説明

薄膜製造システム

【課題】前駆体溶液に各々の組成部分が均一に混合される薄膜製造システムを提供する。
【解決手段】薄膜製造システム10は、前駆体溶液200を製造する前駆体溶液製造装置11及び前記前駆体溶液を基板の表面に導入して薄膜を形成する薄膜堆積装置12を備え、前記前駆体溶液製造装置11は、吸収塔112と、該吸収塔に連通される液体貯蓄缶111及び気化装置110を備え、前記液体貯蓄缶は、膜めっき溶液を貯蓄し且つ前記吸収塔に前記膜めっき溶液を提供し、前記気化装置は、添加剤溶液を気化させ且つ前記吸収塔に気化された添加剤溶液を提供し、前記吸収塔は、前記膜めっき溶液に前記気化された添加剤溶液を吸収させて前駆体溶液を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜製造システムに関するものであって、特に前駆体溶液に各々の組成部分が均一に混合される薄膜製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
目下、薄膜製造技術は、半導体工業及び精密機械に広く応用されている。薄膜製造技術によって生産された製品の付加価値が高いので、前記薄膜製造技術及び薄膜材料が研究と実際に広く応用されるとともに、膜めっき技術が迅速に発展している。
【0003】
酸化亜鉛薄膜は、いろいろな工業製品に広く応用される透明な薄膜であって、製品表面の光沢度を高めることができ、且つ製品表面が損傷を受けることを防ぐ。非特許文献1によると、薄膜の電気抵抗を高め、薄膜の光吸収特性を増加し、薄膜の内応力を下げるなどの目的を達成するために、酸化亜鉛薄膜の内部にアルミニウム、インジウム、銅、鉄又は錫などの元素を混合する。
【0004】
従来の技術において、酸化亜鉛薄膜の中にアルミニウム、錫などの元素を混合する従来の方法は、亜鉛溶液を膜めっき溶液として、アルミニウム、錫などの元素を含む溶液を添加剤溶液として、前記膜めっき溶液と前記添加剤溶液を直接混合して前駆体溶液を獲得し、該前駆体溶液を膜をめっきしようとする基板の表面に堆積して、薄膜を製造する。しかし、直接混合して獲得した前駆体溶液中の膜めっき溶液と添加剤溶液とが効果的に混合し難いため、薄膜結晶の品質も悪くなる。又、前記前駆体溶液を一定の時間ほど放置すると、化学反応が発生して派生物が生じ、該派生物が前記前駆体溶液を汚染して、膜めっき品質に影響する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】葛水兵、「ZnO:Al透明導電膜の製造及びその性能の研究」、材料科学と工程、2000年、第三期
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記課題を解決し、前駆体溶液に各々の組成部分が均一に混合される薄膜製造システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る薄膜製造システムは、前駆体溶液を製造する前駆体溶液製造装置及び前記前駆体溶液を基板の表面に導入して薄膜を形成する薄膜堆積装置を備え、前記前駆体溶液製造装置は、吸収塔と、該吸収塔に連通される液体貯蓄缶及び気化装置を備え、前記液体貯蓄缶は、膜めっき溶液を貯蓄し且つ前記吸収塔に前記膜めっき溶液を提供し、前記気化装置は、添加剤溶液を気化させ且つ前記吸収塔に気化された添加剤溶液を提供し、前記吸収塔は、前記膜めっき溶液に前記気化された添加剤溶液を吸収させて前駆体溶液を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係わる薄膜製造システムにおいて、前駆体溶液製造装置は、添加剤溶液を気化させる気化装置及び膜めっき溶液に気化された添加剤溶液を十分に吸収させる吸収塔を備えるため、各々の組成部分が十分に混合された前駆体溶液を獲得することができ、且つ薄膜堆積装置により均一な薄膜を形成することができる。又、前記薄膜製造システムは、前記前駆体溶液の組成成分を便利に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る薄膜製造システムの構造を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る薄膜製造システムによりアルミニウム元素が混ぜられている酸化亜鉛薄膜を製造することを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る薄膜製造システムにより製造されたアルミニウム元素が混ぜられている酸化亜鉛薄膜の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1を参照すると、本発明の薄膜製造システム10は、前駆体溶液を製造することに用いられ、且つ該前駆体溶液を膜をめっきしようとする基板の表面に堆積して薄膜を形成する。前記薄膜製造システム10は、前駆体溶液製造装置11と、薄膜堆積装置12と、を備える。
【0012】
前記前駆体溶液製造装置11は、前駆体溶液を製造することに用いられ、気化装置110と、液体貯蓄缶111と、吸収塔112と、を備える。
【0013】
前記気化装置110は、添加剤溶液を加熱して気化させることに用いられ、気化しようとする添加剤溶液を収容するための収容キャビティ1101と、該収容キャビティ1101に熱量を提供して前記添加剤溶液を気化させる加熱部1102と、を備える。前記収容キャビティ1101の上方に積載ガス入口を設置することが好ましい。前記積載ガス入口から前記収容キャビティ1101の内部に窒素のような積載ガスを満たし、該積載ガスは気化された添加剤溶液を連動して前記吸収塔112に入る。
【0014】
前記液体貯蓄缶111は、膜めっき溶液を貯蓄し且つ前記吸収塔112に膜めっき溶液を提供することに用いられる。前記液体貯蓄缶111には、前記吸収塔112に流れる膜めっき溶液の流量を調整するためのバルブ1110が設置されている。
【0015】
前記吸収塔112は、前記膜めっき溶液に気化された添加剤溶液を吸収させて前駆体溶液を獲得することに用いられる。本実施形態において、前記吸収塔112は、板状であって、且つ吸収室1120を有する。前記吸収室1120は、相対設置される頂部1121及び底部1122と、前記頂部1121と前記底部1122との間に位置し且つ前記気化された添加剤溶液と前記膜めっき溶液とを十分に均一に混合させる複数の塔板1123と、を備える。前記塔板1123は、口径が3〜8mmである孔が均一に開設されている有孔板であることができる。前記頂部1121には、前記液体貯蓄缶111に連通する液体入口1124が開設される。前記液体貯蓄缶111に貯蓄された膜めっき溶液は、前記液体入口1124から前記吸収室1120に流れ、且つ順次に複数の塔板1123を経過して前記底部1122へ流動する。前記吸収室1120の底部1122の近傍には、ガス入口1125と液体出口1126が開設されている。前記気化された添加剤溶液は、前記ガス入口1125から前記吸収室1120に入って前記塔板1123に到着し、前記塔板1123の孔を経過する場合、小さい気流に分散され且つ気泡の形式で膜めっき溶液層を通過しながら、前記膜めっき溶液と均一に混合して、混合効果が優れた前駆体溶液を獲得する。前記液体出口1126は、前記薄膜堆積装置12に接続されており、前記薄膜堆積装置12に前記前駆体溶液を輸送することに用いられる。
【0016】
前記前駆体溶液製造装置11は、マイクロウェーブ加熱装置113をさらに備える。前記マイクロウェーブ加熱装置113は、前記吸収塔112の外部を覆い、前記吸収塔112にを加熱することにより、前記前駆体溶液が前記薄膜堆積装置12に入って薄膜を堆積することに有利である。
【0017】
本実施形態において、前記液体入口1124及び前記ガス入口1125は、それぞれ前記吸収室1120の頂部1121及び底部1122に開設されるため、吸収過程で前記膜めっき溶液の流動方向と前記気化された添加剤溶液の流動方向は相反する。前記液体入口1124及び前記ガス入口1125を全て前記吸収室1120の頂部1121に開設してもよく、この時、前記吸収室1120内の前記膜めっき溶液及び前記気化された添加剤溶液は並流方式で混合される。なお、前記塔板1123は、有孔板に制限されるものではなく、フロート弁(float valve)塔板であることもできる。
【0018】
前記薄膜堆積装置12は、ガイド管121、ノズル122及び加熱台123を備える。前記ガイド管121は、前記吸収塔112の液体出口1126に連通されており、前記前駆体溶液を前記薄膜堆積装置12に導入することに用いられる。前記ノズル122は、前記ガイド管121に接続される連接端124と、一端が前記連接端124に接続され且つ他端が前記加熱台123に向き合う噴出端125と、を備える。前記噴出端125の横断面の面積は、前記連接端124の横断面の面積より大きい。好ましくは、前記ノズル122が1つの回転シリンダーに接続されて、該回転シリンダーにより前記ノズル122を回転させて、前記ノズル122の噴射面積を増加する。前記加熱台123は、膜をめっきしようとする基板を積載し且つ加熱することに用いられる。前記前駆体溶液が大気に入ってもたらす環境汚染を防ぐために、前記ノズル122及び前記加熱台123は、全て密閉な堆積室126に設置される。前記堆積室126は、廃気を収集して処理することができる。
【0019】
前記薄膜堆積装置12が超音波霧化装置をさらに備えることが好ましい。前記超音波霧化装置は、前記ガイド管121と前記ノズル122との間に設置することができ、前記前駆体溶液をミクロン級別の霧滴に霧化してから前記ノズル122から噴出し、且つ膜をめっきしようとする基板の表面に薄膜を形成する。従って前記前駆体溶液を節約することができ、且つ薄膜の均一性も高める。
【0020】
図2に示したように、膜をめっきしようとする基板100の表面に前駆体溶液200を噴射して、アルミニウムが混ぜられた酸化亜鉛薄膜を製造することを例として説明すると、前記薄膜製造システム10の使用方法は、以下のステップを備える。
【0021】
第一ステップ:膜めっき溶液201と添加剤溶液202を提供する。
【0022】
0.09mol/Lの酢酸亜鉛のアルコール溶液を前記膜めっき溶液201として前記液体貯蓄缶111に貯蓄する。適量の塩化アルミニウムをアルコールに溶解してから添加剤溶液202として前記収容キャビティ1101に収容する。前記添加剤溶液202の中の塩化アルミニウムの含有量は、酸化亜鉛薄膜が必要とするアルミニウムの混合量に基づいて定める。
【0023】
第二ステップ:膜をめっきしようする基板100を前記加熱台123に配置し、且つ前記基板100を加熱する。前記基板100の材質は、金属、ガラス、シリコン又はセラミックであることができる。本実施形態において、前記基板100は、酸化アルミニウム材質であって、前記基板100を320℃に加熱する。
【0024】
第三ステップ:気化された添加剤溶液202が前記ガス入口1125から前記吸収塔112の吸収室1120に入って前記底部1122から前記頂部1121に向かって流動するとともに、前記バルブ1110を調節して適量の膜めっき溶液201を前記吸収塔112の吸収室1120に導入し、前記膜めっき溶液201は、前記頂部1121から前記底部1122に向かって流動しているところ、前記塔板1123で前記気化された添加剤溶液202と十分に均一に混合して、混合効果が優れた前駆体溶液200を形成する。
【0025】
前記収容キャビティ1101内の添加剤溶液202を110℃前後に加熱すると、前記添加剤溶液202は気化される。前記気化された添加剤溶液202が前記吸収塔112の底部1121のガス入口1125から前記吸収室1120に入るとともに、前記膜めっき溶液201は前記吸収塔112の頂部1121の液体入口1124から前記吸収室1120に入り、両者が約1時間ほど混合すると、前記膜めっき溶液201は前記気化された添加剤溶液202の大部分を吸収することができ、従って前駆体溶液200を獲得する。具体的に説明すると、前記添加剤溶液202は、前記塔板1123の孔を経過する場合、小さい気流に分散され且つ気泡の形態で前記膜めっき溶液201に分散される。前記前駆体溶液200は、前記吸収塔112の底部1121の液体出口1126から流れ出し、完全に吸収されなかった前記気化された添加剤溶液202は、前記吸収塔112の頂部1121のから排出される。
【0026】
第四ステップ:前記前駆体溶液200を前記薄膜堆積装置12に導入して、加熱された前記基板100の表面に薄膜を形成する
【0027】
前記前駆体溶液200は、前記ガイド管121を経て前記ノズル122の連接端124に到着し、且つ前記噴出端125から前記基板100の表面に噴出する。この時、高温の前駆体溶液200は、前記堆積室126内の酸素と接触し且つ酸化されて、前記基板100の表面にアルミニウム元素が混合された酸化亜鉛薄膜を形成する。
【0028】
本実施形態に係る薄膜製造システム10により製造されたアルミニウム元素が混合された酸化亜鉛薄膜の電子顕微鏡(SEM)写真を、図3に示す。前記薄膜は、白色である。
【0029】
従来の技術に比べて、前記薄膜製造システム10の前駆体溶液製造装置11は、添加剤溶液を気化させる気化装置110及び膜めっき溶液に前記気化された添加剤溶液を十分に吸収させる吸収塔112を備えるため、各々の組成部分が十分に混合された前駆体溶液200を獲得することができ、従って前記薄膜堆積装置12により均一な薄膜を形成することができる。前記薄膜製造システム10は、前記前駆体溶液200の組成成分を便利に制御することができる。
【0030】
以上本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種種変更可能であることは勿論であって、本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲から決まる。
【符号の説明】
【0031】
10 薄膜製造システム
11 前駆体溶液製造装置
12 薄膜堆積装置
110 気化装置
111 液体貯蓄缶
112 吸収塔
113 マイクロウェーブ加熱装置
121 ガイド管
122 ノズル
123 加熱台
124 連接端
125 噴出端
126 堆積室
200 前駆体溶液
201 膜めっき溶液
202 添加剤溶液
1101 収容キャビティ
1102 加熱部
1110 バルブ
1120 吸収室
1121 頂部
1122 底部
1123 塔板
1124 液体入口
1125 ガス入口
1126 液体出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体溶液を製造する前駆体溶液製造装置と、前記前駆体溶液を基板の表面に導入して薄膜を形成する薄膜堆積装置と、を備えてなる薄膜製造システムであって、
前記前駆体溶液製造装置は、吸収塔と、該吸収塔に連通される液体貯蓄缶及び気化装置を備え、前記液体貯蓄缶は、膜めっき溶液を貯蓄し且つ前記吸収塔に前記膜めっき溶液を提供し、前記気化装置は、添加剤溶液を気化させ且つ前記吸収塔に気化された添加剤溶液を提供し、前記吸収塔は、前記膜めっき溶液に前記気化された添加剤溶液を吸収させて前駆体溶液を形成することを特徴とする薄膜製造システム。
【請求項2】
前記気化装置は、
前記吸収塔に連通されており、前記添加剤溶液を収容する収容キャビティと、
前記収容キャビティに熱量を提供して、前記収容キャビティ内の前記添加剤溶液を気化させる加熱部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造システム。
【請求項3】
前記収容キャビティは積載ガス入口を有し、該積載ガス入口から前記収容キャビティの内部に満ちる積載ガスは、気化された添加剤溶液を連動して前記吸収塔に入ることを特徴とする請求項2に記載の薄膜製造システム。
【請求項4】
前記吸収塔は、
頂板と、
底板と、
前記頂板と前記底板との間に位置し、且つ前記膜めっき溶液と前記気化された添加剤溶液を均一に混合させる複数の塔板と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造システム。
【請求項5】
前記吸収塔は、
前記気化装置に連通されて前記気化された添加剤溶液を前記吸収塔の内部に導入するガス入口と、
前記液体貯蓄缶に連通されて前記膜めっき溶液を前記吸収塔の内部に導入する液体入口と、
前記薄膜堆積装置に連通されて該薄膜堆積装置に前記前駆体溶液を輸送する液体出口と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の薄膜製造システム。
【請求項6】
前記前駆体溶液製造装置は、前記吸収塔の外部を覆い、前記吸収塔を加熱するマイクロウェーブ加熱装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造システム。
【請求項7】
前記薄膜堆積装置は、
膜をめっきしようとする基板を積載して加熱する加熱台と、
一端が前記吸収塔に連通され、他端が前記加熱台に向き合い、前記基板の表面に前駆体溶液を噴出して薄膜を形成するノズルと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造システム。
【請求項8】
前記ノズルは回転シリンダーに接続され、該回転シリンダーは前記ノズルを連動して回転させることを特徴とする請求項7に記載の薄膜製造システム。
【請求項9】
前記薄膜堆積装置は、前記吸収塔と前記ノズルとの間に連接されて前記前駆体溶液を霧化する超音波霧化装置をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の薄膜製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−156051(P2010−156051A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233(P2010−233)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】