説明

薬剤揮散容器

【課題】支持台やケースが必要なく、更には、外部に新たな揮散体を必要としない省資源、低コスト化を達成することができる薬剤の揮散容器を提供すること。
【解決手段】薬剤6を収容した軟包装容器5と、薬剤6を吸い上げる吸い上げ芯3と、吸い上げられた薬剤6を揮散する揮散体1を具備する薬剤揮散容器であって、揮散体1が軟包装容器5と一体化していることを特徴とする薬剤揮散容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤の揮散容器に関する。さらに詳しくは、玄関、トイレ、浴室、居間、自動車内等に設置して、芳香剤、消臭剤等の薬剤を周囲空間に揮散させるための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内などで液体芳香消臭剤などの薬剤を揮散させる容器としては、プラスチックボトルに液体芳香消臭剤を充填し、これに吸い上げ芯を装着して、内溶液を吸い上げ芯を介して揮散体に供給し、揮散体から周囲空間に揮散させるタイプのものが知られている。このタイプは揮散に伴いプラスチックボトル内部が陰圧になるのを防ぐため、通気孔をボトル上部に設けて空気置換を行えるようにしてあるのが普通である。
【0003】
このようなタイプの薬剤の揮散容器は、製品の使用が終わると、ボトルを廃棄しなければならず、環境保護や省資源の観点から問題であり、又ボトル以外にキャップ、揮散体支持部材など部品点数が多く、使用時の煩雑さ及び製造コスト的にも改善の余地がある。
【0004】
これらの問題点を改善する試みとして、例えば、パウチタイプの軟包装容器に液体芳香剤を充填し、芯体を介して外部に液体芳香剤を毛管現象などを利用して導出し揮散させる提案(特許文献1)、薬剤を充填した軟包装容器を吐出部を下に向けて設置し、吐出部の下方に設置された揮散体を介して薬液を揮散させる倒立型の揮散装置(特許文献2)、同じく軟包装容器を用いた倒立型であるが特殊な支持台による液面変化による吐出量変化を緩和する工夫を加えたもの(特許文献3)などの改善提案が知られている。いずれもプラスチックボトルは使わずに、軟包装容器を用いたものであるが、軟包装容器を支える支持台やケース及び外部に設置する揮散体が必要であり、省資源、低コストの観点からは不十分である。
【0005】
【特許文献1】特開平6−247479号公報
【特許文献2】特開平9−276387号公報
【特許文献3】特開2003−235951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように軟包装容器を使用した薬剤揮散容器においても、なお省資源、低コスト化の必要性が明らかであり、十分満足できるものではない。従って、本発明の目的は支持台やケースが必要なく、更には、外部に新たな揮散体を必要としない薬剤の揮散容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、今回、軟包装容器と一体化した揮散体を用いることによって、軟包装容器の支持台やケースが不要な薬剤の揮散容器が作成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明によれば、薬剤を収容した軟包装容器と、薬剤を吸い上げる吸い上げ芯と、吸い上げられた薬剤を揮散する揮散体を具備する薬剤揮散容器であって、揮散体が軟包装容器と一体化していることを特徴とする薬剤揮散容器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、芳香剤などの薬剤を揮散させる容器において、少ない部材で、低コストで提供することができるため、省資源及び環境負荷の低減を図ることができ、かつ低コスト化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照して、本発明の薬剤の揮散容器について説明する。
【0011】
図1はピロータイプの薬剤揮散容器の説明図で、図2はスタンディングパウチタイプの薬剤揮散容器の説明図である。図3はスタンディングパウチタイプで揮散体を表裏につけたものである。
【0012】
図1(A)は、本発明のピロータイプの薬剤揮散容器の断面図を示す説明図である。図1(B)は、斜視図を示す説明図である。本発明の薬剤揮散容器は揮散体1を収納した型枠2および薬剤6を毛細管作用によって揮散体1に供給するための吸い上げ芯3を備えた軟包装容器5で構成され、軟包装容器内に満たされている薬剤6はシールフィルム4a、又は型枠2と一体成形された隔壁で揮散体1と仕切られ、薬剤6は吸い上げ芯3を介してのみ揮散体1に供給される。軟包装容器5はヒートシールなどの方法で型枠2に接着されており、軟包装容器5と揮散体1は一体化されている。本発明の薬剤揮散容器を使用する前においては、揮散体1はシールフィルム4bでシールされており、使用時にはシールフィルム4bを剥離することにより薬剤6の揮散が開始され、軟包装容器5の材質が軟包装体であるため空気置換はおこらず、薬剤6の揮散が進行するとともに、軟包装容器5は収縮し最終的に薬剤6はほぼ完全に揮散することとなる。
【0013】
本発明の薬剤揮散容器において使用する軟包装容器5は、プラスチックフィルムが一般的に用いられるが、香料などの薬剤の透過性がないアルミ箔をラミネートしたものや、二酸化珪素を蒸着したものなども使用できる。揮散体1は特別のものである必要はなく、多くの液体芳香剤装置に用いられているものが例示でき、例えば、積層したパルプ、ろ紙を重ねたもの、合成繊維、多孔性のプラスチック、セラミックなどを挙げることができる。吸い上げ芯3の芯材も多くの液体芳香剤装置に用いられるものが使用でき、材質としては揮散体1と同様のものを例示することができる。型枠2の形状は必ずしも円形である必要はなく、軟包装容器5、シールフィルム4aなどと接着可能である材質であればその形状には特に制限はない。型枠2の材質として最も一般的なものとしてポリエチレンが例示できる。薬剤6と揮散体1を仕切るシールフィルム4aは型枠2に何らかの方法で接着できるものであれば特別のものである必要はなく、ポリエチレン、数種のプラスチックフィルムをラミネートしたものなどが例示できる。本発明の薬剤揮散容器が使用されるまでの間、揮散を防止するためのシールフィルム4bもシールが可能で透過性がないものであれば特に制限がなく、ラミネートフィルムやイージーオープンフィルムなどが例示でき、また、スクリューキャップでの揮散防止も可能である。
【0014】
本発明の薬剤揮散容器に使用する薬剤6の有効成分としては、例えば、芳香剤、消臭剤、防虫剤、害虫忌避剤、殺虫剤などを挙げることができる。芳香剤の具体例としては、各種の天然精油、合成香料及びそれらを組み合わせた調合香料などを挙げることができ、さらに水、エタノールなどの溶剤;各種界面活性剤;色素;抗酸化剤などを適宜配合することができる。
【0015】
図2(C)は、スタンディングパウチタイプの正面図、図2(D)は、縦断面図を示す説明図である。スタンディングパウチタイプもピロータイプと同様、空気置換が起こらないので揮散が進行するにしたがって軟包装容器が収縮して折れ曲がったりする場合がある。これらを防ぐために、図2(D)に示すように吊り下げて使用すると好適である。図3(E)および(F)もスタンディングパウチタイプで表裏に揮散面を設けたものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)本発明の薬剤揮散容器(ピロータイプ)の断面図を示す説明図である。(B)本発明の薬剤揮散容器(ピロータイプ)の斜視図を示す説明図である。
【図2】(C)本発明の薬剤揮散容器(スタンディングパウチタイプ)の正面図を示す説明図である。(D)本発明の薬剤揮散容器(スタンディングパウチタイプ)の縦断面図を示す説明図である。
【図3】(E)本発明の薬剤揮散容器(スタンディングパウチタイプ:揮散体を表裏に設置)の正面図を示す説明図である。(F)本発明の薬剤揮散容器(スタンディングパウチタイプ:揮散体を表裏に設置)の縦断面図を示す説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1. 揮散体
2. 型枠
3. 吸い上げ芯
4a.シールフィルム
4b.シールフィルム
5. 軟包装容器
6. 薬剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を収容した軟包装容器と、薬剤を吸い上げる吸い上げ芯と、吸い上げられた薬剤を揮散する揮散体を具備する薬剤揮散容器であって、揮散体が軟包装容器と一体化していることを特徴とする薬剤揮散容器。
【請求項2】
薬剤は揮散体とは直接接触せず、吸い上げ芯を介して接する請求項1に記載の薬剤揮散容器。
【請求項3】
軟包装容器がピロータイプである請求項1または2に記載の薬剤揮散容器。
【請求項4】
軟包装容器がスタンディングパウチタイプである請求項1または2に記載の薬剤揮散容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−149350(P2009−149350A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329914(P2007−329914)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】