説明

薬剤交付支援装置

【課題】適量かつ適切に録画する薬剤交付支援装置20を実現する。
【解決手段】薬剤交付台26の上面を次々に撮るカラーの撮像装置21,22と、それらの撮影画像41,42から記録対象画像(36)を選出する画像処理装置30と、その選出画像を記録する録画装置25とを備えた薬剤交付支援装置20であって、画像処理装置30が、画像選出を時間経過に応じて行う第1選出手段35と、撮影画像41からカラービットコード10a,10bを検出してコード値およびコード位置を読み取る手段32と、そのコード値が交付対象薬剤に係るものであるか否かを調べるとともにコード位置の変化に基づいて交付行為の有無を判別する手段31と、交付判定時に画像選出する第2選出手段33とを具備する。コード読取の可否の変化で手掛行為が有ったと判別したときや、コードの完全読取と一部読取との変化で指差行為が有ったと判別したときも、録画する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院や薬局の窓口で薬剤師等が患者に薬剤を交付する手作業を支援する薬剤交付支援装置に関し、詳しくは、受け渡し状況を録画して窓口業務の後日確認を可能とすることで作業者の精神的な負担の軽減等に役立つ薬剤交付支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
調剤分野では、残置薬の数量増大の防止抑制や薬品の在庫管理の負担軽減を目的として、薬剤師の作業量や患者の待ち時間を少なくするために、各種の散薬を扱ってそれらの分包作業を自動的に行う散薬自動分包機が実用化されている(例えば特許文献1参照)。
また、薬剤によってはそのような自動化に不向きなため分別保管と選択払出を手作業で行うようになった薬品類収納装置もある(例えば特許文献2参照)。この装置は、指示箋のバーコード読取に基づく薬品類払出情報の調製時と、分別保管用の多数の収納容器の扉開閉時とに、調製情報やセンサ検出結果にタイムスタンプ(時刻情報)を付してログデータとし、それを後で集計加工して剤種毎の払出数や在庫数を目視可能に表示する。
【0003】
さらに、薬袋などに処方箋データと共に処方箋識別コードや調剤指示箋コードを印刷しておき、薬袋から携帯端末で処方箋識別コード等を読み取って、調剤や監査の担当者を各薬剤毎に関連づけるようになった調剤システムも実用化されている(例えば特許文献3参照)。このようなシステムでは、識別情報の取得試行の度に各担当者がリーダを手にしてそれをバーコードに向ける作業が行われるが、バーコードリーダが携帯可能になったことにより、コード読取の作業性が向上し、人手介助者の作業負担が軽減されている。
【0004】
バーコードは一般にシート表面に印刷されて光学的に読み取られるが、多様な物品の表面への印刷にも読取にも適う識別コードとして、色の配列で符号化情報を表すカラービットコード(1Dや1.5Dのカラービットコードと呼ばれたりリフレクティブカラーコードと呼ばれることもある)が開発されている(例えば特許文献4,5参照)。その読取は、カラービットコードを含んだ画像データをエリアセンサ等の撮像装置で取り込んで複数の色領域あるいは色領域群に区分けし、区分けした各領域色や各領域群を境界条件や個数条件等を用いて絞り込んでから実際にデコードを行うことで、二次元バーコードのような切り出しマーク等を用いなくても、シンプルにデコードできるものとなっている。
【0005】
そして、このようなカラービットコードを導入した薬品管理システムが実用化されている(例えば特許文献6参照)。このシステムは、トレーにセットして医療現場で使用される薬品類の使用状況を管理するためのものであり、トレーを仕切って各区画に薬品類を収容するとともに薬品類の使用の有無を区画毎に把握するようになっている。具体的には、トレーにセットすべき薬品類の配置を調剤指示に応じて決定する配置決定手段と、トレーの内底に敷ける印刷用紙に薬品類の識別コードを配置に対応させて印刷する印刷手段と、トレーと共に印刷用紙を上から撮る撮像手段と、その画像から識別コードを読み取って薬品類の使用の有無を判別する判定手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−239316号公報
【特許文献2】特開2004−187958号公報
【特許文献3】特開2006−247150号公報
【特許文献4】特開2008−287414号公報
【特許文献5】特開2009−003721号公報
【特許文献6】特開2011−024663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の調剤自動化装置では、調剤機器の自動化によって調剤作業の能率や確度の向上を達成してきたが、調剤の後に病院や薬局の窓口で行われる薬剤交付の作業については、薬剤師等が薬剤と患者を確認しながら患者に薬剤を手渡すことから、自動化が困難なので、依然として手作業のままである。このため、相対的に薬剤交付の作業負担が増している。また、高齢化社会到来等の影響もあって、会計は済ませたが薬剤の受取を失念して薬局等に薬剤を残したまま帰宅したり、薬剤を受け取ったが帰宅途中に置き忘れてしまうといった事例が増えている。このため、残置薬の確認作業の負担も増えている。
【0008】
そして、かかる薬剤交付作業の負担軽減については、受け渡し状況を録画して窓口業務の後日確認を可能とする薬剤交付支援装置を提供することにより、作業者の精神的な負担を軽減するとともに、薬剤交付作業の能率を高めることができると思われる。
しかしながら、残置薬の確認時期は、交付可能になってから、数時間後の事もあれば、数週間後や数ヶ月後の事もある。このため、正確を期すべく薬剤交付状況を間断なく録画したのでは、録画データが膨大になって記録費用が嵩んで不都合である。一方、経済性に重きを置いて録画を間引きしすぎたのでは、後の確認に支障を来すので不都合である。
そこで、適量かつ適切に録画する薬剤交付支援装置を実現することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の薬剤交付支援装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、薬剤交付台の上面を次々に撮るカラーの撮像装置と、それらの撮影画像から記録対象の画像を選出する画像処理装置と、その選出画像を記録する録画装置とを備えた薬剤交付支援装置であって、前記画像処理装置が、前記撮影画像からの記録対象画像選出を時間経過に応じて行う第1選出手段と、前記撮影画像からカラービットコードを検出してコード値およびコード位置を読み取る読取手段と、前記コード値が交付対象薬剤に係るものであるか否かを調べるとともに前記コード位置の変化に基づいて交付行為の有無を判別する判定手段と、それで交付対象薬剤が交付されたと判定されたときに前記撮影画像からの記録対象画像選出を行う第2選出手段とを具備したものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の薬剤交付支援装置は(解決手段2)、上記解決手段1の薬剤交付支援装置であって、前記判定手段が、前記コード値に係る前記読取手段からの取得可否の変化に基づいて交付行為の前後の手掛行為の有無を判別するものであり、前記第2選出手段が、前記判定手段から手掛行為有りの判定結果を受けたときに前記撮影画像からの記録対象画像選出を行うものであることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の薬剤交付支援装置は(解決手段3)、上記解決手段1,2の薬剤交付支援装置であって、前記読取手段が、完全に読み取れたカラービットコードに加えて一部しか読み取れなかったカラービットコードについても読取結果を出すものであり、前記判定手段が、前記コード値に係る完全読取と一部読取との変化に基づいて交付時の指差行為の有無を判別するものであり、前記第2選出手段が、前記判定手段から指差し有りの判定結果を受けたときに前記撮影画像からの記録対象画像選出を行うものであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の薬剤交付支援装置は(解決手段4)、上記解決手段1〜3の薬剤交付支援装置であって、患者を特定する情報とその患者に係る残置薬発生有無の情報とを保持する残置薬発生記録データと、その残置薬発生記録データと前記コード値とを照合して前記コード値が残置薬発生経験を持つ患者に係るものであるか否かを調べる確認手段と、それで交付対象患者が残置薬発生経験者であると確認されたとき前記第1選出手段に前記撮影画像からの記録対象画像選出の時間間隔を短縮させる頻録手段とを具備したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の薬剤交付支援装置は(解決手段5)、上記解決手段1〜3の薬剤交付支援装置であって、患者を特定する情報とその患者に係る残置薬発生有無の情報とを保持する残置薬発生記録データと、その残置薬発生記録データと前記コード値とを照合して前記コード値が残置薬発生経験を持つ患者に係るものであるか否かを調べる確認手段と、それで交付対象患者が残置薬発生経験者であると確認されたときに注意を促す警報を発する発報手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような本発明の薬剤交付支援装置にあっては(解決手段1)、薬剤交付台上で薬剤を交付した状況が次々にカラーで撮られ、それらの撮影画像が総てそのまま記録されるのでなく、それらの撮影画像から記録対象として選出された画像だけが記録されるのであるが、記録対象画像選出が第1選出手段により時間経過に応じて行われるとともに、第2選出手段等により交付行為の可能性の高いときにも行われる。
そのため、交付行為の可能性の低いときには、時間経過に応じて画像が選出されるだけなので、記録データ量が少なくなるが、それでも交付行為の無かったことを確認するには足りることが多い。これに対し、交付行為の可能性の高いときには、交付行為の最中と思しきときにも画像が選出されるので、記録データ量の僅かな増加を対価として払う代わりに、後で確認したい画像を逃すことなく記録することができる。
【0015】
しかも、交付対象薬剤の有無がカラービットコードのコード値に基づいて調べられるとともに、交付行為の有無がカラービットコードのコード位置の変化に基づいて判別されるようにもしたことにより、カラービットコードを付された交付対象薬剤が交付に先だって薬剤交付台上に置かれたことや交付実行時に薬剤交付台上で横移動させられたことが、コード読取を介助する人手の要らない自動で、然も的確に、検知されることとなる。
したがって、この発明によれば、人手作業を増やすことなくコード読取を行って適量かつ適切に録画する薬剤交付支援装置を実現することができる。
【0016】
また、本発明の薬剤交付支援装置にあっては(解決手段2)、カラービットコードを付された交付対象薬剤に交付実行担当者や交付対象患者が手を掛けるとカラービットコードが手で隠されて読み取れなくなることが多いのと、そのような手掛行為が交付行為の前後に頻発することを考慮して、簡便に、交付行為の始まりや終わりの可能性の高いときも画像を記録することができるので、交付行為がきめ細かく録画されることとなる。
【0017】
さらに、本発明の薬剤交付支援装置にあっては(解決手段3)、カラービットコードを付された交付対象薬剤に交付実行担当者が指先を乗せるとカラービットコードの一部が指で隠されて残りの一部しか読み取れなくなることが多いのと、そのような指差行為が交付対象薬剤の確認や服薬の指導などに伴って頻発することを考慮して、簡便に、交付行為の付随行為の可能性の高いときにも画像を記録することができるので、交付行為そのものばかりか付随行為まできめ細かく録画されることとなる。
【0018】
また、本発明の薬剤交付支援装置にあっては(解決手段4,5)、交付対象患者が残置薬発生経験者であるか否かが確認されるとともに、交付対象患者が残置薬発生経験者であると確認されたときには、後日の画像確認の可能性が高いため記録対象画像選出の時間間隔が短縮されてきめ細かく録画され(解決手段4)、あるいは注意を促す警報が発せられて未処理の残置薬の確認促進や新たな残置薬の発生防止が図られる(解決手段5)。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1について、薬剤交付支援装置の構造を示し、(a)が装置全体の外観斜視図、(b)が薬剤を収納した二種類の薬袋の表面図、(c)が引換券と薬剤説明書とお薬手帳の表面図、(d)が画像処理装置のブロック図である。
【図2】薬剤交付時の薬剤交付台上の状況を説明するための平面図である。
【図3】薬剤交付時の薬剤交付台上の状況を説明するための平面図である。
【図4】薬剤交付時の薬剤交付台上の状況を説明するための平面図である。
【図5】薬剤交付時の薬剤交付台上の状況を説明するための平面図である。
【図6】薬剤交付時の薬剤交付台上の状況を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
このような本発明の薬剤交付支援装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1〜図6に示した実施例1は、上述した解決手段1〜5(出願当初の請求項1〜5)を総て具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、アーム等の支持部材や,ボルト等の締結具,照明や電源等の電気回路,画像処理装置等の電子回路の詳細などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0021】
本発明の薬剤交付支援装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が薬剤交付支援装置20を設置した薬局窓口の外観斜視図、(b)が交付対象薬剤を収納した二種類の薬袋10の表面図、(c)が引換券11と薬剤説明書12とお薬手帳13の表面図、(d)が画像処理装置30のブロック図である。
【0022】
薬剤交付支援装置20は(図1(a)参照)、病院や薬局の窓口で交付実行担当者4が交付対象患者7へ薬剤を引き渡す薬剤交付の手作業を支援するためのものなので、窓口の所に設置されて、交付実行担当者4を支援対象とし、後日の作業確認のために撮影画像を記録する必須機能に加えて、交付実行担当者4の視覚や聴覚に作用して注意を促す付加機能も発揮するものとなっている。薬剤交付の行われる窓口に設置される薬剤交付台26として、薬剤交付台26の上面を交付実行担当者4側と交付対象患者7側とに分けるとともに薬剤の引き渡し場所を開口部に限定する仕切27が付設されたものを例示したが、仕切27を設置するか否かは任意であり、仕切27の無い薬剤交付台26も多い。
【0023】
また、薬剤交付支援装置20は薬剤を基本的な取扱対象として撮影を行うが、薬剤をそのまま交付する場合はその薬剤を直に撮影対象とし、薬剤を薬袋10に収めて交付する場合は(図1(b)参照)、薬剤を収納した薬袋10を撮影対象とするようになっている。さらに(図1(c)参照)、引換券11や,薬剤説明書12,お薬手帳13等も、薬剤交付時に窓口で提示されれば、それも付加的な取扱対象・撮影対象となる。
そして、これらの取扱対象・撮影対象10,11,12,13には、予め、それぞれを識別しうる固有のコード値が割り振られ、それがカラービットコードで印刷されている。その印刷部位は自然な姿勢で窓口の台上に置いたときに上向きになる所である。
【0024】
具体的には、薬袋10では(図1(b)参照)、それに割り当てられたコード値が少なくとも適宜な一カ所にカラービットコード10aで印刷されているが、望ましくは、表面の縁部に沿ってほぼ一周する状態で複数箇所にカラービットコード10aが印刷されるとともに、患者名の文字印刷の近くには患者識別用の患者コードがカラービットコード10bで印刷される。さらに、引換券11と薬剤説明書12とお薬手帳13では、それぞれに割り当てられたコード値がカラービットコード11a,12a,13aで適宜箇所に印刷されているのが望ましいが(図1(c)参照)、付加的な対象11〜13では、カラービットコード印刷が無くても良い。カラービットコードは、直線形を図示したが、コード情報として上記コード値の他にコード位置も読み取れれば、渦巻形など他の形でも良い。
【0025】
このようなことを前提として、薬剤交付支援装置20(図1(a)参照)は、例えばCCDカメラからなり薬剤交付台16の上方にほぼ真下向きで設置されて薬剤交付台16の上面のうち特に薬剤の引き渡し場所である仕切17の開口部の辺りに的を絞ってそこを次々に撮るカラーの撮像装置21と、薬剤交付の全体的な状況を把握し易いよう例えば広角のCCDカメラからなり薬剤交付台16の上面を含む比較的広い範囲を撮る撮像装置22と、両撮像装置21,22によって次々に撮られた撮影画像の中から記録対象画像を選出する画像処理装置30と、例えば大容量のハードディスクからなり画像処理装置30の選出画像を追加記録して画像データを蓄積する録画装置25と、注意事項などの作業支援情報を文字や画像で提示するディスプレイ等の表示装置23(発報装置)と、注意を促す警報などを報知音や音声で発するスピーカ等の音響装置24(発報装置)とを具えている。それらは協動のため個別の信号ケーブルや共用のLANケーブル等で接続されている。
【0026】
画像処理装置30は(図1(d)参照)、十分な容量のメモリと十分な処理速度のプロセッサとを具備していればコンピュータでもデジタルシグナルプロセッサでも単一プロセッサでも複合形でも分散形でも良く、録画装置25と一緒に薬剤交付台16等に格納されていることが多いが、バラバラで別の所に設置されていることもある。
そして、プログラムにて具現化された判定手段31と読取手段32と第2選出手段33と頻録手段34と第1選出手段35と記録手段36と確認手段37と発報手段38とがプログラムメモリ等にインストールされるとともに、撮影画像データ41と撮影画像データ42と残置薬発生記録データ43とを記憶保持するための各データ領域が書き換え可能なデータメモリに確保されている。
【0027】
撮影画像データ41は、撮像装置21から取り込まれた画像であり、撮影画像データ42は、撮像装置22から取り込まれた画像であるが、何れも、例えば数ms〜数百msの一定周期で又は不定周期で更新されるようになっている。両画像の更新タイミングは、同期しているのが好ましいが、非同期であっても然したる不都合はない。なお、撮影画像データ41は、撮像装置21が撮影領域の全範囲におけるカラービットコード像を読取に適う分解能で撮るものであることに対応して、そのような画像データを損なうことなく記憶保持することができるデータ量のものとなっている。カラービットコード読取対象の撮影画像データ41はビットマップの静止画の方が良いが、撮影画像データ42は、JPEG規格等で圧縮された静止画でも、MPEG規格等で圧縮された短時間の動画でも良い。
【0028】
第1選出手段35は、上記の両撮影画像データ41,42からの記録対象画像選出を時間経過に応じて行うものであり、具体的には、画像処理装置30に内蔵の又は外付けのタイマにて計測された時刻や時間を参照して、一定周期でも不定周期でも良いが例えば1秒前後や数秒といった適宜な時間が経過する度に、そのとき両撮影画像データ41,42に保持されている撮影画像を記録対象画像に選出して、その選出画像のデータを録画装置25に追加記録する処理を記録手段36に依頼するようになっている。また、第1選出手段35は、後で述べる頻録手段34から指示を受けると、それに応じて、撮影画像からの記録対象画像選出の時間間隔を短縮したり元に戻したりするようにもなっている。
【0029】
読取手段32は、撮影画像データ41が更新される度に又は読取能力に応じて適宜間引いたタイミングで撮影画像データ41からカラービットコード10a,10b,11a,12a,13a等の画像領域を検出してそのカラービットコードを読み取るものであり、コードの読み取り方は従来手法で良いが(例えば特許文献4,5参照)、読み取って得るコード情報として、コード値だけでなくコード位置も求めるようになっている。
コード値は、上述したように取扱対象・撮影対象10,11,12,13に割り振られた識別用の固有な値であり、コード位置は、撮影画像データ41におけるカラービットコード像の位置あるいはそれを薬剤交付台16の上面におけるカラービットコードの位置に変換したものである。
【0030】
また、読取手段32は、完全にコード全体を読み取れたカラービットコードに加えて、一部分しか読み取れなかったカラービットコードについても、読取結果として、コード値のうち読み取れた部分とその位置とを出すようになっている。
具体的には、撮影画像を部分領域に区分けし更に条件で絞り込んでからデコードを試みる度にその画像領域の例えば中心位置をコード位置とし、デコードして得られたバイナリデータを対応するコード値とするが、ビット数やチェックサム等が規定通りであれば完全に読み取れたとし、そうでなければ一部だけ読み取れたとし、そのような読取結果を一組に限らず幾つでも読み出して判定手段31に引き渡すようになっている。
【0031】
判定手段31は、随時、読取手段32からカラービットコードの読取結果を受け取り、その読取結果のうち完全に読み取れたコード値が交付対象薬剤に係るものであるか否かを調べる。具体的には、取扱対象・撮影対象10,11,12,13に割り振られたカラービットコード10a,10b,11a,12a,13aの何れかに該当するか否かを調べるが、そのなかでも薬袋10のカラービットコード10a,10bは逃さず必ず調べるようになっている。他のカラービットコードは、検出されたときだけ確認的に調べても良く、オプション設定等に応じて選択的に調べるようにしても良い。そして、そのようなコード値が新たに得られたときには、そのコード値とコード位置を一時記憶しておくとともに、交付対象薬剤が薬剤交付台16の上に持ち込まれたと判定するようになっている。
【0032】
また、判定手段31は、一時記憶しているコード値に係るコード位置について、その変化を監視しており、そのコード位置の変化が例えば十cmを超えたときや、コード位置が仕切17の位置を越えて変化したとき等には、交付行為が有ったと判定するが、それ以外のときには交付行為が有ったとの判定を出さないようになっている。
さらに、判定手段31は、一時記憶しているコード値に係る完全読取と一部読取との変化に基づいて交付時の指差行為の有無を判別するようになっている。具体的には、完全に読み取れていたカラービットコードが一部しか読み取れなくなったときには、カラービットコードの上に指が置かれたためカラービットコードの一部が指に隠れて読み取れなくなったものと解して、交付時の指差行為が有ったと判定するようになっている。そのカラービットコードが完全に読み取れる状態に戻ったときにも交付時の指差行為が有ったとの判定を出すか出さないかはオプション設定で選択できるようになっている。
【0033】
また、判定手段31は、一時記憶しているコード値に係る読取手段32からの取得可否の変化に基づいて交付行為の前後の手掛行為の有無と交付対象薬剤の持ち去りとを判別するようになっている。具体的には、例えばカラービットコード10aが一つしか読み取れない場合(図1(b)の左側部分を参照)、交付行為が有ったとの判定を出す前にそのカラービットコードが完全に読み取れなくなったときには、手掛行為が有ったと判定し、交付行為が有ったとの判定を出した後にそのカラービットコードが完全に読み取れなくなったときには、交付対象薬剤が薬剤交付台16の上から持ち去られたと判定するようになっている。これに対し、複数・多数のカラービットコード10aが読み取れた場合(図1(b)の右側部分を参照)、それらが全数完全に読み取れなくなったときには交付対象薬剤が薬剤交付台16の上から持ち去られたと判定し、それらのカラービットコードのうち何れかが完全読取可能な状態で他の何れかが完全に読み取れなくなったときには、手掛行為が有ったと判定するようになっている。
【0034】
第2選出手段33は、交付対象薬剤が薬剤交付台16の上に持ち込まれたとの判定が判定手段31によってなされてその判定結果を判定手段31から受け取ったときと、交付対象薬剤が交付されたとの判定が判定手段31によってなされてその判定結果を判定手段31から受け取ったときと、手掛行為が有ったとの判定が判定手段31によってなされてその判定結果を判定手段31から受け取ったときと、指差行為が有ったとの判定が判定手段31によってなされてその判定結果を判定手段31から受け取ったときと、交付対象薬剤が薬剤交付台16の上から持ち去られたとの判定が判定手段31によってなされてその判定結果を判定手段31から受け取ったときには、何れも、そのときに両撮影画像データ41,42に保持されている撮影画像を記録対象画像に選出して、その選出画像のデータを録画装置25に追加記録する処理を記録手段36に依頼するようになっている。
【0035】
記録手段36は、第1選出手段35によって記録対象画像が選出されたときに加えて、第2選出手段33によって記録対象画像が選出されたときにも、そのときに両撮影画像データ41,42に保持されている画像データを録画装置25に送って追加記録させるものであり、その際、その撮影画像データ41の撮影画像については、例えばGIFやJPEGの規格で圧縮したものを録画し、撮影画像データ42については、例えばJPEGやMPEGの規格で圧縮したものを録画するようになっている。また、録画装置25に蓄積した画像データを後で確認するときに、日時や患者名などでデータ検索することができるよう、撮影画像にタイムスタンプ(時刻情報)やコード値を付すようにもなっている。
【0036】
残置薬発生記録データ43は、患者を特定する情報とその患者に係る残置薬発生有無の情報とを対応付けて保持している。患者を特定する情報は、上述したカラービットコード10bと同じ患者識別用の患者コードが典型例であるが、上述したカラービットコード10aと同じ薬袋コードやもっと馴染みの深い処方箋番号などでも、適宜なデータベースの検索やホストへの問い合わせ等にて、患者を特定できるものであれば良い。残置薬発生有無の情報は、対応する患者が過去に交付された薬剤を受け取るのを忘れたり受け取った薬剤を薬局内や帰宅途中に置き忘れたことが有るか否かが分かるものであれば良い。このような残置薬発生記録データ43は、画像処理装置30に常駐させても良いが、常駐している必要はなく、必要に応じて上位の管理装置等からダウンロードされるものでも良い。
【0037】
確認手段37は、判定手段31が交付対象薬剤に係るコード値であると判定したコード値を判定手段31から受けて、そのコード値を残置薬発生記録データ43と照合し、そのコード値が直接的であれ間接的であれ患者を特定することができるものであれば、そのコード値が残置薬発生経験を持つ患者に係るものであるか否かを調べ、ひいてはそのときの交付対象患者が残置薬発生経験を持つ患者であるか否かを確認するようになっている。
頻録手段34は、交付対象患者が残置薬発生経験者であると確認手段37によって確認されたときには、第1選出手段35に指示して、両撮影画像データ41,42からの記録対象画像選出の時間間隔を例えば2分の1や3分の1に短縮させるようになっている。また、交付対象薬剤が薬剤交付台16の上から持ち去られたとの判定を判定手段31から受けたときには、記録対象画像選出の時間間隔を元に戻させるようにもなっている。
【0038】
発報手段38は、交付対象患者が残置薬発生経験者であると確認手段37によって確認されたときには、残置薬発生防止用の注意を促す警報として、暫くの間、あるいは交付対象薬剤が持ち去られるまでの間、表示装置23に残置薬発生履歴を表示させたり、音響装置24に既定のメロディー音を出させたりするようになっている。また、残置薬が未だ残存しているような場合は、その対処を患者に加えて医師等にも促すようになっている。
なお、図示や詳細な説明は割愛するが、処方オーダリングシステムや医事会計コンピュータさらには調剤機器などと交信して、上述した残置薬発生記録データ43やその他の必要なデータを取得するとともに、録画装置25に蓄積した録画データを検索して表示装置23の画面に表示したり他の装置へ転送したりするようにもなっている。
【0039】
この実施例1の薬剤交付支援装置20について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図2〜図6は、薬剤交付時の薬剤交付台上の状況説明図である。
ここでは、交付対象薬剤を収めた薬袋10を交付実行担当者4が交付対象患者7に交付する状況を説明する。引換券11や,薬剤説明書12,お薬手帳13については、繰り返しとなるので、説明を割愛するが、それらについても概ね同様である。
【0040】
薬剤交付台16の上面は常に撮像装置21,22によって撮られているが、薬剤交付台16の上に、薬袋10が無く、他のカラービットコード印刷物も無ければ、読取手段32の出力も判定手段31の判定も第2選出手段33の選択も記録手段36を起動させることが無くて、記録手段36が第1選出手段35だけによって起動されるので、1秒や数秒といった比較的ゆったりした時間間隔で撮影画像データ41,42が録画装置25に録画される。これにより、録画データが蓄積されるが、録画のなされる時間間隔が空いているので、録画データ量は少なめに抑えられることとなる。しかも、録画の時間間隔がその程度であれば、録画を間引いて行っても、録画と録画の合間に薬剤交付の作業を終えることは不可能なので、薬剤交付が無かったことを後日確認するのには、不都合がない。
【0041】
そして、薬剤交付が始まると、先ず(図2参照)、交付実行担当者4が薬袋10を薬剤交付台16の上面のうち交付実行担当者4側のところに置くが、その際には、患者名等の確認のため、患者名の文字列と共に薬袋識別用のカラービットコード10aや患者識別用のカラービットコード10bが印刷された表面を上にして薬袋10が薬剤交付台16の上に置かれる。すると、薬剤交付支援装置20では、自動で、薬袋10が撮像装置21によって撮られ、それに付されたカラービットコード10a,10bが読取手段32によって読み取られ、それが完全読取であるとの判定が判定手段31によって出され、その判定結果に応じた第2選出手段33の選択によって記録手段36が起動されるので、撮影画像データ41,42が録画装置25に録画される。これにより、薬剤交付開始時に録画が追加で実行される。なお、残置薬の確認も行われるが、これについては後述する。
【0042】
それから(図3参照)、交付実行担当者4が交付対象患者7を確認するために薬袋10に印刷されている患者名を読み上げるといったことが行われるが、その際には、しばしば、交付実行担当者4が薬袋10の患者名の文字列を指先で示したりそれに指を乗せたりといった指差行為が行われる。すると、薬剤交付支援装置20では、カラービットコード10a,10bの一部だけが読取手段32によって読み取られる状態になり、そのように完全読取から一部読取に状態遷移したときにも、判定手段31の判定と第2選出手段33の選択によって記録手段36が起動されて、撮影画像データ41,42が録画装置25に録画される。これにより、指差行為時にも録画が追加で実行される。
【0043】
交付対象患者7の確認後、交付実行担当者4は薬剤交付の本格実行のため、薬袋10に手を掛けるが(図4参照)、その際、カラービットコード10a,10bの総て又は何れかについてはコード全体が手で覆い隠されてしまうことが多い。そうすると、薬剤交付支援装置20では、読み取れていた該当カラービットコードが移動する前に完全に読み取れなくなるので、その読取状態遷移に応じて撮影画像データ41,42が録画装置25に録画される。これにより、薬袋移動前の手掛行為時にも録画が追加で実行される。
【0044】
そして、交付実行担当者4が薬袋10を手で押して動かすと(図5参照)、薬袋10が薬剤交付台16上で交付実行担当者4側から仕切17を横切って交付対象患者7側へ移動する。すると、薬剤交付支援装置20では、カラービットコード10aの移動が検出され、その移動の程度等に応じて適宜なタイミングで、具体的には仕切越えや所定距離移動の度に、撮影画像データ41,42が録画装置25に録画される。これにより、交付行為の実体の薬袋移動時には移動軌跡確認可能な細やかさで録画が追加実行される。
【0045】
それから、交付対象患者7が薬剤交付台16の上から薬袋10を持ち去ると(図示せず)、薬剤交付支援装置20では、それまで読み取れていたカラービットコードが全く読み取れなくなるので、その読取状態遷移に応じて撮影画像データ41,42が録画装置25に録画される。これにより、薬剤交付終了時にも録画が追加で実行される。
こうして、薬剤交付支援装置20を設置した薬剤交付窓口では、薬剤交付の行われていないときには、不都合のない範囲で間引録画が行われて、記録データ量が抑制される一方、薬剤交付が行われたときには、薬剤交付開始時も指差行為時も手掛行為時も薬袋移動時も薬剤交付終了時も録画が追加実行されるので、交付状況の後日確認が可能である。
【0046】
また、上述した薬剤交付に際し、薬剤交付支援装置20では確認手段37による残置薬の確認も随時行われる。すなわち、薬袋10が薬剤交付台16の上に有って、そのカラービットコード10a,10bが撮像装置21によって撮られ、そのコード値が交付対象薬剤に係るものであると判定手段31によって判定されると、確認手段37によって、そのコード値が残置薬発生記録データ43と照合され、そのコード値が残置薬発生経験を持つ患者に係るものであるか否かが調べられて、そのときの交付対象患者が残置薬発生経験を持つ患者であるか否かが確認される。
【0047】
そして、それによってそのときの交付対象患者が残置薬発生経験を持つ患者であることが判明すると、発報手段38によって、残置薬発生履歴が表示装置23に表示され、警報音が音響装置24から流されるので、交付実行担当者4は残置薬発生防止のための注意を促される。さらに、それに加え、頻録手段34から第1選出手段35へ時短指示が出され、それによって撮影画像データ41,42からの記録対象画像選出の時間間隔が短縮されるので、時間経過に応じた録画がきめ細かく行われる。この記録対象画像選出の時間間隔の短縮は、交付対象薬剤が薬剤交付台16の上から持ち去られたとの判定が判定手段31によって出されるまで継続されるので、残置薬発生経験者については後日確認の精度が高まることとなる。
【0048】
[その他]
上記実施例で、第1選出手段35は、それの記録対象画像選出を第2選出手段33の記録対象画像選出と関係無く単に時間経過だけに応じて行うようになっていたが、第2選出手段33の記録対象画像選出があったときには経過時間の計測値をリセットしてそのときから時間経過の計測を遣り直すようにしても良い。
上記実施例では、表示装置23や音響装置24の利用が発報だけであったが、表示装置23や音響装置24は、発報利用に限られる訳でなく、作業案内の表示や患者名の音声読上など他の作業支援にも利用することができる。
上記実施例では、カラービットコードが撮影対象物に直接印刷にて付されていたが、カラービットコードは間接的に付されても良い。例えば、先にカラービットコードをシールに印刷しておいて、後でそのシールを撮影対象物に貼り付けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0049】
4…交付実行担当者、7…交付対象患者、
10…薬袋(薬剤)、10a,10b…カラービットコード、
11…引換券、11a…カラービットコード、
12…薬剤説明書、12a…カラービットコード、
13…お薬手帳、13a…カラービットコード、
16…薬剤交付台、17…仕切、
20…薬剤交付支援装置、21,22…撮像装置、
23…表示装置、24…音響装置、25…録画装置、
30…画像処理装置、31…判定手段、32…読取手段、
33…第2選出手段、34…頻録手段、35…第1選出手段、
36…記録手段、37…確認手段、38…発報手段、
41,42…撮影画像データ、43…残置薬発生記録データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤交付台の上面を次々に撮るカラーの撮像装置と、それらの撮影画像から記録対象の画像を選出する画像処理装置と、その選出画像を記録する録画装置とを備えた薬剤交付支援装置であって、前記画像処理装置が、前記撮影画像からの記録対象画像選出を時間経過に応じて行う第1選出手段と、前記撮影画像からカラービットコードを検出してコード値およびコード位置を読み取る読取手段と、前記コード値が交付対象薬剤に係るものであるか否かを調べるとともに前記コード位置の変化に基づいて交付行為の有無を判別する判定手段と、それで交付対象薬剤が交付されたと判定されたときに前記撮影画像からの記録対象画像選出を行う第2選出手段とを具備していことを特徴とする薬剤交付支援装置。
【請求項2】
前記判定手段が、前記コード値に係る前記読取手段からの取得可否の変化に基づいて交付行為の前後の手掛行為の有無を判別するものであり、前記第2選出手段が、前記判定手段から手掛行為有りの判定結果を受けたときに前記撮影画像からの記録対象画像選出を行うものであることを特徴とする請求項1記載の薬剤交付支援装置。
【請求項3】
前記読取手段が、完全に読み取れたカラービットコードに加えて一部しか読み取れなかったカラービットコードについても読取結果を出すものであり、前記判定手段が、前記コード値に係る完全読取と一部読取との変化に基づいて交付時の指差行為の有無を判別するものであり、前記第2選出手段が、前記判定手段から指差し有りの判定結果を受けたときに前記撮影画像からの記録対象画像選出を行うものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された薬剤交付支援装置。
【請求項4】
患者を特定する情報とその患者に係る残置薬発生有無の情報とを保持する残置薬発生記録データと、その残置薬発生記録データと前記コード値とを照合して前記コード値が残置薬発生経験を持つ患者に係るものであるか否かを調べる確認手段と、それで交付対象患者が残置薬発生経験者であると確認されたとき前記第1選出手段に前記撮影画像からの記録対象画像選出の時間間隔を短縮させる頻録手段とを具備したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載された薬剤交付支援装置。
【請求項5】
患者を特定する情報とその患者に係る残置薬発生有無の情報とを保持する残置薬発生記録データと、その残置薬発生記録データと前記コード値とを照合して前記コード値が残置薬発生経験を持つ患者に係るものであるか否かを調べる確認手段と、それで交付対象患者が残置薬発生経験者であると確認されたときに注意を促す警報を発する発報手段とを具備したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載された薬剤交付支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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