説明

薄鋼板製造方法

【課題】薄鋼板からの焼入れ構造部材の製造方法を提供する。
【解決手段】薄鋼板からの焼入れ構造部材の製造方法を、a)陰極防食が付与された薄鋼板から成る成形部材を成形し、b)必要な場合、成形部材の成形前、成形中、あるいは成形後に必要とされる孔パターンの打抜きあるいは作製を実施し、c)次いで成形部材の少なくとも一部を大気中の酸素を取り入れながら鋼材のオーステナイト化を可能とする温度まで加熱し、及びd)成形部材を成形焼入れ型中へ移して成形焼入れ型内部で成形焼入れを実施し、その成形焼入れ中に成形部材を成形焼入れ型中において凝固させ及び加圧することによって成形部材を冷却及び焼入れする各工程から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄鋼板からの焼入れ構造部材の製造方法、さらに前記方法を用いて製造される薄鋼板から成る焼入れ構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車製造分野においては、車両全重量を軽減すること、あるいは付属品の改良の場合には車両重量を増加させないことが望まれている。かかる要求は特定の車両部材の重量を軽減することによってのみ実現可能である。かかる要求を満たすため、車体重量を従来よりも明らかに軽減させる試みが為されている。しかしながら、安全性、特に車中乗客の安全性、及び事故に際しての状態に関して求められる要求も同時に高まっている。車体総重量を軽減させるための部品数の減少と並行して、軽量化された車体外板が事故に際して一定の変形特性を示すとともにより高い頑強性及び剛性を発揮することが期待されている。
【0003】
鋼材は自動車車体の製造において最も多く使用される原材料である。他のいずれの材料を用いても、最も多様な材料特性をもつ構造部材をかかる広範囲に亘ってコスト効率的に製造することは不可能である。
【0004】
このような需要変化の結果として、強大な頑強性とともに、高い伸張性及び向上された常温成形性が確保されることが要求される。また、鋼材によって発揮される強度限界も拡大されている。
【0005】
特に自動車製造における車体に関する展望として、合金組成の機能として表れる頑強性が1000〜2000MPaの範囲内である薄鋼板から製造される構造部材の使用がある。構造部材にこのような頑強性を与える方法として、鋼板から適当な板材を切り出し、該板材をオーステナイト化温度より高い温度まで加熱し、次いで前記板材を成形処理と同時に急速に冷却しながら加圧下で構造部材へ成形する方法が公知である。
【0006】
前記板をオーステナイト化するためのアニール処理中に表面上にスケール層が形成される。この層は成形及び冷却後に除去される。この除去作業は慣例としてサンドブラスト法を用いて実施される。このスケール層の除去前あるいは除去後に最終トリミング及び孔あけ作業が実施される。サンドブラストに先立って前記最終トリミング及び孔あけ作業を実施すると切断縁部分及び孔縁部分に好ましくない作用が及ぶため不利である。焼入れに後続する連続処理工程に拘らず、サンドブラストによるスケール層の除去に伴って構造部材がしばしば歪むことも不利である。さらに、上記処理工程後に防食層による所謂部分コーティングが行われる。そのため、例えば陰極に防食コーティングが処理される。
【0007】
これに伴って焼入れされた構造部材の仕上げが極めて精巧さを要すること、また構造部材の焼入れによって該構造部材が大きな摩損を受けることも不利である。さらに、前記部分コーティングによって慣例的に防食が与えられるが、その防食がとりわけ強く発揮されないことも不利である。さらに前記層の厚さが均質でなく、構造部材表面の全体に亘って変化している。
【0008】
この方法の変更例において、薄金属板から構造部材を常温成形し、次いで成形された前記部材をオーステナイト化温度まで加熱し、さらに加熱によって歪められた成形部分を寸法規制する寸法規制手段中において急速に冷却することも公知である。その後に前述した仕上げ処理が実施される。前記方法と比較して、この方法によれば、成形及び焼入れの同時進行中においては実質的に直線的な形状を作ることができるだけで、該成形処理中に複雑な形状を成形することはできないため、より複雑な幾何学形状は不可能である。
【0009】
焼入れされた薄鋼板構造部材の製造方法はGB1490535から公知であり、この方法においては、焼入れ可能な鋼板が焼入れ温度まで加熱され、次いで成形装置中に配置され、該装置中で急速に冷却しながら所望の最終形状へと成形され、鋼板を前記成形装置中に入れたままでマルテンサイト構造あるいはバイナイト構造を得ることができる。出発材料としては、例えば硼素合金炭素鋼あるいは炭素マンガン鋼が用いられる。この刊行物では成形は好ましくは加圧によって行われているが、他の方法を用いることも可能である。成形及び冷却は、好ましくは微粒状化されたマルテンサイト構造あるいはバイナイト構造が得られるように極めて迅速に実施されなければならない。
【0010】
板材を、加圧成形型中で加熱成形及び焼入れ処理することによって焼入れ輪郭形成された薄金属板部材の製造方法はEP1253208A1によって公知である。この製造方法においては、輪郭形成された薄金属板部材上へ前記板材の平面から外へ突き出す基準点あるいはカラーが形成され、後続する加工作業においてこれら基準点あるいはカラーを用いて輪郭形成された薄金属板の位置が決定される。前記カラーは前記板材の孔あけされていない部分の外に成形加工中に作られ、前記基準点は輪郭形成された薄金属板部材の縁部に打出し形状に、あるいは前記部材中に通路あるいはカラー形状に作られるように意図されている。前記加圧成形型中における熱成形及び焼入れは一個の成形型中において成形、焼入れ及び焼戻しを組み合わせて効率的に作業できるため一般的に有利であると言われている。しかしながら、前記成形型中に輪郭形成された薄金属板部材を把持する方法では、また熱応力を考慮すれば、前記部材の歪みを正確に予測することは不可能である。かかる方法では後続の加工作業に不利な影響を与える可能性があるため、その防止のため輪郭形成された薄金属板部材上へ前記基準点が設けられるのである。
【0011】
薄鋼板製品の一つの製造方法がDE19723655A1から公知であり、この方法では薄鋼板がまだ熱い間に一対の冷却された装置を用いて成形され、前記装置中に置かれたままマルテンサイト構造へと焼入れ処理されるので、前記装置は焼入れ処理中の固定手段として用いられる。焼入れに続く処理が行われる部分では前記薄鋼板はその軟鋼範囲内に維持され、前記装置中の挿入物を用いて急激な冷却が防止されるので、これらの部分においてマルテンサイト構造が維持される。前記装置中の切欠き部によっても同様な効果を得ることができるので、薄鋼板と前記装置の間に隙間が生ずる。この方法には、この方法による処理中にかなりの歪みが生ずる欠点があるため、より複雑な構造をもつ構造部材の加圧焼入れには適さない。
【0012】
局部補強成形された薄金属板部材の一つの製造方法がDE10049660A1から公知であり、この方法では構造部材の基礎薄金属板が一定位置において平面状態で補強薄金属板と連結され、次いでこの所謂継ぎ当てられた薄金属板複合物は同時に成形される。この製造方法による製品及び結果の面からこの方法を改善し、さらにこの方法の実施手段の面から該方法を容易化するため、前記継ぎ当てられた薄金属板複合物は成形に先立って少なくとも800〜850℃まで加熱され、すばやく挿入され、加熱状態で急速に冷却され、次いで成形状態を保持したまま成形型と接触されて内部から限定的に強制冷却される。ここで前記複合物は、特に800〜500℃の実質的に重要な温度範囲中を一定冷却速度で経るように意図されている。前記補強薄金属板と前記基礎薄金属板を連結させる工程は容易に一体化することができ、部材は互いに強固に結合され、この強固な結合を利用して同時にそれら接触部域に有効な防食を与えることが可能である。但しこの方法には、特に内部冷却に限定があるため装置が極めて精巧さを要する欠点がある。
【0013】
鋼部材の一つの加圧焼入れ方法及び装置はDE2003306から公知である。これら方法及び装置の目的は、薄鋼板片を種々形状へプレスしてそれら薄鋼板片を焼入れすることであり、この方法では、特に薄鋼板から成る部材が連続分離された成形プレス工程及び焼入れ工程を経て製造される既知方法の欠点を回避することが意図されている。特に焼入れあるいは急冷された製品が所望の形状から歪むことを防止するため、作業工程がさらに付加されている。かかる歪み防止を達成するため、鋼片をオーステナイト状態をひき起こす温度まで加熱した後、該鋼片を互いに協同する一対の成形素子間に置き、その後で前記鋼片をプレスし、同時に熱を該鋼片から前記成形素子へ急速に移行させる。前記処理の全期間中、鋼片は一定の冷却温度に維持されるので、成形プレス下において鋼片に対して急冷作用が働く。
【0014】
テープ形状にされた出発材料から成る自動車用の輪郭形成された金属構造素子をローラー輪郭形成装置へ導いてそれら素子をローラーを用いて輪郭形成部材へと成形する方法がDE10120063C2から公知である。この方法では、前記部材がローラー輪郭形成装置から出た後、ローラー輪郭形成された部材の一部が焼入れに必要とされる温度まで誘導加熱され、次いで冷却装置中において急冷される。冷却後、前記ローラー輪郭形成された部材は輪郭形成構造部材のサイズへと切断される。
【0015】
機械的特性に極めて優れる部材の製造方法はUSP6,564,504B2から公知であり、この方法では、部材が圧延された薄鋼板からなるストリップの型抜き加工によって製造され、前記薄鋼板表面を保護するため特に熱間圧延及びコーティングされた材料が金属あるいは金属合金でコーティングされ、薄鋼板プレフォームを得るために前記薄鋼板が切断され、このプレフォームが常温成形あるいは熱成形され、熱成形後に冷却あるいは焼入れされ、あるいは常温成形後に加熱され、次いで冷却される。前記プレフォームには金属2種以上から成る合金が成形前あるいは成形後に表面処理され、この合金によって腐食に対する保護及び鋼脱炭素が与えられ、またこの金属2種以上から成る混合物には減摩機能があるとも記載されている。次いで成形された部分から過剰な材料が取り除かれる。前記コーティングは大抵の場合亜鉛または亜鉛及びアルミニウムを基材とすると記載されている。またここで両面が亜鉛で電解コーティングされた鋼を用いることも可能であり、この場合オーステナイト化は950℃において起こる筈である。この電解による亜鉛コーティング層はオーステナイト化中に完全に鉄−亜鉛合金へと変換される。成形中及び冷却のため保持されている間、前記コーティングによって成形型を通る熱の流出は妨げられず、熱流出が増進すらされることが述べられている。さらに、この特許文献では電解亜鉛コーティングされたテープの代替として45〜50%の亜鉛を含み、残余部分がアルミニウムであるコーティングを用いることが提案されている。上記特許文献の双方の実施態様において述べられている方法には、陰極防食が実際にはもはや存在しない欠点がある。さらに、かかる層は脆く、成形中にひび割れが生じてしまう。亜鉛45〜50%及びアルミニウム55〜45%から成る混合物を用いたコーティングによっても言及に値する防食は得られない。この特許文献では亜鉛または亜鉛合金をコーティングに用いることにより縁部分にまでも亜鉛めっき保護が与えられると主張されているが、かかる保護を実際に与えることは不可である。実際上、前記コーティングによっては、たとえ表面へ十分な亜鉛めっき保護を与えることさえできない。
【0016】
圧延鋼テープ、特に熱間圧延鋼テープからの構造部材の製造方法はEP1013785A1から公知である。この方法の目的は、熱間圧延後にコーティングされ及び熱処理後に常温あるいは熱成形処理された厚さ0.2〜2.0mmの圧延薄鋼板の提供を可能とすることである。この方法では、鋼からの脱炭が起こらず、また前記薄鋼板表面の酸化が起こらずに、前記熱成形あるいは熱処理前、処理中及び処理後の温度上昇が確保されることが意図されている。この目的のため、薄鋼板には該薄鋼板表面を確実に保護するための金属あるいは金属合金が付与され、次いで前記薄鋼板は成形のための温度上昇に暴露され、次いで前記薄鋼板の成形が実施され、最終的に部材が冷却される。特に、前記薄鋼板は熱い状態でプレスされ、深絞り成形で作られた部材は焼入れを行うために冷却され、及びこの焼入れは臨界焼入れ速度よりも速い速度で実施される。適するとされる鋼合金はさらに開示されており、この薄鋼板は成形型中での成形及び焼入れに先立って950℃においてオーステナイト化される。処理されたコーティングは特にアルミニウムまたはアルミニウム合金から成ると記載されており、このコーティングによって酸化及び脱炭保護のみならず減摩効果も生ずると記載されている。他の既知方法と異なり、この方法によれば後続する加熱処理中における薄金属板部材のオーステナイト化温度までの加熱後の酸化を防止することが可能であるが、この特許文献に示された常温成形は、熱浸漬アルミニウム処理層の大きな変形に対する延性が低過ぎるため、熱浸漬亜鉛めっきされた薄板を用いる場合には基本的に不可能である。特に深絞り処理によってより複雑な形状を作ることは前記薄金属板を用いた常温状態では不可である。このようなコーティングを用いて熱成形、すなわち単一成形型中で成形及び焼入れを行うことは可能であるが、得られた構造部材には陰極保護は与えられない。さらに、このように構造部材は機械加工あるいは焼入れ後にレーザを用いて加工しなければならないので、材料の硬度ゆえに後の処理工程に極めてコストが掛かる前述した欠点が生ずる。さらに加えて、レーザを用いあるいは機械的に切断された成形部材のすべての部分にはもはや防食が全くないという欠点もある。
【0017】
成形された金属構造素子、特に未焼入れの熱成形可能な薄鋼板から半完成品として作られる構造体素子を製造するために、最初に常温成形加工、特に深絞り成形によって前記半完成品が構造素子ブランクへ成形されることがDE10254695B3から公知である。次いで前記構造素子ブランクの縁部分が製造される構造素子にほぼ対応する縁輪郭となるようにトリミングされる。最後に、整えられた構造素子ブランクが加熱され、熱成形型中で加圧焼入れされる。このような工程において作られた前記構造素子は既に熱成形後の所望の縁輪郭をもつので、構造部材縁部分の最終的トリミングは省略される。このような方法により薄鋼板から成る焼入れ構造部材の製造に際してのサイクル時間を短縮することが意図されている。使用される鋼は自硬鋼(air−hardening steel)でなければならず、加熱中のスケーリングを防止するため、この自硬鋼は必要な場合保護ガス雰囲気中で加熱される。自硬鋼でない場合は、スケール層は構造部材の熱成形後に成形された構造部材から取り除かれる。この特許文献では、常温成形処理中に前記構造素子ブランクはその最終的外形に近い形状まで成形されると言及されている。この「最終的外形に近い形状」なる文言は、完成構造部材の幾何学形状のうちの材料の目に見える流れを伴う部分が常温成形処理の終了時には構造素子ブランク中に完全に成形されていることを意味することが理解されるべきである。従って、3次元形状の構造素子の製造には、常温成形処理の終了時に最小限の材料の局部的流れを必要とする形状の一致が僅かだけでも必ず必要である。この方法の欠点は、外形全体の最終成形工程が熱い状態で行われるため、スケーリングを防止するために、アニール処理を保護ガス雰囲気中で行う既知方法を実施しなければならないか、あるいは部材からスケール層を取り除かなければならないことである。いずれの方法においても後続して部材片へ腐食に対するコーティングが施されなければならない。
【0018】
要約すれば、上述したすべての方法は成形及び焼入れ後に製造された部材をさらに処理する必要があるためコストを要し、また作業が入念になる点で不利であると言うことができる。さらに、得られた構造部材には腐食に対する保護が全く無いか、あってもその保護は不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、陰極防食された鋼板、特に薄鋼板から成り、正確に寸法化され、及び脱スケール及びサンドブラスト等の仕上げを必要としない焼入れ(硬化)構造部材の簡略かつ迅速に実施可能な製造方法を創出することを目的とする。
【0020】
上記目的は請求項1項記載の特徴を有する方法を用いることによって達成される。上記発明を有利に発展させたさらなる発明は従属請求項に記載されている。
【0021】
本発明はさらに、防食機能をもち、寸法安定性であり、かつ正確に寸法化され、さらに製造コストの低減に寄与し得る薄鋼板から成る焼入れ構造部材を製造することを目的とする。
【0022】
この目的は請求項21項に記載した特徴をもつ焼入れ薄鋼板によって達成される。この発明を有利に発展させたさらなる発明は従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に従えば、前記構造部材の成形、該構造部材のトリミング及び孔あけは、実質的に未焼入れ(未硬化)状態において行われる。未焼入れ状態で使用される材料の成形性が比較的良好であるため、より複雑な形状の構造部材を実現し、さらに後における焼入れ済状態でのコストを要するトリミングを焼入れに先立つコスト効率的機械的切断作業で置き換えることが可能である。
【0024】
常温薄金属板の成形における前記構造部材の加熱によって生ずる好ましくない寸法変化を予め考慮して、構造部材はその最終寸法よりも約0.5〜2%小さく製造される。少なくとも成形中に生ずると予測される熱膨張が考慮される。
【0025】
構造部材の常温作業、すなわち成形、トリミング及び孔あけは、仕上げ焼入れ構造部材に高度に複雑でありかつ成形深度の大きい部分、また必要であれば、特に切断縁部分、成形縁部分、及び成形表面等の構造部材の近接公差をもつ部分、及びおそらくは特に所望の最終公差と、特にトリミング及び位置公差をもつ孔あけされた孔等の孔あけパターンの作製には十分であり、その際には構造部材の熱による熱膨張が考慮あるいは補償される。
【0026】
このことは、常温成形後に、前記構造部材が仕上げ焼入れ構造部材の目標とする最終寸法よりも約0.5〜2%小さいことを意味している。ここで「より小さい」とは、常温成形後に、前記構造部材が3つの空間軸すべてにおいて、すなわち3次元的に最終成形されることを意味する。このようにして熱膨張は3つの空間軸すべてについて同一に考慮される。従来技術においては熱膨張をすべての空間軸について考慮することは不可能であり、成形型の密閉が不完全であると成形が不完全となるため、例えばz方向についてだけしか膨張を考慮できなかった。本発明に従って、好ましくは成形型の3次元的幾何学形状あるいは輪郭は3つの寸法すべて小さく作製される。
【0027】
さらに、本発明に従って、熱浸漬亜鉛めっき薄鋼板及び、特に固有な組成をもつ防食コーティングが施された熱浸漬亜鉛めっき薄鋼板が用いられる。
【0028】
現在まで当該技術分野では、成形前あるいは成形後に加熱工程があるような処理方法には亜鉛コーティングされた薄鋼板は適さないと考えられてきた。かかる考えは、一例として、亜鉛層が慣例的に用いられている約900〜950℃の炉温度以上で強く酸化されること、あるいは保護ガス(無酸素雰囲気)下で揮発性であることから生じたものである。
【0029】
薄鋼板をまず熱処理してから成形及び焼入れを行って与えられる本発明に従った薄鋼板への防食は実質的に亜鉛を基材とする陰極防食である。本発明に従って、コーティングを構成する亜鉛へマグネシウム、珪素、チタン、カルシウム及びアルミニウム等の酸素親和性元素の1または数種が0.1%〜15%含まれるように添加される。このような少量のマグネシウム、珪素、チタン、カルシウム及びアルミニウム等の酸素親和性元素によってかかる特定の用途において驚くべき効果が得られることが見出された。
【0030】
本発明に従った酸素親和性元素として、少なくともMn、Al、Ti、Si、Caを用いることが可能である。以下においてアルミニウムと記載されていても、上記他の元素に置きかえても良いと理解されたい。
【0031】
驚くべきことに、特にアルミニウムのような酸素親和性元素が少量であるにも拘らず、加熱中に薄鋼板表面上に実質的にAlあるいは酸素親和性元素酸化物(MgO、CaO、TiO、SiO)から成る極めて有効かつ自己治癒性の保護層が明瞭に形成される。この極めて薄い酸化物層は、極めて高温下にあっても下層の亜鉛含有防食層を酸化から保護する。このことは、加圧焼入れ法における亜鉛コーティング薄鋼板の特定の連続処理中に、亜鉛を高含量で含む陰極的に極めて有効な層と、及び、酸化物(Al、MgO、CaO、TiO、SiO)から成る酸化保護層によって酸化及び蒸発に対して保護されるほぼ2層に構成された防食層が形成されることを意味している。このようにして顕著な耐薬品性をもつ陰極防食層が生ずる。このことは酸化雰囲気中で加熱処理が行われなければならないことを意味する。保護ガス(無酸素雰囲気)を用いて酸化を防止することは可能であるが、蒸気圧が高いため亜鉛の蒸発が起こってしまう。
【0032】
加圧焼入れ法に関して、本発明に従った防食層には薄鋼板のオーステナイト化に続く成形工程において前記層が破壊されない極めて高い機械的安定性があることも示されている。たとえ顕微鏡的ひび割れが生じても、公知の防食層の加圧焼入れ法に対しての保護効果よりも明らかに大きい。
【0033】
本発明に従った防食された薄鋼板を製造するため、第一工程においてアルミニウムを含量として0.1重量%以上かつ15重量%未満、特に10重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満含む亜鉛合金が薄鋼板、特に合金薄鋼板へ処理され、さらに第二工程において、コーティングされた薄鋼板から特に切り出しあるいは型抜き加工によって作製された部分が大気中の酸素を取り入れながら前記鋼板合金のオーステナイト化温度以上まで加熱され、次いで高速で冷却される。薄鋼板から型抜き加工された部材(鋼板)の成形は、該鋼板のオーステナイト化温度までの加熱前あるいは加熱後に実施可能である。
【0034】
前記方法の第一工程、すなわち薄鋼板のコーティング中に薄鋼板の表面、あるいは前記コーティングの近接部分中に、特に690℃以上の温度において実施される液状金属コーティング処理中に起こるFe−Zn拡散を防止する特にFeAl5−xZnから成る薄いバリヤ相が形成されると考えられる。そのため、前記第一工程において、アルミニウムの添加された亜鉛−金属コーティングが施された鋼板が作られ、この鋼板には前記コーティングの近接部分と同様に鋼板表面の方にのみ極めて薄いバリヤ相があり、このバリヤ相は亜鉛−鉄連結相の急速な成長に対して有効である。さらに、アルミニウム単独の存在によって、境界層部分に鉄−亜鉛拡散が起こる傾向が低下されると考えられる。
【0035】
前記第二工程において、金属質の亜鉛−アルミニウム層をもつ鋼板の該鋼板材料のオーステナイト化温度までの加熱を大気中の酸素を取り入れながら行うと、最初に前記鋼板上の金属層の溶融が起こる。酸素親和性なアルミニウムが亜鉛末端から出て大気中の酸素と反応して固体状の酸化物あるいはアルミニウム酸化物を生成するため、この方向にアルミニウム金属濃度が減少し、それによってアルミニウムの減少方向、すなわち末端部分へ向かう方向にアルミニウムの持続的な拡散がひき起こされる。このアルミニウム酸化物を豊富に含む大気へ晒される層部分は前記層状金属の酸化保護及び亜鉛の蒸発バリヤとして働く。
【0036】
さらに、加熱中にアルミニウムが持続的拡散によって近接バリヤ相から末端部分へ向かう方向へと引き出され、そこで表面Al層の形成に利用可能となる。このようにして、亜鉛を高含量で含む陰極的に極めて有効な層をあとに残す鋼板コーティングの形成が達成される。
【0037】
本発明においては、例えばアルミニウムを0.2重量%以上かつ4重量%未満、好ましくは0.26重量%以上かつ2.5重量%未満の割合で含む亜鉛合金が非常に適する。
【0038】
鋼板表面への前記亜鉛合金層の処理が、有利な方式により、第一工程において425℃〜690℃の範囲内の温度、特に440℃〜495℃の範囲内の温度に保たれた液状金属浴中を通過する間に行われ、次いでコーティングされた鋼板が冷却されると、効率的に近接バリヤ相を形成でき、あるいはバリヤ層部分中における良好な拡散防止が見られるだけでなく、このバリヤ層に沿って鋼板の熱変形特性の改善も起こる。
【0039】
本発明の有利な一実施態様では、例えば0.15mm以上の厚さをもち、熱間あるいは常温圧延され、合金元素の少なくとも1種を下記に限定された重量%範囲内で含む鋼テープが用いられる方法が提供される:
炭素 0.4以下 好ましくは0.15〜0.3
珪素 1.9以下 好ましくは0.11〜1.5
マンガン 3.0以下 好ましくは0.8〜2.5
クロム 1.5以下 好ましくは0.1〜0.9
モリブデン 0.9以下 好ましくは0.1〜0.5
ニッケル 0.9以下
チタン 0.2以下 好ましくは0.02〜0.1
バナジウム 0.2以下
タングステン 0.2以下
アルミニウム 0.2以下 好ましくは0.02〜0.07
硼素 0.01以下 好ましくは0.0005〜0.005
硫黄 最大0.01 好ましくは最大0.008
燐 最大0.025 好ましくは最大0.01
残余分としての鉄及び不純物。
【0040】
本発明に従った陰極防食の表面構造は塗料及びラッカーの付着に関して特に有利であると結論づけることができる。
【0041】
薄鋼板から成る対象物上への前記コーティングの付着は、その表面層に亜鉛に富む亜鉛−鉄−アルミニウム合金相と鉄に富む鉄−亜鉛−アルミニウム相があればさらに改善が可能である。この場合、前記鉄に富む相に含まれる亜鉛の鉄に対する比は多くても0.95(Zn/Fe≦0.95)、好ましくは0.20〜0.80の範囲内(Zn/Fe=0.20〜0.80)であり、また前記亜鉛に富む相に含まれる亜鉛の鉄に対する比は少なくとも2.0(Zn/Fe≧2.0)、好ましくは2.3〜19.0の範囲内(Zn/Fe=2.3〜19.0)である。
【0042】
本発明に従った方法においては、常温成形中に前記亜鉛層に実質的に不利な影響が及ばないことは明らかである。その代わりに、本発明によれば、冷えた鋼板のトリミング及び孔あけ中に成形型によって亜鉛材料が亜鉛層から切断縁部分上へと有利な方式で運ばれ、前記切断縁部分に沿って擦りつけられる。
【0043】
さらに、亜鉛を用いたコーティングには、構造部材は、加熱及び成形焼入れ型への移送後の熱の消失が少ない為、構造部材をあまり高温まで加熱する必要がないという利点がある。そのため生ずる熱膨張が少なく全体としての膨張が低減されるため、公差に関して正確な製造が簡略に実施可能である。
【0044】
さらに、低温においては構造部材の安定性が高まるため、該部材の取扱い及び成形型へのより迅速な挿入が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下において、添付図面を参照しながら実施例を用いて本発明について説明する。
【0046】
本発明方法を実施するために、まず未焼入れ状態の亜鉛コーティングされた特定の薄鋼板が板片へと切断される。
切断された板片の形状は矩形、台形、あるいは一定形状の板のいずれでもよい。前記板片への切断にはいずれか既知の切断方法を用いることができる。前記切断方法には、好ましくは切断中に熱が薄金属板へ伝わらない方法が用いられる。
【0047】
次いで、常温成形型を用いてトリミングされた板片から成形部材が製造される。前記成形部材の製造は、これら成形部材の製造が可能なあらゆる方法及び/または加工手段を用いて実施可能である。適する方法及び/または加工手段の例を以下に示す。
連続結合成形型、
連結状成形型、
段付連続成形型、
液圧プレスライン、
機械プレスライン、
爆発成形、電磁成形、チューブ液圧成形、板液圧成形、及びあらゆる常温成形加工。
【0048】
成形後、特に深絞り成形後に、前述した慣用の成形型を用いて最終トリミングが行われる。
【0049】
本発明方法に従って、それ自体が常温状態で成形された成形部材は、加熱中に生じた熱膨張が補償されるように、仕上げ構造部材の公称幾何学形状よりも0.5〜2%小さく作られる。
【0050】
成形部材の製造に用いる前記方法は、それら成形部材の寸法が顧客が要求する完成部材についての公差範囲内でなければならないため、常温成形方法でなければならない。前述した常温成形加工中に大きな公差が生じた場合には、これら公差をその後の成形焼入れ加工において部分的にある程度補正して猶扱うことが可能である。しかしながら、かかる成形焼入れ加工中における公差補正は好ましくは形状における偏差に対してのみ実施される。それゆえ、かかる形状偏差は熱較正の手法を用いて補正可能である。しかし可能であれば、このような補正処理は曲げ加工に限定されるべきである。何故なら、材料量の関数である切断縁部分は(切断縁部分に関して)後で影響が及ぶべきでなく、また影響を及ぼすこともできないため、すなわち切断縁部分の幾何学形状が正確でなければ、成形焼入れ型中での補正は実施できないからである。従って、要約すれば、切断縁部分についての公差範囲は常温成形及び成形焼入れ加工中の公差範囲に一致すると言うことができる。
【0051】
成形部材には好ましくは顕著な折り目(fold:ひだ、しわ)が存在してはならない。もし折り目が存在すれば、加圧パターンの均質性及び均質な成形焼入れ処理が確保できないからである。
【0052】
構造部材が完全に成形された後、成形及びトリミングされた部材は780℃以上、とりわけ800℃〜950℃のアニール処理温度まで加熱され、数秒間あるいは数分程度、つまり少なくとも所望のオーステナイト化が起こるのに十分な時間に亘ってその温度に保持される。
【0053】
アニール処理後、前記構造部材は本発明に従った成形焼入れ工程へと移される。この成形焼入れ工程では、前記構造部材がプレス機内部の成形型中へ挿入されるが、この成形焼入れ型は好ましくは仕上げ構造部材の最終幾何学形状、すなわち常温成形された構造部材に熱膨張を含めたサイズに一致する。
【0054】
そのため、成形焼入れ型は実質的に常温成形型の形状あるいは輪郭と一致する形状あるいは輪郭を呈しているが、そのサイズは(3つの空間軸すべてに関して)後者より0.5〜2%大きい。前記成形焼入れ処理に際しては、成形焼入れ型と焼入れ対象となる製造過程にある製品、すなわち構造部材とが前記型の密閉直後に全面完全接触されることが要求される。
【0055】
成形された部材は約740℃〜910℃、好ましくは780℃〜840℃の温度において前記成形焼入れ型中へ挿入され、前述したようにこの挿入温度範囲における前記部材の熱膨張が先に実施された常温成形加工において考慮されている。
【0056】
本発明に従った構造部材の亜鉛コーティングによって、常温成形された構造部材のアニール処理温度が800℃〜850℃の範囲内であっても780℃〜840℃の挿入温度を得ることが猶可能である。これは、無コーティングの場合と異なって、本発明に従った特別の亜鉛層によって急激な冷却が減じられるからである。かかる特徴は、加熱強度を強過ぎないようにする必要がある部材がとりわけ900℃以上の温度まで加熱されることを回避できる点で利点となる。温度低下が僅かであっても亜鉛コーティングに対する不利な影響は減じられるため、このことは亜鉛コーティングにも関係する。
【0057】
以下において、実施例を用いて加熱及び成形焼入れについて説明する。
【0058】
成形焼入れ処理の実施に際しては、最初にロボットを用いて特に部材をコンベヤーベルトから取り出し、各部材に対して成形焼入れ前に再現可能な方式でマーキングできるように、それら部材をマーキングステーション中へ挿入する。次いでロボットが作動されて前記部材が中間支持体上へ定置され、コンベヤーベルト上の該中間支持体が炉中を通過されることにより前記部材が加熱される。
【0059】
加熱には例えば対流加熱装置を備えた連続炉が用いられる。しかしながら、いずれか他の加熱装置あるいは炉を用いることも可能であり、特に成形部材が電磁的にあるいはマイクロ波を用いて加熱される炉を用いることも可能である。成形部材は支持体上にあって炉中を移動し、この支持体は加熱中に防食コーティングが連続炉のローラーへ転移されたり、あるいはローラーですり落とされないように設けられている。
【0060】
前記部材は、炉中において、使用される合金のオーステナイト化温度以上の温度まで加熱される。既に述べたように、亜鉛コーティングはとりわけ安定ではないのであるが、前記部材の最大温度ができるだけ低く維持され、また既に述べたように、後に亜鉛コーティングが存在することでゆっくりと冷却されることによってそれが可能となる。
【0061】
前記部材を最大温度まで加熱した後、完全な焼入れ及び十分な防食を得るためには、それら部材を一定の最低温度(>700℃)を起点として20K/秒以上の最低冷却速度で冷却する必要がある。この冷却速度は後続する成形焼入れ工程において達成される。
【0062】
前記冷却を行うため、部材の厚さ次第ではあるが、前記部材はロボットを用いて780℃〜950℃、とりわけ860℃〜900℃の炉から取り出されて成形焼入れ型中へ定置される。操作中、前記部材の温度は約10℃〜80℃、とりわけ40℃下降するので、ロボットは前記部材を高速で成形焼入れ型中へ正確に挿入するように特に設計される。前記部材がロボットによって部材持上げ装置上へ定置された後すぐにプレス機が下がり、ここで部材持上げ装置が外されて前記部材が適正位置に固定される。このために、部材の完全な配置と成形型が密閉されるまでの取扱いが確実に行われる。プレス機及び成形焼入れ型が密閉される時点において、前記部材は猶少なくとも780℃の温度に保たれている。成形型の温度は50℃以下であるので、前記部材の温度は80℃〜200℃の範囲内まで急速に降下する。前記部材を成形型中に長く保持すればするほど、寸法正確性はより高くなる。
【0063】
前記操作中に成形型は熱衝撃にさらされるが、本発明方法では、特に成形焼入れ工程において成形処理が行われないならば、成形型をその基材に関して高度に耐熱衝撃性に設計することが可能とされている。従来方法によれば成形型にはさらに耐磨耗性が必要であるが、本発明においては耐磨耗性は特に重要でなく、この観点において成形型の安価な製造が可能とされる。
【0064】
前記成形部材の挿入に際しては、完全にトリミングかつ孔あけされた部材が成形焼入れ型中へ正確に適合するように挿入され、過剰な材料や材料の突出が存在しないように注意が払われなければならない。角度の調製は単純に曲げることで可能であるが、過剰材料を除去することは不可である。それゆえ、常温成形部材の切断縁部分を成形型縁部分に対して寸法上正確に切断する必要がある。トリミング縁部分のずれを防止するために、トリミング縁部分は成形焼入れ処理中に適正位置へ固定されなければならない。
【0065】
次いで、ロボットを用いて部材をプレス機から取り出してスタンド上へ配置し、そこで継続冷却させる。望ましい場合、前記部材へさらに空気を吹き付けて冷却を速めることも可能である。
【0066】
言及に値するような成形工程を用いず、成形型と製造過程製品との実質的全面完全結合を用いた本発明に従った成形焼入れを行うことにより、製造過程製品の全体部分が確定されると、同時にすべての面から均質に冷却されることが確保される。慣用の成形方法によれば、再現可能な一定の冷却は、成形処理が十分に進行し、材料が成形型の両方へもたれ掛かる場合にのみ起こる。しかしながら、本発明においては、材料は好ましくはすべての面において直ぐに成形型へ完全に結合するようにもたれ掛かる。
【0067】
また、薄鋼板表面上に存在する防食コーティング、特に熱浸漬亜鉛めっきによって処理された層が損傷を受けないことは有利な特徴である。
【0068】
さらに、慣用の処理方法とは対照的に、焼入れ後のコストの掛かる最終トリミングを行う必要がないことも利点である。これにより、コスト面での大きな有利性が確実に得られる。変形あるいは成形は実質的に焼入れ前の常温状態でなされるので、構造部材の複雑性は実質的に常温かつ未焼入れ材料の変形特性によってのみ決まる。かかる特性により、本発明方法を用いることにより、現在までの製品よりも高品質でかなり複雑な焼入れ構造部材の製造が可能となる。
【0069】
常温状態において完全な最終幾何学形状となるため、成形焼入れ型に対する応力が減少することもさらなる利点である。かかる特徴を利用して実質的に耐用期間のより長い成形型を得るとともに寸法正確性を高めることができ、これはコスト低減に繋がることになる。
【0070】
また、前記部材の高温でのアニール処理が不要となることからエネルギー節約の達成も可能となる。
【0071】
冷却に不利な影響を与える可能性がある成形処理を付加することなく、製造過程製品のすべての部分を確定的に冷却することによって、要求外の構成部分数を明らかに減ずることができ、またこれによって製造コストをさらに低減することが可能である。
【0072】
本発明の別の有利な実施態様においては、成形焼入れ処理は、製造過程製品と成形型の両方との接触、あるいは成形型と製造過程製品の完全な結合が、切断縁部分及び成型縁部分、成形面、またおそらくは孔あけパターン部分中等の公差の近接する部分においてのみ起こるように実施される。
【0073】
これに関して、これらの部分における完全な結合は、これらの部分が依存的に支持され、かつクランプされ、位置及び寸法に関して正確である近接した交差を持つ部分が、不利な影響を受けることがなく、及び特に曲げられなく、公差の近接がより小さくなくて良い部分が成形型中での熱成形に耐えられる場合に生ずる。
【0074】
かかる有利な実施態様においては、成形型中に置かれている時に構造部材が猶保持している熱膨張も既述された手法で考慮される。
【0075】
しかしながら、この有利な実施態様では、公差の近接がより小さい部分を成形型の一方あるいは両方の半分に接して置かずに該部分をより緩慢に冷却し、及びより緩慢な冷却によって程度の異なる硬度を達成し、あるいは影響を受ける近接公差部分の無い部分において所望の熱成形を達成することも可能である。このような結果を、例えば各成形型半分中へ付加的なダイスを加えることによって得ることが可能である。既に説明したように、この好ましい実施態様に関しては、近接公差部分が成形焼入れ処理中の成形によって影響を受けないまま保持されることも重要である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に従った方法の工程を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄鋼板から成る焼入れ構造部材の製造方法であって、
a)陰極防食が付与された薄鋼板から成る成形部材を成形し、
b)成形部材の成形前、成形中、あるいは成形後に、必要な成形部材の最終トリミング及び必要なら孔あけあるいは孔あけパターンの作製を実施し、
c)次いで成形部材の少なくとも一部全体を大気中の酸素を取り入れながら鋼材のオーステナイト化を可能とする温度まで加熱し、及び
d)その後に成形部材を成形焼入れ型中へ移して成形焼入れ型中で成形焼入れを実施するが、これは、前記成形焼入れ型中において前記成形部材を前記成形焼入れ型と接触させ及び前記成形焼入れ型を用いて加圧して冷却し、それによって前記構造部材を焼入れすることからなる各工程から構成される薄鋼板から成る焼入れ構造部材の製造方法。
【請求項2】
前記陰極防食コーティングが熱浸漬亜鉛めっき法を用いて処理されるコーティングであり、前記コーティングが実質的に亜鉛混合物から成り、前記混合物には酸素親和性をもつ1または2以上の元素がコーティング全重量に対して全量で0.1重量%〜15重量%さらに含まれ、及び前記薄鋼板の焼入れに必要とされる温度までの加熱中に酸素親和性をもつ前記元素の酸化物から成る被膜が前記薄鋼板表面上へ形成されることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項3】
前記酸素親和性元素として、マグネシウム、及び/または珪素、及び/またはチタン、及び/またはカルシウム、及び/またはアルミニウムが用いられることを特徴とする請求項1または2項記載の方法。
【請求項4】
前記酸素親和性元素が0.2重量%〜5重量%の含量で用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記酸素親和性元素が0.26重量%〜2.5重量%の含量で用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記酸素親和性元素として実質的にアルミニウムが用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記コーティング混合物が、加熱中に前記コーティングによって酸素親和性元素酸化物の酸化物被膜が生成され、及び前記コーティングによって亜鉛に富む相と鉄に富む相を含む少なくとも2相が生成されるように選択されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記鉄に富む相がその相中における亜鉛の鉄に対する比が多くても0.95(Zn/Fe≦0.95)、好ましくは0.20〜0.80(Zn/Fe=0.20〜0.80)の範囲内となるように生成され、及び前記亜鉛に富む相がその相中における亜鉛の鉄に対する比が少なくとも2.0(Zn/Fe≧2.0)、好ましくは2.3〜19.0(Zn/Fe=2.3〜19.0)の範囲内となるように生成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記鉄に富む相中における亜鉛と鉄との比が約30:70であり、及び前記亜鉛に富む相中における亜鉛と鉄との比が約80:20であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング層にさらに亜鉛を90%以上含む複数部分が個別に含まれることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記コーティングがその当初の厚さ15μmにおいて加熱処理後に少なくとも4J/cmの陰極保護効果をもつように前記コーティングが設計されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
亜鉛と酸素親和性元素の混合物を含む前記コーティングが425℃〜690℃の温度にある液状金属浴中へ通過し、それに後続して前記コーティングが施された薄鋼板が冷却されるによって生成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
亜鉛と酸素親和性元素の混合物を含む前記コーティングが440℃〜495℃の温度にある液状金属浴中へ通過し、それに後続して前記コーティングが施された薄鋼板が冷却されるによって生成されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
構造部材上に一定の層厚をもつ一定の層が陰極防食層として用いられることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
成形部材が仕上げ構造部材よりも0.5%〜2.0%小さく、さらに好ましくは仕上げ構造部材よりも1%小さく具現化されるように成形、トリミング、さらには孔あけ及び構造部材上への孔あけパターンの配置が実施されることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記オーステナイト化温度以上の温度となる時間が10分以内であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
加熱層中の保持温度が最大温度として780℃〜950℃の範囲内であることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記構造部材の寸法合わせのために、成形部材の成形及びトリミング又は孔あけ後の加熱処理中の熱膨張が考慮されること、特には、成形及びトリミングには、熱膨張後の寸法又は形状が若干大きくなるものとして考慮されることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
成形焼入れ中、成形構造部材の近接公差部分、特に切断縁部分、成形縁部分及び孔あけパターンが成形型の両方によって歪むことなく把持され、前記近接公差部分外に位置する成形部材部分の熱い状態でのさらなる成形処理が可能であることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記成形部材が成形型によってその全面に亘ってかつ同じ応力で実質的に同時に加圧及び焼入れされることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載の方法を用いて製造される、陰極防食が付与された薄鋼板構造部材。
【請求項22】
前記構造部材を成す前記薄鋼板が800〜2000MPaの範囲内の強度をもつことを特徴とする請求項21項記載の薄鋼板構造部材。
【請求項23】
前記薄鋼板構造部材が防食層をもち、前記防食層が熱浸漬亜鉛めっき法を用いて処理された防食層であり、前記コーティングが実質的に亜鉛混合物から成り、前記混合物にはさらに1種または数種の酸素親和性元素がコーティング全量に対して全量として0.1重量%〜15重量%含まれ、前記防食層は酸素親和性元素酸化物から成る酸化物被膜を有し、及び前記コーティングは亜鉛に富む相と鉄に富む相が与えられた少なくとも2相をもつことを特徴とする請求項21または22項記載の薄鋼板構造部材。
【請求項24】
前記防食層に前記混合物中の酸素親和性元素としてマグネシウム、及び/または珪素、及び/またはチタン、及び/またはカルシウム、及び/またはアルミニウムが含まれることを特徴とする請求項21〜23のいずれかに記載の薄鋼板構造部材。
【請求項25】
前記鉄に富む相中における亜鉛の鉄に対する比が多くても0.95(Zn/Fe≦0.95)、好ましくは0.20〜0.80(Zn/Fe=0.20〜0.80)の範囲内であり、及び前記亜鉛に富む相中における亜鉛の鉄に対する比が少なくとも2.0(Zn/Fe≧2.0)、好ましくは2.3〜19.0(Zn/Fe=2.3〜19.0)の範囲内であることを特徴とする請求項21〜24のいずれかに記載の薄鋼板構造部材。
【請求項26】
前記鉄に富む相中における亜鉛と鉄との比が約30:70であり、及び前記亜鉛に富む相中における亜鉛と鉄との比が焼く80:20であることを特徴とする請求項21〜24のいずれかに記載の薄鋼板構造部材。
【請求項27】
前記薄鋼板構造部材にさらに亜鉛を90%以上の含量で含む複数部分が個別に含まれることを特徴とする請求項21〜26のいずれかに記載の薄鋼板構造部材。
【請求項28】
前記防食層がその当初の厚さ15μmにおいて少なくとも4J/cmの陰極保護効果を有することを特徴とする請求項21〜27のいずれかに記載の薄鋼板構造部材。
【請求項29】
構造素子が、厚さが0.15mm以上であり、及び下記合金元素の少なくとも1種を下記に限定された重量%範囲内で含む、常温または熱間圧延鋼テープから成形されることを特徴とする請求項21〜28のいずれかに記載の薄鋼板構造部材:
炭素 0.4以下 好ましくは0.15〜0.3
珪素 1.9以下 好ましくは0.11〜1.5
マンガン 3.0以下 好ましくは0.8〜2.5
クロム 1.5以下 好ましくは0.1〜0.9
モリブデン 0.9以下 好ましくは0.1〜0.5
ニッケル 0.9以下
チタン 0.2以下 好ましくは0.02〜0.1
バナジウム 0.2以下
タングステン 0.2以下
アルミニウム 0.2以下 好ましくは0.02〜0.07
硼素 0.01以下 好ましくは0.0005〜0.005
硫黄 最大0.01 好ましくは最大0.008
燐 最大0.025 好ましくは最大0.01
残余分としての鉄及び不純物


【図1】
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【公表番号】特表2007−505211(P2007−505211A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521404(P2006−521404)
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006252
【国際公開番号】WO2005/021821
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506029255)フェストアルピネ シュタール ゲーエムベーハー (11)
【氏名又は名称原語表記】VOESTALPINE STAHL GMBH
【出願人】(506029266)フェストアルピネ オートモーティブ ホールディング ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】VOESTALPINE AUTOMOTIVE HOLDING GMBH
【Fターム(参考)】