説明

薬剤ラベル

【課題】耐水性や耐候性にすぐれ、印字してある各種薬剤情報の目視、光学読み取りさらには無線によるデータ交信を保証可能とするとともに、とくに多岐かつ多量の薬剤情報を保存し、患者のリストバンドに表示あるいは保存されている患者情報と薬剤情報との照合確認ないしは整合確認を行うことを可能とする薬剤ラベルを提供すること。
【解決手段】第1の被貼付け物に貼り付け可能な下層ラベル2への下層印字内容9と、第2の被貼付け物に貼り付け可能な上層ラベル3への上層印字内容15とを同一とするとともに、下層ラベル2と上層ラベル3との間の中間フィルム層4の裏面、上層ラベル3の裏面、あるいは下層ラベル2の裏面、の少なくともいずれかひとつに、薬剤情報に関して無線でデータ交信可能なRFIDタグ6を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤ラベルにかかるもので、とくに医療分野などにおいて薬剤の管理のために使用される薬剤ラベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療現場において、薬剤容器に容れられた薬剤は、注射器に移し替えられて患者に投与されたり、点滴の輸液容器に混注して使用されているが、これらの注射器や点滴の輸液容器には薬剤の名称の表記が行われておらず、薬剤師や看護師などの医療従事者が薬剤を注射器などに移し替えたのち、すぐに患者に投与すればよいが、所要で別の急用を処理せざるを得ない場合には、あとで薬剤を取り違えるなどの可能性を否定することができず、このような医療ミスを防止するために何らかの方策が要望されている。
【0003】
この要望に応えて、薬剤容器に貼り付け可能であって薬剤情報を印字してある下層ラベルに上層ラベルを剥離可能に積層し、この上層ラベルに同様の薬剤情報を印字し、これを下層ラベルから剥離し、注射器や点滴の輸液容器に貼り付けるようにしたものがある(たとえば特許文献1)。この薬剤ラベルに表示された薬剤情報を目視により、あるいはビデオカメラなどの機械により読み取って、より確実な薬剤情報の管理を可能とする。
しかして、上層ラベルおよび下層ラベルには、薬剤情報の管理のために光学読み取り可能なバーコードや二次元コードが表示されている場合があるが、医療現場において上層ラベルや下層ラベルが液体さらには温度や湿度変化などにより変質して光学読み取りが困難になる可能性があるという問題もある。
また、上層ラベルにより隠されている下層ラベルの薬剤情報を上層ラベル側から確認することが困難であるという問題がある。
【0004】
さらに、光学読み取り可能なバーコードや二次元コードでは、当該薬剤ラベルの大きさによっては記憶可能な薬剤情報の量に限りがあって、たとえば、薬剤ないし医療品の副作用や中毒症状ないしアレルギー情報などに関する薬剤情報は多岐かつ多量となる場合があり、当該下層ラベルおよび上層ラベルではその表示スペースに限界があるという問題がある。
したがって、たとえば病院などにおいて患者の手首や足首などに取り付けられているリストバンド(図示せず)に表示あるいは保存されている患者情報と、薬剤ラベル上に表示されている薬剤情報との照合確認ないしは整合確認を行うことが困難な場合があるという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−126041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、耐水性や耐候性にすぐれ、印字してある各種薬剤情報の目視、光学読み取りさらには無線によるデータ交信を保証可能とした薬剤ラベルを提供することを課題とする。
【0007】
また本発明は、上層ラベルを下層ラベルからはがさなくても、下層ラベルの薬剤情報を上層ラベル側から確認することができるようにした薬剤ラベルを提供することを課題とする。
【0008】
また本発明は、下層ラベルの耐水性および耐候性を確保し、下層ラベルおよび上層ラベルを貼り付ける被貼付け物を任意に選択して、下層ラベルに印字してある光学読み取り可能なコードやICタグなどを保護可能である薬剤ラベルを提供することを課題とする。
【0009】
また本発明は、とくに多岐かつ多量の薬剤情報を保存しておくことができる薬剤ラベルを提供することを課題とする。
【0010】
また本発明は、患者などに取り付けられているリストバンドに表示あるいは保存されている患者情報と薬剤情報との照合確認ないしは整合確認を行うことを可能とする薬剤ラベルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、下層ラベルと上層ラベルとの間に中間フィルム層を設けること、および薬剤情報について無線によりデータ通信可能なRFIDタグ(ICタグ)を取り付けること、さらに、所定のリーダーライターにより必要な薬剤情報をこのRFIDタグに書き込みかつ読み取り可能とすることに着目したもので、薬剤に関する薬剤情報を下層印字内容として印字して第1の被貼付け物に貼り付け可能な下層ラベルと、この下層ラベルから剥離可能にこの下層ラベルに積層しているとともに、上記薬剤に関する上記薬剤情報を上層印字内容として印字して第2の被貼付け物に貼り付け可能な上層ラベルと、を有する薬剤ラベルであって、上記下層ラベルへの上記下層印字内容と、上記上層ラベルへの上記上層印字内容とを同一とするとともに、上記下層ラベルと上記上層ラベルとの間に、中間フィルム層を設け、さらに、この中間フィルム層の裏面、上記上層ラベルの裏面、あるいは上記下層ラベルの裏面、の少なくともいずれかひとつに、上記薬剤情報に関して無線でデータ交信可能なRFIDタグを設けたことを特徴とする薬剤ラベルである。
【0012】
上記上層ラベルは、これを透明な材料から構成することができる。
【0013】
上記中間フィルム層は、これを透明な材料から構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による薬剤ラベルにおいては、下層ラベルと上層ラベルとの間に中間フィルム層を設けるようにしたので、この中間フィルム層の耐水性および耐候性により下層ラベルの下層印字内容を保護可能であり、光学読み取り可能なバーコードや二次元コード、さらにRFIDタグの保存データを液体や温度および湿度から保護し、光学読み取りや無線によるデータ交信に支障がないようにすることができる。
さらに、中間フィルム層の裏面、上層ラベルの裏面、あるいは下層ラベルの裏面、の少なくともいずれかひとつに、RFIDタグを設けたので、薬剤情報に関して無線でデータ交信を可能とし、必要な量の薬剤情報を保存し、適宜この薬剤情報をリーダーライターにより読み取って照合確認作業を行うことができるとともに、中間フィルム層あるいは下層ラベルの裏面にRFIDタグを取り付けた構成では、このRFIDタグを液体や温度および湿度から保護し、無線によりデータ交信に支障がないようにすることができる。
また、下層ラベルあるいは上層ラベルを貼り付ける対象である第1の被貼付け物あるいは第2の貼付け物について、中間フィルム層に保護された下層ラベルを光学読み取りが必要な方、あるいはRFIDタグによるデータ交信が必要な方に貼り付けるように選択可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、同一の印字内容を有する下層ラベルと上層ラベルとの間に中間フィルム層を設けるとともに、少なくともいずれかの層にRFIDタグを取り付けたので、光学読み取りおよび無線データ交信を保証し、薬剤情報の量にかかわらず、その管理を安定して確実かつ円滑に行うようにすることができる薬剤ラベルを実現した。
【実施例】
【0016】
つぎに本発明の実施例による薬剤ラベルを図1ないし図3にもとづき説明する。
図1は、薬剤ラベル1の分離平面図、図2は、図1のII−II線部分における薬剤ラベル1の分解断面図であって、薬剤ラベル1は、下層ラベル2と、上層ラベル3と、中間フィルム層4と、台紙5と、RFIDタグ6と、を有する。
なお、図1では、下層ラベル2および上層ラベル3(中間フィルム層4)を分離して平面方向で横にずらして描いてあり、図2では、下層ラベル2、上層ラベル3、中間フィルム層4および台紙5を積層方向で分解した状態で描いてある。
【0017】
下層ラベル2は、患者情報および薬剤情報を記入するためのカルテ23(第1の被貼付け物、図3)に貼り付け可能であって、下層ラベル基材7と、第1の粘着剤層8と、を有する。
下層ラベル基材7は、上質紙あるいは合成樹脂材など任意の材料からこれを構成しており、所定の薬剤情報をその印字内容として(下層印字内容9)表示している。下層印字内容9には、薬剤の名称10やロットナンバー11はもとより、光学読み取り可能な二次元コード12その他を含んでいる。
第1の粘着剤層8には台紙5を仮着してあって、使用にあたっては、この台紙5をはがす。
【0018】
上層ラベル3は、上層ラベル基材13と、第2の粘着剤層14と、を有する。
上層ラベル基材13は、任意の透明な材料からこれを構成するとともに、下層ラベル2への印字内容(下層印字内容9)と同一内容(上層印字内容15)を厚さ方向ないし積層方向で同一部位に印字可能としている。
第2の粘着剤層14としては、透明な材料少なくとも無色透明に近い粘着剤を利用する。
【0019】
中間フィルム層4は、たとえばシリコンポリプロピレンなどによる透明なフィルム基材16と、その表面側の剥離剤層17と、その裏面側の第3の粘着剤層18と、を有し、下層ラベル2と上層ラベル3との間において、下層ラベル2に接着状態であるとともに、上層ラベル3を剥離可能としている。
【0020】
なお、上層ラベル3の任意の隅部に剥離用つまみ部19を形成し、その裏面側に糊殺し印刷20を行って、上層ラベル3を中間フィルム層4から剥離しやすくしている。
これらの剥離用つまみ部19および糊殺し印刷20は、これを上層ラベル3の四隅に形成することもできる。
【0021】
かくして、上層ラベル3は、中間フィルム層4を介して下層ラベル2から剥離可能に下層ラベル2に積層しているとともに、下層ラベル2とともに、薬剤に関連する第1の被貼付け物あるいは第2の被貼付け物のいずれかに、すなわち、後述するカルテ23や点滴の輸液容器24などに貼り付け可能となっている。
【0022】
RFIDタグ6は、ICチップ21およびアンテナ22を有し、ICチップ21に患者情報および薬剤情報を保存可能であるとともに、アンテナ22を介して所定のリーダーライター(図示せず)との間で、これら患者情報および薬剤情報に関して無線でデータ交信可能である。
RFIDタグ6を設ける部位としては、図示の例では上層ラベル3および中間フィルム層4との間(上層ラベル3の裏面)を例示しているが、当該薬剤ラベル1の利用形態に応じて、中間フィルム層4の裏面、あるいは下層ラベル2の裏面などでもよく、少なくともいずれかの層2、3、4の裏面のひとつにRFIDタグ6を設けることができるもので、複数の層、たとえば下層ラベル2あるいは中間フィルム層4と、上層ラベル3と、に設けることも可能である。
【0023】
こうした構成の薬剤ラベル1の使用形態を説明する。
図3は、薬剤ラベル1の使用形態の一例を示す説明図であって、カルテ23(第1の被貼付け物)に薬剤ラベル1を貼り付けるとともに、下層ラベル2(中間フィルム層4)から上層ラベル3を剥離し、これをたとえば点滴の輸液容器24(第2の被貼付け物)に貼り付けて、以後の薬剤情報の管理に役立てることができる。
たとえば、上層ラベル3の薬剤の名称10やロットナンバー11を目視により確認することにより、あるいは二次元コード12などを所定のリーダー(図示せず)により読み取ることによって、薬剤情報の確認が可能であるとともに、RFIDタグ6(ICチップ21)に保存してある患者情報および薬剤情報をリーダーライターにより読み取って、必要な医療行為を間違いなく実行可能である。
【0024】
下層ラベル2には中間フィルム層4を被覆してあるので、カルテ23が液体などに接触しても下層ラベル2上の下層印字内容9やRFIDタグ6を保護可能であり、その二次元コード12などの光学読み取りおよびRFIDタグ6との間のデータ交信を保証することができる。
もちろん、中間フィルム層4付きの下層ラベル2の第1の被貼付け物として、医療作業に応じて、点滴の輸液容器24あるいは注射器(図示せず)など、耐水性および耐候性などに問題がある可能性がある対象物を選択することもできる。その場合に上層ラベル3は、光学読み取り操作が不要な他の第2の被貼付け物にこれを貼り付ければよい。
【0025】
また、上層ラベル3を下層ラベル2から剥離する前に、上層ラベル3および中間フィルム層4を通して下層ラベル2の部分を透視可能であって、それぞれの下層印字内容9および上層印字内容15が重なり合っていれば、同一薬剤情報が印字されていることを確認することができる。
さらに、点滴の輸液容器24に、カルテ23と同一薬剤情報が表示されているとともに、RFIDタグ6には容量の比較的大きな患者情報および薬剤情報その他必要な情報が保存されているので、医療の現場における薬剤の誤使用を確実に防止可能であるとともに、薬剤ラベル1の使用形態に応じて、さらには医療行為に応じて薬剤情報の管理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の薬剤ラベル1の分離平面図である。
【図2】同、図1のII−II線部分における薬剤ラベル1の分解断面図である。
【図3】同、薬剤ラベル1の使用形態の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 薬剤ラベル(実施例、図1)
2 下層ラベル
3 上層ラベル
4 中間フィルム層
5 台紙
6 RFIDタグ
7 下層ラベル基材
8 第1の粘着剤層
9 下層印字内容
10 薬剤の名称
11 ロットナンバー
12 光学読み取り可能な二次元コード
13 上層ラベル基材
14 第2の粘着剤層
15 上層印字内容
16 透明なフィルム基材
17 剥離剤層
18 第3の粘着剤層
19 剥離用つまみ部
20 糊殺し印刷
21 RFIDタグ6のICチップ
22 RFIDタグ6のアンテナ
23 薬剤容器(第1の被貼付け物、図3)
24 点滴の輸液容器(第2の被貼付け物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤に関する薬剤情報を下層印字内容として印字して第1の被貼付け物に貼り付け可能な下層ラベルと、
この下層ラベルから剥離可能にこの下層ラベルに積層しているとともに、前記薬剤に関する前記薬剤情報を上層印字内容として印字して第2の被貼付け物に貼り付け可能な上層ラベルと、を有する薬剤ラベルであって、
前記下層ラベルへの前記下層印字内容と、前記上層ラベルへの前記上層印字内容とを同一とするとともに、
前記下層ラベルと前記上層ラベルとの間に、中間フィルム層を設け、さらに、
この中間フィルム層の裏面、
前記上層ラベルの裏面、あるいは
前記下層ラベルの裏面、の少なくともいずれかひとつに、前記薬剤情報に関して無線でデータ交信可能なRFIDタグを設けたことを特徴とする薬剤ラベル。
【請求項2】
前記上層ラベルは、これを透明な材料から構成したことを特徴とする請求項1記載の薬剤ラベル。
【請求項3】
前記中間フィルム層は、これを透明な材料から構成したことを特徴とする請求項1記載の薬剤ラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−46361(P2010−46361A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214492(P2008−214492)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(307010993)株式会社サトー知識財産研究所 (588)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】