説明

薬剤手撒き装置

【課題】何回か先の分まで予め撒いておけるうえ、薬剤毎の範囲が一目瞭然で容易かつ的確に各種薬剤を手撒きでき、剤種毎に分けて撒けば後の薬剤も一目瞭然で確認でき、さらに、手撒き範囲の外に誤って撒かれてしまった薬剤は移し替えられないで留まり続けるような薬剤手撒き装置を実現する。
【解決手段】多数の区画室21の形成されている予備撒きカセット20を出し入れ可能な枠体44の上面部分の手撒部47に薬剤投入用の区画貫通孔48を多数形成し、各々に開閉部材51と駆動源52を内装して個々に作動させる。区画貫通孔48に点灯部材49も付設して手撒き範囲だけ点灯させるとともに、区画貫通孔48から予備撒きカセット20へ薬剤を移し替えるときには手撒き範囲の開閉部材51だけ開閉させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動の薬剤排出に備えて予め多数の区画室に薬剤を人手で撒いておく薬剤手撒き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤分包機に組み込んだ形で薬剤手撒き装置が実用化されており(例えば特許文献1,2参照)、そのような薬剤手撒き装置では予備撒きカセットが薬剤分包機の筐体から引き出し可能に設けられ、予備撒きカセットには多数の区画室が縦横に並べて形成され、区画室(マス)は、上面が薬剤投入のため解放され、下面・底面が薬剤排出のためシャッタ等の底板で出来ていて開閉するようになっている。また、薬剤投入は手撒きでも、薬剤排出は自動で行えるよう、薬剤分包機の筐体内には、押し込まれた予備撒きカセットの下方のところに、区画室から排出された薬剤を受け取って1室分ずつ包装機へ送り込む作動部材(コンベア)が、設けられている。そして、予備撒きカセットの各区画室内の薬剤が作動部材の対応する各区画室に一括して移し替えられるよう、予備撒きカセットの底板は例えばシャッタレバーの一操作に応じて全区画室に亘り一括で開閉するようになっており、予備撒きカセットにはモータ等の駆動源が搭載されていない。
【0003】
さらに、それらの薬剤手撒き装置は区画室の個数(マス数)や薬剤の名称(薬品名)を表示するようにもなっている。マス数の表示は(例えば特許文献1参照)、手撒きすべき包装数を間違いないようにする作業者の精神的な負担を軽減するためであり、2桁のLEDで区画室の個数を表示したり、縦の区画室の個数と横の区画室の個数を表示したり、区画室に一個ずつ配置したLEDの発光により区画室の位置を表示したり、区画室の周囲に配置したLEDの発光により表示することによって、使用する区画室の個数を手撒き作業者に指示するようになっている。マス数の表示に加えて二度撒きの表示まで行うようにもなっている。また、薬品名の表示は(例えば特許文献2参照)、プリンタでの印字によって、手撒き処方の照合No.と一緒に行われるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平3−240604号公報
【特許文献2】特開平3−240603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の薬剤手撒き装置では、総てが薬剤分包機に組み込まれているので、先行して手撒きできるのは、せいぜい次回の分までであり、それ以上は否応なく待たされてしまう。
そこで、何回か先の分まで予め撒いておける薬剤手撒き装置を実現することが第1技術課題となる。
また、手撒き処方に複数・多数の薬剤が含まれている場合に、剤種毎に分けて撒いても、それらが予備撒きカセットの区画室の中で混ざってしまうため、後から撒いた薬剤は目視確認し辛かった。
そこで、剤種毎に分けて撒けば後の薬剤も一目瞭然で確認しうる薬剤手撒き装置を実現することが第2技術課題となる。
【0006】
さらに、上述した従来の薬剤手撒き装置では、手撒き済み薬剤の移し替えが一括で行われることから、手撒き済みの薬剤が正しく薬剤の手撒き範囲に収まっていようと或いは誤って薬剤の手撒き範囲から外れていようと何れも移し替えられるので、それに起因して不都合な事態が発生するのを防止するために、手撒き作業者は注意深く作業することが求められる。そのため、精神的な負担が重い。
そこで、手撒き範囲の外に誤って撒かれてしまった薬剤は移し替えられないで留まり続けるような薬剤手撒き装置を実現することが第3技術課題となる。
【0007】
また、上述した従来の薬剤手撒き装置では、手撒き処方に複数・多数の薬剤が含まれている場合に剤種によって撒くべき区画室の範囲が異なるとき、例えば一部にしか撒かない薬剤については、元の処方箋を参照する等のことにより、手撒き作業者が判断しなければならないことがある。
そこで、薬剤毎の範囲が一目瞭然で容易かつ的確に各種薬剤を手撒きできる薬剤手撒き装置を実現することが第4技術課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の薬剤手撒き装置は(解決手段1)、上述した第1,第2技術課題を共に解決するとともに第3技術課題の解決に資するべく創案されたものであり、多数の区画室の形成されている予備撒きカセットを前面等より出し入れ可能な枠体と、この枠体の上面部分に組み込まれた部材からなり又は前記枠体の上面を開閉する蓋体からなり前記予備撒きカセットの区画室配置に対応した配置で多数の区画貫通孔が貫通形成されている手撒部と、前記区画貫通孔それぞれに内装された多数の開閉部材と、それらの開閉部材を個々に作動させる開閉駆動手段とを備えている。
【0009】
また、本発明の薬剤手撒き装置は(解決手段2)、上述した第1〜第3技術課題を総て解決するために創案されたものであり、具体的には、上記解決手段1の薬剤手撒き装置であって、手撒き処方の対象となる薬品の選択を受理するとともに前記手撒部から下方へ手撒き済み薬剤を移し替えるとき前記開閉部材のうち選択薬剤の手撒き範囲に属するものだけを開閉させる制御部を備えている。
【0010】
さらに、本発明の薬剤手撒き装置は(解決手段3)、上述した第1〜第4技術課題を総て解決するために創案されたものであり、具体的には、上記解決手段2の薬剤手撒き装置であって、前記区画貫通孔それぞれに対応付けて点灯部材が配設され、前記制御部が前記手撒部への薬剤の手撒きを促すとき前記点灯部材のうち選択薬剤の手撒き範囲に属するものを点灯させるようになっている、というものである。
【0011】
また、本発明の薬剤手撒き装置は(解決手段4)、上述した第1,第2,第4技術課題を何れも解決するとともに第3技術課題の解決に資する構成部分を特定したものであり、具体的には、上記解決手段1の薬剤手撒き装置であって、前記区画貫通孔それぞれに対応付けて配置された多数の点灯部材と、手撒き処方の対象となる薬品の選択を受理するとともに前記点灯部材のうち選択薬剤の手撒き範囲に属するものを点灯させる制御部とを備えている、というものである。
【0012】
また、本発明の薬剤手撒き装置は(解決手段5)、上述した第4技術課題を高水準に解決するために創案されたものであり、具体的には、上記解決手段3,4の薬剤手撒き装置であって、手撒き処方の薬品名を表示する画面表示部が設けられ、前記制御部が前記画面表示部の表示に基づく選択を手撒き処方の対象となる薬品の選択として受理するようになっている、というものである。
【0013】
また、本発明の薬剤手撒き装置は(解決手段6)、上述した第3技術課題の解決に大きく資するべく創案されたものであり、具体的には、上記解決手段1〜5の薬剤手撒き装置であって、前記開閉駆動手段が前記区画貫通孔それぞれに対応して分散設置された駆動源を具えている、というものである。
【発明の効果】
【0014】
このような本発明の薬剤手撒き装置にあっては(解決手段1)、予備撒きカセットが本体部から分離されて着脱式になったので、本体部より多数の予備撒きカセットを準備すれば、その個数の分だけ先行して手撒きしておくことが可能になるので、第1技術課題が解決される。
また、本体部の主要部である枠体の上面部分をなす手撒部に多数の区画貫通孔が貫通形成され、その区画貫通孔が予備撒きカセットの区画室配置に対応して配置されているので、予備撒きカセットを枠体に入れておけば、手撒部の区画貫通孔を介して予備撒きカセットの区画室に薬剤を投入することができる。しかも、区画貫通孔にはそれぞれ開閉部材が内装されており、その開閉部材が開閉駆動手段によって個々に作動させられるようになっている。
【0015】
そのため、手撒部から予備撒きカセットへの移し替えが薬剤の剤種ごとに行える。そして、剤種毎に分けて撒き次の薬剤を撒く前に先の薬剤を移し替えることにより、後の薬剤も混じることなく一目瞭然で確認されるようになるので、第2技術課題が解決される。
さらに、次に述べるように、解決手段2の制御部を組み合わせることで、手撒き範囲の外に誤って撒かれてしまった薬剤は移し替えられないで留まり続けるような薬剤手撒き装置になるので、第3技術課題の解決にも資するものである。
【0016】
また、本発明の薬剤手撒き装置にあっては(解決手段2)、解決手段1が踏襲されているのに加えて、その開閉部材の動作制御を担う制御部が選択的な移し替えを行えるよう機能拡張されている。すなわち、作業者が手撒き処方の対象となる薬品を選択すると、それが制御部によって受理されて、選択薬剤の手撒き範囲が処方箋データ等に基づいて把握される。それから、その選択薬剤を作業者が手撒部の適宜な区画貫通孔に投入して手撒きし、その手撒き済み薬剤を手撒部から下方の予備撒きカセットへ移し替える処理を制御部に委ねると、制御部の制御によって、開閉部材のうち選択薬剤の手撒き範囲に属するものだけが開閉する。そのため、手撒き範囲に正しく撒かれた薬剤は予備撒きカセットに移し替えられるが、手撒き範囲の外に誤って撒かれてしまった薬剤は移し替えられないで手撒部に留まり続ける。したがって、この発明によれば、第1〜第3技術課題が解決される。
【0017】
さらに、本発明の薬剤手撒き装置にあっては(解決手段3)、解決手段2が踏襲されたうえで点灯部材に係る機能拡張が加わっている。すなわち、枠体に予備撒きカセットを入れると、予備撒きカセットの区画室それぞれに手撒部の区画貫通孔ばかりか点灯部材も対応付けられる。また、作業者が手撒き処方の対象となる薬品を選択すると、それが制御部によって受理されて、選択薬剤の手撒き範囲が処方箋データ等に基づいて把握され、更に、その薬剤の手撒き範囲が区画室毎の点灯によって明示される。そのため、予備撒きカセットが着脱式になっていても不都合なく、それに対する手撒き範囲が薬剤毎に一目瞭然で示される。したがって、この発明によれば、第1〜第4技術課題が解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施形態1の薬剤手撒き装置は、上述した第4技術課題を高水準に解決するために創案されたものであり、具体的には、上記解決手段3〜6の薬剤手撒き装置であって、前記点灯部材がそれぞれ点灯数や色分け等にて個数を表示しうるようになっている、というものである。
【0019】
このような本発明の薬剤手撒き装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜2により説明する。
図1〜4に示した実施例1は、上述した解決手段1〜6(出願当初の請求項1〜6)を具現化したもの(出願当初の請求項1〜6)であり、図5に示した実施例2は、上記の実施形態1を具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具,ヒンジ等の連結具,モータドライバ等の電気回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0020】
本発明の薬剤手撒き装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、薬剤手撒き装置の機械的な構造を示し、(a)が組込形30と据置形40とを設置した薬剤分包システムの概要正面図、(b)が予備撒きカセット20と薬剤手撒き装置40(30)の斜視図、(c)が薬剤手撒き装置40の本体部43の枠体44の手撒部47の区画貫通孔48の斜視図、(d)及び(e)が区画貫通孔48の縦断面図である。そのうち(d)は閉状態を示し(e)は開状態を示している。また、図2は、薬剤手撒き装置の機能等を示し、(a)が電子回路のブロック図、(b)が制御の概要フローチャートである。
【0021】
ここで例示する調剤システムには(図1(a)参照)組込形の薬剤手撒き装置30と据置形の薬剤手撒き装置40とが採用されていて、何れもホストコンピュータ等から処方情報(調剤指示データ)を受信するようになっているが、薬剤手撒き装置30は従来例と同じく薬剤分包機10に組み込まれているのに対し、薬剤手撒き装置40は作業台9の上に単独で置かれている。例えば錠剤分包機や錠剤散薬混合分包機である薬剤分包機10の筐体の内部には、薬剤の自動排出と自動分包のため、各種の薬剤を収容していて必要に応じて逐次排出する多数の薬剤フィーダ11と、排出されて落下した薬剤を収集する薬剤収集機構12と、収集された薬剤を分包紙に区分封入する包装機13と、薬剤手撒き装置30から排出された薬剤を受け取って1室分ずつ薬剤収集機構12経由で包装機13へ送り込む作動部材14とが、設けられている。作動部材14は、例えば送り方向の異なるコンベアを組み合わせる等のことで構成され(例えば特許文献1,2参照)、薬剤手撒き装置30の下方に配置されている。
【0022】
薬剤手撒き装置30は(図1(a)参照)、予備撒きカセット20を着脱しうる本体部33と、画面表示部および操作部としてのタッチパネル31と、制御部としてのコントローラ32とを具えたものであり、本体部33は、薬剤分包機10に引出レール等を介在させて装着され、薬剤分包機10の筐体から引き出したり筐体内に押し込んで格納したりでき、押し込んだとき作動部材14の上方に位置するようになっている。コントローラ32は薬剤分包機10の筐体の中に設けられ、タッチパネル31は薬剤分包機10の筐体の前面に設けられている。
【0023】
薬剤手撒き装置40も、予備撒きカセット20を着脱しうる本体部43と、画面表示部および操作部としてのタッチパネル41と、制御部としてのコントローラ42とを具えたものであるが、それらが机上等に置けるようになっている。
両装置30,40は、組込形か据置形かに係る相違を除けば、同じで良い。例えば、組込形の薬剤手撒き装置30の本体部33はコンパクト実装を重視して成る可く薄い平板状に纏められるのに対し、据置形の薬剤手撒き装置40の本体部43は手撒きによる薬剤投入の作業性を重視して上面部分を傾斜させたりするが、本質的な相違ではない。
【0024】
予備撒きカセット20は(図1(b)の左側部分を参照)、薬剤手撒き装置30,40の何れからも分離されて何れにも着脱しうるようになっており、多数の区画室21が例えば6行11列のマトリクス状に仕切られて形成されている。区画室21は、何れも、薬剤投入のため上面が解放され、薬剤排出のため下面・底面がシャッタ等で出来ていて例えば作動部材14の作用により全室一括で又は各室毎に開閉するようになっている。区画室21に手撒きした薬剤を確認する等のため、予備撒きカセット20には情報担体22が付設されている。情報担体22は、例えば、手撒き処方の識別番号を記したバーコードラベルや、手撒き処方の内容を記憶保持するデータキャリアなどである。
【0025】
薬剤手撒き装置40の本体部43は(図1(b)の右側部分を参照)、薬剤手撒き装置30の本体部33も同様であるが、予備撒きカセット20を出し入れ可能な箱状の枠体44を主体にしており、この例では別体のコントローラ42とケーブル接続されている。
枠体44は、予備撒きカセット20がスッポリ納まるカセット格納空間45を囲むものであるが、予備撒きカセット20を出し入れできるよう前面が大きく解放され、カセット格納空間45に納めた予備撒きカセット20を支えるため下面が閉じるか下面解放が予備撒きカセット20の外寸より小さくなっている。枠体44では下面解放が任意であるが、薬剤手撒き装置30の本体部33の枠体では、下面解放が必須である。枠体44のうち、予備撒きカセット20を枠体44に格納したとき情報担体22と対峙するところには、情報担体22にアクセスする情報読書器46が付設されている。情報読書器46は、例えば、バーコードリーダ及び/又はバーコードライタや、データアクセス装置などである。
【0026】
手撒部47は(図1(b)の右側部分を参照)、枠体44の上面の大部分を占める板状体からなり、この例では枠体44の斜面に嵌め込み固定されている。この手撒部47には、予備撒きカセット20の区画室21の配置と同じ配置で、多数の区画貫通孔48が多数貫通形成されている。区画貫通孔48は手撒き時に薬剤の投入口となるものなので、枠体44のカセット格納空間45に予備撒きカセット20を格納すると、それぞれの区画貫通孔48の下に区画室21が一つずつ位置するようになっている。そのような手撒部47には多数の点灯部材49と開閉手段50〜53が付設されており、区画貫通孔48それぞれに点灯部材49と開閉手段50〜53が内装されている(図1(c)参照)。
【0027】
点灯部材49は、個々に点灯しうる例えばLED(発光ダイオード)からなり、それぞれの区画貫通孔48と一対一で対応付けて配置されている。この例では(図1(c),(d)参照)、それぞれの点灯部材49が視認し易いよう区画貫通孔48の内壁面のうち奥側のところに取り付けられているが、投入薬剤が点灯部材49に当たって何れかが損傷したり投入薬剤の落下が妨げられたりしないよう、点灯部材49が斜板50の裏に隠れている。点灯部材49が隠れていても、斜板50が透明か半透明なので、点灯部材49の点灯状態は明瞭に視認することができる。斜板50に光拡散性(散乱性)も持たせると、点灯部材49の点灯時に斜板50の全体が光るので、更に視認性の良いものとなる。
【0028】
開閉手段50〜53は(図1(c)参照)、斜板50の直下で揺動可能に支持されたシャッタ板などの開閉部材51と、その下側でやはり斜板50の下方に設置されたモータ等の駆動源52と、そのモータの回転出力軸に装着された片持ち梁のような支承部材53とからなり、駆動源52を作動させて支承部材53を手前側(図1(d)では左側)に向けると開閉部材51がほぼ水平に持ち上げられて区画貫通孔48の途中を閉め、駆動源52を逆向きに作動させて支承部材53を奥側(図1(e)では右側)に戻すと開閉部材51が降りながら後退して区画貫通孔48を開けるようになっている。また、開閉部材51を個々に作動させることも一括して作動させることも可能なよう、駆動源52をコントローラ42にて独立制御するようになっている。
【0029】
タッチパネル41は(図1(b)参照)、例えば液晶パネルに入力ユニットを付設した汎用品で良く、画面表示部として手撒き処方の薬品名や錠数を表示することができるとともに、操作部として表示薬品名の指差し選択もできるようになっている。
コントローラ42は(図1(b)参照)、例えばプログラム可能なマイクロプロセッサシステムからなり、制御部として、ホストコンピュータ等から受信した手撒き処方の内容を具体的には薬品名や錠数などをタッチパネル41に表示させるとともに、その薬品名の表示箇所に対するタッチパネル41上での選択操作を入力するようになっている。また(図2(a)参照)、例えば下位のマイクロプロセッサ(MPU)や列ドライバ及び行ドライバに時分割方式のダイナミック駆動を行わせることで、多数の点灯部材49のうち所望のものだけ点灯させるようになっている。
【0030】
その点灯は、手撒き処方に基づいて手撒き範囲の全域に行わせることも、薬品名の選択に応じて選択薬剤の手撒き範囲に属するものだけを行わせることも可能である。そのため、コントローラ42のプログラムは(図2(b)参照)、次のようになっている。すなわち、例えばホストコンピュータから処方箋データを受信したら、薬剤分包機10に薬剤の実装・非実装状態を問い合わせたりして手撒き処方を確定し(ステップS1)、その手撒き処方の内容をタッチパネル41の画面に表示させるとともに手撒き範囲に属する点灯部材49を点灯させる(ステップS2)。そのとき、手撒き処方に含まれている薬剤それぞれについて薬品名と錠数を画面表示し、点灯部材49は、各薬剤の手撒き範囲を併せた手撒き範囲の全域で点灯させ、他では消灯させるようになっている。
【0031】
それから、タッチパネル41の操作等による指示を待ち(ステップS3)、薬剤が選択されたら(ステップS4)、その薬剤の薬品名をタッチパネル41で例えば反転表示にて強調表示させるとともに、その選択された薬剤の手撒き範囲だけに限定して点灯部材49を点灯させて、指示待ちに戻る(ステップS3)。なお、指示待ちで再表示が指示されたときには、再び手撒き範囲の全域で点灯部材49を点灯させるようになっている。
また、指示待ちで(ステップS3)、移し替えが指示されたら(ステップS5)、点灯部材49を点灯させている区画貫通孔48のところの駆動源52を作動させて、そこの開閉部材51を開閉させることにより、薬剤が選択されていればその選択薬剤の手撒き範囲に属する開閉部材51だけを開閉させるようになっている。この例では、その後、点灯部材49を消灯させるようにもなっている。
【0032】
さらに、指示待ちで(ステップS3)、終了が指示されたら(ステップS6)、手撒き処方に含まれている薬剤の選択が総て完了したか否かを調べるようになっている。そして、完了していなければ(ステップS6「NG」)、アラームを発して(ステップS7)、本当に終了して良いのかを手撒き作業者に確認し(ステップS8)、続行指示のときには終了せずに指示待ちに戻る(ステップS3)。これに対し、終了指示が与えられたときや(ステップS8「終了」)、薬剤の選択が総て完了していたときには(ステップS6「OK」)、手撒き処方の識別番号および/又は内容を情報担体22に転送させるようになっている(ステップS9)。
【0033】
この実施例1の薬剤手撒き装置30,40について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図1(a)は、薬剤手撒き装置30を組み込んだ薬剤分包機10と据置形の薬剤手撒き装置40とを用いて薬剤を先行手撒きしている状況を示し、図1(b)は予備撒きカセット20を薬剤手撒き装置40に入れようとしているところを示している。また、図3(a)〜(d)及び図4(a)〜(d)は、何れも、手撒部47における点灯部材49による点灯表示とタッチパネル41による画面表示の例である。
先ず幾つかの手撒き処方を先行処理する状況を概説し(図1(a)参照)、次に複数・多数の薬剤が含まれている手撒き処方の処理について詳述する(図1(b),図3,図4参照)。
【0034】
先ず(図1(a)参照)、薬剤フィーダ11に各種薬剤が補充されて薬剤分包機10が自動調剤を行えるようになっており、薬剤フィーダ11に収容されていない薬剤を含む処方箋が幾つかホストコンピュータにエントリされたとする。それらの処方箋はホストコンピュータから薬剤分包機10に送信されるが、薬剤フィーダ11に収容されていない薬剤に係る部分は、ホストコンピュータか薬剤分包機10によって、手撒き処方として抽出され、薬剤手撒き装置40にも送信される。そのため薬剤手撒き作業は薬剤手撒き装置30,40の何れでも行えるが、重複作業の回避のため一方で手撒き処方の処理が始まると他方では該当する手撒き処方が破棄される。
【0035】
典型的な作業手順では、一番目の手撒き処方に基づく薬剤手撒き作業を薬剤分包機10の薬剤手撒き装置30で行い、その薬剤が総て作動部材14等に引き渡されたら二番目の手撒き処方に基づく薬剤手撒き作業も薬剤手撒き装置30で行い、それらの薬剤を含む処方箋に係る薬剤分包機10での自動調剤が完了するまでは薬剤手撒き装置30が塞がっているので、三番目以降の手撒き処方に基づく薬剤手撒き作業は薬剤手撒き装置40で行う。薬剤手撒き装置40で手撒きするときには必ず手撒き処方ごとに予備撒きカセット20が取り替えられ、先行して薬剤手撒きの済んだ予備撒きカセット20は例えば作業台9の棚部など適宜なところに保管されて薬剤分包機10への装着を待つ。
【0036】
そして、薬剤分包機10によって次の薬剤手撒き作業が要求されると、それに応じて作業者は、使用済み予備撒きカセット20を薬剤手撒き装置30から外して、薬剤手撒き済み予備撒きカセット20を薬剤手撒き装置30に付け替える。そのとき情報担体22を利用して処方の突き合わせチェックが行われ、一致していれば直ちに、不一致であれば薬剤分包機10で処方箋の処理順の入れ替えが行われた後(例えば特許文献2参照)、薬剤分包機10で自動調剤が実行される。
こうして、手撒き処方が多数あったときでも、それらの分を先行して手撒きすることができるので、薬剤分包機10をほとんど待たせることがない。
【0037】
次に(図1(b),図3,図4参照)、上述した薬剤手撒き作業の何れかにおいて、手撒き処方に複数・多数の薬剤が含まれていたとする。これを薬剤手撒き装置40で処理する場合、薬剤手撒き装置30での処理も本体部33の引き出しや押し込みが付くこと以外は同じであるが、以下のようになる。
タッチパネル41に手撒き作業を促す案内が画面表示されるので(図3(a)参照)、手撒き作業者は、空の予備撒きカセット20を用意して、それを薬剤手撒き装置40の本体部43のカセット格納空間45に入れる(図1(b)参照)。このとき、薬剤手撒き装置40の本体部43の手撒部47では(図3(a)参照)、区画貫通孔48が総て開閉部材51にて閉じられ、点灯部材49が総て消灯する。
【0038】
本体部43に予備撒きカセット20が完全に入れられると、薬剤手撒き装置40では、自動で、タッチパネル41の画面に手撒き処方の内容が表示される(図3(b)参照)。最初は、手撒き処方の識別情報などと総錠数とが白黒反転文字やカラーで強調表示され、各薬剤の薬品名と錠数は通常状態の文字で表示される。また、手撒部47では、各薬剤の手撒き範囲を併せた手撒き範囲の全域で(図3(b)では右側の6行6列)、点灯部材49が点灯する。その状態で、手撒き作業者がタッチパネル41で手撒き薬剤1を選択すると、そこの薬品名と錠数とにタッチパネル41の強調表示が移るとともに(図3(c)参照)、その選択された薬剤1の手撒き範囲だけに点灯部材49の点灯が限定される(図3(c)では右から2列目と3列目の6行)。それを見ながら手撒き作業者は手撒き薬剤1を区画貫通孔48に投入する(図3(d)参照)。
【0039】
薬剤1をその手撒き範囲に撒き終えたら、手撒き作業者は、タッチパネル41を操作して薬剤手撒き装置40に、手撒き済み薬剤1の移し替えを指示する。そうすると、薬剤手撒き装置40では、手撒部47の区画貫通孔48のうち薬剤1の手撒き範囲に属するものだけについて、開閉部材51が開閉し、手撒部47の区画貫通孔48から夫々対応する予備撒きカセット20の区画室21へ薬剤1が落下するので、手撒き作業が範囲を逸脱しないて適切になされていれば手撒部47から薬剤1が無くなる(図4(a)参照)。同時に、手撒部47の区画貫通孔48では点灯部材49が消灯し、タッチパネル41の表示画面では薬剤1の処理終了を示すため薬剤1に係る表示状態が変化する。
【0040】
それから、手撒き作業者が、手撒部47に薬剤1が残っていないことを確認して、タッチパネル41で手撒き薬剤2を選択すると、薬剤手撒き装置40では、その薬剤2に係る薬品名と錠数とにタッチパネル41の強調表示が移るとともに(図4(b)参照)、その選択された薬剤2の手撒き範囲だけに点灯部材49の点灯が限定される(図4(b)では3行目と4行目の右から6列)。それを見ながら手撒き作業者は手撒き薬剤2を区画貫通孔48に投入する(図4(c)参照)。
このような作業を繰り返すことで、作業者は各薬剤を剤種ごとに分けて容易かつ的確に手撒きすることができるが、手撒き範囲の外に薬剤を落とした場合、次のようにして気づくので、万が一にも見逃すおそれはない。
【0041】
すなわち、薬剤2をその手撒き範囲に撒き終えた手撒き作業者は、タッチパネル41を操作して手撒き済み薬剤の移し替えを指示するが、そうすると、薬剤手撒き装置40では、薬剤2の手撒き範囲に属する開閉部材51だけが作動して、薬剤2の手撒き範囲に属する区画貫通孔48だけから予備撒きカセット20の区画室21へ薬剤が移し替えられる。そのため、手撒部47における薬剤2の手撒き範囲からは薬剤2が無くなるが、その範囲を逸脱して不所望に撒かれた薬剤2は手撒部47に残存し続けることから(図4(d)参照)、そのことが一目瞭然で直ちに判明するので、次の薬剤の処理に移行する前に余分な薬剤2は取り除かれることとなる。
【0042】
こうして、この発明の薬剤手撒き装置30,40を用いた薬剤手撒き作業にあっては、薬剤毎に移し替えと確認がなされるので、作業が迅速かつ的確に遂行される。
また、作業者が薬剤手撒き装置40に再表示を指示すると、タッチパネル41の画面表示と点灯部材49の点灯表示とが最初の状態に戻って再び手撒き範囲の全域で点灯部材49が点灯するので、全範囲の確認も容易に行える。さらに、作業者が総ての薬剤について手撒きしないうちに薬剤手撒き装置40に終了を指示すると、薬剤手撒き装置40によってアラームが発せられるとともに確認が求められるので、手撒き漏れも発生し難い。
そして、一つの手撒き処方に係る手撒き作業が終了すると、薬剤手撒き装置40によって予備撒きカセット20の情報担体22に手撒き処方の情報が書き込まれて、予備撒きカセット20を薬剤手撒き装置40から取り出せる状態となる。
【実施例2】
【0043】
本発明の薬剤手撒き装置の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図5は、手撒部47における区画貫通孔48や点灯部材49などの要部を拡大して示した平面図である。
この薬剤手撒き装置が上述した実施例1と相違するのは、区画貫通孔48に設けられた点灯部材49が3個ずつに増えていることと、区画貫通孔48が手撒き範囲に属することを示すために付設の点灯部材49を点灯させるときにその区画貫通孔48に投入すべき薬剤の個数と同数だけ点灯部材49が点灯させられることである。
なお、薬剤の個数が点灯部材49の個数より多いときは、分割して処理される。
【0044】
この場合、点灯数を見ることで容易かつ確実に薬剤の投入数が分かる。そして、点灯数が明瞭になるよう、点灯部材49が露見状態で斜板50に装着されている。
これに対し、図示は割愛したが、点灯部材49に例えばカラーのLEDを採用して、色分けにて個数を表示させれば、点灯部材49が斜板50の裏に隠れていても良く、斜板50が拡散性のものであっても良い。
【0045】
[その他]
なお、上記実施例では、画面表示部に操作部の一体になったタッチパネル31,41を採用したが、画面表示部と操作部は、別体でも良く、例えばディスプレイとキーボードとマウスとで構成しても良い。制御部も、マイクロプロセッサに限らず、画面表示部や操作部と一体のいわゆるノート形パソコンや、画面表示部や操作部と別体のいわゆるデスクトップパソコンで、構成しても良い。制御部や,画面表示部,操作部の総て又は任意のものを本体部に組み付けて装備しても良い。
また、上記実施例では、手撒きしようとする薬剤の選択をタッチパネル41の表示と操作で行うようになっていたが、薬剤の収納容器に貼付されたバーコードの読取などで薬剤を選択するようにしても良い。
【0046】
さらに、上記実施例では、予備撒きカセット20を薬剤手撒き装置40の本体部43のカセット格納空間45へ直に差し込んだり引き出したりするようになっていたが、引出箱やレール等からなる引出部材を本体部43の枠体44に装着しておき、この引出部材に予備撒きカセット20を載置して引出部材を引き出したり押し込んだりすることでカセット格納空間45への予備撒きカセット20の出し入れを行うようにしても良い。枠体44における予備撒きカセット20の出し入れ部位も、前面に限られる訳でなく、左右の側面でも良く、上面でも良い。上面から出し入れする場合、例えば手撒部47を開閉蓋にして、そこから予備撒きカセット20を出し入れすると良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施例1について、薬剤手撒き装置の機械的な構造を示し、(a)が組込形と据置形とを設置した薬剤分包システムの概要正面図、(b)が予備撒きカセットと薬剤手撒き装置の斜視図、(c)が手撒き装置本体の枠体の手撒部の区画貫通孔の斜視図、(d)及び(e)が区画貫通孔の縦断面図である。
【図2】薬剤手撒き装置の機能等を示し、(a)が電子回路のブロック図、(b)が制御の概要フローチャートである。
【図3】薬剤手撒き装置の動作状況を示し、(a)〜(d)何れも点灯表示と画面表示との例である。
【図4】薬剤手撒き装置の動作状況を示し、(a)〜(d)何れも点灯表示と画面表示との例である。
【図5】本発明の実施例2について、手撒部における区画貫通孔や点灯部材などの要部を拡大して示した平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1,2…薬剤、9…作業台(保管棚)、
10…薬剤分包機、11…薬剤フィーダ、
12…薬剤収集機構、13…包装機、14…作動部材、
20…予備撒きカセット、21…区画室、22…情報担体、
30…薬剤手撒き装置(組込形)、31…タッチパネル(画面表示部,操作部)、
32…コントローラ(制御部,処方情報処理部)、33…本体部、
40…薬剤手撒き装置(据置形)、41…タッチパネル(画面表示部,操作部)、
42…コントローラ(制御部,処方情報処理部)、43…本体部、
44…枠体、45…カセット格納空間、46…情報読書器、
47…手撒部、48…区画貫通孔、49…点灯部材、50…斜板、
51…開閉部材、52…駆動源(開閉駆動手段)、53…支承部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の区画室の形成されている予備撒きカセットを前面等より出し入れ可能な枠体と、この枠体の上面部分に組み込まれた部材からなり又は前記枠体の上面を開閉する蓋体からなり前記予備撒きカセットの区画室配置に対応した配置で多数の区画貫通孔が貫通形成されている手撒部と、前記区画貫通孔それぞれに内装された多数の開閉部材と、それらの開閉部材を個々に作動させる開閉駆動手段とを備えている薬剤手撒き装置。
【請求項2】
手撒き処方の対象となる薬品の選択を受理するとともに前記手撒部から下方へ手撒き済み薬剤を移し替えるとき前記開閉部材のうち選択薬剤の手撒き範囲に属するものだけを開閉させる制御部を備えていることを特徴とする請求項1記載の薬剤手撒き装置。
【請求項3】
前記区画貫通孔それぞれに対応付けて点灯部材が配設され、前記制御部が前記手撒部への薬剤の手撒きを促すとき前記点灯部材のうち選択薬剤の手撒き範囲に属するものを点灯させるようになっていることを特徴とする請求項2記載の薬剤手撒き装置。
【請求項4】
前記区画貫通孔それぞれに対応付けて配置された多数の点灯部材と、手撒き処方の対象となる薬品の選択を受理するとともに前記点灯部材のうち選択薬剤の手撒き範囲に属するものを点灯させる制御部とを備えていることを特徴とする請求項1記載の薬剤手撒き装置。
【請求項5】
手撒き処方の薬品名を表示する画面表示部が設けられ、前記制御部が前記画面表示部の表示に基づく選択を手撒き処方の対象となる薬品の選択として受理するようになっていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載された薬剤手撒き装置。
【請求項6】
前記開閉駆動手段が前記区画貫通孔それぞれに対応して分散設置された駆動源を具えていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載された薬剤手撒き装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−297066(P2007−297066A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124685(P2006−124685)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000151472)株式会社トーショー (156)
【Fターム(参考)】