていてよく、それにより、スパッタリング技術により堆積させることが容易になる。ドーピングの度合い(ケイ素の量に対する元素百分率に対応する)は、一般に、2at%を超えない。これらの誘電体膜の機能は銀膜を化学的又は機械的な攻撃から保護することであり、それらは、また、干渉現象による多層の光学特性、特に反射における光学特性にも影響を及ぼす。
【0050】
第一のコーティングは、1層の誘電体膜を含むか、又は、複数層の、通常、2〜4層の誘電体膜を含むことができる。第二のコーティングは、1層の誘電体膜を含むか、又は、複数層の、通常、2〜3層の誘電体膜を含むことができる。これらの誘電体膜は、好ましくは、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ及び酸化亜鉛又はそれらの混合物もしくはそれらの固溶体、たとえば、スズ亜鉛オキシド又はチタン亜鉛オキシドから選ばれる材料からできている。誘電体膜の物理的厚さ、又は、すべての誘電体膜の全体としての物理的厚さは、第一のコーティングであっても又は第二のコーティングであっても、好ましくは、15〜60nmであり、特に20〜50nmである。
【0051】
第一のコーティングは、好ましくは、銀膜のすぐ下に又は場合により存在するアンダーブロッカー膜の下に、湿潤化膜を含み、その膜の機能は銀膜の湿潤性及び結合性を増加させることである。酸化亜鉛は、特にアルミニウムでドープされている場合に、この点で特に有利であることが判っている。
【0052】
第一のコーティングは、また、湿潤化膜のすぐ下に、スムージング膜を含むことができ、そのスムージング膜は部分的又は完全にアモルファスの混合酸化物(そしてそれゆえ、非常に低い粗さを有するもの)であり、その機能は優先結晶方位での湿潤化膜の成長を促進し、それにより、エピタキシャル現象により銀結晶化を促進することである。スムージング膜は、好ましくは、Sn、Zn、In、Ga及びSbから選ばれる少なくとも2種の金属の混合酸化物からなる。好ましい酸化物はアンチモンでドープしたインジウムスズオキシドである。
【0053】
第一のコーティングにおいて、湿潤化膜又は場合により存在するスムージング膜は好ましくは第一の誘電体膜の上に直接的に堆積される。第一の誘電体膜は好ましくは基材上に直接的に堆積される。多層の光学特性(特に反射における外観)を最適に調節するために、第一の誘電体膜は、代わりとして、別の酸化物又は窒化物膜、たとえば、酸化チタン膜上に堆積されてよい。
【0054】
第二のコーティング内において、第二の誘電体膜は、銀膜又は好ましくはオーバーブロッカーの上に直接的に堆積されるか、又は、多層の光学特性を調節することが意図された他の酸化物又は窒化物膜の上に堆積されることができる。たとえば、酸化亜鉛膜、特にアルミニウムでドープされた酸化亜鉛膜、又は、酸化スズ膜はオーバーブロッカーと、好ましくは窒化ケイ素からできている第二の誘電体膜との間に配置されてよい。酸化亜鉛、特に、アルミニウムでドープされた酸化亜鉛は銀と上層膜との付着性を改良するのを助ける。
【0055】
このように、本発明により処理された多層は好ましくは少なくとも1つのZnO/Ag/ZnO逐次層を含む。酸化亜鉛はアルミニウムでドープされていてよい。アンダーブロッカー膜は銀膜と下層膜との間に配置されてよい。代わりに、又は、追加的に、オーバーブロッカー膜は銀膜と上層膜との間に配置されてよい。
【0056】
最終的に、第二のコーティングはオーバーコートと呼ばれる膜を上に配置することができる。多層のこの最後の膜であって、それゆえ、周囲空気と接触している膜はあらゆる機械的攻撃(引っ掻きなど)又は化学的攻撃から多層を保護することが意図される。このオーバーコートは、一般に、非常に薄く、それにより、多層の反射での外観を阻害しない(その厚さは、通常、1〜5nm)。オーバーコートは好ましくは酸化チタン又は混合スズ亜鉛オキシド、特にアンチモンによりドープされたものをベースとし、化学量論量未満の形態で堆積されているものである。下記に示すとおり、このオーバーコートの組成はそのオーバーコートが吸収性膜又は多層の吸収性膜であるように選択されうる。
【0057】
多層は1層以上の銀膜、特に、2層又は3層の銀膜を含んでよい。1層より多くの銀膜が存在する場合には、上記の一般的構造が繰り返されていてよい。この場合には、所与の銀膜に関係し(そしてそれゆえ、この銀膜の上方に配置されている)第二のコーティングは、一般に、次の銀膜に関係する第一のコーティングと一致している。
【0058】
熱処理前の多層は少なくとも1層の吸収性膜を含む。薄い吸収性膜は銀膜と直接的に接触していてよく、それにより、銀膜に向って再放出されるエネルギーの伝達性を改良する。薄い吸収性膜は銀膜の下(すなわち、基材により近い)及び/又は銀膜の上に配置されうる。
【0059】
第一の好ましい実施形態によると、レーザ線を少なくとも部分的に吸収する薄膜は金属膜であり、その膜は銀膜の上に直接的に堆積されるか(オーバーブロッカー膜)、又は、銀膜の下に直接的に堆積され(アンダーブロッカー膜)、その膜の厚さは2〜5nmであり、特に3〜5nmである。このブロッカー膜はレーザ処理の間に部分的に酸化され、一般に、低減された光吸収率を有する酸素が化学量論量未満である酸化物を形成する。より薄い膜は銀膜へのエネルギー伝達が知覚可能になるのに十分な吸収率を有しない。さらに、より薄い膜はレーザ処理の間に完全に酸化される傾向を有し、最終の多層の機械強度が低くなる。典型的なブロッカー膜の厚さよりも大きいので普通でない記載された厚さ範囲は、それゆえ、本発明に係る処理に特に好適である。ブロッカー膜の化学的性質に関しては、ブロッカー膜が本発明に係る吸収性膜である場合に上記のことが当てはまる。
【0060】
第二の好ましい実施形態によると、レーザ線を少なくとも部分的に吸収する薄膜は窒化物膜であり、特に、化学量論量の又は窒素が化学量論量未満のものである。好ましくは、化学量論量の窒化物は窒化ニオブ、窒化チタン又はその混合物から選ばれ、それはレーザの波長範囲で高い吸収率を有する。窒素が化学量論量未満の窒化物は、好ましくは、化学量論量未満の窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタンもしくは窒化ニオブ又はそれらの混合物から選ばれる。必要ならば、特に、処理された多層がソーラーコントロール機能を保持しなければならないならば、吸収性窒化物は窒化ケイ素膜などの2層の透明窒化物膜の間にそれを封入することにより酸化から保護されうる。3層の積層窒化物膜のこの多層は銀膜上と同様に銀膜の下に配置されてよい。上記に示した一般的な構造において、吸収性窒化物膜は第二のコーティングの部分と同様に第一のコーティングの部分を形成することができる。吸収性窒化物膜が封入される場合には、3層の窒化物膜を有する多層は好ましくは、第一の誘電体膜及び/又は第二の誘電体膜を、特にそれらが窒化ケイ素からできている場合に、置き換える。しかしながら、本発明に係る処理の間に、吸収性窒化物膜は、たとえ封入されていなくても、酸化せず、特に、窒化ニオブの場合に酸化しないことが観測され、それは特に安定である。好ましくは、吸収性窒化物膜は厚さが2〜10nmであり、特に2〜5nmである。
【0061】
第三の好ましい実施形態によると、レーザ線を少なくとも部分的に吸収する薄膜は空気と接触している膜であり、そして、金属、酸素が化学量論量未満である金属酸化物又は金属窒化物からなる。上記の一般的な構造の関係で、これはそれゆえオーバーコートである。空気と接触しており、それゆえ、多層の最終膜である、このオーバーコートは、一般に、レーザ処理の間に酸化し、それにより、処理後のその光吸収率は非常に低いであろう。特定の場合、特に、窒化ニオブに関する場合には、オーバーコートは酸化せず、それゆえ、処理後に評価可能な光吸収率を保持し、そのことは多層がソーラーコントロール機能を有しなければならないならば有利であることができる。空気と接触しているこのオーバーコートの厚さは好ましくは5nm以下であり、又は、3nm以下であるが、1nm以上である。これと同じほどの薄い厚さは、一般に、所望の吸収性を得るために十分である。薄い厚さは、また、本発明に係る処理の後に完全な酸化を可能にし、それゆえ、高い光透過率となる。金属は、好ましくは、ケイ素、ニオブ、チタン、アルミニウム、亜鉛、スズ及びジルコニウム、又は、それらの合金から選ばれる。好ましくは、酸素が化学量論量未満である酸化物は、酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズもしくは酸化ジルコニウム、又はそれらの混合物である。窒化物は化学量論的であってよく、この場合には、それは好ましくは窒化ニオブ、窒化チタン又はそれらの混合物である。窒化物は化学量論量未満であってもよく、それで、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化亜鉛、窒化スズもしくは窒化ジルコニウム又はそれらの混合物であることができる。
【0062】
第四の好ましい実施形態によると、レーザ線を少なくとも部分的に吸収する薄膜は酸素が化学量論量未満である金属酸化物の膜であり、銀膜又は各銀膜の下にあり、好ましくはそれと接しており、及び/又は銀膜又は各銀膜の上にあり、好ましくはそれと接している膜である。特に、それは上記のとおりの湿潤化膜であることができる。酸素が化学量論量未満である酸化物は、好ましくは、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化スズ又はそれらの混合物から選ばれる。
【0063】
第五の好ましい実施形態によると、レーザ線を少なくとも部分的に吸収する薄膜は空気と接触している炭素をベースとする膜である。好ましくは、炭素はグラファイト又はアモルファスタイプのものであり、及び/又は少なくとも50%又はさらには100%のsp2炭素を含む。炭素をベースとする薄膜は好ましくは炭素からなるが、金属によりドープされていてよく、又は、部分的に水素化されていてよい。炭素膜の厚さは好ましくは5nm未満、特に2nm、さらには1nm未満である。炭素は可視及び赤外範囲に高い吸収能を有する。炭素膜は、最も特にはそれが主としてsp2混成炭素で、特にグラファイト又はアモルファスタイプである場合、より特には厚さが薄い場合に、処理の間に、おそらくは蒸発する二酸化炭素へと酸化されることにより除去され、それにより、処理後の残存吸収率は最小になる。炭素をベースとする薄膜は種々の技術により、特にマグネトロンスパッタリングにより、たとえば、アルゴン雰囲気中にグラファイトターゲットを用いて得ることができる。他の堆積方法としてCVD(化学蒸着)、アーク堆積、蒸着及びゾルゲル法が挙げられる。
【0064】
多層中のどの位置にあっても、吸収性膜又は1層のこのような膜は遷移金属(たとえば、鉄、クロム、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル又は銅)又は希土類(たとえば、ネオジム又はユーロピウム)の少なくとも1種のイオンによりドープされた酸化物をベースとしてもよい。
【0065】
処理された多層は単一の吸収性膜を含むことができる。多層はまた、単一の吸収性膜の存在が全体の多層の所望の吸収率を達成するのに不十分である場合には、より多くの吸収性膜、たとえば、2,3,4又は5層のこのような膜を含んでもよい。多層は、それゆえ、個々には所望の吸収率を達成できないが、組み合わされたときに、所望の吸収率を達成することができる複数の吸収性膜を含むように選択されうる。このことは、1層より多くの銀膜、特に2層又は3層の銀膜を含む多層の場合に特に当てはまり、ブロッカー(アンダーブロッカー及び/又はオーバーブロッカー)の数の増加により、レーザの波長で高い吸収率となることができ、一方、各々膜自体はこの吸収率を達成するのに十分な厚さを有しない。
【0066】
多層によるレーザ線の吸収率をさらに改良するために、多層は、それゆえ、上記に記載されるとおりの幾つかのタイプの吸収性膜を含むことができる。記載された好ましい実施形態の各々は、1つ以上の他の実施形態と特に組み合わされてよい。特に、以下の好ましい実施形態は組み合わされてよい:1及び2;1及び3;1及び4;1及び5;2及び3;2及び4;3及び4;2及び5;3及び5;1,2及び3;1,2及び4;1,2及び5;1,3及び4;1,3及び5;2,3及び4;2,3及び5;3,4及び5;1,2,3及び4;1,2,3及び5;1,2,4及び5;1,3,4及び5;ならびに、2,3,4及び5。例として、多層は1層の厚いブロッカー膜(厚さが2〜5nm)及び1層の吸収性オーバーコートを含んでよい(第一の好ましい実施形態と第三の好ましい実施形態との組み合わせ)。特定の好ましい実施形態は、それら自体と組み合わせてよい。そのことは、多層が複数の、たとえば、2層又は3層の窒化物吸収性膜、特に2層の窒化ケイ素膜の間に封入されたものを含むことができる点で第二の好ましい実施形態の場合に当てはまる。同様に、多層はレーザ線の吸収率を増加させるために厚くされた複数のブロッカー(アンダーブロッカー又はオーバーブロッカー)膜を含むことができる(第一の実施形態の組み合わせ)。
【0067】
本発明により処理されうる多層の幾つかの非限定的な例を下記に記載する。膜は基材から出発して堆積の順序で示している。場合により存在する膜は括弧内に示している。
多層1: Si3N4/Ti02/(SnZnOx)/Zn0/Ag/Ti/Zn0/Si3N4/Ti
多層2: Ti02/Zn0/Ag/Zn0/(Ti02)/Si3N4/ZnSn
多層3: (Si3N4)/Ti02/(NiCr)/Ag/NiCr/(Zn0)/Sn02
多層4: Si3N4/NbN/Si3N4/(SnZnOx)/Zn0/Ag/NiCr/Zn0/Si3N4/TiOx
多層5: SiNx/Zn0/Ag/NiCr/Zn0/Si3N4
多層6: Si3N4/Zn0/Ag/Ti/Zn0/Si3N4/Zn0/Ag/Ti/Zn0/Si3N4
多層7: Si3N4/Zn0/Ag/Ti/Zn0/Si3N4/Zn0/Ag/Ti/Zn0/Si3N4/Zn0/Ag/Ti/Zn0/Si3N4
多層8: Si3N4/Ti02/ (SnZn0x)/Zn0/Ag/Ti/Zn0/Si3N4/C。
【0068】
多層1の場合には、吸収性膜は金属オーバーコート(チタンからできているが、上記のとおり、他の金属も可能であり、化学量論量未満の窒化物又は酸化物も同様である)及び、場合により、オーバーブロッカー(ここで、チタンからできているが、上記の金属又は合金も使用されてよい)により形成され、その場合、厚くされる。この多層は、それゆえ、場合により第一の好ましい実施形態と組み合わせた第三の好ましい実施形態を例示している。
【0069】
多層2はSnZn合金からできた金属コーバーコートである1層の吸収性膜を含む。この多層は、それゆえ、第三の好ましい実施形態を例示している。もちろん、上記に記載した中の他の合金も可能である。
【0070】
多層3は1層のオーバーブロッカー及び1層のアンダーブロッカーを含み、その両方はニッケル−クロム合金からできている。これらのブロッカーの一方又は両方は1層又は2層の吸収性膜を構成するように厚くされてよい。たとえば、アンダーブロッカーのみ又はオーバーブロッカーのみは厚くされてよい(第一の好ましい実施形態)。又は、両方のブロッカーは厚くされてよい(第一の好ましい実施形態のそれ自体の組み合わせ)。
【0071】
多層4は窒化ニオブ吸収性膜及び酸素が化学量論量未満である酸化チタン吸収性オーバーコートを含む。それはそれゆえ、第二の好ましい実施形態と第三の好ましい実施形態との組み合わせを例示している。ニッケル−クロム合金からできているオーバーブロッカーは、また、吸収性膜を構成するように厚くされていてよい(第一の好ましい実施形態)。このタイプの多層は低E機能に加えてソーラーコントロール機能を有する。
【0072】
多層5において、吸収性膜は窒素が化学量論量未満である窒化ケイ素膜である(第二の好ましい実施形態)。ニッケル−クロム合金からできているオーバーブロッカーは、また、吸収性膜を構成するように厚くされていてよい(第一の好ましい実施形態)。
【0073】
多層6及び7はそれぞれ2層及び3層の銀膜を含むものを例示している。特定の場合には、多数のブロッカー(ここで、チタンからできているが、既に述べた他の金属又は合金も使用されてよい)は所望の吸収率を達成するのに十分であることができる。他の場合には、少なくとも1層のブロッカーを厚くする必要があることが判るであろう。
【0074】
層8は、最後の層として炭素膜、好ましくはアモルファス又はグラファイトタイプの炭素膜を含む。この非常に吸収性の膜は熱処理の間の酸化により除去される。たとえば、チタンからできている金属膜はこの炭素膜の下に接触して配置されてよい。
【0075】
上記の多層において、少なくとも1層の酸化亜鉛膜は、また、酸素が化学量論量未満であり、吸収性膜を構成していてよく、第四の好ましい実施形態を例示している。
【0076】
本発明に係る処理は、一般に、適切に画定された波長を有する線源を用いて行われる。しかしながら、本発明は、被覆された基材が異なる波長を有する複数の線源の作用を受けるように幾つかの異なるレーザを使用することを排除するわけではない。
【0077】
放射線の波長は好ましくは530nm〜1000nmであり、又は、600nm〜1000nmであり、特に700nm〜950nmであり、又は、さらには800nm〜950nmである。というのは、銀は、より長い波長の赤外線よりもこのタイプの放射線を少量でしか反射しないからである。さらに、基材は、もし透明ガラスからできているならば、この波長範囲をより少量でしか吸収せず、それで、高温を経験しにくい。
【0078】
本発明の主題は、また、低E薄膜多層により少なくとも1つの面が被覆された基材を得る方法であって、下記工程:
前記基材の前記少なくとも1つの面の上に、少なくとも2層の誘電体薄膜の間に少なくとも1層の銀膜を含む薄膜多層を堆積させること、及び、
前記少なくとも1つの被覆された面を、530nm〜1000nm、又は、600nm〜1000nm、特に700nm〜950nm、又は、さらには800nm〜950nmにある少なくとも1つの波長で発光するレーザ線の少なくとも1つの源を用いて熱処理し、それにより、多層の放射率及び/又は抵抗率を少なくとも5%低減させること、
を含む方法である。
【0079】
たとえば、約808nm、880nm、915nm又は940nm又は980nmの波長で発光するレーザダイオードを使用することが好ましい。ダイオードの装置の形態では、非常に高い出力レベルを得ることが可能であり、20kW/cm2を超え、又はさらには30kW/cm2を超える表面出力レベルを処理される多層の上に達成することが可能である。
【0080】
実施容易性を高めるために、本発明の関係で使用されるレーザはファイバー輸送され、すなわち、レーザ線は光ファイバー中に送り出され、その後、焦点合わせヘッドによって処理される表面付近に送達される。レーザは、また、増幅媒体自体が光ファイバーである点でファイバーレーザであることができる。
【0081】
レーザ光線はポイントレーザ光線であってよく、その場合には、基材平面内でレーザ光線を移動させるための装置を提供することが必要である。
【0082】
しかしながら、好ましくは、基材の幅のすべて又は一部を同時に照射する、本明細書の残りの部分で「レーザライン」と呼ばれる少なくとも1つのレーザ光線形成ラインによりレーザ線が発光される。この形態では、一般に嵩張りかつ保全が困難である高価な移動装置の使用を回避するので好ましい。インラインレーザ光線は、特に、焦点オプティックスと組み合わせた高出力レーザダイオードの装置を用いて得ることができる。ラインの厚さは好ましくは0.01〜1mmである。ラインの長さは、通常、5mm〜1mである。ラインのプロファイルは特に、ガウス曲線又は「トップハット」型であることができる。
【0083】
基材の幅のすべて又は一部を同時に照射するレーザラインは単一のライン(この場合には、基材の全体幅を照射する)からなっても、又は、場合により分離されている複数のラインからなってもよい。複数のラインを使用する場合には、多層の全領域を処理するように各ラインが配置されることが好ましい。1つのライン又は各々のラインは好ましくは基材の進行方向に対して垂直に配置されており、又は、斜めに配置されている。種々のラインは基材を同時に処理してよく、又は、時刻を遅らせた様式で処理してもよい。重要なポイントは処理されるべき表面の全体が処理されることである。
【0084】
膜の全表面を処理するために、一方で、膜により被覆された基材と、1つのレーザライン又は各々のレーザラインとの間の相対移動を用いることも好ましい。このため、基材を移動させることができ、特に、静止レーザラインを直線進行にて通過するように、一般にレーザラインの下方であるが、可能にはレーザラインの上方で移動させることができる。この実施形態は連続処理のために特に有用である。代わりとして、基材が静止して、そしてレーザが移動されてもよい。好ましくは基材とレーザとのそれぞれの速度の差異は1メートル/分以上又は4メートル/分以上であり、さらには6、8、10もしくは15メートル/分以上であり、このことは高速処理速度を確保するためである。本発明によると、多層の特定の膜を賢明に選択することにより、高速運動速度及びそれゆえ高処理速度で非常に大きな抵抗率の低減を達成することができる。
【0085】
基材を特に直線的に移動させる場合には、任意の機械コンベヤ手段、たとえば、ベルト、ローラ、直線運動トレーを用いて基材を移動させることができる。コンベヤ装置を用いて、運動速度をモニターし又は調節することが可能である。もし基材が可とう性ポリマー有機物質からできているならば、連続ローラの形態でのフィルム進行装置を用いて基材を移動させることができる。
【0086】
レーザは、また、基材からのその距離を調節するように移動されることもできる。そのことは基材が曲げられている場合に特に有用であることができるが、その場合に限られない。実際、焦点面から1mm以下の距離にあるようにレーザ光線が処理されるコーティング上に焦点合わせされることが好ましい。基材と焦点平面との間の距離に関し、基材を移動させ又はレーザを移動させる装置が十分に正確でないならば、レーザと基材との間の距離を調節することができることが好ましい。この調節は自動であってよく、特に、処理の上流での距離の測定値を用いて調節されることができる。
【0087】
レーザラインが移動される場合には、基材の上方又は下方にあるレーザを移動させるための装置を提供することが必要である。処理の時間はレーザラインの運動速度により調節される。
【0088】
基材の表面が適切に照射されうるかぎり、基材及びレーザのすべての相対位置がもちろん可能である。より一般的には、基材は水平に配置されるが、それは垂直に又は任意の可能な傾きで配置されることもできる。基材が水平に配置される場合には、レーザは一般に基材の上面を照射するように配置される。レーザは基材の下面に照射してもよい。この場合、基材を支持する装置が必要であり、場合により、基材が移動する場合には、照射される領域に放射線を通過させることができるように基材輸送装置が必要である。たとえば、コンベヤローラを用いる場合がその場合である。ローラは分離されているので、2つの連続ローラの間にある領域にレーザを通過させることが可能である。
【0089】
基材の両面を処理する場合には、基材の両側にある幾つかのレーザを使用することが可能であり、基材は水平位置もしくは垂直位置又は任意の傾き位置であってもよい。
【0090】
放射線デバイス、たとえば、インラインレーザは、マグネトロンスパッタリングライン又は化学蒸着(CVD)ライン、特に、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)ライン(真空もしくは大気圧(APPECVD)における)などの膜堆積ラインに組み込まれることができる。一般に、ラインは、基材を取り扱うためのデバイス、堆積ユニット、光学制御デバイス及び積み重ねデバイスを含む。基材は、たとえば、コンベヤローラ上で、各デバイス又は各ユニットをとおして連続的に進む。
【0091】
放射線デバイス、たとえば、インラインレーザは好ましくは膜堆積ユニットの直後に位置し、たとえば、堆積ユニットの出口に位置する。被覆された基材は、このため、堆積ユニットの出口で膜が堆積された後に、光学制御デバイスの前又は光学制御デバイスの後に、基材積み重ねデバイスの前に、インラインで処理されることができる。
【0092】
放射線デバイスは、また、堆積ユニットに組み込まれていてもよい。たとえば、レーザはスパッタリング堆積ユニットのチャンバーの1つ、特に、雰囲気が高真空で、特に、10-6〜10-2mbarの圧力のチャンバー中に導入されうる。レーザは、また、堆積ユニットの外に配置されてもよいが、該ユニットの内部で基材を処理するようになっている。この目的で、要求されるのは、使用される放射線の波長に対して透明であるウインドウを提供するだけであり、それをとおしてレーザ光線が膜を処理する。これにより、同一のユニット内で別の膜を続いて堆積させる前に膜(たとえば、銀膜)を処理することが可能である。吸収性膜が、たとえば、金属からできたオーバーコートである場合には、基材が真空チャンバー中に配置されるならば処理の間の酸化が阻害されうる。この場合、酸化性雰囲気が制御される特別なチャンバー中で多層を処理することが可能である。
【0093】
放射線デバイスが堆積ユニットの外側にあっても又は堆積ユニットに組み込まれていても、これらの「インライン」法は堆積工程と熱処理との間にガラス基材を積み重ねる必要があるオフライン操作を含む方法よりも好ましい。
【0094】
オフライン操作を含む方法は、しかしながら、堆積を行う場所と異なる場所、たとえば、ガラスの変性を行う場所で本発明に係る熱処理が行われる場合に有利であることがある。放射線デバイスは、それゆえ、膜堆積ライン以外のラインに組み込まれることができる。放射線デバイスは、たとえば、複層グレージング(特に二重ガラス又は三重ガラス)を製造するためのライン、又は、合わせガラスを製造するためのラインに組み込まれることができる。これらの種々の場合には、本発明に係る熱処理は、好ましくは、複層グレージング又は合わせガラスを製造する前に行う。
【0095】
多層は任意のタイプの方法により基材上に堆積されてよく、特に、主としてアモルファス膜又はナノ結晶化膜を生じる方法、たとえば、スパッタリング、特に、マグネトロンスパッタリング法、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)法、真空蒸着法又はゾルゲル法によって堆積されうる。
【0096】
好ましくは、多層はスパッタリング、特にマグネトロンスパッタリングにより堆積される。
【0097】
より単純化するために、膜のレーザ処理は好ましくは空気中及び/又は大気圧で行う。しかしながら、たとえば、続いて行う堆積の前に、実際に真空堆積チャンバー内で膜を熱処理することが可能である。
【0098】
好ましくは、レーザ処理は、薄膜上の各ポイントが少なくとも300℃の温度に加熱され、一方、その第一面とは反対側の基材の面の任意のポイントで100℃以下の温度を維持するようにし、それにより、薄膜の連続性を維持しながら、薄膜の溶融工程を用いずに、薄膜の結晶化速度を増加させる。それゆえ、薄膜は処理の結果として連続のままである。
【0099】
本発明の関係では、表現「連続薄膜」は膜が基材を実質的にすべて被覆している、又は多層の場合には、下方膜のすべてを被覆していることを意味することが理解される。本発明に係る処理により薄膜の連続性(及びそれゆえ、その有利な特性)が保存されることは重要である。
【0100】
用語「膜のポイント」は所与の瞬間に処理を受ける膜の領域を意味することが理解される。本発明によると、すべての膜(及びそれゆえ各ポイント)は少なくとも300℃の温度に上昇されるが、膜の各ポイントが必ずしも同時に処理されない。膜は全体で同時に処理されてよく、膜の各ポイントは少なくとも300℃の温度に同時に上昇される。代わりとして、膜は、膜の種々のポイント又はポイント群が少なくとも300℃に逐次に加熱されるように処理され、この第二の実施形態は工業規模での連続実施の場合に、より頻繁に使用される。
【0101】
本発明に係る方法は、水平又は垂直に配置された基材上に行うことができる。本方法は、また、両面に薄膜を備えた基材上で行うこともでき、一方の面又は各面の上の少なくとも1層の膜は本発明により処理される。基材の両面に堆積された薄膜を本発明により処理する場合には、薄膜を各面で同時に又は逐次的に、特に、処理される膜の種類が同一又は異なるかによって、同一又は異なる技術によって処理することができる。もちろん、本発明に係る処理を基材の両面で同時に行う場合は本発明の範囲に含まれる。
【0102】
本発明の別の主題は、本発明に係る方法により得ることができる材料である。
【0103】
本発明の主題は、また、特に、少なくとも2層の誘電体薄膜の間に単一の銀薄膜を含む低E薄膜多層により少なくとも1つの面が被覆された、焼き戻しされていないガラス基材である。特に、多層は下記のようなものである。
多層はシート抵抗が1.9オーム以下、又はさらには、1.8オーム以下であり、多層により被覆された4mmの厚さの透明ガラス基材が75%以上、又はさらには76%以上の光透過率を有し、そして5以下、又はさらには4以下の多層面上での反射における色度値a*を有するようなものである。又は、
多層はシート抵抗が2.4オームを超えるが、3.0オーム以下であり、多層により被覆された4mmの厚さの透明ガラス基材が87%以上、又はさらには88%以上の光透過率を有し、そして4以下の多層面上での反射における色度値a*を有するようなものである。
【0104】
銀膜の物理的厚さは第一の選択肢として好ましくは14〜18nmであり、そして第二の選択肢として12〜16nmであり、そして第三の選択肢として10〜14nmである。
【0105】
本発明に係る方法は、提供される銀膜へのエネルギー伝達を最適化することにより、一方で、放射率と、他方で、光学特性(光透過率及び色)との組み合わせであって、焼き戻し以外にはこれまで達成できなかった組み合わせを有する低E多層を得ることを可能にする。
【0106】
光透過率はNF EN 410標準によるスペクトルから算出される。色度値a*はCIE 1931リファレンスオブザーバ及びイルミナントD65を用いて算出される。
【0107】
本発明のなおも別の主題は、少なくとも2層の誘電体薄膜の間に少なくとも2層の銀薄膜を含む低E薄膜多層により少なくとも1つの面が被覆された、焼き戻しされていないガラス基材であり、上記の被覆された基材と、焼き戻し後の被覆された基材との間のパラメータΔE*が2.0以下であり、特に1.5以下であるようなものである。好ましくは、多層は2層又は3層の銀膜を含む。
【0108】
当該技術分野において知られているとおり、
【0109】
【数2】

【0110】
である。色座標L*、a*及びb*はイルミナントD65及びCIE−1931リファレンスオブザーバを用いて算出される。色座標は基材側、すなわち、多層とは反対側の面の側での反射におけるものである。用語ΔL*は被覆された基材と、焼き戻し後の同一の被覆された基材との間の座標L*の変化を表す。同一の規則は用語Δa*及びΔb*にも当てはまる。
【0111】
上記に示したとおり、本発明に係る処理により、焼き戻し処理により得られるものと実質的に同一であるか又は少なくとも非常に近い色特性を得ることができる。もし、この焼き戻しされていない基材が続いて焼き戻しされるならば、色特性は焼き戻しによりほとんど影響を受けない。本願発明者の知るかぎりでは、少なくとも2層の銀膜を含む多層では「焼き戻し可能(temperability)」と呼ばれる、この特性を満たしたものは今までになかった。
【0112】
本発明に係る多層は、好ましくは上記の一般的構造を有する。簡潔及び明確さのために、対応する節はここでは繰り返さないが、各種の層の配置、その機能(第一のコーティング及び第二のコーティング、誘電体膜、オーバーブロッカー膜、アンダーブロッカー膜、湿潤化膜、スムージング膜、オーバーコート)、その化学的性質及びその厚さに関するすべての詳細も、本発明に係る多層にもちろん当てはまる。
【0113】
好ましくは、本発明に係る被覆された基材は低E薄膜多層とは反対面上に反射性コーティングを含まない。
【0114】
本発明により得られる基材は、単層、複層又は合わせガラス、鏡、及びガラス壁カバリングにおいて使用されうる。ガス充填キャビティーにより分離された少なくとも2層のガラスシートを含む複層ガラスの場合には、多層が上記のガス充填キャビティーと接触している面、特に外側に対して面2(すなわち、建物の外側と接触している基材の面であって、外側に向いている面とは反対側の面)、又は、面3(すなわち、外側に向いている建物の外側から出発して第二の基材の面)に配置されることが好ましい。
【実施例】
【0115】
以下の本発明の非限定的な実施例により本発明を例示する。
例1:
様々な低E多層を、出願人により販売される品名SGG Planiluxで販売されている、厚さ4mmの透明ガラス基材上に堆積させた。マグネトロンスパッタリングラインをとおして基材を種々のターゲットの下に通過させて、マグネトロンスパッタリングライン上で、既知の様式にてすべての多層を堆積させた。
【0116】
表1は試験した各多層について、膜の物理的厚さをnmで表現していることを示す。第一列は基材から最も遠くに離れており、すなわち、開放空気に接触している膜に対応する。
【0117】
吸収率は、レーザ線の波長(808nm)での多層が被覆された4mm厚さの透明ガラス基材の吸収率に対応する。
【0118】
【表1】

【0119】
下記の表2は種々の膜に対して用いた堆積パラメータを示している。
【0120】
【表2】

【0121】
これらの多層の各々は、例によって、15nm、13.5nm、11nm又は9.5nmの厚さを有する単一の銀膜を含む。それらのすべては金属チタンオーバーブロッカー、酸化亜鉛湿潤化膜及び2層の窒化ケイ素誘電体膜を含む。試料C1は比較例であり、アンチモンによりドープされた亜鉛スズオキシドからできた非吸収性オーバーコート及び従来の厚さ(0.5nm)のオーバーブロッカーを含み、レーザ波長において低い吸収率となった。本発明に係る試料1は厚くされた(2nm)のオーバーブロッカーを含み、それにより、吸収率が16%の値に達する。本発明に係る試料2、3、5及び6はチタン金属オーバーコートを有する。例3のオーバーブロッカーは、また、2nmと厚くした。これらの変更による追加のチタン厚さのために、被覆された基材の吸収率はこれらの例において20〜30%に達する。試料3は、それ自体、窒化ニオブ吸収性膜を含み、それにより24%の吸収率が達成されうる。この多層は低E機能及びソーラーコントロール機能の両方を実現する。
【0122】
波長が808nmであるインラインレーザ光線を用い、それをとおして、被覆された基材を直線的に通過させてこれらの様々な試料を処理した。
【0123】
下記の表3は以下のことを示す。
運転速度、メートル/分;
で示し、オームで表す、レーザ処理前及びレーザ処理後のシート抵抗;
ΔRで示し、%として表す、処理によるシート抵抗の相対低下率;
εnで示し、%で表す、レーザ処理前及びレーザ処理後の、5〜50ミクロンのスペクトル範囲での反射におけるスペクトルを用いた、EN 12898標準により算出される283Kの温度での垂直放射率;
Δεnで示し、%で表す、処理による垂直放射率の相対低下率;
レーザ処理前及びレーザ処理後のNF EN 410標準による試料の光透過率及びエネルギー透過率;及び
イルミナントD65下にCIE 1931リファレンスオブザーバを用いて算出した、多層面での反射における色度値a*
【0124】
【表3】

【0125】
レーザ処理後の本発明に係る試料は、処理前のほとんどの吸収性試料の場合に、少なくとも15%、又はさらには20%、シート抵抗及び放射率の低下を経験し、そのことは銀膜の結晶化度の実質的な改良、特に、銀結晶粒のサイズの増加を証明する。処理速度の減少によりシート抵抗及び放射率の値をさらに下げることができる。
【0126】
試料1〜3及び5〜6において、多層が吸収性だったので処理前に低かった光透過率は、同一の銀厚さで、処理前のほとんど吸収性のない試料C1に匹敵する値までに大きく増加している。光透過率のこの増加は処理の間のチタンの酸化をもたらす。しかしながら、試料4の光透過率はレーザ処理の間にほとんど変化しない。これはおそらくは、窒化ニオブ膜の上に堆積された窒化ケイ素膜が窒化ニオブ膜を酸化から保護しているからである。
【0127】
比較において、試料C1は、同一の速度で処理されるときに、最小量のシート抵抗の低下しか経験しない。4メートル/分まで処理速度を低下しても、シート抵抗及び放射率の低下の点では不十分である。それゆえ、多層を調節することにより、同一の処理速度で、処理をかなり加速し、ずっと優れた性能を得ることが可能である。
【0128】
これらの例は、また、本発明に係る方法により、焼き戻しされていないガラス上に以下のことを組み合わせた多層を得ることが可能であることを示す:
1.9オーム以下のシート抵抗、75%以上の光透過率及び5以下の色度値a*(例2及び3の場合);
2.4オーム以下のシート抵抗、81%以上の光透過率及び5以下の色度値a*(例6の場合);
3.0オーム以下のシート抵抗、87%以上の光透過率及び4以下の色度値a*(例5の場合)。
【0129】
試料2は、また、レーザ処理の後又は堆積の直後(それゆえ、レーザ処理を行っていない)のいずれかで、焼き戻し操作を受けた。
【0130】
下記の表4は、レーザ処理前、レーザ処理後、レーザ処理に次いで焼き戻し後、及び、焼き戻し後(レーザ処理を行わない)の光透過率(NF EN 410標準による)及び多層面での反射における色座標(イルミナントD65下に、CIE−1931リファレンスオブザーバを用いる)を示す。表4は、また、レーザ処理又は焼き戻しにより生じる試料の色の変化を示している。これらの変化は上記に規定されるパラメータΔE*により表現される。レーザ処理前の試料を処理後の試料と比較し(レーザ処理の効果を示すため)、そして焼き戻しされた試料と比較し(焼き戻しの効果を示すため)、そして、レーザ処理後の試料を焼き戻しされた試料(レーザ処理されていないが)と比較し(レーザ処理の効果と焼き戻しの効果との比較)、そしてレーザ処理後の試料を、レーザ処理しその後に焼き戻しした試料と比較する。
【0131】
【表4】

【0132】
本発明により処理された基材の色座標が焼き戻しされた基材のものと非常に近いことが表4から明らかである。同様に、本発明により処理された基材の色座標は本発明により処理され、その後に、焼き戻しされた基材のものと非常に近い。それゆえ、本発明による処理によって、多層の色特性が焼き戻しにより実質的に変性されない点で常に焼き戻し可能である多層を有する、焼き戻しされていない基材を得ることが可能である。それゆえ、1つの同一の壁において、焼き戻しされていない基材と焼き戻しされた基材を組み合わせることが可能である。
【0133】
例2
本例では、例1に使用したのと同一の基材上に堆積された2層又は3層の銀膜を含む多層を本発明により処理した。
【0134】
表5は試験した各多層についてnmで表した膜の物理的厚さを示す。最初の列は基材から最も離れた、開放空気に接触している膜に対応する。
【0135】
【表5】

【0136】
試料7及び8は2層の銀膜を含む多層である。試料8はニッケル−クロム合金ブロッカー及び窒化ニオブ吸収性膜を含み、そのため、その吸収率は例7のものより大きい。試料9は3層の銀膜を含む。
【0137】
波長が808nmであるインラインレーザ光線を用い、それをとおして、被覆された基材を直線的に通過させてこれらの様々な試料を処理した。
【0138】
下記の表6及び7は以下のことを示す。
運転速度、メートル/分;
で示し、オームで表す、レーザ処理前及びレーザ処理後のシート抵抗;
ΔRで示し、%として表す、処理によるシート抵抗の相対低下率;
εnで示し、%で表す、レーザ処理前及びレーザ処理後の、5〜50ミクロンのスペクトル範囲での反射におけるスペクトルを用いた、EN 12898標準により算出される283Kの温度での垂直放射率;
Δεnで示し、%で表す、処理による垂直放射率の相対低下率;
レーザ処理前、レーザ処理後、レーザ処理に次いで焼き戻し後、又は、焼き戻し単独(レーザ処理なし)の後のNF EN 410標準による試料の光透過率;
レーザ処理前及びレーザ処理後のNF EN 410標準によるエネルギー透過率;
レーザ処理前、レーザ処理後、レーザ処理に次いで焼き戻し後、又は、焼き戻し単独(レーザ処理なし)の後の、イルミナントD65下にCIE 1931リファレンスオブザーバを用いて算出した、多層とは反対側の面と同一の面(すなわち、基材面)での反射における色度値L*、a*、b*
90%のアルゴンを含む15mm厚さのキャビティーを側面に有する厚さ6mmの2枚の透明ガラス基材を含む二重ガラスであって、ここで、多層が面2上にあり、すなわち、建物の外側に接触している基材の面であって、外側に向かっている面(面1と呼ぶ)とは反対側の面にある、二重ガラスに対して、NF EN 410標準により算出される日射透過率;及び、
NF EN 410標準により算出される光透過率/日射透過率の比である、選択率。この場合、光透過率は日射透過率を算出するために使用した二重ガラスのものである。
【0139】
【表6】

【0140】
2層又は3層の銀膜を有するこれらの多層の場合に、多くのブロッカーを有することにより、レーザの波長で高い吸収率を得ることが可能であり、そしてそれゆえシート抵抗及び放射率の実質的な低下を達成することが可能である。得られる多層の選択率は、相対的に、1%を超え、又はさらには2%を超えて増加する。
【0141】
表7はレーザ処理前、レーザ処理後、レーザ処理に次いで焼き戻し後、及び、焼き戻し(レーザ処理なし)の後の試料の基材面上の反射における色座標を比較する役割をする。
【0142】
【表7】

【0143】
ΔE*値は以下のとおりである:試料7では、それぞれ、レーザ処理した試料と、レーザ処理しその後に焼き戻しした試料で0.9、レーザ処理した試料と、焼き戻しした試料(レーザ処理無し)で0.7;試料8では、これらの値はそれぞれ、1.2及び1.1、そして試料9では、これら値はそれぞれ、1.3及び1.1である。それゆえ、1つの同一の壁で、本発明により処理された基材(焼き戻しされていない)、焼き戻しのみを行った基材及び本発明により処理されその後に焼き戻しされた基材を組み合わせることが可能である。
【0144】
例3
種々の低E多層を、出願人により品名SGG Planiluxで販売されている4mmの厚さの透明ガラス基材上に堆積させた。基材が各種ターゲットの下を通過するマグネトロンスパッタリングラインで既知の様式ですべての多層を堆積させた。
【0145】
以下のものを基材/Si34/ZnO/Ag/NiCr/ZnO/Si34タイプの多層上に堆積させた:試料10の場合に、厚さ約3nmのチタン吸収性膜、そして試料11の場合に、厚さ1.5nmのチタン吸収性膜、その上に厚さ約2nmの炭素膜。
【0146】
多層により被覆された厚さ4mmの透明ガラス基材のレーザ線の波長(本例では980nm)での吸収率に対応する吸収率は試料10の場合には15.3%であり、そして試料11の場合には19.4%であった。
【0147】
炭素膜はアルゴン雰囲気中でグラファイトターゲットを用いてスパッタリングすることにより得た。この炭素膜を存在させることにより、レーザ線の吸収率をさらに増加させることができる。
【0148】
被覆された基材を直線的に通過させることにより、980nmの波長のインラインレーザ光線により種々の試料を処理した。
【0149】
下記の表8は以下のことを示す。
運転速度、メートル/分;
で示し、オームで表す、レーザ処理前及びレーザ処理後のシート抵抗;
ΔRで示し、%として表す、処理によるシート抵抗の相対低下率;及び
レーザ処理前及びレーザ処理後のNF EN 410標準による試料の光透過率。
【0150】
【表8】

【0151】
これらの結果は炭素オーバーコートにより通過速度をかなり上げることができることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低E薄膜多層により少なくとも1つの面が被覆された基材を得る方法であって、下記工程:
少なくとも2層の誘電体薄膜の間に少なくとも1層の銀薄膜を含む薄膜多層を前記基材の前記少なくとも1つの面上に堆積させること、及び、
前記多層の放射率及び/又はシート抵抗が少なくとも5%低減されるように、500〜2000nmの少なくとも1つの波長で発光するレーザ線の少なくとも1つの源を用いて、少なくとも1つの被覆された面を熱処理すること、
を含み、
処理前の前記多層は前記レーザ線を少なくとも部分的に吸収する少なくとも1層の薄膜を含み、それにより、前記レーザ線の少なくとも1つの波長での前記多層の吸収率は、前記多層により被覆された厚さ4mmの透明ガラス基材の前記レーザ線の前記少なくとも1つの波長での吸収率が10%以上であるようなものである、方法。
【請求項2】
前記レーザ線の少なくとも1つの源により処理される面とは反対側の基材の面の温度が、熱処理の間に100℃を超えず、特に50℃を超えず、さらには30℃を超えない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多層のシート抵抗及び/又は放射率が、前記熱処理により少なくとも15%又は20%低減される、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記多層は少なくとも2層の銀膜を含み、前記レーザ線の少なくとも1つの波長での前記多層の吸収率は、前記多層により被覆された厚さ4mmの透明ガラス基材の前記レーザ線の前記少なくとも1つの波長での吸収率が11%以上であるようなものであり、そして前記熱処理は、前記多層の選択率が相対的な大きさとして少なくとも1%、特に少なくとも2%増加するようなものである、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基材が、ガラス又はポリマー有機物質からできている、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記レーザ線を少なくとも部分的に吸収する薄膜が金属膜であり、該金属膜は前記銀膜の上に直接的に堆積され又は前記銀膜の下に直接的に堆積されており、その厚さは2〜5nmであり、特に3〜5nmであり、該金属膜は特にチタン、ニッケル、クロム、ニオブ、又はそれらのいずれかの合金、をベースとする膜から選択される、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記レーザ線を少なくとも部分的に吸収する薄膜が窒化物膜であり、特に、化学量論量の窒化ニオブもしくは窒化チタン又はそれらの混合物、あるいは、窒素が化学量論量未満の窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ニオブ、もしくは窒化チタン、又はそれらの混合物から選ばれるものである、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザ線を少なくとも部分的に吸収する薄膜が空気と接触しており、金属、酸素が化学量論量未満である金属酸化物、又は金属窒化物からなる膜である、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザ線を少なくとも部分的に吸収する薄膜が酸素が化学量論量未満である金属酸化物の膜であり、前記銀膜又は各銀膜の下にあり、好ましくはそれと接しており、又は前記銀膜又は各銀膜の上にあり、好ましくはそれと接している膜である、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記レーザ線を少なくとも部分的に吸収する薄膜が空気と接触している炭素をベースとする膜であり、特に、グラファイト又はアモルファスタイプのものである、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記多層上での前記レーザ線の表面出力が20kW/cm2以上であり、特に30kW/cm2以上である、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザ線が、前記基材の幅のすべて又は一部を同時に照射するラインを形成している少なくとも1つのレーザ光線により放出される、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
膜により被覆された基材とレーザライン又は各レーザラインとの間の相対移動が、前記基材の速度と前記レーザの速度との差が4メートル/分以上であり、特に6メートル/分以上であるように行われる、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記レーザ線の波長が530nm〜1000nmである、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記多層がマグネトロンスパッタリングにより堆積される、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記基材が前記熱処理工程の後に焼き戻し工程を受ける、先行の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
低E薄膜多層により少なくとも1つの面が被覆された、焼き戻しされていないガラス基材であって、該薄膜多層が少なくとも2層の誘電体薄膜の間に単一層の銀薄膜を含み、該薄膜多層が1.9オーム以下、又はさらには1.8オーム以下のシート抵抗を有し、並びに該薄膜多層が、該多層により被覆された厚さ4mmの透明ガラス基材が75%以上、又はさらには76%以上の光透過率を有し、且つ5以下であり、又はさらには4以下である該多層面での反射における色度値a*を有するものである、焼き戻しされていないガラス基材。
【請求項18】
低E薄膜多層により少なくとも1つの面が被覆された、焼き戻しされていないガラス基材であって、該薄膜多層が少なくとも2層の誘電体薄膜の間に単一層の銀薄膜を含み、該薄膜多層が1.9オームを超え、2.4オーム以下のシート抵抗を有し、並びに該薄膜多層が、該多層により被覆された厚さ4mmの透明ガラス基材が81%以上、又はさらには82%以上の光透過率を有し、且つ5以下であり、又はさらには4以下である該多層面での反射における色度値a*を有するものである、焼き戻しされていないガラス基材。
【請求項19】
低E薄膜多層により少なくとも1つの面が被覆された、焼き戻しされていないガラス基材であって、該薄膜多層が少なくとも2層の誘電体薄膜の間に単一層の銀薄膜を含み、該薄膜多層が2.4オームを超え、3.0オーム以下のシート抵抗を有し、並びに該薄膜多層が、該多層により被覆された厚さ4mmの透明ガラス基材が87%以上、又はさらには88%以上の光透過率を有し、且つ4以下である該多層面での反射における色度値a*を有するものである、焼き戻しされていないガラス基材。
【請求項20】
低E薄膜多層により少なくとも1つの面が被覆された、焼き戻しされていないガラス基材であって、該薄膜多層が少なくとも2層の誘電体薄膜の間に少なくとも2層の銀薄膜を含み、前記被覆された基材と、焼き戻し後の前記被覆された基材との間のパラメータΔE*が2.0以下であり、特に1.5以下である、焼き戻しされていないガラス基材。

【公表番号】特表2012−529419(P2012−529419A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514521(P2012−514521)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051172
【国際公開番号】WO2010/142926
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】