説明

薬剤混合装置及び薬剤混合方法

【課題】エアロゾルによる薬剤容器からの薬剤の漏れを防止し、かつ、外部への薬剤の漏れを防止する薬剤混合装置を提供する。
【解決手段】本発明の薬剤混合装置20は、薬剤容器26、シリンジ27及び輸液バッグ28のうちの少なくともいずれかを配置するための貯蔵エリア103と、薬剤容器26、シリンジ27及び輸液バッグ28のうちの少なくともいずれかを搬送するための搬送エリア104と、搬送エリア104に隣接して配置され、シリンジ27により薬剤容器26から薬剤を吸引して混合するための混合エンジン22を備える薬剤混合エリア101と、を有し、貯蔵エリア103、搬送エリア104及び薬剤混合エリア101で構成された第1閉鎖空間29と、薬剤混合エリア101における第1閉鎖空間29の内部に構成された第2閉鎖空間30aとを定義した場合に、第2閉鎖空間30aにおいて薬剤が混合される構成からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療などの分野において、注射薬などの薬剤をシリンジに吸引して混合する薬剤混合装置及び薬剤混合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病院などで薬剤を入院患者などに施用する時に、数種類の薬剤を異なった薬剤容器から取り出して混合したものを施用する場合がある。薬剤容器から取出した薬剤を混合する作業については、看護師や薬剤師などの人手に頼ることが多い。薬剤を混合する作業の一例として、薬剤容器に注射針などを挿入して薬剤を吸引する作業がある。この時に、ブトウ糖などの粘度の高い薬液の吸引や内圧調整の必要なバイアル容器からの薬剤の吸引など、吸引に一定以上の力が必要なことから、これらの薬剤の混合は、大きな作業負担となっている。さらに、病院などで施用される薬剤の中には、抗がん剤など安全性に十分配慮して取り扱うべき薬剤もある。そのため、安全に取り扱えて、作業負担が少なくて済む薬剤混合装置の開発が望まれている。
【0003】
図10は、従来の薬剤混合装置10の平面図を示す。図10に示す薬剤混合装置10は、ロボットマニピュレータシステム1により、在庫チャンバ2のラック2aに保管されたバイアルなどの薬剤容器(図示せず)を処理チャンバ3に取り出した後、処理チャンバ3においてシリンジなど(図示せず)を使用して、適量の薬剤を薬剤容器からシリンジなどに取り出すものである。ここで、処理チャンバ3内の圧力は、大気圧よりやや低い気圧に保たれ、処理チャンバ3内で薬剤容器などから薬剤が漏れた場合でも薬剤混合装置10の外部に薬剤が拡散し難いようにしている。また、在庫チャンバ2内は、大気圧よりやや高めの気圧に保たれ、処理チャンバ3内で薬剤容器などから薬剤が漏れた場合でも、薬剤が蒸気状になって在庫チャンバ2内に侵入し難くしており、在庫チャンバ2内に保管された薬剤容器などの容器外部が薬剤で汚染され難くしている。
【0004】
薬剤混合装置10において、制御システムとしても利用できるモニタ4に表示された処方箋情報に基づき、薬剤容器および輸液バッグ(図示せず)を、それぞれロボットマニピュレータシステム1により取り出し、処理チャンバ3内に運搬する。ここで、薬剤容器は、在庫チャンバ2に配置されたラック2aから選択されたものであり、輸液バッグは、ラック2bから薬剤を吸引するシリンジや薬剤を希釈するものである。そして、処理チャンバ3内において、薬剤容器及びシリンジをロボットマニピュレータシステム1により針上昇シリンジマニピュレータ5に移動させる。そして、薬剤容器内の所定の用量の薬剤がシリンジ内に吸引される。その後、シリンジは、ロボットマニピュレータシステム1により、デキャッパーステーション6に運搬されて針がシリンジから除去され、シリンジキャッパステーション7に運搬されて針のないシリンジにキャップが取り付けられる。その後、シリンジは、はかりステーション8に運搬されて重量を測定された後に、ラベリングステーション9に運搬されて、印刷されたラベル(識別ラベル:IDラベル)が貼付される。この状態でシリンジ放出シュート11に放り込まれ、薬剤師などが取り出す。
【0005】
また、ロボットマニピュレータシステム1を使用して、薬剤が入ったシリンジを針下降シリンジマニピュレータ12に運搬して輸液バッグなどに吐出してもよい。この場合、輸液バッグをポートクリーナーステーション13に運搬する。
【0006】
従来の薬剤混合装置10においては、実質的に無菌の在庫チャンバ2や処理チャンバ3内で薬剤を混合する処理がなされ、実際に薬剤を混合する処理チャンバ3は、その気圧が大気圧よりも低い圧力に設定されている。そのため、万一薬剤が処理チャンバ3内で漏れても処理チャンバ3外に漏れないようにしている。これにより、薬剤混合装置10を設置している環境に悪影響を与えず、安全な薬剤混合作業が行えるとしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009−504199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記で説明した従来の薬剤混合装置においては、処理チャンバ外への薬剤の漏れを防止しているだけで、薬剤容器からシリンジに薬剤を吸引する時の、いわゆるエアロゾルによる薬剤の漏れについては考慮されていない。
【0009】
本発明は、この課題を解決するものであり、エアロゾルによる薬剤容器からの薬剤の漏れを防止し、かつ、薬剤混合装置から外部への薬剤の漏れを防止する薬剤混合装置及び薬剤混合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の薬剤混合装置は、薬剤容器、シリンジ及び輸液バッグのうちの少なくともいずれかを配置するための貯蔵エリアと、前記薬剤容器、前記シリンジ及び前記輸液バッグのうちの少なくともいずれかを搬送するための搬送エリアと、前記搬送エリアに隣接して配置され、前記シリンジにより前記薬剤容器から薬剤を吸引して混合するための混合エンジンを備える薬剤混合エリアと、を有し、前記貯蔵エリア、前記搬送エリア及び前記薬剤混合エリアで構成された第1閉鎖空間と、前記薬剤混合エリアにおける前記第1閉鎖空間の内部に構成された第2閉鎖空間とを定義した場合に、前記第2閉鎖空間は、前記混合エンジンの外筒部および内筒部の2つの円筒形状の間に定義され、前記第2閉鎖空間において薬剤が混合される、ことを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明の薬剤混合方法は、薬剤容器、シリンジ及び輸液バッグのうちの少なくともいずれかを、搬送エリアを介して薬剤混合エリアの混合エンジン内に搬送した後にホルダーで保持する搬送ステップと、前記混合エンジンのドアを閉めて閉鎖した後に、前記混合エンジンの上部から気体を供給すると共に前記混合エンジンの下部から前記気体を排気して、前記気体を前記上部から前記下部に所定の速度で流す気体フローステップと、前記混合エンジン内において、前記薬剤容器から前記シリンジへ薬剤を吸引して混合する薬剤混合ステップと、前記気体の圧力および流量のうち少なくともいずれかを変化させて、前記混合エンジン内の気体の圧力値を調整する圧力調整ステップと、を備えた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の薬剤混合装置及び薬剤混合方法によれば、エアロゾルによる薬剤容器からの薬剤の漏れを防止できる。加えて、薬剤混合装置から外部への薬剤の漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合装置の概略構成図で、(a)薬剤混合装置の正面図、(b)薬剤混合装置の平面図
【図2】本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合装置の薬剤混合エリアに配置された混合エンジン及び溶解エンジンの概略構成図で、(a)混合エンジンの側面図、(b)溶解エンジンの側面図
【図3】(a)〜(c)本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合装置の混合エンジンにおいて混合作業が行われる様子を示す模式図
【図4】本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合装置の混合エンジンの概略構造を示す斜視図
【図5】本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合装置の混合エンジンの概略構造を示す図で、(a)混合エンジンの概略構造を示す上面図、(b)混合エンジン内の気体の流速の分布を模式的に示す上面図
【図6】本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合装置の混合エンジンの内部の気体の流れを模式的に示す側面図
【図7】本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合装置の内部の気体の流れを模式的に示す断面図
【図8】本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合方法のフローチャート
【図9】本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合方法の各状態を示す図で、(a)〜(g)各状態での混合エンジンの内部の上面図
【図10】従来の薬剤混合装置の平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素には同じ符号を付しており、説明を省略する場合もある。また、図面は、理解しやすくするためにそれぞれの構成要素を主体に模式的に示している。また、それぞれの図面の対応関係を明確にするために、各図面にXYZ軸を図示している。
【0015】
(実施の形態1)
図1(a)、(b)は、本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合装置20の概略構成図である。図1(a)は、薬剤混合装置20の正面図を示し、図1(b)は、薬剤混合装置20の平面図を示す。図2(a)、(b)は、本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合装置20の薬剤混合エリア101に配置された混合エンジン22と、薬剤溶解エリア102に配置された溶解エンジン23の概略構成図である。図2(a)は、混合エンジン22の側面図であり、図2(b)は、溶解エンジン23の側面図である。
【0016】
図1(a)、(b)に示すように、本実施の形態1に示す薬剤混合装置20は、貯蔵エリア103と、搬送エリア104と、薬剤混合エリア101と、薬剤溶解エリア102とを備えている。ここで、貯蔵エリア103は、薬剤容器26、シリンジ27及び輸液バッグ28のうちの少なくともいずれかを配置するためのエリアである。搬送エリア104は、例えば、貯蔵エリア103に配置された薬剤容器26、シリンジ27及び輸液バッグ28のうちの少なくともいずれかを搬送するためのエリアである。薬剤混合エリア101は、搬送エリア104に隣接して配置され、シリンジ27により薬剤容器26から薬剤を吸引して薬剤を混合するためのエリアである。薬剤溶解エリア102は、搬送エリア104に隣接して配置され、シリンジ27に吸引された薬剤を輸液バッグ28内の生理食塩水などに溶解させるためのエリアである。なお、本実施の形態1では、薬剤混合エリア101と薬剤溶解エリア102をそれぞれ設けているが、薬剤混合装置20の目的によっては、薬剤溶解エリア102の代わりに薬剤混合エリア101を設け、2箇所で薬剤混合するなどの構成とすることも可能である。
【0017】
ここで、図1(b)に示すように、これらの貯蔵エリア103、搬送エリア104、薬剤混合エリア101及び薬剤溶解エリア102を含む空間を、第1閉鎖空間29と定義する。また、薬剤混合エリア101及び薬剤溶解エリア102を含む空間を、さらに、第1閉鎖空間29の内部に配置された第2閉鎖空間30と定義する。
【0018】
薬剤混合エリア101には、図2に示すように混合エンジン22が配置されている。また、図示はしていないが、図2の混合エンジン22と同様に、薬剤溶解エリア102には、溶解エンジン23が配置されている。混合エンジン22は、例えば、薬剤容器26からシリンジ27により薬剤を吸引することにより、薬剤を混合する作業を行う。また、溶解エンジン23は、例えば、シリンジ27から輸液バッグ28に薬剤を吐出して、輸液バッグ28内の生理食塩水などに薬剤を溶解する作業を行う。薬剤容器26、シリンジ27及び輸液バッグ28は、この混合作業または溶解エンジン23での溶解作業を行うためのものである。
【0019】
薬剤混合エリア101において、薬剤容器26、シリンジ27及び輸液バッグ28は、開閉機構22dから混合エンジン22の内部に搬入される。この搬入の後に開閉機構22dを閉じると、混合エンジン22の内部が、外壁22cと開閉機構22dにより密閉された第2閉鎖空間30aとなる。また、薬剤溶解エリア102において、薬剤容器26、シリンジ27及び輸液バッグ28は、開閉機構23dから溶解エンジン23の内部に搬入される。この搬入の後に開閉機構23dを閉じると、溶解エンジン23の内部が、外壁23cと開閉機構23dにより密閉された第2閉鎖空間30bとなる。このように構成することにより、薬剤混合装置20は、第1閉鎖空間29と第2閉鎖空間30(第2閉鎖空間30a、30b)とで、外部から2重に密閉され閉鎖された構成となっている。
【0020】
また、薬剤混合装置20は、薬剤混合エリア101、薬剤溶解エリア102の気体の排気速度を制御して、第2閉鎖空間30a、30bの気圧を制御する構成を備える。具体的には、薬剤混合エリア101において混合作業を行なう時に、上部101aから気体を内部に取り込み、シリンジ27により薬剤を吸引または吐出している空間を主体的に気体をフローし、下部101bから気体を外部に排気する構成を備える。同様に、薬剤溶解エリア102において溶解作業を行う時に、上部102aから気体を内部に取り込み、シリンジ27により薬剤を溶解する空間を主体的に気体をフローし、下部102bから気体を外部に排気する構成を備える。
【0021】
薬剤混合装置20は、この構成により、第2閉鎖空間30a、30b(以下、これらをまとめたものを第2閉鎖空間30とする)の気圧を制御でき、例えば薬剤容器26の内部の気体の圧力値より、第2閉鎖空間30a、30bの気体の圧力値を大きくすることができる。このような圧力値の関係にすることで、薬剤容器26の中の薬剤及び気体が、いわゆる、エアロゾル状態になって、第2閉鎖空間30a、30bに押し出されない。したがって、エアロゾルによる薬剤容器26からの薬剤の漏れを防止できる。加えて、シリンジ27に薬剤を吸引する等の作業空間(第2閉鎖空間30)は、薬剤混合装置20の外部から2重に閉鎖された構造である。このような構造により、万一、薬剤が微量だけ混合エンジン22または溶解エンジン23の内部に漏れた場合でも、薬剤混合装置20の外部への薬剤の漏れを、確実に防止することができる。
【0022】
次に、本実施の形態1の薬剤混合装置20の基本的な動作について説明する。
【0023】
まず、図1(a)、(b)に示すように、必要な薬剤容器26、シリンジ27、輸液バッグ28などは、予め薬剤混合装置20の外部から貯蔵エリア103に搬入されて、薬剤混合装置20内に配置される。薬剤の混合は、例えば、薬剤混合エリア101の混合エンジン22を用いて行われる。具体的には、薬剤の混合作業に必要な薬剤容器26及びシリンジ27などが、搬送エリア104のロボットアーム31を用いて貯蔵エリア103から取り出され、混合エンジン22の中へ運び込まれる。運び込まれた薬剤容器26及びシリンジ27などは、図2(a)に示すように、混合エンジン22の内部の円筒形状の壁面32に取り付けられたホルダー33に保持される。ここで、シリンジ27を保持しているホルダー33に備えられた移動機構を用ることで、ホルダー33を矢印34に示す上下方向に移動させる。混合エンジン22では、この矢印34に示す上下方向の移動により、シリンジ27の先端の針27aを薬剤容器26の中に挿入して、薬剤を吸引する。
【0024】
その後、薬剤を吸引したシリンジ27を、例えば、輸液バッグ35の生理食塩水などに溶解させるために、図2(a)に示す混合エンジン22から図2(b)に示す溶解エンジン23にロボットアーム31を用いて移動させる。具体的には、混合エンジン22内で薬剤容器26から薬剤を吸引したシリンジ27が、ロボットアーム31を用いて移動させられ、溶解エンジン23内のホルダー33に装着される。
【0025】
そして、図2(b)に示すように、矢印36に示す上下方向に移動するホルダー33の移動機構により、シリンジ27の先端の針27aを輸液バッグ35に挿入する。挿入後、シリンジ27に吸引した薬剤が輸液バッグ35内に注入されて、例えば生理食塩水に薬剤が溶解される。このようにして、薬剤混合装置20において、シリンジ27を介して、薬剤が混合、溶解される。
【0026】
また、図1(b)に示すように、薬剤混合装置20の第1閉鎖空間29内には、シェーカー37が配置されている。このシェーカー37は、薬剤容器26やシリンジ27の内部に液体状態の薬剤と粒状物などの固体の薬剤が混在する時に、固体の薬剤を液体状態の薬剤に溶かして混合するために薬剤に振動を与えるものである。
【0027】
さらに、第1閉鎖空間29内には、シリンジ27で吸引される前の薬剤とシリンジ27で吸引された後の薬剤との重量差が確認できるように、秤量計38が配置されている。
【0028】
また、薬剤混合装置20内には、薬剤容器26の外観やバーコードなどのIDラベルを認識して、薬剤の種類や量を検査する監査器39も配置されている。その他に、使用済のシリンジ27や針27aを廃棄するトラッシュボックス40なども配置されている。
【0029】
また、薬剤混合装置20で行われている混合作業の内容や取り扱われる薬剤の種類や量などの薬剤情報は、薬剤混合装置20の前面上方に配置された液晶ディスプレイなどの表示部41に表示される。薬剤混合装置20の取り扱いについての簡易マニュアルやメンテナンスなどに必要な工具類は、引き出し42などに保管されている。
【0030】
図3(a)〜(c)は、本発明の実施の形態1の薬剤混合装置20の混合エンジン22において、混合作業が行われる状態を示す模式図である。
【0031】
図3(a)に示すように、混合エンジン22の混合領域22aにおいて、薬剤容器26は、倒立状態でホルダー33(図3(a)では省略)に保持されている。そして、倒立状態のシリンジ27の先端の針27aを薬剤容器26の下部から薬剤容器26に挿入して、薬剤26aの吸引を行う。図3(b)は、シリンジ27に所定の適量の薬剤26aを吸引した後に、シリンジ27の針27aを薬剤容器26から引き抜いた状態を示す。
【0032】
ここで、図3(a)に示す状態で、ポンピング動作を行わずに、単純にシリンジ27に薬剤26aを吸引した場合について検討する。ポンピング動作とは、シリンジ27内に吸引された薬剤と対応するように、シリンジ27内の気体を薬剤容器26に注入する動作である。ポンピング動作を行わない場合、薬剤容器26の内部空間26bの圧力は、薬剤容器26に薬剤26aが納められて封入された時の圧力よりも低下する。この状態で、シリンジ27により、圧力の高い気体を薬剤容器26の内部空間26bに注入した時には、図3(c)に示すように、薬剤容器26の内部から薬剤26aが、例えば液滴26cとして薬剤容器26の外部のチャンバ22bに漏れ出す。このような現象は、「エアロゾル現象」(以下、「エアロゾル」とする)と呼ばれる。薬剤26aが毒性を有する場合には、このエアロゾルにより漏れ出た液体が人体に触れないように処理する必要がある。図3(c)は、シリンジ27の針27aを薬剤容器26から引き抜いた時に、上述のエアロゾルが、チャンバ22b内に発生している状態を示している。この時には、薬剤容器26の内部空間26bの圧力が、チャンバ22bの圧力よりも高くなっている。したがって、エアロゾルを防止するために、チャンバ22b内の圧力を制御する必要がある。次にこの圧力の制御について具体的に説明する。
【0033】
図4は、本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合装置20の混合エンジン22の概略構造を示す斜視図である。図5(a)、(b)は、本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合装置20の混合エンジン22の概略構造を示す図である。図5(a)は、混合エンジン22の概略構造を示す上面図であり、図5(b)は、混合エンジン22内の気体の流速の分布を模式的に示す上面図である。溶解エンジン23は、混合エンジン22と同様の概略構造を有しているため、ここでは説明を省略している。
【0034】
図4に示すように、混合エンジン22の外壁22cにより取り囲まれる第2閉鎖空間30aは、円筒形状の壁面32により、壁面32の外側の外筒部32aと壁面の内側の内筒部32bとに分離される。そして、シリンジ27は上部の回転部32cにホルダー33(図4では省略)で保持され、薬剤容器26は、下部の回転部32dに同様にホルダー33(図4では省略)で保持される。この構成により、薬剤混合エリア101でのシリンジ27や薬剤容器26を外筒部32aに保持するホルダー33などを動作させる機構などを、内筒部32b内に納めることができる。これにより、機構内の様々なメカニズムが動作することにより生じる粉塵が、シリンジ27や薬剤容器26に降りかかり、これらを汚染することを防止できる。
【0035】
なお、内筒部32bは、気体を内筒排気口44bから排気し、吸気ポート46から吸気する。外筒部32aは、気体を外筒排気口44aから排気し、吸気ポート43から吸気している。このように気体の流れを分離することにより、外筒部32aで発生したエアロゾルや内筒部32bで発生した粉塵の影響が、内筒部32bや外筒部32aに及ばないように構成できる。
【0036】
また、ここで、前述のように薬剤溶解エリア102の代わりに薬剤混合エリア101を複数個配置された構成とすると、複数の第2閉鎖空間30aにおいて、混合作業を効率よく行うことができる。
【0037】
なお、薬剤を溶解する溶解用の薬剤溶解エリア102と、薬剤を混合する混合用の薬剤混合エリア101とは、ロボットアーム31を介して近接した場所に配置されることが望ましい。これは、近接した場所に配置して移動距離を短くすることで、一連の薬剤の混合、溶解作業を、短時間で行うためである。
【0038】
また、図4に示すように、第2閉鎖空間30a、30bの上部には、気体を内部に取り込むために開口率が変化できる複数の吸気ポート43が配置されている。この複数の吸気ポート43の開口率は、制御部43aで制御される。薬剤混合装置20では、この吸気ポート43によって、第2閉鎖空間30aの内部に流れる気体が、薬剤容器26から薬剤を吸引しているシリンジ27の部位に集中して流れるように構成している。
【0039】
この構成について、図5(a)、(b)を用いて、具体的に説明する。図5(a)に示す壁面32に取り付けられた複数のホルダー33で、それぞれシリンジ27と薬剤容器26とを保持している。そして、シリンジ27の針27aが薬剤容器26に挿入されて、薬剤を所定の量だけ吸引する。吸引後、薬剤容器26から針27aを引き抜く時に、薬剤容器26の中の液状の薬剤が、液滴や気体状のガスとなって周囲に飛び散る場合がある。この時に、図5(b)に示すように、薬剤容器26が配置されて吸引が行われる領域45に流れる気体の流速を高速(例えば、3m/secで中速の3倍)にし、この領域45から離れるにつれて、気体の流速を中速(例えば、領域47、48において1m/sec)から低速(例えば、領域49において0.5m/secで中速の1/2)とする。このような気体の流速の調整が、第2閉鎖空間30aの上部の複数の吸気ポート43の開口率の大小により行われる。吸気ポート43の開口率の大小の調整を行うために、吸気ポート43には、図5(b)に示すように、例えば金属製の薄板からなるフィルタ43bが嵌め込まれている。このフィルタ43bには、薄板を貫通した通気孔43cが形成されている。図4に示す制御部43aは、この通気孔43cを開放、閉鎖または部分的に開放することにより、吸気ポート43のフィルタ43bを通過する気体の流速を所定の流速に制御している。すなわち、フィルタ43bに開けられた通気孔43cの数が多いほど開口率が大きく、流速が大きくなる。ここで、気体の圧力は、薬剤混合装置20が配置された場所の気圧から10〜20Pa低く設定されている。
【0040】
高速の気体が流れる領域45は、薬剤容器26が配置された領域で薬剤の混合作業に十分な広さがある空間として、例えば、図5(b)に示すように全体の断面積の1/4の領域が設定される。中速の気体が流れる領域47、48は、例えば高速の気体が流れる領域45に隣接した全体の断面積の1/4の領域がそれぞれ設定される。そして、残りの全体の断面積の1/4の領域は、例えば低速の気体が流れる領域49として設定される。
【0041】
また、これらの領域は、ホルダー33の位置に合わせて、例えば、1つのホルダー33をそれぞれ含むように分割を行い設定してもよい。この場合は、図5(a)に示すホルダー33の位置に対応して6等分された6つの領域が設定される。そして、この場合は、それぞれの領域の上部に、図5(b)に示すフィルタ43bがはめ込まれた吸気ポート43が6つ配置されることとなる。
【0042】
また、領域を明確に区分して領域毎の気体の流速の差を顕著に設定するために、例えば図4に示すシリンジ27を支持する回転部32cにホルダー33間を区切る仕切り板(図示せず)を取り付けた構成としてもよい。
【0043】
このようにホルダー33毎に領域を設定することにより、薬剤を混合する領域で、万一、エアロゾルが発生したとしても、他の領域にエアロゾルを付着させないように構成できる。なお、上部の吸気ポート43から吸い込まれた気体は、下部の排気口44により排気されている。なお、図5(a)において、薬剤容器26及びシリンジ27は、混合エンジン22の開閉機構22dであるドア50から内部に搬送されている。このドア50は、薬剤容器26やシリンジ27などを搬送しやすいように、混合エンジン22のロボットアーム31に近い位置に外壁22cに沿って設けられている。ドア50は、混合エンジン22の内部が外部と完全に遮断されるように密閉性よく形成されており、ドア50を開閉する場合には、混合エンジン22の内部の気体は、その流速を低速または停止状態にして、ドア50の内部と外部の圧力差を最小にして開閉しやすいようにしている。
【0044】
図4、図5(a)、(b)を用いて説明した構成により、混合エンジン22内の気体を、ダウンフローとしている。そして、ダウンフローとすることにより、薬剤に起因する有害ガスが、薬剤容器26から微量だけ漏れ出たとしても、この有害ガスに向けて内部に流れる気体が集中して上部から下部に流れるように構成している。すなわち、第2閉鎖空間30a内の他の領域に比べて、領域45には気体が集中して上部から下部に最大の流速で大量に流れるようにしている。これにより、有害ガスは、速やかに第2閉鎖空間30aから排気側に排気される。
【0045】
また、本実施の形態1では、流速比を圧力比とほぼ等しくなるようにして、薬剤の混合作業をする領域45を高速にしている。これは、この領域45の気体の圧力を高くして、エアロゾルが発生した場合にも、エアロゾルが拡散しないようにするためである。これにより、有害ガスが、薬剤混合装置20内部に付着することや、薬剤混合装置20内部に滞留した有害ガスが、薬剤混合装置20外部に漏洩することを、さらに確実に防止できる。なお、エアロゾル以外にダストなども、重力とダウンフローを利用して、混合エンジン22の下部に速やかに排出される。
【0046】
図6は、本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合装置20の混合エンジン22の内部の気体の流れを模式的に示す側面図である。図7は、本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合装置20の内部の気体の流れを模式的に示す断面図である。溶解エンジン23も混合エンジン22と同様の概略構造を有しているため、ここでは説明を省略している。
【0047】
図6に示すように、混合エンジン22の壁面により分離された外筒部32aと内筒部32bとにそれぞれ上部から下部に気体51、52を流している。これらの気体51、52は、混合エンジン22の基台部53の中をそれぞれの経路で通過し、排気部54で合流し混合される。
【0048】
図7は、薬剤混合装置20の内部の気体の流れの全体を示している。外筒部32aを流れる気体51と内筒部32bを流れる気体52とは、混合エンジン22の基台部53を通過して排気部54で合流し混合される。この時の気体51、52は、薬剤混合装置20の上部のブロワー用のファン60により吸い込まれるので、一般的に大気圧よりも陰圧の空気となっている。そして、気体51、52は、ファン60により押し出され、陽圧の空気となって、HEPAフィルタ55により清浄化されて、薬剤混合装置20の外部に放出される。
【0049】
一方、本実施の形態1では、薬剤混合エリア101において、第2閉鎖空間30aの下部から排気された気体51、52は、第1閉鎖空間29の下部から排気された気体56と混合されて、薬剤混合エリア101の上部101aから、清浄な気体57として吸入される。薬剤混合装置20は、このように薬剤混合エリア101の上部101aから正常な気体57を流入するために、循環経路58を備える。この構成により、エアロゾルなどで発生した有害ガスが薬剤混合装置20外に漏洩することなく、循環経路58に設けた除害フィルタ59などにより除去され、内部の気体を清浄に維持して再利用できる。
【0050】
また、薬剤混合装置20において、第2閉鎖空間30の気体51の圧力値が、薬剤容器26の内部の気体の圧力値以上である構成としてもよい。本実施の形態1において、第2閉鎖空間30aの気体51の圧力値は、例えば薬剤混合装置20が設置された装置外部の圧力値から10〜20Pa低く設定している。薬剤容器26の内部の気体の圧力値は、薬剤を吸引することにより、薬剤容器26の外部の圧力より50〜100Pa低くなる。これにより、気体51の圧力値は、薬剤容器26の内部の気体の圧力値より大きくなっている。この構成により、シリンジ27により薬剤容器26から薬剤を吸引し、シリンジ27の先端の針27aを引き抜く時には、シリンジ27が配置された第2閉鎖空間30aの気体51の圧力値が、薬剤容器26の内部の気体の圧力値より高くなる。そのため、薬剤容器26から液状または気体状の薬剤が漏れ出ることがない。また、薬剤容器26の外部と内部との圧力差は、50〜100Pa以上となるため、薬剤容器26の中から薬剤が漏洩するエアロゾルなどの現象を確実に防止できる。
【0051】
また、第2閉鎖空間30aの気体51の圧力値が、第1閉鎖空間29の圧力値以上、薬剤容器26の内部の気体の圧力値以下である構成としてもよい。この構成により、第1閉鎖空間29の圧力値を最小値として、薬剤容器26の内部の気体の圧力値と第2閉鎖空間30aの気体の圧力値との差を小さくすることができる。これにより、薬剤容器26の中から薬剤が漏洩するエアロゾルなどの現象を確実に減少できる。
【0052】
次に、本実施の形態1の薬剤混合方法について具体的に説明する。
【0053】
図8、図9は、本発明の実施の形態1にかかる薬剤混合方法の各状態を示す。図9(a)から図9(g)は、各状態での混合エンジン22の内部の上面図を示す。
【0054】
図8に示すように、本実施の形態1の薬剤混合方法は、搬送ステップS10と、気体フローステップS11と、薬剤混合ステップS12と、圧力調整ステップS13と、引き抜きステップS14と、クリーンステップS15と、を備えた方法である。
【0055】
ここで、搬送ステップS10は、図1(b)に示す第1閉鎖空間29に配置された薬剤容器26、シリンジ27及び輸液バッグ28のうちの少なくともいずれかを、搬送エリア25を介して、薬剤混合エリア21の第2閉鎖空間30に搬送し、ホルダー33で保持するステップである。気体フローステップS11は、第2閉鎖空間30aのドア50を閉めて、第2閉鎖空間30aの上部から気体を内部に取り込み、下部から気体を外部に排気して、気体を上部から下部に所定の速度で流すステップである。薬剤混合ステップS12は、薬剤容器26からシリンジ27へ薬剤を吸引する、または、シリンジ27から輸液バッグ28へ薬剤を注入するステップである。圧力調整ステップS13は、気体の圧力および流量のうち少なくともいずれかを変化させて、第2閉鎖空間30aの気体の圧力値を調整するステップである。引き抜きステップS14は、シリンジ27の針27aを薬剤容器26または輸液バッグ28から引き抜くステップである。クリーンステップS14は、ファン60などの排気ブロワーを駆動して、シリンジ27の針27a、薬剤容器26および輸液バッグ28のうちの少なくともいずれかに気体を吹き付けるステップである。なお、圧力調整ステップS13により、第2閉鎖空間30aの圧力値は、薬剤容器26の内部の気体の圧力よりも50Pa以上大きくなるように設定される。この設定は、例えば、第2閉鎖空間30aに流れ込む気体の流入口に圧力調整弁を付けて調整する、または、これに加えて混合作業を行うときだけ、ガスボンベなどの気体供給源に直接接続された気体配管から、所定の圧力の気体を第2閉鎖空間30に導入することにより実現できる。
【0056】
また、図8に示すように、圧力調整ステップS13の後、引き抜きステップS14の前に流速制御開始ステップS16を設けてもよい。流速制御開始ステップS16は、シリンジ27および針27aが配置された、第2閉鎖空間30aの上部のフィルタ43bの開口率が大きくなるように変化させて、針27aの近傍の空間に流速を上げて気体が供給され始めるようにするステップである。このようにして、シリンジ27と針27aとが置かれた空間の圧力値を薬剤容器26の内部の空間の圧力値より高くして、エアロゾルにより薬剤が漏れることがないように防止している。さらに、薬剤容器26または輸液バッグ35から引き抜かれた針27aは、周辺の気体の流量が増加した中で、さらにクリーンステップS15により、排気ブロワーが駆動されて気体の流速が、所定の時間(例えば、20sec程度)だけさらに増加する。これにより、万一、エアロゾルなどにより薬剤がごく微量もれたとしても速やかに排気され、第2閉鎖空間30aの内部は、清浄に保持される。クリーンステップS15が終了した後は、流速制御終了ステップS17により、第2閉鎖空間30a内の気体の流速は、薬剤の混合作業が行われない待機状態に戻り、流量および流速は減少されて、例えば0.1m/sec以下となる。さらに、薬剤容器26やシリンジ27などを第2閉鎖空間30aから第1閉鎖空間29に取り出すときには、圧力開放ステップS18により、必要に応じて、第2閉鎖空間30aの圧力を、第1閉鎖空間29の圧力にほぼ等しくなるように調整する。この方法により、第2閉鎖空間30aの気体の圧力および流量を制御できるので、エアロゾルによる薬剤容器26からの薬剤の漏れを防止できる。加えて、シリンジ27に薬剤を吸引または抽出する作業空間は、外部から2重に閉鎖されるので、薬剤混合装置20から外部への薬剤の漏れを確実に防止することができる。
【0057】
続いて、本実施の形態1の薬剤混合の動作について、図9(a)から図9(g)を用いて詳細に説明する。図9(a)に示すように、混合エンジン22はドア50が閉じられて、第2閉鎖空間30aが構成されている。図9(b)に示すように、ドア50が開けられ、図9(c)に示すように第1閉鎖空間29の、例えば貯蔵エリア103から薬剤容器26とシリンジ27とを搬送エリア104を介してロボットアーム31により第2閉鎖空間30aに搬送する(ステップS10)。なお、薬剤容器26とシリンジ27とは、それぞれのホルダー33により保持される。ここでは、針27aを上方に向けたシリンジ27は、倒立して保持された薬剤容器26と鉛直方向に上下に配置されている。図9(d)に示すように、ドア50が閉じられて、薬剤容器26とシリンジ27とが、回転部32cにより回転されてポンピング位置に移動し、第2閉鎖空間30aの上部から下部に気体が所定の速度で流される(ステップS11)。そして、図9(e)に示すように、薬剤容器26からシリンジ27へ薬剤がポンピングされ吸引される(ステップS12)。このポンピング動作と略同時に、気体の圧力及び流量のうちの少なくともいずれかを変化させて、第2閉鎖空間30aの圧力値を調整する。ここでは、例えば圧力値が、薬剤容器26の内部空間の気体の圧力値より低くなるように大気圧から十分に低い圧力値に調整される(ステップS13)。なお、この圧力調整は、第2閉鎖空間30a全体でなく、図5(b)の説明で述べたように、第2閉鎖空間30aの中の薬剤容器26などが配置された一部の空間で行われてもよい。また、シリンジ27や針27aの近傍の空間に流速及び流量を上げた気体を供給してもよい(ステップS16)。ポンピング動作が終了すると、圧力値が調整されていることを確認して、シリンジ27の針27aが、薬剤容器26から引き抜かれる(ステップS14)。さらに、ファン60などの排気ブロワーが駆動されて、シリンジ27の針27a及び薬剤容器26に気体が吹き付けられ、これらに液体状または気体状の付着物が付いていたとしても吹き飛ばされてクリーン化が行われる(ステップS15)。クリーン化の後には、気体の流速及び流量を元の待機状態に戻す(ステップS17)。
【0058】
そして、図9(f)に示すように、薬剤容器26とシリンジ27とが、回転部32cにより回転されてポンピング位置から搬出位置に移動して、第2閉鎖空間30aの圧力値が第1閉鎖空間29の圧力値とほぼ等しくなるように圧力が調整される(ステップS18)。その後、ドア50が開けられて、薬剤容器26とシリンジ27とが、第2閉鎖空間30aから取り出されて搬出される。
【0059】
なお、上述の圧力調整ステップS13において、第2閉鎖空間30aの気体の圧力値が、薬剤容器26の内部の気体の圧力値以上となるように、気体の圧力および流量のうち少なくともいずれかを変化させて調整する方法としてもよい。
【0060】
この方法により、薬剤容器26の中から薬剤が漏洩するエアロゾルなどの現象をさらに確実に防止できる。
【0061】
また、圧力調整ステップS13において、第2閉鎖空間30aの気体の圧力値が、第1閉鎖空間29の圧力値以上、薬剤容器26の内部の気体の圧力値以下となるように、気体の圧力および流量のうち少なくともいずれかを変化させて調整する方法としてもよい。
【0062】
この方法により、第1閉鎖空間29の圧力値を最小値として、薬剤容器26の内部の気体の圧力値と第2閉鎖空間30aの気体の圧力値との差を小さくすることができる。これにより、薬剤容器26の中から薬剤が漏洩するエアロゾルなどの現象を確実に減少できる。
【0063】
なお、上記の薬剤混合方法は、第2閉鎖空間30aを説明するのに混合エンジン22を例として説明し、薬剤を混合するのに薬剤容器26とシリンジ27とを用いた。しかしながら、第2閉鎖空間30bにおいても、溶解エンジン23の内部でシリンジ27と輸液バッグ28とで、同様な方法で薬剤が溶解される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の薬剤混合装置及び薬剤混合方法によれば、エアロゾルによる薬剤容器からの薬剤の漏れを防止できる。加えて、薬剤混合装置から外部への薬剤の漏れを防止することができる。これにより、病院などにおいて薬剤師や看護師などが安全かつ正確に薬剤を混合することができ、看護師や薬剤師などの作業負担を軽減できるので、有用である。
【符号の説明】
【0065】
20 薬剤混合装置
22 混合エンジン
22a 混合領域
22b チャンバ
22c,23c 外壁
22d,23d 開閉機構
23 溶解エンジン
26 薬剤容器
26a 薬剤
26b 内部空間
26c 液滴
27 シリンジ
27a 針
28 輸液バッグ
29 第1閉鎖空間
30a、30b 第2閉鎖空間
31 ロボットアーム
32 壁面
32a 外筒部
32b 内筒部
32c,32d 回転部
33 ホルダー
34,36 矢印
35 輸液バッグ
37 シェーカー
38 秤量計
39 監査器
40 トラッシュボックス
41 表示部
42 引き出し
43,46 吸気ポート
43a 制御部
43b フィルタ
43c 通気孔
44 排気口
44a 外筒排気口
44b 内筒排気口
45,47,48,49 領域
50 ドア
51,52,56,57 気体
53 基台部
54 排気部
55 HEPAフィルタ
58 循環経路
59 除害フィルタ
60 ファン
101 薬剤混合エリア
101a、102a 上部
101b、102b 下部
102 薬剤溶解エリア
103 貯蔵エリア
104 搬送エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤容器、シリンジ及び輸液バッグのうちの少なくともいずれかを貯蔵するための貯蔵エリアと、
前記薬剤容器、前記シリンジ及び前記輸液バッグのうちの少なくともいずれかを搬送するための搬送エリアと、
前記搬送エリアに隣接して配置され、前記シリンジにより前記薬剤容器から薬剤を吸引して混合するための混合エンジンを備える薬剤混合エリアと、を有し、
前記貯蔵エリア、前記搬送エリア及び前記混合エンジン周囲の薬剤混合エリアで構成された第1閉鎖空間と、前記混合エンジンの内部に構成された第2閉鎖空間とを定義した場合に、前記第2閉鎖空間は、前記混合エンジンの外筒部および内筒部の2つの円筒形状の間に定義され、前記第2閉鎖空間において薬剤が混合される、
薬剤混合装置。
【請求項2】
前記第2閉鎖空間において、前記混合エンジンの内部に気体を供給し、前記混合エンジンの外部に排気すると共に、前記気体の排気速度を制御する制御部を備える、
請求項1に記載の薬剤混合装置。
【請求項3】
前記第2閉鎖空間は、前記シリンジにより前記薬剤容器から薬剤を吸引して薬剤を混合するための前記薬剤混合エリア、または、前記シリンジにより内部の薬剤を前記輸液バッグに吐出して溶解するためのの薬剤溶解エリアのいずれかを含む複数の空間である、
請求項1または2に記載の薬剤混合装置。
【請求項4】
前記第2閉鎖空間に配置されると共に開口率が変化する複数の吸気ポートを備え、
前記制御部で、前記複数の吸気ポートの前記開口率を変化させる、
請求項2に記載の薬剤混合装置。
【請求項5】
前記第2閉鎖空間から排気された気体を、前記第1閉鎖空間から排気された気体と混合して前記第2閉鎖空間に供給する循環経路を設けた、
請求項1から4のいずれか1項に記載の薬剤混合装置。
【請求項6】
前記第2閉鎖空間内の気体の圧力値が、前記薬剤容器内の気体の圧力値以上である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の薬剤混合装置。
【請求項7】
前記第2閉鎖空間内の気体の圧力値が、前記第1閉鎖空間内の気体の圧力値以上、かつ前記薬剤容器内の気体の圧力値以下である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の薬剤混合装置。
【請求項8】
薬剤容器、シリンジ及び輸液バッグのうちの少なくともいずれかを、搬送エリアを介して薬剤混合エリアの混合エンジン内に搬送した後にホルダーで保持する搬送ステップと、
前記混合エンジンのドアを閉めて閉鎖した後に、前記混合エンジンの上部から気体を供給すると共に前記混合エンジンの下部から前記気体を排気して、前記気体を前記上部から前記下部に所定の速度で流す気体フローステップと、
前記混合エンジン内において、前記薬剤容器から前記シリンジへ薬剤を吸引して混合する薬剤混合ステップと、
前記気体の圧力および流量のうち少なくともいずれかを変化させて、前記混合エンジン内の気体の圧力値を調整する圧力調整ステップと、を備えた、
薬剤混合方法。
【請求項9】
前記圧力調整ステップにおいて、前記混合エンジン内の気体の圧力値が、前記薬剤容器内の気体の圧力値以上となるように、前記気体の圧力および流量のうち少なくともいずれかを変化させる、
請求項8に記載の薬剤混合方法。
【請求項10】
前記圧力調整ステップにおいて、前記混合エンジン内の気体の圧力値が、前記搬送エリア及び前記混合エンジン周囲の薬剤混合エリアで定義された第1閉鎖空間の圧力値以上、かつ前記薬剤容器内の気体の圧力値以下となるように、前記気体の圧力および流量のうち少なくともいずれかを変化させる、
請求項8に記載の薬剤混合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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